(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010909
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータおよび係合方法
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20250116BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20250116BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
E05F11/48 E
E05F11/48 D
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113214
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 泰司
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
2E052KA16
3D127AA19
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF09
3D127DF15
3D127DF20
(57)【要約】
【課題】車両に取り付けられるとき、ガイド部材による駆動部の保持が外れにくいウインドレギュレータ、および駆動部とガイド部材との係合方法を提供する。
【解決手段】キャリアプレートを移動させる駆動部と、キャリアプレートの移動を案内するガイド部材とを備え、駆動部またはガイド部材の一方は、駆動部とガイド部材とを相対移動が可能な状態で係合させる係合部を有し、駆動部またはガイド部材の他方は、係合部と係合する抜け防止部が形成された複数の突起部を有し、係合部は、ガイド部材に対する駆動部の配置が第1の配置である場合に、複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部が干渉せずに挿入可能であり、ガイド部材に対する駆動部の配置が第1の配置とは異なる第2の配置である場合に、複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部と干渉するように形成されている穴部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアプレートを移動させる駆動部と、
前記キャリアプレートの移動を案内するガイド部材と
を備え、
前記駆動部または前記ガイド部材の一方は、前記駆動部と前記ガイド部材とを相対移動が可能な状態で係合させる係合部を有し、
前記駆動部または前記ガイド部材の他方は、前記係合部と係合する抜け防止部が形成された複数の突起部を有し、
前記係合部は、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が第1の配置である場合に、前記複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部が干渉せずに挿入可能であり、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が前記第1の配置とは異なる第2の配置である場合に、前記複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部と干渉するように形成されている穴部を有する、
ウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記穴部は、前記穴部の長手方向に延びる第1領域と、前記第1領域の一端部と連結し、前記第1領域よりも幅が広い第2領域と、を有する、
請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記第1の配置は、前記複数の突起部のうち第1の突起部が前記第2領域において前記穴部に挿入される際の配置であり、
前記第2の配置は、前記長手方向に沿って前記駆動部と前記ガイド部材とが相対移動され、前記第1の突起部とは異なる第2の突起部が前記第2領域において前記穴部に挿入される際の配置である、
請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項4】
前記穴部は、長穴形状を有する、
請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項5】
前記複数の突起部は、第1の突起部と第2の突起部とを有し、
第1の突起部は、当該第1の突起部の中心軸から見て第1の突出方向に突出するように設けられている第1の抜け防止部材を有し
前記第1の配置は、前記第1の突出方向と前記長穴形状の長手方向とがほぼ平行となる配置であり、
第2の突起部は、当該第2の突起部の中心軸から見て前記第1の突出方向とは異なる第2の突出方向に突出するように設けられている第2の抜け防止部材を有し、
前記第2の配置は、前記第2の突出方向と前記長手方向とがほぼ平行となる配置である、
請求項4に記載のウインドレギュレータ。
【請求項6】
ウインドレギュレータの製造時において、キャリアプレートを移動させる駆動部と、前記キャリアプレートの移動を案内するガイド部材とを、抜け防止部材をそれぞれ有する複数の突起部と、前記複数の突起部が挿入される穴部とを用いて、相対移動が可能な状態で互いに係合する係合方法であって、
前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が第1の配置である場合に、前記複数の突起部のうち、第1の突起部の前記抜け防止部材が前記穴部と干渉しない状態で、前記穴部に前記第1の突起部を挿入する工程と、
前記穴部に前記第1の突起部が挿入された状態で、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置を前記第1の配置から第2の配置に変更する工程と、
前記第2の配置において、前記複数の突起部のうち、第2の突起部を前記穴部に挿入する工程と、
を備える、係合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータおよび係合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータが普及している。
