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特開2025-10994電動車の駆動用バッテリ回路システムに於けるリレーの溶着の診断方法
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  • 特開-電動車の駆動用バッテリ回路システムに於けるリレーの溶着の診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010994
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】電動車の駆動用バッテリ回路システムに於けるリレーの溶着の診断方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20250116BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250116BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20250116BHJP
   B60L 58/19 20190101ALI20250116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/19
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113353
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古島 耕一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綜一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉見 政史
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA05
5G503BB01
5G503EA09
5G503FA06
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC21
5H125CD04
5H125DD02
5H125FF16
(57)【要約】
【課題】 電動車の駆動用バッテリ回路システム1に於いて、バッテリBaとモータ3との間を選択的に導通/遮断するために設けられたリレーSMRBと、バッテリ内に於いて直列接続されているバッテリセル群Ba1、Ba2を並列に接続するためのリレーDCRの溶着の診断をより効率的に実行する。
【解決手段】 リレーSMRBの溶着診断は、バッテリとインバータとの間が電気的に接続されているモータの駆動の終了後又はバッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の終了後に、リレーDCRを導通状態にしたまま、リレーSMRBへ遮断状態にする指令を与えてリレーが遮断されているか否かを判定することにより行い、リレーDCRの溶着診断は、モータの駆動又は外部充電器による充電の開始前にリレーSMRBを導通状態にして、リレーDCRが遮断されているか否かを判定することにより行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車に於けるバッテリからモータへ電力を伝送する回路システムにして、前記バッテリが二つのバッテリセル群が選択的に直列又は並列に接続されるよう構成され、前記バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器及び前記バッテリの端子間電圧よりも低い直流出力電圧の外部充電器により充電可能であり、前記バッテリと前記モータの動作を制御するインバータとの間に設けられて前記バッテリと前記インバータとの間を選択的に導通又は遮断する第一のリレーと、前記バッテリ内に於ける前記二つのバッテリセル群の間に設けられて前記二つのバッテリセル群の間を選択的に導通又は遮断する第二のリレーとが設けられた回路システムに於ける前記第一及び第二のリレーの溶着の有無を診断する方法であって、
前記第一のリレーと前記第二のリレーとが導通状態にあり、前記バッテリと前記インバータとの間が電気的に接続されている前記モータの駆動の終了後又は前記バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の終了後に、前記第二のリレーを導通状態にしたまま、前記第一のリレーへ遮断状態にする指令を与えて前記第一のリレーが遮断されているか否かを判定することにより前記第一のリレーの溶着の有無を診断する第一の診断過程と、
