(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010953
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】吸着型搬送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
B25J15/06 M
B25J15/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113275
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】花木 幹生
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏子
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY36
3C707DS02
3C707FS01
3C707FT17
3C707FU01
3C707FU08
3C707HS14
(57)【要約】
【課題】ロック機構を小型化しつつ、吸着の際の摺動抵抗を低減できるとともにパーティクルの発生を抑制できる吸着型搬送装置を提供する。
【解決手段】吸着型搬送装置100は、隔壁部材15と、隔壁部材15の外面に沿って吸着部90の軸方向へ往復動可能な第1ピストン23と、第2内周面24bを有するロック部材24と、第2内周面24bと吸着部90の外面との間に挟持されることで、吸着部90の移動を制限するロック用鋼球28と、ロック用鋼球28を付勢する付勢部材29と、第1ピストン23の軸方向の他方側への移動に連動してロック用鋼球28を付勢部材29の付勢力に抗して軸方向の他方側に押圧する第2ピストン26と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の端部に物品を吸着可能なロッド状の吸着部と、
前記吸着部を往復動可能に支持するとともに、軸方向の一方側から前記吸着部の端部が突出するハウジングと、
前記吸着部の往復動の制限及び制限解除を可能とするロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記吸着部の外面から離間して当該吸着部を囲むとともに、前記ハウジングに保持された隔壁部材と、
前記ハウジングの内面と前記吸着部の外面との間に配置されるとともに、前記隔壁部材の外面に沿って前記ハウジングの軸方向へ往復動可能なピストンと、
前記ピストンの外面と前記ハウジングの内面との間をシールするとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かうエアの流れを許容する第1シールと、
前記ピストンの内面と前記隔壁部材の外面との間をシールするとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かうエアの流れを許容する第2シールと、
前記隔壁部材と前記ハウジングと前記ピストンとによって形成されるピストン室と、
前記ピストン室に連通する給排ポートと、
前記ピストンよりも前記ハウジングの軸方向における他方側に設けられ、前記吸着部の外面から離間して当該吸着部を囲むとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かって内径が小さくなる傾斜面を有するロック部材と、
前記傾斜面と前記吸着部の外面との間で往復動可能であり、前記傾斜面の内径が小さくなる方向に移動して前記傾斜面と前記吸着部の外面との間に挟持されることで、前記吸着部の往復動を制限する保持部材と、
前記保持部材を前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に付勢する付勢部材と、
前記ピストンよりも前記ハウジングの軸方向の他方側において、前記ロック部材と前記吸着部の外面との間に設けられるとともに、前記ハウジングの軸方向において前記ピストンと前記保持部材との間に設けられ、前記給排ポートを介した前記ピストン室へのエアの供給による、前記ハウジングの軸方向の他方側への前記ピストンの移動に連動して前記保持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記ハウジングの軸方向の他方側に移動させる連動部材と、
を有することを特徴とする吸着型搬送装置。
【請求項2】
前記ピストンを第1ピストンとし、前記ロック部材と前記吸着部の外面との間には、前記ハウジングの軸方向における前記第1ピストンと前記保持部材との間に位置する第2ピストンを備え、前記連動部材は前記第2ピストンである請求項1に記載の吸着型搬送装置。
【請求項3】
前記隔壁部材の内面と前記吸着部の外面との間に形成される間隙と連通する通路と、前記通路と連通するパーティクル排出ポートを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着型搬送装置。
【請求項4】
前記連動部材は、前記連動部材の内面及び外面で開口する連動部材孔を有し、前記連動部材孔には、前記連動部材の径方向に往復動可能に前記保持部材が収容され、前記パーティクル排出ポートは、前記連動部材の内面と前記吸着部の外面との間と、前記ピストンの内面と前記吸着部の外面との間と、前記間隙と、前記通路とを介して前記連動部材孔と連通することを特徴とする請求項3に記載の吸着型搬送装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、複数のハウジング形成材を一体化して形成されており、前記隔壁部材は、2つのハウジング形成材に挿通されている請求項1又は請求項2に記載の吸着型搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着型搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多種多様な表面形状の物品を保持できる保持装置が記載されている。保持装置は、対象物を吸着する複数の吸着部と、複数の吸着部を、それぞれ、吸着部が延びる方向に往復動可能に支持する支持部を有するシリンダと、支持部に対する吸着部の移動を制限することにより複数の吸着部を保持できるロック機構としての保持部と、を有する。
【0003】
支持部は、吸着部が挿通する挿通孔を有する。支持部は、パッキンを有する。パッキンは、吸着部と、挿通孔との間の間隙を閉塞する。保持部は、吸着部を側方から押圧して吸着部を支持部とともに挟持することで、支持部に対する吸着部の移動を制限する。保持装置は、複数の吸着部を対象物に倣わせた後、当該吸着部によって対象物を吸着するとともに、保持部で吸着部の移動を制限することで、対象物を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保持装置は、吸着した対象物を搬送する際に、吸着部の移動を制限する必要があるが、その吸着部の移動を制限するための保持部においては小型化が望まれる。
