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2025-109803光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置
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  • -光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025109803
(43)【公開日】2025-07-25
(54)【発明の名称】光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20250717BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250717BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20250717BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20250717BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20250717BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250717BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20250717BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20250717BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/30
G02B5/28
H05B33/14 Z
H10K50/86
H10K59/10
B32B7/027
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025078582
(22)【出願日】2025-05-09
(62)【分割の表示】P 2022508394の分割
【原出願日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020046690
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 崇尚
(72)【発明者】
【氏名】堀井 篤
(72)【発明者】
【氏名】坂井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】磯嶋 征一
(57)【要約】
【課題】高温環境下において視認性の低下を抑制し得る、光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体であって、前記光学積層体は、プラスチックフィルム上に金属酸化物を含む層を有し、前記プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率が0.27以上0.75以下である、光学積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学積層体であって、
前記光学積層体は、プラスチックフィルム上に金属酸化物を含む層を有し、
前記プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率が0.27以上0.75以下である、光学積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置及び有機EL表示装置等の画像表示装置の用途が拡大しており、スマートフォン、カーナビゲーション、テレビ、モニター及びデジタルカメラ等に利用されている。
【0003】
画像表示装置の中で、カーナビゲーションは自動車のダッシュボードに設置される場合が多い。また、スマートフォン等の携帯型の画像表示装置も自動車の中に持ち込まれることが多い。
真夏の自動車の車内は高温となり、特にダッシュボードの温度は80℃近くに達することがある。このため、画像表示装置は車内で長時間高温に晒される場合があり、かかる場合に画像表示装置の諸性能の低下が懸念される。
【0004】
自動車の車内の温度上昇を抑制するための手段として、熱線遮蔽構造を含む合わせガラスが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO2019/167897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車の窓ガラスを特許文献1の合わせガラスとすれば、自動車の車内の温度上昇をある程度は抑制することはできる。しかし、温度上昇を抑制する対策がなされていない自動車においては、画像表示装置は高温に晒されてしまう。
このため、画像表示装置の保護ガラスを特許文献1のような合わせガラスとすることが考えられる。
【0007】
しかし、画像表示装置の保護ガラスを特許文献1のような合わせガラスとしたものを高温環境下に晒した場合、画像表示装置の視認性が低下する問題が頻発した。また、画像表示装置の保護ガラスを特許文献1のような合わせガラスとした場合、厚みが厚くなるという問題もある。
【0008】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高温環境下において視認性の低下を抑制し得る、光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]光学積層体であって、前記光学積層体は、プラスチックフィルム上に金属酸化物を含む層を有し、前記プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率が0.27以上0.75以下である、光学積層体。
[2]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第一の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第二の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第一の透明保護板及び前記第二の透明保護板の少なくとも一方が、前記[1]に記載の光学積層体である、偏光板。
[3]樹脂板又はガラス板上に、前記[1]に記載の光学積層体を貼り合わせた、画像表示装置用の表面板。
[4]表示素子の光出射面側に、前記[1]に記載の光学積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高温環境下において視認性の低下を抑制し得る、光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の光学積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の光学積層体、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置の実施の形態を説明する。
【0013】
[光学積層体]
本開示の光学積層体は、プラスチックフィルム上に金属酸化物を含む層を有し、前記プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率が0.27以上0.75以下であるものである。
【0014】
本明細書において、プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率のことを、“放射率α”と称する場合がある。
放射率とは、物体が熱放射で放出する光のエネルギーを、同温の黒体が放出する光のエネルギーを1としたときの比で表した値を意味する。
【0015】
図1は、本開示の光学積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
図1の光学積層体100は、プラスチックフィルム10上に、金属酸化物を含む層30を有している。また、図1の光学積層体100は、プラスチックフィルム10と金属酸化物を含む層30との間に機能層α(20)を有している。図1の機能層α(20)は、ハードコート層21の単層である。また、図1の光学積層体100は、金属酸化物を含む層30を基準としてプラスチックフィルム10とは反対側に機能層β(40)を有している。図1の機能層β(40)は、低屈折率層41の単層である。
【0016】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムは、後述する金属酸化物を含む層及び機能層の支持体となるものである。
なお、プラスチックフィルム以外の支持体としてはガラスがある。ガラスは、それ自体は耐熱性に優れるが、厚みが厚いため、熱がこもりやすい。ガラスの厚みは、通常0.5mm以上である。このため、支持体としてガラスを用いた場合、高温環境下において光学積層体が高温となりやすく、金属酸化物を含む層及び機能層等の光学積層体を構成する層、又は、表示素子等の画像表示装置の構成部材が高温の影響を受け、視認性が低下しやすいという問題がある。
【0017】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等から選ばれる1種以上から形成したものが挙げられる。プラスチックフィルムは、2種以上の樹脂を共押し出ししたものであってもよいし、2枚以上のプラスチックフィルムを貼り合わせたものであってもよい。
