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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010877
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ガスケットの製造方法及びガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20250116BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20250116BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20250116BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20250116BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20250116BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20250116BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20250116BHJP
   B29L 31/26 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
F16J15/00 B
B29C45/27
B29C45/14
B29C45/38 A
B29C33/42
B29C33/14
B29K21:00
B29L31:26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113161
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩司
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AD18
4F202AD24
4F202AG03
4F202AG13
4F202AH13
4F202AM32
4F202AM36
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK02
4F202CK06
4F202CK12
4F202CK85
4F202CQ01
4F206AA45
4F206AD18
4F206AD24
4F206AG03
4F206AG13
4F206AH13
4F206AM32
4F206AR12
4F206AR13
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ81
4F206JW22
(57)【要約】
【課題】成形不良の発生を抑制可能なガスケットの製造方法及びガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット本体部を形成するためのキャビティcvと、キャビティcvよりも内周面側に設けられる環状のバリだまりbrと、キャビティcvとバリだまりbrとの間に設けられる環状のバリ道bdと、補強環310の内周面に設けられた複数の凹部311に対応する位置にそれぞれ設けられる複数のゲートと、を有する金型を用いることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外周面側に向かって凹む複数の凹部が周方向に間隔を空けて設けられた環状部材と、前記複数の凹部にそれぞれ嵌るように設けられる複数の凸部を有し、かつ前記環状部材の内周面に一体的に設けられるエラストマー製の環状のガスケット本体部と、を備えるガスケットの製造方法であって、
前記ガスケット本体部を形成するためのキャビティと、前記キャビティよりも内周面側に設けられる環状空間と、前記キャビティと前記環状空間との間に設けられる環状流路と、前記複数の凹部に対応する位置にそれぞれ設けられる複数のゲートと、を有する金型を用い、前記金型に前記環状部材を配した状態で型締めする工程と、
前記複数のゲートから成形材料を充填する工程と、
前記金型の型開き工程と、
前記金型からインサート成形品を取り出す工程と、
前記環状流路により成形された部分が分離されるように前記環状空間により成形された部分を前記キャビティにより成形された成形品から除去する工程と、
を有することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項2】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記ゲートの先端が前記キャビティに向かって拡径するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスケットの製造方法。
