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特開2025-108695プラント解体管理装置、プラント解体管理方法及びプラント解体管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025108695
(43)【公開日】2025-07-23
(54)【発明の名称】プラント解体管理装置、プラント解体管理方法及びプラント解体管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20250715BHJP
【FI】
G21F9/30 535F
G21F9/30 T
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025070489
(22)【出願日】2025-04-22
(62)【分割の表示】P 2024063118の分割
【原出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 透
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 高史
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(57)【要約】
【課題】原子力発電所等の廃棄物の利害関係者が効率的に情報を共有する。
【解決手段】本発明のプラント解体管理装置は、プラントから排出される廃棄物の設計情報及び前記廃棄物の放射線量に基づき、前記廃棄物が前記プラントから排出された後再利用又は最終処分されるまでの工程表である処分計画情報を計画する処分計画作成部と、前記計画された処分計画情報を記憶する記憶部と、を備え、前記処分計画作成部は、複数の原子炉間又は前記廃棄物を取り扱う複数の主体間で共同使用可能な処理設備の使用可否の情報を前記記憶部に記憶すること、を特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントから排出される廃棄物の設計情報及び前記廃棄物の放射線量に基づき、前記廃棄物が前記プラントから排出された後再利用又は最終処分されるまでの工程表である処分計画情報を計画する処分計画作成部と、
前記計画された処分計画情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記処分計画作成部は、
複数の原子炉間又は前記廃棄物を取り扱う複数の主体間で共同使用可能な処理設備の使用可否の情報を前記記憶部に記憶すること、
を特徴とするプラント解体管理装置。
【請求項2】
前記廃棄物は、
原子力発電所の廃炉に伴い発生する使用済み燃料以外の設備であること、
を特徴とする請求項1に記載のプラント解体管理装置。
【請求項3】
前記処分計画作成部は、
前記廃棄物の一時保管に要する保管料金情報、及び、前記廃棄物の搬送料金情報を基に前記処分計画情報の一部である保管方法及び搬送業者を決定すること、
を特徴とする請求項1に記載のプラント解体管理装置。
【請求項4】
前記処分計画作成部は、
処分計画を実施した実施報告情報に基づいて計画に変更がある場合、変更後の内容を処分計画情報として前記記憶部に上書きすること、
を特徴とする請求項1に記載のプラント解体管理装置。
【請求項5】
プラント解体管理装置の処分計画作成部は、
プラントから排出される廃棄物の設計情報及び前記廃棄物の放射線量に基づき、前記廃棄物が前記プラントから排出された後再利用又は最終処分されるまでの工程表である処分計画情報を計画し、
プラント解体管理装置の記憶部は、
前記計画された処分計画情報を記憶し、
前記処分計画作成部は、さらに、
複数の原子炉間又は前記廃棄物を取り扱う複数の主体間で共同使用可能な処理設備の使用可否の情報を前記記憶部に記憶すること、
を特徴とするプラント解体管理装置のプラント解体管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
プラントから排出される廃棄物の設計情報及び前記廃棄物の放射線量に基づき、前記廃棄物が前記プラントから排出された後再利用又は最終処分されるまでの工程表である処分計画情報を計画する処分計画作成部と、
前記計画された処分計画情報を記憶する記憶部と、
して機能させるためのプラント解体管理プログラムであって、
前記処分計画作成部に対して、さらに、
複数の原子炉間又は前記廃棄物を取り扱う複数の主体間で共同使用可能な処理設備の使用可否の情報を前記記憶部に記憶する処理を実行させること、
を特徴とするプラント解体管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント解体管理装置、プラント解体管理方法及びプラント解体管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所は、その使命を終えると、長期間に亘って計画的に廃炉される。廃炉に伴い発生する廃棄物のうち放射性の廃棄物は、人間環境に影響を与えないように安全な場所に処分される。放射性ではない廃棄物は、一般的な産業廃棄物として処分される場合もあるし、他に再利用されることもある。いずれにしても、廃炉決定から処分及び再利用までの期間において、廃棄物を正確かつ効率的に管理することが重要である。
【0003】
特許文献1の解体梱包方法は、原子力発電所から排出された配管、機器等の廃棄物を処分施設に搬送する前提として、廃棄物を解体してコンテナに収納する計画を作成する。特許文献2の放射性固体廃棄物処理方法は、放射性固体廃棄物の各部分の放射線量を計算した結果に基づいて、処分方法が異なる複数の部分に放射性固体廃棄物を分割する。
【0004】
