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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109289
(43)【公開日】2025-07-25
(54)【発明の名称】洗浄ローラ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250717BHJP
   B08B 1/14 20240101ALI20250717BHJP
   B08B 1/40 20240101ALI20250717BHJP
   B08B 1/34 20240101ALI20250717BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20250717BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
B08B1/14
B08B1/40
B08B1/34
B08B3/04 Z
H01L21/304 622Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003059
(22)【出願日】2024-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】小林 右弥
(72)【発明者】
【氏名】西澤 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳典
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116BA08
3B116BA15
3B201AA01
3B201BB92
5F057AA21
5F057FA37
5F157BA03
5F157BA14
5F157DA21
5F157DB37
5F157DB38
(57)【要約】
【課題】液体を用いた洗浄において、異物が発生しにくく、洗浄ムラが生じにくい洗浄ローラを提供すること。
【解決手段】本技術では、芯体と、前記芯体の外周面に螺旋状に巻き付けられている多孔質体と、を備えており、前記芯体と前記多孔質体との接触面積が、前記芯体の露出面積より大きく、前記多孔質体の厚みが4mm以上である、洗浄ローラを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体と、
前記芯体の外周面に螺旋状に巻き付けられている多孔質体と、を備えており、
前記芯体と前記多孔質体との接触面積が、前記芯体の露出面積より大きく、
前記多孔質体の厚みが4mm以上である、洗浄ローラ。
【請求項2】
前記接触面積A2と、前記露出面積A1および前記接触面積A2の合計値と、の比率A2/(A1+A2)が、70%より大きく92%より小さい、
請求項1に記載の洗浄ローラ。
【請求項3】
前記多孔質体は、樹脂組成物から気孔形成材を抽出除去してなる多孔質体である、
請求項1に記載の洗浄ローラ。
【請求項4】
前記芯体の軸方向中央部における前記多孔質体の螺旋間隔が、前記芯体の軸方向両端部における前記多孔質体の螺旋間隔より大きい、
請求項1に記載の洗浄ローラ。
【請求項5】
芯体と、
前記芯体を覆う筒状部と、
前記筒状部の外周面から螺旋状に突出するとともに前記芯体の軸方向に連続する突条部を有する多孔質体と、を備える、洗浄ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、洗浄ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、アルミハードディスク、ガラスディスク、ウエハ、フォトマスク、液晶ガラス基板などの製造工程では、表面を極めて精度の高い面に仕上げるために、セリアなどの各種砥粒を用いた高精度な研磨加工が行われる。この研磨加工において、被研磨物の表面に砥粒や研磨剤が付着する。そのため、被研磨物の表面を傷つけないように、砥粒や研磨剤を十分に洗浄する必要がある。この洗浄を行うために、さまざまな洗浄ローラが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「基板の主面に当接させて回転させることにより基板の主面を洗浄するロールブラシであって、複数のブラシ毛を束ねて形成された帯状ブラシを、ロールブラシの芯を形成する円柱状のロール部材に、このロール部材の外周面に螺旋状に、隣接する帯状ブラシ間に隙間を設けて巻き付けてなるロールブラシ」が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、「湿潤状態で弾性を有する多孔質素材によって構成され、略円筒形状のロール体と前記ロール体の外周面上に一体形成された複数の突起とを有し、前記ロール体の軸心を中心として回転することにより前記突起が被洗浄面に回転接触して前記被洗浄面を洗浄するブラシローラであって、前記複数の突起は、前記ロール体の外周面のうち前記軸心に沿った長手方向の両端部に千鳥状に配列される千鳥配列突起群と、前記両端部の間の中間部に前記千鳥配列突起群よりも低密度で螺旋状に配列される螺旋配列突起群とから構成されることを特徴とするブラシローラ」が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、「芯体と、前記芯体の外周面に、螺旋状に配置された弾性層と、を有し、所定の条件式を満たす画像形成装置用の清掃部材」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-80187号公報
