(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025108787
(43)【公開日】2025-07-23
(54)【発明の名称】車両用シートパッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20250715BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20250715BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20250715BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20250715BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20250715BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20250715BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20250715BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47C7/18
B29C39/26
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/36
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025077048
(22)【出願日】2025-05-06
(62)【分割の表示】P 2019094413の分割
【原出願日】2019-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凹溝にアンダーカットがない第一発泡体側に係止機能を発揮させ、さらに成形収縮大の第一発泡体に設ける凹溝にあっても、各掛止具を凹溝に難なく挿入し、係止できる車両用シートパッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板部41から一対の立片部42が離間して立設し、且つ該立片部の先端部位に、対向する相手方立片部へ張り出す鉤部43がそれぞれ形成された表皮の端末係止用クリップ4をインサート品にして、裏面に設けられた凹溝34内で前記一対の立片部42及び前記鉤部43が露出状態になって、該端末係止用クリップ4を埋設一体化した第一発泡体3が発泡成形されている端末係止用クリップ付き第一発泡体2と、裏面側に、前記一対の立片部42及び前記鉤部43が露出する状態で、該端末係止用クリップ付き第一発泡体2を埋設一体化して発泡成形されている第二発泡体6と、を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一発泡体を発泡成形型にセットし、次いで、該発泡成形型に発泡原料を注入すると共に型閉じし、その後、前記第一発泡体が埋設一体化された第二発泡体を発泡成形してなる車両用シートパッドの製造方法において、 基板部から一対の立片部が離間して立設し、且つ両立片部の先端部位に、対向する相手方立片部へ張り出す鉤部がそれぞれ形成された表皮の端末係止用クリップをインサート品にして、前記第一発泡体の裏面に形成された凹溝内で前記一対の立片部及び前記鉤部が露出状態になって、一体発泡成形されている端末係止用クリップ付き第一発泡体を、該端末係止用クリップと前記発泡成形型の上型キャビティ面とが対向するようにして、該上型キャビティ面にセットしたことを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
【請求項2】
複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を、上型キャビティ面のそれぞれの部位にセットし、複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体が埋設一体化された前記第二発泡体を発泡成形した請求項1記載の車両用シートパッドの製造方法。
【請求項3】
前記一対の立片部に係る内方側立片部と前記凹溝を形成する内方側立壁との隙間よりも、前記一対の立片部に係る外方側立片部と前記凹溝を形成する外方側立壁との隙間を狭めた前記端末係止用クリップを一体化して、前記第一発泡体が発泡成形された請求項1又は2に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【請求項4】
前記第二発泡体を軟質ポリウレタン発泡成形体とし、前記第一発泡体を前記第二発泡体よりも軽量の発泡成形体とした請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【請求項5】
基部から一対の起立部が離間して立設し、且つ両起立部のそれぞれの先端部位に対向する相手方起立部へ張り出すフック部が形成された表皮の吊溝用クリップをインサート品にして、前記第一発泡体の天面側で前記一対の起立部及び前記フック部が露出状態になって、一体発泡成形されている該吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を、該天面側が下向きになるようにして、前記上型キャビティ面にセットし、その後、前記第二発泡体の表面に設けた吊溝内に前記一対の起立部及び前記フック部が露出状態にして、該第二発泡体を発泡成形した請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【請求項6】