特許文献3の原子力施設解体廃棄物の管理方法は、廃棄物の放射線量を解体前に特定し、解体後の個々の廃棄物にバーコード等を付すとともに、バーコード等に記憶された情報を最終処分に至るまでコンピュータで管理する。バーコード等には、廃棄物番号、発生元、放射線量、容器への収納記録、容器表面の放射線量等が記憶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/39253号
【特許文献2】特開2002-207098号公報
【特許文献3】特開2001-141887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
廃炉決定から再利用又は最終処分に至るまでの期間、原子炉メーカ、原子力発電所、処理施設、一時保管施設、搬送業者、再利用施設、最終処分施設等の事業者を含む、多くの利害関係者が廃棄物に関わることになる。利害関係者は、それぞれの立場で、自身が関わる廃棄物についての過去又は将来の情報を必要とする。その後、再利用又は最終処分が終了した段階に至っても、同様である。
【0007】
しかしながら、特許文献1は、コンテナのサイズ、作業員の被爆量等の制約条件に基づき、廃棄物をどのよう解体しコンテナに収納するかということに焦点を当てており、利害関係者による廃棄物の情報共有については言及していない。特許文献2は、結果として作成される固体(インゴット)の放射線量を調整することに焦点を当ており、やはり、利害関係者による廃棄物の情報共有については言及していない。特許文献3は、廃棄物のトレーサビリティを一応は意識しているが、利害関係者が廃棄物の情報を共同利用することについては、具体的に言及していない。
そこで、原子力発電所等の廃棄物の利害関係者が効率的に情報を共有することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラント解体管理装置は、プラントから排出される廃棄物の設計情報及び前記廃棄物の放射線量に基づき、前記廃棄物が前記プラントから排出された後再利用又は最終処分されるまでの工程表である処分計画情報を計画する処分計画作成部と、前記計画された処分計画情報を記憶する記憶部と、を備え、前記処分計画作成部は、複数の原子炉間又は前記廃棄物を取り扱う複数の主体間で共同使用可能な処理設備の使用可否の情報を前記記憶部に記憶すること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原子力発電所等の廃棄物の利害関係者が効率的に情報を共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】放射性廃棄物の再利用及び処分方法を説明する図である
図2】廃棄物の流れを説明する図である。
図3】系統及び放射線源を説明する図である。
図4】プラント解体管理装置の構成等を説明する図である。
図5】設計情報の一例を示す図である。
図6】除染情報の一例を示す図である。
図7】解体情報の一例を示す図である。
図8】計測情報の一例を示す図である。
図9】処分計画情報の一例を示す図である。
図10】廃棄物履歴情報の一例を示す図である。
図11】計画作成処理手順のフローチャートである。
図12】計測処理手順のフローチャートである。
図13】履歴作成処理手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、原子力発電所の廃炉に伴い発生する廃棄物を再利用又は最終処分する例である。本発明は、沸騰水型原子炉にも圧力水型原子炉にも適用可能であり、放射性廃棄物を排出する一般のプラントにも適用可能である。
【0012】
(放射性廃棄物の再利用及び処分方法)
図1は、放射性廃棄物の再利用及び処分方法を説明する図である。原子力発電所が通常に運転されている期間、使用済燃料が発生する。使用済燃料から、ウラン及びプルトニウムが抽出される。これらは、燃料そのものとして、再利用され得る(行51a)。抽出後に残った廃液は、“高レベル放射性廃棄物”としてガラス固化され金属容器に収納され、最終的に“地層処分”される。地層処分とは、地下300m以深の岩盤中に埋設することである(行51b)。
【0013】
原子力発電所の廃炉決定後、原子力発電所に保管されている使用済燃料は、運転中と同様に、再利用及び最終処分される。廃炉決定後に独特であるのは、使用済燃料以外の諸設備(原子炉、発電機、復水器、配管等)が廃棄物として一度に多量に発生することである。これらの諸設備は、“低レベル放射線廃棄物”、及び、放射線を発しないその他の廃棄物を含む(行52a~52e)。本発明の対象は、主として、この諸設備である。
【0014】
低レベル放射性廃棄物のうち、放射線量が高いもの(例えば、炉心からの距離が小さい制御棒等)は、解体され、容器に収納されたうえで、“中深度処分”される。中深度処分とは、地下70m以深の地中に埋設することである(行52a)。低レベル放射性廃棄物のうち、放射線量が中程度であるもの(例えば、炉心からの距離が中程度であるポンプ等)は、解体され、容器に収納されたうえで、“ピット処分”される。ピット処分とは、浅い地中に設置したコンクリート製のピットに埋設することである(行52b)。
【0015】
低レベル放射性廃棄物のうち、放射線量が低いもの(例えば、炉心からの距離が大きいコンクリートガラ等)は、容器に収納されたうえで、“トレンチ処分”される。トレンチ処分とは、浅い地中にピットのような人工構築物を設置することなく埋設することである(行52c)。低レベル放射性廃棄物のうち、人間の健康に影響を与えない程度に放射線量が微小であるもの(“クリアランス物”と呼ばれる)は、特別に、一般の産業廃棄物とみなされる。したがって、クリアランス物は、産業廃棄物として最終処分されるほか、再利用可能となり得る(行52d)。
【0016】
放射線を発しない廃棄物は、当然、産業廃棄物として再利用又は最終処分される(行52e)。原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物のうち、重量比で9割以上は、放射線を発しない廃棄物であると試算されている。
