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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010952
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】軸受装置及びスピンドル装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20250116BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20250116BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20250116BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20250116BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20250116BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20250116BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20250116BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20250116BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C19/16
F16C33/58
F16N31/00 B
F16N7/38 D
F16C35/07
F16C35/12
B23B19/02 B
B23Q11/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113273
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 翔一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 好史
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3C011FF06
3C045FD12
3C045FD18
3J117AA01
3J117DA01
3J117DA02
3J701AA02
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA56
3J701BA71
3J701BA77
3J701CA08
3J701CA14
3J701CA17
3J701FA32
3J701FA48
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】軸受に補給された潤滑剤を効率よく排出することができ、良好な潤滑状態を保って、長時間の連続運転が安定して可能であり、軸受の長寿命化を図ることができる、メンテナンスの容易な軸受装置及びスピンドル装置を提供する。
【解決手段】前側軸受装置は、ハウジング50に対してスピンドル60を回転自在に支持する転がり軸受20と、ハウジング50に内嵌されて転がり軸受20の外輪22を軸方向に位置決めする外輪間座40及び外輪押えと、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20の内部へ潤滑剤Gを供給する。外輪22の一方の側面22bは、転がり軸受20の内輪21の側面21bよりも軸方向中心側にオフセットされており、オフセットされた側面22bに当接する外輪間座40の端面43には、外輪間座40を径方向に貫通する開口部41が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに対してスピンドルを回転自在に支持する転がり軸受と、前記ハウジングに内嵌されて前記転がり軸受の外輪を軸方向に位置決めする外輪位置決め部材と、を備え、潤滑剤供給経路を介して前記転がり軸受の内部へ潤滑剤を供給する軸受装置であって、
前記外輪の少なくとも一方の側面は、前記転がり軸受の内輪の側面よりも軸方向中心側にオフセットされており、
オフセットされた前記側面に当接する前記外輪位置決め部材の端面には、前記外輪位置決め部材を径方向に貫通する開口部が形成されている、
ことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記開口部の径方向外側における前記ハウジングには、前記転がり軸受の内部から排出された前記潤滑剤を貯蔵可能な貯蔵空間が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
スピンドルが、請求項1又は2に記載の軸受装置によって回転自在に支持された工作機械主軸用のスピンドル装置。
【請求項4】
スピンドルが、請求項1又は2に記載の軸受装置によって回転自在に支持された高速モータ用のスピンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及びそれを用いたスピンドル装置に関し、より詳細には、軸受に補給された潤滑剤を効率よく排出させることができる軸受装置及びスピンドル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸用スピンドル等を支持する軸受装置は、従来からジェット潤滑、オイルミスト、オイルエア等の油潤滑やグリース潤滑が用いられている。近年、スピンドルの高速化に伴い、微量な潤滑油を高速で間欠的に転がり軸受の軌道面や転動面に付着させるリーン潤滑や、グリースを間欠的に転がり軸受空間内に補給する潤滑法が開発され、dmN100万以上(dm:転がり軸受のピッチ円直径(mm)、N:回転速度(min-1))の高速化に対する性能が向上している。上記のような軸受に潤滑油やグリース等の潤滑剤を供給あるいは補給する潤滑装置においては、供給された潤滑剤を適切に排出することが、スピンドルの回転に伴う潤滑剤の撹拌抵抗を小さく抑えて軸受の温度上昇やトルク増大を避ける重要な要素である。
【0003】
一般的な主軸内部でのグリースは、軸受の空間容積に対して10%~30%封入されており、回転する軸受の潤滑の役割を行うグリース内部の基油が消耗すると、潤滑不良を起こし軸受の焼き付きに至る。そのため、グリース封入タイプの主軸の寿命は、グリースの寿命、つまり基油の消耗する時間となる。グリース寿命を延ばすために、軸受内部のグリース封入量を多くする事や、軸受に隣接する間座にグリースを設ける方法もあるが、グリース封入量が多いと慣らし運転に時間がかかる。また、軸受の外輪部および間座のグリース溜りにある多量のグリースが軸受の転走面に入り込むと、急な温度上昇が発生し焼き付きに至るリスクがある。さらに、グリースを補給するタイプにおいては、新鮮なグリースを軸受に間歇的に供給するため、グリース封入に比べて寿命を延ばす事はできるが、グリースを上手く軸受から排出させないと急な温度上昇による焼き付きのリスクが非常に大きい。
【0004】
特許文献1には、外輪位置決め部材に形成された複数の第1の径方向油路と、複数の第1の径方向油路と連通する円周方向全周溝と、ハウジングの排油穴と円周方向全周溝とをそれぞれ連通してハウジングに形成された第2の径方向油路と、を備えた主軸装置(軸受装置)が記載されている。これにより、旋回姿勢に関わらず、潤滑油を排油穴から排出することができ、軸受内部の潤滑剤の油量過多による異常発熱を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-2622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の軸受装置は、連続供給により潤滑剤で充満された軸受空間内へ、さらに潤滑剤を供給することにより潤滑剤を軸受の外部へ押し出すように構成されている。そのため、軸受外部へ潤滑剤を排出させる力が小さい。したがって、外輪間座に構成された貯蔵空間を排出された潤滑剤で充満させるには不十分で、長時間潤滑剤を補給し続けるには限界があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受に補給された潤滑剤を効率よく排出することができ、良好な潤滑状態を保って、長時間の連続運転が安定して可能であり、軸受の長寿命化を図ることができる、メンテナンスの容易な軸受装置及びスピンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) ハウジングと、前記ハウジングに対してスピンドルを回転自在に支持する転がり軸受と、前記ハウジングに内嵌されて前記転がり軸受の外輪を軸方向に位置決めする外輪位置決め部材と、を備え、潤滑剤供給経路を介して前記転がり軸受の内部へ潤滑剤を供給する軸受装置であって、