これらプラスチックフィルムの中でも、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルは、機械的強度及び寸法安定性に優れる点で好ましい。また、ポリイミドは、耐屈曲性が良好であり、フォルダブルタイプの画像表示装置、ローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすい点で好ましい。また、ポリカーボネートとポリメタクリル酸メチルとを共押し出ししたプラスチックフィルムは、成形性が良好である点で好ましい。
【0018】
なお、光学積層体の基材として、プラスチックフィルムの代わりに、厚み5μm以上200μm以下の薄膜のガラスフィルムを用いることができる。薄膜のガラスフィルムは、例えば、近年フォルダブルタイプの画像表示用として着目されている。また、薄膜のガラスフィルムを用いた場合、光学積層体の平滑性が向上するため、放射率が下がり熱の侵入を抑制することが期待でき、さらには、光学特性の向上が期待できる。
【0019】
また、プラスチックフィルムの中でも、リタデーション値3000nm以上30000nm以下のプラスチックフィルム又は1/4波長位相差のプラスチックフィルムは、偏光サングラスを通して画像を観察した場合に、表示画面に色の異なるムラが観察されることを防止できる点で好適である。
【0020】
プラスチックフィルムは、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
【0021】
プラスチックフィルムの厚みは、取り扱い性のため、及び、熱による変形を抑制するため、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。
一方、プラスチックフィルムの厚みが厚すぎると、プラスチックフィルムに熱がこもり、視認性に悪影響を与える場合がある。また、プラスチックフィルムに熱がこもった場合、光学積層体を高温環境下から常温環境下に移動しても、温度がさめにくいため、視認性の低下が長時間続く場合がある。このため、プラスチックフィルムの厚みは、350μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、90μm以下であることがさらに好ましく、70μm以下であることがよりさらに好ましい。
プラスチックフィルムの厚みの好適な範囲としては、5μm以上350μm以下、5μm以上150μm以下、5μm以上90μm以下、5μm以上70μm以下、10μm以上350μm以下、10μm以上150μm以下、10μm以上90μm以下、10μm以上70μm以下、25μm以上350μm以下、25μm以上150μm以下、25μm以上90μm以下、25μm以上70μm以下が挙げられる。
【0022】
プラスチックフィルム、金属酸化物を含む層及び機能層等の光学積層体を構成する各層の厚みは、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)又は走査型透過電子顕微鏡(STEM)による光学積層体の断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。但し、20箇所は、場所が偏らないように選択するものとする。
STEMの加速電圧及び倍率は、測定対象の層に応じて設定すればよい。
【0023】
<金属酸化物を含む層>
金属酸化物を含む層は、光学積層体の放射率αを後述する範囲にするための中核を担う層である。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ(ITO);三酸化アンチモン、スズドープ酸化アンチモン(ATO)、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン;酸化スズ;アルミドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等の酸化亜鉛;酸化チタン;などが挙げられ、これらの群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
上記の金属酸化物の中でも、ITOは、光学積層体の放射率αを後述する範囲にしやすい点で好ましい。また、ITOは、金属酸化物を含む層の屈折率を高くすることができるため、任意に形成する低屈折率層との組み合わせにより、光学積層体の可視光領域の反射率を低くしやすい点で好ましい。また、ITOは、透明性が良好であるとともに、導電性が高いため、光学積層体の帯電防止性を良好にしやすい点で好ましい。
【0024】
ヒートシンク等の放熱材として汎用的に用いられている、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等の金属窒化物等の放熱材料は、放射率を0.75以下にすることが困難である。
また、特許文献1で例示されているAu、Ag、Cu及びAl等の金属は、放射率を0.27以上にしにくく、透明性の低下が懸念されるものである。また、前記金属は、屈折率が低く、金属酸化物を含む層の屈折率を後述する範囲にすることが困難である。また、前記金属は、正反射が強すぎるため、背景が映りこんで視認性が低下してしまう。また、Agの蒸着膜はマイグレーションの問題がある。
【0025】
金属酸化物を含む層の実施形態としては、例えば、下記(1)及び(2)が挙げられる。
(1)金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層
(2)スパッタリング等の物理気相成長法、化学気相成長法等により金属酸化物を成膜した金属酸化物膜
【0026】
上記(1)は、上記(2)よりも耐屈曲性が良好であり、フォルダブルタイプの画像表示装置、ローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすい点で好ましい。
【0027】
《(1)金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層》
-金属酸化物粒子-
金属酸化物粒子としては、酸化インジウムスズ(ITO)粒子;三酸化アンチモン、スズドープ酸化アンチモン(ATO)、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン粒子;酸化スズ粒子;アルミドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等の酸化亜鉛粒子;酸化チタン粒子;などが挙げられ、これらの群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ITO粒子を含むことがより好ましい。
【0028】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、2nm以上200nm以下が好ましく、7nm以上100nm以下がより好ましく、8nm以上80nm以下がさらに好ましく、10nm以上50nm以下がよりさらに好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子径の好ましい範囲としては、2nm以上200nm以下、2nm以上100nm以下、2nm以上80nm以下、2nm以上50nm以下、7nm以上200nm以下、7nm以上100nm以下、7nm以上80nm以下、7nm以上50nm以下、8nm以上200nm以下、8nm以上100nm以下、8nm以上80nm以下、8nm以上50nm以下、10nm以上200nm以下、10nm以上100nm以下、10nm以上80nm以下、10nm以上50nm以下が挙げられる。
【0029】
本明細書において、各種粒子の平均粒子径は、例えば、以下の(1)~(3)の作業により算出できる。
(1)光学積層体の断面をSTEMで撮像する。STEMの加速電圧は10kv以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。
(2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出した後、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、前記2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行った後、合計50個分の数平均から得られる値を粒子の平均粒子径とする。
【0030】
金属酸化物粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して150質量部以上であることが好ましく、250質量部以上であることがより好ましく、400質量部以上であることがさらに好ましい。金属酸化物粒子の含有量を150質量部以上とすることにより、光学積層体の放射率αを0.75以下にしやすくできる。また、ITO等の高屈折率の金属酸化物粒子の含有量を150質量部以上とすることにより、金属酸化物を含む層の屈折率を高め、任意に形成する低屈折率層との組み合わせにより、光学積層体の可視光領域の反射率を低くし得る点で好ましい。
