(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010984
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250116BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250116BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20250116BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20250116BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60L3/00 J
H02K7/116
H02K5/22
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113334
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】権 赫秀
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3D038AC23
3D235AA01
3D235BB45
3D235CC01
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
3D235DD19
3D235HH02
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CD06
5H125FF22
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5H605AA01
5H605BB05
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5H605CC06
5H605CC08
5H605DD13
5H605EC07
5H605EC20
5H607AA02
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC07
5H607DD03
5H607EE34
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】電動機や電力制御装置に対する冷却性能を向上することができる電動車両を提供する。
【解決手段】オイルポンプが吐出するオイルを電動機の冷却用として電動機に噴出する冷却油路は、電動機と電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して配置された電力制御装置との間に配置されている。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって電動機と電力制御装置との両方が冷却され、電動機及び電力制御装置の発熱が抑制され得る。よって、電動機や電力制御装置に対する冷却性能を向上することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機が動力伝達可能に連結された動力伝達装置と、駆動用のバッテリと、前記バッテリと前記電動機との間で授受される電力を制御する電力制御装置と、前記電動機及び前記動力伝達装置を含む駆動装置と前記電力制御装置とを機電一体ユニットとして収容するケースと、オイルを吐出するオイルポンプと、前記オイルを前記電動機の冷却用として前記電動機に噴出する冷却油路と、を備えた電動車両であって、
前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して配置されているものであり、
前記冷却油路は、前記電動機と前記電力制御装置との間に配置されていることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記電動機と前記電力制御装置とを電気的に接続する複数の電力線を更に備えるものであり、
前記冷却油路は、前記複数の電力線のうちの何れか二つの電力線の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記何れか二つの電力線は、前記複数の電力線のうちの経路が短い二つの電力線であることを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記電力制御装置は、U相、V相、W相の三相ブリッジ回路を有するインバータを備えるものであり、
前記電動機は、前記インバータによって駆動させられる三相交流の同期電動機であり、
前記複数の電力線は、U相、V相、W相の三相交流電流を流す三つの電力線であることを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項5】
前記何れか二つの電力線は、前記三つの電力線のうちの経路が短い二つの電力線であることを特徴とする請求項4に記載の電動車両。
【請求項6】
前記複数の電力線のうちの前記電動機に接続された複数の電動機側電力線と前記複数の電力線のうちの前記電力制御装置に接続された複数の電力制御装置側電力線とを連結する端子台を更に備えるものであり、
前記何れか二つの電力線は、前記電動機と前記端子台との間に配置された、前記複数の電動機側電力線のうちの何れか二つの電動機側電力線であることを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項7】
前記電動機は、第1電動機と第2電動機とを含むものであり、
前記駆動装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記第1電動機の回転軸線、前記第2電動機の回転軸線、及び前記動力伝達装置の回転軸線の各々が前記電動車両の前後進方向とは垂直な水平方向に平行となるように配置されていると共に、前記鉛直方向の上方から下方に前記第2電動機の回転軸線、前記第1電動機の回転軸線の順に配置されているものであり、
前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記鉛直方向下側部分が前記第2電動機のうちの前記鉛直方向上側部分と前記前後進方向に見て重なる位置に配置されていると共に、前記鉛直方向下側部分が前記第1電動機に対して前記鉛直方向の上方に配置されているものであり、
