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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109283
(43)【公開日】2025-07-25
(54)【発明の名称】インペラ、及び磁気浮上式ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20250717BHJP
【FI】
F04D29/30 C
F04D29/30 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003044
(22)【出願日】2024-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能登路 裕
(72)【発明者】
【氏名】山内 紘平
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC30
3H130CB03
3H130CB14
3H130DA02Z
3H130DB10Z
3H130DD04Z
3H130EA06A
3H130EA06J
3H130EB01C
3H130EB04A
(57)【要約】
【課題】インペラの軸方向への移動を抑制しつつ、磁気浮上式ポンプの揚程を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】本開示のインペラは、磁気浮上式ポンプにおける、移送流体の流入口及び流出口を有するハウジング内に配置され、軸線回りに回転可能なインペラであって、前記軸線を中心として円形に形成された外形を有するインペラ本体と、前記インペラ本体に設けられ、前記外形の周方向に間隔をあけて配置された複数の羽根と、を備え、前記羽根は、前記軸線方向から見た平面視において、前記インペラ本体の前記外形の範囲内に設けられた主羽根部と、前記主羽根部に設けられ、前記インペラ本体の前記外形よりも径方向外方に突出する補助羽根部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気浮上式ポンプにおける、移送流体の流入口及び流出口を有するハウジング内に配置され、軸線回りに回転可能なインペラであって、
前記軸線を中心として円形に形成された外形を有するインペラ本体と、
前記インペラ本体に設けられ、前記外形の周方向に間隔をあけて配置された複数の羽根と、を備え、
前記羽根は、
前記軸線方向から見た平面視において、前記インペラ本体の前記外形の範囲内に設けられた主羽根部と、
前記主羽根部に設けられ、前記インペラ本体の前記外形よりも径方向外方に突出する補助羽根部と、を有する、インペラ。
【請求項2】
前記補助羽根部は、前記軸線方向と直交する仮想平面に対して傾いている、請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記補助羽根部の前記軸線方向の厚みは、前記主羽根部の前記軸線方向の厚みよりも小さい、請求項1又は請求項2に記載のインペラ。
【請求項4】
移送流体の流入口及び流出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、軸線回りに回転可能な回転軸と、
前記回転軸を回転駆動するモータと、
前記回転軸を非接触で支持する磁気軸受部と、
前記ハウジング内に配置され、前記回転軸に一体回転可能に設けられた請求項1又は請求項2に記載のインペラと、を備える磁気浮上式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラ、及び磁気浮上式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングに対して回転軸を磁気により浮上させて非接触で支持する磁気浮上式ポンプとして、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された磁気浮上式ポンプは、ハウジング、回転軸、モータ、及び磁気軸受を備えている。磁気軸受は、ハウジングに対して回転軸を非接触で回転可能に支持し、モータを駆動させることで、ハウジングに対して回転軸が回転する。
【0003】
