(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010912
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20250116BHJP
E06B 1/32 20060101ALI20250116BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/32
E06B1/18 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113220
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 純
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝久
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011CA01
2E011CB01
2E011CC03
2E239CA03
2E239CA22
2E239CA27
2E239CA32
2E239CA33
2E239CA35
2E239CA52
2E239CA62
2E239CA67
(57)【要約】
【課題】樹脂カバーの熱変形による落下を抑制することが可能な建具を提供する。
【解決手段】上枠13は、金属形材80と、外方上樹脂成形体90Bと、金属形材80に取り付けられた第一金属部材210と、第一金属部材210との間に外方上樹脂成形体90Bを挟む第二金属部材220と、外方上樹脂成形体90Bを貫通し、金属材料で作られ、第一金属部材210と第二金属部材220とを結合する結合具と、を有する。当該構成では、高温環境下で外方上樹脂成形体90Bが熱変形した場合にあっても、外方上樹脂成形体90Bが第一金属部材210と第二金属部材220とによって挟まれた状態が維持される。したがって、高温環境下で、外方上樹脂成形体90Bによって金属形材80が直接熱に晒されて変形するのを抑制でき、ひいては、当該熱変形によって金属形材80に室内外方向の火炎の貫通口が形成されて防火性が損なわれるのを抑制できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦枠、上枠、下枠が四周組された枠体と、下枠の延在方向にスライドする状態で前記枠体に配設した障子と、を備える建具であって、
前記縦枠または前記上枠は、
内周側の見込み面を有した金属形材と、
前記見込み面を覆う樹脂カバーと、
前記金属形材に取り付けられた第一金属部材と、
前記第一金属部材に対して前記金属形材とは反対側に位置し、前記第一金属部材との間に前記樹脂カバーを挟む第二金属部材と、
前記樹脂カバーを貫通し、金属材料で作られ、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを結合する結合具と、
を有した、建具。
【請求項2】
前記金属形材は、室内側の第一形材と、室外側の第二形材と、を有し、
前記縦枠または前記上枠は、前記第一形材と前記第二形材との間に位置し樹脂材料で作られ前記第一形材と前記第二形材とを連結する連結部材を有し、
前記第一金属部材は、前記第一形材および前記第二形材のうち一方に取り付けられた、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記第二金属部材の前記障子と対向する部位に取り付けられた第一熱膨張性部材を備えた、請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記樹脂カバーは、前記金属形材の内周側の見込み面に沿って延びるとともに前記金属形材の延在方向に延びる底壁と、前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第一側壁と、当該第一側壁より室外側で前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第二側壁と、を有し、
前記第二金属部材は、前記底壁に沿って延びた板状部を有し、
前記板状部の室内側の端部は前記第一側壁と隙間をあけるかまたは接して当該第一側壁に沿って延び、前記板状部の室外側の端部は前記第二側壁と隙間をあけるかまたは接して当該第二側壁に沿って延びた、請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記障子は、前記枠体の開状態で互いに重なり合う室内側障子と室外側障子とを有し、
前記第一金属部材は、前記上枠を構成する前記金属形材に取り付けられ、
前記第一金属部材、前記第二金属部材、および前記第一熱膨張性部材は、少なくとも、前記枠体の閉状態で前記室内側障子と前記室外側障子とが室内外方向に重なった召し合わせ框部より上方に位置した、請求項3に記載の建具。
【請求項6】
前記第一金属部材と前記金属形材または前記連結部材との間に設けられた第二熱膨張性部材を備えた、請求項2に記載の建具。
【請求項7】
前記第一金属部材は、前記第一形材と前記第二形材とが互いに室内外方向に離れるのを抑制するように前記第一形材および前記第二形材のうち他方を引っ掛ける引掛部を有した、請求項2に記載の建具。
【請求項8】
前記樹脂カバーは、前記金属形材の内周側の見込み面に沿って延びるとともに前記金属形材の延在方向に延びる底壁と、前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第一側壁と、当該第一側壁より室外側で前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第二側壁と、を有し、
前記第二金属部材は、前記第一側壁と前記第二側壁との間で突っ張った状態で、一つの前記結合具によって前記第一金属部材と結合された、請求項1~7のうちいずれか一つに記載の建具。
【請求項9】
前記第二金属部材は、前記底壁に沿って延びた板状部と、当該板状部から前記第一側壁に向けて突出した第一突起と、前記板状部から前記第二側壁に向けて突出した第二突起と、を有し、
前記第一突起と前記第二突起とが、前記結合具を挟んで互いに反対側で、前記第一側壁と前記第二側壁との間で突っ張る、請求項8に記載の建具。
【請求項10】