【特許文献2】特開2022-134658号公報
【特許文献3】特開2011-164568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば特許文献1などのように、複数のブラシ毛を束ねて形成したロールブラシを用いる場合、ブラシ毛の抜けや破断により、異物が発生するおそれがある。また、例えば特許文献2では、ポリビニルアセタール系多孔質素材によって構成されたブラシローラが提案されている。ポリビニルアセタール系多孔質素材は、吸水することで膨潤(体積変化)が発生する。そのため、被洗浄物との接触にばらつきが生じやすく、洗浄ムラの要因となるおそれがある。また、例えば特許文献3では、液体を用いた洗浄については開示されていない。そのため、液体を用いた洗浄において、この清掃部材が使用できないおそれがある。
【0008】
そこで、本技術では、液体を用いた洗浄において、異物が発生しにくく、洗浄ムラが生じにくい洗浄ローラを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、
芯体と、
前記芯体の外周面に螺旋状に巻き付けられている多孔質体と、を備えており、
前記芯体と前記多孔質体との接触面積が、前記芯体の露出面積より大きく、
前記多孔質体の厚みが4mm以上である、洗浄ローラを提供する。
前記接触面積A2と、前記露出面積A1および前記接触面積A2の合計値と、の比率A2/(A1+A2)が、70%より大きく92%より小さくてよい。
前記多孔質体は、樹脂組成物から気孔形成材を抽出除去してなる多孔質体であってよい。
前記芯体の軸方向中央部における前記多孔質体の螺旋間隔が、前記芯体の軸方向両端部における前記多孔質体の螺旋間隔より大きくてよい。
また、本技術では、
芯体と、
前記芯体を覆う筒状部と、
前記筒状部の外周面から螺旋状に突出するとともに前記芯体の軸方向に連続する突条部を有する多孔質体と、を備える、洗浄ローラを提供する。
本技術によれば、液体を用いた洗浄において、異物が発生しにくく、洗浄ムラが生じにくい洗浄ローラを提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ100の構成例を示す概略斜視図である。
図2】本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ100を製造するための金型5の構成例を示す概略斜視図である。
図3】本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ101の構成例を示す概略斜視図である。
図4】本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ102の構成例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が限定されることはない。また、本技術は、下記の実施例およびその変形例のいずれかを組み合わせることができる。
【0012】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態から例えば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。図面のスケールは、技術の特徴を分かり易くするために強調している。そのため、図面のスケールと実際のデバイスのスケールは必ずしも同一ではないことに留意すべきである。
【0013】
特に断りがない限り、図面において、「上」とは図中の上方向または上側を意味し、「下」とは、図中の下方向または下側を意味し、「左」とは図中の左方向または左側を意味し、「右」とは図中の右方向または右側を意味する。また、図面については、同一または同等の要素または部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
説明は以下の順序で行う。
1.本技術の第1実施形態(洗浄ローラの例1)
(1)概要
(2)芯体1
(3)多孔質体2
(4)樹脂組成物
(5)気孔形成材
(6)水溶解性高分子化合物
2.本技術の第2実施形態(洗浄ローラの例2)
3.本技術の第3実施形態(洗浄ローラの例3)
4.本技術の第4実施形態(洗浄ローラの例4)
【0015】
