(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109423
(43)【公開日】2025-07-25
(54)【発明の名称】アモルファス変圧器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/25 20060101AFI20250717BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20250717BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20250717BHJP
【FI】
H01F27/25
H01F41/02 C
H01F30/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003295
(22)【出願日】2024-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 千絵
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 諒介
(72)【発明者】
【氏名】角 考弘
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062AA02
5E062AB05
5E062AB15
5E062AB17
(57)【要約】
【課題】
製造時の環境負荷が低いアモルファス変圧器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
アモルファス変圧器において、前記アモルファス変圧器を構成するアモルファス鉄心は、その一部の鉄損が周の他の部分より大きく、かつ前記大きい領域は前記他の部分より範囲が少ないアモルファス変圧器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス変圧器において、前記アモルファス変圧器を構成するアモルファス鉄心は、その一部の鉄損が周の他の部分より大きく、かつ前記大きい領域は前記他の部分より範囲が少ないアモルファス変圧器。
【請求項2】
請求項1記載のアモルファス変圧器において、前記アモルファス鉄心の鉄損に内周側と外周側で傾斜があるアモルファス変圧器。
【請求項3】
請求項2記載のアモルファス変圧器において、鉄損が周の他の部分より大きい領域は、内周側と外周側の双方にあるアモルファス変圧器。
【請求項4】
請求項3記載のアモルファス変圧器において、鉄損が周の他の部分より大きい領域の数は、内周側より外周側で多いアモルファス変圧器。
【請求項5】
請求項4記載のアモルファス変圧器において、鉄損が周の他の部分より大きい領域の場所が、周方向で、内周側と外周側で異なる辺に位置するアモルファス変圧器。
【請求項6】
請求項5記載のアモルファス変圧器において、鉄損が周の他の部分より大きい領域の場所が、内周側で辺部、外周側でコーナー部に位置するアモルファス変圧器。
【請求項7】
請求項3記載のアモルファス変圧器において、鉄損が周の他の部分より大きい領域の数が、内周側と外周側で同じであり、周方向の辺部に位置する位置するアモルファス変圧器。
【請求項8】
アモルファス変圧器の製造方法において、アモルファス鉄心に対し高周波を印加して焼鈍する工程を有し、当該工程では内側支持部材と外側支持部材と、前記内側支持部材と外側支持部材を絶縁状態で締結する締結治具を用い、かつ前記内側支持部材と前記外側支持部材は、双方に非形成領域を有するとともに、前記内側支持部材は複数辺で一体に形成されているアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記外側支持部材は角部あるいはコーナー部以外の領域に配置され、前記内側支持部材は角部あるいはコーナー部を含めて配置されているアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記内側支持部材は複数あるアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記内側支持部材は複数あり、前記内側支持部材の間には支持体が配置されているアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記支持体は前記内側支持部材と一体に構成されているアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項13】