前記冷却油路は、前記第1電動機と前記電力制御装置のうちの前記鉛直方向下側部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電動車両。
【請求項8】
前記冷却油路の方向は、前記電動機の回転軸線の方向と同じ方向であることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを電動機の冷却用として電動機に噴出する冷却油路を備えた電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機と、前記電動機が動力伝達可能に連結された動力伝達装置と、駆動用のバッテリと、前記バッテリと前記電動機との間で授受される電力を制御する電力制御装置と、前記電動機及び前記動力伝達装置を含む駆動装置と前記電力制御装置とを機電一体ユニットとして収容するケースと、を備えた電動車両が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された機電一体装置がそれである。この特許文献1には、電力制御装置の一部が鉛直方向上側の面に設置され、他部が鉛直方向下側の面に設置された隔壁をケース内に備えており、この隔壁の内部には液体状の冷媒が流れる冷却路が設けられていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機電一体ユニットでは、電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して電力制御装置が搭載されており、小型化する為には、電動機と電力制御装置との間の物理的な距離を短くする必要がある。そうすると、例えば特許文献1に記載された機電一体装置においては、電力制御装置の他部と電動機との間で、雰囲気温度やケース等を介して相互に受熱し易くされる。電力制御装置は、発熱が抑制されることが望ましい。又、電動機は、発熱することで減磁し易く、性能が低下する為、発熱が抑制されることが望ましい。オイルポンプによって吐出されたオイルを電動機の冷却用として電動機に噴出する冷却油路を備えた電動車両も良く知られており、この冷却油路を用いることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動機や電力制御装置に対する冷却性能を向上することができる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の要旨とするところは、(a)電動機と、前記電動機が動力伝達可能に連結された動力伝達装置と、駆動用のバッテリと、前記バッテリと前記電動機との間で授受される電力を制御する電力制御装置と、前記電動機及び前記動力伝達装置を含む駆動装置と前記電力制御装置とを機電一体ユニットとして収容するケースと、オイルを吐出するオイルポンプと、前記オイルを前記電動機の冷却用として前記電動機に噴出する冷却油路と、を備えた電動車両であって、(b)前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して配置されているものであり、(c)前記冷却油路は、前記電動機と前記電力制御装置との間に配置されていることにある。
【0007】
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の電動車両において、前記電動機と前記電力制御装置とを電気的に接続する複数の電力線を更に備えるものであり、前記冷却油路は、前記複数の電力線のうちの何れか二つの電力線の間に配置されていることにある。
【0008】
また、第3の発明は、前記第2の発明に記載の電動車両において、前記何れか二つの電力線は、前記複数の電力線のうちの経路が短い二つの電力線である。
【0009】
また、第4の発明は、前記第2の発明に記載の電動車両において、前記電力制御装置は、U相、V相、W相の三相ブリッジ回路を有するインバータを備えるものであり、前記電動機は、前記インバータによって駆動させられる三相交流の同期電動機であり、前記複数の電力線は、U相、V相、W相の三相交流電流を流す三つの電力線である。
【0010】
また、第5の発明は、前記第4の発明に記載の電動車両において、前記何れか二つの電力線は、前記三つの電力線のうちの経路が短い二つの電力線である。
【0011】
また、第6の発明は、前記第2の発明から第5の発明の何れか1つに記載の電動車両において、前記複数の電力線のうちの前記電動機に接続された複数の電動機側電力線と前記複数の電力線のうちの前記電力制御装置に接続された複数の電力制御装置側電力線とを連結する端子台を更に備えるものであり、前記何れか二つの電力線は、前記電動機と前記端子台との間に配置された、前記複数の電動機側電力線のうちの何れか二つの電動機側電力線である。
【0012】
また、第7の発明は、前記第1の発明から第6の発明の何れか1つに記載の電動車両において、前記電動機は、第1電動機と第2電動機とを含むものであり、前記駆動装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記第1電動機の回転軸線、前記第2電動機の回転軸線、及び前記動力伝達装置の回転軸線の各々が前記電動車両の前後進方向とは垂直な水平方向に平行となるように配置されていると共に、前記鉛直方向の上方から下方に前記第2電動機の回転軸線、前記第1電動機の回転軸線の順に配置されているものであり、前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記鉛直方向下側部分が前記第2電動機のうちの前記鉛直方向上側部分と前記前後進方向に見て重なる位置に配置されていると共に、前記鉛直方向下側部分が前記第1電動機に対して前記鉛直方向の上方に配置されているものであり、前記冷却油路は、前記第1電動機と前記電力制御装置のうちの前記鉛直方向下側部分との間に配置されていることにある。
【0013】
また、第8の発明は、前記第1の発明から第7の発明の何れか1つに記載の電動車両において、前記冷却油路の方向は、前記電動機の回転軸線の方向と同じ方向である。
【発明の効果】
【0014】