【0017】
(廃棄物の流れ)
図2は、廃棄物の流れを説明する図である。図2は、廃炉決定後に発生する廃棄物として、配管68が再利用又は最終処分される例である。原子力発電所62(原子力発電事業者)は、配管68の放射線量(単位は例えば“mSv/時”である)を計測する。この計測は、計測器を使用した実測であってもよいし、メーカ61が作成した設計情報に基づく推定(論理計算)であってもよい。以降、様々な工程で計測が繰り返されることになる。配管68は、例えば図3に示すような多くの部分からなる“系統”であり、その部分ごとに放射線量は異なる。したがって、ここでの計測は、配管の各部分を対象とする。
【0018】
原子力発電所62は、計測結果に基づき、必要に応じ配管68を除染する。除染とは、廃棄物から放射線源を除去する作業である(詳細後記)。以降、任意の工程で除染が繰り返され得る。原子力発電所62は、配管68を解体する。解体とは、除染、搬送、再利用、最終処分等を容易にするために、又は、放射線源を分散するために、廃棄物をより小さな単位(部分)に分割することである。以降、任意の工程で解体が繰り返され得る。その後、解体された配管68は、処理施設63に搬送される。以降、説明の簡略化のため、解体された結果発生した配管68の部分も“配管68”と呼ぶ。
【0019】
処理施設63(処理施設事業者)は、配管68をさらに解体する。解体された配管68のうち、低レベル放射性廃棄物は一時保管施設65に搬送される。図2では、処理施設63から出て行く配管68は、配管らしい外形を保っているが、細かく破砕されている場合もある。クリアランス物は、再利用のための処理を目的とする他の施設に搬送される。再利用の例は、原子力発電所内のベンチ、低レベル放射性廃棄物を格納する容器等である。なお、“再利用施設”とは、これらのユーザである。
【0020】
一時保管施設65(廃棄物の一時保管施設事業者)は、多くの処理施設から搬送されてきた解体された配管68を所定の容器71に収納し、指定された場所に一時的に保管し、最終処分施設66が利用可能になるのを待つ。最終処分施設66(廃棄物の最終処分施設事業者)は、一時保管施設65から容器71を受け入れ、地中に埋設する。一時保管施設及び最終処分施設のそれぞれは、複数存在してもよい。さらに、処理施設及び一時保管施設は、原子力発電所に近接して配置されていてもよい。
【0021】
(収益及びモバイル処理設備)
一般的に、原子力発電所、原子炉又はより細かい系統単位で、収益管理が行われている。収益は、例えば“収益=発電収入-発電費用-廃炉費用+再利用収入”で定義される。廃棄物の一部が高額で再利用資材として売却できれば再利用収入は向上し、収益も向上する。また、例えば、廃棄物の除染及び解体に際し、複数の原子炉間又は複数の利害関係者間で移動・共同使用可能なモバイル処理設備(除染装置、カッタ等)を共用できれば、廃炉費用は下がり収益は向上する。
【0022】
(系統及び放射線源)
図3は、系統及び放射線源を説明する図である。系統49は、ポンプ41、バルブ42及び43、並びに、個々の配管44~47を有する。これらは、一体的な設備群となって、例えば復水器から原子炉圧力容器に水を搬送する。水が直接原子炉圧力容器を通る沸騰水型原子炉の場合、系統49は、僅かに放射線で汚染されている可能性がある。そうでない場合であっても、一部の配管45の内部又は外部に、放射性物質48が付着している場合もある。この場合、計測器で系統49の各部分の放射線量を計測すると、配管45の表面及び周辺の放射線量のみが他と比較して有意に大きくなっていることがわかる。このように放射線の源となる放射性物質は、“放射線源”とも呼ばれる。
【0023】
(除染方法)
放射線源の付着等がなく、系統49のどの部分も一様に高い放射線量を示す場合、系統を解体するまでもなく、系統全体に対し化学除染を行うことが可能である。化学除染とは、例えば系統49に直接除染装置を連結し、薬剤(還元剤等)を流す方法である。
【0024】
ある部分に放射線源が付着した結果、系統49のうち放射線源が付着している部分の放射線量のみが高い場合、系統49を解体し配管45を取り外し、配管45に対し又は配管45を更に半分に解体したものに対し機械除染を行うことが可能である。機械除染とは、例えば、配管の部分に対し研磨剤を噴射する又はブラシで擦る方法である。
【0025】
さらに、作業員が系統49を安全に解体できない程度に配管45の放射線量が高い場合、ロボット等に系統49の化学除染をさせたうえで配管45を取り外させ、配管45に対して機械除染をさせることもできる。
【0026】
(プラント解体管理装置の構成等)
図4は、プラント解体管理装置1の構成等を説明する図である。プラント解体管理装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マウス、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、設計情報31、除染情報32、解体情報33、計測情報34、処分計画情報35及び廃棄物履歴情報36(いずれも詳細後記)を格納している。
【0027】
主記憶装置14における処分計画作成部21、情報収集部22及び履歴提供部23は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出し主記憶装置14にロードすることによって、各プログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15は、プラント解体管理装置1から独立した構成であってもよい。プラント解体管理装置1は、ネットワーク8を介して以下の各装置と通信可能である。
【0028】
図2の原子力発電所62に配置される発電所端末装置2