また、金属酸化物粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して2000質量部以下であることが好ましく、1500質量部以下であることがより好ましく、1200質量部以下であることがさらに好ましく、1000質量部以下であることがよりさらに好ましい。金属酸化物粒子の含有量を2000質量部以下とすることにより、金属酸化物を含む層の塗膜強度の低下を抑制しやすくできる。また、光学積層体の放射率αが低くなりすぎると、画像表示装置の内部で生じた熱が外部に放出されにくくなる。光学積層体の放射率αを低くし過ぎないため、金属酸化物粒子の含有量を2000質量部以下とすることが好ましい。
バインダー樹脂100質量部に対する金属酸化物粒子の含有量の好ましい範囲としては、150質量部以上2000質量部以下、150質量部以上1500質量部以下、150質量部以上1200質量部以下、150質量部以上1000質量部以下、250質量部以上2000質量部以下、250質量部以上1500質量部以下、250質量部以上1200質量部以下、250質量部以上1000質量部以下、400質量部以上2000質量部以下、400質量部以上1500質量部以下、400質量部以上1200質量部以下、400質量部以上1000質量部以下が挙げられる。
【0031】
-シランカップリング剤-
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤は、金属酸化物粒子の表面処理剤としてのシランカップリング剤であってもよいし、バインダー樹脂としてのシランカップリング剤であってもよい。
金属酸化物粒子にシランカップリング剤による表面処理を施すことにより、金属酸化物粒子とバインダー樹脂との親和性が向上し、金属酸化物粒子の分散が均一となりやすい。
また、バインダー樹脂としてのシランカップリング剤を含む場合においても、金属酸化物粒子の分散が均一となりやすい点で好ましい。
【0032】
シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。特に、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0033】
-バインダー樹脂-
バインダー樹脂は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられ、機械的強度をより良くするため、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
金属酸化物粒子を含む層の全バインダー樹脂に対する硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは100質量%である。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物を含む組成物である。本明細書において、“電離放射線硬化性官能基を有する化合物”のことを、“電離放射線硬化性化合物”と称する場合がある。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0036】
-光重合開始剤、光重合促進剤-
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤及び光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減することにより、硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0037】
-屈折率、膜厚-
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層は、屈折率が1.53以上2.30以下が好ましく、1.57以上2.00以下がより好ましく、1.60以上1.80以下がより好ましく、1.65以上1.75以下がより好ましい。金属酸化物を含む層の屈折率を前記範囲とすることにより、任意に形成する低屈折率層との組み合わせにより、光学積層体の可視光領域の反射率を低くしやすくできる。
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の屈折率の好ましい範囲としては、1.53以上2.30以下、1.53以上2.00以下、1.53以上1.80以下、1.53以上1.75以下、1.57以上2.30以下、1.57以上2.00以下、1.57以上1.80以下、1.57以上1.75以下、1.60以上2.30以下、1.60以上2.00以下、1.60以上1.80以下、1.60以上1.75以下、1.65以上2.30以下、1.65以上2.00以下、1.65以上1.80以下、1.65以上1.75以下が挙げられる。
【0038】
本明細書において、各層の屈折率は、波長550nmにおける屈折率を意味する。また、本明細書において、各層の屈折率は、例えば、分光光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出することができる。
【0039】
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みは、放射率αを0.75以下にしやすくするため、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましく、500nm以上であることがさらに好ましい。
なお、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みを厚くすることによる放射率αの低下には限界がある。また、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みが厚すぎると透明性が低下する傾向がある。薄膜化のため、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みは、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みの好ましい範囲としては、100nm以上5.0μm以下、100nm以上2.0μm以下、100nm以上1.5μm以下、200nm以上5.0μm以下、200nm以上2.0μm以下、200nm以上1.5μm以下、500nm以上5.0μm以下、500nm以上2.0μm以下、500nm以上1.5μm以下が挙げられる。
【0040】
また、任意に形成する低屈折率層との組み合わせによる干渉波の打ち消しにより、可視光領域の反射率を低くするため、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みは、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の屈折率であるnを考慮して調整することが好ましい。具体的には、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みは、「550nm/2n」の整数倍に近い厚みに調整することが好ましい。可視光領域の反射率を低くすることを考慮した金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みの範囲は、前述したように、屈折率の範囲により異なるため一概にはいえないが、120nm以上750nm以下であることが好ましく、130nm以上500nm以下であることがより好ましく、140nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
可視光領域の反射率を低くするための、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層の厚みの好ましい範囲としては、120nm以上750nm以下、120nm以上500nm以下、120nm以上400nm以下、130nm以上750nm以下、130nm以上500nm以下、130nm以上400nm以下、140nm以上750nm以下、140nm以上500nm以下、140nm以上400nm以下が挙げられる。
【0041】
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、レベリング剤、分散剤、染料、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層は、例えば、前記層を構成する成分を分散ないしは溶解した塗布液を、プラスチックフィルム上などに塗布、乾燥した後、必要に応じて電離放射線照射することにより形成することができる。
金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含む層は、上記のように層を形成した後、加熱処理することが好ましい。加熱処理により、放射率αを低くしやすくできる。
加熱処理の温度は、下限は90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、上限は170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。
加熱処理の温度は、下限は30分以上が好ましく、45分以上がより好ましく、50分以上がさらに好ましく、上限は200分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、80分以下がさらに好ましい。
【0042】
《(2)金属酸化物膜》
金属酸化物膜は、例えば、スパッタリング等の物理気相成長法、化学気相成長法等により、金属酸化物を成膜したものである。金属酸化物膜の中でも、放射率を低くしやすい酸化インジウムスズ膜が好ましい。
