(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010863
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】磁極位置推定装置および磁極位置推定方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/16 20160101AFI20250116BHJP
H02P 21/32 20160101ALI20250116BHJP
【FI】
H02P6/16
H02P21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113135
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 隆志
【テーマコード(参考)】
5H505
5H560
【Fターム(参考)】
5H505AA18
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG01
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ22
5H505JJ23
5H505JJ24
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL58
5H560AA07
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA02
5H560DA07
5H560DC12
5H560EB01
5H560GG04
5H560JJ15
5H560SS02
5H560UA06
5H560XA02
5H560XA05
5H560XA13
(57)【要約】
【課題】可動子の磁極位置を推定可能な磁極位置推定装置および磁極位置推定方法を開示する。
【解決手段】磁極位置推定装置は、電圧指令設定部と、第一算出部と、第二算出部とを備える。電圧指令設定部は、電動機の界磁方向であるd軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令を電圧指令値が異なるように複数設定する。第一算出部は、電圧指令設定部によって設定されたd軸電圧指令ごとに、d軸電圧指令に基づいてd軸方向の電圧であるd軸電圧を印加し、固定子に対して可動子を所定の振幅および周波数で振動して可動子の磁極位置を推定した仮磁極位置を算出する。第二算出部は、電圧指令設定部によって設定されたd軸電圧指令および第一算出部によって算出された仮磁極位置の関係に基づいて、可動子の磁極位置を推定した推定磁極位置を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の界磁方向であるd軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令を電圧指令値が異なるように複数設定する電圧指令設定部と、
前記電圧指令設定部によって設定された前記d軸電圧指令ごとに、前記d軸電圧指令に基づいて前記d軸方向の電圧であるd軸電圧を印加し、固定子に対して可動子を所定の振幅および周波数で振動して前記可動子の磁極位置を推定した仮磁極位置を算出する第一算出部と、
前記電圧指令設定部によって設定された前記d軸電圧指令および前記第一算出部によって算出された前記仮磁極位置の関係に基づいて、前記可動子の磁極位置を推定した推定磁極位置を算出する第二算出部と、
を備える磁極位置推定装置。
【請求項2】
前記第一算出部は、前記固定子に対する前記可動子の位置を検出する位置センサの検出結果であって電気角の一周期における最大値と最小値を所定周期分、算出して、算出した前記所定周期分の前記最大値と前記最小値の平均値を前記仮磁極位置として算出する請求項1に記載の磁極位置推定装置。
【請求項3】
前記第二算出部は、前記d軸電圧指令および前記仮磁極位置の関係において、前記d軸電圧指令に対する前記仮磁極位置の近似曲線が定常値に漸近する所定関数を用いて、前記推定磁極位置を算出する請求項1または請求項2に記載の磁極位置推定装置。
【請求項4】
前記所定関数は、指数関数である請求項3に記載の磁極位置推定装置。
【請求項5】
前記所定関数は、分数関数である請求項3に記載の磁極位置推定装置。
【請求項6】
前記第二算出部は、最小二乗法によって前記推定磁極位置を算出する請求項3に記載の磁極位置推定装置。
【請求項7】
前記第一算出部は、外力が印加されている前記可動子の前記固定子に対する位置を検出する位置センサの検出結果を用いて、前記仮磁極位置を算出する請求項1に記載の磁極位置推定装置。
【請求項8】
前記外力は、重力である請求項7に記載の磁極位置推定装置。
【請求項9】
前記電動機は、鉛直方向に沿って延びるロボットアームを前記重力に抗して駆動する請求項8に記載の磁極位置推定装置。
【請求項10】
電動機の界磁方向であるd軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令を電圧指令値が異なるように複数設定する電圧指令設定工程と、
前記電圧指令設定工程によって設定された前記d軸電圧指令ごとに、前記d軸電圧指令に基づいて前記d軸方向の電圧であるd軸電圧を印加し、固定子に対して可動子を所定の振幅および周波数で振動して前記可動子の磁極位置を推定した仮磁極位置を算出する第一算出工程と、
前記電圧指令設定工程によって設定された前記d軸電圧指令および前記第一算出工程によって算出された前記仮磁極位置の関係に基づいて、前記可動子の磁極位置を推定した推定磁極位置を算出する第二算出工程と、
を備える磁極位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、磁極位置推定装置および磁極位置推定方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の磁極位置検出装置は、信号選択手段と、平均値演算手段と、相対磁極位置演算手段とを備えている。信号選択手段は、磁気検出素子部によって生成され、電気角で120度ずつ位相ずれした3つの磁気検出信号の大きさを比較して、最大の磁気検出信号にHのレベル信号、最小の磁気検出信号にはLのレベル信号を割り当てる。平均値演算手段は、Hのレベル信号とLのレベル信号が割り当てられた2つの磁気検出信号の平均値を演算して平均値信号を生成する。相対磁極位置演算手段は、平均値信号に基づいて所定の電気角の角度範囲内における相対磁極位置を演算する。
【0003】
特許文献2に記載の同期電動機の駆動装置は、同期電動機に高周波電圧を印加するための三相電圧指令信号を生成する指令電圧作成手段と、高周波電圧を印加した時に同期電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出結果に基づいて同期電動機の磁極位置を推定する磁極位置推定手段とを備えている。指令電圧作成手段は、第一の印加電圧モードと、第二の印加電圧モードと、第三の印加電圧モードを順次切り替えて三相電圧指令信号を生成する。第一の印加電圧モードは、任意の電圧振幅で、任意の位相に正と負に交番する高調波電圧を印加する。第二の印加電圧モードは、上記任意の位相から電気角で120度ずらした位相に同様の振幅の高周波電圧を印加する。第三の印加電圧モードは、上記任意の位相から電気角で240度ずらした位相に同様の振幅の高周波電圧を印加する。
【0004】
電流検出手段は、第一の印加電圧モード、第二の印加電圧モードおよび第三の印加電圧モードでの高周波電圧の印加により生じる脈動電流の正側値と負側値を、各モードで1相ずつ検出して、正側および負側の各相の電流値を検出する。磁極位置推定手段は、正側の各相の検出電流値、および、負側の各相の検出電流値を用いて、同期電動機の推定磁極位置を算出する。具体的には、同期電動機の駆動装置は、第一の印加電圧モード、第二の印加電圧モードおよび第三の印加電圧モードの各々で少なくとも1点以上検出した電流値を、各モードの検出点ごとに平均化処理する平均化処理手段を備えている。
