(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001090
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】消火・防火装置及び試験装置
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20241225BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A62C3/00 D
A62C35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100480
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 真希
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB08
(57)【要約】
【課題】電池が発火した場合又は電池が発火しかけている場合に迅速に消火又は防火する。
【解決手段】消火・防火装置1は、液化炭酸ガスを貯留するボンベ2と、電池8が収容されたハウジング70内にボンベ2からの液化炭酸ガスを噴射し、電池8にドライアイスDを供給するノズル3とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスを貯留するボンベと、
電池が収容されたハウジング内に前記ボンベからの前記液化炭酸ガスを噴射し、前記電池にドライアイスを供給するノズルとを備えた消火・防火装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消火・防火装置において、
前記ハウジング内の温度を検出する第1温度センサ、前記ハウジング内の煙を検出する煙センサ及び前記ハウジング内のガスを検出するガスセンサのうちの少なくとも1つのセンサと、
前記ボンベと前記ノズルとの間で延びる前記液化炭酸ガスの流路に配置された弁とをさらに備え、
前記弁は、前記センサの検出結果に基づいて開弁する消火・防火装置。
【請求項3】
請求項2に記載の消火・防火装置において、
前記センサは、前記第1温度センサを少なくとも含み、
前記第1温度センサは、前記ハウジングに形成された空気の流出口の近傍に配置されている消火・防火装置。
【請求項4】
請求項1に記載の消火・防火装置において、
前記電池の温度を検出する第2温度センサと、
前記ボンベと前記ノズルとの間で延びる前記液化炭酸ガスの流路に配置された弁とをさらに備え、
前記弁は、前記第2温度センサによって検出された温度が第2閾値以上の場合に開弁する消火・防火装置。
【請求項5】
請求項4に記載の消火・防火装置において、
前記ハウジング内の温度を検出する第1温度センサをさらに備え、
前記弁は、前記第1温度センサによって検出された温度が第1閾値以上の場合に開弁し、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも低い消火・防火装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の消火・防火装置と、
前記電池を収容するハウジングとを備えた試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、消火・防火装置及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、品質検査等の試験中の電池が熱暴走して発火した場合に、電池の消火又は防火を行う消火・防火装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された装置は、保管庫内に保管された電池に異常が発生した場合に、電池の保管位置を検知する。この装置は、検知した保管位置において、炭酸ガスを用いて電池の消火を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、消火に時間がかかった場合、異常が発生した電池以外の正常な電池に対する被害が大きくなる虞がある。そのため、消火時間を短縮することは重要である。また、電池が発火しかけている場合に発火を未然に防止する、即ち防火することができれば正常な電池に対する被害を抑制できる。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池が発火した場合又は電池が発火しかけている場合に迅速に消火又は防火することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された消火・防火装置は、液化炭酸ガスを貯留するボンベと、電池が収容されたハウジング内に前記ボンベからの前記液化炭酸ガスを噴射し、前記電池にドライアイスを供給するノズルとを備えている。
【0007】
ここに開示された試験装置は、前記消火・防火装置と、前記電池を収容するハウジングとを備えている。
【発明の効果】
