(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010940
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250116BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113256
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大杉 雅道
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB36
2F129BB39
2F129BB40
2F129CC16
2F129DD15
2F129DD69
2F129DD70
2F129EE36
2F129EE84
2F129FF02
2F129FF17
2F129FF20
2F129FF66
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181MB01
5H181MC21
5H181MC22
(57)【要約】
【課題】機械学習モデルを用いた自動運転制御が行われる車両において、この自動運転制御に関連するログデータが保存される当該車両の記憶装置の空き容量が逼迫する状況となるのを未然に回避する。
【解決手段】車両の自動運転制御が行われる自動運転ルートが設定される。自動運転ルートの設定では、車両の現在地から目的地に至るルートの候補が少なくとも2つ設定される。また、ルートの候補のそれぞれに沿った車両の走行中、自動運転制御に関するログデータが保存される記憶装置内で変動する当該ログデータの変動量が予測される。また、ログデータの変動量に基づいて、少なくとも2つのルートの候補の目的地への到着時における記憶装置内の空き容量の将来値が予測される。そして、ルートの候補のうちから空き容量の将来値が最大となるルートの候補が、自動運転ルートとして選出される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される自動運転システムであって、
1又は複数のプロセッサと、
1又は複数の記憶装置と、
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の自動運転制御が行われる前記車両のルートを示す自動運転ルートを設定し、
前記自動運転ルートに沿った前記車両の走行中、前記自動運転制御に関するログデータを前記1又は複数の記憶装置に保存し、
前記自動運転ルートの設定において、前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の現在地から目的地に至るルートの候補を少なくとも2つ設定し、
前記ルートの候補のそれぞれに沿った前記車両の走行中、前記1又は複数の記憶装置内で変動する前記ログデータの変動量を予測し、
前記ルートの候補のそれぞれについて予測された前記ログデータの変動量に基づいて、前記少なくとも2つのルートの候補の目的地への到着時における前記1又は複数の記憶装置内の空き容量の将来値を予測し、
前記ルートの候補のうちから前記空き容量の将来値が最大となるルートの候補を、前記自動運転ルートとして選出する
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、前記自動運転ルートの設定において、
前記空き容量の現在値が上限値以下であるか否かを判定し、
前記ログデータの変動量の予測及び前記空き容量の将来値の予測が、前記空き容量の現在値が前記上限値以下であると判定された場合に行われる
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動運転システムであって、
前記ログデータの変動量の予測において、前記1又は複数のプロセッサは、
前記少なくとも2つの候補のそれぞれに沿った前記車両の走行中に発生する前記ログデータの総量と、前記少なくとも2つの候補のそれぞれに沿った前記車両の走行中に前記1又は複数の記憶装置から減少する前記ログデータのデータ量とを、前記少なくとも2つの候補ごとに計算し、
前記車両の走行中に発生する前記ログデータの総量と、前記車両の走行中に前記1又は複数の記憶装置から減少する前記ログデータのデータ量とを前記少なくとも2つの候補ごとに足し合わせて前記ログデータの変動量を計算する
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自動運転システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、前記自動運転ルートの設定において、更に、
前記少なくとも2つの候補のそれぞれに沿った前記車両の走行中における前記1又は複数の記憶装置内の前記ログデータの単位時間あたりの発生量を、前記少なくとも2つの候補ごとに計算し、
前記空き容量の現在値と、前記単位時間あたりの発生量の積算値と、に基づいて、前記目的地に至る途中における前記空き容量の値を示す途中経過値を、前記少なくとも2つの候補ごとに予測し、
前記途中経過値が許容値以下である候補を、前記ルートの候補から除外する
ことを特徴とする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の自動運転制御を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習を通じて生成されたモデル(機械学習モデル)を使用して、車両に搭載されたセンサ等のデータから、当該車両を制御する自動運転技術の開発が進んでいる。国際公開第2019/116423号では、機械学習モデルの生成に使用するための訓練データを収集する方法が提案されている。
【0003】