【0043】
金属酸化物膜は、光学積層体の放射率αを0.27以上にしやすくするため、アモルファスのものが好ましい。すなわち、金属酸化物膜は、アニール処理等の加熱による結晶化処理がされていないものが好ましい。また、アモルファスの金属酸化物膜は、耐屈曲性が良好であり、フォルダブルタイプの画像表示装置、ローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすい点で好ましい
以上のことから、金属酸化物膜は、酸化物インジウムスズのアモルファス膜が好ましい。
【0044】
-屈折率、膜厚-
金属酸化物膜は、屈折率が2.0以上2.5以下が好ましく、2.1以上2.2以下がより好ましい。金属酸化物膜の屈折率を前記範囲とすることにより、任意に形成する低屈折率層との組み合わせにより、光学積層体の可視光領域の反射率を低くしやすくできる。
金属酸化物膜の屈折率の好ましい範囲としては、前記範囲の他に、2.0以上2.2以下、2.1以上2.5以下が挙げられる。
【0045】
金属酸化物膜の厚みは、放射率αを0.75以下にしやすくするため、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。放射率の低い層が外部に放射熱を跳ね返す度合いは、厚みが増すことで増加する傾向がある。このため、光学積層体の温度上昇抑制のため、金属酸化物膜の厚みは、100nm以上であることが好ましい。
なお、金属酸化物膜の厚みが厚すぎると透明性が低下する傾向がある。薄膜化のため、金属酸化物膜の厚みは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。
金属酸化物膜の厚みの好ましい範囲としては、10nm以上1000nm以下、10nm以上500nm以下、10nm以上300nm以下、20nm以上1000nm以下、20nm以上500nm以下、20nm以上300nm以下、30nm以上1000nm以下、30nm以上500nm以下、30nm以上300nm以下が挙げられる。
耐屈曲性が良好であり、フォルダブルタイプの画像表示装置及びローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすくするためには、金属酸化物膜の厚み、30nm以上250nm以下が好ましく、30nm以上150nm以下がより好ましい。
【0046】
また、任意に形成する低屈折率層との組み合わせにより、可視光領域の反射率を低くするため、金属酸化物膜の厚みは、100nm以上200nm以下であることが好ましく、100nm以上170nm以下であることがより好ましく、100nm以上140nm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
<機能層α>
光学積層体は、プラスチックフィルムと金属酸化物を含む層との間に、一以上の機能層αを有していてもよい。
機能層αとしては、ハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層、防眩層、帯電防止層、円偏光層等が挙げられ、ハードコート層の単層が好ましい。
【0048】
《ハードコート層》
光学積層体は、耐擦傷性及び鉛筆硬度を高めるため、機能層αとして、ハードコート層を有することが好ましい。
【0049】
ハードコート層は樹脂成分を含むことが好ましい。ハードコート層の樹脂成分は、硬化性樹脂組成物の硬化物を主成分とすることが好ましい。主成分とは、ハードコート層の全樹脂の50質量%以上を意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0050】
硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられ、機械的強度をより良くするため、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
ハードコート層の硬化性樹脂組成物としては、金属酸化物を含む層で例示した硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0051】
ハードコート層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤及び屈折率調整剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0052】
ハードコート層の厚みは、耐擦傷性を良好にしやすくするため、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がより好ましい。また、ハードコート層の厚みは、熱がこもることを抑制するため、及び、カール抑制のため、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。
ハードコート層の厚みの好ましい範囲としては、0.1μm以上100μm以下、0.1μm以上50μm以下、0.1μm以上30μm以下、0.1μm以上20μm以下、0.1μm以上15μm以下、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上100μm以下、0.5μm以上50μm以下、0.5μm以上30μm以下、0.5μm以上20μm以下、0.5μm以上15μm以下、0.5μm以上10μm以下、1.0μm以上100μm以下、1.0μm以上50μm以下、1.0μm以上30μm以下、1.0μm以上20μm以下、1.0μm以上15μm以下、1.0μm以上10μm以下、2.0μm以上100μm以下、2.0μm以上50μm以下、2.0μm以上30μm以下、2.0μm以上20μm以下、2.0μm以上15μm以下、2.0μm以上10μm以下が挙げられる。
【0053】
<機能層β>
光学積層体は、金属酸化物を含む層のプラスチックフィルムとは反対側に一以上の機能層βを有していてもよい。
機能層βとしては、低屈折率層、高屈折率層、防眩層、防汚層及び円偏光層等が挙げられる。機能層は、前述した機能を兼用するものであってもよい。例えば、低屈折率層は、防汚性又は防眩性を備えるものであってもよい。
【0054】
一以上の機能層βの総厚みは1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
金属酸化物を含む層を基準としてプラスチックフィルムとは反対側に位置する層は、画像表示装置の外部の放射熱、及び、画像表示装置の内部から生じて金属酸化物を含む層を透過した放射熱によって温度が上昇する。このため、一以上の機能層βの総厚みが厚いほど、一以上の機能層βに熱がこもりやすくなる傾向がある。このため、一以上の機能層βの総厚みを350nm以下とすることにより、光学積層体が高温になることを抑制しやすくできる。また、一以上の機能層βの総厚みを350nm以下とすることにより、放射率αを低くしやすくできる。
また、一以上の機能層βの総厚みが薄いことが好ましいことを考慮すると、機能層βは単層であることが好ましく、低屈折率層の単層であることがより好ましい。
【0055】
《低屈折率層》
低屈折率層は、金属酸化物を含む層を基準として、プラスチックフィルムとは反対側の最表面に位置することが好ましい。
【0056】
低屈折率層の屈折率は、1.10以上1.48以下が好ましく、1.20以上1.45以下がより好ましく、1.26以上1.40以下がより好ましく、1.28以上1.38以下がより好ましく、1.30以上1.32以下がより好ましい。
低屈折率層の屈折率の好ましい範囲としては、1.10以上1.48以下、1.10以上1.45以下、1.10以上1.40以下、1.10以上1.38以下、1.10以上1.32以下、1.20以上1.48以下、1.20以上1.45以下、1.20以上1.40以下、1.20以上1.38以下、1.20以上1.32以下、1.26以上1.48以下、1.26以上1.45以下、1.26以上1.40以下、1.26以上1.38以下、1.26以上1.32以下、1.28以上1.48以下、1.28以上1.45以下、1.28以上1.40以下、1.28以上1.38以下、1.28以上1.32以下、1.30以上1.48以下、1.30以上1.45以下、1.30以上1.40以下、1.30以上1.38以下、1.30以上1.32以下が挙げられる。
【0057】
低屈折率層の厚みは、80nm以上150nm以下が好ましく、85nm以上110nm以下がより好ましく、90nm以上105nm以下がより好ましい。また、低屈折率層の厚みは、中空粒子等の低屈折率粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
低屈折率層の厚みの好ましい範囲としては、80nm以上150nm以下、80nm以上110nm以下、80nm以上105nm以下、85nm以上150nm以下、85nm以上110nm以下、85nm以上105nm以下、90nm以上150nm以下、90nm以上110nm以下、90nm以上105nm以下が挙げられる。低屈折率層の厚みは、前記の好ましい範囲を満たし、かつ、低屈折率層の厚みが中空粒子等の低屈折率粒子の平均粒子径よりも大きいことがより好ましい。
【0058】