磁気浮上式ポンプは、ハウジング内において、回転軸と共に回転するインペラをさらに備えている。インペラは、インペラ本体と、インペラ本体に固定された複数の羽根と、を有する。インペラが回転軸と共に回転すると、ハウジングに形成された吸込口からハウジング内に移送流体が吸い込まれる。ハウジング内に吸い込まれた移送流体は、インペラの複数の羽根によって、ハウジングの外周に形成された吐出口からハウジング外へ吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-046860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の磁気浮上式ポンプにおいて、揚程を向上させるためには、インペラの回転数を上げるか、インペラの外径を大きくする必要がある。しかし、これらのいずれを採用しても、吸込口の低圧領域が存在するため、軸方向に圧力差が発生する。それによってハウジング内では、二次流れの渦が生じ、移送流体の流量が低下した場合には、この渦がより強くなり、軸方向の圧力差が拡大する。このように、軸方向の圧力差が大きくなると、インペラに作用する軸方向のスラスト力が増大するため、インペラは、前記スラスト力によって軸方向へ移動し、ハウジングに接触して破損するおそれがある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、インペラの軸方向への移動を抑制しつつ、磁気浮上式ポンプの揚程を向上させることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示のインペラは、磁気浮上式ポンプにおける、移送流体の流入口及び流出口を有するハウジング内に配置され、軸線回りに回転可能なインペラであって、前記軸線を中心として円形に形成された外形を有するインペラ本体と、前記インペラ本体に設けられ、前記外形の周方向に間隔をあけて配置された複数の羽根と、を備え、前記羽根は、前記軸線方向から見た平面視において、前記インペラ本体の前記外形の範囲内に設けられた主羽根部と、前記主羽根部に設けられ、前記インペラ本体の前記外形よりも径方向外方に突出する補助羽根部と、を有する。
【0008】
本開示のインペラによれば、インペラ本体の外形の範囲内に設けられた主羽根部に、インペラ本体の外形よりも径方向外方に突出する補助羽根部が設けられる。この補助羽根部によって、インペラの回転に伴う遠心力を増大させることができる。その結果、ハウジングの流出口から吐出される移送流体に付与されるエネルギーが大きくなるので、磁気浮上式ポンプの揚程を向上させることができる。また、ハウジング内におけるインペラの径方向外方では、補助羽根部が二次流れの渦を軸方向に分断するように配置される。これにより、ハウジング内における軸方向の圧力差が抑制されるので、インペラに作用する軸方向のスラスト力を低減することができる。その結果、前記スラスト力に起因するインペラの軸方向への移動を抑制することができる。
【0009】
(2)前記(1)のインペラにおいて、前記補助羽根部は、前記軸線方向と直交する仮想平面に対して傾いているのが好ましい。
この場合、インペラに作用する軸方向のスラスト力をさらに低減することができるので、前記スラスト力に起因するインペラの軸方向への移動をさらに抑制することができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)のインペラにおいて、前記補助羽根部の前記軸線方向の厚みは、前記主羽根部の前記軸線方向の厚みよりも小さいのが好ましい。
この場合、インペラの回転時における補助羽根部の抵抗を減らすことができるので、磁気浮上式ポンプの回転トルクを低減することができる。
【0011】
(4)本開示の磁気浮上式ポンプは、移送流体の流入口及び流出口を有するハウジングと、前記ハウジング内に配置され、軸線回りに回転可能な回転軸と、前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸を非接触で支持する磁気軸受部と、前記ハウジング内に配置され、前記回転軸に一体回転可能に設けられた前記(1)から(3)のいずれかに記載のインペラと、を備える。
上記磁気浮上式ポンプによれば、上記インペラと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、インペラの軸方向への移動を抑制しつつ、磁気浮上式ポンプの揚程を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る磁気浮上式ポンプを示す概略断面図である。
