(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109036
(43)【公開日】2025-07-24
(54)【発明の名称】光電変換素子、及び光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20250716BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20250716BHJP
C07D 333/20 20060101ALI20250716BHJP
C07C 229/46 20060101ALI20250716BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250716BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20250716BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20250716BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/86
C07D333/20
C07C229/46
H10K85/60
H10K85/50
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002687
(22)【出願日】2024-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】森 春樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚浩
(72)【発明者】
【氏名】高山 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】大澤 達矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 延博
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107DD71
3K107DD78
4H006AA03
4H006AB92
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BS10
4H006BU48
5F251AA20
5F251BA03
5F251BA05
5F251CB13
5F251CB27
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA43
5F251XA55
(57)【要約】
【課題】光電変換効率が向上した光電変換素子、及び光電変換装置を提供すること。
【解決手段】第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、該光電変換層と前記第一電極との間に、特定の構造を有する化合物を含む正孔輸送層を有することを特徴とする光電変換素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、
該光電変換層と前記第一電極との間に、下記式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層を有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、R
3~R
22は、それぞれ独立して、水素原子、トリメチルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。各官能基が有していてもよい置換基とは、ハロゲノ基、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~18のアルキルチオ基、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数5~36の複素環基である。)
【請求項2】
前記式(1)において、R3~R22が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基である化合物を前記正孔輸送層に含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記式(1)において、R5、R10、R15、R20が、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1~20以下のアルコキシ基である化合物を前記正孔輸送層に含む、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換素子、及び光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギーの枯渇問題及び化石エネルギーの使用による地球の環境問題を解決するために、太陽エネルギー、風力、水力などのように、再生可能であって清浄な代替エネルギー源に関する研究が活発に行われている。そのなかでも、太陽光を直接電気的エネルギーに変化させる太陽電池に関する関心が増大している。ここで、太陽電池とは、太陽光から光エネルギーを吸収し、電子及び正孔が発生する光起電効果を利用して電流-電圧を生成する電池を意味する。
現在、20%を超える光エネルギー変換効率を有するn-pダイオード型シリコン(Si)単結晶ベースの太陽電池が広く知られ、実際に太陽光発電に用いられている。しかしながら、これらは、高温処理工程を必要とし、また材料自体の価格も高いため、単位電力あたりのコストが高いという問題を有している。また、シリコン資源の面から、供給性にも問題を有している。
【0003】