低屈折率層を形成する手法としては、ウェット法とドライ法とに大別できる。ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗工して形成する手法、樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液を塗工して形成する手法が挙げられる。ドライ法としては、低屈折率粒子の中から所望の屈折率を有する粒子を選び、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。
ウェット法は、生産効率、斜め反射色相の抑制、及び耐薬品性の点で、ドライ法よりも優れている。本実施形態においては、ウェット法の中でも、密着性、耐水性、耐擦傷性及び低屈折率化のため、バインダー樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液により形成することが好ましい。言い換えると、低屈折率層は、バインダー樹脂及び低屈折率粒子を含むことが好ましい。
【0059】
低屈折率層のバインダー樹脂は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。また、低屈折率層の全バインダー樹脂に対する硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
低屈折率層の硬化性樹脂組成物としては、金属酸化物を含む層で例示した硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0060】
低屈折率粒子は、中空粒子及び非中空粒子から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、低反射及び耐擦傷性のバランスのため、中空粒子から選ばれる1種以上と、非中空粒子から選ばれる1種以上とを併用することが好ましい。
中空粒子及び非中空粒子の材質は、シリカ及びフッ化マグネシウム等の無機化合物、有機化合物のいずれであってもよいが、低屈折率化及び強度のため、シリカが好ましい。
【0061】
光学的特性および機械的強度を考慮すると、中空シリカ粒子の平均粒子径は、50nm以上200nm以下であることが好ましく、60nm以上80nm以下であることがより好ましい。中空シリカ粒子の平均粒子径の好ましい範囲としては、前記範囲の他に、50nm以上80nm以下、60nm以上200nm以下が挙げられる。
非中空シリカ粒子の凝集を防止しつつ分散性を考慮すると、非中空シリカ粒子の平均粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上20nm以下であることがより好ましい。非中空シリカ粒子の平均粒子径の好ましい範囲としては、前記範囲の他に、5nm以上20nm以下、10nm以上100nm以下が挙げられる。
【0062】
中空シリカ粒子の含有量が多くなるほど、バインダー樹脂中の中空シリカ粒子の充填率が高くなり、低屈折率層の屈折率が低下する。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以上であることが好ましく、150質量部以上であることがより好ましい。
一方で、バインダー樹脂に対する中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、バインダー樹脂から露出する中空シリカ粒子が増加する上、粒子間を結合するバインダー樹脂が少なくなる。このため、中空シリカ粒子が損傷したり、脱落したりしやすくなって、低屈折率層の耐擦傷性等の機械的強度が低下する傾向がある。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。
バインダー樹脂100質量部に対する中空シリカ粒子の含有量の好ましい範囲としては、100質量部以上400質量部以下、100質量部以上300質量部以下、150質量部以上400質量部以下、150質量部以上300質量部以下が挙げられる。
【0063】
非中空シリカ粒子の含有量が少ないと、低屈折率層の表面に非中空シリカ粒子が存在していても硬度上昇に影響を及ぼさないことがある。また、非中空シリカ粒子を多量に含有すると、バインダー樹脂の重合による収縮ムラの影響が小さくなるため、樹脂硬化後に低屈折率層表面に発生する凹凸を小さくすることができる。このため、非中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。
一方で、非中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、非中空シリカが凝集しやすくなり、バインダー樹脂の収縮ムラが生じるため、表面の凹凸が大きくなる。このため、非中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。
バインダー樹脂100質量部に対する非中空シリカ粒子の含有量の好ましい範囲としては、10質量部以上200質量部以下、10質量部以上150質量部以下、50質量部以上200質量部以下、50質量部以上150質量部以下、70質量部以上200質量部以下、70質量部以上150質量部以下、100質量部以上200質量部以下、100質量部以上150質量部以下が挙げられる。
【0064】
上記の割合でバインダー樹脂中に中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を含有させることにより、低屈折率層のバリア性を向上させることができる。これは、シリカ粒子が高充填率で均一に分散されていることにより、ガス等の透過が阻害されているためと推測される。
また、日焼け止め及びハンドクリーム等の各種の化粧品には、揮発性の低い低分子ポリマーが含まれている場合がある。低屈折率層のバリア性を良好にすることにより、低分子ポリマーが低屈折率層の塗膜内部に浸透することを抑制でき、低分子ポリマーが塗膜に長期残存することによる外観異常等の不具合を抑制することができる。なお、低分子ポリマーが低屈折率層の塗膜内部に浸透することを抑制することは、放射率αを低くするためにも好ましい。
【0065】
<放射率>
本開示の光学積層体は、プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率が0.27以上0.75以下であることを要する。上述したように、本明細書において、前記放射率のことを、“放射率α”と称する場合がある。
【0066】
放射率αが0.75を超える場合、光学積層体が車内の温度等の外部環境に起因する放射熱を取り込んでしまうため、光学積層体を含む画像表示装置の視認性が低下してしまう。
また、放射率αが0.27未満の場合、画像表示装置の内部で生じた放射熱が、光学積層体によって画像表示装置の内側に戻されてしまうため、画像表示装置内部が高温となり、光学積層体を含む画像表示装置の視認性が低下してしまう。画像表示装置の内部で生じる放射熱としては、表示素子から生じる放射熱が挙げられる。
放射率αは、0.35以上0.70以下であることが好ましく、0.37以上0.67以下であることがより好ましく、0.40以上0.60以下であることがさらに好ましい。
近年のディスプレイ技術向上に伴い、例えば、ディスプレイに曲面性を付与して意匠性を高めるために、フレキシブルな光学積層体が求められることがある。放射率αが0.40未満になると、金属酸化物を含む層が硬くなりやすく、曲面加工性に課題が生じる場合がある。このため、放射率αを0.40以上とすることは、曲面加工性のために好ましい。また、放射率αは低ければ低いほど、外部環境に起因する温度上昇を制御できるため良好である。このため、例えば放射率αが0.60以下であると、光学積層体の表面温度を容易に手で触れられる程度に低くしやすく、また、光学積層体自体が熱源として作用することを抑制しやすくできるため、画像表示装置に長時間顔又は手を近づけた際の体感温度を低くしやすい点で好ましい。
放射率αの好ましい範囲としては、0.27以上0.75以下、0.27以上0.70以下、0.27以上0.67以下、0.27以上0.60以下、0.35以上0.75以下、0.35以上0.70以下、0.35以上0.67以下、0.35以上0.60以下、0.37以上0.75以下、0.37以上0.70以下、0.37以上0.67以下、0.37以上0.60以下、0.40以上0.75以下、0.40以上0.70以下、0.40以上0.67以下、0.40以上0.60以下が挙げられる。
【0067】
本明細書において、視認性の低下とは、例えば、“画像表示装置の表示画面内の局所的な箇所において、明るさ、色味、反射指向特性等の諸性能が不均一となること”、“画像表示装置の表示画面の中心付近と端付近とで前記諸性能が不均一となること”、“常温環境下に比べて、高温環境下での前記諸性能が変化すること”などが挙げられる。
このような視認性の低下は、例えば、高温による光学積層体の変形によって生じると考えられる。
また、画像表示装置は、通常、空冷ファン等の冷却手段を有するが、前記冷却手段による冷却効果は画像表示装置の場所により異なる。そして、放射熱は連続的に生じるため前述した冷却効果の違いは徐々に蓄積されるため、画像表示装置内の場所によって温度の相違が生じる。このため、光学積層体の面内で温度が異なる箇所が生じる場合があり、かかる場合に、光学積層体に局所的な物性の変化が生じるため、視認性の低下を招くと考えられる。
本開示の光学積層体によれば、上記の原因による視認性の低下を抑制することができる。
【0068】
本明細書において、放射率αは、JIS A1423:1983に準拠して測定した常温における放射率を意味する。放射率の測定装置としては、例えば、ジャパンセンサー株式会社製の品番「TSS-5X-2」が挙げられる。