また、保持装置において、吸着部が支持部に対して往復動する際、吸着部とパッキンとの摺接によって摺動抵抗が発生するとともに、パーティクルが発生する虞がある。例えば、当該保持装置を電子基板の搬送に適用するにあたり、パーティクルの発生を抑制することが望まれるとともに、電子基板の変形抑制のために摺動抵抗の低減が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための吸着型搬送装置は、軸方向の端部に物品を吸着可能なロッド状の吸着部と、前記吸着部を往復動可能に支持するとともに、軸方向の一方側から前記吸着部の端部が突出するハウジングと、前記吸着部の往復動の制限及び制限解除を可能とするロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記吸着部の外面から離間して当該吸着部を囲むとともに、前記ハウジングに保持された隔壁部材と、前記ハウジングの内面と前記吸着部の外面との間に配置されるとともに、前記隔壁部材の外面に沿って前記ハウジングの軸方向へ往復動可能なピストンと、前記ピストンの外面と前記ハウジングの内面との間をシールするとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かうエアの流れを許容する第1シールと、前記ピストンの内面と前記隔壁部材の外面との間をシールするとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かうエアの流れを許容する第2シールと、前記隔壁部材と前記ハウジングと前記ピストンとによって形成されるピストン室と、前記ピストン室に連通する給排ポートと、前記ピストンよりも前記ハウジングの軸方向における他方側に設けられ、前記吸着部の外面から離間して当該吸着部を囲むとともに、前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に向かって内径が小さくなる傾斜面を有するロック部材と、前記傾斜面と前記吸着部の外面との間で往復動可能であり、前記傾斜面の内径が小さくなる方向に移動して前記傾斜面と前記吸着部の外面との間に挟持されることで、前記吸着部の往復動を制限する保持部材と、前記保持部材を前記ハウジングの軸方向の他方側から一方側に付勢する付勢部材と、前記ピストンよりも前記ハウジングの軸方向の他方側において、前記ロック部材と前記吸着部の外面との間に設けられるとともに、前記ハウジングの軸方向において前記ピストンと前記保持部材との間に設けられ、前記給排ポートを介した前記ピストン室へのエアの供給による、前記ハウジングの軸方向の他方側への前記ピストンの移動に連動して前記保持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記ハウジングの軸方向の他方側に移動させる連動部材と、を有することを要旨とする。
【0007】
上記吸着型搬送装置において、前記ピストンを第1ピストンとし、前記ロック部材と前記吸着部の外面との間には、前記ハウジングの軸方向における前記第1ピストンと前記保持部材との間に位置する第2ピストンを備え、前記連動部材は前記第2ピストンであってもよい。
【0008】
上記吸着型搬送装置において、前記隔壁部材の内面と前記吸着部の外面との間に形成される間隙と連通する通路と、前記通路と連通するパーティクル排出ポートを有してもよい。
【0009】
上記吸着型搬送装置において、前記連動部材は、前記連動部材の内面及び外面で開口する連動部材孔を有し、前記連動部材孔には、前記連動部材の径方向に往復動可能に前記保持部材が収容され、前記パーティクル排出ポートは、前記連動部材の内面と前記吸着部の外面との間と、前記ピストンの内面と前記吸着部の外面との間と、前記間隙と、前記通路とを介して前記連動部材孔と連通していてもよい。
【0010】
上記吸着型搬送装置において、前記ハウジングは、複数のハウジング形成材を一体化して形成されており、前記隔壁部材は、2つのハウジング形成材に挿通されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ロック機構を小型化しつつ、吸着の際の摺動抵抗を低減できるとともにパーティクルの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態における吸着型搬送装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ロック解除時のロック機構及び吸着部を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、ロック時におけるロック機構及び吸着部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、パーティクル排除機構の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、物品の表面形状に吸着部を倣わせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、吸着型搬送装置を具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
<吸着型搬送装置の全体像>
図1~
図4に示すように、吸着型搬送装置100は、長四角形ブロック状のハウジング80と、円筒形状の3本の吸着部90と、ロック機構200と、を備える。
【0014】
<吸着部>
各吸着部90は、円筒のロッド状である。各吸着部90は、アダプタ93と、第1吸着部形成部94と、復帰用ピストン95と、第2吸着部形成部96と、貫通孔付ボルト97と、を有する。第1吸着部形成部94と、復帰用ピストン95と、第2吸着部形成部96とは、貫通孔付ボルト97によって一体化されている。復帰用ピストン95は、第1吸着部形成部94と第2吸着部形成部96に挟持されている。復帰用ピストン95の外周面は、第1吸着部形成部94及び第2吸着部形成部96の外周面より、吸着部90の径方向に突出している。吸着部90の軸方向の両端部のうち、アダプタ93側の一方の端部を第1端部91とするとともに、貫通孔付ボルト97側の他方の端部を第2端部92とする。そして、吸着部90は、軸方向の一方の端部となるアダプタ93に物品Aを吸着可能である。
【0015】
復帰用ピストン95は、第3リップパッキン951を備える。第3リップパッキン951は、第1端部91から第2端部92に向かうエアの流れを許容する一方で、第2端部92から第1端部91に向かうエアの流れを阻止する。