請求項8記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記外側支持部材および前記前記内側支持部材は角部あるいはコーナー部を含めて配置されているアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項14】
請求項8記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記内側支持部材は前記外側支持部材より突出した領域を有するアモルファス変圧器の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載のアモルファス変圧器の製造方法において、前記突出した領域は、前記アモルファス鉄心のラップ部に対応して設けられているアモルファス変圧器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアモルファス変圧器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器の鉄心にアモルファス薄膜を多数積層させたアモルファス変圧器が、電力損失の低さから、環境対応性に優れるとして広く用いられている。
【0003】
その製造過程において、磁気特性を向上させる目的で、アモルファス鉄心に熱を加える焼鈍処理を行うことが知られている。
【0004】
特許文献1には、焼鈍に際し、成形金具を用いることが開示されている。また特許文献2には、アモルファス鉄心に励磁巻線を巻回して高周波電圧を印加して鉄心の発熱で焼鈍する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-220941号公報
【特許文献2】特開2018-160502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焼鈍に際し、特許文献1では、全体を焼鈍炉に入れる手法が開示されている。しかしこの手法では、焼鈍炉全体を高温とする必要があり、製造時の熱利用効率が悪く、環境負荷の高い製造方法となっている。
【0007】
一方、特許文献2には、モルファス鉄心に励磁巻線を巻回して高周波電圧を印加して鉄心の発熱で焼鈍する手法、いわば高周波加熱が開示されている。この手法によれば、被加熱対象物のみを高周波加熱、いわば電子レンジのように加熱することが出来るため、必要最小限の電力量で焼鈍することが出来る。したがって、環境負荷の低い製造方法である。
【0008】
ここで、特許文献1には、
図2および0024~0025段落で、内周の成形金具と外周の成形金具を用い、内周と外周の成形金具をボルトで締結して鉄心を締め付けること、および成形金具と共に焼鈍することが開示されている。しかし、開示される焼鈍手法として、高周波加熱は開示も示唆もない。
【0009】
一方、特許文献2は高周波加熱による焼鈍手法を開示するが、その際に用いるべき成形金具に関しては開示も示唆もない。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、高周波加熱による焼鈍を行うアモルファス変圧器およびその製造方法において、高周波加熱に際し適切な成形金具を用いる製造方法と、それにより実現される製造時負荷の低いアモルファス変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段の一例をあげれば、以下のようになる。
【0012】
アモルファス変圧器において、前記アモルファス変圧器を構成するアモルファス鉄心は、その一部の鉄損が周の他の部分より大きく、かつ前記大きい領域は前記他の部分より範囲が少ないことを特徴とするアモルファス変圧器。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造時の環境負荷が低いアモルファス変圧器およびその製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明の更なる手段および更なる効果は、以下明細書全文を通じ明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例におけるアモルファス鉄心の焼鈍時の状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例におけるアモルファス鉄心の焼鈍時の状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例におけるアモルファス鉄心の焼鈍時の状態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例におけるアモルファス鉄心の焼鈍時の状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例におけるアモルファス鉄心の焼鈍時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0017】