【0008】
前記消火・防火装置によれば、電池が発火した場合又は電池が発火しかけている場合に迅速に消火又は防火することができる。
【0009】
前記試験装置によれば、電池が発火した場合又は電池が発火しかけている場合に迅速に消火又は防火することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試験装置を側方から視た模式的な断面図である。
【
図3】変形例に係る試験装置を側方から視た模式的な断面図である。
【
図4】変形例に係る噴射制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、試験装置100を側方から視た模式的な断面図である。
【0012】
試験装置100は、電池8を試験する。例えば、試験装置100は、電池8の充放電試験を行う。電池8は限定されないが、例えば二次電池である。具体的には、電池8は、リチウムイオン電池である。試験装置100は、消火・防火装置1と、電池8を収容するハウジング70とを備えている。消火・防火装置1は、ハウジング70に取り付けられている。
【0013】
ハウジング70は、例えば恒温槽である。ハウジング70は、密閉された内部空間を有する略直方体状に形成されている。ハウジング70は、内部空間を試験室72と空調室73とに仕切る仕切壁71を有する。仕切壁71は、試験室72と空調室73とを気密には仕切っておらず、試験室72と空調室73とを互いに連通させる。この例では、ハウジング70の上面に放圧ベント92が取り付けられている。放圧ベント92は、ハウジング70内の圧力が異常に高まった場合に開放される。これにより、ハウジング70の破損が抑制される。
【0014】
試験室72には、電池8が配置されている。電池8には、図示しないテスタ等の評価装置が接続されている。空調室73には、空調機器91及び送風機93が配置されている。空調機器91は、ハウジング70内の空気を冷却、加熱、除湿又は加湿する。送風機93は、例えば、ファンである。送風機93は、空調室73と試験室72とで空気を循環させる。この例では、仕切壁71の上端に空気の流入口71aが形成され、仕切壁71の下端に空気の流出口71bが形成されている。本開示では、「流入」及び「流出」とは、試験室72から視た場合の空気の流れを指す。すなわち、空気は、試験室72から視て流入口71aから流入し流出口71bから流出するように循環する。尚、仕切壁71の上端に空気の流出口71bが形成され、仕切壁71の下端に空気の流入口71aが形成されていてもよい。
【0015】
消火・防火装置1は、電池8の試験中に電池8が発火した場合又は電池8が発火しかけている場合に、ドライアイスDを用いて電池8を消火又は防火する。消火・防火装置1は、液化炭酸ガスを貯留するボンベ2と、ハウジング70内にボンベ2からの液化炭酸ガスを噴射し、電池8にドライアイスDを供給するノズル3とを備えている。ボンベ2には、高圧状態で液化炭酸ガスが貯留されている。ボンベ2は、ハウジング70の外側に配置されている。ノズル3は、試験室72内に配置されている。ハウジング70内の気圧は概ね大気圧であるため、液化炭酸ガスは、ノズル3からの噴射直後、又は、僅かな時間の経過後にドライアイスDに変化する。このドライアイスDが電池8に接触し、電池8が消火又は防火される。詳しくは、ドライアイスDは、電池8における酸素との接触を遮断するとともに、電池8を冷却する。
【0016】
詳しくは、上下方向位置において、ノズル3は、電池8よりも上側に配置されている。これにより、ノズル3の近傍で液化炭酸ガスから変化したドライアイスDを落下させて、電池8に容易に接触させることができる。ノズル3において、ドライアイスDの噴射口は、電池8と対向している。これにより、効率的にドライアイスDを電池8に供給することができる。
【0017】
消火・防火装置1は、第1温度センサ41、煙センサ43及びガスセンサ44のうちの少なくとも1つのセンサ4と、ボンベ2とノズル3との間で延びる液化炭酸ガスの流路51に配置された弁5とをさらに備えている。流路51は、例えば金属配管である。消火・防火装置1は、センサ4の検出結果に基づいて弁5を開弁し、ドライアイスDを電池8に供給する。
【0018】
第1温度センサ41は、ハウジング70内の温度を検出する。この例では、第1温度センサ41は、試験室72内の雰囲気の温度を検出する。第1温度センサ41は、試験室72内に配置されている。詳しくは、第1温度センサ41は、流出口71bの近傍に配置されている。すなわち、第1温度センサ41は、電池8よりも風下側に配置されている。第1温度センサ41は、検出された温度が第1閾値以上の場合に、異常信号を弁5へ出力する。第1閾値は、ハウジング70内の通常温度と、電池8が発火している場合又は発火しかけている場合のハウジング70内の異常温度との間の境界となる温度であり、予め設定されている。
【0019】
煙センサ43は、ハウジング70内の煙を検出する。上下方向位置において、煙センサ43は、電池8よりも上側に配置されている。これにより、上方に向かう煙を効率的に検出できる。煙センサ43は、煙が検出された場合に、異常信号を弁5へ出力する。