【請求項3】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記キャビティのうち、前記ゲートの先端と対向する面に、前記ゲートの先端から遠ざかる方向に突出する突出部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記環状空間よりも内周面側に、隣り合う前記ゲートから供給される材料によりウエルドラインを形成させる材料だまりが設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケットの製造方法。
【請求項5】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記環状流路は、前記材料だまりに近い位置で、前記材料だまりから離れた位置よりも厚みが厚い部分が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のガスケットの製造方法。
【請求項6】
内周面に外周面側に向かって凹む複数の凹部が周方向に間隔を空けて設けられた環状部材と、
前記複数の凹部にそれぞれ嵌るように設けられる複数の凸部を有し、かつ前記環状部材の内周面に一体的に設けられるエラストマー製の環状のガスケット本体部と、
を備えるガスケットであって、
前記複数の凸部に、それぞれゲート跡が設けられ、かつ前記ガスケット本体部の内周面にバリを除去した跡が設けられることを特徴とするガスケット。
【請求項7】
前記複数の凸部に、前記ゲート跡から遠ざかる方向に突出する突出部がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項6に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットの製造方法及びガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材の端面間の隙間を封止するガスケットにおいて、補強環の内周面にガスケット本体部を一体的に備えるガスケットが知られている。このガスケットによれば、補強環が、2部材の端面間の距離を一定にするためのスペーサー機能と、ガスケット本体部の異常変形を抑制するためのバックアップリング機能と、ガスケットの剛性を高める機能を発揮する。以上のように構成されるガスケットは、補強環をインサート部品としてインサート成形によりガスケット本体部を成形することにより得られる。
【0003】
図6図8を参照して、従来技術に係るガスケットの製造方法について説明する。図6は従来技術に係る金型の平面図であり、金型内部の主要構成部を透視して示している。図7及び図8は従来技術に係るガスケットの製造工程図である。なお、図7(a)中の金型の断面図は図6中のCC断面図に相当し、図7及び図8中のガスケット等の成形品の断面図は、図6に示す金型中の成形後の成形品のCC断面図に相当する。
【0004】
インサート成形に用いる金型600においては、金型600に配される補強環610の内側に、径方向外側から内側に向かって順に、ガスケット本体部620を形成するキャビティ620A、バリ道630A、バリだまり640Aが設けられている。金型600は、下型600Aと、上型600Bとを備えている。上型600Bには、成形材料を供給するための材料室であるポット650と、ポット650内の成形材料をキャビティ620Aに向けて供給するためのゲート660とを備えている。従来技術においては、ゲート660の先端661は、バリだまり640Aに開口するように設けられている。これにより、ゲート660から供給される成形材料は、バリだまり640Aからバリ道630Aを通ってキャビティ620Aに供給される。
【0005】
図7(a)にはキャビティ620Aに成形材料を充填した状態が示されている。成形終了後に型開きを行うと、バリ640がゲート660内の成形材料から切り離される。図7(b)にはインサート成形品(中間製品615A)を金型600から取り出した状態が示されている。流動性の高い成形材料の場合には、バリ道630Aの部分の厚さを薄くすることができる。この場合には、バリ道630Aにより成形される膜630の膜厚が薄いため、バリ640を手指により引き千切るなど、手作業によりバリ640を除去することができる。これにより、最終製品であるガスケット615が得られる。
【0006】
しかしながら、流動性の低い材料(例えば、HNBRなどのゴム材料)の場合には、バリ道630Aの部分の厚さを薄くすると、キャビティ620Aに成形材料が流れにくくなる。これにより、材料の充填不足によりエアだまりができてしまったり、品質に悪影響を及ぼすようなフローマークやウエルドラインが形成されてしまったりしてしまう。
【0007】
そのため、バリ道630Aの部分の厚さを所定以上の厚さにする必要がある。一般的に、この厚みを0.1mm以上に設定すると、手作業によりバリ640を除去することができない。従って、このような場合には、図8に示すように、ダイ710にインサート成形品を設置させた状態で、ポンチ720を下方に移動させることで(同図(a)参照)、バリ640を打ち抜く(同図(b)参照)などの作業工程を必要としている。