図2の処理施設63に配置される処理施設端末装置3
図2の一時保管施設65に配置される一時保管施設端末装置4
図2の最終処分施設66に配置される最終処分施設端末装置5
・再利用施設に配置される再利用施設端末装置6
・搬送業者(図示せず)に配置される搬送者端末装置7
【0029】
(設計情報)
図5は、設計情報31の一例を示す図である。設計情報31は、例えばメーカから出荷される製品ごとに作成される。設計情報31においては、以下の情報が相互に関連付けて記憶されている。
製品ID(欄101)は、将来廃棄物となる製品を一意に特定する識別子である。
製造場所(欄102)は、製品が製造されたメーカ及び工場の名称である。
製品種類(欄103)は、製品の種類をその機能で表現した文言である。ここでの“復水器2次側配管ユニット”は、例えば図3の系統49に相当する。
出荷年月日(欄104)は、製品が出荷された年月日である。
【0030】
用途(欄105)は、配管中を流れる液体の種類である。
素材(欄106)は、製品を構成する素材である。
内径(欄107)は、配管の内径である。なお、“#”は、異なる数値を省略的に示している(以下同様)。配管の内径は、系統を構成する配管ごとに記憶されていてもよい(外径についても同様)。
外径(欄108)は、配管の外径である。
【0031】
長さ(欄109)は、系統の長さである。
流量(欄110)は、単位時間当たりに系統を流れる液体の体積の最大値である。
設計図面(欄111)は、メーカが作成した設計図面である。設計図面は、3次元のCADデータ又は点群データの型式を有していてもよい。設計図面は、製品の外形を示す図の他に、通常の状態で使用された場合に想定される放射線量を部分ごとに示す表、運転停止後の放射線量の減衰特性を部分ごとに示すグラフ、製品の性能を示すグラフ等を含む。
【0032】
(除染情報)
図6は、除染情報32の一例を示す図である。廃棄物が除染される都度、プラント解体管理装置1は、除染情報32のレコードを作成するものとする。除染情報32においては、以下の情報が相互に関連付けて記憶されている。
廃棄物ID(欄121)は、廃棄物を一意に特定する識別子である。最初の解体前の廃棄物IDは、製品IDと同じである。廃棄物IDは、解体前の系統等を特定する場合もあるし、解体後の部分を特定する場合もある。本実施形態では、分かりやすさのために、“P01”が解体された結果発生した部分には“P011”、“P012”等が付される(番号の階層構造)。個々の廃棄物には、廃棄物IDが任意の方法でタグ付けされる。
【0033】
除染日(欄122)は、廃棄物が除染された年月日である。
除染者ID(欄123)は、廃棄物を除染した利害関係者を一意に特定する識別子である。利害関係者とは、廃棄物を取り扱う主体(法人)であり、具体的には、図2の原子力発電所62、処理施設63、一時保管施設65、最終処分施設66、並びに、図示しない廃棄物搬送業者及び再利用施設である。
除染方法(欄124)は、実施された除染の方法である。前記した化学除染及び機械除染以外の方法(電気化学的除染)が記憶されてもよい。さらに、使用される薬剤、機材等に応じて、除染方法がより細分化されて記憶されてもよい。
【0034】
除染係数(欄125)は、廃棄物の除染直前の放射線量を、除染直後の放射線量で除算した値である。プラント解体管理装置1は、除染係数に基づき除染を再度行う必要性の有無を判断する。
二次廃棄物(欄126)は、除染によって発生する2次的な廃棄物であり、除染対象の廃棄物から除去した放射性物質を担持している場合もあるし、化学変化等の結果、放射性物質をもはや担持していない場合もある。二次廃棄物が引き続き放射性物質を担持している場合は、それ自体が別の廃棄物として管理され(廃棄物IDが新たに付され)、蒸発凝縮等の処理対象となる。二次廃棄物も、本来の廃棄物と同様トレースの対象である。
【0035】
(解体情報33)
図7は、解体情報33の一例を示す図である。廃棄物が解体される都度、プラント解体管理装置1は、解体情報33のレコードを作成するものとする。解体情報33においては、以下の情報が相互に関連付けて記憶されている。
廃棄物ID(欄131)は、図6の廃棄物IDと同じである。但し、ここでの廃棄物IDは、解体前の何を解体した結果解体後に何が発生したかを明らかにするために、解体前の廃棄物IDと解体後の廃棄物IDとの組合せになっている。
【0036】
解体日(欄132)は、廃棄物が解体された年月日である。
解体者ID(欄133)は、廃棄物を解体した利害関係者(例えば、図2の符号62)を一意に特定する識別子である。
解体方法(欄134)は、実施された解体の方法である。ここでは、解体の具体的な方法の他、解体に使用された重機、道具等が記憶されてもよい。なお、解体方法は、“大きさが○mm以下の破片になるまでハンマで粉砕する”等であってもよい。この場合、解体位置欄135を空欄とし、解体後の廃棄物IDを、解体前の廃棄物IDと同じとしてもよい(粒状の個体のそれぞれに廃棄物IDを採番しない)。
解体位置(欄135)は、解体前の廃棄物をどの位置で解体(切断)したかを示す情報である。
【0037】
(計測情報)
図8は、計測情報34の一例を示す図である。本実施形態では、廃棄物の除染又は解体の前後に、プラント解体管理装置1は、計測情報34のレコードを作成するものとする。計測情報34においては、以下の情報が相互に関連付けて記憶されている。
廃棄物ID(欄141)は、図6の廃棄物IDと同じである。
計測日(欄142)は、廃棄物の放射線量が計測された年月日である。
計測者ID(欄143)は、廃棄物の放射線量を計測した利害関係者(例えば、図2の符号63)を一意に特定する識別子である。
計測値(欄144)は、放射線量の値である。単位は、例えばmSv/時である。計測値は、廃棄物がクリアランス物に該当するか否かを判断する基準となる。