前記第一のリレーが遮断状態にあり、前記第二のリレーに遮断状態にする指令が与えられている状態にあり、前記バッテリと前記インバータとの間が電気的に接続される前記モータの駆動又は前記外部充電器による充電の開始前に、前記第一のリレーを導通状態にして前記第二のリレーが遮断されているか否かを判定することにより前記第二のリレーの溶着の有無を診断する第二の診断過程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車の駆動用バッテリ回路システムに係り、より詳細には、バッテリ回路システムに於ける電力伝送経路を制御すべく、導通/遮断が切り換えられるリレーに於ける溶着の有無を診断する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
電動車(電気自動車、プラグインハイブリッド車等)に於けるバッテリからモータへ電力を伝送する回路システムに於いては、電力の伝送経路を切り換えるべく、幾つかの、回路の導通と遮断とを行うリレーが設けられているところ、それらのリレーが正常に作動しているか否か、即ち、リレーが溶着する故障(リレーが接続されたままとなる故障)が起きていないか否かを、回路システムからリレーを取り出すことなく診断できると便利である。例えば、特許文献1に於いては、バッテリからモータへ電力を伝送する回路システムに於いてバッテリとモータとの間が一つのリレーを介して接続されている場合、そのリレーが溶着すると、モータへの連続通電状態となってしまうことから、バッテリとモータとの間が直列接続された二つのリレーを介して接続し、一方のリレーが溶着して遮断できなくなったときには、他方のリレーを遮断できるようにして、モータへの連続通電状態を防止できるようにした構成に於いて、リレーの溶着の診断については、2つのリレーの接点の導通と遮断とに優先順位を付け、一方のリレーについてのみ溶着の有無の診断を行うようにして回路を簡素化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-237521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動車のバッテリ回路システムの構成を、外部の充電器(スタンドなど)からの直流電力をバッテリへ充電可能とした構成にする場合、充電器の出力電圧がバッテリの端子間電圧よりも低いとき、具体的には、例えば、バッテリの端子間電圧が800Vであるのに対して、充電器の出力電圧が400Vであるときには、その充電器ではバッテリの充電ができない。しかしながら、バッテリは、通常、複数のバッテリセルが直列に接続されているので、バッテリの端子間電圧よりも充電器の出力電圧が低いときには、直列に接続されているバッテリセルを複数の群に分けて、充電器に対して、バッテリセルの群を並列接続することで、バッテリの端子間電圧よりも低い出力電圧の充電器によるバッテリの充電を実行することが検討されている。その場合、バッテリに於いて、直列接続された複数のバッテリセルを並列接続に切り換えるための回路が設けられ、その回路の一部として、直列に接続されている複数のバッテリセルの群の間に於いて、選択的に導通と遮断が切り換えられるリレーが設けられることとなる(後述の実施形態の欄及び図面を参照)。
【0005】
上記の如く、直列接続された複数のバッテリセルの群の間に設けられているリレーも、バッテリとモータとの間のリレーと同様に、それを回路から取り出すことなく、適時、溶着の有無の診断ができることが好ましい。この点に関し、バッテリセル群の間のリレーは、バッテリ-モータ間のリレーと直列に接続されることになるので、これらの二つのリレーについて、同時に溶着の有無を診断することはできない。即ち、一方のリレーの診断の際には、他方は導通状態とする必要がある。また、各リレーは、導通状態にした後に遮断状態の指令を与える度に、正しく遮断されているか否か、即ち、溶着の有無の診断ができるようになっていることが好ましいところ、例えば、一のリレーについて、一度、溶着の有無の診断を行い、遮断状態にした後に、別のリレーの診断のためだけに、再び導通状態すると、再度、診断の実行の必要が生じ、診断処理が煩わしくなり、非効率である。
【0006】
かくして、バッテリ-モータ間のリレーとバッテリセル群間のリレーとの溶着の有無の診断に於ける上記の如き事情に鑑み、本発明の主な課題は、電動車の駆動用バッテリ回路システムに於いて、バッテリとモータとの間を選択的に導通/遮断するために設けられたリレーと、バッテリ内に於いて直列接続されている複数のバッテリセルの群を外部充電器による充電のために並列接続に切り換えるためにバッテリセル群の間に介入されたリレーとのそれぞれの溶着の診断をより効率的に実行する構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、電動車に於けるバッテリからモータへ電力を伝送する回路システムにして、前記バッテリが二つのバッテリセル群が選択的に直列又は並列に接続されるよう構成され、前記バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器及び前記バッテリの端子間電圧よりも低い直流出力電圧の外部充電器により充電可能であり、前記バッテリと前記モータの動作を制御するインバータとの間に設けられて前記バッテリと前記インバータとの間を選択的に導通又は遮断する第一のリレーと、前記バッテリ内に於ける前記二つのバッテリセル群の間に設けられて前記二つのバッテリセル群の間を選択的に導通又は遮断する第二のリレーとが設けられた回路システムに於ける前記第一及び第二のリレーの溶着の有無を診断する方法であって、