本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、国際公開第2019/116423号の他に、特開2011-113494号公報、特開2021-146770号公報及び特許第6761002号公報を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/116423号
【特許文献2】特開2011-113494号公報
【特許文献3】特開2021-146770号公報
【特許文献4】特許第6761002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械学習モデルを用いて行われた車両の自動運転制御は、事後的に検証されることが望ましい。この検証を可能にする方法として、車両の自動運転制御に関連するログデータを当該車両の記憶装置に保存することが考えられる。但し、車両の記憶装置の容量には限界がある。そのため、このログデータのデータ量が一定以上に到達したら、これを外部に送信して記憶装置から削除することが考えられる。しかしながら、自動運転制御の実行中、これに関連するログデータは時々刻々と発生する。そのため、外部に送信する前のログデータと、自動運転制御中に発生したログデータとによって記憶装置の空き容量が逼迫したときには、後者のログデータの保存が途中から行えないことになる可能性がある。したがって、このような逼迫状況となるのを未然に回避するため技術開発が望まれる。
【0006】
本開示の1つの目的は、機械学習モデルを用いた自動運転制御が行われる車両において、この自動運転制御に関連するログデータが保存される当該車両の記憶装置の空き容量が逼迫する状況となるのを未然に回避することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、車両に搭載される自動運転システムであり、次の特徴を有する。
前記自動運転システムは、1又は複数のプロセッサと、1又は複数の記憶装置と、を備える。
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の自動運転制御が行われる前記車両のルートを示す自動運転ルートを設定し、
前記自動運転ルートに沿った前記車両の走行中、前記自動運転制御に関するログデータを前記1又は複数の記憶装置に保存する。
前記自動運転ルートの設定において、前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の現在地から目的地に至るルートの候補を少なくとも2つ設定し、
前記ルートの候補のそれぞれに沿った前記車両の走行中、前記1又は複数の記憶装置内で変動する前記ログデータの変動量を予測し、
前記ルートの候補のそれぞれについて予測された前記ログデータの変動量に基づいて、前記少なくとも2つのルートの候補の目的地への到着時における前記1又は複数の記憶装置内の空き容量の将来値を予測し、
前記ルートの候補のうちから前記空き容量の将来値が最大となるルートの候補を、前記自動運転ルートとして選出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両の現在地から目的地に至る少なくとも2つのルートの候補のそれぞれに沿った走行中、1又は複数の記憶装置内で変動する自動運転制御に関するログデータの変動量が予測される。また、この予測された変動量に基づいて、目的地への到着時における1又は複数の記憶装置内の空き容量の将来値が、ルートの候補ごとに予測される。そして、空き容量の将来値が最大となるルートの候補が、自動運転制御が行われる車両のルート(つまり、自動運転ルート)として選出される。従って、本開示によれば、車両の自動運転制御に関連するログデータが保存される当該車両の記憶装置の空き容量が逼迫する状況となるのを未然に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る車両の自動運転制御に関連する構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る自動運転システムの構成例を示す概念図である。
【
図3】ログデータの管理に関する指示の例を示す図である。
【
図4】ログデータの抽出及び保存が行われる保存時間を説明する図である。
【
図5】実施の形態に特に関連する、プロセッサによる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に特に関連する、プロセッサによる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.車両の自動運転
図1は、本実施の形態に係る車両1の自動運転制御に関連する構成例を示すブロック図である。自動運転とは、車両1の操舵、加速、及び減速のうち少なくとも1つをオペレータによる運転操作によらず自動的に行うことである。自動運転制御は、完全自動運転制御だけでなく、リスク回避制御、レーンキープアシスト制御、等も含む概念である。オペレータは、車両1に搭乗するドライバであってもよいし、車両1を遠隔操作する遠隔オペレータであってもよい。
【0011】
車両1は、センサ群10、認識部20、計画部30、制御量算出部40、及び走行装置50を含んでいる。
【0012】
センサ群10は、車両1の周囲の状況を認識するために用いられる認識センサ11を含んでいる。認識センサ11としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。センサ群10は、更に、車両1の状態を検出する状態センサ12、車両1の位置を検出する位置センサ13、等を含んでいてもよい。状態センサ12としては、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等が例示される。位置センサ13としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサが例示される。
【0013】