【0003】
例えば特許文献1には、窓ガラスを移動させる移動部材と、移動部材の移動を案内するガイド部材と、ケーブルを介して移動部材を移動させる駆動部と、を備えるウインドレギュレータが開示されている。特許文献1に開示されたウインドレギュレータは、車両に取り付けられる際にガイド部材と駆動部との位置調整を行いやすくするため、ガイド部材に対する駆動部の相対的移動がガイド部材の厚み方向に沿った所定範囲内で可能な状態で、駆動部をガイド部材に保持させる保持構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウインドレギュレータが車両に取り付けられるとき、ガイド部材による駆動部の保持が外れてしまうことがある。この場合、駆動部の保持とウインドレギュレータの車両への取付とをやり直す必要があり、時間的なロスと工数増加が発生してしまう。
【0006】
本開示は、車両に取り付けられるとき、ガイド部材による駆動部の保持が外れにくいウインドレギュレータ、および駆動部とガイド部材との係合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るウインドレギュレータは、キャリアプレートを移動させる駆動部と、前記キャリアプレートの移動を案内するガイド部材とを備え、前記駆動部または前記ガイド部材の一方は、前記駆動部と前記ガイド部材とを相対移動が可能な状態で係合させる係合部を有し、前記駆動部または前記ガイド部材の他方は、前記係合部と係合する抜け防止部が形成された複数の突起部を有し、前記係合部は、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が第1の配置である場合に、前記複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部が干渉せずに挿入可能であり、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が前記第1の配置とは異なる第2の配置である場合に、前記複数の突起部のうちの少なくとも1つの突起部の抜け防止部と干渉するように形成されている穴部を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る係合方法は、ウインドレギュレータの製造時において、キャリアプレートを移動させる駆動部と、前記キャリアプレートの移動を案内するガイド部材とを、抜け防止部材をそれぞれ有する複数の突起部と、前記複数の突起部が挿入される穴部とを用いて、相対移動が可能な状態で互いに係合する係合方法であって、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置が第1の配置である場合に、前記複数の突起部のうち、第1の突起部の前記抜け防止部材が前記穴部と干渉しない状態で、前記穴部に前記第1の突起部を挿入する工程と、前記穴部に前記第1の突起部が挿入された状態で、前記ガイド部材に対する前記駆動部の配置を前記第1の配置から第2の配置に変更する工程と、前記第2の配置において、前記複数の突起部のうち、第2の突起部を前記穴部に挿入する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
ウインドレギュレータが車両に取り付けられるとき、ガイド部材による駆動部の保持が外れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】保持構造により、ガイドレールが駆動部を保持している状態を例示した図
【
図3】保持構造により、ガイドレールが駆動部を保持している状態を例示した図
【
図4】第1の実施の形態における保持構造の一部である、係合部および穴部の形状の一例を説明するための図
【
図5】第1の実施の形態における保持構造の一部である、抜け防止部、突起部、および突起部形成面の形状の一例について説明するための図
【
図6】第1の実施の形態における、保持構造による係合方法を説明するための模式図
【
図7】第2の実施の形態における保持構造の一部である、係合部および穴部の形状の一例を説明するための図
【
図8】
図8は、第2の実施の形態における保持構造の一部である、抜け防止部、突起部、および突起部形成面の形状の一例について説明するための図
【
図9】第2の実施の形態における、保持構造による係合方法を説明するための模式図
【
図10】本開示の第1の変形例における、係合部および穴部の形状の一例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る各実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
(ウインドレギュレータの概要)
本開示の第1の実施の形態に係るウインドレギュレータ100は、例えば車両などのドアに搭載される。ウインドレギュレータ100は、ケーブルの巻き取りと繰り出しを行うことでケーブルを介して駆動力をキャリアプレートに伝達し、キャリアプレートに取り付けられた窓ガラス(ウインドウ)を移動させる。
【0013】
図1は、ウインドレギュレータ100の構成の一例を示す図である。
図1に示す方向は、ウインドレギュレータ100が、車両のフロントドアが有するインナーパネルに取り付けられた場合の車両を基準とした方向である。以下の説明では、
図1に示す各方向を用いて説明を行うことがある。
【0014】
図1に示す前後方向および上下方向は、ウインドレギュレータ100が取り付けられた車両の前後方向および上下方向にそれぞれ対応する。なお、
図1には図示しないが、
図1における紙面手前方向は車両の外部方向に、
図1における紙面奥方向は車両の内部方向に、それぞれ対応するものとする。
【0015】
ただし、
図1に示される各方向は一例であり、本開示のウインドレギュレータは、必ずしも
図1に例示した方向に対応して設置される必要はない。
【0016】
図1に示す例では、ウインドレギュレータ100は、2つのガイドレール10と、4つのブラケット12と、ケーブル30と、駆動部40と、2つのキャリアプレート50と、を備えている。
【0017】
(ガイドレール10の構成)