前記第一のリレーと前記第二のリレーとが導通状態にあり、前記バッテリと前記インバータとの間が電気的に接続されている前記モータの駆動の終了後又は前記バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の終了後に、前記第二のリレーを導通状態にしたまま、前記第一のリレーへ遮断状態にする指令を与えて前記第一のリレーが遮断されているか否かを判定することにより前記第一のリレーの溶着の有無を診断する第一の診断過程と、
前記第一のリレーが遮断状態にあり、前記第二のリレーに遮断状態にする指令が与えられている状態にあり、前記バッテリと前記インバータとの間が電気的に接続される前記モータの駆動又は前記外部充電器による充電の開始前に、前記第一のリレーを導通状態にして前記第二のリレーが遮断されているか否かを判定することにより前記第二のリレーの溶着の有無を診断する第二の診断過程と
を含む方法によって達成される。
【0008】
上記の構成に於いて、「電動車」は、電気自動車、プラグインハイブリッド車等などの外部充電器で充電可能なバッテリが搭載されている車両である。本発明の対象となる「回路システム」は、通常の態様にて、バッテリ、インバータ及びモータが電気的に接続され、外部充電器にてバッテリを充電するための回路を含むところ、特に、バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器と、バッテリの端子間電圧よりも低い直流出力電圧の外部充電器とのいずれでも、バッテリの充電が可能となるように、バッテリに於ける二つのバッテリセル群を選択的に直列又は並列に接続できるよう構成される。なお、「バッテリセル群」とは、複数のバッテリセルが直列又は並列に接続されてなる群である。「外部充電器」とは、スタンドなどに設置される直流電力を電動車の駆動用バッテリへ供給する充電器であってよい。そして、上記の回路システムに於いて、「第一のリレー」とは、バッテリとモータの動作を制御するインバータとの間に設けられ、バッテリとインバータとの間を選択的に導通又は遮断するリレーであり、これにより、バッテリとインバータ(及びモータ)との電気的な接続と切断とが行われる。なお、バッテリをインバータから電気的に切断している状態で、バッテリに於けるインバータへ接続される電線の端子部分(ワイヤハーネス)に電圧が印加されたままとなることを防止するべく、第一のリレーは、上記のワイヤハーネスよりもバッテリ側に設けられる。一方、「第二のリレー」とは、バッテリ内に於ける二つのバッテリセル群の間に設けられて二つのバッテリセル群の間を選択的に導通又は遮断するリレーであり、このリレーが導通しているときには、二つのバッテリセル群が直列に接続され、このリレーが遮断しているときには、二つのバッテリセル群は並列に接続可能となる。
【0009】
上記の回路システムに於ける第一のリレーと第二のリレーの状態は、より具体的には、先ず、車両の走行のために、モータが駆動されるとき、或いは、バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器によりバッテリを充電するときには、第二のリレーが導通されて、二つのバッテリセル群が直列に接続され、第一のリレーが導通され、バッテリがインバータ又は外部充電器の接続端へ電気的に接続される。バッテリの端子間電圧よりも低い直流出力電圧の外部充電器によりバッテリを充電するときには(モータは停止中)、第一のリレーは導通され、第二のリレーは遮断される。モータが停止され、外部充電器によるバッテリの充電も実行されていないときには、第一のリレーは、遮断状態にされ、これにより、バッテリがインバータ及び外部充電器の接続端から電気的に切断され、第二のリレーも遮断されて、二つのバッテリセル群間も電気的に切断されてよい。
【0010】
上記の回路システムの構成に於いて、第一のリレー及び第二のリレーの溶着の有無の診断(以下、「溶着診断」と称する。)は、各リレーに遮断の指令が与えられている状態でそのリレーが導通状態となっていないか否かを任意の方法にて確認することにより実行されてよく、それぞれ、そのリレーが導通状態にされた後、遮断される度に、実行されることが好ましい(リレーが導通されると、その度に電流が流れて、溶着してしまう可能性があるためである。)。従って、第一のリレー及び第二のリレーの溶着診断は、それぞれ、両方のリレーが導通状態にされるモータの駆動又はバッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器によるバッテリの充電の終了時に両方のリレーが共に遮断され、しかる後にそれぞれのリレーが再び導通状態とされる前までの間に、毎回、実行されることが好ましい。また、既に述べた如く、上記の回路の構成に於いて、第一のリレーと第二のリレーとは、直列に接続されているので、一方のリレーの溶着診断のときには、他方のリレーは、導通状態にしておく必要がある。即ち、一のリレーについて遮断されていることを確認した後に、別のリレーについての溶着診断をする際には、先に遮断を確認した一のリレーを導通状態にすることになるので、二つのリレーを共に遮断した状態で、二つのリレーの溶着診断を実行することはできないこととなる。