前記第一金属部材は、前記金属形材の屋外に露出しない部位に取り付けられた、請求項1または2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓等のように枠体に対して障子がスライド可能に配設された建具として、枠体が、金属形材と、樹脂カバーと、を有した建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該建具では、樹脂カバーは、金属形材の内周側の見込み面を覆う状態で当該金属形材と係合されている。当該樹脂カバーにより、例えば、美観や、断熱性、防火性、防露性等の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成において、火災時のような高温環境で、樹脂カバーが熱変形し、金属形材との係合状態が解除されて落下してしまうと、金属形材が露出して熱変形しやすくなる。金属形材が熱変形すると、室内外方向に火炎の貫通口が形成され、防火性が損なわれる虞がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、樹脂カバーの熱変形による落下を抑制することが可能な建具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、左右の縦枠、上枠、下枠が四周組された枠体と、下枠の延在方向にスライドする状態で前記枠体に配設した障子と、を備える建具であって、前記縦枠または前記上枠は、内周側の見込み面を有した金属形材と、前記見込み面を覆う樹脂カバーと、前記金属形材に取り付けられた第一金属部材と、前記第一金属部材に対して前記金属形材とは反対側に位置し、前記第一金属部材との間に前記樹脂カバーを挟む第二金属部材と、前記樹脂カバーを貫通し、金属材料で作られ、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを結合する結合具と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第一金属部材、第二金属部材、および結合具は、金属形材に固定されるとともに、金属材料で作られているため、火災時のような高温環境下にあっても変形せずかつ位置も変化しない。よって、高温環境下において樹脂カバーが熱により変形した場合にあっても、第一金属部材および第二金属部材は、当該樹脂カバーを間に挟んだ状態を維持し、当該樹脂カバーの落下を抑制することができる。したがって、高温環境下で、樹脂カバーによって金属形材が直接熱に晒されて変形するのを抑制でき、ひいては、当該熱変形によって金属形材に室内外方向の火炎の貫通口が形成されて防火性が損なわれるのを、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の障子を除く上部を拡大した縦断面図である。
【
図5】
図1に示した建具の障子を除く上部を拡大した縦断面図であって、
図4とは別の位置における縦断面図である。
【
図6】
図1に示した建具に含まれる第一金属部材の側面図である。
【
図7】
図1に示した建具に含まれる第一金属部材の
図5とは別の方向に見た側面図である。
【
図8】
図1に示した建具に含まれる第一金属部材の平面図である。
【
図9】
図1に示した建具に含まれる第二金属部材の平面図であって、取付後の状態を示す図である。
【
図10】
図1に示した建具に含まれる第二金属部材の平面図であって、取付前の状態を示す図である。
【
図11】
図1に示した建具に含まれる上枠の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、建具の奥行きに沿った方向であって、室内外方向とも称されうる。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。上枠や下枠のように水平方向に沿って延在する部材について、見付け方向とは、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠のように上下方向に沿って延在する部材について、見付け方向とは、見込み方向に直交した水平に沿う方向である。また、見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子20Aと、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子20Bとを備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12、上枠13、下枠14を四周組することによって四角形の枠形状に構成したものである。
【0011】
外障子20Aは、四角形状を成す複層ガラス21Aと、複層ガラス21Aの四周に配設した縦框22A、上框23A、下框24A、縦框25Aとを備えて構成したものである。内障子20Bも同様に、四角形状を成す複層ガラス21Bと、複層ガラス21Bの四周に配設した縦框22B、上框23B、下框24B、縦框25Bとを備えて構成したものである。本実施の形態では、外障子20A及び内障子20Bが枠体10に対して上枠13及び下枠14の長手に沿って移動可能に配設してあり、室内側から見て枠体10の左側に外障子20Aを配置し、かつ右側に内障子20Bを配置した場合に、枠体10の開口を閉じることが可能である。枠体10の開口を閉じた状態においては、室内側から見て外障子20Aの右側に配置される縦框25Aと、内障子20Bの左側に配置される縦框25Bとが召し合わせとなって互いに見込み方向に並ぶ状態となる。他方、枠体10の開口を開いた状態においては、外障子20Aと内障子20Bとは、見込み方向に少なくとも部分的に重なった状態となる。以下、縦框25A,25Bは、召し合わせ框部25A,25Bと称する。
【0012】
障子20A,20Bを構成する縦框22A,22B、上框23A,23B、下框24A,24B、召し合わせ框部25A,25Bは、いずれも樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、特に、縦框22A,22B、上框23A,23B、下框24A,24Bとして、同一の断面形状のものを適用して障子20A,20Bが構成してある。召し合わせ框部25A,25Bについては、異なる断面形状となるものを適用している。
【0013】
これに対して枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材からなる金属形材と、樹脂によって成形した押し出し形材からなる樹脂形材とを備えて構成した複合型のものである。金属形材及び樹脂形材についても長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0014】
また、
図2,3等に示すように、縦枠11,12、上枠13、下枠14を構成する各部材は、取付ねじ400を介して、建物の躯体や当該躯体に固定された額縁に取り付けられている。
【0015】
以下、障子20A,20Bの框及び枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14の構成について説明するとともに、本願発明の特徴部分について説明する。なお、以下においては、便宜上、室内側から見て左方に位置する縦枠を左縦枠11と称し、右方に位置する縦枠を右縦枠12と称する。
【0016】
(縦框22A)
図3に示すように、縦框22Aは、框基部31、ガラス挟持片32、内方レールガイド33、外方レールガイド34を一体に成形したものである。框基部31は、断面が略四角形の中空状を成すものである。框基部31の内周側において室外側となる縁部には、押縁35が設けてある。押縁35は、ガラス挟持片32との間に複層ガラス21Aを挟持するものである。ガラス挟持片32は、框基部31の内周側において室内側となる縁部から内周側に突出したものである。内方レールガイド33は、框基部31の外周側において室内側となる縁部から外周側に突出したものであり、外方レールガイド34は、框基部31の外周側において室外側となる縁部から外周側に突出したものである。内方レールガイド33及び外方レールガイド34には、相互間に隙間が確保してあり、互いに対向する部分にタイト材36が設けてある。