[1.本技術の第1実施形態(洗浄ローラの例1)]
[(1)概要]
本技術は、芯体と、前記芯体の外周面に螺旋状に巻き付けられている多孔質体と、を備えており、前記芯体と前記多孔質体との接触面積が、前記芯体の露出面積より大きく、前記多孔質体の厚みが4mm以上である、洗浄ローラを提供する。
【0016】
本技術の一実施形態に係る洗浄ローラの構成例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ100の構成例を示す概略斜視図である。
【0017】
図1に示すように、洗浄ローラ100は、芯体1と、多孔質体2と、を備えている。多孔質体2は、芯体1の外周面に螺旋状に巻き付けられている。具体的には、多孔質体2は、例えば、芯体1を螺旋軸にして、芯体1の一端から他端に向かって所定の間隔(ピッチ)をもって螺旋状に巻き付けられている。例えば、短冊状の多孔質体2が、両面テープや接着剤等により芯体1に張り付けられることで、芯体1の軸方向に隙間なく連続するひとつづきの多孔質体2が、芯体1の外周面に螺旋状に巻き付けられている。多孔質体2が螺旋状に巻き付けられていることにより、洗浄ローラ100を回転させたときに、被洗浄物の表面に付着している液体などが、多孔質体2の螺旋状部分に沿って洗浄ローラ100の端部に移動する。
【0018】
本技術に係る洗浄ローラは、例えば、アルミハードディスク、ガラスディスク、ウエハ、フォトマスク、液晶ガラス基板などを、液体を用いて洗浄する洗浄装置に搭載されることができる。
【0019】
[(2)芯体1]
芯体1の材料は特に限定されない。芯体1の材料は、例えば金属やプラスチックなど、硬質な材料であってよい。
【0020】
多孔質体2が芯体1の外周面に螺旋状に巻き付けられていることにより、芯体1の一部が多孔質体2と接触しており、芯体1の残りの部分が露出している。このとき、芯体1と多孔質体2との接触面積が、芯体1の露出面積より大きい構成であることが好ましい。このような構成であることにより、洗浄ムラが生じにくく、また、液体を用いた洗浄において、被洗浄物の表面に付着した液体を多孔質体2が十分に吸水することができる。
【0021】
接触面積と、露出面積および接触面積の合計値(芯体1の表面積)と、の好ましい比率について説明する。芯体1の露出面積をA1とし、芯体1と多孔質体2との接触面積をA2とする。
【0022】
接触面積A2は、多孔質体2の幅(短手方向の長さ)Wと、多孔質体2の長手方向の長さと、を乗算することにより算出できる。
【0023】
芯体1の直径をΦ、洗浄ローラ100の軸方向の長さ(多孔質体2が巻き付けられている範囲の長さ)をLとするとき、芯体1の露出面積A1は、次の式(1)を用いて算出できる。
【0024】
A1=Φ*π*L-A2 ・・・(1)
【0025】
このとき、接触面積A2と、露出面積A1および接触面積A2の合計値(芯体1の表面積)と、の比率A2/(A1+A2)が、70%より大きく92%より小さい構成であることが好ましい。このような構成であることにより、洗浄ムラが生じにくく、また、液体を用いた洗浄において、被洗浄物の表面に付着した液体を多孔質体2が十分に吸水することができる。
【0026】
[(3)多孔質体2]
吸水性を高めるためには、多孔質体2の厚みTの下限値が4mm以上である構成であることが好ましい。より好ましくは、5mm以上であることがよく、さらに好ましくは、6mm以上であることがよい。
【0027】
また、多孔質体2の厚みTの上限値は、10mm以下であることが好ましい。より好ましくは、9mm以下であることがよく、さらに好ましくは、8mm以下であることがよい。
【0028】
さらに、この図に示すように、芯体1の軸方向中央部における多孔質体2の螺旋間隔が、芯体1の軸方向両端部における多孔質体2の螺旋間隔より大きい構成であることが好ましい。これにより、芯体1の軸方向両端部において、軸方向中央部よりも多孔質体2が密に存在することになる。また、芯体1の軸方向中央部において、軸方向両端部よりも多孔質体2が粗に存在することになる。
【0029】
例えば、円形状の基板を洗浄する場合、基板の被洗浄面の中心を通る径方向に沿って、基板上に洗浄ローラ100を配置する。そして、基板を回転させながら洗浄ローラ100を回転させることで、多孔質体2の先端部が基板の被洗浄面に当接し、洗浄ローラ100が当該被洗浄面を洗浄する。このとき、洗浄に用いる液体は、遠心力によって軸方向中央部付近から軸方向両端部付近に移動する。軸方向両端部付近に作用する遠心力は、軸方向中央部付近に作用する遠心力よりも強くなる。そのため、洗浄に用いる液体の移動速度については、軸方向中央部付近における移動速度が遅く、軸方向両端部付近における移動速度が速くなる。その結果、軸方向中央部付近では、軸方向両端部付近よりも十分に洗浄できないおそれがある。
【0030】
