特開 2025-109527 座席用クッションパッド

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025109527

(43)【公開日】2025-07-25

(54)【発明の名称】座席用クッションパッド

(51)【国際特許分類】

   B60N 2/90 20180101AFI20250717BHJP

   A47C 7/18 20060101ALI20250717BHJP

   A47C 27/15 20060101ALI20250717BHJP

【ＦＩ】

B60N2/90

A47C7/18

A47C27/15 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2024003471

(22)【出願日】2024-01-12

(71)【出願人】

【識別番号】000119232

【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション

(74)【代理人】

【識別番号】100158067

【弁理士】

【氏名又は名称】江口 基

(74)【代理人】

【識別番号】100147854

【弁理士】

【氏名又は名称】多賀 久直

(72)【発明者】

【氏名】松本 真人

【テーマコード（参考）】

3B084

3B087

3B096

【Ｆターム（参考）】

3B084CA05

3B084CA07

3B084CB01

3B087DE10

3B096AB05

3B096AB07

(57)【要約】

【課題】座席用クッションパッドに形成された突出部を破損し難くする。
【解決手段】座席用クッションパッド１０は、第１発泡成形体１２と、第１発泡成形体１２の表側に配置された第２発泡成形体１４とを備えている。第１発泡成形体１２は、第１発泡成形体１２における裏側の面から突出する突出部１６を有している。座席用クッションパッド１０は、突出部１６の外面に沿って配置された発泡体１８を備えている。座席用クッションパッド１０において、発泡体１８が、突出部１６を被覆するとよい。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第１発泡成形体と、前記第１発泡成形体の表側に配置された第２発泡成形体と、を備える座席用クッションパッドであって、
前記第１発泡成形体は、裏側の面から突出する突出部を有し、
前記突出部の外面に沿って配置された発泡体を備える、座席用クッションパッド。

【請求項2】

前記発泡体が、前記突出部を被覆している請求項１に記載の座席用クッションパッド。

【請求項3】

前記第１発泡成形体は、表裏方向に貫通する孔部を有し、
前記発泡体は、前記第１発泡成形体の表側に配置された前記第２発泡成形体に、前記孔部を介して繋がる該第２発泡成形体の一部である請求項１に記載の座席用クッションパッド。

【請求項4】

前記第１発泡成形体は、前記第２発泡成形体より硬質である請求項１～３の何れか一項に記載の座席用クッションパッド。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、座席用クッションパッドに関するものである。

【背景技術】

【0002】

自動車等の車両用座席シートで、座部を構成するクッションパッドは快適なクッション性が得られるよう軟質ポリウレタン発泡成形体で造られてきたが、近年、軽量化対策で、下層に嵩上げ用として発泡スチロール等のビーズ発泡体を配置する動きが進んでいる。ただ、ビーズ発泡体はその発泡成形で成形収縮が発生し、寸法精度にバラツキが生じ易い。このため、成形型にビーズ発泡体を取り付けた際に脱落し易いことから、ビーズ発泡体に隆起部を形成して、隆起部を成形型に嵌め込むことが提案されている（例えば、特許文献１参照）。また、クッションパッドは、車体のフレームに位置合わせするため、ビーズ発泡体から突出する隆起部を設けることもある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２０－１３８６３４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

前述したように、ビーズ発泡体に隆起部を形成すると、成形型への取り付け時や、クッションパッドの搬送時や車体への取り付け時などにおいて、隆起部が他の部材に当たった際に、隆起部が破損するおそれがある。

【0005】

本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、破損し難い突出部を有する座席用クッションパッドを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明に係る座席用クッションパッドの第１態様は、
第１発泡成形体と、前記第１発泡成形体の表側に配置された第２発泡成形体と、を備える座席用クッションパッドであって、
前記第１発泡成形体は、裏側の面から突出する突出部を有し、
前記突出部の外面に沿って配置された発泡体を備えることを要旨とする。

【0007】

本発明に係る座席用クッションパッドの第２態様は、前記第１態様において、
前記発泡体が、前記突出部を被覆していてもよい。

【0008】

本発明に係る座席用クッションパッドの第３態様は、前記第１態様又は前記第２態様において、
前記第１発泡成形体は、表裏方向に貫通する孔部を有し、
前記発泡体は、前記第１発泡成形体の表側に配置された前記第２発泡成形体に、前記孔部を介して繋がる該第２発泡成形体の一部であってもよい。

【0009】

本発明に係る座席用クッションパッドの第４態様は、前記第１態様、前記第２態様及び前記第３態様の何れか１つにおいて、
前記第１発泡成形体は、前記第２発泡成形体より硬質であってもよい。

【発明の効果】

【0010】

本発明に係る座席用クッションパッドによれば、突出部が破損し難い。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の第１実施形態に係る座席用クッションパッドを斜め上側から見た斜視図である。