一方、有機材料を用いた太陽電池(以下、「有機太陽電池」という)は、高温処理工程を必要とせず、シート状基板でいわゆるroll to roll方式での生産が可能で低コスト化が見込める。しかし、有機太陽電池の実用化のためには発電効率と耐久性の更なる向上が望まれている。正孔を選択的に輸送する機能を高めて光電変換効率を向上させる目的で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料の開発が進められている。例えば特許文献1及び非特許文献1には、特定の構造を有する化合物を含む正孔輸送層を設けることで、光電変換効率を向上させることが記載されている。また、光電変換層としてペロブスカイト構造の結晶を有するペロブスカイト型太陽電池は、光電変換性に優れるため有機太陽電池の実用化に向けて特に開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Kumar,et al,RSC Adv.,2013,3,15626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によると、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層を有する光電変換素子において、正孔輸送層に特許文献1及び非特許文献1に記載の化合物を用いた光電変換素子では、光電変換効率が不十分であった。
したがって、本発明の目的は、特定の構造を有する化合物を正孔輸送層に用いて、光電変換効率が向上した光電変換素子、及び光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる光電変換素子は、第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、該光電変換層と前記第一電極との間に、下記式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層を有することを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、R
3~R
22は、それぞれ独立して、水素原子、トリメチルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。各官能基が有していてもよい置換基とは、ハロゲノ基、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~18のアルキルチオ基、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数5~36の複素環基である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光電変換効率が向上した光電変換素子、及び光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の光電変換素子の第一の一実施形態の厚さ方向の断面模式図である。
【
図2】本発明の光電変換素子の第二の一実施形態の厚さ方向の断面模式図である。
【
図3】本発明の光電変換素子を備えた移動体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の光電変換素子を備えた建材の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光電変換素子は、第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、該光電変換層と前記第一電極との間に、下記式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層を有する。
【化2】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、R
3~R
22は、それぞれ独立して、水素原子、トリメチルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。各官能基が有していてもよい置換基とは、ハロゲノ基、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~18のアルキルチオ基、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数5~36の複素環基である。
【0011】
本発明者らは検討の結果、光電変換層と第一電極との間に、前記式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層を有することで、光電変換効率が向上した光電変換素子となることを見出した。本発明において、光電変換効率が向上した光電変換素子が得られる理由について、詳細は明らかではないが、次のように考えられる。
前記式(1)で表される化合物は、下記(A)及び(B)の特徴を有する構造を有している。
(A)フルオレン骨格の2位及び7位の炭素原子に、窒素原子が直接結合
(B)フルオレン骨格の9位の炭素原子に、マロン酸エステルのα炭素原子が炭素-炭素2重結合を介して結合
前記特徴(A)の構造を有することで、最高被占軌道(HOMO)の電子分布が分子全体に広がることがDFT計算によって示唆される。HOMOの電子分布が分子全体に広がることで、正孔輸送層内における正孔輸送能が向上することが考えられる。
また、前記特徴(B)の構造を有することで、分子の双極子モーメントが増大し、高い極性を有することがDFT計算によって示唆される。このような高極性の正孔輸送化合物を正孔輸送層に用いることで、正孔輸送層と光電変換層との相互作用が向上するため、光電変換層で発生した正孔が正孔輸送層に移動する効率が向上することが考えられる。