2つのガイドレール10は、それぞれが窓ガラスの移動方向に延伸し、互いに略平行に配置される。
図1に示す例では、ガイドレール10の延伸方向および窓ガラスの移動方向は、
図1における上下方向とは異なる方向であるが、本開示では窓ガラスの移動方向とウインドレギュレータの上下方向とが一致してもよい。ガイドレール10は、キャリアプレート50を移動可能に支持し、キャリアプレート50の移動を案内する。ガイドレール10は、本開示のガイド部材の一例である。
【0018】
(ブラケット12の構成)
ブラケット12は、ケーブル30の移動方向を転換するプーリー20の回転軸を支持する部材である。ブラケット12は、2つのガイドレール10の上端部と下端部にそれぞれ設けられている。
【0019】
(ケーブル30の構成)
動力伝達部材であるケーブル30は、駆動部40の駆動力をキャリアプレート50に伝達するための部材である。ケーブル30は、例えば、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するワイヤである。
図1に示す例では、ケーブル30は、3本のケーブル30a、30b、30cにより構成される。
【0020】
ケーブル30aは、一端が駆動部40に接続される。ケーブル30aは、駆動部40から後側のガイドレール10の上端部に設けられるプーリー20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に向かって伸びている。そして、ケーブル30aの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。
【0021】
ケーブル30bは、一端が後側のガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。このケーブル30bは、当該キャリアプレート50から当該ガイドレール10の下端部に設けられるプーリー20に向かって伸びている。さらに、ケーブル30bは、当該プーリー20から、前側のガイドレール10の上端部に設けられるプーリー20に向かって伸びている。そして、ケーブル30bの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。
【0022】
ケーブル30cは、一端が駆動部40に接続される。このケーブル30cは、駆動部40から前側のガイドレール10の下端部に設けられるプーリー20に向かって伸び、さらに、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に向かって伸びている。そして、ケーブル30cの他端は、当該ガイドレール10に設けられるキャリアプレート50に接続される。
【0023】
なお、ケーブル30全体の内、駆動部40から左右のガイドレール10に設けられるブラケット12までの部分は、ケーブル30を保護するためのアウターケーシング31に覆われている。
【0024】
(駆動部40の構成)
駆動部40は、ケーブル30の巻き取りと繰り出しとを行うことによって、キャリアプレート50を移動させる装置である。本第1の実施の形態では、駆動部40は、後側のガイドレール10の下端に設けられたブラケット12を介してガイドレール10に取り付けられる。
【0025】
駆動部40は、例えば、ケーブル30が巻かれるドラムと、ドラムが収容されるドラムハウジングと、モータと、モータの回転をドラムに伝達するウォームギヤ等の動力伝達部と、を備える。
【0026】
モータが順方向に回転すると、モータの回転運動が動力伝達部を介してドラムに伝達されることにより、ドラムが順方向に回転する。この場合、ケーブル30aがドラムに巻き取られて、ケーブル30cがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート50は、2つのガイドレール10のそれぞれに沿って上昇する。
【0027】
一方、モータが逆方向に回転すると、ドラムが逆方向に回転する。この場合、ケーブル30cがドラムに巻き取られて、ケーブル30aがドラムから繰り出される。これにより、2つのキャリアプレート50は、2つのガイドレール10のそれぞれに沿って下降する。
【0028】
(キャリアプレート50の構成)
キャリアプレート50は、窓ガラスを保持しながら、ガイドレール10上を窓ガラスとともに昇降移動する部材である。なお、
図1では窓ガラスの図示は省略されている。キャリアプレート50は、窓ガラスを保持する保持部と、ケーブル30の端部を収納する収納部と、ガイドレール10に沿って昇降移動するためのガイドを行うガイド部とを備える。
【0029】
(保持構造60について)
駆動部40は、
図1に示す後側のガイドレール10の下端部付近に係合され、ガイドレール10に保持される。以下の説明において、ガイドレール10および駆動部40がそれぞれ有する、ガイドレール10に駆動部40を保持させるための構造を、保持構造60と記載する。
【0030】
本明細書において、保持とは、仮固定、すなわち一時的に固定することを意味する。保持構造60は、ガイドレール10の厚み方向に沿った所定範囲内における、ガイドレール10に対する駆動部40の移動を許容した状態で、駆動部40をガイドレール10に保持させる。
【0031】
また、保持構造60は、ガイドレール10の長さ方向に沿った駆動部40の移動を規制した状態で、駆動部40をガイドレール10に保持させる。
【0032】
保持構造60が、駆動部40をガイドレール10に保持、すなわち仮固定させることにより、例えばウインドレギュレータ100を車両のドアが有するインナーパネルに取り付ける際に取り付けやすくなる効果が得られる。何故なら、比較的重量がある駆動部40が仮固定されていない状態では、ウインドレギュレータ100を車両に取り付ける際、駆動部40や、駆動部40に引っ張られるケーブル30が意図しない動きをとってしまい、取り付けの妨げとなることがあるからである。
【0033】
また、保持構造60が、ガイドレール10の厚み方向に沿った所定範囲内における、ガイドレール10と駆動部40との相対移動を許容することにより、ウインドレギュレータ100を車両に取り付ける際、窓ガラスなどの位置調整を行いやすくなる。
【0034】