【0008】
しかしながら、ガスケット615のサイズが大きい(概ね、内径100mm以上)にな
ると、ガスケット本体部620の平面方向のうねりも大きくなるため、バリ640の打ち抜きも難しくなる。すなわち、ガスケット本体部620の内周面(打ち抜き断面)の表面が荒くなったり、糸状の抜きカスが発生したりしてしまう。また、従来の製法では、バリ道630Aの部分の厚さを厚くしても、上述したエアだまり、フローマーク、及びウエルドラインの問題は十分解消されるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4993077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、成形不良の発生を抑制可能なガスケットの製造方法及びガスケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明のガスケットの製造方法は、
内周面に外周面側に向かって凹む複数の凹部が周方向に間隔を空けて設けられた環状部材と、前記複数の凹部にそれぞれ嵌るように設けられる複数の凸部を有し、かつ前記環状部材の内周面に一体的に設けられるエラストマー製の環状のガスケット本体部と、を備えるガスケットの製造方法であって、
前記ガスケット本体部を形成するためのキャビティと、前記キャビティよりも内周面側に設けられる環状空間と、前記キャビティと前記環状空間との間に設けられる環状流路と、前記複数の凹部に対応する位置にそれぞれ設けられる複数のゲートと、を有する金型を用い、前記金型に前記環状部材を配した状態で型締めする工程と、
前記複数のゲートから成形材料を充填する工程と、
前記金型の型開き工程と、
前記金型からインサート成形品を取り出す工程と、
前記環状流路により成形された部分が分離されるように前記環状空間により成形された部分を前記キャビティにより成形された成形品から除去する工程と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ガスケット本体部を成形するためのキャビティにゲートから直接成形材料が供給され、環状流路を通って、キャビティの内周面側に設けられた環状空間へと成形材料が流れていく。従って、キャビティ内において、材料の充填不足によるエアだまりができてしまうことは抑制され、ガスケット本体部に、品質に悪影響を及ぼすようなフローマークやウエルドラインが形成されてしまうことも抑制することができる。また、流動性の低い材料を採用した場合において、環状流路の部分の厚さを薄くして、環状空間内に材料の充填不足が発生したり、バリにフローマークやウエルドラインが形成したりしても製品としては問題はない。従って、環状流路の部分の厚さを薄くすることで、キャビティにより成形された成形品からバリを手作業により引き千切るようにすることができる。これにより、ポンチ等を用いてバリを打ち抜く工程は不要であり、打ち抜き作業により発生し得る問題も生じない。
【0014】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記ゲートの先端が前記キャビティに向かって拡径するように構成されるとよい。
【0015】
これにより、ガスケット本体部において、離型時にガスケット本体部とゲート内の成形
材料とが切り離される部分に、ゲート側に向かって突出する部分が形成され易くなり、当該部分が凹んでしまうことを抑制することができる。
【0016】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記キャビティのうち、前記ゲートの先端と対向する面に、前記ゲートの先端から遠ざかる方向に突出する突出部を有するとよい。
【0017】
これにより、仮に、ガスケット本体部において、離型時にガスケット本体部とゲート内の成形材料とが切り離される部分が凹んでしまっても、ガスケット本体部において部分的に厚みが薄くなってしまう箇所が生じてしまうことを抑制することができる。
【0018】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記環状空間よりも内周面側に、隣り合う前記ゲートから供給される材料によりウエルドラインを形成させる材料だまりが設けられるとよい。
【0019】
これにより、バリにウエルドラインが形成されることが抑制されるため、ガスケット本体部にウエルドラインが形成されることを、より確実に抑制することができる。
【0020】
前記ガスケット本体部の成形に用いる前記金型においては、
前記環状流路は、前記材料だまりに近い位置で、前記材料だまりから離れた位置よりも厚みが厚い部分が設けられているとよい。
【0021】
これにより、バリにフローマークが形成されることが抑制されるため、ガスケット本体部にフローマークが形成されることを、より確実に抑制することができる。