【0017】
(縦框25A)
召し合わせ框部25A,25Bを構成する縦框25Aは、框基部31、ガラス挟持片32を一体に成形したものである。框基部31は、断面が略四角形の中空状を成すものである。框基部31の内周側において室外側となる縁部には、押縁35が設けてある。押縁35は、ガラス挟持片32との間に複層ガラス21Aを挟持するものである。ガラス挟持片32は、框基部31の内周側において室内側となる縁部から内周側に突出したものである。
【0018】
(左縦枠11)
図3に示すように、左縦枠11は、金属形材40と、樹脂形材51,52と、を有している。樹脂形材51は、金属形材40と複数の爪構造を介して係合されて一体化されている。また、樹脂形材52は、当該樹脂形材51と複数の爪構造を介して係合されて一体化されている。金属形材40および樹脂形材51,52は、それぞれ、異なる方向に延びる複数の板部を有した断面形状で、上下方向に延びている。樹脂形材51,52は、金属形材40の内周側の見込み面の一部を覆うように設けられている。
【0019】
(右縦枠12)
図3に示すように、右縦枠12は、金属形材60と、当該金属形材60と複数の爪構造を介して係合されて一体化された樹脂形材70と、を有している。金属形材60および樹脂形材70は、それぞれ、異なる方向に延びる複数の板部を有した断面形状で、上下方向に延びている。樹脂形材70は、金属形材60の内周側の見込み面の一部を覆うように設けられている。
【0020】
(下枠14)
図2に示すように、下枠14の金属形材120は、室内側の内方下金属成形体120A、室外側の外方下金属成形体120Bを備えて構成してある。これら内方下金属成形体120A及び外方下金属成形体120Bは、断熱材によって成形したブリッジ材(断熱材)120Cによって互いの間を連結したもので、相互に接触することがなく熱的に遮断してある。また、外方下金属成形体120Bは、閉断面構造を有しており、その内部に、補強部材150を収容している。補強部材150には、熱膨張性部材303が設けられている。また、内方下金属成形体120A、外方下金属成形体120B、ブリッジ材120Cの内周側には、熱膨張性部材304が設けられている。これら熱膨張性部材303,304は、例えば黒鉛のような、加熱されると発泡して膨張する加熱発泡材である。
【0021】
(上枠13)
図2,4に示すように、上枠13の金属形材80は、室内側の内方上金属成形体80A、室外側の外方上金属成形体80Bを備えて構成してある。これら内方上金属成形体80A及び外方上金属成形体80Bは、断熱材によって成形したブリッジ材80Cによって互いの間を連結したもので、相互に接触することがなく熱的に遮断してある。内方上金属成形体80Aは、室内側の第一形材の一例であり、外方上金属成形体80Bは、室外側の第二形材の一例であり、ブリッジ材80Cは、例えばウレタンのような樹脂材料で作られている。ブリッジ材80Cは、連結部材の一例である。
【0022】
図4に示すように、内方上金属成形体80Aは、上内方見込み板部81、上内方見付け板部82、上内方ポケット部83を一体に成形したものである。上内方見込み板部81は、見込み方向に沿って延在した板状を成すものである。上内方見付け板部82は、内障子20Bを案内するための内方側の上横レール13Bの金属レール部を構成するもので、上内方見込み板部81の室外側となる縁部から内周側に向けて延在した金属レール基板部82aと、傾斜延在部82bと、見込み突出部82eとを有している。金属レール基板部82aの延在長さは、枠体10に内障子20Bを配設した場合に、上框23Bに設けたタイト材36の当接位置よりも外周側となるように設定してある。傾斜延在部82bは、金属レール基板部82a内周側からさらに内周側に向けて漸次室外側となるように傾斜したものである。見込み突出部82eは、傾斜延在部82bの室内に臨む面から室内側に向けて見込み方向に延在したものである。
【0023】
この内方上金属成形体80Aにおいて、上内方見込み板部81には係合受部81aが設けてある。また、上内方見付け板部82には係合受部82gが設けてある。これら係合受部81a,82gは、上内方見込み板部81の内周側に後述の樹脂形材90を装着した状態に維持するためのものである。図示の例では、上内方見込み板部81の室内側に位置する縁部、上内方見付け板部82における金属レール基板部82aの外周側となる部分にそれぞれ係合受部81a,82gが設けてある。
【0024】
外方上金属成形体80Bは、上外方見込み板部84、上外方見付け板部85、上外方ポケット部86、上固定用見付け板部87、上外方カバー板部88を一体に成形したものである。上外方見込み板部84は、見込み方向に沿って延在した板状を成すものである。上外方見付け板部85は、外障子20Aを案内するための外方側の上横レール13Aの金属レール部を構成するもので、上外方見込み板部84の室外側となる縁部から内周側に向けて延在した後、室内側に向けて延在している。上外方見付け板部85において室内側に延在した延在縁部には、上方嵌合部85aが設けてある。上方嵌合部85aは、後述する樹脂形材90の上方嵌合部97aに嵌合することにより、相互に離反する見込み方向の移動を制限するためのものである。図示の例では、上外方見付け板部85の延在縁部から外周側に向けて延在した後、室内側に向けて屈曲し、さらに内周側に向けて屈曲することによって上方嵌合部85aが構成してある。上外方ポケット部86は、ブリッジ材80Cを収容するための溝状の凹部であり、上外方見込み板部84の室内側となる縁部において室内側に開口するように設けてある。上固定用見付け板部87は、上外方ポケット部86から外周側に向けて延在した平板状を成すものである。上外方カバー板部88は、上外方見込み板部84の室外側となる縁部から内周側に向けて延在したものである。
【0025】
この外方上金属成形体80Bには、上外方見込み板部84の内周側となる部分に複数の上係合受部84aが設けてあるとともに、上係合受部84aの間となる部分に複数の厚肉部84bが設けてある。上係合受部84aは、上外方見込み板部84の内周側に後述の樹脂形材90を装着した状態に維持するためのものである。図示の例では、上外方ポケット部86の室外に臨む部分、上外方見込み板部84の見込み面において上外方見付け板部85よりも室内側となる部分にそれぞれ上係合受部84aが設けてある。厚肉部84bは、上外方見込み板部84の板厚を部分的に増大することによって構成したもので、それぞれ上枠13の長手に沿って設けてある。
【0026】
また、
図2に示すように、上枠13の樹脂形材90は、室内側の内方上樹脂成形体90A、室外側の外方上樹脂成形体90Bを備えて構成してある。これら内方上樹脂成形体90A及び外方上樹脂成形体90Bは、それぞれが上枠13において左右の縦枠11,12の間に位置する部分の全長にわたる長さを有したものである。
【0027】