前記外輪の少なくとも一方の側面は、前記転がり軸受の内輪の側面よりも軸方向中心側にオフセットされており、
オフセットされた前記側面に当接する前記外輪位置決め部材の端面には、前記外輪位置決め部材を径方向に貫通する開口部が形成されている、
ことを特徴とする軸受装置。
(2) スピンドルが、上記(1)に記載の軸受装置によって回転自在に支持された工作機械主軸用のスピンドル装置。
(3) スピンドルが、上記(1)に記載の軸受装置によって回転自在に支持された高速モータ用のスピンドル装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の軸受装置によれば、軸受に補給された潤滑剤を効率よく排出することができ、良好な潤滑状態を保って、長時間の連続運転が安定して可能であり、軸受の長寿命化を図ることができる。
また、本発明の工作機械主軸用のスピンドル装置及び高速モータ用のスピンドル装置によれば、スピンドルが上記の軸受装置によって回転自在に支持されているので、スピンドルの回転に伴う潤滑剤の撹拌抵抗を小さく抑えて軸受の温度上昇やトルク増大を抑制することができ、軸受の長寿命化が図られ、メンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る軸受装置が適用された工作機械主軸用のスピンドル装置を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す軸受装置の要部拡大図である。
図3図3は、図2に示す背面組合せされた4個の転がり軸受のうち軸方向前方から2列目の転がり軸受の拡大断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る軸受装置の要部断面図である。
図5図5は、図4に示す転がり軸受の拡大断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る軸受装置の要部断面図である。
図7図7は、図6に示す転がり軸受の拡大断面図である。
図8図8は、第1変形例に係る転がり軸受の拡大断面図である。
図9図9は、第2変形例に係る転がり軸受の拡大断面図である。
図10図10の(a),(b)は、外輪位置決め部材の上面図及び正面図である。
図11図11の(a),(b)は、変形例に係る外輪位置決め部材の上面図及び正面図である。
図12図12は、本発明の第4実施形態に係る軸受装置の要部拡大断面図である。
図13図13の(a),(b)は、図12に示す外輪位置決め部材の上面図及び正面図である。
図14図14は、本発明の第5実施形態に係る軸受装置の要部拡大断面図である。
図15図15は、本発明の第6実施形態に係る軸受装置の要部拡大断面図である。
図16図16は、本発明の第7実施形態に係る軸受装置の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る軸受装置及びスピンドル装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施形態の軸受装置は、工作機械主軸用のスピンドル装置に適用した場合について説明するが、高速モータ用のスピンドル装置にも適用できることは云うまでもない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る前側軸受装置10が適用された工作機械主軸用のスピンドル装置200を示す断面図である。
図1に示すように、スピンドル装置200は、モータビルトイン方式のものである。スピンドル60は、モータ70に対して前方に配置される前側軸受装置10と、モータ70に対して後方に配置される後側軸受装置110とによってハウジング50に対して回転自在に支持されている。前側軸受装置10は、背面組合せされた4個の転がり軸受20を備えており、後側軸受装置110は、1個の転がり軸受120を備えている。勿論、組み合わされる複数の転がり軸受20の個数及び組合せ形式は、これに限定されるものではない。
【0013】
後側軸受装置110は、ハウジング50に対してスピンドル60を回転自在に支持する円筒ころ軸受である転がり軸受120と、ハウジング50に内嵌されて転がり軸受120の外輪122を軸方向に位置決めする外輪位置決め部材である外輪押え140A,140Bと、スピンドル60に外嵌されて転がり軸受120の内輪121を軸方向に位置決めする内輪間座130A,130Bと、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受120の内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0014】
図2は、図1に示す前側軸受装置10の要部拡大図である。図3は、図2に示す背面組合せされた4個の転がり軸受20のうち軸方向前方から2列目の転がり軸受20の拡大断面図である。
図2に示すように、本第1実施形態の前側軸受装置10は、ハウジング50と、ハウジング50に対してスピンドル60を回転自在に支持する転がり軸受20と、ハウジング50に内嵌されて転がり軸受20の外輪22を軸方向に位置決めする外輪位置決め部材である外輪間座40及び外輪押え40Bと、スピンドル60に外嵌されて転がり軸受20の内輪21を軸方向に位置決めする内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20の内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0015】
ハウジング50には、ハウジング50の軸方向後方から各転がり軸受20の外輪22の給油孔26と、転がり軸受120の外輪122の給油孔126とに連通する複数の潤滑剤供給経路52が形成されている。ハウジング50の外部には、潤滑剤供給部201が設けられており、ハウジング50の軸方向後端面には、潤滑剤供給部201からの配管を通すための開口部202、又は、潤滑剤供給部201からの配管を中継する中継ジョイント等が設けられている。
【0016】
したがって、複数の転がり軸受20の軸受空間への潤滑剤Gの供給は、開口部202に潤滑剤供給部201が接続されることで、複数の潤滑剤供給経路52を介して行われる。また、転がり軸受120の軸受空間への潤滑剤Gの供給は、潤滑剤供給部201が外輪間座押え140Aの軸方向後端面に設けられた開口部203に接続され、外輪押え140Aに形成された連通孔204を含む潤滑剤供給経路52を介して行われる。
【0017】
図3に示すように、背面組合せされた4個の転がり軸受20は、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21と、外輪22と、内輪21の内輪軌道面21aと外輪22の外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された転動体である複数の玉23と、複数の玉23を回動自在に保持する保持器24と、を備える。外輪22は、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側(図3中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有すると共に、径方向に貫通し、外輪軌道面22a寄りのカウンタボア25に開口する給油孔26を備える。
なお、外輪22は、後述するように軸方向背面側が軸方向中心側に短くされており、外輪22の内周面で保持器24を案内することは困難である。そこで、本第1実施形態の保持器24の案内方式は、玉23によって案内される玉案内式や、内輪21によって案内される内輪案内式とされる。
【0018】