基板部から一対の立片部が離間して立設し、且つ該立片部の先端部位に、対向する相手方立片部へ張り出す鉤部がそれぞれ形成された表皮の端末係止用クリップをインサート品にして、裏面に設けられた凹溝内で前記一対の立片部及び前記鉤部が露出状態になって、該端末係止用クリップを埋設一体化した第一発泡体が発泡成形されている端末係止用クリップ付き第一発泡体と、 裏面側に、前記一対の立片部及び前記鉤部が露出する状態で、該端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化して発泡成形されている第二発泡体と、を具備することを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項7】
前記端末係止用クリップ付き第一発泡体が複数設けられ、各立片部及び各鉤部を裏面側に露出させて、複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化した該第二発泡体が発泡成形されている請求項6記載の車両用シートパッド。
【請求項8】
前記端末係止用クリップ付き第一発泡体が、前記一対の立片部に係る内方側立片部と前記凹溝を形成する内方側立壁との隙間よりも、前記一対の立片部に係る外方側立片部と前記凹溝を形成する外方側立壁との隙間を狭めている請求項6又は7に記載の車両用シートパッド。
【請求項9】
前記第二発泡体が軟質ポリウレタン発泡成形体であり、前記第一発泡体が前記第二発泡体よりも軽量の発泡成形体で構成された請求項1乃至3のいずれか8項に記載の車両用シートパッド。
【請求項10】
前記基板部が、平らな主部分の側縁から屈曲して延在する端縁部分を備えた請求項6乃至9のいずれか1項に記載の車両用シートパッド。
【請求項11】
前記端末係止用クリップ付き第一発泡体の天面側で、基部に一対の起立部が離間して立設し、且つ両起立部のそれぞれの先端部位に、対向する相手方起立部へ張り出すフック部が形成された表皮の吊溝用クリップを、前記一対の起立部及びフック部が露出状態になって、一体化した前記第一発泡体が発泡成形されている該吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体として、 前記第二発泡体が、その表面に形成する吊溝内で、前記一対の起立部及び前記鉤部を露出状態にして、前記吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化して発泡成形されている請求項6乃至9のいずれか1項に記載の車両用シートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートを構成する車両用シートパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用座席シートで、座部や背もたれを構成するシートクッションやシートバックのシートパッドは、その表面がファブリック表皮等の表皮で被われている。表皮には掛止具が取付けられており、表皮でシートパッド表面を被うと共に、シートパッドの裏面周縁沿いに設けた溝部に該掛止具を挿入し係止させて、表皮がシートパッドに固定保持される。 ところで、軟質ポリウレタン発泡成形体で専ら造られてきたシートパッドが、近年の軽量化対策等で、シートパッド裏面側を発泡ポリプロピレン,発泡スチロールなどの第一発泡体に置き換える動きが進んでいる。そして、第一発泡体側に前記溝部を設け、該溝部に表皮に取付けられた掛止具を係止させることによって、表皮でシートパッド表面を被う発明が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1は、ポリプロピレンフォーム等からなる第二パッド部位(本発明の「第一発泡体」)の溝部(本発明の凹溝)に、アンダーカットが形成され、その製造がむずかしくなっている。請求項4のごとく「…前記拡開部位において、前記外側内壁と前記内側内壁の少なくとも一方に前記溝部の内方に向けて突出している突出部位が設け」られるが、該突出部位がアンダーカットになる。ポリプロピレンフォーム等の第二パッド部位は、クッション性に優れる軟質ポリウレタン発泡成形品と違って硬くて保形性があり、アンダーカットがあると、変形させて脱型するのが難しく歩留まり低下を招く。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、凹溝にアンダーカットがなしの第一発泡体側に係止機能を発揮させ、さらに成形収縮大の第一発泡体に設ける凹溝にあっても、各掛止具を凹溝に難なく挿入し、係止できる車両用シートパッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、第一発泡体を発泡成形型にセットし、次いで、該発泡成形型に発泡原料を注入すると共に型閉じし、その後、前記第一発泡体が埋設一体化された第二発泡体を発泡成形してなる車両用シートパッドの製造方法において、基板部から一対の立片部が離間して立設し、且つ両立片部の先端部位に、対向する相手方立片部へ張り出す鉤部がそれぞれ形成された表皮の端末係止用クリップをインサート品にして、前記第一発泡体の裏面に形成された凹溝内で前記一対の立片部及び前記鉤部が露出状態になって、一体発泡成形されている端末係止用クリップ付き第一発泡体を、該端末係止用クリップと前記発泡成形型の上型キャビティ面とが対向するようにして、該上型キャビティ面にセットしたことを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。