本実施形態では、多孔質体2が芯体1の外周面に螺旋状に巻き付けられている。そのため、基板の被洗浄面被洗浄物の表面に付着している液体には、多孔質体2の螺旋状部分に沿って、軸方向中央部付近から軸方向両端部付近へ向かう流れが生じる。本実施形態では、ひとつづきの多孔質体2が芯体1の外周面に螺旋状に巻き付けられている。そのため、表面に付着している液体は、滞留及び分散することなく、上記流れにより軸方向中央部付近から軸方向両端部付近へと排出される。
【0031】
さらに、芯体1の軸方向両端部において、軸方向中央部よりも多孔質体2が密に存在する。そのため、軸方向両端部付近における液体の移動速度をより速くすることができ、軸方向両端部付近における液体の吸水量をより多くすることができる。その結果、軸方向中央部付近から軸方向両端部付近へと排出された液体、及び軸方向両端部付近に付着した液体を十分に排出することができる。この結果、被洗浄面を均一に洗浄することができる。
【0032】
また、このような構成であることにより、洗浄ローラ100を被洗浄物に接触させたときに、洗浄ローラ100の軸方向中央部では、軸方向両端部よりも接触圧力が小さくなる。その結果、被洗浄物の表面を傷つけないように、洗浄することができる。
【0033】
芯体1の軸方向両端部における多孔質体2の螺旋間隔の上限値は、例えば、芯体1の軸方向中央部における多孔質体2の螺旋間隔に対して90%以下であることが好ましい。より好ましくは、80%以下であることがよく、さらに好ましくは、70%以下であることがよい。
【0034】
また、芯体1の軸方向両端部における多孔質体2の螺旋間隔の下限値は、例えば、芯体1の軸方向中央部における多孔質体2の螺旋間隔に対して10%以上であることが好ましい。より好ましくは、20%以上であることがよく、さらに好ましくは、30%以上であることがよい。
【0035】
本技術に係る多孔質体2は、樹脂組成物から気孔形成材を抽出除去してなる多孔質体であることが好ましい。多孔質体2の製造方法は特に限定されないが、例えば、樹脂組成物と、気孔形成材と、その他必要に応じて、他の成分と、を加熱状態下で混合した混合物の成形体から、前記気孔形成材を抽出除去することにより製造できる。その他の成分としては、例えば、水溶解性高分子化合物等の滑材、充填材、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0036】
具体的には、まず、原料となる樹脂組成物、1種又は2種以上の気孔形成材、及び必要に応じて、その他の成分を、所定の機器を使用し、所定の混合割合にて混合・混練し、混合物を得る。次いで、得られた混合物を、押出機等を使用して所定形状の成形体に成形する。これにより、得られた成形体を、所定温度の水等に浸漬して、前記気孔形成材を抽出除去して、微細な気泡を多数備えた多孔質体を得ることができる。例えば、得られた多孔質体を短冊状に切断することで、本技術に係る多孔質体2を得ることができる。
【0037】
なお、樹脂組成物、気孔形成材、及び必要に応じて、その他の成分の混合・混練には、ラボプラストミル、1軸式又は2軸式押出機、ニ一ダ、加圧式ニ一ダ、コニーダ、バンバリーミキサ、ヘンシェル型ミキサ、及びロータ型ミキサ等の混練装置を用いることができる。この混練について、特殊な装置は必要なく、混練速度等も特に限定されない。混練時の温度は、用いられる樹脂等の溶融点によって適宜設定される。混練時間は、混合物の物性により左右されるが、該混合物が充分に混合・混練されればよい。混練された原料は、押出、射出、プレス、ローラ、及びブロー等により所望形状に成形が可能である。
【0038】
所望形状に成形された成形体は、気孔形成材を、溶媒である水等に所定時間(成形体の形状・厚さ等にもよるが、例えば、24~48時間等)浸漬させることで、抽出・除去される。水溶解性高分子化合物等の水溶解性物質を用いた場合は、水溶解性物質も抽出・除去される。この際の浸漬は、どのような方法であってもよいが、混合物全体を水等に接触させる浸漬による抽出・除去が好ましい。使用される水等の温度については、用いられる樹脂の融点よりも低ければ特に限定されないが、水溶解性物質の効率的な除去のために、15~60℃の温水等を利用してもよい。
【0039】
本技術に用いる多孔質体のアスカーC硬度の下限値は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。
【0040】
本技術に用いる多孔質体のアスカーC硬度の上限値は、40以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0041】
多孔質体のアスカーC硬度をこのような値に設定することにより、被洗浄物を傷つけないように洗浄することができる。
【0042】
本技術において、アスカーC硬度は、例えば、JIS K 7312に採用されているアスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)で測定した値とすることができる。
【0043】
[(4)樹脂組成物]