【0005】
特許文献3に記載の磁気飽和特性演算部は、磁気飽和テーブル記憶部と、磁気飽和関数フィッティング部とを備えている。磁気飽和テーブル記憶部は、磁束推定部で算出された回数分の推定磁束量およびd軸電流最終値を記憶する。磁気飽和関数フィッティング部は、得られた推定磁束量およびd軸電流最終値を最小二乗法などで指数関数によりフィッティングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-136776号公報
【特許文献2】特開2011-050198号公報
【特許文献3】特開2010-068627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
位置センサを用いて電動機を制御する場合、可動子の磁極位置と、位置センサの位置関係を把握するために、可動子の磁極位置を推定する必要がある。
【0008】
このような事情に鑑みて、本明細書は、可動子の磁極位置を推定可能な磁極位置推定装置および磁極位置推定方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、電圧指令設定部と、第一算出部と、第二算出部とを備える磁極位置推定装置を開示する。前記電圧指令設定部は、電動機の界磁方向であるd軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令を電圧指令値が異なるように複数設定する。前記第一算出部は、前記電圧指令設定部によって設定された前記d軸電圧指令ごとに、前記d軸電圧指令に基づいて前記d軸方向の電圧であるd軸電圧を印加し、固定子に対して可動子を所定の振幅および周波数で振動して前記可動子の磁極位置を推定した仮磁極位置を算出する。前記第二算出部は、前記電圧指令設定部によって設定された前記d軸電圧指令および前記第一算出部によって算出された前記仮磁極位置の関係に基づいて、前記可動子の磁極位置を推定した推定磁極位置を算出する。
【0010】
また、本明細書は、電圧指令設定工程と、第一算出工程と、第二算出工程とを備える磁極位置推定方法を開示する。前記電圧指令設定工程は、電動機の界磁方向であるd軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令を電圧指令値が異なるように複数設定する。前記第一算出工程は、前記電圧指令設定工程によって設定された前記d軸電圧指令ごとに、前記d軸電圧指令に基づいて前記d軸方向の電圧であるd軸電圧を印加し、固定子に対して可動子を所定の振幅および周波数で振動して前記可動子の磁極位置を推定した仮磁極位置を算出する。前記第二算出工程は、前記電圧指令設定工程によって設定された前記d軸電圧指令および前記第一算出工程によって算出された前記仮磁極位置の関係に基づいて、前記可動子の磁極位置を推定した推定磁極位置を算出する。
【0011】
なお、本明細書には、願書に最初に添付した特許請求の範囲(以下、当初特許請求の範囲という。)に記載の請求項6において、「請求項3に記載の磁極位置推定装置」を「請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の磁極位置推定装置」に変更した技術的思想が開示されている。また、本明細書には、当初特許請求の範囲に記載の請求項7において、「請求項1に記載の磁極位置推定装置」を「請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の磁極位置推定装置」に変更した技術的思想が開示されている。
【発明の効果】
【0012】
上記の磁極位置推定装置によれば、複数のd軸電圧指令ごとに仮磁極位置を算出して、d軸電圧指令および仮磁極位置の関係に基づいて、推定磁極位置を算出することができる。磁極位置推定装置について既述されていることは、磁極位置推定方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電動機制御システムの一例を示す構成図である。
【
図3】制御装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図4】磁極位置推定装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図5】磁極位置推定装置による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】d軸電圧指令の経時変化の一例を示す図である。
【
図7】可動子の位置指令の経時変化の一例を示す図である。
【
図8】位置センサの検出結果の経時変化の一例を示す図である。
【
図9】d軸電圧指令および仮磁極位置の関係の一例を示す図である。
【
図11】超音波診断システムの一例を示す斜視図である。
【
図13】制御装置の制御ブロックの他の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態
1-1.電動機制御システム10の構成例
磁極位置推定装置70は、電動機制御システム10に適用することができる。
図1に示すように、実施形態の電動機制御システム10は、電源20と、平滑コンデンサ30と、電力変換器40と、制御装置60とを備えている。また、電力変換器40には、電動機50が電気的に接続されている。
【0015】
電源20は、電動機50の駆動電力を供給する。電源20は、電動機50の駆動電力を供給することができれば良く、種々の形態をとり得る。電源20は、例えば、直流電力を出力する。電源20は、例えば、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池、発電装置(例えば、燃料電池)などを用いることができる。また、電源20は、例えば、公知の昇圧コンバータなどを用いて、低電圧の直流電力を昇圧することもできる。平滑コンデンサ30は、電源20から出力された直流電力を平滑する。平滑コンデンサ30は、例えば、電解コンデンサを用いることができる。電源20から供給された直流電力は、平滑コンデンサ30によって平滑されてリップルが低減される。
【0016】
電力変換器40は、電源20から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を電動機50に出力する。
図1に示すように、電力変換器40は、複数(6つ)のスイッチング素子(実施形態では、三組の一対のスイッチング素子41)を備えており、これらは、フルブリッジ接続されている。三組の一対のスイッチング素子41の各々は、電源20の正極側に接続される正極側スイッチング素子4xpと、電源20の負極側に接続される負極側スイッチング素子4xnとが直列接続されている。なお、実施形態の電動機50は三相機であり、xは、u、v、wのうちのいずれかである(以下、同様)。
【0017】
制御装置60は、電力変換器40の複数(6つ)のスイッチング素子(三組の一対のスイッチング素子41を構成する正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xn)を開閉制御して、電力変換器40を制御する。これにより、電力変換器40は、電源20から出力された直流電力を交流電力に変換する。
図1に示すように、正極側スイッチング素子4xpと負極側スイッチング素子4xnとの間には、出力端子42xが設けられている。出力端子42xと、電動機50の相端子43xとの間は、電力ケーブル44xによって電気的に接続されている。電力ケーブル44xは、電力変換器40によって変換された交流電力を電動機50に給電する。
【0018】
電動機50は、固定子51と可動子52を備えている。実施形態の電動機50は、固定子51および可動子52が同軸に配設されるラジアル空隙型またはアキシャル空隙型の円筒状電動機であっても良く、可動子52が固定子51に対して直線状に移動するリニア電動機であっても良い。いずれの場合も、固定子51は、コイル(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)を備え、可動子52は、永久磁石52bを備えている。