図4に示すように、内方上樹脂成形体90Aは、上内カバー基部91、上内レール用カバー部92、上見付けカバー部93、上額縁カバー部94、延長カバー部95を一体に成形したものである。上内カバー基部91は、内方上金属成形体80Aの上内方見込み板部81を覆う平板状を成すものである。この上内カバー基部91は、室外側となる縁部を金属レール基板部82aに設けた係合受部82gと上内方見込み板部81との間に挿入するとともに、室内側となる縁部を室内側の係合受部81aと上内方見込み板部81との間に挿入することにより、内方上金属成形体80Aに着脱可能に装着してある。他方、上内レール用カバー部92は、外方上樹脂成形体90Bの上内レール用外方カバー部98、上内レール用内周カバー部99、上内レール用内方カバー部100とともに、内障子20Bに対応した上横レール13Bの樹脂レール部を構成するためのもので、上内カバー基部91から内周側に向けて延在している。上内レール用カバー部92の内周側となる縁部は、上内カバー基部91を上内方見込み板部81に当接させた場合に、上内方見付け板部82の金属レール基板部82aの室内側に略接して延びて当該室内側を覆うように構成してある。上内レール用カバー部92の外周側となる部分には、係合受部82gに係合するための係合突部92aが設けてある。上見付けカバー部93は、上内カバー基部91の室内側となる縁部から内周側に向けて延在したものである。上見付けカバー部93の外周側となる部分には、係合受部81aに係合するための係合突部93aが設けてある。上額縁カバー部94は、上見付けカバー部93の内周側となる縁部から室内側に向けて見込み方向に延在したものである。延長カバー部95は、上額縁カバー部94の室外側となる縁部から内周側に向けて延在したものである。延長カバー部95の延在縁部は、上内レール用カバー部92の内周側となる縁部よりも内周側となる位置まで延在している。
【0028】
外方上樹脂成形体90Bは、上外カバー基部96、上外レール用内方カバー部97、上内レール用外方カバー部98、上内レール用内周カバー部99、上内レール用内方カバー部100を一体に成形したものである。外方上樹脂成形体90Bは、上外方見込み板部84の内周側の見込み面84cの一部を覆っている。上外カバー基部96は、外方上樹脂成形体90Bの上外方見込み板部84の一部を覆う平板状を成すものである。上外カバー基部96は、見込み面84cから離れた位置で当該見込み面84cに略沿って、室内外方向に延びている。上外レール用内方カバー部97は、外障子20Aに対応した上横レール13Aの樹脂レール部を構成するためのもので、上外カバー基部96の室外側に位置する縁部から内周側に向けて、すなわち見込み面84cから離れるように延在している。上外レール用内方カバー部97の内周側となる縁部には、上方嵌合部97aが設けてある。上方嵌合部97aは、上外レール用内方カバー部97の延在縁部から室外側に向けて延在した後、外周側に向けて屈曲したものである。上外レール用内方カバー部97は、上方嵌合部97aを上外方見付け板部85の上方嵌合部85aに嵌合することにより上外方見付け板部85との間に空間部を確保した状態で上外方見付け板部85の室内に臨む見付け面を覆った状態となる。上内レール用外方カバー部98、上内レール用内周カバー部99、上内レール用内方カバー部100は、内方上樹脂成形体90Aの上内レール用カバー部92とともに、内障子20Bに対応した上横レール13Bの樹脂レール部を構成するためのものである。上内レール用外方カバー部98は、上外カバー基部96の室内側に位置する縁部から内周側に向けて、すなわち見込み面84cから離れるように延在することにより上内方見付け板部82の室外側を覆うものである。上内レール用内周カバー部99は、上内レール用外方カバー部98の延在縁部から室内に設けて延在することにより上内方見付け板部82の内周側を覆うものである。上内レール用内方カバー部100は、上内レール用内周カバー部99の延在縁部から外周側に向けて延在することにより上内方見付け板部82において金属レール基板部82aよりも内周側に位置する部分の見付け面を覆うものである。上内レール用内方カバー部100の延在長さは、枠体10に内障子20Bを配設した場合に、上框23Bに設けたタイト材36が上内レール用カバー部92や上内レール用カバー部92との継ぎ目101に当接することがないように設定してある。上外カバー基部96、上内レール用外方カバー部98、および上外レール用内方カバー部97は、いずれも延在方向E(
図1,3等参照)に延びている。延在方向Eは、
図2,4では紙面と垂直な方向である。上外カバー基部96、上内レール用外方カバー部98、および上外レール用内方カバー部97は、内周側に開放された略U字溝状の形状を有している。上外カバー基部96は、底壁の一例であり、上内レール用外方カバー部98は、第一側壁の一例であり、上外レール用内方カバー部97は、第二側壁の一例である。また、上内レール用外方カバー部98、上内レール用内周カバー部99、上内レール用内方カバー部100は、外周に開口した凹部を構成し、当該凹部の内部に上内方見付け板部82を部分的に収容している。上内レール用内方カバー部100には、中間係合部100aが設けてある。中間係合部100aは、見込み突出部82eの外周側となる部分に係合することにより上内方見付け板部82に対して上内レール用内周カバー部99の内周側への移動を制限するものである。外方上樹脂成形体90Bは、樹脂カバーの一例である。
【0029】
この外方上樹脂成形体90Bには、上外カバー基部96の外周側となる部分に複数の係合用突部96a及び支持用突部96bが設けてあるとともに、上外レール用内方カバー部97及び上内レール用外方カバー部98にそれぞれ取付用突部97b,98aが設けてある。係合用突部96aは、上外カバー基部96から外周側に向けて延在したもので、延在縁部に係合爪部96cを有している。係合爪部96cは、外方上金属成形体80Bに設けた上係合受部84aに係合することにより、上外カバー基部96が上外方見込み板部84との間に空間部を確保して、上外カバー基部96が上外方見込み板部84の内周側となる見込み面の一部を覆った状態に維持するものである。支持用突部96bは、係合用突部96aの相互間において上外カバー基部96から外周側に向けて延在したものである。この支持用突部96bは、係合用突部96aの係合爪部96cが上係合受部84aに係合された場合、延在縁部が上外方見込み板部84に設けた厚肉部84bの相互間において上外方見込み板部84に近接した位置に配置されるように寸法が設定してある。取付用突部97b,98aは、上外レール用内方カバー部97の室内側となる部分及び上内レール用外方カバー部98の室外側となる部分から互いに近接する方向に向けてそれぞれ突出したものである。これらの取付用突部97b,98aは、上外レール用内方カバー部97と上内レール用外方カバー部98との間に上方風止め部材110A(
図2,11参照)を装着した際に係合することにより上方風止め部材110Aの脱落を阻止するものである。上方風止め部材110Aは、弾性を有した樹脂材によって成形したもので、
図11に示すように、上枠13の内周側となる見込み面において召し合わせ框部25A,25Bに対応する部分に配設することにより、室内外の空気の流通を制限するためのものである。