図2】前記磁気浮上式ポンプの回転軸及びインペラを示す斜視図である。
図3】前記インペラを軸方向上側から見た平面図である。
図4】前記インペラを示す側面図である。
図5】二次流れにより前記インペラに対するスラスト力が増加する作用の説明図である。
図6】本開示の第2実施形態に係るポンプのインペラを示す側面図である。
図7】揚程の試験結果を示すグラフである。
図8】スラスト力の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、本開示の第1実施形態に係る磁気浮上式ポンプ1を示す概略断面図である。図1において、本実施形態の磁気浮上式ポンプ1(以下、単に「ポンプ1」ともいう)は、遠心ポンプからなる。ポンプ1は、ハウジング2、回転軸3、モータ4、及び一対の磁気軸受部5、及びインペラ10を備える。なお、ポンプ1は、その軸線Cを上下方向に向けて配置されているが、軸線Cが水平方向となるように配置されてもよい。
【0015】
以下、本開示では、ポンプ1の軸線Cに沿う方向は、ポンプ1の軸方向であり、単に「軸方向」と称する。また、図1の上側をポンプ1の「軸方向上側」と称し、図1の下側をポンプ1の「軸方向下側」と称する。軸線Cに直交する方向は、ポンプ1の径方向であり、単に「径方向」と称する。軸線Cを中心として回転する方向は、ポンプ1の周方向であり、単に「周方向」と称する。
【0016】
ハウジング2は、回転軸3が収容される第1ハウジング部21と、インペラ10が収容される第2ハウジング部22と、を備える。第1ハウジング部21は、円筒壁211と、円筒壁211の軸方向下側に設けられた底壁212と、を有する。円筒壁211は、軸線Cを中心として円筒状に形成されている。底壁212は、円板状に形成され、円筒壁211の軸方向下側の開口を塞いでいる。
【0017】
第2ハウジング部22は、第1ハウジング部21の軸方向上側に設けられている。第2ハウジング部22は、円筒壁221と、円筒壁221の軸方向下側に設けられた底壁222と、円筒壁221の軸方向上側に設けられた天壁223と、を有する。円筒壁221は、軸線Cを中心として円筒状に形成されている。円筒壁221の外径は、第1ハウジング部21の円筒壁211の外径よりも大きい。
【0018】
第2ハウジング部22の天壁223は、略円すい板状に形成されている。天壁223の外周縁は、円筒壁221の軸方向上側の開口縁に接続されている。第2ハウジング部22の底壁222は、円環板状に形成されている。底壁222の外周縁は、円筒壁221の軸方向下側の開口縁に接続されている。底壁222の内周縁は、第1ハウジング部21の円筒壁211における軸方向上側の開口縁に接続されている。これにより、第2ハウジング部22の内部空間は、第1ハウジング部21の内部空間と連通している。
【0019】
第2ハウジング部22は、移送流体が流入する流入口23と、移送流体が流出する流出口24と、をさらに有する。流入口23は、天壁223の中央部に形成されている。流出口24は、円筒壁221の外周の所定箇所に形成されている。
【0020】
回転軸3は、第1ハウジング部21内において、軸線C回りに回転可能に配置される。回転軸3は、例えば円筒状に形成されている。回転軸3の軸方向上端部は、第2ハウジング部22内に入り込んでいる。
【0021】
モータ4は、回転軸3を回転駆動する。モータ4は、第1ハウジング部21に設けられた固定子41と、回転軸3に設けられた回転子42と、を有する。固定子41は、円筒壁211の外周面の軸方向中央部に固定されている。回転子42は、回転軸3の内周面において、固定子41と径方向に対向する位置に固定されている。固定子41に電流が付与されると、回転磁界が発生することで、回転子42は、回転軸3と共に軸線Cを中心として回転する。
【0022】
一対の磁気軸受部5は、回転軸3を非接触で支持する。各磁気軸受部5は、第1ハウジング部21に設けられた磁気発生部51と、回転軸3に設けられた磁性体52と、を有する。磁気発生部51は、固定子41の軸方向両側に配置され、円筒壁211の外周面に固定されている。磁性体52は、回転軸3の内周面おいて、磁気発生部51と径方向に対向する位置に固定されている。磁気発生部51と磁性体52とによって生じる磁気により、回転軸3は非接触で支持される。