請求項2の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1で、複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を、上型キャビティ面のそれぞれの部位にセットし、複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体が埋設一体化されたことを特徴とする。請求項3の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1又は2で、一対の立片部に係る内方側立片部と前記凹溝を形成する内方側立壁との隙間よりも、前記一対の立片部に係る外方側立片部と前記凹溝を形成する外方側立壁との隙間を狭めた前記端末係止用クリップを一体化して、前記第一発泡体が発泡成形されたことを特徴とする。請求項4の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1~3で、第二発泡体を軟質ポリウレタン発泡成形体とし、前記第一発泡体を前記第二発泡体よりも軽量の発泡成形体としたことを特徴とする。請求項5の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1~4で、基部から一対の起立部が離間して立設し、且つ両起立部のそれぞれの先端部位に対向する相手方起立部へ張り出すフック部が形成された表皮の吊溝用クリップをインサート品にして、前記第一発泡体の天面側で前記一対の起立部及び前記フック部が露出状態になって、一体発泡成形されている該吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を、該天面側が下向きになるようにして、前記上型キャビティ面にセットし、その後、前記第二発泡体の表面に設けた吊溝内に前記一対の起立部及び前記フック部が露出状態にして、該第二発泡体を発泡成形したことを特徴とする。 請求項6に記載の発明の要旨は、基板部から一対の立片部が離間して立設し、且つ該立片部の先端部位に、対向する相手方立片部へ張り出す鉤部がそれぞれ形成された表皮の端末係止用クリップをインサート品にして、裏面に設けられた凹溝内で前記一対の立片部及び前記鉤部が露出状態になって、該端末係止用クリップを埋設一体化した第一発泡体が発泡成形されている端末係止用クリップ付き第一発泡体と、裏面側に、前記一対の立片部及び前記鉤部が露出する状態で、該端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化して発泡成形されている第二発泡体と、を具備することを特徴とする車両用シートパッドにある。請求項7の発明たる車両用シートパッドは、請求項6で、端末係止用クリップ付き第一発泡体が複数設けられ、各立片部及び各鉤部を裏面側に露出させて、複数の前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化した該第二発泡体が発泡成形されていることを特徴とする。請求項8の発明たる車両用シートパッドは、請求項6又は7で、端末係止用クリップ付き第一発泡体が、前記一対の立片部に係る内方側立片部と前記凹溝を形成する内方側立壁との隙間よりも、前記一対の立片部に係る外方側立片部と前記凹溝を形成する外方側立壁との隙間を狭めていることを特徴とする。請求項9の発明たる車両用シートパッドは、請求項6~8で、第二発泡体が軟質ポリウレタン発泡成形体であり、前記第一発泡体が前記第二発泡体よりも軽量の発泡成形体で構成されたことを特徴とする。請求項10の発明たる車両用シートパッドは、請求項6~9で、基板部が、平らな主部分の側縁から屈曲して延在する端縁部分を備えたことを特徴とする。請求項11の発明たる車両用シートパッドは、請求項6~10で、端末係止用クリップ付き第一発泡体の天面側で、基部に一対の起立部が離間して立設し、且つ両起立部のそれぞれの先端部位に、対向する相手方起立部へ張り出すフック部が形成された表皮の吊溝用クリップを、前記一対の起立部及びフック部が露出状態になって、一体化した前記第一発泡体が発泡成形されている該吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体として、前記第二発泡体が、その表面に形成する吊溝内で、前記一対の起立部及び前記鉤部を露出状態にして、前記吊溝用クリップ付き兼前記端末係止用クリップ付き第一発泡体を埋設一体化して発泡成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用シートパッド及びその製造方法は、第一発泡体に端末係止用クリップを一体化させることで、表皮の掛止具に対する保持力を高めて確実に係止できると共に、表皮の掛止具を簡単且つ円滑に係止できるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の車両用シートパッド及びその製造方法の一形態で、シートパッドの裏面側斜視図である。