摘要(欄145)は、計測に係る任意の備忘的情報であり、ここでは、計測のタイミングである。
【0038】
(処分計画情報)
図9は、処分計画情報35の一例を示す図である。処分計画情報35は、廃炉の決定後廃棄物が再利用又は最終処分されるまでの、解体前の廃棄物(系統等)ごとの工程表である。工程は、解体、除染、一時保管、再利用、及び、最終処分を含む。まず、プラント解体管理装置1は、処分計画情報35を初期作成する。この段階では、処分計画情報35の内容は、“計画”である。その後、工程が実際に進捗すると、工程が計画通りに実行される場合と、そうではない場合とが発生する。図4の各端末装置2~6は、自身が関連する工程の実施報告をプラント解体管理装置1に送信する。プラント解体管理装置1は、受信した実施報告が計画と異なる場合、受信した実施報告の内容で計画を上書き更新する。
【0039】
処分計画情報35においては、解体前情報(欄161)、一次解体情報(欄162)、二次解体情報(欄163)、一時保管情報(欄164)、最終処分情報(欄165)、再利用情報(欄166)及び収益(欄167)が相互に関連付けて記憶されている。一次解体を行うのは、例えば図2の原子力発電所62であり、二次解体を行うのは、例えば図2の処理施設63である。
【0040】
解体前情報欄161を見ると、以下のことがわかる。
・廃棄物(系統)“P01”は、まず、原子力発電所“F01”において、解体前の全体が化学除染される。プラント解体管理装置1は、廃棄物“P01”の放射線量に応じて解体の要否を判断する。また、プラント解体管理装置1は、放射線量及び設計情報31(素材、形状等)に基づき、除染方法を決定する(以下同様)。
・除染方法に下線が施されている。このことは、除染が、前記したモバイル処理設備によって行われることを示す(後記する解体方法についても同様)。
【0041】
一次解体情報欄162を見ると、以下のことがわかる。
・廃棄物“P01”は、次に、処理施設“F01”において、廃棄物“P011”と廃棄物“P012”とに解体される。
・“F01”は、解体前情報における原子力発電所を特定するIDである。つまり、原子力発電所内で、当該解体が行われる。
・当該解体は、廃棄物“P01”の“左から○mでボルトを外す”ことによって行われる。プラント解体管理装置1は、廃棄物“P01”における放射線量の分布から放射線源を推定し、解体位置、解体後の廃棄物の個数を決定し、設計情報31(素材等)に基づき、解体するための工具等を決定する(以下同様)。
【0042】
二次解体情報欄163を見ると、以下のことがわかる。
・次に、処理施設“F02”において、廃棄物“P011”は、廃棄物“P0111”と廃棄物“P0112”とに解体される。
・当該解体は、廃棄物“P011”を“左から●mで切断する”ことによって行われる。
・同じ処理施設“F02”において、廃棄物“P012”は、廃棄物“P0121”と廃棄物“P0122”とに解体される。
・当該解体は、廃棄物“P012”を“中央で切断”することによって行われる。当該解体は、前記したモバイル処理設備によって行われる。
・解体後の廃棄物“P0111”、“P0112” 、“P0121”及び “P0122”は、機械除染される。ここで機械除染が選択されたのは、例えば、系統が2段階で解体された結果、機械除染(ロボットによるブラシかけ等)が可能になったからである。
【0043】
一時保管情報欄164を見ると、以下のことがわかる。
・次に、一時保管施設“F03”において、廃棄物のうち“P0111”及び“P0112”は“A型容器に収容”されて一時保管される。一時保管は、最終処分施設又は再利用施設が決まるまでの措置である。
・同じ保管施設“F03”において、廃棄物のうち“P0121”及び“P0122”は“B型容器に収容”されて一時保管される。
・プラント解体管理装置1は、廃棄物の放射線量、設計情報31、解体後のサイズ等に基づき、容器の種類を決定する。
【0044】
最終処分情報欄165を見ると、以下のことがわかる。
・最後に、最終処分施設“F04”において、A型容器に収容された廃棄物“P0111”及び廃棄物“P0112”は、ピット処分される。
【0045】
再利用情報欄166を見ると、以下のことがわかる。
・一方、再利用施設“F05”において、B型容器に収容された廃棄物“P0121”及び廃棄物“P0122”は、容器から取り出され資材となる。
【0046】
収益(欄167)は、前記した収益である。ここでは、系統単位で収益管理が行われている。
【0047】
(廃棄物履歴情報)
図10は、廃棄物履歴情報36の一例を示す図である。図4の各端末装置2~7からの要求に応じて、プラント解体管理装置1は、解体後の廃棄物を含む廃棄物ごとに、その履歴を説明する廃棄物履歴情報36を作成する。廃棄物履歴情報36においては、以下の情報が相互に関連付けて記憶されている。
【0048】
廃棄物ID(欄171)は、図6の廃棄物IDと同じである。但し、ここでの廃棄物IDは、多くの場合、少なくとも1回解体された後の廃棄物を特定する。そして、各利害関係者は、それぞれの立場でここでの廃棄物に注目する。
原廃棄物ID(欄172)は、廃棄物ID欄171の廃棄物が解体される前のもとの廃棄物を一意に特定する識別子である。図10の例では、ある利害関係者が廃棄物“P0111”の履歴を要求している。廃棄物“P0111”は、もとの廃棄物(系統等)“P01”が、2回解体された結果発生したものである。
設計情報(欄173)は、製品“P01”の設計情報31のすべての内容である。
【0049】
除染履歴(欄174)は、例えば廃棄物“P0111”及びその解体前の廃棄物が、いつ、どの施設で、どのような方法で除染され、その除染における除染係数はいくらであったかを示す。除染日及び除染係数は予定であってもよい。
解体履歴(欄175)は、廃棄物“P0111”及びその解体前の廃棄物が、いつ、どの施設で、どのような方法で解体されたかを示す。解体日は、予定日であってもよい。