【0020】
ガスセンサ44は、ハウジング70内のガスを検出する。検出対象のガスは、発火又は発火しかけているときに電池8から放出され得るガスであり、電池8に依存する。ガスセンサ44は、検出対象のガスに応じて試験室72内の所定位置に配置される。すなわち、検出対象のガスが空気よりも軽いガス(例えば、水素)の場合、上下方向位置において、ガスセンサ44は電池8よりも上側に配置されていることが好ましい。検出対象のガスが空気よりも重いガス(例えば、硫化水素)の場合、上下方向位置において、ガスセンサ44は電池8よりも下側に配置されていることが好ましい。検出対象のガスが空気と同等な重さのガス(例えば、一酸化炭素)の場合、ガスセンサ44は試験室72内の任意の位置に配置され得る。ガスセンサ44は、ガスが検出された場合に、異常信号を弁5へ出力する。
【0021】
弁5は、ボンベ2を開閉する。この例では、弁5は、電動弁である。具体的には、弁5は、電磁弁である。弁5は、センサ4からの異常信号が入力された場合に、電池8が発火している又は発火しかけていると判断し開弁する。すなわち、弁5は、センサ4の検出結果に基づいて開弁する。具体的には、弁5は、第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上の場合、煙センサ43によって煙が検出された場合、及びガスセンサ44によってガスが検出された場合の何れかの場合に開弁する。弁5が開弁されると、ボンベ2からノズル3へ液化炭酸ガスが供給され、ノズル3から液化炭酸ガスが噴射される。
【0022】
続いて、弁5が実行する噴射制御について説明する。
図2は、噴射制御のフローチャートである。
【0023】
弁5は、例えば電源が入ると、ステップS101、ステップS102及びステップS103の処理を実行する。ステップS101、ステップS102及びステップS103は、並列に処理される。具体的には、ステップS101において、弁5は、第1温度センサ41から異常信号が入力されているか否か、即ち第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。第1閾値以上の場合にステップS104へ進み、第1閾値以上でない場合にステップS101を再度実行する。ステップS102において、弁5は、煙センサ43から異常信号が入力されているか否か、即ち煙センサ43によって煙が検出されたか否かを判定する。煙が検出された場合にステップS104へ進み、煙が検出されていない場合にステップS102を再度実行する。ステップS103において、弁5は、ガスセンサ44から異常信号が入力されているか否か、即ちガスセンサ44によってガスが検出されたか否かを判定する。ガスが検出された場合にステップS104へ進み、ガスが検出されていない場合にステップS103を再度実行する。
【0024】
ステップS101において第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上であると判定された場合、ステップS102において煙センサ43によって煙が検出されたと判定された場合、及びステップS103においてガスセンサ44によってガスが検出されたと判定された場合のうちの少なくとも1つの場合に、ステップS104において弁5が開弁する。これにより、ノズル3から液化炭酸ガスが噴射され、電池8にドライアイスDが供給される。
【0025】
このような噴射制御によれば、電池8の熱暴走時(即ち、異常発熱時)において、第1温度センサ41、煙センサ43及びガスセンサ44の何れかが電池8の異常を検知し、異常信号を弁5へ出力する。異常信号が弁5に入力されると、ドライアイスDが電池8に供給される。電池8が熱暴走して発火している場合では、ドライアイスDが電池8に接触すると、電池8の発熱によりドライアイスDが昇華して炭酸ガスに変化する。ハウジング70内が炭酸ガスで満たされることによって、発火した電池8が窒息消火される。特に、試験装置100では、ドライアイスDが炭酸ガスに変化してハウジング70内の圧力が高まると、放圧ベント92が開放され、ハウジング70内の空気が炭酸ガスに置換される。そのため、窒息消火を効率的に行うことができる。ここで、電池8が熱暴走して異常発熱すると、例えば電池8の電解液等が分解され、酸素が発生し得る。すなわち、電池8自体が燃焼のための酸素供給体となり、窒息消火が阻害され得る。ドライアイスDが電池8に接触することにより、電池8が直接冷却される。さらに、ドライアイスDの昇華時の昇華潜熱が電池8から奪われ、電池8がより一層冷却される。これにより、電池8の異常発熱が抑制され、酸素の発生が抑制される。その結果、効率的に窒息消火が行われ、電池8を迅速に消火できる。電池8が発火しかけている場合においても、前述の如く、ドライアイスDによる電池8の直接冷却と、ドライアイスDの昇華潜熱による電池8の冷却とにより、電池8の発火を阻止し且つ電池8の熱暴走を迅速に沈静化できる。すなわち、電池8の防火を迅速に達成できる。