【0023】
[インペラ]
図2は、回転軸3及びインペラ10を示す斜視図である。図1及び図2において、インペラ10は、第2ハウジング部22内に配置される。インペラ10は、回転軸3の軸方向上側に設けられ、回転軸3と共に軸線C回りに一体回転可能である。磁気軸受部5により回転軸3が非接触で支持された状態で、第2ハウジング部22におけるインペラ10と円筒壁221との間には、環状の空間Sが形成される。
【0024】
図3は、インペラ10を軸方向上側から見た平面図である。図4は、インペラ10を示す側面図である。図2図4において、本実施形態のインペラ10は、例えばクローズドインペラである。インペラ10は、インペラ本体11と、複数の羽根15と、を備える。
【0025】
インペラ本体11は、平面視において、軸線Cを中心として円形に形成された外形を有する。インペラ本体11は、ベース部12と、ベース部12よりも軸方向上側に配置されたカバー部(シュラウド)13と、を有する。ベース部12は、例えば円板状に形成されている。ベース部12の外径は、回転軸3の外径よりも大きい。ベース部12の軸方向下側の外面12aには、回転軸3の軸方向上端が固定されている。
【0026】
カバー部13は、ベース部12の軸方向上側の内面12bに対して間隔をあけて配置されている。カバー部13は、円環板状に形成されている。カバー部13の外径は、ベース部12の外径と同一であり、カバー部13の軸方向下側の内面13bは、ベース部12の内面12bと対向して配置されている。本実施形態では、平面視におけるカバー部13の外形は、ベース部12の外形、又はカバー部13の外形となる。
【0027】
カバー部13の軸方向上側の外面13aは、外周縁から内周縁に向かうにしたがって徐々に軸方向上側へ突出するように傾斜している。外面13aの内周側には、移送流体をインペラ本体11内に導入する入口11aが形成されている。入口11aは、第2ハウジング部22の流入口23と連通している(図1参照)。
【0028】
[羽根]
複数の羽根15は、インペラ本体11のベース部12とカバー部13との間に設けられている。複数の羽根15は、インペラ本体11の周方向に等間隔をあけて配置されている。本実施形態のインペラ10は、4個の羽根15を備えている。
【0029】
各羽根15は、インペラ本体11に設けられた主羽根部16と、主羽根部16に設けられた補助羽根部17と、を有する。主羽根部16は、軸方向(軸線C方向)から見た平面視(図3参照)において、インペラ本体11の外形の範囲内に設けられている。すなわち、主羽根部16は、平面視において、インペラ本体11の径方向外方に突出しないように、インペラ本体11に設けられている。本実施形態の主羽根部16は、ベース部12の内面12bに固定されている。主羽根部16の軸方向上側の端面には、カバー部13が固定されている。
【0030】
主羽根部16は、例えば平面視において略三角形状に形成されている。主羽根部16は、第1側面16a、第2側面16b、及び外側面16cを有する。第1側面16a及び第2側面16bは、ベース部12の内面12bに対して垂直な面である。第1側面16a及び第2側面16bは、平面視においてベース部12の中心側から径方向外側に向かって湾曲しながら延びている。主羽根部16の外側面16cは、ベース部12(カバー部13)の外周面と同一の曲率半径からなる円弧面である。
【0031】
周方向に隣り合う主羽根部16同士の間であって、且つベース部12とカバー部13との間には、流路18が形成されている。各流路18は、入口11aからインペラ本体11内に導入された移送流体が径方向内側から径方向外側に向かって流れる流路である。各流路18の径方向外側の開口は、移送流体がインペラ本体11外へ送り出される出口11bとされている。したがって、インペラ本体11の外周には、移送流体がインペラ本体11外へ送り出される複数の出口11bが形成されている。
【0032】
補助羽根部17は、主に各主羽根部16の外側面16cに固定されている。補助羽根部17は、インペラ本体11の外形よりも径方向外方に突出している。本実施形態の補助羽根部17は、平面視において、主羽根部16側の基端部から突出端部に向かうにしたがって、周方向一方側(図3では反時計回り方向側)へ湾曲しながら先細るように形成されている。
【0033】