【0069】
なお、本明細書において、放射率、分光透過率、視感反射率Y値、全光線透過率及びヘイズ等の各種の物性は、特に断りがない限り、測定用のサンプルを、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下の環境に30分以上晒した後に、同環境で測定したものとする。
また、本明細書において、放射率、分光透過率、視感反射率Y値、全光線透過率及びヘイズ等の各種の物性は、特に断りがない限り、20の測定の平均値とする。
【0070】
<諸物性>
前記金属酸化物を含む層の波長域8200nm以上9000nm以下の分光透過率の平均は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
下記式(1)は、任意の温度における黒体が発する放射波長のピーク波長(λ)を示す式であり、ウィーンの式と呼ばれる式である。式中、「T」は、温度を示し、単位は℃である。
λ(nm)≒2897/(T+273) (1)
例えば、夏場の自動車の車内の雰囲気及びダッシュボードの温度、並びに、夏場の密閉室内の窓際の温度などは、50℃以上80℃以下程度になるといわれている。上記式(1)のTに50及び80を代入すると、λは約9000nm、約8200nmとなる。
つまり、上記分光透過率の波長域を8200nm以上9000nm以下に特定したのは、夏場の自動車の温度及び夏場の密閉室内の窓際の温度を考慮したものである。このため、上記分光透過率の平均を80%以下とすることにより、自動車の車内から発せられる赤外線を光学積層体が効率的にカットするため、画像表示装置が高温となることをより抑制でき、視認性の低下をより抑制しやすくできる。
上記分光透過率の平均の下限は特に限定されないが、通常は30%以上であり、好ましくは40%以上である。
【0072】
本明細書において、金属酸化物を含む層の分光透過率は、下記(A1)の測定及び(A2)の変換処理で算出した値を意味する。
(A1)FTIRの反射で金属酸化物を含む層の各波長の吸光度を測定する。
(A2)A1の各波長の吸光度を、各波長の透過率に変換する処理を行う。
上記(A1)の測定は、プラスチックフィルムを基準として金属酸化物を含む層側から測定するものとする。また、金属酸化物を含む層上に機能層βが存在した状態であっても、機能層βの総厚みが250nm以下程度であれば、機能層βを有する状態で上記(A1)の測定を行うことができる。そして、機能層βを有する状態で測定した金属酸化物を含む層の吸光度を上記(A2)で変換処理することにより、金属酸化物を含む層の分光透過率を算出することができる。
【0073】
前記プラスチックフィルムを基準として前記金属酸化物を含む層側から測定した、前記光学積層体の視感反射率Y値は2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
本明細書において、視感反射率Y値とは、CIE1931標準表色系の視感反射率Y値のことをいい、入射角5度で測定したものとする。
視感反射率Y値は、分光光度計を用いて算出することができる。分光光度計としては、例えば、島津製作所社製の商品名「UV-2450」が挙げられる。
視感反射率を測定する際は、プラスチックフィルムの裏面に黒色板を貼り合わせることが好ましい。
【0075】
光学積層体は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
また、光学積層体は、JIS K7136:2000のヘイズが5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
全光線透過率及びヘイズは、金属酸化物を含む層を基準としてプラスチックフィルム側の面を光入射面として測定することが好ましい。
【0076】
光学積層体は、プラスチックフィルムを基準として、金属酸化物を含む層を有する側の最表面の粗さが所定の範囲であることが好ましい。
具体的には、前記最表面のJIS B0601:2001のカットオフ値2.5mmにおける算術平均粗さRaが、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。Raを3μm以下とすることにより、放射率αを0.75以下にしやすくできる。
Raを測定する際には、測定装置の測定条件として、横倍率を1000倍、縦倍率を20000倍に設定することが好ましい。
【0077】
<層構成>
本開示の光学積層体の全体の層構成は特に限定されないが、下記(1)~(6)が挙げられる。なお、「/」は、層の界面を示す。
(1)プラスチックフィルム/金属酸化物を含む層
(2)プラスチックフィルム/ハードコート層/金属酸化物を含む層
(3)プラスチックフィルム/金属酸化物を含む層/低屈折率層
(4)プラスチックフィルム/ハードコート層/金属酸化物を含む層/低屈折率層
(5)プラスチックフィルム/金属酸化物を含む層/高屈折率層/低屈折率層
(6)プラスチックフィルム/ハードコート層/金属酸化物を含む層/高屈折率層/低屈折率層
【0078】
<総厚み>
光学積層体の総厚みは、機械的強度を良好にするため、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。また、光学積層体の総厚みは、フォルダブルタイプの画像表示装置及びローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすくするために、130μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、90μm以下がさらに好ましく、75μm以下がよりさらに好ましい。
光学積層体の総厚みの好ましい範囲としては、10μm以上130μm以下、10μm以上100μm以下、10μm以上90μm以下、10μm以上75μm以下、30μm以上130μm以下、30μm以上100μm以下、30μm以上90μm以下、30μm以上75μm以下、45μm以上130μm以下、45μm以上100μm以下、45μm以上90μm以下、45μm以上75μm以下が挙げられる。
光学積層体の総厚みを上記範囲とすることにより、外曲げのマンドレル試験棒での評価において、φ10mm以下を達成しやすくすることができる。また、上記範囲の中でも、総厚み75μm以下の光学積層体では φ6mm以下を達成しやすくすることもできる。すなわち、光学積層体の総厚みを上記範囲とすることにより、光学積層体を、フォルダブルタイプの画像表示装置及びローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすくできる。なお、“外曲げ”とは、プラスチックフィルムを基準として金属酸化物を含む層を有する側が外側を向くように曲げることを意味する。また、“外側”とは、“マンドレル棒より遠い側”を意味する。
【0079】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第一の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第二の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第一の透明保護板及び前記第二の透明保護板の少なくとも一方が、上述した本開示の光学積層体であるものである。
【0080】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶及び二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0081】
<透明保護板>
偏光子の一方の側には第一の透明保護板、他方の側には第二の透明保護板が配置される。第一の透明保護板及び第二の透明保護板の少なくとも一方は、上述した本開示の光学積層体である。
光学積層体は、金属酸化物を含む層を基準としてプラスチックフィルム側の面が偏光子側を向くように配置されてなることが好ましい。
【0082】
光学積層体以外の第一の透明保護板及び第二の透明保護板としては、プラスチックフィルム及びガラス等が挙げられ、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、アクリルフィルム及びトリアセチルセルロースフィルム等が挙げられ、機械的強度のため、これらの延伸フィルムが好ましい。
偏光子と透明保護板とは、接着剤を介して貼り合わせることが好ましい。接着剤は汎用の接着剤を用いることができ、PVA系接着剤が好ましい。
【0083】
本開示の偏光板は、第一の透明保護板及び第二の透明保護板の両方が上述した本開示の光学積層体であってもよいが、第一の透明保護板及び第二の透明保護板の一方が上述した本開示の光学積層体であることが好ましい。また、本開示の偏光板を表示素子の光出射面側に配置する偏光板として用いる場合には、偏光子の光出射面側の透明保護板が上述した本開示の光学積層体であることが好ましい。
【0084】
[画像表示装置用の表面板]
本開示の画像表示装置用の表面板は、樹脂板又はガラス板上に、上述した本開示の光学積層体を貼り合わせたものである。
【0085】
光学積層体は、金属酸化物を含む層を基準としてプラスチックフィルム側の面が樹脂板又はガラス板側を向くように配置することが好ましい。
また、画像表示装置用の表面板は、光学積層体を貼り合わせた側の面が、表面側を向くようにして配置することが好ましい。言い換えると、画像表示装置用の表面板は、光学積層体を貼り合わせた側の面が、表示素子とは反対側を向くようにして配置することが好ましい。