【0026】
消火・防火装置1では、ドライアイスDを用いて電池8を消火又は防火するため、迅速に電池8を消火又は防火できる。仮に炭酸ガスのみを用いて電池8を消火又は防火する場合、迅速な消火又は防火を達成できない虞がある。詳しくは、電池8が熱暴走して発火した場合では、前述の如く、電池8自体が燃焼のための酸素供給体となり得るため、窒息消火が阻害される。そのため、消火時間が長くなる虞がある。電池8が発火しかけている場合では、炭酸ガスのみでは電池8を冷却できないため、電池8の異常発熱を抑制できない。そのため、電池8の発火を阻止することができず、電池8の防火を達成できない虞がある。前述の如く、消火・防火装置1では、電池8が熱暴走して発火した場合では、ドライアイスDにより電池8を冷却するため、電池8からの酸素の発生を抑制し、窒息消火を効率的に行うことができる。これにより、消火時間を短縮できる。電池8が発火しかけている場合においても、ドライアイスDにより電池8を冷却するため、電池8の発火を阻止し且つ電池8の熱暴走を迅速に沈静化できる。その結果、迅速に電池8を消火又は防火できる。
【0027】
また、消火・防火装置1では、ボンベ2に貯留された液化炭酸ガスからドライアイスDを生成しているため、設備を単純化することができる。仮にハウジング70の外部にドライアイスDを保管しておき、このドライアイスDを消火に用いる場合、ドライアイスDを保管するための大掛かりな設備が必要になる。一方、液化炭酸ガスをボンベ2に保管する場合は、管理が容易で設備を単純化できる。
【0028】
また、消火・防火装置1では、ドライアイスD及びドライアイスDが昇華した炭酸ガスを消火剤として用いるため、電池8及びハウジング70が消火剤によって汚染されることを抑制できる。
【0029】
さらに、消火・防火装置1は、複数種類(この例では3種類)のセンサ4の検出結果に基づいて弁5を開弁する。そのため、消火・防火装置1は、電池8の異常発熱を素早く検知し、電池8を消火又は防火できる。その結果、消火又は防火をより一層迅速に行うことができる。また、複数種類のセンサ4により電池8の異常を検知しているため、複数種類のセンサ4のうちの何れかのセンサ4が故障等により正常に機能しない場合でも、電池8を迅速に消火又は防火できる。特にこの例では、第1温度センサ41は、流出口71bの近傍に配置されている。すなわち、第1温度センサ41は、電池8よりも風下側に配置されている。そのため、第1温度センサ41が電池8よりも風上側に配置されている場合よりも、第1温度センサ41は電池8の異常発熱を素早く検出できる。
【0030】
続いて、変形例に係る試験装置200について説明する。
図3は、変形例に係る試験装置200を側方から視た模式的な断面図である。試験装置200は、消火・防火装置201の構成が試験装置100と異なる。具体的には、試験装置200は、第2温度センサ42を備えている点と、煙センサ43及びガスセンサ44を備えていない点とで試験装置100と異なる。以下では、試験装置100と異なる点を中心に説明する。
【0031】
第2温度センサ42は、電池8の温度を検出する。第2温度センサ42は、電池8に取り付けられている。第2温度センサ42は、検出された温度が第2閾値以上の場合に、異常信号を弁5へ出力する。第2閾値は、試験中の電池8の通常温度と、電池8が発火している場合又は発火しかけている場合の電池8の異常温度との間の境界となる温度であり、予め設定されている。この例では、第2閾値は、第1閾値よりも低い。
【0032】
弁5は、第2温度センサ42からの異常信号が入力されたとき、即ち第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値以上の場合に開弁する。この例では、弁5は、第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上の場合、及び第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値以上の場合の何れかの場合に開弁する。
【0033】
続いて、弁5が実行する噴射制御について説明する。
図4は、噴射制御のフローチャートである。
【0034】
弁5は、例えば電源が入ると、ステップS201及びステップS202の処理を実行する。ステップS201及びステップS202は、並列に処理される。すなわち、ステップS201において、弁5は、第1温度センサ41から異常信号が入力されているか否か、即ち第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。第1閾値以上の場合にステップS203へ進み、第1閾値以上でない場合にステップS201を再度実行する。ステップS202において、弁5は、第2温度センサ42から異常信号が入力されているか否か、即ち第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値以上であるか否かを判定する。第2閾値以上の場合にステップS203へ進み、第2閾値以上でない場合にステップS202を再度実行する。