アモルファス鉄心は、珪素鋼板に比べてアモルファス薄帯の損失が1/3~1/4と低いことにより、低損失の鉄心とすることができる。一例として、アモルファス薄帯(板厚0.025mm前後)の積層構造が適する。
【0018】
アモルファス鉄心は、ループに巻かれたロール状のアモルファス合金の薄帯を複数枚束ねて切断し、切断したアモルファス合金の薄帯を長方形の芯金にUの字形に積層し,端部同士をラップ接合することで成形する。
【0019】
その後、鉄心の長手方向に磁場をかけて、またアモルファス鉄心に対し高周波誘導加熱を行い300~400℃の高温状態として熱処理を行う。電子レンジと同様の高周波加熱となる。磁場中焼鈍によって磁気モーメントの向きが揃い、軸が固着するため,磁気特性が向上する。
【0020】
特許文献1には、焼鈍炉による焼鈍が開示される。一般に用いられる焼鈍炉の一例としては、電気炉による温風で間接的に鉄心に熱を与え、炉内雰囲気を不活性ガスで充満させて鉄心の酸化を防ぐと共に、不活性ガスにて熱を伝えるものとしている。
【0021】
炉の構造としては、ヒータ部、循環ファン部、冷却部からなっており、それらは炉内に設置され、ヒータ部及び、冷却部にて温度調節されたガスが、循環ファンにて炉内を循環する方式となっている。このような電気炉による温風で間接的に鉄心に熱を与える方法は、所定の熱処理条件まで多くの時間を要し,近年の消費電力削減要請に対応するならば、このエネルギーロスを低減することが求められる。
【0022】
一方、特許文献2には、アモルファス鉄心に励磁巻線を巻回して高周波電圧を印加することで、鉄心の発熱で焼鈍させる製造方法が提案されている。しかし、その際の鉄心の保持部材については触れられていない。
【0023】
ここで、特許文献1は、
図2および0024~0025段落で、内周の成形金具と外周の成形金具を用い、内周と外周の成形金具をボルトで締結して鉄心を締め付けること、および成形金具と共に焼鈍することが開示されている。しかし、開示される焼鈍手法として、高周波加熱は開示も示唆もない。
【0024】
すなわち、高周波電圧による焼鈍、換言すれば高周波加熱あるいは高周波焼鈍に際し、適切な成形金具に関しては、当業者において、これまで適切な検討がなされておらず、高周波加熱のアモルファス鉄心製造への適用に際し、その実用化に向けて抜け落ちている大きな穴となっていたことが判明した。
【0025】
アモルファス鉄心を形成するアモルファス磁性薄帯は、硬くて脆いという性質がある。その上、例えば厚さ25μmの薄帯を何百枚も積層して形成しているため、機械的強度、剛性が十分にえられず自立が困難である。それゆえ、高周波加熱あるいは高周波焼鈍に際し、適切な成形金具の検討は、非常に重要な事項であることになる。
【0026】
図1は、本発明の一実施例での、変圧器の焼鈍時に関する説明図である。1はアモルファス鉄心、10は外側支持部材、11は内側支持部材、15は締結ボルトである。外側支持部材10と内側支持部材11は、締結ボルト15で締結される。なお、締結ボルト15は、それ自体が絶縁性の素材により、あるいはワッシャとボルト周辺の空間としての穴の組み合わせによる絶縁の確保がなされている。
【0027】
そして、アモルファス鉄心、換言すれば多数の積層されたアモルファス薄膜を、外側支持部材10と内側支持部材11にて挟み、締め付ける。その状態で、高周波電圧による焼鈍、換言すれば高周波加熱あるいは高周波焼鈍として、アモルファス鉄心1を高周波加熱して300~400℃で熱処理を行う。
【0028】
本実施例では、この時に用いる外側支持部材10と内側支持部材11の形状に大きな特徴がある。
【0029】
すなわち、外側支持部材10は、4つに分離して構成されている。これにより、それぞれは電気的に接続しないように構成されている。換言すれば、周方向で非形成領域があると表現することが出来る。
【0030】
一方、内側支持部材11は、その周での一部に非形成領域があるように設けられている。
図1の場合には、Cの字を反転させたような形状であり、そのCの口部分が非形成領域となる。こちらも、換言すれば、周方向で非形成領域があると表現することが出来る。