以上のメカニズムのように、特徴(A)及び(B)が相乗的に効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。
【0012】
前記式(1)において、R3~R22は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基であることが好ましく、R5、R10、R15、R20が、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1~20以下のアルコキシ基であることがさらに好ましい。このような置換基を有することで、光電変換効率が向上する。
【0013】
以下に、前記式(1)で表される化合物の具体例(例示化合物1-1~1-12)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0014】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0015】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
【0016】
なお、本明細書中、「層」とは、明確な境界を有する層や平坦な薄膜状の層だけではなく、含有元素が徐々に変化する濃度勾配のある層や、他の層と一緒になって複雑に入り組んだ構造を形成しうる層をも意味する。また、層の元素分析は、例えば、光電変換素子の断面のTOF-SIMS/FE-TEM/EDS線分析測定を行い、特定元素の元素分布を確認することなどによって行うことができる。
【0017】
図1は、本発明の光電変換素子の一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。基板2上に、第二電極3、電子輸送層4、光電変換層5、正孔輸送層6、第一電極7を有する。第一電極7と第二電極3は、一方が正極、他方が負極であり、第一電極7と第二電極3とを外部回路につなぐことで電流を取り出すことができる。
光電変換層5は、基板2と第二電極3と電子輸送層4、又は第一電極7、正孔輸送層6を通して入射した光によって励起され、電子又は正孔を生じる。即ち、光電変換層5は、第一電極7と第二電極3との間に電流を生じる。電子輸送層4は、光電変換層5と二つの電極3,7との間に配置される層であり、場合によっては形成しなくてもよい。電子輸送層4及び光電変換層5が複数積層された形態であってもよい。このような形態はタンデム構造と呼ぶこともできる。また、
図2に示すように、基板2上に、第一電極7、正孔輸送層6、光電変換層5、電子輸送層4、第二電極3の順番で光電変換素子を作製してもよい。
以下に本発明の光電変換素子及び光電変換素子を構成する各部材について説明する。
【0018】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、該光電変換層と該第一電極との間に正孔輸送層を有する、ことを特徴とする。また、光電変換効率を向上させるために、光電変換素子を積層したタンデム型としてもよい。積層させる光電変換素子としては、ペロブスカイト結晶を光電変換層に用いるペロブスカイト型太陽電池に加え、シリコン型太陽電池、CIGS型太陽電池など、光電変換素子の種類に限定されない。
本発明の光電変換素子の各層を成膜する方法としては、塗布方法と蒸着方法が挙げられる。塗布方法の例として、浸漬塗布、スピン塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、メニスカス塗布、スクリーン塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布が挙げられる。塗布方法は後述する各層用の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法である。これらの成膜方法は各層に合わせて所望の方法を選択することができる。
以下、各層について説明する。
【0019】
〔基板〕
本発明の光電変換素子1は、基板2を備えていても良く、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスの透明ガラス基板、セラミック基板、透明プラスチック基板が挙げられる。
図1において、第一電極7側から光を取り込む場合、基板2は不透明な材料を用いることができ、第二電極3側から光を取り込む場合は、基板2は透明な材料で構成する。
【0020】
〔電極〕
第一電極7、第二電極3の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。例えば、金、銀、チタン、銅の金属、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、カーボン、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、Al/Al2O3混合物、Al/LiF混合物が挙げられる。透明電極材として、例えば、CuI、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)の導電性透明材、導電性透明ポリマーが挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第一電極7、第二電極3は、少なくとも光入射側の一方の電極が透明電極であり、他方は透明電極であっても光反射性材料で形成された反射層を兼ねるものであってもよく、光入射側とは反対側に反射層を備えた透明電極でも良い。第一電極7が光入射側の場合には、第二電極3を透明電極として、基板2を反射層としても良い。なお、前記透明電極は、パターニングされた電極でも良い。
【0021】
〔光電変換層〕
光電変換層5は、ペロブスカイト構造の結晶を有する。本発明で用いられるペロブスカイト構造の結晶は、下記式[2]で表されることが好ましい。