【0086】
樹脂板又はガラス板としては、画像表示装置の表面板として汎用的に使用されている樹脂板又はガラス板を用いることができる。
【0087】
樹脂板又はガラス板の厚みは、強度を良好にするため、10μm以上であることが好ましい。樹脂板又はガラス板の厚みの上限は、通常は5000μm以下であるが、近年、画像表示装置の薄型化が好まれるため、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
樹脂板又はガラス板の厚みの好ましい範囲としては、10μm以上5000μm以下、10μm以上1000μm以下、10μm以上500μm以下、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0088】
[画像表示装置]
本開示の画像表示装置は、表示素子の光出射面側に、上述した本開示の光学積層体を有するものである。
【0089】
光学積層体は、プラスチックフィルムを基準として金属酸化物を含む層側の面が表示素子とは反対側を向くように配置されてなることが好ましい。
また、光学積層体は、画像表示装置の最表面に配置されてなることが好ましい。
また、熱伝導を抑制するため、画像表示装置内において、表示素子と光学積層体との間には空気が介在するように配置することが好ましい。
【0090】
表示素子としては、液晶表示素子、有機EL表示素子及び無機EL表示素子等のEL表示素子、プラズマ表示素子等が挙げられ、さらには、マイクロLED表示素子、ミニLED表示素子等のLED表示素子が挙げられる。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有していてもよい。
液晶表示素子の液晶の表示方式としては、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式、STN方式、TSTN方式等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子である場合、バックライトが必要である。バックライトは、液晶表示素子の光学積層体を有する側とは反対側に配置される。
画像表示装置は、フォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置であってもよい。また、画像表示装置は、タッチパネル付きの画像表示装置であってもよい。
なお、携帯型の画像表示装置、及び、自動車のダッシュボードに組み込まれる画像表示装置は、高温環境下に晒されやすいといえるため、本開示の効果を発揮しやすい点で好ましい。
【0091】
画像表示装置は、表示素子の光出射面とは反対側に、汎用の放熱機構を有することが好ましい。汎用の放熱機構としては、空冷ファン、放熱フィン、ヒートポンプ及びペルチェ素子等が挙げられる。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示を具体的に説明する。なお、本開示は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0093】
1.評価、測定
実施例及び比較例で得られた光学積層体について以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、特記しない限り、各測定及び評価時の雰囲気は、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下とし、各測定及び評価の開始前に、対象サンプルを前記雰囲気に30分以上晒してから測定及び評価を行った。
なお、比較例2の光学積層体は、金属酸化物を含む層を有していない。このため、比較例2に関しては、比較例2の放熱層が金属酸化物を含む層であると擬制して、以下の評価及び測定を行うものとする。
【0094】
1-1.放射率
実施例及び比較例の光学積層体に関して、JIS A1423:1983に準拠して、常温における放射率を測定した。具体的には、“基材を基準として金属酸化物を含む層側から測定した、光学積層体の波長域2000nm以上22000nm以下の光に対する放射率”を測定した。上述したように、本明細書において、前記放射率のことを、“放射率α”と称する場合がある。
放射率αが0.75を超えるものは、C評価とした。放射率αが0.27未満のものは、B評価とした。放射率αが0.27以上0.75以下のものはA評価以上とし、中でも放射率αが0.37以上0.60以下のものはAA評価とした。
放射率αが高すぎる場合、光学積層体が外部環境に起因する放射熱を取り込むため、画像表示装置の昇温が引き起こされる。一方、放射率αが低すぎる場合は、光学積層体が外部環境に起因する放射熱を取り込みにくいものの、画像表示装置の内部で生じた放射熱が、光学積層体によって画像表示装置の内側に戻されるため、画像表示装置内部が高温となることが想定される。
放射率測定器としては、ジャパンセンサー株式会社製の品番「TSS-5X-2」を用いた。前記測定器に付属の放射率基準片は、放射率が0.06と0.97の二種類である。なお、前記測定器の主な仕様は下記の通りである。
<仕様>
・測定面積:Φ15mm
・測定距離:12mm
【0095】
1-2.分光透過率
実施例及び比較例の光学積層体の金属酸化物を含む層の波長域8200nm以上9000nm以下の分光透過率を測定した。明細書本文に記載したように、FTIRの反射で金属酸化物を含む層の各波長の吸光度を測定した後、各波長の吸光度を各波長の透過率に変換することにより、金属酸化物を含む層の波長域8200nm以上9000nm以下の分光透過率を算出した。
FIIR測定器は、Thermo Fisher SCIENTIFIC社製の品番「NICOLET iS10」を用いた。また、アクセサリとして、同社製の「1回反射型Ge ATRアクセサリファンデーション」を用いた。また、測定条件は、Ge結晶面に測定面を向けPressure Towerにてサンプルを圧着固定した後、入射タイプ1回、45°、スキャン回数32回、分解能8、検出器 DTGS KBr、ミラー速度0.6329、アパーチャ オープン、測定範囲680cm-1以上4000cm-1以下の条件で測定した。測定した吸光度を透過率に変換し、cm-1をnmに変換することにより、波長域の透過率の平均値を算出た。
【0096】
1-3.視感反射率Y値
実施例及び比較例の光学積層体の基材の金属酸化物を含む層の反対側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社製、商品名:パナクリーンPD-S1)を介して黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス DFA2CG 502K(黒)系、厚み2mm)を貼り合わせたサンプルを作製した。前記サンプルに対して、基材を基準として金属酸化物を含む層側から入射角5度で光を入射することにより、視感反射率Y値を測定した。
視感反射率Y値は、分光光度計(島津製作所社製、商品名:UV-2450)を用いて、視野角2度、C光源、波長範囲380nm以上780nm以下の条件で5°正反射率を測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(装置内蔵UVPCカラー測定 Version3.12)で算出される、視感反射率を示す値を反射率として求めた。
【0097】
1-4.全光線透過率及びヘイズ
ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、実施例及び比較例の光学積層体の、JIS K7361-1:1997の全光線透過率及びJIS K7136:2000のヘイズを測定した。光入射面は基材側とした。
【0098】
1-5.表面温度
市販の液晶表示装置(amazon社製、商品名Kindle Fire HDX)上に、実施例及び比較例の光学積層体の基材側が表示装置側を向くように配置することにより、模擬液晶表示装置を作製した。
夏場の自動車の車内を想定し、模擬液晶表示装置を80℃のオーブンに入れ、10分経過した後に取り出した。模擬液晶表示装置を取り出した直後に、IRカメラ(フリアーシステムズ社製、商品名FLIR E4)で表面側から温度を測定した。光学フィルムとIRカメラとの距離は30cmとした。光学積層体上の最高温度を表1に示す。最高温度65℃以下が合格レベルである。最高温度は、実際に画像表示を扱う場合を考えると、60℃以下であることがより好ましく、57℃以下であることがさらに好ましい。
【0099】
1-6.視認性(不均一性)
1-5で作製した模擬液晶表示装置を80℃のオーブンに入れ、10分経過した後に取り出した。模擬液晶表示装置を取り出した直後に前記液晶表示装置の画面を緑一色で表示し、表示画面内に、明るさ及び色味が不均一な箇所があるか否かを目視で評価した。評価者は、視力が0.7以上である10人とした。前記視力は、矯正した視力を含む。評価者と前記液晶表示装置との距離は50cmとした。明るさ及び色味が不均一な箇所がないと答えた人が8人以上であったものを「A」、明るさ及び色味が不均一な箇所がないと答えた人が7人以下であったものを「C」とした。
【0100】
2.光学積層体の作製
[実施例1]
基材(トリアセチルセルロースフィルム、厚み60μm)上に、下記のハードコート層用塗布液を、塗布、乾燥、紫外線照射することにより、膜厚5μmのハードコート層を形成した。