また、本第1実施形態の各転がり軸受20は、外輪22の一方の側面(背面側の軸方向端面)22bが内輪21の側面(背面側の軸方向端面)21bよりも軸方向中心側に寸法δ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受20は、外輪22及び内輪21における正面側の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪22及び内輪21における背面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22の幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22の内周面との間の軸受空間は、軸方向背面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0019】
更に、オフセットされた外輪22の一方の側面22bに当接する外輪間座40及び外輪押え40Bの端面43には、外輪間座40又は外輪押え40Bを径方向に貫通する開口部(ドレン穴)41が形成されている。また、開口部41の径方向外側におけるハウジング50には、転がり軸受20の内部から排出された潤滑剤Gを貯蔵可能な貯蔵空間51が設けられている。
【0020】
貯蔵空間51は、開口部41の外周側に形成された環状空間である。従って、転がり軸受20の軸受空間は、外輪22の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介して貯蔵空間51に連通する。
【0021】
このように構成された前側軸受装置10では、潤滑剤供給部201から供給される潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52及び外輪22の給油孔26を介して転がり軸受20に供給される。例えば、潤滑剤Gがグリースの場合、所定の量のグリースが所定の間隔で定期的に補給される。転がり軸受20の内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20の各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20の内部に滞留される。転がり軸受20の内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20の外部へ押し出されて排出される。
【0022】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20の径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介して貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて貯蔵空間51に貯留される。
【0023】
即ち、転がり軸受20は、外輪22の一方の側面22bが内輪21の側面21bよりも軸方向中心側に寸法δ分だけオフセットされ、外輪22の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20の内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20の内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0024】
また、外輪22の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分からの排出は、転がり軸受20の回転速度の違いによる潤滑剤Gの供給量と排出量のバランスを取ることも可能である。例えば、高速回転の場合は、発熱による潤滑剤Gの枯渇化による早期損傷を防止するために、潤滑剤Gの供給量を増やす必要がある。ただし、むやみに供給量を増加すると、潤滑剤Gが過剰となり、昇温不安定や異常発熱などの恐れがある。しかしながら、内輪21及び保持器24は高速回転しているため遠心力が大きく、その分、潤滑剤Gの排出量も増加することから、供給量を増やしても転がり軸受20の内部に留まる潤滑剤Gの量は増加せず、転がり軸受20の内部および近傍に適量の潤滑剤Gを留めておくことができる。
【0025】
一方、低速回転の場合は、供給量を少なくしても、内輪21及び保持器24の遠心力が小さくなるため、潤滑剤Gの排出量も増加せず、潤滑剤Gを余計に排出させることは無い。このように、外輪22の幅を内輪21の幅よりも短くして軸受空間に径方向外方へ開放された部分を設けることで、潤滑剤Gの供給量と排出量が回転速度に応じて適切に連動し、常時、良好な潤滑環境が得られる。
【0026】
なお、潤滑剤Gとしては、グリース、オイルどちらであっても有効であり、攪拌抵抗が減少することで発熱を抑えることができる。また、貯蔵空間51が潤滑剤Gで満たされた場合、前側軸受装置10の外部へ排出する必要があるが、本実施形態によれば、ハウジング50に設けられた貯蔵空間51と外部空間を連通する不図示の排出通路を設け、外部から吸引することにより、潤滑剤Gをほとんど排出させることができるので、メンテナンスが容易になる。特に、オイル補給潤滑の場合、外部空間との排出通路は有効である。
【0027】
以上説明したように、本第1実施形態の前側軸受装置10によれば、転がり軸受20の内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介して貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20の寿命が長くなる。また、転がり軸受20、即ち、内輪21及び保持器24の回転速度に応じて潤滑剤Gを弾き飛ばす遠心力の大きさが変わるため、回転速度に応じた適切な潤滑剤供給が可能となる。
【0028】
また、本第1実施形態の前側軸受装置10が適用された工作機械主軸用のスピンドル装置200によれば、高速回転する工作機械主軸用スピンドル装置のスピンドル60を、長寿命化が図られた転がり軸受20により支持でき、メンテナンスが容易となる。
勿論、本第1実施形態の前側軸受装置10を高速モータ用のスピンドル装置に適用した場合にも、高速回転する高速モータ用スピンドル装置のスピンドルを、長寿命化が図られた転がり軸受20により支持でき、メンテナンスが容易となる。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る前側軸受装置10Aの要部断面図である。図5は、図4に示す転がり軸受20Aの拡大断面図である。
図4に示すように、本第2実施形態の前側軸受装置10Aは、ハウジング50と、転がり軸受20Aと、外輪位置決め部材である外輪間座40及び外輪押え40Bと、内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20Aの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0030】
図5に示すように、背面組合せされた4個の転がり軸受20Aは、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21と、外輪22Aと、内輪21の内輪軌道面21aと外輪22Aの外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された複数の玉23と、保持器24と、を備える。外輪22Aは、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側(図5中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有すると共に、径方向に貫通し、外輪軌道面22a寄りのカウンタボア25に開口する給油孔26を備える。
【0031】
また、本第2実施形態の各転がり軸受20Aは、外輪22Aの一方の側面(正面側の軸方向端面)22cが内輪21の側面(正面側の軸方向端面)21cよりも軸方向中心側にσ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受20Aは、外輪22A及び内輪21における背面側の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪22A及び内輪21における正面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Aの幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22Aの内周面との間の軸受空間は、軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0032】