計測履歴(欄176)は、廃棄物“P0111”及びその解体前の廃棄物の放射線量が、いつ、どの施設で計測した結果、どのような値であったかを示す。なお、摘要欄は、その値を示した解体前の廃棄物を示している。
【0050】
一時保管情報(欄177)は、廃棄物“P0111”及びその解体前の廃棄物が、いつ、どの施設で、どのような容器で保管されていたかを示す。保管期間は、予定期間であってもよい。
最終処分情報(欄178)は、廃棄物“P0111”が、いつ、どの施設で、どのような処分方法で最終処分されたかを示す。処分日は、予定日であってもよい。
【0051】
(処理手順)
以降で、本実施形態の処理手順を説明する。処理手順は3つ存在し、それらは、計画作成処理手順、計測処理手順及び履歴作成処理手順である。
【0052】
(計画作成処理手順)
図11は、計画作成処理手順のフローチャートである。いま、ある原子力発電所の廃炉が決定されたとする。
ステップS201において、プラント解体管理装置1の処分計画作成部21は、廃棄物を特定する。具体的には、処分計画作成部21は、廃棄物のうちあるひと纏まりのもの(例えば系統)の廃棄物IDを発電所端末装置2から受信する。説明の都合上、ここでは、廃棄物ID“P01”(復水器2次側配管ユニット)が受信されたとする。
【0053】
ステップS202において、処分計画作成部21は、設計情報31(図5)を取得する。具体的には、処分計画作成部21は、廃棄物“P01”の設計情報31を、発電所端末装置2又はメーカ61から受信する。設計情報31に含まれる設計図面のうちの1枚は、製品“P01”が通常運転される場合の設計上の放射線量及び運転停止後の減衰特性を製品“P01”の部分(配管等)ごとに記載している。
【0054】
ステップS203において、処分計画作成部21は、計測情報34(図8)を取得する。具体的には、処分計画作成部21は、直近の過去の時点における廃棄物“P01”の計測情報34を発電所端末装置2から受信する。ここでの計測情報は、図8の計測情報34の1本のレコードの型式を有する。
【0055】
ステップS204において、処分計画作成部21は、放射線量を推定する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS202において取得した設計情報31(設計値)、及び、ステップS203において取得した計測情報34(実測値)を使用して、放射線量を推定する。ここで推定される放射線量は、例えば、現時点を起点とする、部分ごとの時系列放射線量である。放射線量が設計上充分低いはずの部分が、実際には高い放射線量を呈している場合もある。
【0056】
ステップS205において、処分計画作成部21は、放射線源を特定する。具体的には、処分計画作成部21は、廃棄物“P01”を構成する部分(配管等)のうち、最も放射線量が高いものを特定する。この部分には、放射線源が付着している可能性が高い。処分計画作成部21は、カメラをロボットに操作させて撮像した画像に基づき、放射線源(図3の符号48)を特定してもよい。
【0057】
ステップS206において、処分計画作成部21は、除染の要否を決定する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS205において特定した放射線量を以下のいずれかの閾値と比較する。
・閾値1:原子力発電所の作業員の安全を確保できる上限
・閾値2:目標とする処分方法又は再利用方法を適用するための上限
【0058】
ステップS207において、処分計画作成部21は、除染が必要であるか否かを判断する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS206における比較の結果、放射線量が閾値以上である場合(ステップS207“Yes”)、ステップS209に進み、それ以外の場合(ステップS207“No”)ステップS208に進む。
【0059】
ステップS208において、処分計画作成部21は、解体方法を決定する。具体的には、処分計画作成部21は、設計情報31(素材等)及び収容する容器の大きさ等に基づき廃棄物“P01”の解体方法を決定する。処分計画作成部21は、モバイル処理設備が使用可能である場合、その使用を決定する(ステップS209~S211でも同様)。
【0060】
ステップS209において、処分計画作成部21は、解体前の除染方法を決定する。具体的には、処分計画作成部21は、設計情報31及びステップS204において推定した放射線量に基づき、廃棄物“P01”に対する除染方法を決定する。廃棄物“P01”は、水が流れる系統であるので、処分計画作成部21は、化学除染を選択する。さらに、廃棄物“P01”の素材(耐熱鋼)及び放射線量に適した薬剤を選択する。
【0061】
ステップS210において、処分計画作成部21は、解体方法を決定する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS209において決定した除染方法で廃棄物“P01”が除染されていることを前提に、設計情報31、放射線量及び収容する容器の大きさ等に基づき廃棄物“P01”の解体方法を決定する。
【0062】
ステップS211において、処分計画作成部21は、解体後の除染方法を決定する。具体的には、処分計画作成部21は、設計情報31及び放射線量に基づき廃棄物“P01”が解体された後の各部分(配管等)に対する除染方法を決定する。このとき処分計画作成部21は、ステップS209において決定した除染方法で廃棄物“P01”が除染され、ステップS210において決定した解体方法で廃棄物“P01”が解体されていることを前提に、解体方法を決定する。ここで決定される除染方法は、例えば、半分に分割されている配管に対する機械除染である。
【0063】