センサ検出情報SENは、センサ群10によって得られる情報である。例えば、センサ検出情報SENは、カメラによって撮影される画像を含んでいる。他の例として、センサ検出情報SENは、LIDARによって得られる点群情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは、車両1の状態を示す車両状態情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは、車両1の位置を示す位置情報を含んでいてもよい。
【0014】
認識部20は、センサ検出情報SENを受け取る。認識部20は、認識センサ11により得られる情報に基づいて、車両1の周囲の状況を認識する。例えば、認識部20は、車両1の周囲の物体を認識する。物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、道路構造物(例:ガードレール、縁石)、落下物、信号機、交差点、標識、等が例示される。認識結果情報RESは、認識部20による認識結果を示す。例えば、認識結果情報RESは、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す物体情報を含む。
【0015】
計画部(planner)30は、認識部20から認識結果情報RESを受け取る。また、計画部30は、車両状態情報、位置情報、予め生成された地図情報を受け取ってもよい。地図情報は、高精度3次元地図情報であってもよい。計画部30は、受け取った情報に基づいて、車両1の走行計画を生成する。走行計画は、予め設定された目的地に到達するためのものであってもよいし、リスクを回避するためのものであってもよい。走行計画としては、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、追い越しを行う、右左折を行う、操舵する、加速する、減速する、停止する、等が例示される。更に、計画部30は、車両1が走行計画に従って走行するために必要な目標トラジェクトリTRJを生成する。目標トラジェクトリTRJは、目標位置及び目標速度を含んでいる。
【0016】
制御量算出部40は、計画部30から目標トラジェクトリTRJを受け取る。制御量算出部40は、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するために必要な制御量CONを算出する。制御量CONは、車両1と目標トラジェクトリTRJとの間の偏差を減少させるために要求される制御量であるということもできる。制御量CONは、操舵制御量、駆動制御量、及び制動制御量のうち少なくとも一つを含む。操舵制御量としては、目標舵角、目標トルク、目標モータ角、目標モータ駆動電流、等が例示される。駆動制御量としては、目標速度、目標加速度、等が例示される。制動制御量としては、目標速度、目標減速度、等が例示される。
【0017】
走行装置50は、操舵装置51、駆動装置52、及び制動装置53を含んでいる。操舵装置51は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置51は、電動パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置52は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置52としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置53は、制動力を発生させる。走行装置50は、制御量算出部40から制御量CONを受け取る。走行装置50は、操舵制御量、駆動制御量、及び制動制御量のそれぞれに従って、操舵装置51、駆動装置52、及び制動装置53を動作させる。これにより、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するように走行する。
【0018】
認識部20は、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。ルールベースモデルは、予め決められたルール群に基づいて認識処理を行う。機械学習モデルとしては、NN(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)、回帰モデル、決定木モデル、等が例示される。NNは、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。NNにおける各層の種類、層の数、ノード数は任意である。機械学習モデルは、機械学習を通して予め生成される。認識部20は、モデルにセンサ検出情報SENを入力することによって認識処理を行う。認識結果情報RESは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0019】
計画部30も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。計画部30は、モデルに認識結果情報RESを入力することによって計画処理を行う。目標トラジェクトリTRJは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0020】
制御量算出部40も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。制御量算出部40は、モデルに目標トラジェクトリTRJを入力することによって制御量算出処理を行う。制御量CONは、モデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0021】
