(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109308
(43)【公開日】2025-07-25
(54)【発明の名称】位置補正部材
(51)【国際特許分類】
F16H 55/18 20060101AFI20250717BHJP
【FI】
F16H55/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003099
(22)【出願日】2024-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】緒方 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝二
(72)【発明者】
【氏名】古川 卓儀
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030AB01
3J030CA10
(57)【要約】
【課題】シザーズギヤの歩留まりを改善する。
【解決手段】位置補正部材1は、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けることができるように、シザーズギヤ周方向(回転方向)のメインギヤ歯5とサブギヤ歯の相対的な位置関係を補正する位置補正量に応じて複数種類用意されている。位置補正部材1は、シザーズギヤ2の外周面に取り付けられ、シザーズギヤ軸方向視でメインギヤ歯5の内側にサブギヤ歯6が収まるようメインギヤ3とサブギヤ4の相対的な位置関係を補正する。山部22は、シザーズギヤ2の軸方向に沿ってメインギヤ歯5とサブギヤ歯6に連続して接触可能なものであって、シザーズギヤ2の歯面8と対向する側面23のうちシザーズギヤから荷重を受ける側の側面23aに、対応する位置補正量に応じた高さの段差24が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインギヤの外周に形成されたメインギヤ歯とサブギヤの外周に形成されたサブギヤ歯により相手側ギヤの歯を挟み込むシザーズギヤに取り付けられる位置補正部材であって、
上記メインギヤ歯と上記サブギヤ歯とがシザーズギヤ周方向で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正し、上記メインギヤ歯と上記サブギヤ歯の相対的な位置関係を補正する際の位置補正量に応じて複数種類用意されていることを特徴とする位置補正部材。
【請求項2】
上記位置補正部材は、上記シザーズギヤの歯溝に挿入される山部を有するものであって、
上記山部は、上記シザーズギヤの歯面と対向する側面に、対応する上記位置補正量に応じた段差が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置補正部材。
【請求項3】
上記山部は、上記メインギヤ歯に対向する第1部分と、上記サブギヤ歯に対向する第2部分と、を有し、
上記第1部分のシザーズギヤ周方向に沿った厚さが上記第2部分のシザーズギヤ周方向に沿った厚さよりも薄くなるよう形成され、
上記第2部分のシザーズギヤ周方向に沿った厚さが対応する上記位置補正量に応じた厚さに形成され、
上記段差が上記第1部分と上記第2部分の境界に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の位置補正部材。
【請求項4】
上記段差は、対応する上記位置補正量が大きいほど大きくなることを特徴とする請求項2に記載の位置補正部材。
【請求項5】
上記段差は、上記シザーズギヤから荷重を受ける側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の位置補正部材。
【請求項6】
上記複数種類とは、上記位置補正量が最大の値となる場合、上記位置補正量が最小の値となる場合、及び上記位置補正量が最大と最小の中間の値となる場合、の3種類であることを特徴とする請求項1に記載の位置補正部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シザーズギヤに取り付けられてシザーズギヤのメインギヤの歯とサブギヤの歯とがのシザーズギヤ周方向で重なり合うように両者の位置関係を補正する位置補正部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、相手側ギヤと噛み合う第1ギヤ(メインギヤ)と、相手側ギヤと噛み合うとともに、第1ギヤに対して軸方向に並列して相対回転可能な第2ギヤ(サブギヤ)と、を有し、相手側ギヤとの間における歯打ち音及び噛み合い音の発生を抑制するシザーズギヤが開示されている。
【0003】
シザーズギヤは、相手側ギヤと噛み合わせる際に、バックラッシュがないと相手側ギヤに組み付けることができない。
【0004】