【0030】
(外方上樹脂成形体90Bの支持構造)
上述した構成の枠体10にあっては、火災時等において高温環境になると、樹脂で作られた外方上樹脂成形体90Bが熱により変形し、金属形材80との係合が解除されて脱落する虞がある。この場合、枠体10における防火性が低下してしまう虞がある。
【0031】
そこで、本実施の形態では、枠体10は、
図5に示すように、外方上樹脂成形体90Bの支持構造を有している。当該支持構造は、金属形材80に固定されている。また、支持構造は、いずれも金属材料で作られた第一金属部材210、第二金属部材220、および結合具230,240を、有している。このため、支持構造は、樹脂材料が変形する高温環境下においても変形等が生じず、位置が変化しない。したがって、当該支持構造を介して外方上樹脂成形体90Bを支持することにより、当該外方上樹脂成形体90Bの脱落を抑制することができる。これら第一金属部材210、第二金属部材220、および結合具230,240は、例えば、鉄系材料や、アルミニウム系材料のような、金属材料で作られる。
【0032】
以下、
図5~11を参照しながら、第一金属部材210、第二金属部材220、および結合具230,240の具体例について、詳細に説明する。なお、
図6~8中には、第一金属部材210が枠体10に組み込まれた状態における方向を示している。
【0033】
図5に示すように、第一金属部材210は、結合具230によって、内方上金属成形体80Aの一部である上内方見付け板部82に取り付けられている。第一金属部材210は、金属形材80およびブリッジ材80Cと外方上樹脂成形体90Bとの間に位置している。第二金属部材220は、第一金属部材210に対して金属形材80とは反対側に位置し、当該第一金属部材210との間に外方上樹脂成形体90Bの一部である上外カバー基部96を挟んでいる。結合具240は、上外カバー基部96を貫通し、第一金属部材210と第二金属部材220とを結合している。
【0034】
第一金属部材210は、延部211と、第一固定部212と、第二固定部213と、引掛部214と、を有している。
【0035】
延部211は、
図5,6に示すように、室内外方向に略沿って延びるとともに、
図8に示すように、上枠13の延在方向Eに略沿って延びており、略四角形状かつ板状の形状を有している。なお、
図5,6に示すように、この例では、延部211の室外側の端部は、室内側の端部に対して上方に僅かにずれて位置しており、これに伴って、当該延部211は屈曲した形状を有している。
【0036】
第一固定部212は、
図5,6に示すように、延部211の室内側の端部から金属レール基板部82aの室外側に接した状態で内周側に突出している。また、第一固定部212は、
図7に示すように、上枠13の延在方向Eに略沿って延びており、略四角形状かつ板状の形状を有している。第一固定部212には、延在方向Eに離れた複数箇所(この例では2箇所)において、その厚さ方向、すなわち室内外方向に貫通する結合孔212aが設けられている。
【0037】
結合具230は、
図5,6に示すように、金属レール基板部82aを室内外方向に貫通し、結合孔212aに結合されることにより、第一固定部212と金属レール基板部82aとを一体化する。これにより、第一金属部材210が内方上金属成形体80Aに取り付けられる。結合具230は、例えば、室内側にヘッドを有したねじであり、結合孔212aは、例えば、雌ねじ孔である。この場合、結合具230は、ドライバのような工具を用いて、室内側から螺合される。
【0038】
結合孔212aは、金属形材80を構成する内方上金属成形体80Aのうち、屋外(室外)に露出しない部位である上内方見付け板部82に設けられている。すなわち、第一金属部材210は、金属形材80のうち屋外に露出しない部位に、取り付けられている。
【0039】
引掛部214は、
図8に示すように、延部211のうち延在方向Eの両端部となる二つの領域の、室外側の端部に設けられており、
図5,6に示すように、当該延部211から外周側(上方)に突出している。また、引掛部214は、
図5に示すように、外方上金属成形体80Bの一部である上外方ポケット部86および上係合受部84aに対して室外側に対向している。引掛部214の作用および効果については後述する。なお、引掛部214は、延在方向Eにおいて、室内側の係合用突部96a(
図4参照)と、並んでいる。第一金属部材210が設けられる箇所で係合用突部96aが部分的に切り欠かれることにより、このような構成が実現されている。
【0040】
第二固定部213は、
図8に示すように、延部211のうち延在方向Eの略中央部となる領域の、室外側の端部に設けられており、延部211の他の部位に比べて室外側に突出している。第二固定部213には、
図6に示すように、厚さ方向、すなわち上下方向に貫通する結合孔213aが設けられている。
【0041】
図5に示すように、熱膨張性部材302は、第一金属部材210と金属形材80またはブリッジ材80Cとの間に設けられている。この熱膨張性部材302は、接着剤や両面テープ等を介して、第一金属部材210に取り付けられてもよいし、金属形材80またはブリッジ材80Cに取り付けられてもよい。熱膨張性部材302は、第二熱膨張性部材の一例である。熱膨張性部材302は、熱膨張性部材303,304と同様のものであり、例えば黒鉛のような、加熱されると発泡して膨張する加熱発泡材である。
【0042】
第二金属部材220は、
図5に示すように、室内外方向に略沿って延びるとともに、
図9に示すように、上枠13の延在方向Eに略沿って延びており、略四角形状かつ板状の形状を有している。
【0043】
結合具240は、
図5に示すように、熱膨張性部材301、第二金属部材220、および上外カバー基部96を見付け方向(上下方向)に貫通し、結合孔213aに結合されることにより、第二金属部材220と第二固定部213とを一体化する。言い換えると、結合具240によって、第一金属部材210と第二金属部材220とが、それらの間に外方上樹脂成形体90Bを挟んだ状態で一体化されている。結合具240は、例えば、下側にヘッド240aを有したねじであり、結合孔213aは、例えば、雌ねじ孔である。この場合、結合具240は、例えば、ドライバのような工具を用いて、下側から螺合され、熱膨張性部材301が、ヘッド240aと第二金属部材220との間に挟まれる。
【0044】
熱膨張性部材301は、接着剤や両面テープ等を介して、第二金属部材220の内側見込み面に取り付けられている。熱膨張性部材301は、熱膨張性部材303,304と同様のものであり、例えば黒鉛のような、加熱されると発泡して膨張する加熱発泡材である。熱膨張性部材301は、第一熱膨張性部材の一例である。
【0045】
第二金属部材220は、
図5に示すように、上外カバー基部96と接している。また、