ABX3 [2]
上記式[2]において、Aは有機分子又は金属原子の1価のカチオンであり、Bは2価の金属カチオン、Xは1価のハライドアニオンである。
上記式[2]のAとして、例えば有機分子では、CpNmHn(p、m、nはいずれも正の整数)で示されることが好ましい。具体的には、メチルアンモニウム、ホルムアミジウムが挙げられる。
また無機原子は特に限定されないが、リチウム、セシウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムが好ましい。これらの有機分子若しくは無機原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
構成するAのカチオンが3次元のペロブスカイト構造の結晶内で適合するにはあまりにも大きい場合には、2次元のペロブスカイト構造の結晶、2次元と3次元の両方の性質をもった2.5次元のペロブスカイト構造の結晶、3次元と2次元ペロブスカイト構造の2層結晶、又は混合3次元・2次元ペロブスカイト構造の結晶を形成するが、いずれも光電変換層として機能する。3次元と2次元ペロブスカイト構造の2層結晶とは、3次元と2次元のペロブスカイト構造の結晶が独立し別々の層として積層されている結晶を示す。混合3次元・2次元ペロブスカイト構造の結晶とは、2次元又は2.5次元の層状且つ3次元のペロブスカイト構造の結晶の両方の領域又はドメインが混ざった構造の結晶のことを示す。
【0023】
2次元のペロブスカイト構造の結晶、又は2.5次元のペロブスカイト構造の結晶は下記式[3]~[5]で表されることが好ましい。
R’2An-1BnX3n+1 [3]
R’’An-1BnX3n+1 [4]
R’’’AnBnX3n+1 [5]
前記式[3]~[5]は、それぞれ、[3]がRP(Ruddlesden-Popper)型、[4]がDJ(Dion-Jacobson)型、[5]がACI(Alternating cations in the interlayer)型のペロブスカイト構造を形成する。
【0024】
前記式[3]~[5]のR’、R’’、R’’’は、3次元のペロブスカイト構造に適合できない大きなカチオンであり、例えば有機分子では、CpNmHn(p、m、nはいずれも正の整数)で示されることが好ましい。またAは置換基を有しても有していなくても良く、具体的にはエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム、n-ヘキシルアンモニウム、n-オクチルアンモニウム、1,6-ヘキサンジアンモニウム、イソ-ブチルアンモニウム、3-(ノナフルオロ-tert-ブチルオキシ)プロピルアンモニウム、1,3-プロパンジアンモニウム、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,8-オクチルジアンモニウム、2,2-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアンモニウム)、5-アミノ吉草酸、4-tert-ブチルアンモニウム、N,N’-ジメチルエチレン-1,2-ジアンモニウム、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアンモニウム、グアニジウム、プロピルアンモニウム、プロパルギルアンモニウム、アルキルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、4-(アミノメチル)ピペリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、シクロヘキシルアンモニウム、4-フルオロフェネチルアンモニウム、4-フルオロフェネチルアンモニウム、トリフルオロメチルベンジルアンモニウム、ペンタフルオロベンジルアンモニウム、ペンタフルオロフェニルエチルアンモニウム、4-メトキシフェネチルアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、3-チオフェンメチルアンモニウム、2-チオフェンエチルアンモニウム、2-チオフェンホルムアミジウム、2-チオフェンメチルアンモニウム、1-ナフチルメチルアンモニウム、2-ナフチルメチルアンモニウム、フェネチルアンモニウム、フェニルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2,5-チオフェンジメチルアンモニウム、フェニルプロピルアンモニウム、1,4-フェニレンジメタンアンモニウム、3-フェニル-2-プロペン-1-アンモニウム、フェニルブチルアンモニウム、4-tert-ブチル-ベンジルアンモニウム、3-(アミノメチル)ピペリジニウム、4-(アミノメチル)ピペリジニウムが好ましい。
【0025】
前記式[2]~[5]中のBは、金属原子であり、例えば、鉛、スズ、ビスマス、亜鉛、チタン、アンチモン、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウムが挙げられる。なかでも、電子軌道の重なりの観点から、鉛、スズ、ビスマスが好ましい。これらの金属原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
前記式[2]~[5]中のXは、ハロゲン原子であり、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。これらのハロゲン原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、構造中にハロゲンを含有することで、上記ペロブスカイト構造の結晶が有機溶媒に可溶になり易く、安価な印刷法などへの適用が可能になることから、ハロゲン原子が好ましい。更に、前記ペロブスカイト構造の結晶のエネルギーバンドギャップが狭くなることから、ヨウ素がより好ましい。