更に、オフセットされた外輪22Aの一方の側面22cに当接する外輪間座40及び外輪押え40Bの端面44には、外輪間座40又は外輪押え40Bを径方向に貫通する開口部41が形成されている。また、開口部41の径方向外側におけるハウジング50には、転がり軸受20Aの内部から排出された潤滑剤Gを貯蔵可能な貯蔵空間51が設けられている。従って、転がり軸受20Aの軸受空間は、外輪22Aの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介して貯蔵空間51に連通する。
【0033】
このように構成された前側軸受装置10Aでは、潤滑剤供給部201から供給される潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52及び外輪22Aの給油孔26を介して転がり軸受20Aに供給される。例えば、潤滑剤Gがグリースの場合、所定の量のグリースが所定の間隔で定期的に補給される。転がり軸受20Aの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Aの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Aの内部に滞留される。転がり軸受20Aの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20Aの外部へ押し出されて排出される。
【0034】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20Aの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22Aの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介して貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて貯蔵空間51に貯留される。
【0035】
即ち、転がり軸受20Aは、外輪22Aの一方の側面22cが内輪21の側面21cよりも軸方向中心側にσ分だけオフセットされ、外輪22Aの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20Aの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20Aの内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0036】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第2実施形態の前側軸受装置10Aによれば、転がり軸受20Aの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22Aの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介して貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20Aの寿命が長くなる。また、転がり軸受20A、即ち、内輪21及び保持器24の回転速度に応じて潤滑剤Gを弾き飛ばす遠心力の大きさが変わるため、回転速度に応じた適切な潤滑剤供給が可能となる。
なお、外輪22Aは、軸方向背面側が軸方向中心側に短くされていないので、外輪22Aの内周面を保持器24の案内に使用可能である。そこで、本第2実施形態の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式に加え、外輪22Aの内周面によって案内される外輪案内式とすることもできる。
【0037】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る前側軸受装置10Bの要部断面図である。図7は、図6に示す転がり軸受20Bの拡大断面図である。
図6に示すように、本第3実施形態の前側軸受装置10Bは、ハウジング50と、転がり軸受20Bと、外輪位置決め部材である外輪間座40及び外輪押え40Bと、内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20Bの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0038】
図7に示すように、背面組合せされた4個の転がり軸受20Bは、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21と、外輪22Bと、内輪21の内輪軌道面21aと外輪22Bの外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された複数の玉23と、保持器24と、を備える。外輪22Bは、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有すると共に、径方向に貫通し、外輪軌道面22a寄りのカウンタボア25に開口する給油孔26を備える。
【0039】
また、本第3実施形態の各転がり軸受20Bは、外輪22Bの両方の側面22b,22cが内輪21の両方の側面21b,21cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受20Bは、外輪22B及び内輪21における背面側及び正面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Bの幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22Bの内周面との間の軸受空間は、軸方向背面側及び軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0040】
更に、オフセットされた外輪22Bの両方の側面22b,22cに当接する外輪間座40及び外輪押え40Bの端面43,44には、外輪間座40又は外輪押え40Bを径方向に貫通する開口部41がそれぞれ形成されている。また、開口部41の径方向外側におけるハウジング50には、転がり軸受20Aの内部から排出された潤滑剤Gを貯蔵可能な貯蔵空間51が設けられている。従って、転がり軸受20Bの軸受空間は、外輪22Aの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に連通する。
【0041】
このように構成された前側軸受装置10Bでは、潤滑剤供給部201から供給される潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52及び外輪22Bの給油孔26を介して転がり軸受20Bに供給される。例えば、潤滑剤Gがグリースの場合、所定の量のグリースが所定の間隔で定期的に補給される。転がり軸受20Bの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Bの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Bの内部に滞留される。転がり軸受20Bの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20Bの外部へ押し出されて排出される。
【0042】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20Bの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22Bの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて各貯蔵空間51に貯留される。
【0043】
即ち、転がり軸受20Bは、外輪22Bの両方の側面22b,22cが内輪21の両方の側面21b,21cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットされ、外輪22Bの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20Bの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20Bの内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0044】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第3実施形態の前側軸受装置10Bによれば、転がり軸受20Bの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22Bの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20Bの寿命が長くなる。また、転がり軸受20B、即ち、内輪21及び保持器24の回転速度に応じて潤滑剤Gを弾き飛ばす遠心力の大きさが変わるため、回転速度に応じた適切な潤滑剤供給が可能となる。