図5,9に示すように、第二金属部材220は、例えばねじとして構成された一つの結合具240によって、第一金属部材210と結合されている。第二金属部材220は、板状部221と、突起222と、突起223と、を有している。板状部221は、上外カバー基部96に略沿って延びるとともに、四角形状に形成されている。突起222は、板状部221の室内側の端部221aから室内側に突出している。また、突起223は、板状部221の室外側の端部221bから室外側に突出している。第二金属部材220の取付状態においては、
図9に示すように、突起222が上内レール用外方カバー部98に接するかあるいは食い込むとともに、突起223が上外レール用内方カバー部97に接するかあるいは食い込んでいる。これにより、第二金属部材220は、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張った状態となっている。すなわち、突起222と突起223とが、結合具240を挟んで互いに反対側で、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張っている。突起222は、第一突起の一例であり、突起223は、第二突起の一例である。
【0046】
図9に示す取付状態において、板状部221の室内側の端部221aは、延在方向Eに略沿って延びており、同じく延在方向Eに略沿って延びる上内レール用外方カバー部98と、隙間をあけて面している。また、板状部221の端部221bは、延在方向Eに略沿って延びており、同じく延在方向Eに略沿って延びる上外レール用内方カバー部97と、隙間をあけて面している。これにより、板状部221は、取付状態で、上内レール用外方カバー部98に近接した位置と、上外レール用内方カバー部97に近接した位置との間で、室内外方向に延びた状態となる。熱膨張性部材301は、このような板状部221の、上外カバー基部96とは反対側の面、すなわち、障子20A,20Bと対向する部位に、設けられている。
【0047】
また、
図9,10のように上方に見た場合に、
図10に示す取付前状態において、第二金属部材220は、
図9に示す取付状態の位置に対して結合具240の回転中心における反時計回り方向に所定角度だけ回転した位置(姿勢)に、配置されている。ここで、反時計回り方向は、結合具240のねじ回し方向の反対方向である。また、第二金属部材220は、当該位置(姿勢)で、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間に収容可能となるよう、構成されている。このような構成において、
図10の取付前状態から、ねじとしての結合具240を、ドライバ等を用いて時計回り方向に回転させる。これにより、結合具240のヘッド240aと第二金属部材220との摩擦によって当該第二金属部材220が上記所定角度だけ時計回り方向に回転し、結合具240が螺合されるとともに、
図9に示す取付状態が得られる。また、突起222,223は、取付状態において、結合具240の回転中心を通り室内外方向に延びる仮想線Mに対して、反時計回り方向にずれた板状部221の対角線DLと接した位置に設けられている。この場合、突起222,223の結合具240の回転中心に対する半径(モーメントアーム)をより大きく設定することができる。よって、上内レール用外方カバー部98または上外レール用内方カバー部97との摩擦(係合)による、結合具240の回転中心回りの第二金属部材220の回転止めトルクをより大きく設定できる。また、回転止めトルクを得るための、突起222,223の上内レール用外方カバー部98または上外レール用内方カバー部97への食い込み量を、より小さくすることができる。なお、上記所定角度、すなわち第二金属部材220の回転角度は、例えば、直角以下の鋭角に設定される。
【0048】
図11に示すように、第一金属部材210、第二金属部材220、および熱膨張性部材301は、召し合わせ框部25A,25Bに対して上方に重なるよう、配置されている。また、上方風止め部材110Aは、第一金属部材210、第二金属部材220、および熱膨張性部材301と延在方向Eにおいて隣り合うとともに、召し合わせ框部25A,25Bに対して上方に重なるよう、配置されている。なお、上方風止め部材110Aと、第一金属部材210、第二金属部材220、および熱膨張性部材301とは、延在方向Eにおいて、
図11とは逆の順に配置されてもよい。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、上枠13は、金属形材80と、当該金属形材80の内周側の見込み面を覆う外方上樹脂成形体90Bとを有する。また、上枠13は、第一金属部材210と、第二金属部材220と、結合具240と、を有する。第一金属部材210は、金属形材80に取り付けられる。第二金属部材220は、第一金属部材210に対して金属形材とは反対側に位置し、第一金属部材210との間に外方上樹脂成形体90Bを挟む。結合具240は、金属材料で作られ、第二金属部材220と、外方上樹脂成形体90Bを貫通し、金属材料で作られる。当該構成によれば、第一金属部材210および第二金属部材220は、高温環境下にあっても変形せずかつ位置も変化しない。よって、高温環境下で外方上樹脂成形体90Bが熱変形した場合にあっても、外方上樹脂成形体90Bが第一金属部材210と第二金属部材220とによって挟まれた状態が維持される。したがって、高温環境下で、外方上樹脂成形体90Bによって金属形材80が直接熱に晒されて変形するのを抑制でき、ひいては、当該熱変形によって金属形材80に室内外方向の火炎の貫通口が形成されて防火性が損なわれるのを抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態では、上枠13は、ブリッジ材80Cを有する。ブリッジ材80Cは、内方上金属成形体80Aと外方上金属成形体80Bとの間に位置し、樹脂材料で作られ、内方上金属成形体80Aと外方上金属成形体80Bとを連結する。また、第一金属部材210は、内方上金属成形体80Aおよび外方上金属成形体80Bのうち一方である外方上金属成形体80Bに取り付けられる。当該構成では、第一金属部材210は、金属形材80の一つである内方上金属成形体80Aに取り付けられている。よって、ブリッジ材80Cが焼失したとしても、第一金属部材210、第二金属部材220、および結合具240は、変形せずかつ位置も変化しない。したがって、ブリッジ材80Cが設けられた構成においても、外方上樹脂成形体90Bが第一金属部材210と第二金属部材220とによって挟まれた状態が維持され、ひいては、防火性が損なわれるのを抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態では、熱膨張性部材301は、第二金属部材220の外障子20Aおよび内障子20Bと対向する部位に取り付けられている。当該構成において、熱膨張性部材301は、高温環境下においても位置が変化しない第二金属部材220に取り付けられている。当該構成によれば、高温環境下において、上枠13と外障子20Aおよび内障子20Bとの間の隙間においてより確実に熱膨張性部材301を膨張させ、当該隙間を塞ぐことができる。したがって、熱膨張性部材301により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、第二金属部材220は、上外カバー基部96に略沿って延びた板状部221を有する。