【
図5】他態様の端末係止用クリップの斜視図である。
【
図6】端末係止用クリップ付き第一発泡体を成形する説明断面図である。
【
図7】端末係止用クリップ付き第一発泡成形体を上型にセットする説明断面図である。
【
図8】
図7の後、発泡原料を注入する説明断面図である。
【
図10】第二発泡体を発泡成形した説明断面図である。
【
図11】型開き時のシートパッドの説明断面図である。
【
図12】
図3のシートパッドで、吊溝用クリップが付加された別態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1~
図12は本発明のシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1,
図2はシートパッドの斜視図、
図3は
図1のIII-III線断面図、
図4は
図3の部分拡大図、
図5は他態様の端末係止用クリップの斜視図、
図6は端末係止用クリップ付き第一発泡体を成形する説明図、
図7は端末係止用クリップ付き第一発泡成形体を上型にセットする断面図、
図8は発泡原料を注入する断面図、
図9は型閉じの断面図、
図10は第二発泡体を発泡成形した断面図、
図11は型開き時のシートパッドの断面図、
図12は別態様のシートパッドの断面図である。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、表皮Fの端末係止用クリップ4、吊溝用クリップ5、
図11(ロ)のシートパッドPは断面表示のハッチングを省く。また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
【0010】
(1)車両用シートパッド 車両用シートパッドP(以下、単に「シートパッド」ともいう。)は、クッションパッドやバックパッドがあるが、ここでは着座した乗員の下半身を受け支える車両後部座席のクッションパッドに適用する(
図1~
図4)。これに表皮Fを被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮Fを被せたシートバックとで、車幅方向に補助席部6Cが在る後部座席になる。 シートパッドPは、第一発泡体3と表皮Fの端末係止用クリップ4と第二発泡体6とを具備する。
【0011】
第一発泡体3は、シートパッドPの下層を占める嵩上げ用発泡成形体である(
図3)。クッション性のある第二発泡体6よりも軽量(詳しくは見掛け密度小)で、硬くて(硬度大)、保形性がある。例えば、いわゆるビーズ発泡法によって得られた発泡成形体で構成される。原料ビーズを予備発泡成形させた後、型内発泡成形によって成形されているブロック状ビーズ発泡体である。ビーズ発泡体は、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、又はこれらのうち一つを少なくとも含む成形体であるのが好ましい。気泡が内部に密閉されたビーズ発泡体は、体積の大部分が気体で軽量にして第二発泡体6よりも硬く、シートパッドP用嵩上げ部材としての硬度と保形性を有する。
【0012】
第一発泡体3は、表皮Fの端末係止用クリップ4を埋設一体化して発泡成形される。第一発泡体裏面3bには、その周縁に沿って、
図1,
図3に示すような横断面が矩形穴にして長手方向に略等断面形状の凹溝34が、断続的に複数設けられている。裏面3bに形成した凹溝34内で立片部42,鉤部43が露出状態にして、端末係止用クリップ4を一体化した第一発泡体3が発泡成形される。
【0013】
端末係止用クリップ4は、基板部41から一対の立片部42が離間して立設し、且つ該立片部42の先端部位に、対向する相手方立片部42へ張り出す鉤部43がそれぞれ形成された射出成形品である。ポリプロピレン樹脂等からなる合成樹脂製の成形品とする。
図4で説明すれば、凹溝34内に配される基板部41の平らな主部分411に幹部45が隆起し、該幹部45から二つに枝分かれした板状の立片部42がそれぞれ上方へ延び、その先端部分で対向する相手方の立片部42へ屈折し、板状の鉤部43が張り出す端末係止用クリップ4である。幹部45の先端から立片部42が斜め外向き上方へ向かう途中で向きを変える。斜め内向き上方へ向かって相手方立片部42へ近づき、この立片部42の先端で内向き水平に屈折した鉤部43が相手方立壁部の先端へと近づく。凹溝34内で、内方側立片部42a(詳しくは、その板片面のうち最も内方へ張り出した部分)と凹溝34を形成する内方側立壁34a間には隙間W1が確保される。外方側立片部42bと外方側立壁34b間にも隙間W2が確保される。ここでの「内
方」は
図4の紙面右方で、第一発泡体裏面3bの中央への向き方向をいう。 基板部41は、その板面の大部分が凹溝34の底に露出する平らな主部分411の側縁から立片部42の在る側と反対側の斜め外方へ傾斜部分413が延在し、さらに該傾斜部分413の側縁から端縁部分414が屈曲して延在する。傾斜部分413や端縁部分414が、凹溝34周りの第一発泡体3内に屈曲して入り込むことによってアンカー効果を高めている。
【0014】