本技術に用いる多孔質体に用いることができる樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができるが、これらの中でも特に、リサイクル性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、ポリアミド、ポリイミド、及びポリアセタール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0044】
本技術では、これらの中でも特に、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂である。オレフィン成分単位を主成分とする樹脂とは、すなわち、オレフィン成分単位が50質量%以上含まれる樹脂をいう。
【0045】
本技術に用いることができるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、及びオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0046】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0047】
ポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0048】
本技術では、これらの中でも特に、α-オレフィン共重合体、ポリエチレン、及びエチレン-オクテン共重合体からなる群より選ばれるいずれか1種以上が好ましい。
【0049】
また、本技術に用いることができる樹脂組成物としては、例えば、フッ素系樹脂を用いることもできる。フッ素系樹脂は、耐薬品性を有している。そのため、フッ素系樹脂を用いることは、薬品を用いた洗浄において有用である。
【0050】
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロプロピレン共重合体(ETEF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素樹脂は各種フッ素化モノマーの共重合体であってもよく、フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロビニルエーテル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(ビニル)エーテルから選ばれる共重合体を挙げることもできる。
【0051】
[(5)気孔形成材]
本技術に用いる多孔質体の製造に用いることができる気孔形成材としては、水、アルコール、又はアルコール水溶液(好ましくは、水)に可溶性であって、且つ、前記樹脂組成物が溶融する際にも安定な物質であることが好ましい。具体的には、例えば、NaC1、KCl、CaC1、NHCl、NaNO、及びNaNO等の無機物;TME(トリメチロールエタン)、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ショ糖、可溶性澱粉、ソルビトール、グリシン、及び各有機酸(例えば、リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、コハク酸等)のナトリウム塩等の有機物等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0052】
本技術では、これらの中でも特に、無機物を用いることが好ましく、無機物の中でも特に、NaC1を用いることが好ましい。
【0053】
気孔形成材の平均粒子径の下限値は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。
【0054】
気孔形成材の平均粒子径の上限値は、300μm以下であることが好ましく、250μmであることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
気孔形成材の平均粒子径を10μm以上とすることで、多孔質体の気孔の大きさを一定以上に制御でき、形成性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れた多孔質体を提供できる。一方で、気孔形成材の平均粒子径を300μm以下とすることで、多孔質体の気孔の大きさを一定以下に制御できる。なお、ここでいう「気孔形成材の平均粒子径」とは、単一のピークを有する気孔形成材を2種以上混合した場合は、混合した状態における平均粒子径を指す。
【0056】
本技術において、平均粒子径とは、レーザー回折法で測定した粒径分布において、累積度数50%となる粒子径(D-50)である。
【0057】
[(6)水溶解性高分子化合物]