前記第1の発明によれば、オイルポンプが吐出するオイルを電動機の冷却用として電動機に噴出する冷却油路は、電動機と電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して配置された電力制御装置との間に配置されている。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって電動機と電力制御装置との両方が冷却され、電動機及び電力制御装置の発熱が抑制され得る。よって、電動機や電力制御装置に対する冷却性能を向上することができる。
【0015】
また、前記第2の発明によれば、前記冷却油路は、電動機と電力制御装置とを電気的に接続する複数の電力線のうちの何れか二つの電力線の間に配置されている。電動機と電力制御装置との間の物理的な距離が短くされると、電力線が短くされる為、電力線での放熱性が悪化し、電動機と電力制御装置との間で相互に受熱し易くされる。これに対して、前記第2の発明により、冷却油路から噴出したオイルによって電力線が冷却され、電動機と電力制御装置との相互間の受熱が抑制され得る。
【0016】
また、前記第3の発明によれば、前記何れか二つの電力線は、複数の電力線のうちの経路が短い二つの電力線である。これにより、経路が長い電力線に比べて放熱性が悪い、経路が短い電力線が冷却され、電動機と電力制御装置との相互間の受熱が効率良く抑制され得る。
【0017】
また、前記第4の発明によれば、前記複数の電力線は、U相、V相、W相の三相交流電流を流す三つの電力線であるので、前記冷却油路は、三相交流電流を流す三つの電力線のうちの何れか二つの電力線の間に配置されている。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって電力線が冷却され、電動機と電力制御装置との相互間の受熱が抑制され得る。
【0018】
また、前記第5の発明によれば、前記何れか二つの電力線は、前記三つの電力線のうちの経路が短い二つの電力線である。これにより、経路が長い電力線に比べて放熱性が悪い、経路が短い電力線が冷却され、電動機と電力制御装置との相互間の受熱が効率良く抑制され得る。
【0019】
また、前記第6の発明によれば、前記何れか二つの電力線は、電動機と端子台との間に配置された、複数の電動機側電力線のうちの何れか二つの電動機側電力線である。従って、前記冷却油路は、複数の電動機側電力線のうちの何れか二つの電動機側電力線の間に配置されている。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって電力線が冷却され、電動機と電力制御装置との相互間の受熱が適切に抑制され得る。
【0020】
また、前記第7の発明によれば、前記駆動装置は、鉛直方向の上方から下方に第2電動機の回転軸線、第1電動機の回転軸線の順に配置されている。又、前記電力制御装置は、鉛直方向下側部分が第2電動機のうちの鉛直方向上側部分と前後進方向に見て重なる位置に配置されていると共に、鉛直方向下側部分が第1電動機に対して鉛直方向の上方に配置されている。又、前記冷却油路は、第1電動機と電力制御装置のうちの鉛直方向下側部分との間に配置されている。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって第1電動機と電力制御装置のうちの鉛直方向下側部分との両方が冷却され、電動機及び電力制御装置の発熱が抑制され得る。
【0021】
また、前記第8の発明によれば、前記冷却油路の方向は、電動機の回転軸線の方向と同じ方向である。これにより、電動機の回転軸線の方向の長さ全体に亘って鉛直方向上側から鉛直方向下側へ冷却用のオイルを流れ落とすことができ、電動機全体を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明が適用される電動車両の概略構成の一例を説明する図である。
【
図2】電動機の制御等に関わる電気的構成の一例を説明する図である。
【
図3】機電一体ユニットの概略構成の一例を説明する図である。
【
図4】オイルを用いた冷却システムの一例を説明する図である。
【
図5】オイルを用いた冷却システムにおけるケースのカバーの構造の一例を説明する図である。
【
図6】冷却パイプをバスバーの間に配置する冷却システムの一例を説明する図である。
【
図7】冷却パイプの搭載範囲の一例を示す図である。
【
図8】本発明が適用される電動車両の概略構成の一例を説明する図であって、
図1の電動車両とは別の実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0024】
図1は、本発明が適用される電動車両10の概略構成の一例を説明する図である。
図1において、電動車両10は、動力源として機能するエンジン12と、動力源として機能する電動機である第2電動機MG2と、を備えたハイブリッド車両である。又、電動車両10は、駆動輪14と動力伝達装置16と第1電動機MG1とを備えている。
【0025】
エンジン12は、公知の内燃機関である。駆動輪14は、電動車両10の前後進方向に対する左右の車輪である。動力伝達装置16は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、及び第2電動機MG2と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられている。
【0026】
第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、各々、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する公知の回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材である回転不能のケース18内に設けられている。
【0027】
動力伝達装置16は、ケース18内に、ダンパー20、入力軸22、変速部24、複合ギヤ26、ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32、ディファレンシャルギヤ34、リダクションギヤ36等を備えている。又、動力伝達装置16は、ディファレンシャルギヤ34に連結された1対のドライブシャフト38等を備えている。
【0028】