【0022】
本発明のガスケットは、
内周面に外周面側に向かって凹む複数の凹部が周方向に間隔を空けて設けられた環状部材と、
前記複数の凹部にそれぞれ嵌るように設けられる複数の凸部を有し、かつ前記環状部材の内周面に一体的に設けられるエラストマー製の環状のガスケット本体部と、
を備えるガスケットであって、
前記複数の凸部に、それぞれゲート跡が設けられ、かつ前記ガスケット本体部の内周面にバリを除去した跡が設けられることを特徴とする。
【0023】
前記複数の凸部に、前記ゲート跡から遠ざかる方向に突出する突出部がそれぞれ設けられるとよい。
【0024】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、成形不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明の実施例に係る金型の平面図である。
図2図2は本発明の実施例に係るガスケットの製造工程図である。
図3図3は本発明の実施例に係るガスケットの製造工程図である。
図4図4は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。
図5図5は本発明の実施例に係るガスケットの説明図である。
図6図6は従来技術に係る金型の平面図である。
図7図7は従来技術に係るガスケットの製造工程図である。
図8図8は従来技術に係るガスケットの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0028】
(実施例)
図1図5を参照して、本発明の実施例に係るガスケットの製造方法及びガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例に係る金型の平面図であり、金型内部の主要構成部を透視して示している。図2及び図3は本発明の実施例に係るガスケットの製造工程図である。なお、図2中の金型の断面図は図1中のAA断面図に相当し、図2及び図3中のガスケット等の成形品の断面図は、図1に示す金型中の成形後の成形品のAA断面図に相当する。そして、図4は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図5は本発明の実施例に係るガスケットの説明図であり、同図(a)は本発明の実施例に係るガスケットを備える密封構造の一例を示す模式的断面図であり、同図(b)は本発明の実施例に係るガスケットの成形状態の一例を示す模式的断面図である。
【0029】
<ガスケットの製造方法>
本実施例に係る製造方法により得られるガスケット300は、図4に示すように、金属などにより構成される環状部材としての補強環310と、補強環310の内周面に一体的に設けられるエラストマー製のガスケット本体部320とを備えている。本実施例に係るガスケット300においては、補強環310の内周面に外周面側に向かって凹む複数の凹部311が周方向に間隔を空けて設けられている。この補強環310には、ガスケット300を各種装置のケースなどに固定するためのボルトの軸部等が挿通される貫通孔315も複数設けられている。また、ガスケット本体部320の外周面には、複数の凹部311にそれぞれ嵌るように設けられる複数の凸部321が設けられている。以上のように構成されるガスケット300は、補強環310をインサート部品として、インサート成形によってガスケット本体部320を成形することにより得ることができる。以下、製造方法について説明する。
【0030】
まず、インサート成形に用いる金型10の基本的な構成について説明する。金型10は、下型100と上型200とを備えている。下型100の彫り込み部110の外周面に沿って、インサート部品である補強環310が配されるように構成されている。そして、金型10は、ガスケット本体部320を形成するためのキャビティcvと、キャビティcvよりも内周面側に設けられる環状空間としての環状のバリだまりbrと、キャビティcvとバリだまりbrとの間に設けられる環状流路としての環状のバリ道bdとを備えている。なお、金型10に配される補強環310の内側に、径方向外側から内側に向かって順に、キャビティcv、バリ道bd、バリだまりbrが設けられている。
【0031】
そして、上型200には、彫り込み部210の他にも、成形材料Eを供給するための材料室であるポット220と、ポット220内の成形材料Eをキャビティcvに向けて供給するためのゲート230とが備えられている。本実施例においては、ゲート230の先端231は、キャビティcvに開口するように設けられている。より具体的には、補強環310の内周面に設けられた複数の凹部311に対応する位置(つまり、ガスケット本体部320の外周面に設けられた複数の凸部321を形成するためのキャビティcv1の位置)に、複数のゲート230の先端231がそれぞれ開口している。これにより、ゲート230から供給される成形材料Eは、キャビティcvからバリ道bdを通ってバリだまりbrへと流れていくように構成される。なお、ポット220は、上型200の上部の一箇所