なお、外輪22Bは、軸方向背面側及び軸方向正面側が軸方向中心側に短くされており、外輪22Bの内周面で保持器24を案内することは困難である。そこで、本第3実施形態の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式とされる。
【0045】
なお、上記第1~第3実施形態の前側軸受装置10,10A,10Bでは、背面組合せされた4個の転がり軸受20,20A,20Bにおけるオフセットの寸法δ,σが全て同じに設定されているが、転がり軸受の配置によって異常昇温のレベルが異なる場合は、オフセットの寸法δ,σをそれぞれ適宜変更してもよい。
【0046】
例えば、背面組合せされた4個の転がり軸受において、1列目と4列目の異常昇温が発生しやすく、2列目と3列目の異常昇温が少ない場合には、1列目と4列目の転がり軸受20,20A,20Bにおけるオフセットの寸法δ,σを2列目と3列目の転がり軸受20,20A,20Bにおけるオフセットの寸法δ,σよりも大きくすることも可能である。
【0047】
また、複数の転がり軸受における1個以上の転がり軸受にオフセットの寸法δ(又は、σ)を設けたり、複数の転がり軸受における1個以上の転がり軸受のオフセットの寸法δ(又は、σ)を残りの転がり軸受のオフセットの寸法δ(又は、σ)に対して変えたりすることもできる。
【0048】
(転がり軸受の変形例)
図8は第1変形例に係る転がり軸受20Cの拡大断面図であり、図9は第2変形例に係る転がり軸受20Dの拡大断面図である。
図8に示すように、第1変形例に係る転がり軸受20Cの外輪22Cは、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側(図8中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有すると共に、径方向に貫通し、外輪軌道面22a寄りの軸方向他方側(図8中、右側)の内周面に開口する給油孔26を備える。
【0049】
また、転がり軸受20Cは、外輪22Cの一方の側面(正面側の軸方向端面)22cが内輪21の側面(正面側の軸方向端面)21cよりも軸方向中心側にσ分だけオフセットされている。即ち、転がり軸受20Cは、外輪22C及び内輪21における背面側(図8中、右側)の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪22C及び内輪21における正面側(図8中、左側)の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Cの幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22Cの内周面との間の軸受空間は、軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0050】
本第1変形例に係る転がり軸受20Cでは、潤滑剤Gを供給する給油孔26が外輪22Cの背面側に設けられている。そこで、外輪22Cの背面側に設けられた給油孔26から転がり軸受20Cの内部に供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Cの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Cの内部に滞留される。転がり軸受20Cの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gの一部は、外輪22Cの正面側に設けられた径方向外方に開放された部分から転がり軸受20Cの径方向外方へ弾き飛ばされて開口部41へ排出される。
なお、外輪22Cは、軸方向背面側に給油孔26が設けられており、外輪22Cの内周面で保持器24を案内することは困難である。そこで、本第1変形例の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式とされる。
【0051】
図9に示すように、第2変形例に係る転がり軸受20Dは、内輪21Dが内輪軌道面21aに対して軸方向一方側(図9中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25Dを有すると共に、外輪22Dが径方向に貫通し、外輪軌道面22a寄りの軸方向一方側の内周面に開口する給油孔26を備える。
【0052】
また、転がり軸受20Dは、外輪22Dの一方の側面(背面側の軸方向端面)22cが内輪21Dの側面(背面側の軸方向端面)21cよりも軸方向中心側にσ分だけオフセットされている。即ち、転がり軸受20Dは、外輪22D及び内輪21Dにおける正面側(図9中、右側)の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪22D及び内輪21Dにおける背面側(図9中、左側)の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Dの幅は内輪21Dの幅よりも短い。これにより、内輪21Dの外周面と外輪22Dの内周面との間の軸受空間は、軸方向背面側が径方向外方に開放された構成となっている。
本第2変形例に係る転がり軸受20Dでは、カウンタボア25Dが内輪21Dに設けられている。
なお、外輪22Dは、軸方向正面側が軸方向中心側に短くされていないので、外輪22Dの内周面を保持器24の案内に使用可能である。そこで、本第2変形例の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式に加え、外輪案内式とすることもできる。
【0053】
(外輪位置決め部材)
図10の(a),(b)に示すように、本実施形態の軸受装置における外輪位置決め部材としての外輪間座40は、ハウジング50に内嵌される円環状に形成されている。
そして、外輪間座40には、円周方向の一部を外輪22の側面と当接する端面44から軸方向に矩形状に切り欠くことで、径方向に貫通する複数(本実施形態では、8つ)の開口部41が周方向幅wを有して形成されている。外輪間座40の開口部41は、円周方向に等間隔で複数形成されることが望ましいが、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0054】
また、図11の(a),(b)に示す外輪間座40Cのように、径方向に貫通する開口部41cを半円形状に形成することもできる。本実施形態の開口部は、これら矩形状や半円形状に限定されるものではなく、外輪の少なくとも一方の軸方向端面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされた潤滑剤が排出可能であれば、種々の開口形状を採りうる。
【0055】
なお、本実施形態の軸受装置における外輪位置決め部材としては、ハウジング50の前側にボルト締結される外輪押え40Bも含まれる。そこで、外輪22の側面と当接する外輪押え40Bの端面44にも、軸方向に矩形状に切り欠くことで、径方向に貫通する複数の開口部41が形成される。
【0056】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係る前側軸受装置10Cの要部拡大断面図である。図13の(a),(b)は、図12に示す外輪間座40Eの上面図及び正面図である。
図12に示すように、本第4実施形態に係る前側軸受装置10Cは、ハウジング50Aと、ハウジング50Aに対してスピンドル60を回転自在に支持する転がり軸受20Eと、ハウジング50Aに内嵌されて転がり軸受20Eの外輪22Eを軸方向に位置決めする外輪位置決め部材である外輪間座40E及び外輪押え40Fと、スピンドル60に外嵌されて転がり軸受20Eの内輪21を軸方向に位置決めする内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20Eの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0057】