補助羽根部17は、第1外側面17aと、第2外側面17bと、を有する。補助羽根部17の第1外側面17aの径方向内端は、主羽根部16の第1側面16aに接続されている。第1外側面17aは、平面視において第1側面16aの湾曲に沿って径方向外方に延長されるように湾曲している。
【0034】
補助羽根部17の第2外側面17bの径方向内端は、主羽根部16の第2側面16bに接続されている。第2外側面17bは、平面視において第2側面16bの湾曲に沿って径方向外方に延長されるように湾曲している。補助羽根部17の第1外側面17a及び第2外側面17bの径方向外端同士は、互いに接続されている。
【0035】
図4に示すように、補助羽根部17の第1外側面17a及び第2外側面17bは、側面視において径方向外方に凸曲面となるように湾曲している。補助羽根部17の軸方向の厚みt2は、主羽根部16の軸方向の厚みt1よりも小さい。補助羽根部17は、軸方向と直交する仮想平面Kに対して傾いている。本実施形態の補助羽根部17は、その周方向一端から周方向他端(図4の左端から右端)に向かうにしたがって、徐々に軸方向上側に向かって傾斜している。
【0036】
図1及び図2において、モータ4により回転軸3を回転駆動させると、回転軸3と共にインペラ10が軸線C回りに回転する。そうすると、移送流体は、流入口23からハウジング2内に吸い込まれ、さらに入口11aからインペラ本体11内に導入される。インペラ本体11内に導入された移送流体は、複数の羽根15の回転に伴う遠心力により、径方向外側へ放射状に流れる。その際、移送流体は、隣接する羽根15同士の間の流路18を通過し、インペラ本体11外へ送り出される。インペラ本体11外へ送り出された移送流体の大部分は、ハウジング2の流出口24からハウジング2外へ吐出される。
【0037】
[スラスト力]
上記のようにインペラ10を回転させて移送流体を吐出する際に、ハウジング2内では、二次流れにより、インペラ10に対して軸方向のスラスト力が発生する。図5は、二次流れによりインペラ10に対するスラスト力が増加する作用の説明図である。図5では、インペラ10の補助羽根部17の図示を省略している。図5に示すように、インペラ10を回転させて移送流体を吐出する際に、第2ハウジング部22内の空間Sでは、インペラ本体11外へ送り出された移送流体の一部によって二次流れの渦70が発生する。渦70は、空間Sにおいて、図5の反時計回り方向に回転するように発生する。
【0038】
上記のように回転する渦70が発生すると、インペラ本体11外へ送り出された移送流体のうち、空間Sの軸方向上側へ流れる移送流体81の速度が増加し、空間Sの軸方向下側へ流れる移送流体82の速度が減少する。これにより、空間Sの軸方向上側が低圧化し、空間Sの軸方向下側が高圧化する。その結果、第2ハウジング部22内における軸方向の圧力差が大きくなることで、インペラ10に対して軸方向(ここでは軸方向上側)のスラスト力が発生する。
【0039】
しかし、本実施形態では、図1及び図2に示すように、第2ハウジング部22内の空間Sには、複数の補助羽根部17が配置されるので、これら複数の補助羽根部17によって、空間Sで発生する渦70を軸方向に分断することができる。これにより、第2ハウジング部22内における軸方向の圧力差が抑制されるので、インペラ10に作用する軸方向のスラスト力を低減することができる。また、本実施形態では、補助羽根部17によって、インペラ10の回転に伴う遠心力を増大させることができる。その結果、ハウジング2の流出口24から吐出される移送流体に付与されるエネルギーが大きくなるので、ポンプ1の揚程を向上させることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図6は、本開示の第2実施形態に係るポンプ1のインペラ10を示す側面図である。本実施形態のインペラ10は、補助羽根部17の形状が第1実施形態と相違する。本実施形態における各補助羽根部17は、軸方向と直交する仮想平面Kに対して傾かないように、仮想平面Kと平行に形成されている。各補助羽根部17の第1外側面17a及び第2外側面17bは、側面視において補助羽根部17の厚み全体(軸方向全体)にわたって平坦に形成されている。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
<効果確認試験>