ダンパー20は、エンジン12のクランク軸12aに連結されている。入力軸22は、変速部24の入力回転部材として機能するものである。入力軸22は、ダンパー20に連結されており、ダンパー20などを介してクランク軸12aに連結されている。変速部24は、入力軸22に連結されている。複合ギヤ26は、変速部24の出力側の回転体である。複合ギヤ26は、外周面の一部にドライブギヤ26aが形成されている。ドライブギヤ26aは、変速部24の出力回転部材である。ドリブンギヤ28は、ドライブギヤ26aと噛み合っている。ドリブン軸30は、ドリブンギヤ28とファイナルギヤ32とを各々相対回転不能に固設する。ファイナルギヤ32は、ドリブンギヤ28よりも小径であって、デフリングギヤ34aと噛み合っている。リダクションギヤ36は、ドリブンギヤ28よりも小径であって、ドリブンギヤ28と噛み合っている。リダクションギヤ36には、第2電動機MG2のロータ軸が連結されており、第2電動機MG2が動力伝達可能に連結されている。
【0029】
このように構成された動力伝達装置16は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式或いはRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。動力伝達装置16は、エンジン12から出力される動力を、変速部24を介してドリブンギヤ28へ伝達する。又、動力伝達装置16は、第2電動機MG2から出力される動力を、リダクションギヤ36を介してドリブンギヤ28へ伝達する。動力伝達装置16は、ドリブンギヤ28へ伝達した動力を、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32、ディファレンシャルギヤ34、ドライブシャフト38等を順次介して駆動輪14へ伝達する。ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32は、第2電動機MG2からの動力をディファレンシャルギヤ34へ伝達する伝達機構であり、ドライブギヤ26aからの動力をディファレンシャルギヤ34へ伝達する伝達機構である。ディファレンシャルギヤ34は、エンジン12や第2電動機MG2からの動力を駆動輪14に分配する。ドライブシャフト38は、ディファレンシャルギヤ34からの動力を駆動輪14に伝達する。第2電動機MG2は、駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
【0030】
変速部24は、第1電動機MG1と差動機構40とを備えている。差動機構40は、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えた、公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置である。サンギヤSは、第1電動機MG1のロータ軸に連結されている。つまり、動力伝達装置16の一部である差動機構40は、電動機としての第1電動機MG1が動力伝達可能に連結されている。キャリアCAは、入力軸22に連結されている。つまり、差動機構40は、入力軸22等を介してエンジン12が動力伝達可能に連結されている。リングギヤRは、複合ギヤ26の内周面の一部に形成されており、ドライブギヤ26aに一体的に連結されている。つまり、差動機構40は、駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
【0031】
差動機構40は、エンジン12が動力伝達可能に連結された、差動作用を生じる差動機構として機能する。第1電動機MG1は、差動機構40に動力伝達可能に連結された差動用電動機である。差動機構40は、キャリアCAに入力されるエンジン12の動力を第1電動機MG1及びドライブギヤ26aに機械的に分割する動力分割機構である。変速部24は、第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構40の差動状態が制御される公知の電気式変速機構である。
【0032】
動力伝達装置16は、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4を有している。これらの4つの軸線CL1、CL2、CL3、CL4は、相互に平行である。第1軸線CL1は、入力軸22や第1電動機MG1のロータ軸の軸心である。つまり、第1軸線CL1は、第1電動機MG1の回転軸線である。変速部24及び第1電動機MG1は、第1軸線CL1回りに配置されている。第2軸線CL2は、ドリブン軸30の軸心である。ドリブンギヤ28及びファイナルギヤ32は、第2軸線CL2回りに配置されている。つまり、第2軸線CL2は、ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、及びファイナルギヤ32の回転軸線である。第3軸線CL3は、第2電動機MG2のロータ軸の軸心である。つまり、第3軸線CL3は、第2電動機MG2の回転軸線である。第2電動機MG2及びリダクションギヤ36は、第3軸線CL3回りに配置されている。第4軸線CL4は、ドライブシャフト38の軸心であって、ディファレンシャルギヤ34の軸心である。つまり、第4軸線CL4は、ドライブシャフト38やディファレンシャルギヤ34の回転軸線である。ディファレンシャルギヤ34は、第4軸線CL4回りに配置されている。第2軸線CL2及び第4軸線CL4は、動力伝達装置16の回転軸線である。
【0033】
ケース18は、ハウジング18aとケース本体18bとカバー18cとを備えている。ハウジング18aは、エンジン12側の開口された部分にエンジン12のエンジンブロック12bが連結されている。ハウジング18aとケース本体18bとは、ハウジング18aのエンジン12とは反対側の開口された部分とケース本体18bのエンジン12側の開口された部分とが合わせられるように、ボルト等の締め具によって一体的に連結されている。ケース本体18bとカバー18cとは、ケース本体18bのエンジン12とは反対側の開口された部分をカバー18cで塞ぐように、締め具によって一体的に連結されている。ケース本体18bは、変速部24やドリブンギヤ28やディファレンシャルギヤ34等を収容するギヤ室Rgと、第1電動機MG1や第2電動機MG2を収容するモータ室Rmと、を仕切る不図示の隔壁を含んで構成されるケースである。ケース本体18bは、ハウジング18aとでギヤ室Rgを形成する。ケース本体18bは、カバー18cとでモータ室Rmを形成する。このように、ケース18は、第1電動機MG1や第2電動機MG2と、ドライブシャフト38等を除く動力伝達装置16と、を収容する。