転がり軸受20Eは、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21と、外輪22Eと、内輪21の内輪軌道面21aと外輪22Eの外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された転動体である複数の玉23と、複数の玉23を回動自在に保持する保持器24と、を備える。
【0058】
外輪22Eは、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側(図12中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有する。また、外輪22Eの一方の側面(正面側の軸方向端面)22cが内輪21の側面(正面側の軸方向端面)21cよりも軸方向中心側にσ分だけオフセットされている。
【0059】
即ち、転がり軸受20Eは、外輪22E及び内輪21における背面側の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪22E及び内輪21における正面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Eの幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22Eの内周面との間の軸受空間は、軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0060】
更に、図13に示すように、オフセットされた外輪22Eの一方の側面22cに当接する外輪間座40E(外輪押え40F)の端面44には、外輪間座40E(外輪押え40F)を径方向に貫通する開口部41が形成されている。また、外輪間座40E(外輪押え40F)は、径方向に貫通し、カウンタボア25の近傍に開口する給油孔42を備える。
【0061】
このように構成された前側軸受装置10Cでは、潤滑剤供給部201から供給されるグリースからなる潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52及び外輪間座40Eの給油孔42を介して転がり軸受20Eに供給される。
転がり軸受20Eの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Eの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Eの内部に滞留される。転がり軸受20Eの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20Eの外部へ押し出されて排出される。
【0062】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20Eの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22Eの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介して貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて貯蔵空間51に貯留される。
【0063】
即ち、転がり軸受20Eは、外輪22Eの一方の側面22cが内輪21の側面21cよりも軸方向中心側に寸法σ分だけオフセットされ、外輪22Eの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20Eの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20Eの内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0064】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第4実施形態の前側軸受装置10Cによれば、転がり軸受20Eの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22Eの軸方向正面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20Eの寿命が長くなる。
なお、外輪22Eは、軸方向背面側が軸方向中心側に短くされていないので、外輪22Eの内周面を保持器24の案内に使用可能である。そこで、本第4実施形態の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式に加え、外輪案内式とすることもできる。
【0065】
(第5実施形態)
図14は、本発明の第5実施形態に係る前側軸受装置10Dの要部拡大断面図である。
図14に示すように、本第5実施形態に係る前側軸受装置10Dは、ハウジング50Bと、転がり軸受20Fと、外輪位置決め部材である外輪間座40,40Gと、内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20Fの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0066】
転がり軸受20Fは、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21と、外輪22Fと、内輪21の内輪軌道面21aと外輪22Fの外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された転動体である複数の玉23と、複数の玉23を回動自在に保持する保持器24と、を備える。
【0067】
外輪22Fは、外輪軌道面22aに対して軸方向一方側(図14中、左側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有する。また、外輪22Fの両方の側面22b,22cが内輪21の両方の側面21b,21cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受20Fは、外輪22F及び内輪21における背面側及び正面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Fの幅は内輪21の幅よりも短い。これにより、内輪21の外周面と外輪22Fの内周面との間の軸受空間は、軸方向背面側及び軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0068】
更に、オフセットされた外輪22Fの両方の側面22b,22cに当接する外輪間座40Gの端面43,44には、外輪間座40Gを径方向に貫通する開口部41がそれぞれ形成されている。また、外輪間座40Gの軸方向中央部には、隣接する転がり軸受20Fの側面から潤滑剤Gを給油するオイル供給穴45が設けられている。
【0069】
このように構成された前側軸受装置10Dでは、潤滑剤供給部201から供給されるオイルエアからなる潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52及び外輪間座40Gのオイル供給穴45を介して転がり軸受20Fに供給される。
転がり軸受20Fの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Fの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Fの内部に滞留される。転がり軸受20Fの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20Fの外部へ押し出されて排出される。
【0070】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20Fの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22Fの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて各貯蔵空間51に貯留される。
【0071】