【0035】
ステップS201において第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上であると判定された場合、及びステップS202において第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値以上であると判定された場合のうちの少なくとも1つの場合に、ステップS203において弁5は開弁する。これにより、ノズル3から液化炭酸ガスが噴射され、電池8にドライアイスDが供給される。
【0036】
このような消火・防火装置201によれば、第2温度センサ42が電池8の温度を直接検出するため、電池8の異常発熱を素早く検知できる。そのため、電池8を迅速に消火又は防火できる。この例では、第2温度センサ42に加えて第1温度センサ41を備えているため、例えば第2温度センサ42が故障等により正常に機能しない場合でも、電池8を迅速に消火又は防火できる。また、第2温度センサ42に対応する第2閾値は、第1温度センサ41に対応する第1閾値よりも低い。これにより、第1温度センサ41は電池8が発火した場合の試験室72内の雰囲気の異常温度を検知し、第2温度センサ42は電池8が発火しかけている場合の電池8の異常温度を検知するように、第1温度センサ41及び第2温度センサ42を使い分けることができる。これにより、電池8が発火しかけている場合に電池8が冷却されて防火され、電池8が発火している場合に電池8が冷却されつつ窒息消火される。このように、電池8の異常状態に応じて適切に消火又は防火を行うことができる。
【0037】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0038】
例えば、消火・防火装置1は、ハウジング70に着脱可能に取り付けられていてもよいし、ハウジング70と一体化していてもよい。ハウジング70は恒温槽でなくてもよく、例えば保管庫等であってもよい。ハウジング70が保管庫の場合、ハウジング70の内部空間は、仕切壁71によって仕切られていなくてもよい。すなわち、ハウジング70は空調室73を有していなくてもよい。空調機器91及び送風機93も必須ではない。
【0039】
ハウジング70内におけるノズル3の位置は、限定されない。上下方向位置において、ノズル3は、電池8よりも下側に配置されていてもよい。前述の例では、ノズル3の個数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。弁5は、手動弁であってもよい。
【0040】
消火・防火装置1は、第1温度センサ41、煙センサ43及びガスセンサ44の3つのセンサ4を備えていたが、3つのセンサ4のうち少なくとも1つのセンサ4を備えていればよい。
図2のフローチャートに示したように、消火・防火装置1では、第1温度センサ41、煙センサ43及びガスセンサ44の何れかの検出結果が異常の場合に開弁されたが、第1温度センサ41、煙センサ43及びガスセンサ44のうちの何れか2つのセンサ4の検出結果が異常の場合、又は、全てのセンサ4の検出結果が異常の場合に開弁されてもよい。煙センサ43は煙濃度を検出して、煙濃度が所定の閾値以上の場合に異常信号を弁5へ出力してもよい。同様に、ガスセンサ44はガス濃度を検出して、ガス濃度が所定の閾値以上の場合に異常信号を弁5へ出力してもよい。消火・防火装置1は、センサ4及び弁5を備えていなくてもよい。例えば、単にボンベ2の開閉バルブが手動で操作されることにより、液化炭酸ガスは、流路51を通ってノズル3から噴射されてもよい。
【0041】
第1温度センサ41は、流出口71bの近傍に配置されていなくてもよい。例えば、第1温度センサ41は、電池8の風下側であって、電池8の近傍に配置されていてもよい。
【0042】
試験装置200は、第1温度センサ41を備えていなくてもよい。試験装置200は、煙センサ43及びガスセンサ44をさらに備えていてもよい。
【0043】
フローチャートは、一例に過ぎない。フローチャートにおけるステップを適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行ってもよい。また、フローチャートにおけるステップの順番を変更したり、直列的な処理を並列的に処理したりしてもよい。例えば、
図4に示したフローチャートにおいて、ステップS203の後にステップS204として、弁5が、第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値未満か否かを判定するステップが付加されてもよい。ステップS204において第2閾値未満と判定された場合、ステップS205として、弁5が閉弁されるステップが付加されてもよい。ステップS204において第2閾値未満ではないと判定された場合、ステップS203に戻ってもよい。これにより、消火・防火装置1は、電池8の熱暴走が沈静化した場合に液化炭酸ガスの噴射を停止することができる。