【0031】
この、周方向で、支持部材に非形成領域があるか否かは、特許文献1に開示されるような焼鈍炉による焼鈍では、問題にならない。なぜなら、焼鈍炉全体が同一の温度雰囲気化となるためである。
【0032】
一方、特許文献2に開示されるような、高周波電圧印加による加熱では、支持部材の形状に特別な配慮が必要である。さもないと、高周波加熱自体が成り立たなくなるためである。
【0033】
以下に、必要な条件と、その理由を説明する。
【0034】
<条件1>外側支持部材に、非形成領域があること。
【0035】
<理由1>高周波加熱に際しては、外側支持部材の非形成領域から高周波をアモルファス鉄心1に導入することになる。このため、外側支持部材に非形成領域がない場合、高周波の導入が出来ず、高周波加熱が原理的に成り立たなくなる。
【0036】
<条件2>内側支持部材に、非形成領域があること。
【0037】
<理由2>内側支持部材に非形成領域がないと、高周波によりアモルファス鉄心1に励起された電流が内側支持部材にて電流ループを形成してしまい、アモルファス鉄心1をほとんど流れなくなる。その結果、高周波加熱が成立しなくなる。
【0038】
これは、外側支持部材および内側支持部材はいずれも数mm~数cmという厚みを有する金属であり、一方アモルファス鉄心を形成するアモルファス薄膜は数十μmという厚みで、その差は2桁から3桁に及ぶためである。
【0039】
<条件3>内側支持部材が、複数辺にまたがって一体に形成されていること。
【0040】
<理由3>焼鈍炉による加熱では、アモルファス鉄心1の温度は全体に均一に徐々に上昇する。一方、高周波加熱では、アモルファス鉄心1の温度は急速に上昇すると共に、アモルファス鉄心1内周と外周で温度の上昇速度に違いが出る。これは、内周のアモルファス薄膜の長さ(周長)は外周のアモルファス薄膜の長さ(周長)より構造的に短いことに起因する。このため、内周は外周より加熱対象の長さが短いことになり、同じ高周波でも、結果として内周では外周より急速な温度上昇につながる。
【0041】
このため、内周側の形状の変化が生じやすいという課題を高周波加熱は有することを今回見出し、その対応として、実用上、内側支持部材が、複数辺にまたがって一体に形成することが必要となる。これにより、特にコーナー部を確実に形状支持することが可能となる。
【0042】
高周波加熱を用いて、アモルファス変圧器の鉄心の焼鈍を行う製造方法、およびその製造法により作成されたアモルファス変圧器を実用化するに際しては、上記の条件1~3の同時達成が必要不可欠であることを発明者は見出した。
【0043】
そこで、本実施例、および以降の実施例は、いずれも、上記条件1~3を同時達成できる形状の支持部材を用いて、アモルファス変圧器の製造を行うアモルファス変圧器の製造方法を説明するとともに、またそれにより製造されるアモルファス変圧器を説明するものである。
【0044】
本発明のアモルファス変圧器の製造方法の一例としては、以下のようになる。
【0045】
高周波誘導加熱によりアモルファス鉄心の焼鈍を行うアモルファス変圧器の製造方法において、前記焼鈍に際し焼鈍用治具を用いるものであり、
前記焼鈍用治具は、非形成領域がある外側支持部材と、非形成領域がある内側支持部材と、前記外側支持部材と前記内側支持部材の両者の絶縁性を確保しつつ締結する締結具とを有し、前記内側支持部材は複数辺にまたがって一体に形成されていることを特徴とするアモルファス変圧器の製造方法。
【0046】
本製造方法を適用することで、高周波誘導加熱によるアモルファス鉄心の焼鈍が実用化可能となり、低損失で製品としての環境負荷の低いアモルファス変圧器に対し、さらに製造時の環境負荷の低減も実現できるため、ライフサイクルを通して環境性能に優れた変圧器を提供することが実現できるようになる。
【0047】
なお、製造工程において、上記のような支持部材を用いて高周波焼鈍が行われたか否かは、完成品のアモルファス鉄心の鉄損を調べることで確認の一端とすることができる。すなわち、
図1のような外側支持部材と内側支持部材を用いた場合、場所により鉄損に関し微妙な差が生じることになる。例えば、アモルファス鉄心で言えば、内側支持部材の非形成領域、すなわちCの字の口に相当する部分は、他の領域より、鉄損が若干大きくなることになる。
【0048】
これは、金属製で厚い内側支持部材のあるところの方が、その熱容量に起因し、高周波焼鈍時の最終的な焼鈍温度が高くなるため、より焼鈍が進むためである。
【0049】