認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち2以上は、一体的に構成されていてもよい。認識部20、計画部30、及び制御量算出部40の全てが一体的に構成されていてもよい(End-to-End構成)。例えば、認識部20と計画部30は、センサ検出情報SENから目標トラジェクトリTRJを出力するNNにより一体的に構成されていてもよい。一体的構成の場合であっても、認識結果情報RESや目標トラジェクトリTRJといった中間生成物が出力されてもよい。例えば、認識部20と計画部30がNNにより一体的に構成される場合、認識結果情報RESは、NNの中間層の出力であってよい。
【0022】
認識部20、計画部30、及び制御量算出部40は、車両1の自動運転を制御する「自動運転制御部」を構成している。本実施の形態では、自動運転制御部の少なくとも一部に機械学習モデルが利用される。すなわち、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち少なくとも1つは機械学習モデルを含んでいる。自動運転制御部は、機械学習モデルを利用して、車両1の自動運転制御の少なくとも一部を行う。
【0023】
2.自動運転システム
図2は、本実施の形態に係る自動運転システム100の構成例を示す概念図である。自動運転システム100は、車両1に搭載されており、車両1の自動運転制御を行う。自動運転システム100は、上述の自動運転制御部の機能を少なくとも有する。自動運転システム100は、更に、センサ群10や走行装置50を含んでいてもよい。
【0024】
自動運転システム100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単に「プロセッサ」110と称す。)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に「記憶装置120」と称す。)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。プロセッサ110として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。認識部20、計画部30、及び制御量算出部40は、単一のプロセッサ110で実現されてもよいし、別々のプロセッサ110で実現されてもよい。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。
【0025】
プログラム130は、車両1を制御するためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ110によって実行される。プログラム130を実行するプロセッサ110と記憶装置120との協働により、自動運転システム100による各種処理が実現されてもよい。プログラム130は、記憶装置120に格納される。プログラム130は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0026】
モデルデータ140は、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40に含まれるモデルのデータである。上述の通り、本実施の形態では、認識部20、計画部30、及び制御量算出部40のうち少なくとも1つは「機械学習モデル」を含んでいる。モデルデータ140は、記憶装置120に格納され、自動運転制御に利用される。
【0027】
自動運転制御の最中、プロセッサ110は、自動運転制御に関連する「ログデータLOG」を取得する。ログデータLOGは、自動運転制御部に入力されるセンサ検出情報SENを含んでいてもよい。ログデータLOGは、自動運転制御部から出力される制御量CONを含んでいてもよい。ログデータLOGは、認識部20から出力される認識結果情報RESを含んでいてもよい。ログデータLOGは、計画部30から出力される目標トラジェクトリTRJを含んでいてもよい。ログデータLOGは、認識部20による認識処理における判断の理由を含んでいてもよい。ログデータLOGは、計画部30による計画処理における判断の理由を含んでいてもよい。ログデータLOGは、自動運転制御に対するオペレータの介入の有無を含んでいてもよい。
【0028】
プロセッサ110は、自動運転制御の最中に取得したログデータLOGを記憶装置120に保存する。プロセッサ110は、一定期間の間だけ、ログデータLOGを記憶装置120に一時的に保存してもよい。
【0029】
管理サーバ200は、車両1の外部に存在する外部装置である。管理サーバ200は、通信ネットワークを介して1又は複数の車両1と通信を行う。自動運転制御の最中、あるいは、自動運転制御の終了後、車両1のプロセッサ110は、ローカルの記憶装置120に保存されたログデータLOGの少なくとも一部を管理サーバ200にアップロードしてもよい。管理サーバ200にアップロードされたログデータLOGは、機械学習モデルを利用した自動運転制御の検証等に利用される。プロセッサ110は、管理サーバ200にアップロードしたログデータLOGをローカルの記憶装置120から消去してもよい。
【0030】
3.自動運転ルート
本実施の形態では、自動運転が可能な区間(例えば、高速道路の区間、自動運転専用の区間など)において、車両1の自動運転制御が行われる場合を考える。この場合は、この自動運転制御が行われる車両1のルート(以下、「自動運転ルート」とも称す。)が設定される。自動運転ルートの設定処理(以下、「ルート設定処理」とも称す。)は、プロセッサ110によって行われてもよいし、車両1に搭載されたプロセッサ110以外のプロセッサ(例えば、ナビゲーションシステムのプロセッサ)によって行われてもよい。
【0031】
自動運転ルートに沿った車両1の走行中、自動運転制御の実行に伴ってログデータLOGが発生する。発生したログデータLOGは、車両1の記憶装置120に保存される。ここで、自動運転制御の実行中、ログデータLOGは発生し続ける。そのため、記憶装置120内におけるログデータLOGの総量Qlogは増加し続け、その一方で、この記憶装置120の空き容量QCが減少し続ける。この結果、空き容量QCが逼迫すると、自動運転ルートに沿った車両1の走行中に発生したログデータLOGの保存が自動運転ルートの途中から行えない状況に陥る可能性がある。