【0044】
ここに開示された技術をまとめると以下のようになる。
【0045】
[1] 消火・防火装置1,201は、液化炭酸ガスを貯留するボンベ2と、電池8が収容されたハウジング70内に前記ボンベ2からの前記液化炭酸ガスを噴射し、前記電池8にドライアイスDを供給するノズル3とを備えている。
【0046】
この構成によれば、ドライアイスDを用いて電池8を消火又は防火するため、迅速に電池8を消火又は防火できる。詳しくは、電池8が熱暴走して発火した場合では、ドライアイスDが電池8に接触すると、電池8の発熱によりドライアイスDが昇華して炭酸ガスに変化する。ハウジング70内が炭酸ガスで満たされることによって、発火した電池8が窒息消火される。ここで、電池8が熱暴走して異常発熱すると、例えば電池8の電解液が分解され、酸素が発生し得る。すなわち、電池8自体が燃焼のための酸素供給体となり、窒息消火が阻害され得る。消火・防火装置1,201では、ドライアイスDが電池8に接触すると、電池8が直接冷却される。さらに、ドライアイスDの昇華時の昇華潜熱が電池8から奪われ、電池8がより一層冷却される。これにより、電池8の異常発熱が抑制され、酸素の発生を抑制することができる。その結果、効率的に窒息消火が行われ、電池8を短時間で消火できる。電池8が発火しかけている場合においても、前述の如く、ドライアイスDによる電池8の直接冷却と、ドライアイスDの昇華潜熱による電池8の冷却とにより、電池8の異常発熱が抑制され、電池8の熱暴走を沈静化できる。すなわち、電池8の防火を迅速に達成できる。
【0047】
[2] [1]に記載の消火・防火装置1,201において、前記ハウジング70内の温度を検出する第1温度センサ41、前記ハウジング70内の煙を検出する煙センサ43及び前記ハウジング70内のガスを検出するガスセンサ44のうちの少なくとも1つのセンサ4と、前記ボンベ2と前記ノズル3との間で延びる前記液化炭酸ガスの流路51に配置された弁5とをさらに備え、前記弁5は、前記センサ4の検出結果に基づき開弁する。
【0048】
この構成によれば、センサ4の検出結果に基づいて弁5の開弁が制御されるため、ボンベ2の開閉を手動で行う場合よりも素早く電池8の異常を検知して電池8を消火又は防火できる。その結果、より一層迅速に電池8を消火又は防火できる。
【0049】
[3] [1]又は[2]に記載の消火・防火装置1,201において、前記センサ4は、前記第1温度センサ41を少なくとも含み、前記第1温度センサ41は、前記ハウジング70に形成された空気の流出口71bの近傍に配置されている。
【0050】
この構成によれば、電池8よりも風下側に第1温度センサ41を配置することができる。そのため、第1温度センサ41が電池8よりも風上側に配置されている場合よりも、第1温度センサ41は電池8の異常発熱を素早く検出できる。
【0051】
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載の消火・防火装置1,201において、前記電池8の温度を検出する第2温度センサ42と、前記ボンベ2と前記ノズル3との間で延びる前記液化炭酸ガスの流路51に配置された弁5とをさらに備え、前記弁5は、前記第2温度センサ42によって検出された温度が第2閾値以上の場合に開弁する。
【0052】
この構成によれば、第2温度センサ42が電池8の温度を直接検出するため、電池8の熱暴走を素早く検知して、電池8を消火又は防火できる。その結果、より一層迅速に電池8を消火又は防火できる。
【0053】
[5] [1]乃至[4]の何れか1つに記載の消火・防火装置1,201において、前記ハウジング70内の温度を検出する第1温度センサ41をさらに備え、前記弁5は、前記第1温度センサ41によって検出された温度が第1閾値以上の場合に開弁し、前記第2閾値は、前記第1閾値よりも低い。
【0054】
この構成によれば、第1温度センサ41は電池8が発火した場合のハウジング70内の異常温度を検知し、第2温度センサ42は電池8が発火しかけている場合の電池8の異常温度を検知するように、第1温度センサ41及び第2温度センサ42を使い分けることができる。これにより、電池8が発火しかけている場合に電池8が冷却されて防火され、電池8が発火している場合に電池8が冷却されつつ窒息消火される。このように、電池8の異常状態に応じて適切に消火又は防火を行うことができる。
【0055】
[6] 試験装置100,200は、[1]乃至[5]の何れか1つに記載の消火・防火装置1,201と、電池8を収容するハウジング70とを備えている。
【0056】
この構成によれば、迅速に消火又は防火できる試験装置を実現できる。
【符号の説明】
【0057】
100,200 試験装置
1,201 消火・防火装置
2 ボンベ
3 ノズル
4 センサ
41 第1温度センサ
42 第2温度センサ
43 煙センサ
44 ガスセンサ
5 弁
51 流路
70 ハウジング
71a 流入口
71b 流出口
8 電池
D ドライアイス