むろん、超長時間にわたり焼鈍処理を行えばこのような差はなくなるが、そのためには追加の電力消費が生じるため、製造時電力の増加と使用時損失の低減の両者を天秤にかけ、バランスを見て、製造条件の最適化を行うことでライフサイクル全体での環境負荷低減を図ることが求められるからである。
【0050】
このため、上述の3条件を満たす支持部材を用い、高周波加熱により焼鈍処理がされたアモルファス変圧器は、以下のような特性を有することになる。
【0051】
アモルファス変圧器において、前記アモルファス変圧器を構成するアモルファス鉄心は、その一部の鉄損が周の他の部分より大きく、かつ前記大きい領域は前記他の部分より範囲が少ないことを特徴とするアモルファス変圧器。
【0052】
ここで、本実施例でのアモルファス変圧器の鉄心として望ましい構造について言及する。
【0053】
鉄心内部の磁束分布を平滑化する目的で、アモルファス薄膜の積層によるアモルファス鉄心は、オーバーラップ接合とステップラップ接合を含めたラップ構造として、ラップ部の端部の距離を鉄心内部で大きくし、外周部に向かってラップ端部の距離を短くすることが望ましい。鉄心内部の磁束分布を、より平滑化させることができるためである。
【0054】
さらに、本実施例での内側支持部材11としては、より望ましくは、
図1に開示のように、コーナー部がR形状を有する、あるいは曲率を有することが望ましい。アモルファス鉄心の焼鈍時の形状保持をより確実にできるためである。
【0055】
また、
図1の形状の特徴の一部は、以下のように表現することもできる。
【0056】
アモルファス鉄心を金属で囲うループができない構成とし、循環電流を防ぐ構成とする。また支持部材は、鉄心と同様のループとならないよう、非形成領域を設ける、あるいは環状の一部を除した形状、もしくは非環状形状とする。
【0057】
さらに、
図1の形状の特徴の一部は、以下のように説明することもできる。
【0058】
高周波電圧を印加して誘導加熱により鉄心を焼鈍した場合、磁路長の短い内周側の磁束密度が高くなり、磁路長の長い外周側の磁束密度が低くなる傾向を示す。これにより、鉄損値にも内外周で傾斜ができ、高周波励磁で焼鈍したことの特徴となる。さらに、鉄心支持部材が鉄心と接していない部位があることで、局所的な温度分布ができ、内周側の環状を除した部位だけ、鉄損値が変化する。
【0059】
そのため,本実施例で開示の技術思想を用いた鉄心では、内外周の傾斜に加えて、部分的な鉄損変化が現れる。従って、本特許を採用した変圧器は、巻鉄心内周部の磁気特性が周方向で一つ若しくは複数低くなるという部分を有する巻鉄心を備えた変圧器となると言うこともできる。
【0060】
なお、先に、Cの字の口に相当する部分は、他の領域より、鉄損が若干大きくなることになる。これは、金属製で厚い内側支持部材のあるところの方が、その熱容量に起因し、高周波焼鈍時の最終的な焼鈍温度が高くなるため、より焼鈍が進むためである、と述べた。
【0061】
同様の概念を、
図1の構成の内側支持部材と外側支持部材を用い、高周波加熱により焼鈍が成されたアモルファス変圧器では、以下のような状況を示すことになる。
【0062】
すなわち、アモルファス変圧器において、アモルファス変圧器を構成するアモルファス鉄心は、その一部の鉄損が周の他の部分より大きく、かつ前記大きい領域は前記他の部分より範囲が少ないアモルファス変圧器、である。
【0063】
さらに、前記アモルファス鉄心の鉄損に内周側と外周側で傾斜があるアモルファス変圧器、となる。
【0064】
さらに、鉄損が周の他の部分より大きい領域は、内周側と外周側の双方にあるアモルファス変圧器、となる。
【0065】
さらに、鉄損が周の他の部分より大きい領域の場所が、周方向で、内周側と外周側で異なる辺に位置するアモルファス変圧器、となる。
【0066】
さらに、鉄損が周の他の部分より大きい領域の場所が、内周側で辺部、外周側でコーナー部に位置するアモルファス変圧器、となる。
【0067】
また、製造方法としては、以下のように表現することもできる。
【0068】
アモルファス変圧器の製造方法において、アモルファス鉄心に対し高周波を印加して焼鈍する工程を有し、当該工程では内側支持部材と外側支持部材と、前記内側支持部材と外側支持部材を絶縁状態で締結する締結治具を用い、かつ前記内側支持部材と前記外側支持部材は、双方に非形成領域を有するとともに、前記内側支持部材は複数辺で一体に形成されているアモルファス変圧器の製造方法、となる。
【0069】
さらに、外側支持部材は角部あるいはコーナー部以外の領域に配置され、前記内側支持部材は角部あるいはコーナー部を含めて配置されているアモルファス変圧器の製造方法、となる。