【0016】
各吸着部90は、通路90aを画定する内周面90bを有する。通路90aは、第1端部91と第2端部92で開口するとともに、吸着部90を軸方向全体に亘って貫通している。通路90aの軸方向の第1端部91側は、アダプタ93の内部に連通している。
【0017】
<ハウジング>
ハウジング80は、吸着部90を往復動可能に支持する。ハウジング80は、第1ハウジング形成材10と、第2ハウジング形成材20と、第3ハウジング形成材30と、第4ハウジング形成材40と、第5ハウジング形成材50と、第6ハウジング形成材60と、を備える。第1ハウジング形成材10と、第2ハウジング形成材20と、第3ハウジング形成材30と、第4ハウジング形成材40と、第5ハウジング形成材50と、第6ハウジング形成材60とは、一つの方向に並んで一体化されている。第1~第6ハウジング形成材10,20,30,40,50,60の並ぶ方向は、ハウジング80の軸方向Zである。ハウジング80の軸方向Zは、吸着部90の軸方向と一致する。
【0018】
ハウジング80において、第1ハウジング形成材10の位置する端部を第1端部82とするとともに、第6ハウジング形成材60の位置する端部を第2端部83とする。また、ハウジング80は、3つの挿入孔81を画定する内周面81aを備える。3つの挿入孔81は、ハウジング80の一つの方向に並んで配置されている。ハウジング80の軸方向Zに直交する方向のうち、3つの挿入孔81の並ぶ方向を幅方向Wとする。
【0019】
内周面81aは、第1~第5ハウジング形成材10,20,30,40,50における挿入孔81を画定する内周面と、第6ハウジング形成材60における挿入孔81を画定する内面とによって形成される。
【0020】
各挿入孔81は、ハウジング80の軸方向Zに延びる。各挿入孔81は、互いに平行である。そして、各吸着部90は、第1~第6ハウジング形成材10,20,30,40,50,60、つまり挿入孔81に挿入されている。各吸着部90の第1端部91は、第1ハウジング形成材10から突出しているとともに、各吸着部90の第2端部92は、第6ハウジング形成材60に挿入されている。したがって、ハウジング80の軸方向Zの一方側から吸着部90の第1端部91が突出している。
【0021】
ハウジング80の第1ハウジング形成材10は、第1通路11を画定する第1内周面11aを備えるとともに、第2ハウジング形成材20は、第2通路21を画定する第2内周面21aを備える。ハウジング80の第4ハウジング形成材40は、第3通路41を画定する第3内周面41aを備えるとともに、第6ハウジング形成材60は、第4通路61を画定する第4内周面61aを備える。
【0022】
第1~第4通路11,21,41,61の各々は、ハウジング80の幅方向Wに延びるとともに、第1~第4通路11,21,41,61の軸方向の両端部は閉塞されている。各挿入孔81は、第1~第4通路11,21,41,61と連通している。ハウジング80は、第1ポート12と、第2ポート22と、第3ポート42と、第4ポート62と、を備える。パーティクル排出ポートとしての第1ポート12は、第1ハウジング形成材10に設けられるとともに、第1通路11に連通している。第2ポート22は、第2ハウジング形成材20に設けられるとともに、第2通路21に連通している。第3ポート42は、第4ハウジング形成材40に設けられるとともに、第3通路41に連通している。第4ポート62は、第6ハウジング形成材60に設けられるとともに、第4通路61に連通している。第1ポート12及び第4ポート62の各々は、図示していない管及び切換弁を通して負圧源に接続される。第2ポート22及び第3ポート42の各々は図示していない管及び切換弁を通して圧力源に接続される。図示していない外部の切換弁により、第1ポート12及び第4ポート62は、それぞれ連通する第1通路11及び第4通路61を介して、ハウジング80の内部に負圧を給排する。また、図示していない外部の切換弁により、第2ポート22及び第3ポート42は、それぞれ連通する第2通路21及び第3通路41を介して、ハウジング80の内部にエアを給排する。
【0023】
以下では、3つの挿入孔81のうち、1つの挿入孔81に着目して説明を行う。しかし、挿入孔81を画定する内周面81aが備える各部材は、挿入孔81の選択に依存しない。したがって、各挿入孔81に対して、同様の説明が成立する。
【0024】
ハウジング80は、第1軸受14を備える。第1軸受14は、挿入孔81を画定する内周面81aのうち、第1ハウジング形成材10によって形成された部分によって保持されている。また、ハウジング80は、第2軸受31を備える。第2軸受31は、挿入孔81の内周面81aのうち、第3ハウジング形成材30によって形成された部分に保持されている。
【0025】
ハウジング80は、スクレーパ13を備える。スクレーパ13は、挿入孔81の内周面81aのうち、第1ハウジング形成材10によって形成された部分に設けられるとともに、第1通路11より第1端部82側に配置される。スクレーパ13は、吸着部90の往復動の際に、内部で発生する異物が外部へ排出されるのを抑制する。
【0026】
ハウジング80は、第2ハウジング形成材20の内周面において、後述するロック機構200を形成するための第1内周面20aと、第2内周面20bと、第3内周面20cとを備える。第1内周面20aは、第2ハウジング形成材20において、軸方向Zの第1端部82側に位置する。第2内周面20bは、第2ハウジング形成材20において、軸方向Zにおける第1内周面20aよりも第2端部83側に位置するとともに、第1内周面20aよりも大きい内径を有する。第3内周面20cは、第2ハウジング形成材20において、軸方向Zにおける第2内周面20bよりも第2端部83側に位置するとともに、第2内周面20bの内径より大きい内径を有する。
【0027】
第3ハウジング形成材30の内周面は、第1内周面30aと、第2内周面30bと、第3内周面30cと、によって形成される。第1内周面30aは、第3ハウジング形成材30の内周面において、第1端部82側に位置する。第1内周面30aは、第2軸受31の外周面と接する。第2内周面30bは、第1内周面30aよりも第2端部83側に位置する。第2内周面30bの内径は、第2軸受31の内径よりも大きく、且つ、第2軸受31の外径よりも小さい。第3内周面30cは、第2内周面30bよりも第2端部83側に位置する。第3内周面30cの内径は、第2軸受31の外径よりも大きい。
【0028】