【0027】
具体的には、3次元ペロブスカイトと2次元ペロブスカイトと混合3次元・2次元ペロブスカイトは、MAPbI3やFAPbCl3、FAPbI3、MAPbIxBr3-x、MAPbIxCl3-x、Cs0.05(MA0.17FA0.83)0.95Pb(I0.83Br0.17)3、Cs0.05FA0.88MA0.07PbI2.56Br0.44、(FAPbI3)0.95(MAPbBr3)0.05、(FAPbI3)0.85(MAPbBr3)0.15、CsPbI3、CsPbBr3、Csx(MA)1-xPbI3,Csx(FA)1-xPbI3,MAx(FA)1-xPbI3,MA0.17FA0.83Pb(I0.83Br0.17)3,Cs0.15FA0.85PbI2.55Br0.45,Cs0.05FA0.88MA0.07PbI2.56Br0.44、Cs0.15FA0.85PbI2.55Br0.45、(PEA)2(MA)2Pb3I10,(PTA)2(MA)4Pb5I16,(PEA)2(MA)4Pb5I16,(ThMA)2(MA)2Pb3I10,(3BBA)2(MA)2Pb3I10,(ThMA)2(FA)4Pb5I16,(pF-PEA)2(FA0.3MA0.7)4Pb5I16,(PDMA)FA2Pb3I10,(3AMPY)(MA)3Pb4I13,(PDMA)MA5Pb6I19,(PDMA)MA3Pb4I13,(TTDMA)MA3Pb4I13,(TTDMA)MA4Pb5I16,(BA0.9PEA0.1)2MA4Pb5I16、(BA0.9PEA0.1)2MA3Pb4I13、(4FPEA)2MA3Pb4I13、(4FPEA)2MA4Pb5I16(BA)2MA2Pb3I10、(BA)2MA3Pb4I13、(TEA)2MA2Pb3I10、(BA)2MA4Pb5I16、(BA)2MA3Pb4I13が好ましい。なお、上記具体例において、「MA」はメチルアンモニウムを、「FA」はホルムアミジニウムを、「PEA」はフェネチルアンモニウムを、「PTA」はフェニルトリエチルアンモニウムを、「ThMA」は2-チオフェンメチルアンモニウムを、「3BBA」は3-ブロモベンジルアンモニウムを、「3AMPY」は3-(アミノメチル)ピリジンを、「PDMA」は1,4-フェニレンジメタンアンモニウムを、「TTDMA」はチエノ[3,2-b]チオフェン-2.5-ジイルジメタンアンモニウムを、「4FPEA」は4-フッ素フェネチルアンモニウムを、「BA」はブチルアンモニウムを、「TEA」は2-チオフェネチルアンモニウムを示す。
【0028】
上記ペロブスカイト構造の結晶は、体心に金属原子B、各頂点に有機分子A、面心にハロゲン原子又はXが配置された立方晶系の構造を有することが好ましい。詳細は明らかではないが、斯かる構造を有することにより、結晶格子内の八面体の向きが容易に変わることができるため、ペロブスカイト構造の結晶中の電子の移動度が高くなり、光電変換素子の光電変換効率が向上すると推定される。
【0029】
本発明に用いる有機無機ペロブスカイト化合物は、結晶性半導体であることが好ましい。結晶性半導体とは、X線散乱強度分布を測定し、散乱ピークが検出できる半導体を意味している。有機無機ペロブスカイト化合物が結晶性半導体であることにより、有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、光電変換素子の光電変換効率が向上する。
【0030】
本発明に係る光電変換層の厚みは、好ましくは5nm以上2000nm以下である。厚みが5nm以上であれば、光を充分に吸収することができ、2000nm以下であれば、生成した電荷を各電極に輸送させることができる。より好ましい下限は50nm、より好ましい上限は1200nmであり、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は1000nmである。
【0031】
〔正孔輸送層〕
本発明において、
図1及び
図2に示したように、光電変換層5と第一電極7との間に正孔輸送層6を有する。上述のとおり、正孔輸送層6は前記式(1)で表される化合物を含む。
また、光電変換効率を向上させる目的で、ドーパント(酸化剤)又は塩基性化合物を添加してもよい。
本発明に係る正孔輸送層の厚みは、好ましくは10nm以上1000nm以下である。厚みが10nm以上であれば、正孔を充分に電極に輸送できるようになり、1000nm以下であれば、正孔輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。正孔輸送層の厚みのより好ましい下限は50nm、より好ましい上限は500nmである。
【0032】
〔電子輸送層〕
本発明の光電変換素子においては、
図1及び
図2に示したように、第二電極3と光電変換層5との間に電子輸送層4を配置してもよい。
電子輸送層4の材料は特に限定されず、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤などが挙げられ、具体的には例えば、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層4の厚みは、好ましい下限が1nm、好ましい上限が2000nmである。この厚みが1nm以上であれば、充分に正孔をブロックできるようになり、2000nm以下であれば、電子輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。電子輸送層4の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
【0033】
〔光電変換装置〕