図1に示すように、コイル(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)は、Y結線で接続することができる。同図では、中性点が中性点51nで示されている。なお、コイル(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)は、Δ結線で接続することもできる。
【0019】
図2に示すように、可動子52は、可動子鉄心52aと、所定磁極対分(実施形態では四磁極対分であり、8つ)の永久磁石52bと、シャフト52cとを備えている。同図は、可動子52の軸線方向(同図の紙面垂直方向)視の模式図であり、これらの配置が模式的に示されている。可動子鉄心52aは、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向(同図の紙面垂直方向)に複数積層されて円柱状に形成されている。可動子鉄心52aには、シャフト52cが設けられており、シャフト52cは、可動子鉄心52aの軸心を軸線方向に沿って貫通している。シャフト52cの軸線方向両端部は、ベアリングなどの軸受部材によって、移動可能(回転可能)に支持されている。
【0020】
可動子鉄心52aには、複数(8つ)の永久磁石52bが埋設されている。具体的には、可動子鉄心52aには、周方向に等間隔で、複数の磁石収容部が設けられている。複数の磁石収容部には、所定磁極対分(実施形態では四磁極対分であり、8つ)の永久磁石52bが埋設されている。永久磁石52bは、例えば、公知のフェライト系磁石、希土類系磁石などを用いることができる。なお、固定子51のスロット数および可動子52の磁極数は、限定されない。
【0021】
制御装置60は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。制御装置60は、電力変換器40を含む電力変換システムを制御する。例えば、制御装置60は、電力変換器40の複数(6つ)のスイッチング素子(正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xn)をパルス幅変調制御によって開閉制御することができる。
【0022】
図1に示すように、制御装置60は、直流電圧センサ60aと、駆動回路60bと、電流センサ60cと、位置センサ60dとを備えている。直流電圧センサ60aは、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力の直流電圧Vdcを検出する。本明細書では、直流電圧センサ60aによって検出された直流電圧Vdcを直流電圧検出値Vdc_fbという。駆動回路60bは、制御装置60から出力される駆動信号を増幅する駆動回路であり、例えば、公知のドライバ回路を用いることができる。例えば、電動機50がサーボモータの場合、駆動回路60bは、サーボアンプに含まれる。
【0023】
電流センサ60cは、電力変換器40から出力される出力電流を検出する。実施形態の電流センサ60cは、電力ケーブル44uおよび電力ケーブル44vに設けられており、電力ケーブル44uに流れるU相電流および電力ケーブル44vに流れるV相電流を検出する。本明細書では、電流センサ60cによって検出されたU相電流をU相電流検出値Iu_fbといい、電流センサ60cによって検出されたV相電流をV相電流検出値Iv_fbという。なお、電力ケーブル44wに流れるW相電流は、ゼロからU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbをそれぞれ減じて算出する。電流センサ60cは、公知の電流検出器(例えば、カレントトランスを使用した電流検出器、シャント抵抗器を使用した電流検出器など)を用いることができる。
【0024】
位置センサ60dは、固定子51に対する可動子52の位置を検出する。位置センサ60dは、公知の位置センサ(例えば、エンコーダ、レゾルバ、ホールセンサなど)を用いることができる。本明細書では、位置センサ60dによって検出された可動子52の位置(電動機50が円筒状電動機の場合、回転位置)を可動子位置θという。なお、制御装置60は、既述されているセンサ以外にも種々のセンサを備えることができる。
【0025】
制御装置60の演算装置は、記憶装置に記憶されている電力変換器40の制御プログラムを読み出して、制御プログラムを実行する。また、既述されている検出値などは、絶縁部を介して、制御装置60に入力される。演算装置は、絶縁部および
図1に示す駆動回路60bを介して、電力変換器40の各スイッチング素子に開閉信号を出力して、電力変換器40を開閉制御する。なお、絶縁部は、制御装置60を含む低電圧側の回路と、電源20を含む高電圧側の回路とを電気的に絶縁する。絶縁部は、例えば、公知のフォトカプラなどを用いることができる。
【0026】
1-2.制御装置60による制御例
図3に示すように、実施形態の制御装置60は、制御ブロックとして捉えると、三相/二相変換部61と、角速度算出部62と、位置制御部63と、速度制御部64と、q軸電流制御部65と、d軸電流制御部66と、二相/三相変換部67と、磁極検出用指令部68とを備えており、ベクトル制御を行うことができる。
【0027】
図2に示すように、電動機50の可動子磁極(実施形態では、永久磁石52b)による界磁方向(主磁束方向)をd軸方向とし、d軸方向と電気的に直交する方向(トルク方向)をq軸方向とする。実施形態の電動機50は、八極の電動機であり、図示の便宜上、d軸方向とq軸方向のなす角度(電気角で90度)は、22.5度(機械角)で示されている。また、永久磁石52bが可動子52に埋設されている埋込磁石型の同期電動機のd軸-q軸座標系における電圧方程式は、(式1)で表すことができる。
【0028】
【0029】
但し、d軸方向の電圧は、d軸電圧Vdで表し、q軸方向の電圧は、q軸電圧Vqで表す。また、コイル(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)の各巻線抵抗は、巻線抵抗Rで表す。さらに、d軸インダクタンスは、d軸インダクタンスLdで表し、q軸インダクタンスは、q軸インダクタンスLqで表す。また、d軸方向の電流は、d軸電流Idで表し、q軸方向の電流は、q軸電流Iqで表す。さらに、可動子52の角速度は、角速度ωで表し、誘起電圧定数は、誘起電圧定数Φで表す。また、微分演算子は、微分演算子p(=d/dt)で表す。
【0030】
制御装置60は、例えば、d軸電流指令Id_refに基づいて、d軸電圧指令Vd_refを設定し、位置指令θ_refに基づいて、q軸電流指令Iq_refおよびq軸電圧指令Vq_refを設定して、電力変換器40を駆動制御する。但し、d軸電流指令Id_refは、d軸方向の電流指令をいい、q軸電流指令Iq_refは、q軸方向の電流指令をいう。d軸電圧指令Vd_refは、d軸方向の電圧指令をいい、q軸電圧指令Vq_refは、q軸方向の電圧指令をいう。さらに、位置指令θ_refは、可動子52の位置指令(電気角)をいう。
【0031】
1-2-1.三相/二相変換部61
三相/二相変換部61は、d軸電流算出値Id_fbおよびq軸電流算出値Iq_fbを算出する。但し、d軸電流算出値Id_fbは、d軸方向の電流算出値をいい、q軸電流算出値Iq_fbは、q軸方向の電流算出値をいう。
図3に示すように、三相/二相変換部61には、電流センサ60cによって検出されたU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbが入力される。既述されているように、W相電流は、ゼロからU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbをそれぞれ減じて算出することができる。W相電流の検出値(算出値)は、W相電流検出値Iw_fbとする。また、三相/二相変換部61には、位置センサ60dによって検出された可動子位置θが入力される。