そこで、第1ギヤの歯と第2ギヤの歯とがシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正できる部材(位置補正部材)が用意できれば、シザーズギヤを相手側ギヤに組み付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1ギヤ及び第2ギヤは、それぞれの歯に寸法公差を有している。第1ギヤの歯及び第2ギヤの歯の寸法公差は、それぞれ歯の大きさを小さくする側に振れることもあれば、それぞれ歯の大きさを大きくする側に振れることがある。つまり、シザーズギヤの各部の寸法が寸法公差内であっても、第1ギヤの歯と第2ギヤの歯がシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正する際の位置補正量にはばらつきがある。
【0007】
そのため、用意された位置補正部材の規格では、シザーズギヤの各部の寸法が寸法公差内であっても、(場合によってはシザーズギヤに取り付けることができず、)第1ギヤの歯と第2ギヤの歯がシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正することができず、シザーズギヤの歩留まりが悪くなる虞がある。
【0008】
つまり、シザーズギヤの第1ギヤの歯と第2ギヤの歯がシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正するにあたっては、更になる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の位置補正部材は、シザーズギヤに取り付けられ、上記シザーズギヤのメインギヤ歯とサブギヤ歯とがシザーズギヤ周方向で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正するものであって、上記メインギヤ歯と上記サブギヤ歯の相対的な位置関係を補正する際の位置補正量に応じて複数種類用意されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数種類用意された位置補正部材を使い分けることで、メインギヤ及びサブギヤの各部の寸法が寸法公差内であれば、シザーズギヤに位置補正部材を取り付けることが可能となり、相手ギヤへの組み付けが可能となるようにシザーズギヤ周方向でメインギヤ歯とサブギヤ歯の相対的な位置関係を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例に係る位置補正部材がシザーズギヤに取り付けられた状態を模式的に示した説明図。
【
図2】シザーズギヤの一例を模式的に示した説明図。
【
図3】シザーズギヤのメインギヤ歯とサブギヤ歯のシザーズギヤ周方向に沿った位置関係を模式的に示した説明図であって、(a)はメインギヤ歯とサブギヤ歯とがシザーズギヤ周方向で重なり合うように両者の相対的な位置関係が補正されていない場合を示し、(b)はメインギヤ歯とサブギヤ歯とがシザーズギヤ周方向で重なり合うよう両者の相対的な位置関係が補正された場合を示している。
【
図4】本発明の第1実施例に係る位置補正部材の一例を示す斜視図。
【
図5】シザーズギヤの出荷検査の様子を模式的に示した説明図。
【
図6】本発明の第2実施例に係る位置補正部材がシザーズギヤに取り付けられた状態を模式的に示した説明図。
【
図7】本発明の第2実施例に係る位置補正部材の軸部とシザーズギヤ貫通孔との大小関係を模式的に示した説明図であって、(a)は位置補正量が最大の場合を示し、(b)は位置補正量が最大と最小の間の中間となる場合を示し、(c)は位置補正量が最小の場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1~
図5を用いて本発明の第1実施例に係る位置補正部材1について説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る位置補正部材1がシザーズギヤ2に取り付けられた状態を模式的に示した説明図である。
図2は、シザーズギヤ2の一例を模式的に示した説明図である。
図3は、シザーズギヤ2のメインギヤ歯5とサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向に沿った位置関係を模式的に示した説明図であって、(a)はメインギヤ歯5とサブギヤ歯6とがシザーズギヤ周方向(シザーズギヤ回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係が補正されていない場合を示し、(b)はメインギヤ歯5とサブギヤ歯6とがシザーズギヤ周方向(シザーズギヤ回転方向)で重なり合うよう両者の相対的な位置関係が補正された場合を示している。
図4は、本発明の第1実施例に係る位置補正部材1の一例を示す斜視図である。
図5は、シザーズギヤ2の出荷検査の様子を模式的に示した説明図である。
【0014】
位置補正部材1は、