本発明の光電変換素子を複数用いることで、光電変換装置を構成することができる。光電変換素子を複数つなげている場合、光電変換装置は光電変換セル、若しくは光電変換モジュールということもできる。光電変換素子は、出力の電圧を高めるために吸収波長の異なる素子を積層してもよい。また、光電変換装置は、本発明の光電変換素子と、インバーターを有する。インバーターは、直流を交流に変換する変換器であってよい。光電変換装置は、光電変換素子に接続されている蓄電部を有してよい。蓄電部は、電気を蓄えられるものであれば、限定されるものではない。例えば、リチウムイオンなどを用いた二次電池、全固体電池、電気二重層キャパシタなどが挙げられる。
【0034】
〔移動体〕
図3は、本発明の光電変換素子を備えた移動体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。移動体30は、本発明の光電変換素子31と、この光電変換素子31を備えた機体32と、を有する。光電変換素子31は、機体32の外光を受けられる位置に配置される。移動体30が自動車であれば、光電変換素子31は屋根に配置されてもよい。光電変換素子31により得られた電気エネルギーは、移動体30の動力となっても、他の電気機器の動力となってもよい。移動体30の動力から発生する電気エネルギーを光電変換素子31の動力に用いてもよい。移動体30が自動車であれば、ブレーキにより発生する摩擦エネルギーを電気エネルギーに変換し、光電変換素子31の制御に用いてもよい。
移動体30は、例えば、自動車、船舶、航空機、ドローンであってもよい。移動体30の機体32の構成は特に限定されないが、強度が高い材料で構成されていることが好ましい。
【0035】
〔建材〕
図4は、本発明の光電変換素子を備えた建材の一実施形態を模式的に示す斜視図である。建材40は建物の屋根であってもよい。本実施形態の建材40は、本発明の光電変換素子41と、この光電変換素子41を保護する保護部材42と、放熱部材43と、外装44a,44bと、を有する。
本発明の建材40は、光電変換素子41よりも熱伝導率が高い放熱部材43を有していてもよい。光電変換素子41が屋根などに用いられた場合、太陽光により光電変換素子41の温度が上昇する場合があり、光電変換効率が低下する可能性がある。放熱部材43を用いることで光電変換効率の低下を低減することができる。放熱部材43は、金属、合金、液体金属、液体樹脂などが挙げられる。
また、本発明の建材40は、外装44a,44bを有していてもよい。外装44aと、外装44bは異なる色を発してもよいし、同じであってもよい。44aと44bは同じ部材で構成されても、異なる部材で構成されてもよい。外装部材としては、塗料、透明基板が用いられてもよく、光吸収が小さく、遮熱性が高いものが好ましい。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0037】
<例示化合物(1-2)の合成>
以下の方法で、例示化合物(1-2)を合成した。
反応容器に2,7-ジブロモ-9-フルオレノン(3.38g、東京化成工業製)、4,4’-ジメトキシジフェニルアミン(5.04g、東京化成工業製)、酢酸パラジウム(89.8mg、東京化成工業製)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(332.6mg、東京化成工業製)、炭酸セシウム(9.77g、東京化成工業製)、トルエン(300mL)を投入し、窒素雰囲気下、18時間加熱還流下で撹拌した。反応溶液を室温に戻し、減圧ろ過を行い、トルエンで洗浄した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製し、下記式(A)で表される中間体を紫色粉末(収率44%)として得た。
【化15】
続いて、反応容器に、前記中間体(1.27g)、マロン酸ジエチル(1.60g、東京化成工業製)、テトラヒドロフラン(30mL)、ピリジン(5mL)を投入し、氷水で0℃に冷却し、四塩化チタン(3.79g、東京化成工業製)を滴下した。滴下後に室温に戻し、18時間撹拌した。反応終了後、水、酢酸エチルを投入し、分液した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘプタン=1/3)で精製し、例示化合物(1-2)を紫色粉末(収率71%)として得た。
【0038】
<光電変換素子の製造>
(実施例1)
[電子輸送層の形成]
ITO膜付ガラス基板を洗浄し、その上に、3質量%に調整した酸化スズ(II)塗布液をスピンコートにて塗布した後、150℃で30分加熱し、厚さ15nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。
【0039】
[光電変換層の形成]
臭化鉛22.4mgとヨウ化ホルムアミジウム172mg、ヨウ化鉛576mgをN,N-ジメチルホルムアミド600μLとジメチルスルホキシド160μLに溶解させ、1時間攪拌した(溶液1)。さらにヨウ化セシウム389.72mgをジメチルスルホキシド1000μLに溶解させ、1時間攪拌した(溶液2)。その後、溶液2(40μL)を溶液1に添加し、光電変換層用塗布液を調製した。この塗布液を前記電子輸送層上にスピンコートすることで、Cs0.05(FA0.83MA0.17)0.95Pb(I0.95Br0.05)3からなる厚さ500nmの光電変換層を形成した。
【0040】
[正孔輸送層の形成]
例示化合物(1-2)0.15gをクロロベンゼン2.2gに溶解させ、正孔輸送層用塗布液1を調製した。この塗布液を前記光電変換層上にスピンコートすることで、厚さ200nmの正孔輸送層を形成した。
【0041】
[第一電極の形成]
前記正孔輸送層上に厚さ80nm、面積0.09cm2の金電極を真空蒸着法によって形成し、光電変換素子を得た。
【0042】