【0032】
3-1.ルート設定処理の第1の例
この問題に鑑み、ルート設定処理では、自動運転ルートの候補RTnが少なくとも2つ設定される(n≧2)。ルート設定処理では、また、これらの候補RTnに沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの総量QA_RTnが予測される。
図3は、総量QA_RTnを説明する図である。
図3には、ルートの候補RTnとして、候補RT1、RT2及びRT3が描かれている。これらの候補は何れも、車両1の現在地CLから目的地DSに至る3つのルートの候補である。
図3の横軸に示される時刻Tclは、現在時刻を表している。また、時刻T1、T2及びT3は、候補RT1、RT2及びRT3に沿って車両1が走行した場合において、車両1が目的地DSに到着する時刻をそれぞれ表している。
【0033】
図3の縦軸は、ログデータLOGの単位時間あたりの発生量ΔQA_RTnが表されている。
図3に示されるように、候補RT1~RT3の間では発生量ΔQA_RTnが異なる。この理由は、候補RT1~RT3の間で少なくとも一部のルートが異なるためである。少なくとも一部のルートが異なれば、ログデータLOGが発生するイベント(物体の認識イベント、走行計画の生成イベント、制御量の算出イベントなど)の頻度や難易度に違いが生じるためである。一般的に、単位時間あたりのイベントの頻度が高くなるほど発生量ΔQA_RTnが多くなる。また、イベントの難易度が高くなるほど発生量ΔQA_RTnが多くなる。
【0034】
候補RT1に沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの総量QA_RT1は、時刻Tclから時刻T1までの発生量ΔQA_RT1を積算した値∫ΔQA_RT1dtにより表される。総量QA_RT2は、時刻Tclから時刻T2までの発生量ΔQA_RT2を積算した値∫ΔQA_RT2dtにより表される。総量QA_RT3は、時刻Tclから時刻T3までの発生量ΔQA_RT3を積算した値∫ΔQA_RT3dtにより表される。
【0035】
ルート設定処理では、更に、総量QA_RTnに基づいて、目的地DSへの到達時(到達時刻Tds)における空き容量QCの将来値QC_RTn(Tds)が計算される。将来値QC_RTn(Tds)は、時刻Tclでの空き容量QCの値(つまり、現在値)QC(Tcl)を用いて次の式(1)により表すことができる。
QC_RTn(Tds)=QC(Tcl)-∫ΔQA_RTndt・・・(1)
【0036】
ルート設定処理の第1の例では、式(1)により計算された将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnが、自動運転ルートとして選出される。将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnであれば、目的地DSに至る途中で空き容量QCが逼迫する状況となるのを未然に回避することが可能となる。
図3の例では、総量QA_RT2が最も少ない。そのため、式(1)に示す将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnは候補RT2であり、これが自動運転ルートとして選出されることになる。
【0037】
3-2.ルート設定処理の第2の例
図3を参照して説明した将来値QC_RTn(Tds)の計算例では、候補RTnに沿った走行中に変動する記憶装置120内のログデータLOGの変動量が、総量QA_RTnにより表現された。しかしながら、候補RTn上に、又は候補RTnの近接箇所に通信スポット(例えば、充電又は給油スポット、高速道路上のサービスエリアなど)が含まれる場合は、目的地DSに至る途中でログデータLOGを管理サーバ200に送信することができる。この場合は、送信済みのログデータLOGを圧縮して記憶装置120に保存することができ、又は、送信済みのログデータLOGを記憶装置120から削除することもできる。
【0038】
図4は、送信済みのログデータLOGを圧縮又は削除した場合における、記憶装置120内におけるログデータLOGの総量Qlogの推移例を示す図である。
図4に示される例では、候補RTnに沿った走行の途中にログデータLOGが管理サーバ200に送信される。そして、この送信済みのログデータLOGが圧縮されて記憶装置120に保存されている。この結果、総量Qlogはデータ量QB_RTnだけ減少し、その一方で、この記憶装置120の空き容量QCが増加する。よって、候補RTn上に、又は候補RTnの近接箇所に通信スポットが含まれる場合は、将来値QC_RTn(Tds)は、次の式(2)により表すことができる。
QC_RTn(Tds)=QC(Tcl)-∫ΔQA_RTndt+QB_RTn・・・(2)
【0039】
ルート設定処理の第2の例では、式(2)により計算された将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnが、自動運転ルートとして選出される。このように、候補RTnに沿った走行中に変動する記憶装置120内のログデータLOGの変動量は、総量QA_RTnとデータ量QB_RTnの組み合わせにより表現することもできる。
【0040】
このように、第1又は第2の例によれば、将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnが自動運転ルートとして選出される。従って、自動運転ルートに沿った車両1の走行中に空き容量QCが逼迫する状況となるのを未然に回避することが可能となる。
【0041】
4.プロセッサによる処理例
図5は、本実施の形態に特に関連する、プロセッサ110による処理の流れを示すフローチャートである。尚、
図5に示されるルーチンは、それぞれ、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0042】