端末係止用クリップ4の基板部41、立片部42、及び鉤部43は長手方向(
図4の紙面垂直方向)に等断面形状とするが、それらの両端面では立片部42と鉤部43に係る長手方向の端面よりも、基板部41だけが外方にさらに延在し、更面部分4110(
図5参照)を形成する。更面部分4110を設けることによって、立片部42,鉤部43が、一対の立壁34a,34bをつないで凹溝34に囲っている端壁34f(
図1)との間に隙を確保し、
図4の実線位置から鎖線位置への弾性変形を可能とする。
【0015】
端末係止用クリップ4は幹部45がなくてもよく、例えば
図5のような他態様の端末係止用クリップ4でもよい。平面視で、矩形の主部分411に一対の立片部42が離間し且つ弓状に外側へ膨らませて立設する。両立片部42の先端から、それぞれの鉤部43が対向する相手方立片部42へ向けて下降傾斜する。基板部41は、その平らな主部分411から延びた端縁部分414が立片部42側へ屈曲して延在する。
【0016】
端末係止用クリップ4が第一発泡体3に埋設一体化された端末係止用クリップ付き第一発泡体2は、例えば簡略図示する
図6のようなビーズ発泡成形型Tを用いて造られる。ビーズ発泡成形型Tは、キャビティ面T1に凹溝34形成用の平面視矩形枠部T2が立設し、該枠部T2内に柱状保持体T3が起立する。保持体T3の頂部を鉤部43,立片部42が両側から挟着し、且つ枠部T2の枠開口を基板部41で蓋をして端末係止用クリップ4をセットする。その後、第一発泡体3用に予備発泡させた発泡ビーズBDをキャビティ面T1上に注入し、型内発泡成形によって端末係止用クリップ付き第一発泡体2が得られる。
【0017】
ここで、一のシートパッドPに対し、一の端末係止用クリップ付き第一発泡体2であってもよいが、第一発泡体3が車幅方向に長くなる場合は、複数分割するとより好ましくなる。第一発泡体3を車幅方向で分離し、複数に分けると、第一発泡体3に係る両端間長さの成形収縮による寸法誤差が小さくなるからである。本実施形態も端末係止用クリップ付き第一発泡体2が車幅方向に二つに分割される。平面視で車幅方向の中間地点にて、車両前後方向に切る線を中心にして二分割され、線対称の端末係止用クリップ付き第一発泡体2が一対形成される(
図2)。二つの端末係止用クリップ付き第一発泡体2には、それぞれ凹溝34が四個設けられている。 このような二つ(複数)の端末係止用クリップ付き第一発泡体2が、第二発泡体6に一体化されてシートパッドPになる。
【0018】
第二発泡体6は、裏面6b側に、端末係止用クリップ付き第一発泡体2に係る各凹溝34内の立片部42,鉤部43が露出する状態を保って、端末係止用クリップ付き第一発泡体2を埋設して成形されている発泡成形体である。着座乗員が当接する側の当たり面部分611の在る座部層61を有して、軟質ポリウレタン発泡成形体で形成したクッション体になっている。前記第一発泡体3の裏面3bを露出させて嵩上げ用下層にし、その上に、第二発泡体6が座部層61を積層させて発泡成形される。第二発泡体表面6aで、乗員座席のメイン部6Aとサイド部6B等との境界部位には、表皮Fの吊溝69が形成される。着座乗員はシートパッドPに被せる表皮Fを介して当たり面部分611に当接する。
【0019】
本発明のシートパッドPは、第二発泡体6が端末係止用クリップ付き第一発泡体2を埋設して一体発泡成形されても、シートパッドPの裏面に第一発泡体裏面3bに形成された凹溝34がそのまま露出し、且つ各凹溝34内で一対の立片部42及び鉤部43も露出した状態を保つ(
図3)。そして、本実施形態は一対の立片部42に係る外方側立片部42bと凹溝34を形成する外方側立壁34bとの隙間W2を、一対の立片部42に係る内方側立片部42aと凹溝34を形成する内方側立壁34aとの隙間W1よりも狭く設定する(
図4)。表皮Fの掛止具Kを両鉤部43間に挿入すると、鉤部43,立片部42は一旦拡開した後、閉じて掛止具Kを挟着して、表皮FでシートパッドPを被うが、被った後、閉じていた鉤部43,立片部42が不用意に開かないようにするためである。鉤部43,立片部42が掛止具Kを挟着保持した後、表皮Fに引っ張る外力が加わって掛止具Kが外れようとしても、外方側立壁34bとの隙間W2が狭いと、
図4の鎖線図示のごとく、外方側立片部42bが外方側立壁34bに当たって掛止具Kの外れるのを抑えることができる。該端末係止用クリップ4を埋設一体化した第一発泡体3を発泡成形し、この端末係止用クリップ付き第一発泡体2をインサート品にして、第二発泡体6が一体発泡成形されている。
【0020】
図3,
図4のごとく、第二発泡体6は座部層61が芯パッド天面3aを覆い、側周層62が第一発泡体3の側面3dを覆う。第二発泡体6に係る座部層61の上面は着座乗員が当接する当たり面部分611側の意匠面となり、側周層62の外面が第二発泡体6の側面側意匠面になる。第二発泡体6が、シートパッドPの裏面にもなる第一発泡体裏面3bを除いて、第一発泡体3に覆い被さって一体化し、所望のシートパッドPに仕上がっている。 図示を省略するが、第一発泡体3に天面3aから裏面3bへ貫通する、特開2017-206077に開示のガス抜き用透孔を設け、さらに裏面3b側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けている。後述する第二発泡体6の発泡成形で、該透孔や窪みを第二発泡体6が埋めることによって、第二発泡体6は第一発泡体3との一体強化が図られる。図中、符号3Eはバックレストとの合わせ部を示す。