に環状に設けられている。図1においては、環状のポット220における外周側の外壁面の位置を太い点線220Oで示し、内周側の内壁面の位置を太い点線220Iで示している。ただし、ポットの形状はこのような構成に限定されることはない。例えば、ポットの平面形状を円形とすることもでき、内壁面が図1中の太い点線220Oとなるような平面形状が円形のポットとすることもできる。
【0032】
以上のように構成される金型10を用いて、まず、下型100に補強環310が配された後に、型締めがなされる(図2(a)参照)。型締め後に、複数のゲート230から成形材料Eがキャビティcv等に充填される(図2(b)参照)。その後、金型10の型開きが行われて、金型10からインサート成形品(中間製品300A)が取り出される(図3(a)参照)。型開きの際に、ガスケット本体部320は、ゲート230内の成形材料から切り離される。これにより、中間製品300Aは、補強環310と、補強環310の内周面に一体的に設けられるガスケット本体部320と、ガスケット本体部320の内周面に、バリ道bdの部分で成形される膜326を介して一体に設けられるバリ325とから構成される。そして、この中間製品300Aにおいて、バリ道bdにより成形された成形部分(膜326)が千切れるように、キャビティcvにより成形された成形品(ガスケット本体部320)からバリ325が手作業により引き千切られる(図3(b)参照)。以上の工程により、中間製品300Aにおいて、膜326とバリ325が一体となった部分が除去されて、最終製品であるガスケット300が得られる(図3(c)参照)。なお、図3(c)に示すガスケット300は、図4中のBB断面図に相当する。
【0033】
以上の製造方法により得られたガスケット300においては、ガスケット本体部320における複数の凸部321には、それぞれゲート跡322が設けられることになる。また、ガスケット本体部320の内周面には、バリ325を除去した跡324が設けられることになる。なお、本実施例に係るガスケット300においては、ガスケット本体部320の両面に、それぞれ1箇所ずつビードが設けられているが、本発明において、ガスケット本体部は、そのような構成に限定されることはない。
【0034】
以上のように構成されるガスケット300は、例えば、開口部を有するケース本体510と、開口部を塞ぐ蓋520との間に挟み込まれた状態で、ケース本体510と蓋520とが固定される。これにより、ケース本体510と蓋520との端面間の隙間を封止することができる(図5(a)参照)。このガスケット300によれば、補強環310が、ケース本体510と蓋520の端面間の距離を一定にするためのスペーサー機能と、ガスケット本体部320の異常変形を抑制するためのバックアップリング機能と、ガスケット300の剛性を高める機能を発揮する。
【0035】
次に、成形不良の発生をより一層抑制可能とするための付加的な構成について説明する。本実施例では、以下に説明する全ての付加的な構成を備えているが、製品の寸法及び形状や成形材料の流動性等に応じて、成形性に支障が生じなければ、以下の付加的な構成は適宜採用しなくても構わない。
【0036】
上記の金型10において、ゲート230の先端231がキャビティcvに向かって拡径するように構成されるとよい(例えば、図2(a)参照)。これにより、ガスケット本体部320において、離型時にガスケット本体部320とゲート230内の成形材料とが切り離される部分に、ゲート230側に向かって突出する部分が形成され易くなる。すなわち、図3に示すように、ガスケット本体部320に形成されるゲート跡322は、突出した構成となり易い。一般的には、離型時において、成形部分とゲート内の成形材料が切り離れる際に、成形部分のうちゲート内の成形材料から切り離される部分に凹みが生じてしまい易いが、上記の構成を採用することで、凹みの発生を抑制することができる。
【0037】
また、上記の金型10において、キャビティcvのうち、ゲート230の先端231と対向する面に、ゲート230の先端231から遠ざかる方向に突出する突出部111を有するとよい(例えば、図2(a)参照)。これにより、仮に、ガスケット本体部320において、離型時にガスケット本体部320とゲート230内の成形材料とが切り離される部分が凹んでしまっても、ガスケット本体部320において部分的に厚みが薄くなってしまう箇所が生じてしまうことを抑制することができる。すなわち、上記のように構成される金型10を採用することで、ガスケット本体部320のうち、上記の切り離される部分(つまりゲート跡が形成される部分)の反対側の面には、ゲート跡から遠ざかる方向に突出する突出部323が設けられる。これにより、図5(b)に示すように、仮に凹んだゲート跡322Xが形成されたとしても、ガスケット本体部320において部分的に厚みが薄くなってしまう箇所が生じてしまうことを抑制することができる。従って、密封性の低下を抑制することができる。