本技術に用いる多孔質体は、その製造において、滑材として作用する水溶解性高分子化合物を用いてもよい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジオレエート、及びポリエチレングリコールジアセテート等のポリエチレングリコール誘導体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることも可能である。
【0058】
本技術では、これらの中でも特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。ポリエチレングリコールは、メルトフローが高く、且つ、水溶解性が高いためである。成形を押出成形方法で行う場合、ポリエチレングリコールの分子量の下限値は、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることが更に好ましい。ポリエチレングリコールの分子量の上限値は、30,000以下であることが好ましく、25,000以下であることがより好ましく、25,000以下であることが更に好ましい。
【0059】
本技術に係る多孔質体の製造において、樹脂組成物と、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物と、の混合割合は、vol%で10:90~40:60であることが好ましく、12:88~30:70であることがより好ましく、15:85~20:80であることが更に好ましく、16:84~18:82であることが特に好ましい。樹脂組成物が10vol%未満の場合には、水溶解性物質の抽出・除去時に成形体自体が分離してしまう。一方で、気孔形成材及び水溶解性高分子化合物が60vol%以下の場合には、添加量が少なく水溶解性物質の抽出・除去がしきれず多孔質構造をとることができない。
【0060】
本技術の第1実施形態に係る洗浄ローラについて説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0061】
[2.本技術の第2実施形態(洗浄ローラの例2)]
図1に示す洗浄ローラ100は、芯体1と多孔質体2とが一体成形されていてもよい。つまり、本技術は、芯体1と、芯体1の外周面に螺旋状に取り付けられた多孔質体2と、を備えており、芯体1と多孔質体2との接触面積が、芯体1の露出面積より大きく、多孔質体2の厚みTが4mm以上である、洗浄ローラを提供する。芯体1と多孔質体2とが一体成形されることにより、多孔質体2を芯体1に張り付ける両面テープ等が不要となる。
【0062】
本実施形態に係る洗浄ローラ100を製造するための金型の構成例について、図2を参照しながら説明する。図2は、本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ100を製造するための金型5の構成例を示す概略斜視図である。
【0063】
図2に示すように、この金型5は、上部金型51と下部金型52を備えて構成されている。金型5の内部には、螺旋状の溝53が形成されている。この溝53に、例えば、本技術に用いる多孔質体2の原料、例えば樹脂組成物、及び1種又は2種以上の気孔形成材を含む混合物を流し込み、その後、気孔形成材を抽出除去することにより、多孔質体2を、芯体1の外周面に取り付けることができる。
【0064】
本技術の第2実施形態に係る洗浄ローラについて説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0065】
[3.本技術の第3実施形態(洗浄ローラの例3)]
本技術は、芯体と、前記芯体を覆う筒状部と、前記筒状部の外周面から螺旋状に突出するとともに前記芯体の軸方向に連続する突条部を有する多孔質体と、を備える、洗浄ローラを提供する。
【0066】
本実施形態に係る洗浄ローラの構成例について、図3を参照しながら説明する。図3は、本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ101の構成例を示す概略斜視図である。
【0067】
図3に示すように、洗浄ローラ101は、芯体1と、芯体1を覆う筒状部3と、多孔質体2と、を備える。多孔質体2は、筒状部3の外周面から螺旋状に突出するとともに芯体1の軸方向に連続する突条部4を有する。突条部4は、筒状部3の外周面に螺旋状に配置されており、ひとつづきになっている。
【0068】
筒状部3の材料は特に限定されない。例えば、筒状部3は、多孔質体2と同じ材料を含んでいてよい。筒状部3の硬度は、芯体1の硬度より低く、多孔質体2の硬度より高いことが好ましい。これにより、筒状部3が圧力を吸収することになり、洗浄ムラが生じにくくなる。
【0069】
筒状部3と多孔質体2との接触面積A4は、筒状部3の露出面積A3より大きい構成であることが好ましい。特には、接触面積A4と、露出面積A3および接触面積A4の合計値(筒状部3の表面積)と、の比率A4/(A3+A4)が、70%より大きく92%より小さい構成であることが好ましい。このような構成であることにより、洗浄ムラが生じにくく、また、液体を用いた洗浄において、被洗浄物の表面に付着した液体を多孔質体2が十分に吸水することができる。