【0021】
図12は他態様のシートパッドPで、
図1~
図4のシートパッドPに表皮Fの吊溝用クリップ5を付加したものになっている。 基部51に頸部55を介して一対の起立部52が離間して立設し、且つ両起立部52のそれぞれの先端部位に、対向する相手方起立部52へ張り出すフック部53が形成された表皮Fの吊溝用クリップ5をさらに具備する。裏面3b側で前記端末係止用クリップ4に係る一対の立片部42及び鉤部43が露出状態になり、さらに天面3a側では一対の起立部52及びフック部53が露出状態になって、吊溝用クリップ5と端末係止用クリップ4を埋設一体化した第一発泡体3が発泡成形される。前記端末係止用クリップ付き第一発泡体2に代えて、吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1とする。そして、第二発泡体表面6aに形成する吊溝69内で、起立部52及びフック部53の露出状態を保って、第二発泡体6が吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1を埋設一体化して発泡成形され、吊溝用クリップ5をも付加した所望のシートパッドPに出来上がっている。他の端末係止用クリップ4等についての構成は
図1~
図4のシートパッドPと同様で、その説明を省く。
【0022】
(2)車両用シートパッドの製造方法 前記シートパッドPは、
図1~
図4ごとくの端末係止用クリップ付き第一発泡体2を採用して、例えば次のように造られる(
図7~
図11)。発泡成形型7を用い、乗員が当接する側の当たり面部分611を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成した第二発泡体6を発泡成形し、その発泡成形で、インサート品の端末係止用クリップ付き第一発泡体2と一体化する車両用シートパッドPを製造する。
【0023】
シートパッドPの製造に先立ち、端末係止用クリップ付き第一発泡体2,発泡成形型7を準備する。端末係止用クリップ付き第一発泡体2は、(1)シートパッドで述べたものと同じで、詳細説明を省く。
図1,
図2のようにシートパッドP裏面の車幅方向中央で分離して二分割され、第二発泡体6に埋設される一対(複数)の端末係止用クリップ付き第一発泡体2を用いる。
【0024】
発泡成形型7は
図8ごとくの分割型で、下型9と上型8が開閉可能に接続されている。型閉じすると、全体が椀状に凹んで当たり面部分611の意匠面を形成する下型キャビティ面91と、第一発泡体3の裏面に合わせた全体が略平坦な上型キャビティ面81とで、シートパッドP用キャビティができる(
図9)。上型8への一対の端末係止用クリップ付き第一発泡体2のセットで、車幅方向両端寄りに配された端末係止用クリップ4に対応する上型キャビティ面81の部位には、係合突起82が形成される。両鉤部43間の口を弾性変形で広げて立片部42間へ係合突起82の頭部が入り込むと、該頭部を端末係止用クリップ4が弾性復元力で挟着して係合突起82に保持される。 本実施形態は、
図7,
図11のごとく、車幅方向両端寄りの端末係止用クリップ付き第一発泡体2に対応する上型キャビティ面81の二箇所の部位にのみ、係合突起82を設ける。上型8へ端末係止用クリップ付き第一発泡体2をセットが可能であれば、他の端末係止用クリップ4の対応部位にも係合突起82を勿論設けてもよい。尚、発泡成形型7は
図2のシートパッドPを上下が逆になった形で成形する。
【0025】
シートパッドの製法は、まず、型開状態下、前記二つの端末係止用クリップ付き第一発泡体2を用い、これを発泡成形型7にセットする。ここでは、
図7ごとくの端末係止用クリップ付き第一発泡体2が一対(複数)用意されている。端末係止用クリップ4と係合突起82とが対向するようにして、端末係止用クリップ付き第一発泡体2を上型キャビティ面81のそれぞれの部位にセットする。
【0026】
具体的には、
図7で、第一発泡体3の裏面3b側を上にして、係合突起82に端末係止用クリップ4を対向させる。係合突起82へ押し付けることによって、両鉤部43間の口を弾性変形で開かせて、係合突起82の頭部が両鉤部43間を通り、両立片部42間に入り込む。すると、弾性復元力で両鉤部43の口が閉じる。係合突起82の頭部を端末係止用クリップ4が銜えこむ格好で、端末係止用クリップ付き第一発泡体2が上型キャビティ面81に係止セットされる。端末係止用クリップ4及び係合突起82は、
図7の紙面垂直方向の所定長さで等断面形状としている。よって、端末係止用クリップ4が係合突起82の頭部を挟着すれば、端末係止用クリップ付き第一発泡体2は、上型キャビティ面81上での位置が一義的に定まり、自動的にセットされる。上型8への端末係止用クリップ付き第一発泡体2のセットで、端末係止用クリップ4を収める凹溝34の溝口が平らな上型キャビティ面81によって塞がれる(
図8)。一対の端末係止用クリップ付き第一発泡体2は、上型キャビティ面81で少し離してセットされ、両者間に空きスペースSができるようにしている。
【0027】
次いで、下型キャビティ面91上に、注入ノズルNL等を使用して第二発泡体6用発泡原料を注入する。 続いて、上型8を作動させ型閉じする(