板状部221の室内側の端部221aは、上内レール用外方カバー部98と隙間をあけて当該上内レール用外方カバー部98に略沿って延びる。板状部221の室外側の端部221bは、上外レール用内方カバー部97と隙間をあけて当該上外レール用内方カバー部97に略沿って延びる。当該構成によれば、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で板状部221をより広く構成することができる。よって、当該板状部221に、より大きな熱膨張性部材301を取り付けることができ、ひいては、当該熱膨張性部材301による防火性をより高めることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、第一金属部材210、第二金属部材220、および熱膨張性部材301は、少なくとも、枠体10の閉状態で室内側の障子20Bと室外側の障子20Aとが室内外方向に重なった召し合わせ框部25A,25Bより上方に位置している。当該構成によれば、高温環境下において、召し合わせ框部25A,25Bと上枠13との間の隙間を、膨張した熱膨張性部材301によって塞ぐことができる。したがって、熱膨張性部材301により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、上枠13は、第一金属部材210と金属形材80またはブリッジ材80Cとの間に設けられた熱膨張性部材302を備える。当該構成によれば、ブリッジ材80Cが焼失したとしても、第一金属部材210と金属形材80との間の隙間において、熱膨張性部材302を膨張させ、当該隙間を塞ぐことができる。したがって、熱膨張性部材301により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、第一金属部材210は、内方上金属成形体80Aおよび外方上金属成形体80Bのうち一方である外方上金属成形体80Bに取り付けられる。第一金属部材210は、引掛部214を有する。引掛部214は、内方上金属成形体80Aと外方上金属成形体80Bとが互いに室内外方向に離れるのを抑制するように内方上金属成形体80Aを引っ掛ける。当該構成によれば、ブリッジ材80Cが焼失したとしても、引掛部214によって、内方上金属成形体80Aと外方上金属成形体80Bとが離隔するのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、第二金属部材220は、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張った状態で、一つの結合具240によって第一金属部材210と結合される。当該構成によれば、第二金属部材220を上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張った姿勢で、固定できる。よって、比較的簡素な構成によって、第二金属部材220の取付姿勢のばらつきを抑制することができる。さらに、第二金属部材220に熱膨張性部材301が取り付けられる場合にあっては、熱膨張性部材301の熱膨張状態(姿勢)のばらつきを、抑制できる。
【0057】
また、本実施の形態では、第二金属部材220は、板状部221から上内レール用外方カバー部98に向けて突出した突起222と、板状部221から上外レール用内方カバー部97に向けて突出した突起223と、を有する。突起222と突起223とは、結合具240を挟んで互いに反対側で、上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張る。当該構成によれば、第二金属部材220が上内レール用外方カバー部98と上外レール用内方カバー部97との間で突っ張る構造を、比較的簡素な構成によって実現することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、第一金属部材210は、金属形材80の屋外に露出しない部位に取り付けられる。当該構成によれば、金属形材80において第一金属部材210が取り付けられる部位における漏水を抑制することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態では、枠体10に対して外障子20A及び内障子20Bの双方がスライドする引き違い窓を例示しているが、一方の障子のみがスライドするように片引き窓として構成することも可能である。また、障子20A,20Bとして樹脂によって成形した框22A,22B、23A,23B、24A,24B,25A,25Bを備えるものを例示している。しかしながら、障子は、当該構成には限定されず、例えば室外側となる部分をアルミニウム合金等の金属によって成形し、室内側となる部分を樹脂によって成形した框を備えてもよい。また、上枠13の金属形材80としてそれぞれブリッジ材80Cによって連結した内方上金属成形体80A及び外方上金属成形体80Bを備えるものを例示している。また、下枠14の金属形材120としてブリッジ材120Cによって連結した内方下金属成形体120A及び外方下金属成形体120Bを備えるものを例示している。しかしながら、金属形材は、当該構成には限定されず、それぞれブリッジ材を有せず、室内側部位と室外側部位とが一体に成形されたものであっても構わない。
【0060】
また、上述した実施の形態では、第一金属部材210、第二金属部材220、および結合具230,240による外方上樹脂成形体90B(樹脂カバー)の支持構造を、上枠13に適用した構成を例示している。しかしながら、これには限定されず、樹脂カバーの支持構造は、左縦枠11および右縦枠12にも適用可能である。また、樹脂カバーの支持構造は、上枠13、左縦枠11、または右縦枠12において、1箇所だけ局所的に設けられてもよいし、枠の延在方向に互いに離れて複数箇所に設けられてもよい。また、樹脂カバーの支持構造は、各枠の略全長に渡って各枠に沿って延びた構造であってもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、第一金属部材210は、内方上金属成形体80A(室内側の第一形材)に取り付けられたが、これには限定されず、第一金属部材は、室外側の第二形材に取り付けてもよい。その場合、室外側の第二形材は、室内側の第一形材が室内側に離れるのを抑制する引掛部を有してもよい。また、第一金属部材210は、内方上金属成形体80Aの上内方見付け板部82に取り付けられたが、これには限定されず、第一形材および第二形材の屋外に露出しない他の位置に取り付けられてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、第二金属部材220の板状部221の室内側の端部221aおよび室外側の端部221bは、上内レール用外方カバー部98(第一側壁)または上外レール用内方カバー部97(第二側壁)と隙間をあけて面した。しかしながら、これには限定されず、室内側および室外側の端部は、第一側壁または第二側壁と接してもよい。また、突起222(第一突起)および突起223(第二突起)は、板状部221の対角線DLと接していなくてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、熱膨張性部材302(第二熱膨張性部材)は、内方上金属成形体80A(第一形材)、外方上金属成形体80B(第二形材)、およびブリッジ材80C(連結部材)と面するように一つだけ設けられた。しかしながら、これには限定されず、第二熱膨張性部材は、複数に分けて設けられてもよいし、第一形材、第二形材、および連結部材のうち少なくとも一つに面するように設けられてもよい。また、第二熱膨張性部材は、種々の位置に設置可能である。さらに、第二熱膨張性部材は、第一金属部材に取り付けられてもよいし、金属形材または連結部材に取り付けられてもよい。