図5に示されるルーチンでは、まず、各種の情報が取得される(ステップS11)。ステップS11の処理において取得される情報としては、車両1の現在位置の情報(緯度経度情報)と、地図情報と、記憶装置120の空き容量QCの情報と、が例示される。
【0043】
ステップS11の処理に続いて、自動運転が可能な区間に車両1が位置するか否かが判定される(ステップS12)。ステップS12の判定は、例えば、ステップS11において取得された車両1の現在位置の情報と、地図情報とに基づいて行われる。ステップS12の判定結果が否定的な場合は、自動運転制御が行われないと判断できる。そのため、この場合は、処理が終了する。
【0044】
ステップS12の判定結果が肯定的な場合は、自動運転制御が行われると判断できる。そのため、記憶装置120の空き容量QCの現在値QC(Tcl)が上限値UL以下であるか否かが判定される(ステップS13)。ステップS13の処理において、現在値QC(Tcl)には、ステップS11において取得された空き容量QCの値が用いられる。上限値ULは、例えば、1回のトリップ中に発生するログデータLOGの平均量として事前に設定される。ログデータLOGの平均量は、1又は複数の車両1についての平均量でもよいし、プロセッサ110が搭載された車両1についての平均量でもよい。
【0045】
ステップS13の判定結果が否定的な場合は、ルート設定処理(通常)が行われる(ステップS14)。ステップS14の処理では、車両1の現在地CLから目的地DSに至る自動運転ルートが、ログデータLOG以外の観点に基づいて設定される。ログデータLOG以外の観点としては、目的地DSまでの所要時間、走行距離、料金などが例示される。
【0046】
ステップS13の判定結果が肯定的な場合は、ルート設定処理(省データ)が行われる(ステップS15)。ステップS15の処理では、上述した第1又は第2の例によって候補RTnが設定され、これらの候補RTnに沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの総量QA_RTn(第1及び第2の例)や、これらの候補RTnに沿った車両1の走行中に減少するログデータLOGのデータ量QB_RTn(第2の例)が予測される。そして、式(1)又は(2)に基づいて計算された将来値QC_RTn(Tds)が最大となる候補RTnが、自動運転ルートとして選出される。
【0047】
尚、ステップS13の処理は本開示に必須の処理ではない。そのため、ステップS12の判定結果が肯定的な場合は、ステップS13の処理をスキップしてステップS15の処理を行ってもよい。また、ステップS15の処理では、将来値QC_RTn(Tds)を計算する前に、候補RTnに沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの途中経過量QA_RTn(Tmw)を計算してもよい。更には、この途中経過量QA_RTn(Tmw)に基づいて、候補RTnの絞り込みを行ってもよい。
【0048】
図6は、途中経過量QA_RTn(Tmw)を説明する図である。
図6には、
図3で説明した候補RT1が描かれている。
図3の説明で述べたように、候補RT1に沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの総量QA_RT1は、時刻Tclから時刻T1までの発生量ΔQA_RT1を積算した値∫ΔQA_RT1dtである。途中経過量QA_RTn(Tmw)は、車両1が目的地DSに至る前の時刻(
図6の例では、時刻T4)までに発生するログデータLOGの総量である。
【0049】
ステップS15の処理において、途中経過量QA_RTn(Tmw)が計算された場合、この途中経過量QA_RTn(Tmw)に基づいて時刻Tmwでの空き容量QCの値(つまり、途中経過値)を計算してもよい。この場合の途中経過値QC_RTn(Tmw)は、次の式(3)により表すことができる。
QC_RTn(Tmw)=QC(Tcl)-QA_RTn(Tmw)・・・(3)
【0050】
途中経過値QC_RTn(Tmw)が計算された場合は、更に、この途中経過値QC_RTn(Tmw)と許容値ACを比較してもよい。この許容値ACは、例えば、ゼロ又はゼロに近い値に設定される。比較の結果、途中経過値QC_RTn(Tmw)が許容値AC以下となる候補RTnがあるときは、その候補RTnが自動運転ルートの候補から除外される。このような候補RTnは、車両1が目的地DSに至る途中で空き容量QCが逼迫する状況となるものであるといえる。従って、途中経過量QA_RTn(Tmw)に基づいて候補RTnの絞り込みを行う例によれば、空き容量QCが逼迫する状況となるのを未然に回避するという本実施の形態による効果をより確実にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…車両、10…センサ群、20…認識部、30…計画部、40…制御量算出部、50…走行装置、100…自動運転システム、110…プロセッサ、120…記憶装置、200…管理サーバ、220…データベース、AC…許容値、CL…現在地、DS…目的地、QC…空き容量、RTn…候補、UL…上限値、CON…制御量、LOG…ログデータ、RES…認識結果情報、SEN…センサ検出情報、TRJ…目標トラジェクトリ、ΔQA_RTn…ログデータLOGの単位時間あたりの発生量、QA_RTn…候補RTnに沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの総量、QA_RTn(Tmw)…候補RTnに沿った車両1の走行中に発生するログデータLOGの途中経過量、QB_RTn…候補RTnに沿った車両1の走行中に減少するログデータLOGのデータ量、QC(Tcl)…空き容量QCの現在値、QC_RTn(Tds)…空き容量QCの将来値、QC_RTn(Tmw)…空き容量QCの途中経過値