【0034】
図2は、第1電動機MG1や第2電動機MG2の制御等に関わる電気的構成の一例を説明する図である。
図2において、電動車両10は、高圧バッテリ50、補機バッテリ52、及び電力制御ユニット54などを更に備えている。
【0035】
高圧バッテリ50は、充放電可能な直流電源であって、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池などの二次電池である。高圧バッテリ50は、電力制御ユニット54に接続されている。高圧バッテリ50からは、蓄電された電力が電力制御ユニット54を介して例えば第2電動機MG2へ供給される。又、高圧バッテリ50には、第1電動機MG1の発電制御による電力や第2電動機MG2の回生制御による電力が電力制御ユニット54を介して供給される。高圧バッテリ50は、駆動用のバッテリである。
【0036】
電力制御ユニット54は、DCDCコンバータ56、電動機制御装置58、昇圧コンバータ60、及びインバータ62などを備えている。電力制御ユニット54は、高圧バッテリ50と第1電動機MG1及び第2電動機MG2との間で各々授受される電力を制御する電力制御装置である。
【0037】
DCDCコンバータ56は、高圧バッテリ50に接続されている。DCDCコンバータ56は、高圧バッテリ50の電圧を補機バッテリ52と同等の電圧に降圧して補機バッテリ52を充電する充電装置として機能する。補機バッテリ52は、電動車両10に備えられた補機、電動機制御装置58、後述する電子制御装置70等を作動させる為の電力を供給する。
【0038】
昇圧コンバータ60は、不図示のリアクトルやスイッチング素子などを備えている。昇圧コンバータ60は、高圧バッテリ50の電圧を昇圧してインバータ62に供給する機能と、インバータ62により直流に変換された電圧を降圧して高圧バッテリ50に供給する機能と、を有する昇降圧回路である。
【0039】
インバータ62は、MG1パワーモジュール64、MG2パワーモジュール66などを備えている。MG1パワーモジュール64は、スイッチング素子としてオン、オフ駆動させられることで、直流電流を三相交流電流に変換する複数のトランジスタなどを備えており、U相、V相、W相の三相ブリッジ回路を構成している。電動車両10は、バスバー68を更に備えており、第1電動機MG1は、MG1パワーモジュール64(つまりインバータ62)とは、バスバー68によって電気的に接続されている。バスバー68は、第1電動機MG1と電力制御ユニット54とを電気的に接続する電力線であって、複数のバスバー68u、68v、68wを含んでいる。複数のバスバー68u、68v、68wは、U相、V相、W相の三相交流電流を流す三つの電力線である。MG2パワーモジュール66は、MG1パワーモジュール64と同様の構成であるので、MG2パワーモジュール66の説明を省略する。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、各々、インバータ62によって駆動させられる三相交流の同期電動機である。
【0040】
インバータ62は、昇圧コンバータ60からの直流電流を第1電動機MG1及び第2電動機MG2を駆動する為の交流電流に変換する。インバータ62は、エンジン12の動力により第1電動機MG1で発電された交流電流、及び回生ブレーキにより第2電動機MG2で発電された交流電流を直流電流に変換する。インバータ62は、第1電動機MG1で発電された交流電流を走行状態に応じて、第2電動機MG2の駆動用電力として供給する。
【0041】
電動車両10は、電子制御装置70、通信線72などを更に備えている。電子制御装置70は、DCDCコンバータ56、電動機制御装置58などとの間で通信線72を介して信号を送受信する。電子制御装置70は、例えば不図示のセンサなどからの信号に基づいて電動車両10の各種の制御を行う。通信線72は、例えば公知のCAN(Controller Area Network)通信線である。
【0042】
電動機制御装置58は、電子制御装置70からの指令に基づいて、昇圧コンバータ60及びインバータ62の制御を行い、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を制御する。例えば、電動機制御装置58は、高圧バッテリ50からの直流電流を第1電動機MG1及び第2電動機MG2に各々用いられる交流電流に変換する。電動機制御装置58は、第2電動機MG2への電力供給や高圧バッテリ50の充電に必要な発電量を確保する為に第1電動機MG1を駆動する。電動機制御装置58は、運転者の要求トルクに応じた出力要求値に基づいて第2電動機MG2を駆動する。電動機制御装置58は、回生ブレーキの要求量に応じて第2電動機MG2を発電機として機能させる。
【0043】
図3は、駆動ユニット90の概略構成の一例を説明する図である。
図3は、電動車両10の左側からの側面図である。
図3において、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とは、駆動ユニット90として同じケース18内に収容されている。駆動ユニット90は、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とが一体化されたユニット、すなわち機電一体ユニットである。トランスアクスル92は、動力伝達装置16(26a、28、32、34a、36等)、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2を含む駆動装置である。尚、図中の鉛直方向、前後進方向、車幅方向(
図5参照)は、電動車両10における搭載状態での方向を示している。車幅方向は、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の軸線方向である。
【0044】
ケース18は、前述した、ハウジング18a、ケース本体18b、及びカバー18cに加え、保護プレート18dを更に備えている。ケース本体18bは、底壁と、前後進方向の前方側及び後方側において底壁の外周縁から鉛直方向の上方に各々延びる側壁と、を有しており、鉛直方向上部が開口している。保護プレート18dは、ケース本体18bにおける鉛直方向上部の開口を塞ぐ板状の部材である。ケース本体18bは、内部に不図示の隔壁を有しており、その隔壁によって内部が鉛直方向下部の空間である下部空間Aと鉛直方向上部の空間である上部空間Bとの2つの空間に区切られている。