第4ハウジング形成材40の内周面は、第1内周面40aと、第2内周面40bと、によって形成される。第1内周面40aは、第4ハウジング形成材40の内周面のうち、第3通路41よりも第1端部82側に位置するとともに、第1内周面40aが画定する挿入孔81は、第3通路41と連通している。第1内周面40aの内径は、第3ハウジング形成材30が有する第3内周面30cの内径と同じである。第2内周面40bの内径は、第1内周面40aの内径より小さい。
【0029】
また、ハウジング80は、ガイド部材32を備える。ガイド部材32の軸方向は、軸方向Zと一致する。ガイド部材32は、第2軸受31より、第2端部83側に位置する。ガイド部材32の外周面は、第3ハウジング形成材30が有する第3内周面30cと、第4ハウジング形成材40が有する第1内周面40aとに接する。ガイド部材32は、第3ハウジング形成材30及び第4ハウジング形成材40に嵌合されている。ガイド部材32は、第2軸受31の内径よりも大きな内径を有する。ガイド部材32は、第3通路41と連通する。
【0030】
第4ハウジング形成材40は第4リップパッキン43を備える。第4リップパッキン43は、第2端部83側から、第1端部82側に向かうエアの流れを許容する。
第1パッキン71は、第1ハウジング形成材10と第2ハウジング形成材20との間をシールする。第2パッキン72は、第3ハウジング形成材30と第4ハウジング形成材40との間をシールする。第3パッキン73は、第4ハウジング形成材40と第5ハウジング形成材50との間をシールする。第4パッキン74は、第5ハウジング形成材50と第6ハウジング形成材60との間をシールする。
【0031】
<ロック機構の構成>
図2に示すように、ロック機構200は、各吸着部90に対して設けられる。各ロック機構200は、吸着部90の往復動の制限及び制限解除を可能とする。
【0032】
各ロック機構200は、隔壁部材15と、第1ピストン23と、ロック部材24と、第2ピストン26と、ロック用鋼球28と、付勢部材29と、を有する。
隔壁部材15は、第1軸受14よりも第2端部83側に位置するとともに、第1軸受14と接する。隔壁部材15は、円筒状である。隔壁部材15は、第1軸受14の内径よりも大きな内径を有するとともに、第1軸受14の外径と同じ外径を有する。また、隔壁部材15は、吸着部90の外径よりも大きな内径を有する。これにより、隔壁部材15は、吸着部90の外面から離間して吸着部90の軸方向の一部を囲んでいる。隔壁部材15の軸方向は、軸方向Zと一致する。隔壁部材15の外周面のうち、第1端部82側の一部は、挿入孔81を画定する内周面81aのうち、第1ハウジング形成材10によって形成された部分と接する。具体的には、隔壁部材15は、第1ハウジング形成材10に嵌合されている。これにより、隔壁部材15は、ハウジング80に保持されている。また、隔壁部材15は、第2ハウジング形成材20の内側に挿入されている。これにより、隔壁部材15は、第1ハウジング形成材10と第2ハウジング形成材20の軸心の位置決めを行っている。
【0033】
隔壁部材15の外周面において、第1ハウジング形成材10と第2ハウジング形成材20と接しない部分を非保持部15aとする。この非保持部15aにおける軸方向の長さは、第2ハウジング形成材20の第2内周面20bにおける軸方向の長さよりも小さい。なお、非保持部15aにおける軸方向の長さは、第2ハウジング形成材20の第2内周面20bにおける軸方向の長さよりも小さくなくてもよい。
【0034】
ピストンとしての第1ピストン23は、ハウジング80の内面と、吸着部90の外面との間に配置されている。第1ピストン23は、具体的には、第2ハウジング形成材20の第2内周面20bの内側に配置されている。第1ピストン23は、隔壁部材15の外周面に沿って、吸着部90の軸方向へ往復動可能である。第1ピストン23の軸方向は、軸方向Zと一致する。
【0035】
第1ピストン23は、第1内周面23aと、第2内周面23bと、外周面23cと、を有する。第1内周面23aは、第1ピストン23の内周面のうち、第1端部82側に位置する。第2内周面23bは、第1ピストン23の内周面のうち、第2端部83側に位置する。第2内周面23bの軸方向の長さは、第1ピストン23の軸方向の全長が、第2ハウジング形成材20の第2内周面20bの軸方向の長さより小さくなるように決定される。
【0036】
第1内周面23aの軸方向の長さは、隔壁部材15の外周面のうち、非保持部15aにおける軸方向の長さよりも小さい。第1内周面23aは、隔壁部材15の非保持部15aでの外周面と対面する。第2内周面23bは、隔壁部材15の外径よりも小さい内径を有する。第2内周面23bは、第1内周面23aの内径よりも小さい内径を有する。つまり、第1ピストン23は、第1内周面23aが、隔壁部材15の外周面のうち、非保持部15aと対面するとともに、第2内周面23bが非保持部15aよりも第2端部83側に位置するように設けられる。外周面23cは、第2ハウジング形成材20の第2内周面20bと対面する。
【0037】
第1ピストン23の外周面23cは、第1凹状部23dを形成する面を有する。第1内周面23aは、隔壁部材15の外周面と対面する面内に、第2凹状部23eを形成する面を有する。
【0038】
第1ピストン23は、第1リップパッキン231と第2リップパッキン232とを備える。第1リップパッキン231は、第1凹状部23dに装着されている。第1リップパッキン231は、第1ピストン23の外周面23cと、ハウジング80の内面としての第2ハウジング形成材20の第2内周面23bとの間をシールするとともに、ハウジング80の第2端部83側から第1端部82側に向かうエアの流れを許容する第1シールである。第2リップパッキン232は、第2凹状部23eに装着されている。第2リップパッキン232は、第1ピストン23の第1内周面23aと隔壁部材15の外周面との間をシールするとともに、ハウジング80の第2端部83側から第1端部82側に向かうエアの流れを許容する第2シールである。第1リップパッキン231と第2リップパッキン232は、第1ピストン23とともに往復動する。
【0039】
第1ピストン23は、第2ハウジング形成材20と、隔壁部材15と、によって第1ピストン室25を形成する。第1ピストン室25は、第1ピストン23よりも第1端部82側に位置するとともに、第2通路21と連通する。また、第1ピストン室25は、第2通路21を介して、第2ポート22と連通する。したがって、第2ポート22は、第1ピストン室25に連通する給排ポートである。隔壁部材15の内面と吸着部90の外面との間に形成される間隙15bは、第1軸受14を介して第1通路11と連通する。そして、第1ポート12は、第1通路11と連通する。したがって、吸着型搬送装置100は、隔壁部材15の内面と吸着部90の外面との間に形成される間隙15bと連通する第1通路11を有するとともに、第1通路11と連通するパーティクル排出ポートとしての第1ポート12を有する。隔壁部材15の内面と吸着部90の外面との間に形成される間隙15bと第1ピストン室25とは、第2リップパッキン232と隔壁部材15にて隔離されている。