ウインドレギュレータ100を車両に取り付ける際に、ウインドレギュレータ100をインナーパネルに仮固定して窓ガラスなどの位置調整を行うことがある。この位置調整は、ドアに窓枠がない、サッシュレスドアを備えた車両において特に重要である。何故なら、サッシュレスドアにおいては、車両のボディに設けられたウェザーストリップと窓ガラスとで水密性を担保するため、窓ガラスを最上部まで移動させたときに窓ガラスの先端がウェザーストリップ同士の間に精確に挿入される必要があるからである。
【0035】
窓ガラスなどの位置調整を行う工程では、駆動部40がガイドレール10に仮固定された状態で、車両のドアが有するインナーパネルにガイドレール10が仮固定され、駆動部40がインナーパネルに固定される。この状態においても、上述したように、保持構造60により、ガイドレール10の厚み方向に沿った所定範囲内における、駆動部40に対するガイドレール10の移動が許容される。従って、ガイドレール10がインナーパネルに仮固定された状態でも、ガイドレール10の厚み方向に沿ってガイドレール10を所定範囲内で移動させることができる。このため、ガイドレール10が車両に仮固定され、駆動部40が車両に固定された状態でも、ガイドレール10の位置調整が可能となり、ひいてはキャリアプレート50およびキャリアプレート50に保持される窓ガラスの位置調整が可能となる。
【0036】
以下では、保持構造60の構成について詳細に説明する。保持構造60は、ガイドレール10に設けられている係合部11および穴部13、ならびに駆動部40に設けられている抜け防止部41および突起部42を有する。
【0037】
図2および
図3は、第1の実施の形態において、保持構造60により、ガイドレール10が駆動部40を保持している状態を例示した図である。
図2および
図3には、ガイドレール10の下端部に設けられたブラケット12と、ブラケット12の前側(駆動部40側)の先端部に設けられた係合部11と、駆動部40の後側(ブラケット12側)に設けられた抜け防止部41および突起部42と、が示されている。
図2は、保持構造60をガイドレール10の厚み方向に沿って外部側から見た状態を示す図である。
図3は、保持構造60をガイドレール10および駆動部40の下側から見た状態を示す図である。
【0038】
ブラケット12は、例えばボルト等の締結部材によって、または溶接等によって、ガイドレール10の下端部に取り付けられている。ブラケット12の駆動部40側の先端部には、穴部13が設けられた板状の係合部11が設けられている。
【0039】
図4は、第1の実施の形態における、係合部11および穴部13の形状の一例を説明するための図である。係合部11は、ガイドレール10と駆動部40とを相対移動が可能な状態で係合させるための部材である。係合部11には、全体として、長手方向と短手方向とを有する長穴形状に形成されている穴部13が設けられている。穴部13は、穴部13の長手方向に延びる第1領域131と、当該第1領域131の一端部と連結され、第1領域131よりも幅が広い第2領域132と、を有する。
【0040】
第1領域131は、穴部13の長手方向に沿って延びる開口である。第1領域131の幅、すなわち穴部13の短手方向に沿った第1領域131の長さは、穴部13の長手方向に沿った第1領域131の長さよりも短い。
【0041】
第1領域131の一端部に連結された第2領域132は、連結部を除いて、例えば略円形状に形成された開口である。第2領域132の幅、すなわち円形状の直径は、第1領域の幅より長い。第2領域132を介して、後述のように、抜け防止部41が形成された突起部42を、穴部13に挿入可能となっている。
【0042】
図2および
図3に示すように、穴部13の長手方向に沿った第1領域131の長さは、2つの突起部42同士の距離よりも若干長く設定されている。これにより、2つの突起部42が穴部13に挿入された状態において、2つの突起部42は、穴部13の長手方向における第1領域131の内部に収まる。
【0043】
また、
図2に示すように、第2領域132は、ウインドレギュレータ100が車両に取り付けられた状態において、第1領域131よりも上側となる位置に形成されている。穴部13に2つの突起部42が挿入された状態において、突起部42が設けられている駆動部40の重さにより、2つの突起部42には下方向に向かう力が常に加わる。このため、2つの突起部42は、第1領域131に挿入された状態において、上側に設けられた第2領域132の方向に向かって移動しにくくなっている。これにより、穴部13の上側の一端部に、第1領域131と比べて幅が広い第2領域132が形成されていても、2つの突起部42が第2領域132側に移動して穴部13から抜けてしまう事態を防止できるようになっている。
【0044】
一方で、駆動部40におけるドラムハウジングのブラケット12側の端部には、突起部形成面43から延びるように形成された複数の突起部42が設けられている。
図2および
図3に示す例では、突起部42は、2つ並んで設けられている。突起部42の先端部には、係合部11と係合する抜け防止部41が形成されている。
【0045】
図5は、第1の実施の形態における、抜け防止部41、突起部42、および突起部形成面43の形状の一例について説明するための図である。
図5Aは、2つの突起部42の中心軸を含む平面における断面図である。
図5Bは、2つの突起部42の中心軸を含む平面、および、突起部形成面43に対して垂直な平面における断面図である。
図5Cは、突起部42の中心軸方向に沿って、抜け防止部41、突起部42、および突起部形成面43を俯瞰して見た様子を示す図である。
【0046】
図5において、突起部42が延びる方向、すなわち、突起部形成面43に対して垂直な方向を第1方向D1、2つの突起部42が並ぶ方向、すなわち、突起部形成面43の長手方向を第2方向D2、第1方向D1および第2方向D2に対して垂直な方向、すなわち、突起部形成面43の短手方向を第3方向D3としている。
【0047】
図3および
図5Aに示すように、突起部42は、駆動部40の突起部形成面43から第1方向D1に沿って所定長さ延びるように形成されている柱状の構造である。なお、本明細書において、柱状とは、円柱形状、楕円柱形状、円錐台形状、楕円錐台形状、角柱形状、などの各形状を含む。
図5に示す例では、突起部42は円柱形状を有する例が示されている。
【0048】