【図2】第１実施形態の座席用クッションパッドを、左右方向に切断して示す端面図である。

【図3】第１実施形態の座席用クッションパッドを、前後方向に切断して示す端面図である。

【図4】図３のＡ－Ａ線端面図である。

【図5】図３のＢ－Ｂ線端面図である。

【図6】第１実施形態の座席用クッションパッドの製造過程を示す説明図である。

【図7】第２実施形態の座席用クッションパッドを、左右方向に切断して示す端面図である。

【図8】第２実施形態の座席用クッションパッドを、前後方向に切断して示す端面図である。

【図9】図８のＣ－Ｃ線端面図である。

【図10】図８のＤ－Ｄ線端面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

次に、本発明に係る座席用クッションパッドにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。

【実施例0013】

（第１実施形態）
図１に示す第１実施形態に係る座席用クッションパッド１０は、例えば自動車などの車両における座面部分を構成し、座席に着座した使用者の下半身を受け支えるものである。以下の説明において、座席用クッションパッド１０の使用状態で方向を指称し、左右方向が車両の車幅方向に対応し、前後方向が車両の前後方向に対応し、表裏方向が上下方向に対応する。なお、表側が上であり、裏側が下である。

【0014】

図１～図３に示すように、座席用クッションパッド１０は、第１発泡成形体１２と、第２発泡成形体１４とを備えている。座席用クッションパッド１０において、第２発泡成形体１４が第１発泡成形体１２の表側（上側）に主に配置されている。座席用クッションパッド１０において、使用者が触れる上面及び前後左右の側面が第２発泡成形体１４で形成されて、使用者が触れることがない下面に第１発泡成形体１２が露出している。

【0015】

第１発泡成形体１２は、第２発泡成形体１４と異なる材質を有するものである。また、第１発泡成形体１２は、第２発泡成形体１４と異なる材料で形成されている。第１発泡成形体１２は、第２発泡成形体１４よりも密度が小さく、第２発泡成形体１４よりも軽量であることが好ましい。また、第１発泡成形体１２は、第２発泡成形体１４よりも硬質であることが好ましい。第１発泡成形体１２としては、例えば、ビーズ発泡法により得られたビーズ発泡体を用いるとよい。ビーズ発泡体は、原料ビーズを予備発泡成形させた後、型内発泡成形によって成形されたものである。ビーズ発泡体としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、又はこれらのうち一つを少なくとも含むものが挙げられる。気泡が内部に密閉されたビーズ発泡体は、体積の大部分が気体であることから軽量であり、第１発泡成形体１２として用いると、座席用クッションパッド１０の一部を構成する嵩上げ部材としての硬度と保形性がある。

【0016】

第２発泡成形体１４は、重合反応によって生じるガスや発泡剤などの化学反応を利用する方法や、機械的に攪拌して気体を吹き込むなど、空気を混入させる方法（機械的混入法）等で得られる発泡体が用いられる。第２発泡成形体１４としては、例えば、ポリウレタンフォームなどを採用可能である。また、第２発泡成形体１４は、座席に座った使用者側となることから、第１発泡成形体１２よりも柔軟性がある軟質発泡体を用いるとよい。

【0017】

図２及び図３に示すように、第１発泡成形体１２は、その裏側の面から突出する突出部１６を有している。突出部１６は、第１発泡成形体１２の一部分であり、第１発泡成形体１２において突出部１６よりも上側の部分を特に区別する場合、本体部１２ａという。実施例において、第１発泡成形体１２における本体部１２ａの裏側の面に、左右方向に離して２つの突出部１６,１６が形成されている（図２参照）。また、突出部１６は、前後方向に延びる壁状に形成されている（図３参照）。

【0018】

図２、図３及び図５に示すように、座席用クッションパッド１０は、突出部１６の外面に沿って配置された発泡体１８を備えている。発泡体１８は、突出部１６の前後左右の側面及び下面を被覆しており、突出部１６の全面が発泡体１８で覆われている。このように、座席用クッションパッド１０において、座席用クッションパッド１０における裏側の面から突出する突起部１５が、突出部１６及び発泡体１８で構成されている。

【0019】

図２及び図３に示すように、第１発泡成形体１２は、表裏方向（実施例では上下方向）に貫通する孔部２０を有している。孔部２０は、第１発泡成形体１２の本体部１２ａの上面に開いた上部開口が、本体部１２ａの上側に配置された第２発泡成形体１４の下側に位置し、本体部１２ａの下面に開いた下部開口が発泡体１８の上側に位置している。図４に示すように、第１発泡成形体１２の本体部１２ａには、複数の孔部２０が突出部１６の形成位置を囲むように互いに離して形成されている。

【0020】

図２及び図３に示すように、孔部２０には、第２発泡成形体１４が配置されており、孔部２０に配置された第２発泡成形体１４と第１発泡成形体１２の表側（上側）に配置された第２発泡成形体１４とが繋がっている。このように、発泡体１８は、第１発泡成形体１２の表側（上側）に配置された第２発泡成形体１４に、孔部２０に配置された第２発泡成形体１４を介して繋がっており、発泡体１８は、第２発泡成形体１４の一部である。