【0040】
ロック部材24は、第2ハウジング形成材20の第3内周面20cの内側に配置されている。詳細には、ロック部材24は、第1ピストン23よりも軸方向における第2端部83側に設けられている。ロック部材24は、第2ハウジング形成材20によって支持される。ロック部材24の軸方向は、軸方向Zと一致する。
【0041】
ロック部材24の外周面24dは、第2ハウジング形成材20の第3内周面20cと接する。ロック部材24は、第2ハウジング形成材20の内側に嵌合されている。ロック部材24の内周面は、第1内周面24aと、第2内周面24bと、第3内周面24cとによって形成される。第1内周面24aは、ロック部材24の内周面のうち第1端部82側に位置する。第1内周面24aでの内径は、ロック部材24の内径のなかで最も小さい。第3内周面24cは、ロック部材24の内周面のうち第2端部83側に位置する。第3内周面24cの内径は、ロック部材24の内径のなかで最も大きい。第2内周面24bは、第1内周面24aと第3内周面24cの間に位置する。第2内周面24bは、第1内周面24aと、第3内周面24cとを接続する斜面を有する。つまり、第2内周面24bは、ハウジング80の軸方向Zの第1端部82から第2端部83に向かって内径が大きくなる形状を有する。言い換えると、ロック部材24は、ハウジング80の軸方向Zの第2端部83側から第1端部82側に向かって内径が小さくなる傾斜面を有する。また、ロック部材24の内周面は、吸着部90の外面から離間して当該吸着部90を囲んでいる。
【0042】
連動部材としての第2ピストン26は、第2ハウジング形成材20において、第1ピストン23よりも第2端部83側に配置されるとともに、ロック部材24よりも内側に配置されている。第2ピストン26の軸方向は、軸方向Zと一致する。
【0043】
第2ピストン26は、挿通孔26aを画定する内周面を有する。第2ピストン26は、当該第2ピストン26の径方向に4つ(
図2と
図3では2つを図示)の連動部材孔26dを画定する内面を有する。連動部材孔26dは、第2ピストン26の径方向に延びるとともに、挿通孔26aと連通する。連動部材孔26dは、第2ピストン26の内面及び外面で開口する。4つの連動部材孔26dは、第2ピストン26の軸に対して直交するとともに、挿通孔26aを囲むように設けられる。4つの連動部材孔26dは、第2ピストン26の周方向に隣り合わない連動部材孔26d同士が、第2ピストン26の径方向に対向するように配置することが好ましい。連動部材孔26dは、第2ピストン26における第2端部83側に設けられる。第2ピストン26の挿通孔26aを画定する内周面の内径は、第1ピストン23の第2内周面23bでの内径と同じである。第2ピストン26は、第1ピストン23の第2端部83側で、且つ、第2ピストン26の第1端部82側の面が第1ピストン23の第2端部83側の面と接するように設けられる。第2ピストン26は、第1ピストン23と連動する。
【0044】
第2ピストン26は、吸着部90の外面とロック部材24の第1内周面24aとの間で、各周面に摺接可能に設けられる。第2ピストン26は、第1ピストン23よりもハウジング80の軸方向Zの第2端部83側において、ロック部材24と吸着部90の外面との間に設けられるとともに、軸方向Zにおいて第1ピストン23と第3ハウジング形成材30との間に設けられている。第2ピストン26の軸方向への長さは、ロック部材24の第1内周面24aの軸方向への長さより長い。ロック部材24の第1内周面24aと、第2内周面24bと、第3内周面24cとは、ロック用挿通孔27を画定する。ロック用挿通孔27は、第2ピストン26の内周面と吸着部90の外面との間と、第1ピストン23の第2内周面23bと吸着部90の外面との間と、隔壁部材15の内周面と吸着部90の外面との間の間隙15bと、第1軸受14と、を介して、第1通路11と連通する。また、ロック用挿通孔27は、第2軸受31と、第3ハウジング形成材30の第2内周面30bとを介して、ガイド部材32の内周面が画定する復帰用ピストン室33と連通する。
【0045】
付勢部材29は、ばね製である。付勢部材29の第1端部は、第2ピストン26に連結されるとともに、付勢部材29の第2端部は、第2軸受31に連結されている。付勢部材29は、第2ピストン26を、ハウジング80の軸方向Zの第2端部83側から第1端部82側に付勢する。
【0046】
保持部材としての4つのロック用鋼球28は、第2ピストン26が有する連動部材孔26dの径方向の長さよりも大きな直径を有する鋼球である。各ロック用鋼球28は、第2ピストン26に設けられる4つの連動部材孔26dに保持されている。4つのロック用鋼球28は、連動部材孔26dにおいて、径方向に往復動可能である。
【0047】
4つのロック用鋼球28は、ロック部材24の第2内周面24bの内側に配置されている。
そして、ロック用鋼球28は、第2ピストン26と一体に軸方向Zへ往復動可能である。この第2ピストン26は、付勢部材29によって、ハウジング80の第2端部83側から第1端部82側に付勢されている。このため、ロック用鋼球28も、付勢部材29によって、ハウジング80の第2端部83側から第1端部82側に付勢されている。
【0048】
<吸着部とハウジングとの位置関係>
図1に示すように、各吸着部90は、各挿入孔81に挿入されている。各吸着部90は、吸着部90の第1端部91がハウジング80の第1端部82側に位置するとともに、第2端部92がハウジング80の第2端部83側に位置するように設けられる。
【0049】
各吸着部90の第1吸着部形成部94は、第1軸受14と、第2軸受31と、に挿通されている。各吸着部90は、第1軸受14及び第2軸受31によって往復動可能にハウジング80に支持されている。また、各吸着部90の第1吸着部形成部94は、スクレーパ13と、隔壁部材15と、第1ピストン23と、ロック部材24と、第2ピストン26と、に挿通されている。各第1吸着部形成部94の第1端部91側の一部は、ハウジング80から突出するとともに、アダプタ93を備える。第1吸着部形成部94の端部のうち、第2端部92側に位置する端部は、ガイド部材32の挿通孔32dに挿通されている。
【0050】
各吸着部90が備える復帰用ピストン95は、ガイド部材32の内側に収容されている。復帰用ピストン95の外周面は、ガイド部材32の内周面と対面する。復帰用ピストン95は、ガイド部材32の内周面に沿って往復動可能である。
【0051】