突起部形成面43は、駆動部40に設けられた、略長方形状の領域である。2つの突起部42は、突起部形成面43の長手方向である第2方向D2に沿って並んで設けられている。なお、突起部形成面43の形状は長方形状に限定されず、例えば角丸長方形状や楕円形状であってもよい。
【0049】
突起部42の幅は、穴部13の第1領域131における短手方向の長さ(幅)より狭ければよいが、狭すぎると強度が低下するため、穴部13の幅よりも若干狭く形成されることが望ましい。
【0050】
第1方向D1に沿って所定長さ離れた突起部42の先端部付近には、抜け防止部41が設けられている。抜け防止部41は、突起部42が係合部11の穴部13に挿入されたときに抜けを防止するための部材である。
【0051】
図5Cに示すように、抜け防止部41は、突起部42が延びる第1方向D1、および2つの突起部42が並ぶ第2方向D2に対して略垂直な第3方向D3に沿って両側に延びるように形成されている。
【0052】
このような構成により、2つの突起部42が穴部13の長手方向に並んで穴部13に挿入されているとき、抜け防止部41は、おおよそ穴部13の短手方向に沿って延びることになる。そして、突起部形成面43の短手方向に沿った抜け防止部41の長さは、穴部13の第1領域131における短手方向の長さ(幅よりも)長く形成されている。以下の説明において、突起部形成面43の短手方向を、抜け防止部41の長手方向と記載することがある。
【0053】
なお、
図2および
図3に示す例では、抜け防止部41の長手方向における両端部は、丸みを帯びた形状に形成されているが、本開示はこれに限定されない。抜け防止部の長手方向における両端部は、例えば
図5Cに例示するような四角形状などの角がある形状に形成されてもよい。
【0054】
このような構造により、2つの突起部42が穴部13に挿入されている状態では、突起部42が穴部13から抜けようとしても、抜け防止部41と穴部13の第1領域131とが互いに干渉する。これにより、突起部42が穴部13から意図せず抜けてしまうことを防止できる。
【0055】
なお、突起部42が穴部13から意図せず抜けてしまうことを防止する観点から、抜け防止部41は、変形しにくい、比較的硬度が高い材料で形成されることが望ましい。
【0056】
以上説明したように、保持構造60は、ブラケット12を介してガイドレール10に設けられている係合部11、および駆動部40に設けられている抜け防止部41および突起部42を含む。係合部11には、長手方向と短手方向とを有する穴部13が設けられている。
【0057】
図2に示すように、ウインドレギュレータ100が車両に取り付けられた状態、かつ2つの突起部42が穴部13に挿入された状態において、ガイドレール10または駆動部40の少なくともいずれかが内部方向または外部方向に移動しようとしても、穴部13と抜け防止部41とが互いに干渉する。これにより、保持構造60により駆動部40がガイドレール10に保持された状態が実現される。また、2つの突起部42が穴部13に挿入された状態でも、突起部42の中心軸に沿った長さの範囲内において、ガイドレール10は、駆動部40に対して相対移動することができる。言い換えると、突起部42の長さを適切に設定することにより、駆動部40に対するガイドレール10の移動範囲を所定範囲に限定することができる。なお、所定範囲は、ウインドレギュレータ100を車両のドアが有するインナーパネルに取り付ける際に望ましい範囲に適宜設定されればよい。
【0058】
2つの突起部42が第1領域131において穴部13に挿入された状態において、駆動部40の重さにより、2つの突起部42には下方向に向かう力が加わる。これにより、ウインドレギュレータ100が車両に取り付けられ、且つ保持構造60によって駆動部40がガイドレール10に保持された状態において、2つの突起部42は穴部13の第1領域131よりも上側に位置する第2領域132の方には移動しにくい。このため、突起部42が第1領域131から第2領域132の方に移動し、抜けてしまう事態を防止できる。
【0059】
穴部13は、長手方向に沿って延びる第1領域131と、第1領域131の一端部に連結して設けられた第2領域132とを有し、第2領域132の幅は第1領域131の幅よりも広く形成される。穴部13が有する第1領域131および第2領域132の形状は、駆動部40がガイドレール10に保持される際、言い換えると、穴部13に係合部11が係合される際に有利な形状に形成されている。
【0060】
次に、保持構造60によって、駆動部40をガイドレール10に係合して保持させる方法について詳細に説明する。
【0061】
上述したように、ガイドレール10に設けられた係合部11の穴部13は、長手方向に延びる第1領域131と、より幅が大きい第2領域132と、を有する。上述したように、駆動部40に設けられた2つの突起部42には、突起部形成面43に対して垂直な方向、および突起部形成面43の長手方向に対して略垂直な方向に沿って両側に延びるように、抜け防止部41がそれぞれ形成されている。
【0062】
第2領域132は、その幅が、抜け防止部41の長手方向の長さより長くなるように形成されている。
図4などに示す例では、第2領域132は略円形状に形成されているが、この場合、第2領域132の直径は、抜け防止部41の長手方向の長さよりも長くなるように形成される。これにより、第2領域132と突起部42との位置合わせを行うことで、ガイドレール10と駆動部40との位置関係にかかわらず、第2領域132への突起部42の挿入が可能となる。
【0063】
図6は、第1の実施の形態における、保持構造60による係合方法を説明するための模式図である。
図6では、簡単のため、ガイドレール10および駆動部40の大部分を省略し、ブラケット12に設けられている穴部13の周辺領域、および駆動部40に設けられている突起部形成面43の周辺領域を模式的に示している。なお、
図6では、ガイドレール10側と駆動部40側の部材とを区別しやすくするため、ガイドレール10側に設けられている部材を白で、駆動部40側に設けられている部材をグレーで、それぞれ色を変えて示している。
【0064】
なお、以下説明する係合方法において、ガイドレール10および駆動部40の支持および移動は、例えば工業用ロボットなどによって行われてもよい。