(実施例2)
正孔輸送層用塗布液1の調製において、例示化合物(1-2)を例示化合物(1-3)で表される化合物に変更すること以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を得る。
【0043】
(実施例3)
正孔輸送層用塗布液1の調製において、例示化合物(1-2)を例示化合物(1-5)で表される化合物に変更すること以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を得る。
【0044】
(比較例1)
正孔輸送層用塗布液1の調製において、例示化合物(1-2)を前記式(A)で表される化合物に変更すること以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を得た。
【0045】
(比較例2)
正孔輸送層用塗布液1の調製において、例示化合物(1-2)を下記式(B)で表される化合物に変更すること以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を得る。
【化16】
【0046】
(実施例4)
[電子輸送層の形成]
ITO膜付ガラス基板を洗浄し、その上に、3質量%に調整した酸化スズ(II)塗布液をスピンコートにて塗布した後、150℃で30分加熱し、厚さ15nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。
【0047】
[光電変換層の形成]
臭化鉛22.4mgとヨウ化ホルムアミジウム172mg、ヨウ化鉛576mgをN,N-ジメチルホルムアミド600μLとジメチルスルホキシド160μLに溶解させ、1時間攪拌した(溶液1)。さらにヨウ化セシウム389.72mgをジメチルスルホキシド1000μLに溶解させ、1時間攪拌した(溶液2)。その後、溶液2(40μL)を溶液1に添加し、光電変換層用塗布液を調製した。この塗布液を前記電子輸送層上にスピンコートすることで、Cs0.05(FA0.83MA0.17)0.95Pb(I0.95Br0.05)3からなる厚さ500nmの光電変換層を形成した。
【0048】
[正孔輸送層の形成]
例示化合物(1-2)0.15gをクロロベンゼン2.2gに溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、0.2gのリチウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.3gのアセトニトリルに溶解させて得られたアセトニトリル溶液36μLと、t-ブチルピリジン36μLとを加えて混合した。さらに、0.11gの[トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)]を0.3gのアセトニトリルに溶解させて得られたアセトニトリル溶液58μLを混合し、正孔輸送層用塗布液2を調製した。この塗布液を前記光電変換層上にスピンコートすることで、厚さ200nmの正孔輸送層を形成した。
【0049】
[第一電極の形成]
前記正孔輸送層上に厚さ80nm、面積0.09cm2の金電極を真空蒸着法によって形成し、光電変換素子を得た。
【0050】
<評価>
(光電変換効率評価)
実施例1で得られた光電変換素子の電極間に、電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、強度100mW/cm2のソーラーシミュレーター(山下電装社製)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧とを測定することにより、光電変換効率を評価した。
実施例2~4及び比較例1、2についても同様に評価を行う。結果を表1及び表2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
第一電極と、第二電極と、該第一電極と該第二電極との間に配置されている、ペロブスカイト構造の結晶を含む光電変換層とを有する光電変換素子であって、該光電変換層と前記第一電極との間に、下記式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層を有することを特徴とする光電変換素子。
【化17】
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ、炭素原子数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、R
3~R
22は、それぞれ独立して、水素原子、トリメチルシリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。各官能基が有していてもよい置換基とは、ハロゲノ基、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~18のアルキルチオ基、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基、炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数5~36の複素環基である。)
(構成2)
前記式(1)において、R
3~R
22が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を有するアミノ基である化合物を前記正孔輸送層に含む、構成1に記載の光電変換素子。
(構成3)
前記式(1)において、R
5、R
10、R
15、R
20が、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1~20以下のアルコキシ基である化合物を前記正孔輸送層に含む、構成1又は2に記載の光電変換素子。