復帰用ピストン95は、ハウジング80としての第3ハウジング形成材30の内面及び第4ハウジング形成材40の内面と吸着部90の外面との間に形成された復帰用ピストン室33に収容されている。また、復帰用ピストン室33の第1端部91側は、第2軸受31と、ロック部材24と、隔壁部材15と、第1軸受14と、を介して、第1通路11と連通する。そして、第1通路11は、パーティクル排出ポートとしての第1ポート12と連通している。したがって、第1ポート12は、復帰用ピストン室33よりもハウジング80の軸方向Zの一方側におけるハウジング80の内面と吸着部90の間と、第2ピストン26及び第1ピストン23と吸着部90の外面との間と、間隙15bと、第1通路11とを介して復帰用ピストン室33と連通している。また、復帰用ピストン室33よりもハウジング80の軸方向Zの一方側におけるハウジング80の内面と吸着部90の間と、第1ピストン23及び第2ピストン26と吸着部90の外面との間は、第2軸受31を介して連通している。
【0052】
また、復帰用ピストン室33の第2端部92側は、第3通路41を介して第3ポート42に連通している。第3ポート42は、復帰用ピストン室33に連通する復帰用ポートである。
【0053】
各吸着部90が備える第2吸着部形成部96は、第4ハウジング形成材40と、第4リップパッキン43と、第5ハウジング形成材50と、第6ハウジング形成材60と、に挿通されている。第2吸着部形成部96は、第2端部92側において、ハウジング80の挿入孔81のうち、第5ハウジング形成材50と第6ハウジング形成材60の両内周面によって画定される部分において往復動可能である。
【0054】
各吸着部90が備える貫通孔付ボルト97において、貫通孔付ボルト97の内周面が画定する挿通孔97aは、第4通路61と連通する。貫通孔付ボルト97の内周面が画定する挿通孔97aは、各吸着部90の内周面90bが画定する通路90aを形成する。これにより、各吸着部90の内周面90bが画定する通路90aは、第4通路61と連通する。
【0055】
<吸着型搬送装置の動作及び作用>
図1~
図6を用いて、吸着型搬送装置100の動作及び作用を説明する。
図5に示すように、吸着型搬送装置100と物品Aとは、初期位置を取る。
【0056】
初期位置は、吸着型搬送装置100を、物品Aから軸方向Zに沿って上方に離した位置である。物品Aは、3本の吸着部90のアダプタ93の下端面と対向する。
初期位置において、図示しない負圧源に接続された切換弁の駆動により、第1ポート12及び第1通路11を介して、ロック用挿通孔27と、復帰用ピストン室33からエアがハウジング80の外部に排出されている。
【0057】
初期位置において、図示しない圧力源に接続された切換弁の駆動により、第2ポート22及び第2通路21を介して、第1ピストン室25にエアが供給されている。第1リップパッキン231と第2リップパッキン232は、第1ピストン室25から第2端部83側に向かうエアの流れを阻止しているため、第1ピストン室25は、加圧されている。
【0058】
図2に示すように、第1ピストン室25に対する加圧により、第1ピストン23と、第1ピストン23と連動する第2ピストン26を第1端部82から第2端部83に向かう方向に移動させた状態を維持する。このとき、第1ピストン23の第2リップパッキン232は、隔壁部材15の外周面に摺動する。第2ピストン26が保持する各ロック用鋼球28は、ロック部材24の第2内周面24bから第3内周面24cが画定する孔内に配置される。初期位置において、各ロック用鋼球28は、挿入孔81の径方向に移動可能であるとともに、吸着部90から径方向に離れている。つまり、各吸着部90は、ハウジング80に対して、軸方向Zに沿った往復動を制限されていない。
【0059】
初期位置において、図示しない圧力源に接続された切換弁の駆動により、第3ポート42を介して、第3通路41にエアが供給されている。第3リップパッキン951は、復帰用ピストン室33から第1端部91側に向かうエアの流れを阻止している。復帰用ピストン95は、ガイド部材32によって、ハウジング80の軸方向Zの第2端部83側から第1端部82側に向かう方向に移動するようにガイドされる。
【0060】
初期位置において、復帰用ピストン95の第1端部91側の端部は、ガイド部材32の第1端部91側の端部と、軸方向において一致している。つまり、初期位置において、復帰用ピストン95は、ガイド部材32の内周面において、第3通路41から最も離れた場所に位置する。初期位置において、各吸着部90は、ハウジング80に対して、第1端部82から第2端部83に向かう移動が可能である。
【0061】
初期位置において、第4ポート62に対する負圧の給排を行っていない。
吸着型搬送装置100は、物品Aを吸着するとき、初期位置から動作する。このとき、図示しない圧力源に接続された切換弁の駆動により、第3ポート42からエアを排出する。すると、復帰用ピストン室33に対する減圧により、復帰用ピストン95は、ガイド部材32によって、ハウジング80の軸方向Zの第1端部82側から第2端部83側に向かう方向への移動が可能になる。これにより、ハウジング80に対し、吸着部90が移動可能になる。なお、第1ポート12には負圧が供給されるとともに、第2ポート22にはエアが供給された状態が維持されている。
【0062】
吸着型搬送装置100を下方に移動させて、物品Aにアダプタ93を接近させる。
図6に示すように、全てのアダプタ93に対して物品Aの表面が接触したときに、吸着型搬送装置100は、下方への移動を停止する。吸着型搬送装置100が下方に移動する過程において、物品Aの表面に接触した吸着部90は、ハウジング80に対して、第1端部82から第2端部83に向かって移動する。この吸着部90の移動の際、吸着部90は、隔壁部材15の内周面から離間した状態で移動するため、吸着部90の外周側の第1ピストン23の第2リップパッキン232と吸着部90とが摺動しない。
【0063】
すべてのアダプタ93が物品Aの表面に接触した状態において、3本の吸着部90が幅方向Wに形成する凹凸形状は、物品Aの表面形状に倣う。
各吸着部90が物品Aの表面に対して接触した状態において、図示しない負圧源に接続された切換弁を駆動させて第4ポート62及び第4通路61を介して、各吸着部90の通路90aにおける負圧を、ハウジング80の外部に排出して通路90aを減圧する。すると、各吸着部90は、物品Aを第1端部91に吸着する。
【0064】
各吸着部90が、物品Aを吸着した状態において、図示しない圧力源に接続された切換弁を駆動させて、第2ポート22及び第2通路21を介して、第1ピストン室25のエアをハウジング80の外部に排出する。なお、第3ポート42は、大気開放されている。すると、第1ピストン室25が減圧されるため、第1ピストン23は、当該第1ピストン23の自重に加え、第2ピストン26の自重と、付勢部材29の付勢力により第2端部83から第1端部82に向かう方向に移動する。このとき、第1ピストン23の第2リップパッキン232は、隔壁部材15の外周面に対して摺動する。