【0065】
図6Aは、保持構造60による係合方法の第1工程を示している。第1工程では、ガイドレール10および駆動部40の方向が合わせられる。より詳細には、第1工程では、ガイドレール10に形成されている穴部13の長手方向(
図6AのD4)と、2つの突起部42が形成される突起部形成面43の長手方向(
図6AのD5)と、が互いに略平行となるように、ガイドレール10および駆動部40の方向が合わせられる。このように、穴部13の長手方向と、突起部形成面43の長手方向とが互いに略平行となるようにガイドレール10および駆動部40の方向が合わせられた状態では、穴部13の長手方向D4と抜け防止部41の長手方向(
図6AのD6)とが互いに略垂直となる。
【0066】
以下の説明において、2つの突起部42のうち、
図6における一方の突起部(
図6Aのように穴部13の長手方向と突起部形成面43の長手方向とが平行となっているときに、2つの突起部のうち、第2領域132に近い方の突起部)を第1突起部42_1、他方の突起部を第2突起部42_2と記載する。また、第1突起部42_1に設けられている抜け防止部を第1抜け防止部41_1、第2突起部42_2に設けられている抜け防止部を第2抜け防止部41_2とする。
【0067】
図6Bは、保持構造60による係合方法の第2工程を示している。第2工程では、ガイドレール10に設けられた穴部13の第2領域132において、2つの突起部42のうち一方の第1突起部42_1が穴部13に挿入される。上述したように、ガイドレール10と駆動部40との向きにかかわらず、第2領域132の幅は抜け防止部41の長手方向の長さよりも長いので、穴部13の長手方向と、突起部形成面43の長手方向とが互いに略平行な状態においても、第2領域132における穴部13への第1突起部42_1(第1抜け防止部41_1)の挿入が可能となっている。
【0068】
図6Bに示す、第1突起部42_1が第2領域132において穴部13に、第1抜け防止部41_1と穴部13とが干渉せずに挿入可能であるときの、ガイドレール10に対する駆動部40の配置が、本開示の第1の配置に対応している。言い換えると、第1の配置は、2つの突起部42のうち、第1突起部42_1が第2領域132において穴部13に挿入される際の配置である。
【0069】
図6Cは、保持構造60による係合方法の第3工程を示している。第3工程では、第1突起部42_1が穴部13に挿入された状態のまま、ガイドレール10と駆動部40とが相対移動することにより、第1突起部42_1が第1領域131に移動される。上述したように、穴部13の長手方向と第1抜け防止部41_1の長手方向とが互いに略垂直となるように位置合わせがされているため、第3工程により、第1抜け防止部41_1と第1領域131とが互いに干渉する。これにより、第1突起部42_1が穴部13から抜けることが防止される。
【0070】
第3工程において第1突起部42_1が第1領域131に移動されることにより、他方の第2突起部42_2が、第2領域132と位置合わせされる。これにより、第2突起部42_2が第2領域132において穴部13に挿入される。
【0071】
なお、第3工程におけるガイドレール10と駆動部40との相対移動は、ガイドレール10の移動によって実現されてもよいし、駆動部40の移動によって実現されてもよいし、ガイドレール10と駆動部40両方の移動によって実現されてもよい。
【0072】
第3工程におけるガイドレール10と駆動部40との相対移動時において、穴部13に挿入されていない他方の第2突起部42_2がガイドレール10の係合部11と干渉しないように、例えばガイドレールを構成する面と駆動部40を構成する面とを互いに傾斜させて移動させてもよい。
【0073】
なお、
図6Cに示す、2つの突起部42のうち第1突起部42_1の第1抜け防止部41_1と、穴部13とが干渉するときの、ガイドレール10に対する駆動部40の配置が、本開示の第2の配置に対応している。言い換えると、第2の配置は、穴部13の長手方向に沿ってガイドレール10と駆動部40とが相対移動され、第2突起部42_2が第2領域132において穴部13に挿入される際の配置である。
【0074】
図6Dは、保持構造60による係合方法の第4工程を示している。第4工程では、突起部42が第2領域132において穴部13に挿入された後、さらにガイドレール10と駆動部40との相対移動が行われ、突起部42が第1領域131まで移動される。これにより、駆動部40をガイドレール10に係合して保持させる工程が完了する。
【0075】
図6Dに示すように、2つの突起部42が穴部13の第1領域131に位置する状態では、抜け防止部41の長手方向と穴部13の短手方向とが略平行になっている。このため、2つの突起部42が穴部13から抜けてしまう事態が防止される。また、上述したように、駆動部40には自身の重さによって、穴部13の長手方向における第1領域131側に向かう力が加わるため、突起部42が第2領域132側に動いてしまう事態が防止され、ひいては突起部42が第2領域132から抜けてしまう事態も防止される。
【0076】
これとともに、突起部42が突起部形成面43から垂直に延びる長さの範囲内において、駆動部40は、ガイドレール10に対して相対移動することができる。このため、駆動部40が車両に固定され、且つガイドレール10が車両に仮固定された状態において、車両の内側または奥側に向かう方向へのガイドレール10の当該範囲内の移動が許容され、ひいてはキャリアプレート50に保持される窓ガラスの位置調整を容易に行うことができる。
【0077】
<第2の実施の形態>
以下では、本開示の第2の実施の形態のウインドレギュレータ100Aについて説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の構成には、第1の実施の形態の符号にAを付けて説明する。
【0078】
第2の実施の形態では、保持構造60Aの構造が第1の実施の形態の保持構造60と異なっている。
図7は、第2の実施の形態における、係合部11Aおよび穴部13Aの形状の一例を説明するための図である。
図8は、第2の実施の形態における、抜け防止部41A、突起部42A、および突起部形成面43Aの形状の一例について説明するための図である。
図8Aは、2つの突起部42Aの中心軸を含む平面における断面図である。