【0038】
また、金型10において、バリだまりbrよりも内周面側に、隣り合うゲート230から供給される材料によりウエルドラインを形成させる材料だまりzdが設けられるとよい(図1参照)。なお、図1においては、周方向に間隔を空けて複数の材料だまりzdが設けられている。これにより、それぞれのゲート230から供給される材料は、キャビティcvからバリだまりbrを通って材料だまりzdへと流れていく。そして、隣り合うゲート230から供給される材料は、材料だまりzdの中で合流するため、材料だまりzdの中にウエルドラインが形成される。図1中、点線で示すwlはウエルドラインが形成される位置を示している。従って、バリ325にウエルドラインが形成されることが抑制されるため、ガスケット本体部320にウエルドラインが形成されることを、より確実に抑制することができる。従って、密封性の低下をより一層抑制することができる。
【0039】
更に、材料だまりzdを有する構成を採用する場合においては、バリ道bdから材料だまりzdに材料が送られる際に、隣り合うゲート230における一方のゲート230から送られる材料の流速と他方のゲート230から送られる材料の流速の差が大きいとフローマークが形成されるおそれがある。このような現象は、バリ道bdの厚みが薄いほど生じ易い。そこで、バリ道bdは、材料だまりzdに近い位置で、材料だまりzdから離れた位置よりも厚みが厚い部分(図1中、点線で囲ったバリ道bd1)が設けられているとよい。これにより、流速の差が生じ難くなり、バリ325にフローマークが形成されることが抑制されるため、ガスケット本体部320にフローマークが形成されることを、より確実に抑制することができる。従って、密封性の低下をより一層抑制することができる。
【0040】
<本実施例に係るガスケットの製造方法及びガスケットの優れた点>
本実施例によれば、ガスケット本体部320を成形するためのキャビティcvにゲート230から直接成形材料Eが供給され、環状のバリ道bdを通って、キャビティcvの内周面側に設けられた環状のバリだまりbrへと成形材料Eが流れていく。従って、キャビティcv内において、材料の充填不足によるエアだまりができてしまうことは抑制される。また、ガスケット本体部320に、品質に悪影響を及ぼすようなフローマークやウエルドラインが形成されてしまうことも抑制することができる。なお、ゲート跡322は、補強環310の内周面に複数設けられた凹部311に嵌るように、それぞれ設けられた凸部321に設けられるため、密封性に悪影響を及ぼすこともない。また、キャビティcvに直接成形材料Eを供給するため、従来技術に比べて成形圧力を低くすることができ、かつ、成形材料Eの量を軽減することができる。
【0041】
そして、流動性の低い材料(例えば、HNBRなどのゴム材料)を採用した場合においても、バリ道bdの部分の厚さを薄くして、バリだまりbr内に材料の充填不足が発生したり、バリ325にフローマークやウエルドラインが形成したりしても製品としては問題はない。また、バリだまりbdの体積はキャビティcvに比べて小さくすることができる
ことも相まって、バリ道bdの部分の厚さを薄くすることができる。従って、バリ道bdの部分の厚さを薄くすることで、キャビティcvにより成形された成形品(ガスケット本体部320)からバリ325を手作業により引き千切るようにすることができる。なお、バリ道bdの部分の厚みは、例えば、0.05mm程度にすることで、手作業によりバリ325を引き千切ることができる。これにより、ポンチ等を用いてバリを打ち抜く工程は不要であり、打ち抜き作業により発生し得る問題も生じない。従って、ガスケット300のサイズが大きい(概ね、内径100mm以上)場合においても、本実施例の製造方法を採用することで、品質性の高いガスケット300を得ることができる。
【0042】
以上のように、本実施例によれば、成形不良の発生を抑制することができるだけでなく、製造工程を削減できる。これにより、ガスケット300のシール性を高めることができ、また、製造コストを抑制することができる。更に、上記のように、付加的な構成を適宜採用することで、より一層、成形不良の発生を抑制することができ、かつ、ガスケット300のシール性を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
10:金型
100:下型
110:彫り込み部
111:突出部
200:上型
210:彫り込み部
220:ポット
230:ゲート
231:先端
300:ガスケット
300A:中間製品
310:補強環
311:凹部
315:貫通孔
320:ガスケット本体部
321:凸部
322,322X:ゲート跡
323:突出部
324:(バリを除去した)跡
325:バリ
326:膜
510 :ケース本体
520:蓋
E:成形材料
bd:バリ道
br:バリだまり
cv:キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8