図1に示すように、シザーズギヤ2に取り付けられる。
【0015】
シザーズギヤ2は、
図1及び
図2に示すように、相手側ギヤ(図示せず)と噛み合うメインギヤ3と、メインギヤ3と同じ相手側ギヤ(図示せず)と噛み合い、メインギヤ3と同一歯数で同一ピッチのサブギヤ4と、を有している。シザーズギヤ2は、メインギヤ3とサブギヤ4が同軸上に重ね合わせて配置されている。シザーズギヤ2は、メインギヤ3及びサブギヤ4がばね等の弾性部材(図示せず)によりシザーズギヤ周方向(シザーズギヤ回転方向)に力を付与された状態となるように組み立てられている。シザーズギヤ2は、メインギヤ3の外周に形成されたメインギヤ歯5とサブギヤ4の外周に形成されたサブギヤ歯6により相手側ギヤの歯を挟み込むことでバックラッシュをゼロにするものである。なお、メインギヤ3は、歯先円直径、歯底円直径がサブギヤ4と同一である。
【0016】
シザーズギヤ2は、シザーズギヤ軸方向視でメインギヤ歯5の裏側にサブギヤ歯6が収まる(隠れる)ことができるように、メインギヤ歯5がサブギヤ歯6よりも大きくなるよう形成されている。さらに言えば、メインギヤ歯5の歯幅は、サブギヤ歯6の歯幅よりも大きくなるよう形成されている。
【0017】
シザーズギヤ2は、例えば内燃機関のクランクシャフト(図示せず)あるいはバランスシャフト(図示せず)等に取り付けられる。相手側ギヤは、例えばシザーズギヤ2がクランクシャフトに取り付けられた場合、バランスウェイト(図示すせず)が取り付けられたバランスシャフトに取り付けられる。相手側ギヤは、例えばシザーズギヤ2がバランスシャフトに取り付けられた場合、クランクシャフトに取り付けられる。
【0018】
組み立てられた状態のシザーズギヤ2は、
図3(a)に示すように、シザーズギヤ周方向(回転方向)でメインギヤ歯5とサブギヤ歯6が完全に重なりあっておらず、メインギヤ歯5からサブギヤ歯6の一部がはみ出している。そのたため、シザーズギヤ2は、メインギヤ歯5からサブギヤ4の一部がはみ出していることにより、相手側ギヤの歯に引っかかって相手側ギヤに組み付けることができない虞がある。
【0019】
そこで、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付ける際には、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けることができるように、位置補正部材1を用いてシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿ったメインギヤ歯5とサブギヤ歯6のずれ量を補正する。具体的には、例えば
図3(b)に示すように、メインギヤ歯5とサブギヤ歯6がシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように、位置補正部材1を用いてメインギヤ歯5に対するサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿ったずれ量を補正する。
【0020】
位置補正部材1は、シザーズギヤ2に取り付けることで、シザーズギヤ2の相手側ギヤとの噛み合い位置において、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けられるように、メインギヤ歯5とサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向(回転方向)の相対的な位置関係を補正する。詳述すると、位置補正部材1は、メインギヤ歯5とサブギヤ歯6とがシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合う方向に、メインギヤ3とサブギヤ4の相対的な位置関係を所定の位置補正量分補正する。位置補正部材1は、例えば、メインギヤ歯5の裏側にサブギヤ歯6の全体が隠れるように両者の相対的な位置関係を補正する。
【0021】
シザーズギヤ2は、メインギヤ歯5とサブギヤ歯6とがシザーズギヤ周方向(回転方向)で重なり合うように両者の相対的な位置関係を補正することで、相手側ギヤに組み付け可能である。
【0022】
一方、シザーズギヤ2は、各部の寸法が寸法公差内であっても、相手側ギヤに組み付けられるようにシザーズギヤ周方向(回転方向)でメインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係を補正する際に必要となる補正量(位置補正量)にばらつきがある。つまり、位置補正量は、組み上がったシザーズギヤ2毎に異なる値となり得る。
【0023】
しかしながら、位置補正量は、メインギヤ3及びサブギヤ4の寸法公差を用いて、どの程度ばらつくか予測可能である。すなわち、シザーズギヤ2の各部の寸法が寸法公差内であれば、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けるにあたって、シザーズギヤ周方向(回転方向)でメインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係を補正する際に必要な位置補正量がどのような範囲の値を取り得るかは予測可能である。