【0032】
三相/二相変換部61は、U相電流検出値Iu_fb、V相電流検出値Iv_fbおよびW相電流検出値Iw_fb、並びに、可動子位置θを用いて、(式2)に基づいてd軸電流算出値Id_fbおよびq軸電流算出値Iq_fbを算出する。なお、可動子位置θは、例えば、U相電流検出値Iu_fb、V相電流検出値Iv_fbおよびW相電流検出値Iw_fbの経時変化から推定することもできる。また、可動子位置θは、例えば、各相の誘起電圧の経時変化から推定することもできる。実施形態では、可動子位置θは、位置センサ60dによって検出される。
【0033】
【0034】
1-2-2.角速度算出部62
角速度算出部62は、角速度算出値ω_fbを算出する。但し、角速度算出値ω_fbは、角速度ωの算出値をいう。
図3に示すように、角速度算出部62には、位置センサ60dによって検出された可動子位置θが入力される。角速度算出部62は、例えば、可動子位置θを時間微分して、可動子速度を算出し、可動子速度から角速度ωを算出して角速度算出値ω_fbを算出することができる。なお、制御装置60は、公知の検出器を用いて、可動子速度を検出することもできる。
【0035】
1-2-3.位置制御部63
位置制御部63は、位置指令θ_refおよび可動子位置θに基づいて、角速度指令ω_refを算出する。但し、角速度指令ω_refは、角速度ωの指令をいう。具体的には、位置制御部63は、可動子位置θが位置指令θ_refと一致するように、角速度指令ω_refを算出する。位置制御部63は、上記のように角速度指令ω_refを算出することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0036】
図3に示すように、位置制御部63は、減算器63aを備えている。減算器63aには、位置指令θ_refと可動子位置θが入力される。減算器63aは、位置指令θ_refから可動子位置θを減じて、偏差Δθを算出する。例えば、位置制御部63は、偏差Δθを入力として、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも一つによって、角速度指令ω_refを算出する。つまり、位置制御部63は、公知のP制御、PI制御、PID制御などを行って、角速度指令ω_refを算出することができる。
【0037】
1-2-4.速度制御部64
速度制御部64は、角速度指令ω_refおよび角速度算出値ω_fbに基づいて、q軸電流指令Iq_refを算出する。具体的には、速度制御部64は、角速度算出値ω_fbが角速度指令ω_refと一致するように、q軸電流指令Iq_refを算出する。速度制御部64は、上記のようにq軸電流指令Iq_refを算出することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0038】
図3に示すように、速度制御部64は、減算器64aを備えている。減算器64aには、角速度指令ω_refと角速度算出値ω_fbが入力される。減算器64aは、角速度指令ω_refから角速度算出値ω_fbを減じて、偏差Δωを算出する。例えば、速度制御部64は、偏差Δωを入力として、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも一つによって、q軸電流指令Iq_refを算出する。つまり、速度制御部64は、公知のP制御、PI制御、PID制御などを行って、q軸電流指令Iq_refを算出することができる。
【0039】
1-2-5.q軸電流制御部65およびd軸電流制御部66
q軸電流制御部65は、q軸電流指令Iq_refおよびq軸電流算出値Iq_fbに基づいて、q軸電圧指令Vq_refを算出する。具体的には、q軸電流制御部65は、q軸電流算出値Iq_fbがq軸電流指令Iq_refと一致するように、q軸電圧指令Vq_refを算出する。q軸電流制御部65は、上記のようにq軸電圧指令Vq_refを算出することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0040】
図3に示すように、q軸電流制御部65は、減算器65aを備えている。減算器65aには、q軸電流指令Iq_refとq軸電流算出値Iq_fbが入力される。減算器65aは、q軸電流指令Iq_refからq軸電流算出値Iq_fbを減じて、偏差ΔIqを算出する。例えば、q軸電流制御部65は、偏差ΔIqを入力として、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも一つによって、q軸電圧指令Vq_refを算出する。つまり、q軸電流制御部65は、公知のP制御、PI制御、PID制御などを行って、q軸電圧指令Vq_refを算出することができる。
【0041】
同様に、d軸電流制御部66は、d軸電流指令Id_refおよびd軸電流算出値Id_fbに基づいて、d軸電圧指令Vd_refを算出する。具体的には、d軸電流制御部66は、d軸電流算出値Id_fbがd軸電流指令Id_refと一致するように、d軸電圧指令Vd_refを算出する。d軸電流制御部66は、上記のようにd軸電圧指令Vd_refを算出することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0042】
図3に示すように、d軸電流制御部66は、減算器66aを備えている。減算器66aには、d軸電流指令Id_refとd軸電流算出値Id_fbが入力される。減算器66aは、d軸電流指令Id_refからd軸電流算出値Id_fbを減じて、偏差ΔIdを算出する。例えば、d軸電流制御部66は、偏差ΔIdを入力として、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも一つによって、d軸電圧指令Vd_refを算出する。つまり、d軸電流制御部66は、公知のP制御、PI制御、PID制御などを行って、d軸電圧指令Vd_refを算出することができる。
【0043】
1-2-6.二相/三相変換部67
二相/三相変換部67は、二相の電圧指令(d軸電圧指令Vd_refおよびq軸電圧指令Vq_ref)から三相の電圧指令(U相電圧指令Vu_ref、V相電圧指令Vv_refおよびW相電圧指令Vw_ref)を算出する。但し、U相電圧指令Vu_refは、U相の電圧指令をいい、V相電圧指令Vv_refは、V相の電圧指令をいい、W相電圧指令Vw_refは、W相の電圧指令をいう。
【0044】
図3に示すように、二相/三相変換部67には、d軸電流制御部66によって算出されたd軸電圧指令Vd_refと、q軸電流制御部65によって算出されたq軸電圧指令Vq_refとが入力される。また、二相/三相変換部67には、位置センサ60dによって検出された可動子位置θが入力される。二相/三相変換部67は、d軸電圧指令Vd_refおよびq軸電圧指令Vq_ref、並びに、可動子位置θを用いて、d軸-q軸座標系における逆変換を行い、U相電圧指令Vu_ref、V相電圧指令Vv_refおよびW相電圧指令Vw_refを算出する。
【0045】
駆動回路60bには、U相電圧指令Vu_ref、V相電圧指令Vv_refおよびW相電圧指令Vw_ref、並びに、直流電圧センサ60aによって検出された直流電圧検出値Vdc_fbなどが入力される。駆動回路60bは、U相電圧指令Vu_ref、V相電圧指令Vv_refおよびW相電圧指令Vw_ref、並びに、直流電圧検出値Vdc_fbなどに基づいて、電力変換器40の複数(6つ)のスイッチング素子(正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xn)の開閉信号(パルス信号)を生成する。
【0046】
1-3.磁極位置推定装置70の構成例