【0021】

前述した座席用クッションパッド１０の製造方法の一例を説明する。成形型３０の上型３２に設けられた凹穴３２ａに、突出部１６を挿入して第１発泡成形体１２を上型３２に取り付ける（図６(ａ)参照）。成形型３０における上型３２と下型３４とを型閉じし（図６(ｂ)参照）、成形型３０の内部に形成されたキャビティ３０ａ内で発泡原料を発泡・硬化させることで、第２発泡成形体１４を第１発泡成形体１２に重ねて形成する（図６(ｃ)参照）。このとき、発泡原料の一部が、第１発泡成形体１２の孔部２０を通って、凹穴３２ａにおいて発泡・硬化することで、孔部２０に第２発泡成形体１４が充填されると共に、突出部１６の外面に沿って発泡体１８が形成される。これにより、第１発泡成形体１２で形成された突出部１６の外面に沿って発泡体１８が配置された座席用クッションパッド１０が得られる。

【0022】

図２に示すように、座席用クッションパッド１０は、左右の突起部１５を車体フレーム１００に当てることで位置決めして、車体床面１０２に取り付けられる。このとき、突起部１５において、突出部１６の外面に沿って配置された発泡体１８が、車体フレーム１００に当たる。

【0023】

突起部１５は、座席用クッションパッド１０における裏側の面から突出しているので、座席用クッションパッド１０を搬送するとき、座席用クッションパッド１０を車体に取り付けるときなどの取り扱いの各場面において、突起部１５をぶつけ易い。座席用クッションパッド１０において、突起部１５が、第１発泡成形体１２における裏側の面から突出する突出部１６と、第１発泡成形体１２で形成された突出部１６の外面に沿って配置された発泡体１８とで形成されている。このように、座席用クッションパッド１０の裏側の面から突出する突起部１５が、突出部１６及び発泡体１８を備えることで、突起部１５（突出部１６）を破損し難くすることができる。ここで、突出部１６を発泡体１８よりも硬質の第１発泡成形体１２で形成すると共に、突出部１６よりも柔らかい発泡体１８を突出部１６の外面に沿って配置すれば、突出部１６を発泡体１８で保護でき、突起部１５が衝突した際に発泡体１８で緩衝することができる。特に、発泡体１８が突出部１６を被覆する構成であることで、突出部１６に加わる衝撃を発泡体１８でより緩衝し易くなり、突出部１６（突起部１５）をより破損し難くすることができる。また、座席用クッションパッド１０を車体に取り付ける際に、突起部１５を車体フレーム１００に当てて位置決めし易い。

【0024】

座席用クッションパッド１０において、発泡体１８は、第１発泡成形体１２の表側に配置された第２発泡成形体１４に、第１発泡成形体１２の孔部２０を介して繋がる第２発泡成形体１４の一部である。このように、第２発泡成形体１４と突出部１６に沿って配置された発泡体１８とが繋がっているので、発泡体１８を突出部１６から外れ難くすることができる。また、第２発泡成形体１４を発泡成形する際に、突出部１６の外面に発泡体１８を発泡成形することができ、発泡体１８を簡単に形成することができる。

【0025】

（第２実施形態）
第１実施形態の座席用クッションパッド１０は、突出部１６の前後左右及び下面を発泡体１８で被覆したが、これに限らず、図７～図１０に示す第２実施形態の座席用クッションパッド４０のように、突出部１６の一部を発泡体１８で被覆するようにしてもよい。なお、第２実施形態の説明において、第１実施形態と同様の部材については第１実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。

【0026】

図７及び図１０に示すように、座席用クッションパッド４０は、突出部１６の外面のうちの一面に沿って配置された発泡体１８を備えている。発泡体１８は、突出部１６における左右方向外側の側面だけを被覆しており、突出部１６の左右方向内側の側面、前後の側面及び下面が露出している。座席用クッションパッド４０を車体に取り付ける際に、突起部１５における車体フレーム１００に当たる面に、発泡体１８が存在していることが好ましい。そして、第２実施形態の座席用クッションパッド４０であっても、第１実施形態と同様の作用効果を奏する。

【0027】

（変更例）
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施形態及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
（１）座席用クッションパッドとしては、自動車などの車両の用途に限らず、船舶や航空機などの他のものに用いてもよい。
（２）座席用クッションパッドとしては、座席の座面部分に限らず、背もたれ部分であってもよい。
（３）実施例の発泡体は、第２発泡成形体の一部であるが、これに限らず、発泡体が第２発泡成形体と別であってもよい。例えば、第１発泡成形体の突出部に、スラブウレタンなど第１発泡成形体よりも軟質の発泡体を貼り付けたり、巻き付けたりするなど、第２発泡成形体と別体のものを配置するようにしてもよい。

【符号の説明】

【0028】

１０・４０ 座席用クッションパッド，１２ 第１発泡成形体，
１４ 第２発泡成形体，１６ 突出部，１８ 発泡体，２０ 孔部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】