図9)。上型8と下型9との型閉じで、端末係止用クリップ付き第一発泡体2がインサートセットされたシートパッドP用キャビティCができる。本実施形態は発泡原料の注入後に型閉じしたが、型閉じ後に発泡原料gを注入することもできる。
【0028】
型閉じ後、第二発泡体6の発泡成形に移る。意匠面側に当たり面部分611を有し、且つその反対側の内面6bを第一発泡体3の天面3aに当接させて座部層61を形成した第二発泡体6を発泡成形する。
図9の型閉じ状態を所定時間維持し、シートパッドP裏面側になる凹溝34内で、一対の立片部42及び鉤部43が露出状態を保って、軟質ポリウレタン発泡成形体の第二発泡体6を発泡成形する。下型キャビティ面91で当たり面部分611を形成すると共に、該当たり面部分611とは反対側の内面6bを第一発泡体3の天面3aに当接させた第二発泡体6を発泡成形する(
図10)。前記空きスペースSは第二発泡体6で埋められる。
【0029】
本実施形態は、内方側立片
部42aと内方側立壁34aとの隙間W1よりも、外方側立片部42bと外方側立壁34bとの隙間W2を狭めた端末係止用クリップ付き第一発泡体2をインサート品にして、第二発泡体6が一体成形されている。したがって、
図4,
図10のような外方側立片部42bと外方側立壁34bとの隙間W2の方が、隙間W1よりも狭いシートパッドPが造られる。
【0030】
第二発泡体6の発泡成形を完了させ型を開けば(
図11)、端末係止用クリップ4を有し、第一発泡体3の組み込みによる軽量化を実現したシートパッドPが得られる。 ここで、端末係止用クリップ付き第一発泡体2は、車幅方向で二つに分割されているため、第一発泡体3の成形において収縮が大きくても、上型8の係合突起82に端末係止用クリップ4を保持させた状態で第二発泡体6を成形することができる(
図11のロ)。そして、シートパッドPの周縁から端末係止用クリップ4までの距離Lが常に一定に保たれる。成形収縮が大きい第一発泡体3にあっても、シートパッドPにおける端末係止用クリップ4の位置が守られ、距離Lが変動しない。表皮Fの掛止具Kを端末係止用クリップ4へ円滑挿入でき、所望のシートパッドPが得られる。 図中、符号3Gは成形収縮小の第一発泡体、符号3Bは成形収縮大の第一発泡体、符号89,99は下型9側,上型8側の型合せ面を示す。
【0031】
また、本発明はさらに発展させて、端末係止用クリップ付き第一発泡体2に代えて、
図12ごとくの吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1を、上型8にセットしてシートパッドPを製造できる。 裏面3b側で、端末係止用クリップ4がインサート品になって第一発泡体3を一体発泡成形するが、その天面3a側にも吊溝用クリップ5がインサート品になって一体発泡成形して、吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1が造られる。基部51から頸部55を介して一対の起立部52が離間して立設し、且つ両起立部52のそれぞれの先端部位に対向する相手方起立部52へ張り出すフック部53が形成された吊溝用クリップ5をインサート品として、第一発泡体3が成形される。
【0032】
そうして、第一発泡体3の天面3a側で一対の起立部52及び前記フック部53が露出状態になって、一体発泡成形されている吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1を、第一発泡体3の天面3a側が下向きになるようにして、上型キャビティ面81にセットする。その後、第二発泡体6の表面6aに設けた吊溝69内に一対の起立部52及びフック部53が露出状態になるようにして、第二発泡体6を発泡成形する。脱型すれば、
図12のようなシートパッドPを得る。 本実施形態は、
図8の発泡成形型7の下型9に吊溝用突条部96を設けている。
図12のシートパッドPの製造では、型閉じで吊溝用クリップ5に対向する突条部96の箇所に、
図6で示した平面視矩形枠部T2と略同形の枠壁部(図示せず)が組み込まれる。型閉じで、起立部52,フック部53を枠壁部の枠内に収め、板状基部51が枠壁部の上面開口に蓋をするようにしている。 他の構成は(1)シートパッドPで述べた内容と同じで、その説明を省く。(1)で述べた符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0033】
(3)効果 このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法によれば、第二発泡体6を軟質ポリウレタン発泡成形体にし、これよりも軽量で硬いポリプロピレンフォーム等の第一発泡体3を用いることによって、シートパッドPを軽量化できる。 そして、凹溝34内で立片部42,鉤部43が裏面3b側で露出した端末係止用クリップ付き第一発泡体2を、立片部42,鉤部43が裏面6b側で露出する状態を保って埋設一体化して第二発泡体6が成形されると、この端末係止用クリップ4を利用して表皮Fの掛止具Kを係止できる。