位置センサ60dを用いて電動機50を制御する場合、可動子52の磁極位置52pと、位置センサ60dの位置関係を把握するために、可動子52の磁極位置52pを推定する必要がある。
【0047】
例えば、位置センサ60dが着脱されると、可動子52の磁極位置52pと、位置センサ60dの位置関係(可動子52の磁極位置52pと、位置センサ60dの基準位置との関係)が不明になる。そのため、位置センサ60dが取り付けられたときに、上記の位置関係を把握し直す必要がある。
図2に示すように、可動子52の磁極位置52pは、所定磁極対分(実施形態では四磁極対分であり、8つ)の永久磁石52bの基準位置であり、所定の永久磁石52b(可動子磁極)の位置とすることができる。
【0048】
図4に示すように、磁極位置推定装置70は、電圧指令設定部71と、第一算出部72と、第二算出部73とを備えており、可動子52の磁極位置52pを推定する。電圧指令設定部71、第一算出部72および第二算出部73は、種々の演算装置、制御装置、管理装置などに設けることができる。例えば、電圧指令設定部71、第一算出部72および第二算出部73のうちの少なくとも一つは、
図1に示す制御装置60に設けることができる。電圧指令設定部71、第一算出部72および第二算出部73のうちの少なくとも一つは、クラウド上に形成することもできる。
【0049】
実施形態では、電圧指令設定部71、第一算出部72および第二算出部73は、制御装置60に設けられている。また、磁極位置推定装置70は、
図5に示すフローチャートに従って、制御を実行する。具体的には、電圧指令設定部71は、ステップS11に示す処理を行う。第一算出部72は、ステップS12~ステップS17に示す処理および判断を行う。第二算出部73は、ステップS18に示す処理を行う。なお、本明細書において記載されている事項は、適宜、取捨選択して適用することができる。また、本明細書において記載されている事項は、適宜、組み合わせることができる。
【0050】
1-3-1.電圧指令設定部71
電圧指令設定部71は、d軸方向の電圧指令であるd軸電圧指令Vd_refを電圧指令値が異なるように複数設定する(ステップS11)。電圧指令設定部71は、電圧指令値が異なる複数のd軸電圧指令Vd_refを設定することができれば良く、種々の形態をとり得る。
図6は、d軸電圧指令Vd_refの経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、d軸電圧指令Vd_refを示し、横軸は、時間を示している。折れ線L1は、d軸電圧指令Vd_refの経時変化の一例を示している。なお、時刻T0において、可動子52は、固定子51に対して静止しているものとする。
【0051】
電圧指令設定部71は、時刻T0において、d軸電流指令Id_refを第一所定値(一定値)に設定する。これにより、d軸電圧指令Vd_refは、一定の増加率で増加し、時刻T11において電圧V11に到達し、一定の電圧V11に設定される。d軸電圧指令Vd_refは、時刻T11から時刻T12まで、電圧V11に設定される。電圧指令設定部71は、時刻T12において、d軸電流指令Id_refを第一所定値よりも大きい第二所定値(一定値)に設定する。これにより、d軸電圧指令Vd_refは、一定の増加率で増加し、時刻T13において電圧V12に到達し、一定の電圧V12に設定される。d軸電圧指令Vd_refは、時刻T13から時刻T14まで、電圧V12に設定される。
【0052】
電圧指令設定部71は、時刻T14において、d軸電流指令Id_refを第二所定値よりも大きい第三所定値(一定値)に設定する。これにより、d軸電圧指令Vd_refは、一定の増加率で増加し、時刻T15において電圧V13に到達し、一定の電圧V13に設定される。d軸電圧指令Vd_refは、時刻T15から時刻T16まで、電圧V13に設定される。電圧指令設定部71は、時刻T16において、d軸電流指令Id_refをゼロに設定する。これにより、d軸電圧指令Vd_refは、一定の減少率で減少し、時刻T17においてゼロになり、以降、ゼロに設定される。
【0053】
このようにして、電圧指令設定部71は、電圧指令値が異なる複数(上記の例では、3つ)のd軸電圧指令Vd_refを設定することができる(
図6の折れ線L1を参照)。なお、電圧指令設定部71は、2つのd軸電圧指令Vd_refを設定することもできる。また、電圧指令設定部71は、4つ以上のd軸電圧指令Vd_refを設定することもできる。
【0054】
1-3-2.第一算出部72
第一算出部72は、電圧指令設定部71によって設定されたd軸電圧指令Vd_refごとに、可動子52の磁極位置52pを推定した仮磁極位置AP0を算出する(ステップS12~ステップS17)。第一算出部72は、d軸電圧指令Vd_refごとに、d軸電圧指令Vd_refに基づいてd軸方向の電圧であるd軸電圧Vdを印加し、固定子51に対して可動子52を所定の振幅および周波数で振動して仮磁極位置AP0を算出する。可動子52を振動させる振幅および周波数は、任意に設定することができる。
【0055】
図7は、可動子52の位置指令θ_refの経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、可動子52の位置指令θ_refを示し、横軸は、時間を示している。曲線L2は、可動子52の位置指令θ_refの経時変化の一例を示している。既述されているように、d軸電圧指令Vd_refは、電圧指令設定部71によって、時刻T11から時刻T12までの時間、一定の電圧V11に設定されている。これにより、d軸電圧Vdは、時刻T11から時刻T12までの時間、一定の電圧V11が印加される(ステップS12)。
【0056】
第一算出部72は、d軸電圧Vdとして電圧V11が印加された状態で、可動子52を所定の振幅および周波数で振動させる(ステップS13)。具体的には、第一算出部72は、時刻T11よりも遅い時刻T11aから時刻T12までの時間、可動子52の静止位置(同図の0位置)を基準にして、負の方向および正の方向に位置指令θ_refを正弦波状に変化させる。同図では、位置指令θ_refの最小値が負値の位置θ11で示され、位置指令θ_refの最大値が正値の位置θ12で示されている。また、位置指令θ_refは、正弦波の任意の周期分、変動させることができる。実施形態では、位置指令θ_refは、例えば、正弦波の5周期分、変動している。
【0057】
電圧指令設定部71は、例えば、
図3に示す磁極検出用指令部68を用いて、d軸電圧指令Vd_refに基づいてd軸電圧Vdを印加し、固定子51に対して可動子52を所定の振幅および周波数で振動することができる。磁極検出用指令部68は、磁極検出の際の各指令(
図7に示す位置指令θ_ref、
図6に示すd軸電圧指令Vd_refおよびゼロに設定されるq軸電圧指令Vq_ref)を生成する。また、磁極検出用指令部68は、切り替え器68a,68b,68cを備えている。
【0058】
切り替え器68aは、磁極検出の際に、位置センサ60dによって検出された可動子位置θを、
図7に示す位置指令θ_refに切り替えて、二相/三相変換部67に入力可能にする。切り替え器68bは、磁極検出の際に、d軸電流制御部66によって算出されたd軸電圧指令Vd_refを、
図6に示すd軸電圧指令Vd_refに切り替えて、二相/三相変換部67に入力可能にする。切り替え器68cは、磁極検出の際に、q軸電流制御部65によって算出されたq軸電圧指令Vq_refを、ゼロに切り替えて、二相/三相変換部67に入力可能にする。磁極検出用指令部68は、
図7に示す位置指令θ_refによって回転磁界を発生させて、可動子52を振動させることができる。
【0059】