【0070】
なお、筒状部3および多孔質体2が、一体成形されていてもよいし、芯体1、筒状部3、および多孔質体2が、一体成形されていてもよい。
【0071】
本技術の第3実施形態に係る洗浄ローラについて説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0072】
[4.本技術の第4実施形態(洗浄ローラの例4)]
本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ102の構成例について、図4を参照しながら説明する。図4は、本技術の一実施形態に係る洗浄ローラ102の構成例を示す概略斜視図である。
【0073】
図4に示すように、多孔質体2は、芯体1の外周面に螺旋状に配置されている。この螺旋の進行方向が、螺旋の途中で反対方向に変化している。この構成例では、左側から右側に進むにつれて、多孔質体2が形成する螺旋の進行方向が時計回りから反時計回りに変化している。
【0074】
なお、この構成例では、芯体1の軸方向中央部付近で、螺旋の進行方向が変化しているが、螺旋の進行方向が変化する位置は、特に限定されない。
【0075】
本技術の第4実施形態に係る洗浄ローラについて説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本技術の他の実施形態に適用できる。
【0076】
なお、本技術に係る実施形態は、上述したそれぞれの実施形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。それぞれの実施形態において記載した具体的な数値、形状、材料(組成を含む)等は一例であって、これらに限定されるものではない。
【0077】
また、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
芯体と、
前記芯体の外周面に螺旋状に巻き付けられている多孔質体と、を備えており、
前記芯体と前記多孔質体との接触面積が、前記芯体の露出面積より大きく、
前記多孔質体の厚みが4mm以上である、洗浄ローラ。
[2]
前記接触面積A2と、前記露出面積A1および前記接触面積A2の合計値と、の比率A2/(A1+A2)が、70%より大きく92%より小さい、
[1]に記載の洗浄ローラ。
[3]
前記多孔質体は、樹脂組成物から気孔形成材を抽出除去してなる多孔質体である、
[1]または[2]に記載の洗浄ローラ。
[4]
前記芯体の軸方向中央部における前記多孔質体の螺旋間隔が、前記芯体の軸方向両端部における前記多孔質体の螺旋間隔より大きい、
[1]から[3]のいずれか一つに記載の洗浄ローラ。
[5]
芯体と、
前記芯体を覆う筒状部と、
前記筒状部の外周面から螺旋状に突出するとともに前記芯体の軸方向に連続する突条部を有する多孔質体と、を備える、洗浄ローラ。
【実施例0078】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。
【0079】
なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0080】
本技術を用いて実施した実施例と、その比較例を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すように、芯体の直径Φを5mmとした。
【0083】
多孔質体の厚みTは、実施例1~6に示すように、4mm以上とした。シミュレーションでは、この厚みTが3mmである比較例に比べて、実施例1~6では、吸水量を多くすることができた。また、厚みTがより大きい8mmの実施例5は、吸水量がより多くなった。厚みTがさらに大きい10mmの実施例6は、吸水量がさらに多くなった。
【0084】
多孔質体の幅Wは、5mmとした。
【0085】
多孔質体の長手方向の長さL1は、芯体と多孔質体の接触面積A2に影響する。必要とする接触面積に応じて、多孔質体の長さを適宜設定できる。
【0086】
洗浄ローラの軸方向の長さLは、350mmとした。
【0087】
芯体の露出面積A1は、上記の式(1)を用いて算出した。
【0088】
芯体と多孔質体の接触面積A2は、多孔質体の幅Wと、多孔質体の長さL1と、を乗算することにより算出した。
【0089】
芯体の表面積は、芯体の直径Φと、πと、洗浄ローラの軸方向の長さLと、を乗算することにより、55cmと算出した。
【0090】
露出面積A1と接触面積A2に基づいて、比率A2/(A1+A2)を算出できる。この表に示すように、この比率が、70%より大きく92%より小さいことが好ましい。実施例1~6は、この比率が70%より大きく92%より小さいため、シミュレーションにおいて、比較例よりも吸水量を多くすることができた。
【符号の説明】
【0091】
1 芯体
2 多孔質体
3 筒状部
4 突条部
100、101、102 洗浄ローラ

図1
図2
図3
図4