【0024】
そこで、シザーズギヤ2の寸法公差に起因するシザーズギヤ周方向(回転方向)のメインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係のばらつきを予測し、このばらつきに対応できるように、位置補正量が異なる複数の位置補正部材1を用意する。つまり、第1実施例の位置補正部材1は、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けることができるように、シザーズギヤ周方向(回転方向)のメインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係を補正する位置補正量に応じて複数種類用意されている。詳述すると、第1実施例の位置補正部材1は、シザーズギヤ2の各部の寸法が寸法公差内にある場合において、位置補正量が最大となる場合、位置補正量が最小となる場合、及び位置補正量が最大と最小の間の中間となる場合、の3つの場合に対応した3種類用意されている。
【0025】
位置補正部材1は、
図1及び
図4に示すように、シザーズギヤ2の外周面に沿った円弧状の基部21と、基部21から突出してシザーズギヤ2の歯溝7に挿入される断面楔形状の複数の山部22と、を有している。
【0026】
位置補正部材1は、シザーズギヤ2の外周面に取り付けられ、少なくとも相手側ギヤとの噛み合う位置において、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けられるようにメインギヤ歯5とサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向(回転方向)の相対的な位置関係を補正する。詳述すると、位置補正部材1は、例えば、シザーズギヤ軸方向視でメインギヤ歯5の内側にサブギヤ歯6が収まるようメインギヤ3とサブギヤ4の相対的な位置関係を補正(固定)することが可能なクリップ部材である。
【0027】
山部22は、シザーズギヤ2の軸方向に沿ってメインギヤ歯5とサブギヤ歯6に連続して接触可能なものであって、シザーズギヤ2の歯面8と対向する側面23のうちシザーズギヤ2から荷重を受ける側の側面23aに、対応する位置補正量に応じた高さの段差24が形成されている。なお、段差24は、シザーズギヤ2から荷重を受けない側の側面23bには形成しなくてもよい。
【0028】
山部22は、メインギヤ歯5に対向する第1部分25と、サブギヤ歯6に対向する第2部分26と、を有している。
【0029】
山部22は、第1部分25のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿った厚さが第2部分26のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿った厚さよりも薄くなるよう形成されている。山部22は、第2部分26のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿った厚さが、対応する位置補正量に応じた厚さに形成されており、対応する位置補正量が大きいほど厚くなるよう形成されている。
【0030】
段差24は、第1部分25と第2部分26の境界に形成されたシザーズギヤ回転軸と直交する平面と平行な段差面27を有している。段差24は、対応する位置補正量が大きいものほど大きくなっている。
【0031】
これにより位置補正部材1は、メインギヤ歯5に対するサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿ったずれ量を補正するにあたって、メインギヤ歯5を第1部分25により面で支持し、サブギヤ歯6を第2部分26により面で支持する構成となっている。
【0032】
組み立てられたシザーズギヤ2は、位置補正部材1を取り付け、例えば、
図5に示すように、相手側ギヤに相当する検査用ギヤ31が取り付けられている出荷検査治具32にセットする。シザーズギヤ2は、出荷検査治具32で検査用ギヤ31への組み付けが確認されると出荷される。
【0033】
上述した第1実施例の位置補正部材1は、位置補正量に応じて複数種類用意されているので、複数種類用意された位置補正部材1を使い分けることで、メインギヤ3及びサブギヤ4の各部の寸法が寸法公差内であれば、シザーズギヤ2に取り付けることが可能となり、相手側ギヤへの組み付けが可能となるようにシザーズギヤ周方向(回転方向)でメインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係を補正することができる。
【0034】