即ち、転がり軸受20Fは、外輪22Fの両方の側面22b,22cが内輪21の両方の側面21b,21cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットされ、外輪22Fの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20Fの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20Fの内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0072】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第5実施形態の前側軸受装置10Dによれば、転がり軸受20Fの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22Fの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20Fの寿命が長くなる。
なお、外輪22Fは、軸方向背面側及び軸方向正面側が軸方向中心側に短くされており、外輪22Fの内周面で保持器24を案内することは困難である。そこで、本第5実施形態の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式とされる。
【0073】
(第6実施形態)
図15は、本発明の第6実施形態に係る前側軸受装置10Eの要部拡大断面図である。
図15に示すように、本第6実施形態に係る前側軸受装置10Eは、ハウジング50Cと、転がり軸受20Gと、外輪位置決め部材である外輪間座40Gと、内輪間座30と、を備え、潤滑剤供給経路52を介して転がり軸受20Gの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0074】
転がり軸受20Gは、それぞれアンギュラ玉軸受であり、内輪21Gと、外輪22Gと、内輪21Gの内輪軌道面21aと外輪22Fの外輪軌道面22aとの間に転動自在に配置された複数の玉23と、保持器24と、を備える。
【0075】
外輪22Gは、外輪軌道面22aに対して軸方向他方側(図15中、右側)の内周面にテーパ状のカウンタボア25を有する。そして、外輪22Gの側面22cは、内輪21Gの側面21cよりも軸方向中心側に寸法σ分だけオフセットされている。また、外輪22Gの側面22bは、後述する外輪間座40Gの内周面に形成された円周溝47に対向するように背面側(図15中、左側)に延設された内輪21Gの側面21bよりも軸方向中心側に寸法δ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受20Gは、外輪22G及び内輪21Gにおける背面側及び正面側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪22Gの幅は内輪21Gの幅よりも短い。これにより、内輪21Gの外周面と外輪22Gの内周面との間の軸受空間は、軸方向背面側及び軸方向正面側が径方向外方に開放された構成となっている。
【0076】
更に、オフセットされた外輪22Fの両方の側面22b,22cに当接する外輪間座40Gの端面43,44には、外輪間座40Gを径方向に貫通する開口部41がそれぞれ形成されている。また、外輪間座40Gの軸方向中央部には、隣接する転がり軸受20Gの内輪21Gの外周面に潤滑剤Gを給油するオイル供給穴46と、オイル供給穴46に連通する円周溝47とが設けられている。円周溝47は、内輪21Gの延設部分に対向するように外輪間座40Gの内周面に形成されている。
【0077】
このように構成された前側軸受装置10Eでは、潤滑剤供給部201から供給されるオイルエアからなる潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路52、外輪間座40Gのオイル供給穴46及び円周溝47を介して内輪21Gの外周面に供給される。
内輪21Gの外周面から転がり軸受20Gの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受20Gの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受20Gの内部に滞留される。転がり軸受20Gの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受20Gの外部へ押し出されて排出される。
【0078】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪21G及び保持器24の回転力による遠心力で転がり軸受20Gの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪22Gの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分及び開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に、強制的且つ継続的に排出されて各貯蔵空間51に貯留される。
【0079】
即ち、転がり軸受20Gは、外輪22Gの両方の側面22b,22cが内輪21Gの両方の側面21b,21cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットされ、外輪22Gの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受20Gの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部41へ速やかに排出させることができ、転がり軸受20Gの内輪軌道面21a及び外輪軌道面22aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0080】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第6実施形態の前側軸受装置10Eによれば、転がり軸受20Gの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪21G及び保持器24の回転力による遠心力の作用によって、外輪22Gの軸方向背面側及び軸方向正面側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部41を介してそれぞれの貯蔵空間51に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受20Gの寿命が長くなる。
なお、外輪22Gは、軸方向背面側及び軸方向正面側が軸方向中心側に短くされており、外輪22Gの内周面で保持器24を案内することは困難である。そこで、本第6実施形態の保持器24の案内方式は、玉案内式や内輪案内式とされる。
【0081】
(第7実施形態)
図16は、本発明の第7実施形態に係る後側軸受装置110Aの拡大断面図である。
図16に示すように、本第7実施形態の後側軸受装置110Aは、ハウジング50に対してスピンドル60を回転自在に支持する転がり軸受120Aと、外輪位置決め部材である外輪押え140C,140Dと、内輪間座130A,130Bと、を備え、潤滑剤供給経路152を介して転がり軸受120Aの内部へ潤滑剤Gを供給する軸受装置である。
【0082】
転がり軸受120Aは、円筒ころ軸受であり、両つば付きの内輪121と、つばなしの外輪122と、内輪121の内輪軌道面121aと外輪122の外輪軌道面122aとの間に転動自在に配置された転動体である複数のころ123と、保持器(図示せず)と、を備える。外輪122は、径方向に貫通し、外輪122の内周面における前方に開口する給油孔126を備える。
【0083】
また、本第7実施形態の転がり軸受120Aは、外輪122の一方の側面(後側の軸方向端面)122bが内輪121の側面121bよりも軸方向中心側に寸法δ分だけオフセットされている。
即ち、転がり軸受120Aは、外輪122及び内輪121における前側の各軸方向端面の軸方向位置が同じであり、外輪122及び内輪121における後側の各軸方向端面の軸方向位置が異なっており、外輪122の幅は内輪121の幅よりも短い。これにより、内輪121の外周面と外輪122の内周面との間の軸受空間は、軸方向後側(図16中、右側)が径方向外方に開放された構成となっている。
【0084】
更に、オフセットされた外輪122の一方の側面122bに当接する外輪押え140Cの端面143には、外輪押え140Cを径方向に貫通する開口部(ドレン穴)141が形成されている。また、開口部141の径方向外側における外輪押え140Dには、転がり軸受120Aの内部から排出された潤滑剤Gを貯蔵可能な貯蔵空間151が設けられている。