本開示のポンプ1の効果を確認するための試験を行った。本試験では、下記a),b),c)の3種類のポンプについて、運転時における揚程及び軸方向のスラスト力を、それぞれ流体解析ソフトウェアにより算出した。
a)補助羽根部を有しないインペラを備えた従来のポンプ
b)傾きの有る補助羽根部17を有するインペラ10を備えた第1実施形態のポンプ1
c)傾きの無い補助羽根部17を有するインペラ10を備えた第2実施形態のポンプ1
【0042】
図7は、揚程の試験結果を示すグラフである。図7に示すように、第1実施形態及び第2実施形態のポンプ1では、従来のポンプよりも揚程が向上することが確認された。また、補助羽根部17が傾いている第1実施形態のポンプ1のほうが、補助羽根部17が傾いていない第2実施形態のポンプ1よりも、揚程が少し向上することも確認された。
【0043】
図8は、スラスト力の試験結果を示すグラフである。図8に示すように、第1実施形態及び第2実施形態のポンプ1では、従来のポンプよりもスラスト力が低減することが確認された。また、補助羽根部17が傾いている第1実施形態のポンプ1のほうが、補助羽根部17が傾いていない第2実施形態のポンプ1よりも、スラスト力が大幅に低減することも確認された。
【0044】
<作用効果>
第1及び第2実施形態の磁気浮上式ポンプ1によれば、インペラ本体11の外形の範囲内に設けられた主羽根部16に、インペラ本体11の外形よりも径方向外方に突出する補助羽根部17が設けられる。この補助羽根部17によって、インペラ10の回転に伴う遠心力を増大させることができる。その結果、ハウジング2の流出口24から吐出される移送流体に付与されるエネルギーが大きくなるので、磁気浮上式ポンプ1の揚程を向上させることができる。
【0045】
また、ハウジング2内におけるインペラ10の径方向外方では、補助羽根部17が二次流れの渦70を軸方向に分断するように配置される。これにより、ハウジング2内における軸方向の圧力差が抑制されるので、インペラ10に作用する軸方向のスラスト力を低減することができる。その結果、前記スラスト力に起因するインペラ10の軸方向への移動を抑制することができ、ひいてはインペラ10がハウジング2に接触して破損するのを抑制することができる。
【0046】
補助羽根部17は、軸方向と直交する仮想平面Kに対して傾いている。これにより、インペラ10に作用する軸方向のスラスト力をさらに低減することができるので、スラスト力に起因するインペラ10の軸方向への移動をさらに抑制することができる。また、磁気浮上式ポンプ1の揚程もさらに向上させることができる。
【0047】
補助羽根部17の軸方向の厚みt2は、主羽根部16の軸方向の厚みt1よりも小さい。これにより、インペラ10の回転時における補助羽根部17の抵抗を減らすことができるので、磁気浮上式ポンプ1の回転トルクを低減することができる。
【0048】
<その他>
本開示のインペラ10は、カバー部13を有するクローズドインペラであるが、カバー部13を有しないオープンインペラであってもよい。本開示のインペラ10における主羽根部16及び補助羽根部17の各個数は、本実施形態に限定されない。本開示の補助羽根部17は、全ての主羽根部16に設けられているが、一部の主羽根部16のみに設けられてもよい。補助羽根部17の軸方向の厚みt2は、主羽根部16の軸方向の厚みt1以上であってもよい。
【0049】
主羽根部16及び補助羽根部17は、本実施形態の形状に限定されない。例えば、例えば、補助羽根部17は、翼形状であってもよい。その場合、補助羽根部17の翼形状は、第2ハウジング部22の空間Sにおいて、軸方向上側が高圧となり、軸方向下側が低圧となるように形成すればよい。これにより、空間Sで発生する渦70に起因する軸方向の圧力差(図5参照)が、補助羽根部17により生じる軸方向の圧力差により相殺されるので、インペラ10に作用する軸方向のスラスト力を低減することができる。
【0050】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 磁気浮上式ポンプ
2 ハウジング
3 回転軸
4 モータ
5 磁気軸受部
10 インペラ
11 インペラ本体
15 羽根
16 主羽根部
17 補助羽根部
24 流入口
25 流出口
C 軸線
K 仮想平面
t1 主羽根部の厚み
t2 補助羽根部の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8