図8Bは、2つの突起部42Aの中心軸を含む平面、および、突起部形成面43Aに対して垂直な平面における断面図である。
図8Cは、突起部42Aの中心軸方向に沿って、抜け防止部41A、突起部42A、および突起部形成面43Aを俯瞰して見た様子を示す図である。
【0079】
図8において、突起部42Aが延びる方向、すなわち、突起部形成面43Aに対して垂直な方向を第1方向D1A、2つの突起部42Aが並ぶ方向、すなわち、突起部形成面43Aの長手方向を第2方向D2A、第1方向D1Aおよび第2方向D2Aに対して垂直な方向、すなわち、突起部形成面43Aの短手方向を第3方向D3Aとしている。
【0080】
係合部11Aには、穴部13Aが設けられている。第1の実施の形態とは異なり、第2の実施の形態において、穴部13Aには第2領域132が設けられておらず、穴部13Aは長手方向と短手方向とにおいて略均一な幅を有する長穴形状に形成された開口である。なお、穴部13Aの長手方向および短手方向における両端部は例えば半円形状、または半楕円形状などの曲線状に形成されていてもよいし、角がある形状に形成されていてもよい。
【0081】
また、駆動部40Aの突起部形成面43Aには、突起部形成面43Aの長手方向(
図8のD2A)に沿って2つの突起部42Aが並んで形成されている。第1の実施の形態とは異なり、2つの突起部42Aの先端部に形成される抜け防止部41Aが突起部42Aから延びる方向が互いに異なっている。
図8Bに示す例では、2つの突起部42Aのうち、第2突起部42A_2に設けられた第2抜け防止部41A_2は、突起部形成面43Aの短手方向(
図8BのD3A)に沿って第2突起部42A_2の中心軸から両側に向かって延びている。第2突起部42A_2の中心軸から第2抜け防止部41A_2が延びる方向、すなわち、第2抜け防止部41A_2の長手方向であり、突起部形成面43Aの短手方向(
図8BのD3A)は、本開示の第1の突出方向に対応する。
【0082】
一方、
図8Cにおける第1抜け防止部41A_1は、突起部形成面43Aの長手方向(
図8のD2A)に沿って、第1突起部42A_1の中心軸から第1の突出方向とは異なる方向に向かって延びている。具体的には、第1抜け防止部41A_1は、第1突起部42A_1から見て、第2突起部42A_2と反対の方向(
図8のD2A)に延びている。第1抜け防止部41A_1が第1突起部42_1の中心軸から延びる方向は、本開示の第2の突出方向に対応する。
【0083】
なお、第2の実施の形態において、穴部13Aの長手方向の長さは、2つの突起部42A同士の距離よりも若干長く形成されている。
【0084】
このような構成により、2つの突起部42Aが穴部13Aに挿入された状態において、第2突起部42A_2の第2抜け防止部41A_2の長手方向の長さは、穴部13Aの短手方向の長さ(幅)よりも長いので、第2突起部42A_2が穴部13Aから抜けてしまう事態が防止される。
【0085】
一方で、上述したように、第1突起部42A_1の第1抜け防止部41A_1は、突起部形成面43Aの長手方向に沿って、第1突起部42A_1の中心軸から第2突起部42A_2とは反対の方向に向かって延びている。このため、後出の
図9Dに示すように、第1突起部42A_1が、穴部13Aの長手方向の一端部付近に位置している場合、第1抜け防止部41A_1と穴部13Aとが互いに干渉することにより、第1突起部42A_1が穴部13Aから抜けてしまう事態が防止される。
【0086】
従って、第1の実施の形態とは異なる構造を有する第2の実施の形態の保持構造60Aによっても、第1の実施の形態の保持構造60と同様の効果を得ることができる。
【0087】
次に、保持構造60Aによって、駆動部40Aをガイドレール10Aに係合して保持させる方法について詳細に説明する。
【0088】
図9は、第2の実施の形態における、保持構造60Aによる係合方法を説明するための模式図である。
図9では、
図6と同様に、ガイドレール10Aおよび駆動部40Aの大部分の図示を省略し、ブラケット12Aの穴部13Aの周辺領域、および駆動部40Aの突起部形成面43Aの周辺領域を模式的に示している。
【0089】
図9Aは、保持構造60Aによる係合方法の第1工程を示している。第1工程では、ガイドレール10Aおよび駆動部40Aの方向が合わせられる。より詳細には、第1工程では、ガイドレール10Aに形成されている穴部13Aの長手方向(
図9AのD7)と、2つの突起部42が形成される突起部形成面43Aの長手方向(
図9AのD8)と、が互いに略垂直となるように、ガイドレール10Aおよび駆動部40Aの方向が合わせられる。
【0090】
このように、穴部13Aの長手方向と、突起部形成面43Aの長手方向とが互いに略垂直となるようにガイドレール10および駆動部40の方向が合わせられた状態では、穴部13の長手方向と第2抜け防止部41A_2の長手方向(
図9AのD9)とが互いに略平行となる。
【0091】
図9Bは、保持構造60Aによる係合方法の第2工程を示している。第2工程では、第2突起部42A_2と穴部13Aの一端部付近の領域である第1領域131Aとの位置合わせが行われ、第1領域131Aにおいて第2突起部42A_2が穴部13Aに挿入される。
【0092】
なお、
図9Bに示す、第1抜け防止部41A_1の長手方向(すなわち、第1の突出方向)と、穴部13の長手方向とが略平行となるときの、ガイドレール10Aに対する駆動部40Aの配置が、本開示の第1の配置に対応している。言い換えると、第1の配置は、第2突起部42A_2が第1領域131Aにおいて穴部13Aに挿入される際の配置である。
【0093】
図9Cは、保持構造60Aによる係合方法の第3工程を示している。第3工程では、第2突起部42A_2が穴部13Aに挿入された状態のまま、ガイドレール10Aと駆動部40Aとが略90度相対回転する。これにより、第2突起部42A_2が有する第2抜け防止部41A_2の長手方向が穴部13Aの短手方向と略平行となる。第2抜け防止部41A_2の長手方向の長さは穴部13Aの短手方向の長さ(幅)よりも長いため、これにより第2突起部42A_2が穴部13Aから抜けてしまう事態が防止される。
【0094】