図3のように掛止具Kの矢尻状頭部を鉤部43間に広げて挿入して、頭部を一対の鉤部43,立片部42で挟着すれば確実に係止できる。第一発泡体3に埋設一体化した端末係止用クリップ4は合成樹脂製成形品にして、弾性変形,弾性復元が可能であり、立片部42,鉤部43の拡開,挟着を簡便且つ円滑に進めることができる。第一発泡体3に端末係止用クリップ4を一体化させることによって、特許文献1のように溝部にアンダーカットの突出部位を形成することを要せず、歩留り低下を招かない。さらに、端末係止用クリップ4は、クッション性のある第二発泡体6よりも硬くて保形性がある第一発泡体3に一体化しているので、立片部42,鉤部43が安定保持されてぐらつかず、表皮側の係止具Kよる拡開が容易になる。
【0034】
また、特許文献1が、溝部に掛止具Kを収容する役割と溝部内壁に設けた突出部位に表皮Fの掛止具Kを止める役割とを担わせているのに対し、本発明は、表皮Fの掛止具Kを止める端末係止用クリップ4が、第一発泡体3に形成される凹溝34とは別箇に設けられるので、凹溝34は
図4のごとく横断面視が矩形のごく単純形状となり、第一発泡体裏面3bにおける溝口周りを平坦にできる。したがって、端末係止用クリップ付き第一発泡体2を上型8へセットすると、凹溝34の溝口が平らな上型キャビティ面81で簡単に塞ぐことができる(
図8)。特別な対策なしで、第二発泡体6の成形で凹溝34内へ発泡原料の侵入を防ぐことができる。
【0035】
加えて、第二発泡体6に、複数の端末係止用クリップ付き第一発泡体2を埋設一体化していると、各第一発泡体3の全長が小さくなるので、成形収縮が大きい第一発泡体3にあっても、シートパッドPの裏面周縁から各端末係止用クリップ4までの寸法誤差が小さくなる。寸法誤差が小さくなる分、表皮Fに取付けられた掛止具Kを凹溝34内に在る端末係止用クリップ4にたやすく係止させることができる。
【0036】
さらに、上型8に係合突起82が形成されて、端末係止用クリップ4を係合突起82に係合させて第二発泡体6を発泡成形すれば、該端末係止用クリップ4に位置ずれのないシートパッドPが出来上がる。係合突起82に端末係止用クリップ4を保持させた状態で第二発泡体6が成形されるので、シートパッドPの周縁から端末係止用クリップ4までの距離Lは変化しない(
図11のロ)。シートパッドPの端末係止用クリップ4は、シートパッドPの裏面周縁からの距離が変化せずに一定に保たれる。表皮Fの係止具Kを係止する相手側となる端末係止用クリップ4は、第一発泡体3を用いた際の成形収縮による位置ずれが問題になるのを一気に解決し、製品の歩留まり向上やシートパッドPに表皮Fを被せる作業性向上に役立つ。
【0037】
さらにいえば、本実施形態のように、車幅方向に分割した端末係止用クリップ付き第一発泡体2の車両前後方向の略中央域にある端末係止用クリップ4と対向する上型キャビティ面81に係合突起82を設け、該係合突起82を端末係止用クリップ4が挟着して端末係止用クリップ付き第一発泡体2が上型8にセットされると、
図1の車両前方側のシートパッドPの裏面沿いに在る端末係止用クリップ4や車両後方側のシートパッドPの裏面沿いに在る端末係止用クリップ4が、遠く離れないので、第一発泡体3の成形収縮による寸法誤差が大きくならない。そのため、成形収縮のある第一発泡体3に複数の端末係止用クリップ4が設けられても、これらに掛止具Kをうまく係止させることができ、端末係止用クリップ4への掛止具Kの係止不良を減らすことができる。
【0038】
また、第二発泡体6が、吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体1を埋設一体化して発泡成形されていると、吊溝用クリップ5が保形性のある第一発泡体3に一体化されているので、ぐらつかず安定し、該吊溝用クリップ5へ吊溝69用の掛止具Kを楽に係止できる。さらに、吊溝用クリップ5、端末係止用クリップ4、及び第一発泡体3が一部品にまとまるので、シートパッドPの製造が行い易く、部品管理にも優れる。
【0039】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。第一発泡体3,表皮Fの端末係止用クリップ4,表皮Fの吊溝用クリップ5,第二発泡体6,発泡成形型7,シートパッドP等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態はクッションパッドに適用したが、バックパッドにも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 吊溝用クリップ付き兼端末係止用クリップ付き第一発泡体 2 端末係止用クリップ付き第一発泡体 3 第一発泡体 3b 裏面 34 凹溝 4 端末係止用クリップ(表皮の端末係止用クリップ) 41 基板部 42 立片部 43 鉤部 5 吊溝用クリップ(表皮の吊溝用クリップ) 6 第二発泡体 7 発泡成形型 81 上型キャビティ面 C キャビティ F 表皮 P シートパッド
【手続補正書】
【提出日】2025-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に設けられた凹溝内にクリップが配置されたクリップ付き第一発泡体と、
前記クリップ付き第一発泡体の天面側に形成された第二発泡体と、を具備し、
前記クリップ付き第一発泡体における第一発泡体は、ビーズ発泡成形体である車両用シートパッド。
【請求項2】
天面側にクッション体が形成されて車両用クッションパッドを構成するクリップ付きビーズ発泡体であって、
裏面に設けられた凹溝内にクリップが配置されたクリップ付きビーズ発泡体。