【0045】
トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、ケース本体18bにおける下部空間Aやハウジング18aに収容されている。
【0046】
電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、ケース本体18bにおける上部空間Bに収容されている。上部空間Bは、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の配置によって生じた余剰空間B1と、第2電動機MG2の鉛直方向上部の最上空間B2と、を含んでいる。余剰空間B1は、最上空間B2よりも前後進方向の長さが短くされている。電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に隣接して配置されている。
【0047】
余剰空間B1には、電力制御ユニット54のうちで、比較的長さが短い部品であることや比較的交換が容易な部品であることを考慮して、例えばDCDCコンバータ56、昇圧コンバータ60が備える不図示のリアクトルなどが収容されている。
【0048】
図3を参照すれば、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々が電動車両10の前後進方向とは垂直な水平方向に平行となるように配置されている。又、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の位置が、鉛直方向の上方から下方に第2電動機MG2、ドリブン軸30、第1電動機MG1、ディファレンシャルギヤ34の順とされ、且つ、前後進方向の前方から後方に第1電動機MG1、ドリブン軸30、ディファレンシャルギヤ34、第2電動機MG2の順とされている。第1電動機MG1及び第2電動機MG2に着目すれば、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、鉛直方向の上方から下方に第3軸線CL3、第1軸線CL1の順に配置されている。これにより、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の軸間距離が適切に確保されつつ、トランスアクスル92の鉛直方向の体格が低減させられる。よって、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の配置によって余剰空間B1が生み出され、第2電動機MG2の鉛直方向上部に最上空間B2が生み出される。この上部空間B(B1+B2)に電力制御ユニット54が搭載される。
【0049】
電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、トランスアクスル92に対して鉛直方向の上方に配置されている。加えて、電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分がトランスアクスル92特には第2電動機MG2のうちの鉛直方向上側部分と水平方向特には前後進方向に見て重なる位置に配置されている。見方を換えれば、電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分が第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に配置されている。電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分は、例えば電力制御ユニット54のうちの余剰空間B1に収容された部品(例えばDCDCコンバータ56、リアクトル)である。
【0050】
トランスアクスル92の鉛直方向の体格が低減されたことによって生み出されたスペースに電力制御ユニット54が搭載され、駆動ユニット90の鉛直方向の上方にスペースが生み出される。
【0051】
ここで、電動車両10では、オイルFLDによって第1電動機MG1及び第2電動機MG2を冷却する。オイルFLDは、電力制御ユニット54の冷却にも用いられる。オイルFLDを用いた冷却システムについて、第1電動機MG1を例示して以下に詳細に説明する。
【0052】
図4は、オイルFLDを用いた冷却システムの一例を説明する図である。
図5は、オイルFLDを用いた冷却システムにおけるケース18のカバー18cの構造の一例を説明する図である。
図4は、電動車両10の左側からの側面図である。
図5は、電動車両10の後方、右側からの斜視図である。
【0053】
図1、
図4、
図5において、電動車両10は、ケース18内に、電動オイルポンプ74、オイル貯留部76、ストレーナ78、吸入油路80、吐出油路82、中間油路84、冷却パイプ86などを更に備えている。電動車両10は、ケース18例えばカバー18cの外側に取り付けられたオイルクーラ88を更に備えている。
【0054】
オイル貯留部76は、ギヤ室Rgの底部に設けられた、オイルFLDが溜まる油溜りである。電動オイルポンプ74は、電子制御装置70からの指令に基づいて駆動させられ、オイル貯留部76からストレーナ78及び吸入油路80を介してオイルFLDを吸入し、吐出油路82へオイルFLDを吐出するオイルポンプである。
【0055】
オイルクーラ88は、熱交換によってオイルFLDを冷却する熱交換器などである。オイルクーラ88においては、例えば電動式や機械式の冷却ファン等を用いてオイルFLDが冷却されたり、又は、クーラントなどの冷媒を用いてオイルFLDが冷却される。
【0056】
吐出油路82へ吐出されたオイルFLDは、オイルクーラ88を経由して中間油路84へ供給される。中間油路84は、オイルクーラ88の下流側の油路であって、オイルクーラ88と冷却パイプ86との間の油路であり、オイルFLDを冷却パイプ86に導く油路である。
【0057】
冷却パイプ86は、電動オイルポンプ74から吐出されたオイルFLDを、第1電動機MG1の冷却用として第1電動機MG1に噴出する冷却油路である。冷却パイプ86は、第1電動機MG1の鉛直方向の上方に隣接して配置された上掛けパイプである。冷却パイプ86は、車幅方向に配設されている。つまり、冷却パイプ86の方向は、第1軸線CL1の方向と同じ方向である。電動機の冷却としては上掛け冷却や軸芯冷却があるが、電動車両10では、第1電動機MG1の冷却として少なくとも上掛け冷却が採用されている。