既述されていることは、d軸電圧指令Vd_refが電圧V12に設定される場合についても同様に言える。第一算出部72は、d軸電圧Vdとして電圧V12が印加された状態で、時刻T13よりも遅い時刻T13aから時刻T14までの時間、可動子52を上記の振幅と同じ振幅で、上記の周波数と同じ周波数で振動させる。また、既述されていることは、d軸電圧指令Vd_refが電圧V13に設定される場合についても同様に言える。第一算出部72は、d軸電圧Vdとして電圧V13が印加された状態で、時刻T15よりも遅い時刻T15aから時刻T16までの時間、可動子52を上記の振幅と同じ振幅で、上記の周波数と同じ周波数で振動させる。このようにして、第一算出部72は、d軸電圧指令Vd_refごとに、d軸電圧指令Vd_refに基づいてd軸電圧Vdを印加し、固定子51に対して可動子52を所定の振幅および周波数で振動することができる。
【0060】
図7に示す位置指令θ_refによって回転磁界が発生する。第一算出部72は、回転磁界に基づいて、可動子52の磁極位置52pを推定することができ、仮磁極位置AP0を算出することができる。例えば、第一算出部72は、固定子51に対する可動子52の位置を検出する位置センサ60dの検出結果であって電気角の一周期における最大値と最小値を所定周期分、算出して、算出した所定周期分の最大値と最小値の平均値を仮磁極位置AP0として算出する。
【0061】
図8は、位置センサ60dの検出結果の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、位置センサ60dの検出結果を示し、横軸は、時間を示している。曲線L3は、位置センサ60dの検出結果の経時変化の一例を示している。具体的には、曲線L3は、
図7の曲線L2に示す位置指令θ_refに対する応答例を示している。例えば、位置センサ60dの検出結果は、時刻T11aよりも遅い時刻T11bから、時刻T12よりも遅い時刻T12aまでの時間、変動している。
【0062】
図7に示す例では、位置指令θ_refは、正弦波の5周期分、変動している。
図8では、電気角の一周期における位置センサ60dの検出結果の最大値と最小値は、最初の1周期分について、最大値M11および最小値N11で示されている(ステップS14)。残りの4周期分についても同様であり(ステップS15でNoの場合)、検出結果の最大値と最小値は、最大値M12および最小値N12、最大値M13および最小値N13、最大値M14および最小値N14、最大値M15および最小値N15で示されている(ステップS14)。
【0063】
所定周期分(上記の例では、5周期分)の最大値と最小値が算出され記録されると(ステップS15でYesの場合)、第一算出部72は、算出した所定周期分の最大値(最大値M11~最大値M15)と、最小値(最小値N11~最小値N15)の平均値を仮磁極位置AP0として算出する。平均値は、上記の10個の算出値を個数10で除したものであり、以下、同じである。説明の便宜上、上記の仮磁極位置AP0を仮磁極位置AP1とする(ステップS16)。
【0064】
同様に、位置センサ60dの検出結果は、時刻T13aよりも遅い時刻T13bから、時刻T14よりも遅い時刻T14aまでの時間、変動している。電気角の一周期における検出結果の最大値と最小値は、最大値M21および最小値N21、最大値M22および最小値N22、最大値M23および最小値N23、最大値M24および最小値N24、最大値M25および最小値N25で示されている(ステップS17でNoの場合のステップS14)。
【0065】
所定周期分(上記の例では、5周期分)の最大値と最小値が算出され記録されると(ステップS15でYesの場合)、第一算出部72は、算出した所定周期分の最大値(最大値M21~最大値M25)と、最小値(最小値N21~最小値N25)の平均値を仮磁極位置AP0として算出する。説明の便宜上、上記の仮磁極位置AP0を仮磁極位置AP2とする(ステップS17でNoの場合のステップS16)。
【0066】
また、位置センサ60dの検出結果は、時刻T15aよりも遅い時刻T15bから、時刻T16よりも遅い時刻T16aまでの時間、変動している。電気角の一周期における検出結果の最大値と最小値は、最大値M31および最小値N31、最大値M32および最小値N32、最大値M33および最小値N33、最大値M34および最小値N34、最大値M35および最小値N35で示されている(ステップS17でNoの場合のステップS14)。
【0067】
所定周期分(上記の例では、5周期分)の最大値と最小値が算出され記録されると(ステップS15でYesの場合)、第一算出部72は、算出した所定周期分の最大値(最大値M31~最大値M35)と、最小値(最小値N31~最小値N35)の平均値を仮磁極位置AP0として算出する。説明の便宜上、上記の仮磁極位置AP0を仮磁極位置AP3とする(ステップS16)。以上により、所定(上記の例では、3つ)のd軸電圧指令Vd_refについて、仮磁極位置AP0がそれぞれ算出され(ステップS17でYesの場合)、磁極位置推定装置70による制御は、ステップS18に示す処理に移行する。
【0068】
1-3-3.第二算出部73
図9は、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係の一例を示している。同図の縦軸は、可動子52の磁極位置52pを示し、横軸は、常用対数で表されたd軸電圧指令Vd_refを示している。既述されているように、d軸電圧指令Vd_refが電圧V11に設定されている場合の仮磁極位置AP0は、仮磁極位置AP1である。電圧V11は、常用対数で表すと、電圧V21で示されるとする。同図の丸印は、電圧V21に対する仮磁極位置AP1のグラフ上の位置を示している。
【0069】
同様に、d軸電圧指令Vd_refが電圧V12に設定されている場合の仮磁極位置AP0は、仮磁極位置AP2である。電圧V12は、常用対数で表すと、電圧V22で示されるとする。同図の四角印は、電圧V22に対する仮磁極位置AP2のグラフ上の位置を示している。また、d軸電圧指令Vd_refが電圧V13に設定されている場合の仮磁極位置AP0は、仮磁極位置AP3である。電圧V13は、常用対数で表すと、電圧V23で示されるとする。同図の三角印は、電圧V23に対する仮磁極位置AP3のグラフ上の位置を示している。
【0070】
図9の0位置は、正しい可動子52の磁極位置52pを示している。同図に示すように、d軸電圧指令Vd_refが小さくなるほど、仮磁極位置AP0は、正しい可動子52の磁極位置52pから離間している。d軸電圧指令Vd_refを増加させると、仮磁極位置AP0は、正しい可動子52の磁極位置52pに近づく。しかしながら、実際の装置では、印加可能な電圧に限界があり、仮磁極位置AP0を正しい可動子52の磁極位置52pに一致させることは、困難である。
【0071】
そこで、第二算出部73は、電圧指令設定部71によって設定されたd軸電圧指令Vd_refおよび第一算出部72によって算出された仮磁極位置AP0の関係に基づいて、可動子52の磁極位置52pを推定した推定磁極位置EP0を算出する(ステップS18)。第二算出部73は、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係に基づいて、推定磁極位置EP0を算出することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0072】
例えば、第二算出部73は、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係において、d軸電圧指令Vd_refに対する仮磁極位置AP0の近似曲線が定常値に漸近する所定関数F(Vd_ref)を用いて、推定磁極位置EP0を算出することができる。
図9の曲線L4は、d軸電圧指令Vd_refに対する仮磁極位置AP0の近似曲線の一例を示している。曲線L4は、定常値である推定磁極位置EP0に漸近しており、第二算出部73は、定常値を推定磁極位置EP0として算出することができる。
【0073】