【0064】
本発明の建具では、前記金属形材は、室内側の第一形材と、室外側の第二形材と、を有し、前記縦枠または前記上枠は、前記第一形材と前記第二形材との間に位置し樹脂材料で作られ前記第一形材と前記第二形材とを連結する連結部材を有し、前記第一金属部材は、前記第一形材および前記第二形材のうち一方に取り付けられる。
本発明によれば、第一金属部材が、金属形材に取り付けられている。よって、高温環境下において連結部材が焼失したとしても、第一金属部材、第二金属部材、および結合具は変形せずかつ位置も変化しない。よって、枠体が連結部材を有する構成にあっても、高温環境下において、第一形材および第二形材は、樹脂カバーを挟んだ状態を維持し、当該樹脂カバーの落下を抑制し、ひいては防火性が損なわれるのを抑制できる。
【0065】
前記建具は、前記第二金属部材の前記障子と対向する部位に取り付けられた第一熱膨張性部材を備える。
本発明によれば、第一熱膨張性部材は、高温環境下にあっても変形せずかつ位置も変化しない第二金属部材に取り付けられている。よって、高温環境下において、枠体と障子との間の隙間においてより確実に第一熱膨張性部材を膨張させ、当該隙間を塞ぐことができる。したがって、第一熱膨張性部材により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0066】
前記建具では、前記樹脂カバーは、前記金属形材の内周側の見込み面に沿って延びるとともに前記金属形材の延在方向に延びる底壁と、前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第一側壁と、当該第一側壁より室外側で前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第二側壁と、を有し、前記第二金属部材は、前記底壁に沿って延びた板状部を有し、前記板状部の室内側の端部は前記第一側壁と隙間をあけるかまたは接して当該第一側壁に沿って延び、前記板状部の室外側の端部は前記第二側壁と隙間をあけるかまたは接して当該第二側壁に沿って延びる。
本発明によれば、第一側壁と第二側壁との間で板状部をより広く構成することができ、ひいては、当該板状部により大きな第一熱膨張性部材を取り付けることができる。これにより、第一熱膨張性部材による防火性をより高めることができる。
【0067】
前記建具では、前記障子は、前記枠体の開状態で互いに重なり合う室内側障子と室外側障子とを有し、前記第一金属部材は、前記上枠を構成する前記金属形材に取り付けられ、前記第一金属部材、前記第二金属部材、および前記第一熱膨張性部材は、少なくとも、前記枠体の閉状態で前記室内側障子と前記室外側障子とが室内外方向に重なった召し合わせ框部より上方に位置する。
本発明によれば、高温環境下において、召し合わせ框部と枠体との間の隙間を、膨張した第一熱膨張性部材によって塞ぐことができる。したがって、第一熱膨張性部材により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0068】
前記建具は、前記第一金属部材と前記金属形材または前記連結部材との間に設けられた第二熱膨張性部材を備える。
本発明によれば、連結部材が焼失したとしても、第一金属部材と金属形材との間の隙間において、第二熱膨張性部材を膨張させ、当該隙間を塞ぐことができる。したがって、第二熱膨張性部材により、当該隙間を介した火炎の伝播を防止することができる。
【0069】
前記建具では、前記第一金属部材は、前記第一形材と前記第二形材とが互いに室内外方向に離れるのを抑制するように前記第一形材および前記第二形材のうち他方を引っ掛ける引掛部を有する。
本発明によれば、火災により連結部材が焼失したとしても、引掛部によって、第一形材と第二形材とが離隔するのを抑制することができる。
【0070】
前記建具では、前記樹脂カバーは、前記金属形材の内周側の見込み面に沿って延びるとともに前記金属形材の延在方向に延びる底壁と、前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第一側壁と、当該第一側壁より室外側で前記底壁から内周側に突出し前記金属形材の延在方向に延びる第二側壁と、を有し、前記第二金属部材は、前記第一側壁と前記第二側壁との間で突っ張った状態で、一つの前記結合具によって前記第一金属部材と結合される。
本発明によれば、第二金属部材を第一側壁と第二側壁との間で突っ張った姿勢で、固定することができるため、比較的簡素な構成によって、第二金属部材の取付姿勢のばらつきを抑制することができる。さらに、第二金属部材に第一熱膨張性部材が取り付けられる場合にあっては、当該第一熱膨張性部材の熱膨張状態(姿勢)のばらつき、ひいては防火性のばらつきを、抑制することができる。
【0071】
前記建具では、前記第二金属部材は、前記底壁に沿って延びた板状部と、当該板状部から前記第一側壁に向けて突出した第一突起と、前記板状部から前記第二側壁に向けて突出した第二突起と、を有し、前記第一突起と前記第二突起とが、前記結合具を挟んで互いに反対側で、前記第一側壁と前記第二側壁との間で突っ張る。
本発明によれば、第二金属部材が第一側壁と第二側壁との間で突っ張る構造を、比較的簡素な構成によって実現することができる。
【0072】
前記建具では、前記第一金属部材は、前記金属形材の屋外に露出しない部位に取り付けられる。
本発明によれば、金属形材において第一金属部材が取り付けられる部位における漏水を抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 枠体、11 左縦枠(縦枠)、12 右縦枠(縦枠)、13 上枠、14 下枠、20A 外障子(障子)、20B 内障子(障子)、25A,25B 召し合わせ框部、40,60,80,120 金属形材、80A 内方上金属成形体(第一形材)、80B 外方上金属成形体(第二形材)、80C ブリッジ材(連結部材)、84c 見込み面、90B 外方上樹脂成形体、96 上外カバー基部(底壁)、97 上外レール用内方カバー部(第二側壁)、98 上内レール用外方カバー部(第一側壁)、210 第一金属部材、214 引掛部220 第二金属部材、221 板状部、221a 端部、221b 端部、222 突起(第一突起)、223 突起(第二突起)、240 結合具、301 熱膨張性部材(第一熱膨張性部材)、302 熱膨張性部材(第二熱膨張性部材)