【0058】
トランスアクスル92に対して鉛直方向の上方に電力制御ユニット54が配置されている駆動ユニット90では、第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に隣接して電力制御ユニット54が配置されている。駆動ユニット90の鉛直方向の体格を低減することを考慮すると、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間の物理的な距離を短くする必要がある。その為、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間で相互に受熱し易くされる。
【0059】
そこで、冷却パイプ86は、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間に配置されている。例えば、冷却パイプ86は、第1電動機MG1と電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分(つまり余剰空間B1に収容された部品)との間に配置されている。冷却パイプ86には、例えば第1電動機MG1及び電力制御ユニット54の各々に向かって開口する複数の噴出穴が設けられており、その噴出穴からオイルFLDが噴出させられる。第1電動機MG1の冷却としては上部からオイルFLDが噴出させられることで、オイルFLDが鉛直方向上側から鉛直方向下側まで流れ落ち、第1電動機MG1全体を冷却することができる。電力制御ユニット54は冷却パイプ86の鉛直方向上側に配置されることで、冷却パイプ86の本数が削減され、冷却を効率良く行うことができる。
【0060】
第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間に冷却パイプ86を配置することで、オイルFLDによる冷却を第1電動機MG1及び電力制御ユニット54の両方に対して行うことができる。これにより、オイルFLDによる冷却効率の最大化と冷却パイプ86の配置スペースの最小化とを実現することができる。
【0061】
第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間では、バスバー68を介した熱の伝導がある。第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間の物理的な距離が短くされると、バスバー68が短くされる。その為、バスバー68での放熱性が悪化し、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間で相互に受熱し易くされる。
【0062】
そこで、冷却パイプ86は、複数のバスバー68u、68v、68wのうちの何れか二つのバスバー68の間に配置されている。これにより、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間での受熱経路を冷却することができ、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との相互間の受熱を抑制することができる。
【0063】
経路が短いバスバー68は、経路が長いバスバー68に比べて放熱性が悪い。経路が短いバスバー68にオイルFLDを噴出すれば、効率良く受熱を抑制することができる。間に冷却パイプ86が配置される何れか二つのバスバー68は、例えば複数のバスバー68u、68v、68wのうちの経路が短い二つのバスバー68である。
【0064】
図6は、冷却パイプ86をバスバー68の間に配置する冷却システムの一例を説明する図である。
図6において、バスバー68は、MGバスバー68mとPCUバスバー68pとを含んでいる。MGバスバー68mは、複数のバスバー68u、68v、68wのうちの、第1電動機MG1に接続された複数の電動機側電力線であって、複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwを含んでいる。PCUバスバー68pは、複数のバスバー68u、68v、68wのうちの、電力制御ユニット54に接続された複数の電力制御装置側電力線であって、複数のPCUバスバー68pu、68pv、68pwを含んでいる。電動車両10は、複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwと複数のPCUバスバー68pu、68pv、68pwとを連結する端子台94を更に備えている。バスバー68uでは、MGバスバー68muとPCUバスバー68puとが端子台94において連結されている。バスバー68vでは、MGバスバー68mvとPCUバスバー68pvとが端子台94において連結されている。バスバー68wでは、MGバスバー68mwとPCUバスバー68pwとが端子台94において連結されている。間に冷却パイプ86が配置される何れか二つのバスバー68は、第1電動機MG1と端子台94との間に配置された、複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwのうちの何れか二つのMGバスバー68mである。つまり、冷却パイプ86は、複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwのうちの何れか二つのMGバスバー68mの間に配置されている。これらの何れか二つのMGバスバー68mは、例えば複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwのうちの経路が短い二つのMGバスバー68mv、68mwである。
【0065】
上述のように、本実施例によれば、冷却パイプ86は、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との間に配置されている。これにより、冷却パイプ86から噴出したオイルFLDによって第1電動機MG1と電力制御ユニット54との両方が冷却され、第1電動機MG1及び電力制御ユニット54の発熱が抑制され得る。よって、第1電動機MG1や電力制御ユニット54に対する冷却性能を向上することができる。