【0085】
貯蔵空間151は、開口部141の外周側に形成された環状空間である。従って、転がり軸受120Aの軸受空間は、外輪122の軸方向後側における径方向外方に開放された部分及び開口部141を介して貯蔵空間151に連通する。
【0086】
このように構成された後側軸受装置110Aでは、潤滑剤供給部201から供給される潤滑剤Gが、潤滑剤供給経路152及び外輪122の給油孔126を介して転がり軸受120Aに供給される。例えば、潤滑剤Gがグリースの場合、所定の量のグリースが所定の間隔で定期的に補給される。転がり軸受120Aの内部へ供給された潤滑剤Gは、転がり軸受120Aの各部を潤滑し、その一部は転がり軸受120Aの内部に滞留される。転がり軸受120Aの内部に滞留された潤滑剤Gのうち、不要となった潤滑剤Gは転がり軸受120Aの外部へ押し出されて排出される。
【0087】
また、不要となった潤滑剤Gの一部は、内輪121及び保持器の回転力による遠心力で転がり軸受120Aの径方向外方へ弾き飛ばされ、外輪122の軸方向後側における径方向外方に開放された部分及び開口部141を介して貯蔵空間151に、強制的且つ継続的に排出されて貯蔵空間151に貯留される。
【0088】
即ち、転がり軸受120Aは、外輪122の一方の側面122bが内輪121の側面121bよりも軸方向中心側にδ分だけオフセットされ、外輪122の軸方向後側における径方向外方に開放された部分が構成されている。そのため、転がり軸受120Aの内部に滞留された潤滑剤Gを開口部141へ速やかに排出させることができ、転がり軸受120Aの内輪軌道面121a及び外輪軌道面122aへ潤滑剤Gが再び入り込む事による異常昇温の発生を抑制できる。
【0089】
従って、上記第1実施形態に係る前側軸受装置10と同様に、本第7実施形態の後側軸受装置110Aによれば、転がり軸受120Aの内部に供給された潤滑剤Gは、内輪121及び保持器の回転力による遠心力の作用によって、外輪122の軸方向後側における径方向外方に開放された部分から外径側へ弾き飛ばされ、開口部141を介して貯蔵空間151に貯留される。これにより、潤滑剤Gの撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受120Aの寿命が長くなる。また、転がり軸受120A、即ち、内輪121及び保持器の回転速度に応じて潤滑剤Gを弾き飛ばす遠心力の大きさが変わるため、回転速度に応じた適切な潤滑剤供給が可能となる。
【0090】
なお、上述した各実施形態における転がり軸受と同様に、転がり軸受120Aにおける外輪122の両方の側面122b,122cを内輪121の両方の側面121b,121cよりも軸方向中心側にそれぞれ寸法δ,σ分だけオフセットさせたり、外輪122の給油孔126を外輪122の前方側に開口したり、転がり軸受120Aへの潤滑剤Gの給油構造を変えたりして適宜変更可能であることは云うまでもない。
【0091】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0092】
ここで、上述した本発明に係る軸受装置及びスピンドル装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] ハウジング(50,50A,50B,50C)と、前記ハウジングに対してスピンドル(60)を回転自在に支持する転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)と、前記ハウジングに内嵌されて前記転がり軸受の外輪(22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,122)を軸方向に位置決めする外輪位置決め部材(外輪間座40、外輪押え40B,140C)と、を備え、潤滑剤供給経路(52,152)を介して前記転がり軸受の内部へ潤滑剤(G)を供給する軸受装置(前側軸受装置10,10A,10B,10C,10D,10E、後側軸受装置110A)であって、
前記外輪の少なくとも一方の側面(22b)は、前記転がり軸受の内輪(21)の側面(21b)よりも軸方向中心側にオフセットされており、
オフセットされた前記側面に当接する前記外輪位置決め部材の端面(43,44,143)には、前記外輪位置決め部材を径方向に貫通する開口部(41,141)が形成されている、
ことを特徴とする軸受装置(前側軸受装置10,10A,10B,10C,10D,10E、後側軸受装置110A)。
【0093】
上記[1]の構成によれば、転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)の内部に供給された潤滑剤(G)は、内輪及び保持器の回転力による遠心力の作用によって、外輪(22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,122)の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分及び開口部(41,141)を介して不要となった潤滑剤(G)の一部が外径側へ弾き飛ばされる。これにより、潤滑剤(G)の撹拌抵抗が減少して発熱が抑制され、良好な潤滑状態が維持され、結果として転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)の寿命が長くなる。また、転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)、即ち、内輪及び保持器の回転速度に応じて潤滑剤(G)を弾き飛ばす遠心力の大きさが変わるため、回転速度に応じた適切な潤滑剤供給が可能となる。
【0094】
[2] 前記開口部(41,141)の径方向外側における前記ハウジング(50,50A,50B,50C)には、前記転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)の内部から排出された前記潤滑剤(G)を貯蔵可能な貯蔵空間(51,151)が設けられている、
ことを特徴とする上記[1]に記載の軸受装置(前側軸受装置10,10A,10B,10C,10D,10E、後側軸受装置110A)。
【0095】
上記[2]の構成によれば、転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)の径方向外方へ弾き飛ばされた潤滑剤(G)の一部は、外輪(22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,122)の軸方向背面側における径方向外方に開放された部分及び開口部(41,141)を介して貯蔵空間(51,151)に、強制的且つ継続的に排出されて貯蔵空間(51,151)に貯留される。
【0096】
[3] スピンドル(60)が、上記[1]又は[2]に記載の軸受装置(前側軸受装置10,10A,10B,10C,10D,10E、後側軸受装置110A)によって回転自在に支持された工作機械主軸用のスピンドル装置(200)。
【0097】
上記[3]の構成によれば、
高速回転する工作機械主軸用スピンドル装置のスピンドル(60)を、長寿命化が図られた転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)により支持でき、メンテナンスが容易となる。
【0098】
[4] スピンドルが、上記[1]又は[2]に記載の軸受装置(前側軸受装置10,10A,10B,10C,10D,10E、後側軸受装置110A)によって回転自在に支持された高速モータ用のスピンドル装置。
【0099】
上記[4]の構成によれば、高速回転する高速モータ用スピンドル装置のスピンドル(60)を、長寿命化が図られた転がり軸受(20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G,120A)により支持でき、メンテナンスが容易となる。
【符号の説明】
【0100】
10 前側軸受装置(軸受装置)
20 転がり軸受
22 外輪
40 外輪間座(外輪位置決め部材)
50 ハウジング
40B 外輪押え(外輪位置決め部材)
52 潤滑剤供給経路
60 スピンドル
200 工作機械主軸用のスピンドル装置
G 潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16