つまり、複数種類の位置補正部材1を用意しておくことによって、異なる複数の位置補正量に対してシザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けられるように補正することが可能となり、シザーズギヤ2の組み立て工程におけるシザーズギヤ2の歩留まりを改善することができる。
【0035】
さらに言えば、位置補正量に応じて複数種類ある位置補正部材1を使い分けることで、シザーズギヤ2の出荷時の歩留まりを改善しつつ、シザーズギヤ2と噛み合う相手側ギヤに取り付けることができないシザーズギヤ2の納入を防止することができる。
【0036】
また、シザーズギヤ2は、位置補正部材1が取り付けられていれば、シザーズギヤ2が噛み合う相手側ギヤに取り付けることが可能である。つまり、位置補正部材1をシザーズギヤ2に取り付けることが可能であれば、シザーズギヤ2をシザーズギヤ2が噛み合う相手側ギヤに取り付けることが可能であると事前に判定することができる。
【0037】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上述した実施例と同一の構成要素には同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0038】
図6及び
図7を用いて本発明の第2実施例について説明する。第2実施例の位置補正部材41は、シザーズギヤ2の歯に取り付けられるものではなく、シザーズギヤ軸方向に沿って形成されたシザーズギヤ貫通孔42に挿入される円柱形状のピン部材である。シザーズギヤ貫通孔42は、メインギヤ3に形成された第1貫通孔43と、サブギヤ4に形成された第2貫通孔44と、により構成される。
【0039】
第2実施例において、シザーズギヤ2は、メインギヤ歯5とサブギヤ歯6の相対的な位置関係が相手側ギヤへの組み付けが可能な位置関係のときに、第1貫通孔43と第2貫通孔44が重なり合ってシザーズギヤ軸方向に沿って連続するように形成されている。
【0040】
そして、第2実施例の位置補正部材41は、
図6に示すように、第1貫通孔43及び第2貫通孔44を貫通するようにシザーズギヤ2に取り付けられる。
図6は、本発明の第2実施例に係る位置補正部材41がシザーズギヤ2に取り付けられた状態を模式的に示した説明図である。
【0041】
第2実施例の位置補正部材41は、シザーズギヤ貫通孔42に挿入される円柱形状の軸部45と、シザーズギヤ貫通孔42の内径よりも大径となる例えば扁平な円柱形状の頭部46と、を有している。軸部45の外径は、シザーズギヤ貫通孔42の内径である第1貫通孔43の内径及び第2貫通孔44の内径よりも小さくなるよう形成されている。
【0042】
第2実施例の位置補正部材41は、シザーズギヤ2を相手側ギヤに組み付けることができるように、位置補正量に応じて複数種類用意されている。詳述すると、第2実施例の位置補正部材41は、シザーズギヤ2の各部の寸法が寸法公差内にある場合において、位置補正量が最大となる場合、位置補正量が最小となる場合、及び位置補正量が最大と最小の間の中間となる場合、の3つの場合に対応した3種類用意され、それぞれ軸部45の外径が異なっている。例えば、
図7に示すように、軸部45の外径は、対応する位置補正量が大きいものほど大きくなるよう形成される。
図7は、本発明の第2実施例に係る位置補正部材41の軸部45とシザーズギヤ貫通孔42との大小関係を模式的に示した説明図であって、
図7(a)は位置補正量が最大の場合における軸部45を示し、
図7(b)は位置補正量が最大と最小の間の中間となる場合の軸部45を示し、
図7(c)は位置補正量が最小の場合における軸部45を示している。
【0043】
このような第2実施例の位置補正部材41は、上述した第1実施例の位置補正部材1と略同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、第1実施例の位置補正部材1は、第1部分25と第2部分26の境界ではなく、山部22の側面23に第1部分25と第2部分26に跨がって連続するよう形成された突条をもって段差を形成するようにしてもよい。この場合、山部22は、第1部分25と第2部分26を同じ厚さとなるように形成し、上記突条は第1部分25に比べて第2部分26における側面23からの突出量が大きくなるよう形成される。そして、この場合には、メインギヤ歯5に対するサブギヤ歯6のシザーズギヤ周方向(回転方向)に沿ったずれ量を補正するにあたって、メインギヤ歯5が第1部分25に形成された上記突条の先端で支持され、サブギヤ歯6が第2部分26に形成された上記突条の先端で支持される。
【符号の説明】
【0046】
1…位置補正部材
2…シザーズギヤ
3…メインギヤ
4…サブギヤ
5…メインギヤ歯
6…サブギヤ歯
7…歯溝
8…歯面
21…基部
22…山部
23…側面
23a…側面
23b…側面
24…段差
25…第1部分
26…第2部分
27…段差面
31…検査用ギヤ
32…出荷検査治具
41…位置補正部材