次いで、ハードコート層上に、下記の金属酸化物層用塗布液1を塗布、乾燥、紫外線照射することにより、膜厚350nmの金属酸化物としてITO粒子を含む層を形成した。
次いで、金属酸化物を含む層上に、下記の低屈折率層用塗布液を塗布、乾燥、紫外線照射することにより、膜厚100nmの低屈折率層を形成し、実施例1の光学積層体を得た。
【0101】
<ハードコート層用塗布液>
以下の各成分を混合して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 46質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・光重合開始剤 4質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 184)
・メチルエチルケトン 50質量部
【0102】
<金属酸化物層用塗布液1>
以下の各成分を混合して、金属酸化物層用塗布液1を調製した。
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 1質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・ITO粒子 8.5質量部
(平均粒子径30nm)
・光重合開始剤 0.4質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 184)
・レベリング剤 0.03質量部
(DIC株式会社製 メガファックF-477)
・メチルイソブチルケトン 89質量部
【0103】
<低屈折率層用塗布液>
以下の各成分を混合して、低屈折率層用塗布液を調製した。
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・フッ素含有ポリマー 0.2質量部(固形分)
(JSR社製 商品名 :JN35)
・フッ素含有モノマー 0.7質量部(固形分)
(共栄社化学社製 商品名:LINC3A)
・中空シリカ粒子 1.7質量部
(平均粒径75nm、屈折率1.212)
・中実シリカ粒子 0.6質量部
(平均粒径15nm)
・レベリング剤 0.06質量部
(信越シリコーン社、商品名:X-22-164E)
・光重合開始剤 0.09質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 127)
・溶剤 97質量部
(メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの質量比70:30混合溶剤、固形分2質量%で厚みに合わせて調製)
【0104】
[実施例2]
金属酸化物を含む層の厚みを700nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学積層体を得た。
【0105】
[実施例3]
金属酸化物を含む層の厚みを200nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学積層体を得た。
【0106】
[実施例4]
基材(トリアセチルセルロースフィルム、厚み60μm)を、厚み100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光学積層体を得た。
【0107】
[実施例5]
金属酸化物を含む層について、金属酸化物層用塗布液1を下記の金属酸化物層用塗布液2に変更し、厚みを900nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光学積層体を得た。
【0108】
<金属酸化物層用塗布液2>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 1質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・AlドープZnO粒子 9.6質量部
・光重合開始剤 0.4質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 184)
・レベリング剤 0.03質量部
(DIC株式会社製 メガファックF-477)
・メチルイソブチルケトン 89質量部
【0109】
[実施例6]
金属酸化物層用塗布液1を下記の金属酸化物層用塗布液3に変更し、金属酸化物を含む層の厚みを900nmに変更した。さらに、金属酸化物層用塗布液を塗布、乾燥、紫外線照射したのち、100℃で60分加熱する工程を追加した。前述した変更点及び追加点以外は実施例1と同様にして、実施例6の光学積層体を得た。
【0110】
[実施例7]
基材(シクロオレフィンポリマーフィルム、厚み47μm)上に、上記のハードコート層用塗布液を、塗布、乾燥、紫外線照射することにより、膜厚5μmのハードコート層を形成した。
次いで、ハードコート層上に、下記の金属酸化物層用塗布液3を塗布、乾燥、紫外線照射して、膜厚900nmの金属酸化物としてITO粒子を含む層を形成したのち、150℃で60分加熱した。
次いで、金属酸化物を含む層上に、上記の低屈折率層用塗布液を塗布、乾燥、紫外線照射することにより、膜厚100nmの低屈折率層を形成し、実施例7の光学積層体を得た。
【0111】
<金属酸化物層用塗布液3>
以下の各成分を混合して、金属酸化物層用塗布液3を調製した。
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.5質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・ITO粒子 9質量部
(平均粒子径30nm)
・光重合開始剤 0.4質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 184)
・レベリング剤 0.03質量部
(DIC株式会社製 メガファックF-477)
・メチルイソブチルケトン 89質量部
【0112】
[実施例8]
基材(厚み100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、実施例1と同様にしてハードコート層を形成した。
次いで、酸素ガスを混合したアルゴンを導入しながら、ITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、ハードコート層上に、膜厚130nmの金属酸化物膜を形成した。前記ITOターゲットは、インジウムとスズとの質量比が90:10である。前記金属酸化物膜は、ITOのアモルファス膜である。
次いで、金属酸化物膜側の面にコロナ放電処理を行った後、金属酸化物膜上に、実施例1と同様の低屈折率層を形成し、実施例8の光学積層体を得た。
【0113】
[比較例1]
酸素ガスを混合したアルゴンを導入しながら、ITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、厚み0.7mmのガラス基材に、膜厚140nmの金属酸化物膜を形成した。前記ITOターゲットは、インジウムとスズとの質量比が90:10である。次いで、200℃で30分加熱してアニール処理することにより、ガラス基材に厚み140nmのITOの結晶膜を有する、比較例1の光学積層体を得た。
【0114】
[比較例2]
基材(トリアセチルセルロースフィルム、厚み60μm)上に、下記の放熱層用塗布液を塗布、乾燥、紫外線照射し、膜厚1μmの放熱層を形成することにより、比較例2の光学積層体を得た。
【0115】
<放熱層用塗布液>
以下の各成分を混合して、放熱層用塗布液を調製した。
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 3.2質量部
(日本化薬社、商品名:KAYARAD PET-30)
・窒化ホウ素粒子 6.4質量部
(平均粒子径700nm)
・光重合開始剤 0.4質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名:Omnirad 184)
・メチルエチルケトン 90質量部
【0116】
【表1】
【0117】
表1の結果から、本開示の光学積層体は、高温環境下において視認性の低下を抑制し得ることが確認できる。
また、実施例1~8の光学積層体に対して、JIS K5600-5-1:1999に準拠したマンドレル試験を実施した。具体的には、実施例1~8の光学積層体から100mm×25mmの試験片を切り出し、前記試験片の短辺がマンドレル棒に平行になるようにして、マンドレル棒に巻き付けた。試験片は外曲げでマンドレル棒に巻き付けた。マンドレル棒として、φ10mm及びφ6mmを用いた。
上記のマンドレル試験の結果、実施例1~8の光学積層体は、φ10mmにおいて、金属酸化物を含む層及び低屈折率層に割れが確認できなかった。また、実施例1~3、5~7の光学積層体は、φ6mmにおいても、金属酸化物を含む層及び低屈折率層に割れが確認できなかった。これらの結果から、実施例1~8の光学積層体は、耐屈曲性が良好であり、フォルダブルタイプの画像表示装置、ローラブルタイプの画像表示装置に適用しやすいことが分かる。また、実施例の中でも、実施例1~3、5~7の光学積層体は、耐屈曲性が極めて良好であることが分かる。
【符号の説明】
【0118】
10:プラスチックフィルム
20:機能層α
21:ハードコート層
30:金属酸化物を含む層
40:機能層β
41:低屈折率層
100:光学積層体
図1