【0065】
第2ピストン26は、第1ピストン23に連動するため、第2端部83から第1端部82に向かう方向に移動する。第2ピストン26が移動することによって、各ロック用鋼球28は、ロック部材24の内周面に沿って第2端部83から第1端部82に向かう方向に移動する。各ロック用鋼球28がロック部材24の第2内周面24bに沿って移動するとき、各ロック用鋼球28は、連動部材孔26dの内部を第2ピストン26の径方向、且つ、対応する吸着部90に接近する方向に移動する。第2ピストン26が移動する過程において、ロック用鋼球28は、対応する吸着部90の外面と、ロック部材24の第2内周面24bに摺接する。
【0066】
図3に示すように、各ロック用鋼球28は、対応する吸着部90の外面とロック部材24の第2内周面24bとの間に挟持される。これにより、ハウジング80に対する各吸着部90の往復動が制限される。つまり、吸着部90がロックされる。その結果、吸着型搬送装置100は、各吸着部90を介して、物品Aを保持することができる。したがって、ロック用鋼球28は、傾斜面としての第2内周面24bと吸着部90の外面との間に挟持されることで、吸着部90の往復動を制限する保持部材である。
【0067】
各吸着部90が物品Aを保持した状態において、第2ポート22は、大気開放されている。このため、第1ピストン23によるロック解除は行われない。
アダプタ93が物品Aの表面に接触した状態において、吸着型搬送装置100が各吸着部90を介して物品Aを保持する動作は、吸着型搬送装置100が各吸着部90に対して物品Aを吸着する動作よりも前に行ってもよい。
【0068】
吸着型搬送装置100は、物品Aを保持しつつ、例えばハウジング80の第2端部83の外部に取り付けられる、図示していないアーム等によって、物品Aを初期位置から異なる場所に搬送する。
【0069】
物品Aの吸着を解除する際、吸着型搬送装置100は、第4ポート62及び第4通路61を介して、各吸着部90の通路90aから負圧を大気開放すると、物品Aの吸着を解除することができる。
【0070】
物品Aの吸着を解除した後、吸着部90のロックが解除される。吸着型搬送装置100は、第2ポート22及び第2通路21を介して、第1ピストン室25にエアを供給することによって、第1ピストン室25を加圧する。すると、第1ピストン23は、付勢部材29の付勢力に抗して第1端部82から第2端部83に向かう方向に移動する。このとき、第1ピストン23の第2リップパッキン232は、隔壁部材15の外周面に対して摺動する。第2ピストン26は、第1ピストン23と連動することにより、第1端部82から第2端部83に向かう方向に移動する。各ロック用鋼球28は、第2ピストン26とともに、第1端部82から第2端部83に向かう方向に移動する。第2ピストン26の移動に伴って、各ロック用鋼球28は、第1内周面24a、もしくは、第2内周面24bの内側に移動する。各ロック用鋼球28は、第2ピストン26の径方向に往復動可能となる。各ロック用鋼球28は、各ロック用鋼球28が第2ピストン26の径方向に往復動可能となる位置において、対応する吸着部90の外面から離れる。これにより、各吸着部90は、ハウジング80に対して、軸方向Zに往復動可能となる。つまり、ロック機構200による吸着部90のロックが解除される。
【0071】
アダプタ93が物品Aの表面に接触した状態において、吸着型搬送装置100が、各吸着部90を、ハウジング80に対して往復動可能とする動作は、吸着型搬送装置100が各吸着部90に対する物品Aの吸着を解除する動作よりも前に行ってもよい。
【0072】
吸着型搬送装置100が、物品Aから、軸方向Zに離れたとき、吸着型搬送装置100は、図示しない圧力源に接続された切換弁の駆動により、第3ポート42から、第3通路41を介して、ガイド部材32の内周面が画定する挿通孔32dにエアを供給する。第3ポート42から供給されるエアは、復帰用ピストン95を、第2端部83から第1端部82に向かう方向に移動させる。その結果、吸着型搬送装置100は、物品Aの表面形状に吸着部90を倣わせる過程で生じた各吸着部90のハウジング80に対する幅方向Wにおける凹凸形状を解消するとともに、各吸着部90を、初期位置における状態に復帰させる。
【0073】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)吸着型搬送装置100におけるロック機構200を形成する第1ピストン23と、ロック部材24と、第2ピストン26と、は、物品Aの吸着と保持を行う各吸着部90の軸方向、ひいてはハウジング80の軸方向Zに配置されている。そして、ロック機構200は、各部材の軸方向Zへの移動によって吸着部90の往復動を制限する。例えば、各吸着部90に対する径方向への移動によって吸着部90の往復動を制限する場合と比べて、ロック機構200を小型化できるため、吸着型搬送装置100の小型化が可能となる。
【0074】
(2)ロック機構200は、各吸着部90の往復動の制限を解除するために、第1ピストン23を第1端部82側から第2端部83側へ移動させる。ロック機構200は、隔壁部材15を備えるとともに、第1ピストン23を隔壁部材15の外側にて各吸着部90から離れた位置に備える。第1ピストン23が、各吸着部90から離れて隔壁部材15の外側に位置するため、ロック機構200は、第1ピストン23の往復動に伴う摺動抵抗を、吸着部90を介して物品Aに加えない。したがって、吸着型搬送装置100は、各吸着部90の往復動を制限するとき、及び、制限を解除するときに、物品Aに対して力を加えない。また、吸着型搬送装置100は、第1ピストン23と、第2ピストン26とを各吸着部90から離れた位置に備える。したがって、吸着型搬送装置100は、各吸着部90の往復動を制限するとき、及び、制限を解除するときに、各吸着部90の外面におけるパーティクルの発生を低減する。
【0075】
(3)ロック機構200は、ロック部材24の第2内周面24bと、4つのロック用鋼球28により物品Aを吸着した吸着部90の往復動を制限する。そのため、物品Aによる荷重は、各吸着部90を介して、4つのロック用鋼球28の各々を、ロック部材24の第2内周面24bに沿って、内径が小さくなる方向に移動させる。その結果、各吸着部90に対応する4つのロック用鋼球28は、物品Aの荷重に応じた力で、各吸着部90の往復動を制限できる。
【0076】