なお、第3工程におけるガイドレール10Aと駆動部40Aとの相対回転は、ガイドレール10Aの回転によって実現されてもよいし、駆動部40Aの回転によって実現されてもよいし、ガイドレール10Aと駆動部40A両方の回転によって実現されてもよい。
【0095】
図9Dは、保持構造60Aによる係合方法の第4工程を示している。第4工程では、第2突起部42A_2が穴部13Aに挿入された状態のまま、ガイドレール10Aと駆動部40Aとが相対移動することにより、第2突起部42A_2が穴部13Aの他端部付近の領域である第2領域132A付近まで移動される。
【0096】
図9Dに示すように、第3工程におけるガイドレール10Aと駆動部40Aとの相対回転後において、2つの突起部42Aの並ぶ方向(突起部形成面43Aの長手方向)と、穴部13Aの長手方向とは略平行となっている。また、上述したように、穴部13Aの長手方向の長さは、突起部42A同士の距離より若干長く形成されている。このため、第2突起部42A_2が穴部13Aの他端部付近の領域である第2領域132Aまで移動したとき、第1突起部42A_1は、穴部13Aの一端部付近の領域である第2領域132A付近に位置しており、且つ穴部13Aの一端部と第1突起部42A_1との間には若干の隙間が生じる。これにより、第4工程において、第1抜け防止部41A_1と穴部13Aとの干渉が生じず、第1突起部42A_1を穴部13Aに挿入することができる。
【0097】
なお、
図9Dに示す、第2抜け防止部41A_2が第2突起部42A_2の中心軸から延びる方向(すなわち、第2の突出方向)と、穴部13の長手方向とが略平行となるときの、ガイドレール10Aに対する駆動部40Aの配置が、本開示の第2の配置に対応している。言い換えると、第2の配置は、第2突起部42A_2が第1領域131Aにおいて穴部13Aに挿入される際の配置である。
【0098】
第1の実施の形態にて説明したように、ウインドレギュレータ100Aが車両に取り付けられた状態において、駆動部40Aにはその重さにより、下方向の力が加わる。このため、駆動部40Aに設けられた2つの突起部42Aは、第4の工程の後、穴部13Aの内部において、下方に位置する穴部13Aの第1領域131側に移動する。
【0099】
これにより、第2突起部42A_2から、第2突起部42A_2とは反対方向に延びる第1抜け防止部41A_1の先端部が、穴部13Aの第1領域131A付近の縁部と干渉する。これにより、2つの突起部42Aが穴部13Aから抜けてしまう事態が防止される。
【0100】
これとともに、突起部42Aが突起部形成面43Aから垂直に延びる長さの範囲内において、駆動部40Aは、ガイドレール10Aに対して相対移動することができる。このため、駆動部40Aが車両に固定され、且つガイドレール10Aが車両に仮固定された状態において、車両の内側または奥側に向かう方向へのガイドレール10Aの当該範囲内の移動が許容され、ひいてはキャリアプレートに保持される窓ガラスの位置調整を容易に行うことができる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に記載された複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0102】
第1の実施の形態では、ブラケット12を介してガイドレール10に設けられた穴部13は、長手方向に延びる第1領域131と、幅が第1領域131よりも広い第2領域132と、を有する例について説明した。
【0103】
本開示では、例えば第2領域132が設けられる代わりに、係合部11Bの端部まで穴部13の他端部が達している第1の変形例が採用されてもよい。
図10は、本開示の第1の変形例における係合部11Bおよび穴部13Bの形状の一例を説明するための図について説明するための図である。
図10には、第1の変形例に係るウインドレギュレータ100Bにおける穴部13Bの長手方向において、第1領域131Bと反対側の端部が係合部11Bの端部まで達する開放端133に形成された穴部13Bが示されている。なお、第1の変形例では、第1の実施の形態と同様の構成には、第1の実施の形態の符号にBを付けて説明する。
【0104】
第1の変形例において、第1の実施の形態と同様の駆動部40がガイドレール10Bに係合し保持される際には、
図6に示す第1の実施の形態の係合方法と同様の係合方法による係合が可能である。すなわち、第1の実施の形態で第2領域132において突起部42を穴部13に挿入する代わりに、第1の変形例では、開放端133において突起部42を穴部13Bに挿入すればよい。
【0105】
第1の実施の形態で説明したように、係合後は駆動部40Bに穴部13Bの長手方向における開放端133とは反対の方向に向かう力が生じるため、突起部42が開放端133において穴部13Bから抜けてしまう事態が防止される。
【0106】
上述した第1の実施の形態、第2の実施の形態、および第1の変形例では、ガイドレール10,10A,10B側に穴部13,13A,13Bを有する係合部11,11A,11Bが設けられており、駆動部40側に抜け防止部41、41Aを有する突起部42、42Aが設けられている例について説明した。
【0107】
本開示はこのような構造に限定されるものではなく、例えば、ガイドレール(本開示のガイド部材)側に抜け防止部を有する突起部が設けられ、駆動部側に穴部を有する係合部が設けられてもよい。このような構造によっても、本開示は、上述した各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、自動車の窓ガラスを昇降駆動するためのウインドレギュレータに適用できる。
【符号の説明】
【0109】
100,100A,100B ウインドレギュレータ
10,10A,10B ガイドレール
11,11A,11B 係合部
12,12A ブラケット
13,13A,13B 穴部
131,131A,131B 第1領域
132,132A 第2領域
133 開放端
20 プーリー
30,30a,30b,30c ケーブル
31 アウターケーシング
40,40A,40B 駆動部
41,41A 抜け防止部
41_1,41A_1 第1抜け防止部
41_2,41A_2 第2抜け防止部
42,42A,42B 突起部
42_1,42A_1 第1突起部
42_2,42A_2 第2突起部
43,43A 突起部形成面
50 キャリアプレート
60,60A 保持構造