ステップS209~S211の処理を繰り返すことによって、処分計画作成部21は、廃棄物“P01”を複数回にわけて段階的に除染・解体する計画を作成してもよい。
【0064】
ステップS212において、処分計画作成部21は、再利用及び最終処分を決定する。具体的には、第1に、処分計画作成部21は、再利用施設が必要としている再利用資材及び必要としているタイミングをその購入価格とともに各再利用施設の再利用施設端末装置6から受信する。
第2に、処分計画作成部21は、最終処分施設が将来的に受け入れ可能である廃棄物及び受け入れタイミングをその処分価格とともに各最終処分施設の最終処分施設端末装置5から受信する。
【0065】
第3に、処分計画作成部21は、廃棄物“P01”等を再利用可能な再利用施設、及び/又は、これらを最終処分可能な最終処分施設を決定する。「廃棄物“P01”等」は、廃棄物“P01”及びその解体後に発生した部分を総称している(以下同様)。処分計画作成部21は、例えば、各再利用施設が提示する購入価格に基づき、再利用施設を決定し、例えば、各最終処分施設が提示する受け入れタイミングに基づき、最終処分施設を決定する。
【0066】
ステップS213において、処分計画作成部21は、保管方法及び搬送業者を決定する。具体的には、第1に、処分計画作成部21は、一時保管の対象とする廃棄物“P01”等の量、及び、最終処分までの期間を、各一時保管施設の一時保管施設端末装置4に送信する。すると一時保管施設端末装置4は、一時保管の可否及び保管料金をプラント解体管理装置1に返信する。
【0067】
第2に、処分計画作成部21は、原子力発電所と各施設との間及び各施設相互間において搬送される廃棄物“P01”等の量、放射線量等を、各搬送業者の搬送業者端末装置7に送信する。すると搬送業者端末装置7は、搬送の可否及び搬送料金をプラント解体管理装置1に返信する。
第3に、処分計画作成部21は、廃棄物“P01”等を一時保管可能な一時保管施設、及び、これらを搬送可能な搬送業者を決定する。処分計画作成部21は、各一時保管施設が提示する保管料金に基づき、一時保管施設を決定し、各搬送業者が提示する搬送料金に基づき、搬送業者を決定する。
【0068】
ステップS214において、処分計画作成部21は、処分計画情報35(図9)を作成する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS208~S213において決定した内容に基づき、処分計画情報35を作成し、補助記憶装置15に記憶する。この段階で、処分計画情報35において廃棄物“P01”に関連付けられた各施設(利害関係者)は、自身の端末装置を介してプラント解体管理装置1にアクセスし、廃棄物“P01”に関する処分計画情報35のレコードを視認できるようになる。
【0069】
その後、処分計画情報35に基づき利害関係者が、除染、解体、一時保管、搬送、再利用及び最終処分を行うことになる。各利害関係者は、処分計画情報35のうち自身が担当する部分を実行する。しかしながら、計画通りに実行できない場合もある。
【0070】
ステップS215において、処分計画作成部21は、端末装置から実施報告を受信する。具体的には、処分計画作成部21は、各利害関係者の端末装置2~6(図4)から、予め計画された解体、除染等について実施報告を受信する。実施報告は、例えば“F01の解体を計画通りに実行した”、“F0111の除染を化学除染に変更した”等の情報を含む。処分計画作成部21は、受信した実施報告を補助記憶装置15に記憶する。
【0071】
ステップS216において、処分計画作成部21は、計画に対する変更点を記憶する。具体的には、処分計画作成部21は、ステップS215において受信した実施報告が計画からの変更を示す場合、変更後の内容を処分計画情報35に上書きし、補助記憶装置15に記憶する。その後、計画作成処理手順を終了する。
なお、ステップS215及びS216は、各利害関係者が解体、除染等を行う都度繰り返され、その結果、処分計画情報35は、常時最新の状態で維持される。
ステップS201~S216の処理のうち、利害関係者から情報を取得する処理の主体は、情報収集部22であってもよい。この場合、情報収集部22は取得した情報を処分計画作成部21に渡し、以降の処理を委ねる。
【0072】
(計測処理手順)
図12は、計測処理手順のフローチャートである。各利害関係者は、任意の時点で廃棄物の放射線量を測定することができる。本実施形態では、搬送業者以外の各利害関係者は、自身の端末装置2~6を介して、廃棄物の解体又は除染の前後において廃棄物の放射線量を計測し、プラント解体管理装置1に送信するものとする。いま、説明の便宜上、利害関係者の例として処理施設63(図2)を採用する。
【0073】
ステップS301において、プラント解体管理装置1の情報収集部22は、解体の準備が完了したか否かを判断する。具体的には、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の解体の準備が完了した旨を受信した場合(ステップS301“Yes”)、ステップS303に進み、それ以外の場合(ステップS301“No”)、ステップS302に進む。
【0074】
ステップS302において、情報収集部22は、除染の準備が完了したか否かを判断する。具体的には、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の除染の準備が完了した旨を受信した場合(ステップS302“Yes”)、ステップS303に進み、それ以外の場合(ステップS302“No”)、ステップS301に戻る。
【0075】
ステップS303において、情報収集部22は、放射線量を取得する。具体的には、第1に、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の放射線量を受信する。