(4)各ロック用鋼球28は、第2ピストン26を介して、付勢部材29により、第2端部83から第1端部82に向かって付勢されている。各吸着部90の軸方向が、重力の方向と一致しない場合であっても、第1ピストン室25が加圧されていない限り、各ロック用鋼球28は、ロック部材24の第2内周面24bのうち、内径が小さくなる方向に移動できる。したがって、吸着型搬送装置100は、各吸着部90の軸方向が、重力の方向と一致しない場合であっても、物品Aを吸着した各吸着部90の往復動を制限できる。
【0077】
(5)ロック機構200は、4つのロック用鋼球28を用いて、各吸着部90の往復動を制限する。各吸着部90の往復動を制限するときに、各吸着部90に摺接する面積は、各ロック用鋼球28の球面と、各吸着部90の外面が接する面に限られる。その結果、各吸着部90と、それぞれに対応するロック機構200が摺接する面積は低減する。
【0078】
(6)ロック用挿通孔27において、各吸着部90とロック用鋼球28は摺接する。また、ガイド部材32の内周面と、復帰用ピストン95の外周面が摺接する。さらに、第2軸受31に対して吸着部90が摺接する。加えて、第2ピストン26は、ロック部材24に対して摺接する。そして、復帰用ピストン室33と第1ポート12とは、第3ハウジング形成材30の第2内周面30bと吸着部90の外面との間の隙間と、ロック用挿通孔27と、間隙15bと、第1通路11とを介して連通する。このため、これらの摺接によって発生したパーティクルは、第1通路11及び第1ポート12を介してハウジング80の外に排出できる。このため、第3リップパッキン951と吸着部90の外面との間の隙間で発生するパーティクルが物品Aに到達する前に排除することができる。
【0079】
(7)隔壁部材15の内径側の吸着部90との間隙15bを排出路として構成するとともに、間隙15bを第1通路11及び第1ポート12に連通し、さらに、間隙15bを、第2ピストン26の内面と吸着部90の外面との間と、第1ピストン23の内面と吸着部90の外面との間を介してロック用挿通孔27に連通した。隔壁部材15の内径側と吸着部90との間隙15bを排出路として利用することで、排出路を別途設けることによる吸着型搬送装置100の大型化を抑制することができる。
【0080】
(8)隔壁部材15は、第1ハウジング形成材10と第2ハウジング形成材20の軸心の位置決めを行う。隔壁部材15の用途を複数持たせることで、吸着型搬送装置100の構造部品点数が削減されるとともに、吸着型搬送装置100の大型化を抑制することができる。
【0081】
(9)物品Aの形状に倣うために、ハウジング80に対して移動した吸着部90は、第3ポート42から供給されるエアにより、各吸着部90が備える復帰用ピストン95とともに、初期位置に復帰する。このとき、復帰用ピストン95は、ガイド部材32によって軸方向Zへ移動するように案内される。このため、各吸着部90の軸方向が、重力の方向と一致しない場合であっても、第3ポート42から供給されるエアと、復帰用ピストン95とによって、各吸着部90を初期位置に復帰することができる。したがって、吸着型搬送装置100は、各吸着部90の軸方向が、重力の方向と一致しない状況で使用されても、各吸着部90を初期位置に復帰させることができる。
【0082】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
〇実施形態において、各吸着部90は、アダプタ93を備えなくてもよい。
【0083】
〇実施形態において、吸着部90は、第1吸着部形成部94と、復帰用ピストン95と、第2吸着部形成部96と、から形成されていなくてもよい。例えば、吸着部90は、一本の金属材を加工して形成されていてもよい。
【0084】
○ガイド部材32は無くてもよい。この場合、復帰用ピストン95は、ハウジング80の内周面に対して摺動する。
○第1ポート12は無くてもよい。
【0085】
○第2ピストン26は無くてもよい。この場合、第1ピストン23には、第2ピストン26の変わりにロック用鋼球28を押圧する押圧部が一体に設けられる。
〇実施形態において、ハウジング80が備えるスクレーパ13は、用いなくてもよい。
【0086】
〇実施形態において、ロック部材24は、第1内周面24aと、第2内周面24bと、第3内周面24cとを備えずに、第2端部83から第1端部82に向かう方向に単調に内径が小さくなる単一の内周面を備えてもよい。
【0087】
〇実施形態において、ロック部材24によって傾斜面を設けずに、第2ハウジング形成材20の第3内周面20cに、ロック部材24の内周面と同様の形状を有する傾斜面を設けてもよい。
【0088】
〇実施形態において、付勢部材29は、第2ピストン26を、第2端部83から第1端部82に向かう方向に付勢する、ばね以外の弾性材料としてもよい。
〇実施形態において、連動部材孔26dを画定する内周面は、径方向に内径が大きくなってもよい。
【0089】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記吸着部と一体に往復動可能であるとともに、前記連動部材よりも前記軸方向の他方側に設けられた復帰用ピストンと、前記ハウジングの内面と前記吸着部の外面との間に形成され、前記復帰用ピストンを収容する復帰用ピストン室と、前記復帰用ピストン室に連通する復帰用ポートと、を有することを特徴とする吸着型搬送装置。
【0090】
(ロ)前記パーティクル排出ポートは、前記復帰用ピストン室よりも前記ハウジングの軸方向の一方側における前記ハウジングの内面と前記吸着部の間と、前記第1ピストン及び前記第2ピストンと前記吸着部の外面との間と、前記間隙と、前記通路とを介して前記復帰用ピストン室と連通することを特徴とする(イ)に記載の吸着型搬送装置。
【0091】
(ハ)前記吸着部は、前記ハウジングの軸方向における前記復帰用ピストンよりも前記ハウジングの軸方向の一方側かつ、前記第2ピストンよりも前記ハウジングの軸方向の他方側において軸受を介して前記ハウジングに支持されており、前記復帰用ピストン室よりも前記ハウジングの軸方向の一方側における前記ハウジングの内面と前記吸着部の間と、前記第1ピストン及び前記第2ピストンと前記吸着部の外面との間が前記軸受を介して連通していることを特徴とする(ロ)に記載の吸着型搬送装置。
【符号の説明】
【0092】
11…通路としての第1通路、12…パーティクル排出ポートとしての第1ポート、15…隔壁部材、15b…間隙、10~60…第1~第6ハウジング形成材、22…給排ポートとしての第2ポート、23…ピストンとしての第1ピストン、24…ロック部材、24b…傾斜面としての第2内周面24b、25…ピストン室としての第1ピストン室、26…連動部材としての第2ピストン、26d…連動部材孔、28…保持部材としてのロック用鋼球、29…付勢部材、80…ハウジング、90…吸着部、100…吸着型搬送装置、200…ロック機構、231…第1シールとしての第1リップパッキン、232…第2シールとしての第2リップパッキン。