【0066】
また、本実施例によれば、冷却パイプ86は、複数のバスバー68u、68v、68wのうちの何れか二つのバスバー68の間に配置されている。これにより、冷却パイプ86から噴出したオイルFLDによってバスバー68が冷却され、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との相互間の受熱が抑制され得る。
【0067】
また、本実施例によれば、前記何れか二つのバスバー68は、複数のバスバー68u、68v、68wのうちの経路が短い二つのバスバー68である。これにより、経路が長いバスバー68に比べて放熱性が悪い、経路が短いバスバー68が冷却され、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との相互間の受熱が効率良く抑制され得る。
【0068】
また、本実施例によれば、前記何れか二つのバスバー68は、第1電動機MG1と端子台94との間に配置された、複数のMGバスバー68mu、68mv、68mwのうちの何れか二つのMGバスバー68mである。これにより、冷却油路から噴出したオイルによって電力線が冷却され、第1電動機MG1と電力制御ユニット54との相互間の受熱が適切に抑制され得る。
【0069】
また、本実施例によれば、冷却パイプ86は、第1電動機MG1と電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分との間に配置されている。これにより、冷却パイプ86から噴出したオイルFLDによって第1電動機MG1と電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分との両方が冷却され、第1電動機MG1及び電力制御ユニット54の発熱が抑制され得る。
【0070】
また、本実施例によれば、冷却パイプ86の方向は、第1軸線CL1の方向つまり車幅方向と同じ方向である。これにより、第1電動機MG1の車幅方向の長さ全体に亘って鉛直方向上側から鉛直方向下側へ冷却用のオイルFLDを流れ落とすことができ、第1電動機MG1全体を効率良く冷却することができる。
【0071】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0072】
例えば、前述の実施例において、第2電動機MG2の冷却として、第1電動機MG1の冷却と同様の上掛け冷却が採用されても良い。第2電動機MG2に対しても本発明を適用することができる。冷却パイプは、電動機(MG1、MG2)と電力制御ユニット54との間に配置されていれば、本発明の一定の効果が得られる。
図7は、冷却パイプの搭載範囲の一例を示す図である。
図7において、冷却パイプは、太線Cと太線Dとの間の配置されれば良い。
【0073】
また、前述の実施例において、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とは、ケース18内において、隔壁によって区切られた空間にそれぞれ収容されていたが、隔壁による区切りがない同じ空間に収容されても良い。
【0074】
また、前述の実施例において、オイルFLDを吐出するオイルポンプとして、電動オイルポンプ74に替えて又は加えて、機械式のオイルポンプが用いられても良い。
【0075】
また、前述の実施例において、電動車両は、
図8に示すように、駆動用の電動機MGを備えた電気自動車100であっても良い。
図8において、電気自動車100は、前述の実施例の電動車両10とは、第1軸線CL1回りの各構成部材(エンジン12、第1電動機MG1を含む変速部24)を備えていないことが主な相違点である。又、電気自動車100の電動機MGは、電動車両10の第2電動機MG2に相当する。電気自動車100では、例えば
図3に示したトランスアクスル92の各構成部材の配置位置において、第1電動機MG1が削除され、第2電動機MG2が電動機MGとして機能する。
【0076】
また、前述の実施例において、電動車両は、エンジンと、動力源として機能する駆動用の電動機と、エンジンに動力伝達可能に連結されてエンジンの動力によって発電する電力供給用の電動機と、を備えたシリーズハイブリッド車両であっても良い。このようなシリーズハイブリッド車両では、クラッチの作動によって、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路が遮断又は接続される構成であっても良い。又は、電動車両は、エンジンと、エンジンからの動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置と、その動力伝達装置を介して駆動輪に動力が伝達される電動機と、を備えたパラレルハイブリッド車両であっても良い。
【0077】
また、前述の実施例において、第1電動機MG1、第2電動機MG2、及び電動機MGは、三相交流の同期電動機に限らない。例えば、第1電動機MG1、第2電動機MG2、及び電動機MGは、単相同期電動機や誘導電動機などのその他の電動機であっても良い。電動機と電力制御装置とを電気的に接続する電力線は、電動機を駆動する電流を流す電力線であれば良い。
【0078】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:電動車両 16:動力伝達装置 18:ケース 50:高圧バッテリ(駆動用のバッテリ) 54:電力制御ユニット(電力制御装置) 62:インバータ 64:MG1パワーモジュール(三相ブリッジ回路) 66:MG2パワーモジュール(三相ブリッジ回路) 68(68u、68v、68w):バスバー(電力線) 68m(68mu、68mv、68mw):MGバスバー(電動機側電力線) 68p(68pu、68pv、68pw):PCUバスバー(電力制御装置側電力線) 74:電動オイルポンプ(オイルポンプ) 86:冷却パイプ(冷却油路) 90:駆動ユニット(機電一体ユニット) 92:トランスアクスル(駆動装置) 94:端子台 CL1:第1軸線(第1電動機の回転軸線) CL2:第2軸線(動力伝達装置の回転軸線) CL3:第3軸線(第2電動機の回転軸線) CL4:第4軸線(動力伝達装置の回転軸線) FLD:オイル MG1:第1電動機(電動機、同期電動機) MG2:第2電動機(電動機、同期電動機) 100:電気自動車(電動車両) MG:電動機