なお、所定関数F(Vd_ref)は、d軸電圧指令Vd_refに対する仮磁極位置AP0の近似曲線が定常値に漸近するものであれば良く、種々の関数を用いることができる。例えば、所定関数F(Vd_ref)は、指数関数、高次関数、分数関数、双曲線関数などで表すことができる。曲線L4で示される近似曲線は、指数関数で表すことができる。具体的には、所定関数F(Vd_ref)は、(式3)で表すことができる。但し、磁極位置は、磁極位置Xで表す。このように、所定関数F(Vd_ref)は、係数Aおよび係数B、並びに、自然対数expを用いて、指数関数で表すことができる。
【0074】
【0075】
第二算出部73は、種々の方法により、係数Aおよび係数Bを導出して、推定磁極位置EP0を算出することができる。例えば、第二算出部73は、最小二乗法によって推定磁極位置EP0を算出することができる。最小二乗法は、所定関数F(Vd_ref)と測定点との偏差の二乗和が最小になるように、近似曲線の係数(上記の例では、係数Aおよび係数B)を算出する。
【0076】
図10は、
図9の一部を拡大した拡大図である。同図では、曲線L4を表す所定関数F(Vd_ref)と仮磁極位置AP1との偏差が偏差DF1で示されている。同様に、所定関数F(Vd_ref)と仮磁極位置AP2との偏差が偏差DF2で示されている。また、所定関数F(Vd_ref)と仮磁極位置AP3との偏差が偏差DF3で示されている。第二算出部73は、偏差DF1の二乗と、偏差DF2の二乗と、偏差DF3の二乗とを加算した二乗和が最小になるように、係数Aおよび係数Bを決定する。この場合、推定磁極位置EP0は、係数Aであり、(式4)で表すことができる。
【0077】
【0078】
所定関数F(Vd_ref)は、分数関数で表すこともできる。例えば、電動機50のコイル(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)に発生する磁力は、コイルに流れる電流に比例する。磁極位置52pの推定に用いる位置指令θ_refの振動周波数が小さくなるほど、コイルに印加する電圧と、コイルに流れる電流は、比例するものとみなすことができ、コイルに印加する電圧と、コイルに発生する磁力は、比例すると言える。
【0079】
また、可動子52が磁極位置付近にあるとき、磁気吸引力と、磁極位置から可動子52までの距離は、比例するものとして、運動方程式を導出することができる。この場合の運動方程式は、(式5)で表すことができる。但し、係数Kは、コイルに印加する電圧の電圧指令と磁気吸引力の比例係数であり、係数Gは、定数、係数Jは、可動子52の慣性を表す。また、磁極位置は、磁極位置Xで表す。(式5)で表される運動系が十分に減衰し振動せずに十分な時間が経過したときの磁極位置は、(式6)で表すことができ、推定磁極位置EP0に漸近する分数関数で表現することができる。
【0080】
【0081】
【0082】
可動子52に外力F0が印加されている場合、位置センサ60dは、外力F0が印加されている可動子52の固定子51に対する位置を検出する。例えば、外力F0は、重力である。重力は、鉛直方向(Z方向)の下方に向かって作用する。そのため、電動機50の出力トルクが同じで、可動子52を鉛直方向(Z方向)の下方に向かって移動させる場合、可動子52を鉛直方向(Z方向)の上方に向かって移動させる場合と比べて、可動子52が移動し易くなる。第一算出部72が所定の振幅および周波数で、鉛直方向(Z方向)に沿って可動子52を振動して仮磁極位置AP0を算出する場合も同様の状況になる。
【0083】
その結果、
図9に示すように、重力のために、仮磁極位置AP0は、同図に示す0位置(正しい可動子52の磁極位置52p)よりも鉛直方向(Z方向)の下方位置に推定される。このような状況においても、第二算出部73は、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係に基づいて、推定磁極位置EP0を算出することができる。推定磁極位置EP0は、仮磁極位置AP0と比べて、0位置(正しい可動子52の磁極位置52p)に十分、近似している。よって、磁極位置推定装置70は、磁極位置の推定精度を向上させることができる。
【0084】
なお、外力F0は、重力に限定されない。例えば、位置センサ60dは、水平方向に作用する外力F0が印加されている可動子52の固定子51に対する位置を検出することもできる。この場合、仮磁極位置AP0は、水平方向に移動可能な可動子52の移動方向のうち、外力F0が作用する方向に、位置ずれが生じ易くなる。このような状況においても、第二算出部73は、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係に基づいて、推定磁極位置EP0を算出することができる。
【0085】
磁極位置推定装置70は、種々の電動機制御システム10に適用することができる。例えば、既述されている外力F0が重力の場合、電動機50は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びるロボットアーム820aを重力に抗して駆動することができる。上記のロボットアーム820aを備えるシステムとして、例えば、超音波診断システム810が挙げられる。
【0086】
1-4.超音波診断システム810の構成例
図11は、超音波診断システム810の一例を示している。なお、同図において第一延伸部821の水平部821bの延伸方向をX方向とする。また、水平面においてX方向と直交する方向をY方向とする。さらに、X方向およびY方向と直交する方向を鉛直方向(Z方向)とする。
【0087】
超音波診断システム810は、ロボット820にエンドエフェクタEF0であるプローブPB0を保持し、プローブPB0が被験者の検査対象部(例えば、皮膚)に押し当てられるようにロボット820を駆動することにより超音波診断を行う医療用装置である。実施形態の超音波診断システム810は、被験者の検査対象部に超音波を当て、検査対象部の断面画像を取得し、取得した画像から検査対象部の状態を確認するエコー診断に用いられる。
図11および
図12に示すように、超音波診断システム810は、ロボット820と、超音波診断装置100とを備えている。
【0088】
また、超音波診断装置100は、プローブPB0と、プローブPB0がケーブルを介して接続されている本体部102とを備えている。本体部102は、制御部103と、入力部104と、画像処理部105と、表示部106とを備えている。制御部103は、装置全体の制御を行う。入力部104は、検査者が診断開始などの指示を入力する。画像処理部105は、プローブPB0から送信された信号を処理して超音波画像を生成する。表示部106は、画像処理部105によって生成された超音波画像を表示する。
【0089】
ロボット820は、ロボットアーム820aと、ロボット本体820bとを備えている。ロボット本体820bは、基台826と、昇降装置840とを備えている。ロボットアーム820aは、第一延伸部821と、第二延伸部822と、ベース825と、第一関節軸831と、第二関節軸832と、第三関節軸833と、第一延伸部駆動モータ835と、第二延伸部駆動モータ836と、姿勢保持装置837と、回転三軸機構850とを備えている。
【0090】
第一延伸部821の基端部は、第一関節軸831を介してベース825に連結されている。第一関節軸831の本体は、ベース825に固定されており、第一関節軸831の回転部は、第一延伸部821の基端部に接続されている。第一延伸部駆動モータ835は、第一関節軸831の本体に内蔵されており、第一関節軸831の回転部を回転軸(鉛直方向(Z方向)に沿った方向の軸)回りに回転させることにより、第一延伸部821を水平面(XY平面)に沿って回動(旋回)させる。第一関節軸831は、位置センサを内蔵しており、位置センサは、第一延伸部駆動モータ835の位置(回転位置)を検出する。位置センサは、例えば、ロータリエンコーダなどの公知の位置センサを用いることができる。
【0091】