第2に、情報収集部22は、受信した放射線量に基づき、計測情報34(図8)のレコードを作成する。
【0076】
ステップS304において、情報収集部22は、解体が完了したか否かを判断する。具体的には、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の解体が完了した旨を受信した場合(ステップS304“Yes”)、ステップS306に進み、それ以外の場合(ステップS304“No”)、ステップS305に進む。
【0077】
ステップS305において、情報収集部22は、除染が完了したか否かを判断する。具体的には、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の除染が完了した旨を受信した場合(ステップS305“Yes”)、ステップS306に進み、それ以外の場合(ステップS305“No”)、ステップS304に戻る。
【0078】
ステップS306において、情報収集部22は、放射線量等を取得する。具体的には、第1に、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物の放射線量を受信する。
第2に、情報収集部22は、受信した放射線量に基づき、計測情報34(図8)のレコードを作成する。
【0079】
第3に、情報収集部22は、処理施設63の処理施設端末装置3から廃棄物に対する解体又は除染の内容を受信する。なお、ここで受信する情報は、ステップS215(図11)における実施報告と同じものであってもよい。
第4に、情報収集部22は、受信した解体又は除染の内容に基づき解体情報33(図7)又は除染情報32(図6)のレコードを作成する。その後、計測処理手順を終了する。
以上で明らかなように、プラント解体管理装置1は、除染情報32(図6)、解体情報33(図7)及び計測情報34(図8)を、常時最新の状態で維持する。
【0080】
(履歴作成処理手順)
図13は、履歴作成処理手順のフローチャートである。各利害関係者は、プラント解体管理装置1に対して、自身が扱う廃棄物の履歴を要求することができる。説明の便宜上、いま、利害関係者の例として一時保管施設65(図2)が、廃棄物“P0111”を受け入れるために、その履歴を知ろうとしているとする。
【0081】
ステップS401において、プラント解体管理装置1の履歴提供部23は、端末装置から履歴要求を受信する。具体的には、履歴提供部23は、一時保管施設65の一時保管施設端末装置4から廃棄物ID“P0111”を含む履歴要求を受信する。
【0082】
ステップS402において、履歴提供部23は、検索キーを使用して各情報から該当するデータを取得する。具体的には、履歴提供部23は、廃棄物ID“P0111”を検索キーとして、設計情報31(図5)、除染情報32(図6)、解体情報33(図7)、計測情報34(図8)、処分計画情報35(図9)及びその他の情報を検索する。そのうえで、履歴提供部23は、“P0111”に関連付けられているすべてのデータを取得する。ここでの“その他の情報”とは、ステップS215(図11)において処分計画作成部21が受信した実施報告である。
【0083】
ステップS403において、履歴提供部23は、廃棄物履歴情報36(図10)を作成する。具体的には、履歴提供部23は、ステップS402において取得したデータに基づいて、廃棄物IDが“P0111”である廃棄物履歴情報36を作成する。なお、ここで作成される廃棄物履歴情報36のうち、一時保管情報欄177及び最終処分情報欄178のデータは、計画段階のものである。
【0084】
ステップS404において、履歴提供部23は、端末装置に廃棄物履歴情報36(図10)を送信する。具体的には、履歴提供部23は、ステップS403において作成した廃棄物履歴情報36を一時保管施設65の一時保管施設端末装置4に送信する。
その後、履歴作成処理手順を終了する。
【0085】
(本実施形態の効果)
本実施形態のプラント解体管理装置の効果は以下の通りである。
(1)プラント解体管理装置は、廃棄物の工程を計画し、廃棄物の履歴情報を利害関係者が共有することを可能にする。したがって、プラント解体管理装置は、廃棄物のトレーサビリティに資するだけでなく各利害関係者の管理費用を大幅に削減することができる。
(2)プラント解体管理装置は、廃棄物に関する情報を利害関係者から受信することができる。
(3)プラント解体管理装置は、廃棄物の再利用又は最終処分に至る、解体、除染及び一時保管を管理することができる。
(4)プラント解体管理装置は、放射線源を特定したうえで、的確かつ効率的に除染又は解体の方法を計画することができる。
【0086】
(5)プラント解体管理装置は、原子炉の廃炉に適用され得る。
(6)プラント解体管理装置は、廃棄物の設計情報等を使用して除染及び解体の方法等を決定することができる。
(7)プラント解体管理装置は、工程に係る収益を管理することができる。
(8)プラント解体管理装置は、実績に応じ工程を更新することができる。
【0087】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0088】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 プラント解体管理装置
2 発電所端末装置
3 処理施設端末装置
4 一時保管施設端末装置
5 最終処分施設端末装置
6 再利用施設端末装置
7 搬送者端末装置
8 ネットワーク
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 処分計画作成部
22 情報収集部
23 履歴提供部
31 設計情報
32 除染情報
33 解体情報
34 計測情報
35 処分計画情報
36 廃棄物履歴情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13