第一延伸部821は、鉛直方向(Z方向)に沿って延びる鉛直部821aと、鉛直部821aの上端部から水平方向に向けて延びる水平部821bとを備えている。鉛直部821aの下端部は、第一関節軸831の回転部に接続されている。水平部821bの基端部は、鉛直部821aの上端部に接続され、水平部821bの先端部は、第二関節軸832の回転部に接続されている。なお、第一延伸部821は、鉛直部821aを省略することもできる。
【0092】
第二延伸部822の基端部は、第二関節軸832を介して第一延伸部821の先端部に連結されている。第二関節軸832の本体は、第二延伸部822の基端部に固定されており、第二関節軸832の回転部は、第一延伸部821の先端部に接続されている。第二延伸部駆動モータ836は、第二関節軸832の本体に内蔵されており、第二関節軸832の回転部を回転軸(鉛直方向(Z方向)に沿った方向の軸)回りに回転させることにより、第一延伸部821を水平面(XY平面)に沿って回動(旋回)させる。第二関節軸832は、位置センサを内蔵しており、位置センサは、第二延伸部駆動モータ836の位置(回転位置)を検出する。位置センサは、例えば、ロータリエンコーダなどの公知の位置センサを用いることができる。
【0093】
昇降装置840は、基台826上に設置されており、ベース825を基台826に対して昇降させる。基台826は、車輪826aを備えている。
図11および
図12に示すように、昇降装置840は、スライダ841と、ガイド部材842と、ボールねじ軸843と、昇降用駆動モータ844とを備えている。スライダ841は、ベース825に固定されている。ガイド部材842は、基台826に固定されると共に鉛直方向(Z方向)に沿って設けられており、スライダ841の移動を案内する。ボールねじ軸843は、鉛直方向(Z方向)に沿って設けられている昇降軸であり、スライダ841に固定されているボールねじナットが回転可能に連結されている。昇降用駆動モータ844は、ボールねじ軸843を回転駆動する。
【0094】
昇降装置840は、昇降用駆動モータ844によりボールねじ軸843を回転駆動することにより、スライダ841に固定されているベース825をガイド部材842に沿って鉛直方向(Z方向)に移動させる。昇降装置840は、位置センサを内蔵しており、位置センサは、昇降用駆動モータ844の位置(昇降位置)を検出する。位置センサは、例えば、リニアエンコーダなどの公知の位置センサを用いることができる。
【0095】
回転三軸機構850は、鉛直方向(Z方向)に沿って設けられる第三関節軸833を介して第二延伸部822の先端部に連結されている。回転三軸機構850は、互いに直交する第一回転軸851、第二回転軸852および先端軸の第三回転軸853と、第一回転軸851を回転させる第一回転軸駆動モータ855と、第二回転軸852を回転させる第二回転軸駆動モータ856と、第三回転軸853を駆動する先端軸駆動装置860とを備える。第一回転軸851は、第三関節軸833に対して直交姿勢で支持されている。第二回転軸852は、第一回転軸851に対して直交姿勢で支持されている。第三回転軸853は、第二回転軸852に対して直交姿勢で支持されている。第三回転軸853には、第三回転軸853と同軸上に位置するようにエンドエフェクタEF0としてプローブPB0が保持されている。
【0096】
回転三軸機構850は、第一位置センサと、第二位置センサとを備えている。第一位置センサは、第一回転軸駆動モータ855の位置(回転位置)を検出する。第二位置センサは、第二回転軸駆動モータ856の位置(回転位置)を検出する。先端軸駆動装置860は、第三回転軸853を回転駆動する駆動モータと、当該駆動モータの位置(回転位置)を検出する第三位置センサとを備えている。第一位置センサ、第二位置センサおよび第三位置センサは、例えば、ロータリエンコーダなどの公知の位置センサを用いることができる。
【0097】
実施形態では、ロボット820は、並進運動および回転運動の組み合わせにより、第三回転軸853のプローブPB0を、任意の姿勢で任意の位置に移動させることができる。並進運動は、第一延伸部駆動モータ835と、第二延伸部駆動モータ836と、昇降装置840とによるX方向、Y方向および鉛直方向(Z方向)の三方向の運動をいう。回転運動は、回転三軸機構850によるX軸回り(ピッチング)、Y軸回り(ローリング)およびZ軸回り(ヨーイング)の三方向の運動をいう。
【0098】
姿勢保持装置837は、第三関節軸833に内蔵されており、姿勢保持用モータを備えている。第三関節軸833は、位置センサを内蔵しており、位置センサは、姿勢保持用モータの位置(回転位置)を検出する。位置センサは、例えば、ロータリエンコーダなどの公知の位置センサを用いることができる。姿勢保持装置837は、第一延伸部821および第二延伸部822の姿勢によらず回転三軸機構850の姿勢(第一回転軸851の向き)を一定の向きに保持する。姿勢保持装置837は、第一回転軸851の軸方向がX方向と一致するように、第一関節軸831の回転角度と第二関節軸832の回転角度とに基づいて、第三関節軸833の回転角度を制御する。これにより、三方向の並進運動の制御と、三方向の回転運動の制御とをそれぞれ独立して行うことができ、制御が容易になる。
【0099】
1-5.他の形態
電圧指令設定部71は、
図13に示す磁極検出用指令部69を用いて、d軸電圧指令Vd_refに基づいてd軸電圧Vdを印加し、固定子51に対して可動子52を所定の振幅および周波数で振動することもできる。磁極検出用指令部69は、磁極検出の際の各指令(
図7に示す位置指令θ_ref、
図6に示すd軸電圧指令Vd_refの電圧変化に相当する階段状に増加するd軸電流指令Id_refおよびゼロに設定されるq軸電流指令Iq_ref)を生成する。また、磁極検出用指令部69は、切り替え器69a,69b,69cを備えている。
【0100】
切り替え器69aは、磁極検出の際に、位置センサ60dによって検出された可動子位置θを、
図7に示す位置指令θ_refに切り替えて、三相/二相変換部61および二相/三相変換部67に入力可能にする。切り替え器69bは、磁極検出の際に、上位システムから出力されたd軸電流指令Id_refを、階段状に増加するd軸電流指令Id_refに切り替えて、d軸電流制御部66の減算器66aに入力可能にする。切り替え器69cは、磁極検出の際に、速度制御部64によって算出されたq軸電流指令Iq_refを、ゼロに切り替えて、q軸電流制御部65の減算器65aに入力可能にする。これにより、電流フィードバック制御が行われて、
図6に示すd軸電圧指令Vd_refが生成される。また、磁極検出用指令部69は、
図7に示す位置指令θ_refによって回転磁界を発生させて、可動子52を振動させることができる。
【0101】
2.磁極位置推定方法
磁極位置推定装置70について既述されていることは、磁極位置推定方法についても同様に言える。具体的には、磁極位置推定方法は、電圧指令設定工程と、第一算出工程と、第二算出工程とを備える。電圧指令設定工程は、電圧指令設定部71が行う制御に相当する。第一算出工程は、第一算出部72が行う制御に相当する。第二算出工程は、第二算出部73が行う制御に相当する。
【0102】
3.実施形態の効果の一例
磁極位置推定装置70によれば、複数のd軸電圧指令Vd_refごとに仮磁極位置AP0を算出して、d軸電圧指令Vd_refおよび仮磁極位置AP0の関係に基づいて、推定磁極位置EP0を算出することができる。磁極位置推定装置70について既述されていることは、磁極位置推定方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0103】
50:電動機、51:固定子、52:可動子、52p:磁極位置、
60d:位置センサ、70:磁極位置推定装置、71:電圧指令設定部、
72:第一算出部、73:第二算出部、820a:ロボットアーム、
AP0:仮磁極位置、EP0:推定磁極位置、F0:外力、
F(Vd_ref):所定関数、Vd_ref:d軸電圧指令、
Vd:d軸電圧。