【0011】
上記の第一のリレー及び第二のリレーの溶着診断に関する事情を考慮して、本発明に於いては、上記の如く、第一のリレーの溶着診断は、第一のリレーと第二のリレーとの双方が導通状態にあるモータの駆動又はバッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の終了後に、第二のリレーを導通状態にしたまま、第一のリレーへ遮断状態にする指令を付与し、第一のリレーが遮断状態となるか否かを確認することにより実行され、一方、第二のリレーの溶着診断は、第一のリレーが遮断状態にあり、第二のリレーに遮断状態にする指令が与えられている状態であるモータの駆動又は外部充電器による充電の開始前に、第一のリレーを導通状態にして第二のリレーが遮断されているか否かを確認することにより実行される。
【0012】
かかる第一のリレー及び第二のリレーの溶着診断の構成によれば、上記二つのリレーの溶着診断がより効率的に実行できることとなる。即ち、第一のリレーと第二のリレーとの双方が導通状態にあるモータの駆動又は外部充電器による充電を終了するときには、モータ及びインバータへの連続通電を停止して、バッテリとインバータとの間のワイヤハーネスに於ける感電防止を図るべく、第一のリレーが遮断状態にされる必要があるので、その機会を利用して、第一のリレーの溶着診断を実行するが、第二のリレーの溶着診断は、それを実行するためには、第一のリレーを導通状態に戻さなければならないので、第一のリレーを導通状態にする次の機会である電動車の走行又は外部充電器による充電の開始前に実行するものとする。この構成によれば、一のリレーの溶着診断のためだけに、溶着のないことを診断した別のリレーを導通状態に戻し、更に、その別のリレーを遮断状態にする際に、一のリレーを導通状態に戻すといった煩わしい処理を実行することなく、二つのリレーの溶着診断がより効率的に完了できることとなる。
【0013】
上記の第一のリレー及び第二のリレーの溶着診断に於いて、診断されるリレーに溶着があるか否かは、そのリレーに遮断状態となる指令を与えたときに、確実に遮断されているか否かを判定することで診断されるところ、具体的には、例えば、インバータの入力側(バッテリ側)の両端子間に設けられた平滑化コンデンサの電圧を監視することで、各リレーが遮断されているか否かを判定することが可能である。より詳細には、後述の如く、モータの駆動又はバッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の終了時に、第一のリレーと第二のリレーとの双方が導通状態にある状態で、(バッテリとインバータとの間の第一のリレーと反対の側の電気的接続を遮断して)平滑化コンデンサを放電した後、第一のリレーにのみ遮断指令を与えたときに、(バッテリとインバータとの間の第一のリレーと反対の側の電気的接続を復帰しても)平滑用コンデンサの電圧が0Vであれば、第一のリレーは導通していないこととなり、遮断されていることが判定される。また、モータの駆動又はバッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器による充電の開始前に第一のリレーが遮断され、第二のリレーに遮断指令が与えられている状態で、第一のリレーにのみ導通指令を与えたときに、平滑化コンデンサの電圧が0Vのままであれば、第二のリレーは導通していないこととなり、遮断されていることが判定される。かかる構成によれば、各リレーの溶着診断が、そのためだけの要素を用いずに、回路に通常設けられる構成要素を用いて達成できる点で有利である。
【発明の効果】
【0014】
かくして、本発明の方法によれば、電動車の駆動用バッテリ回路システムに於いて、バッテリ-モータ間のリレーだけではなく、バッテリ内にもバッテリセル群間を選択的に導通/遮断するリレーが設けられている場合に、それぞれの溶着の診断をより効率的に実行できることとなる。即ち、本発明は、上記の二つのリレーが回路の作動のために導通又は遮断される機会に溶着の診断を実行し、溶着診断のためだけに、導通/遮断の切換えを行う必要がないので、バッテリの端子間電圧よりも低くない直流出力電圧の外部充電器と、バッテリの端子間電圧よりも低い直流出力電圧の外部充電器とのいずれでも、バッテリの充電が可能となるように、バッテリに於ける二つのバッテリセル群を選択的に直列又は並列に接続できるよう構成された回路システムに有利に用いることができる。
【0015】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態の適用される電動車の駆動用バッテリとモータの回路図である。
【符号の説明】
【0017】
1…回路システム,2…バッテリーインバータ間ワイヤハーネス,3…モータ,4…インバータ,5…直流電力充電用回路線,6…外部充電器,10、11…平滑化コンデンサ,13…バイパス回路,Ba…バッテリ,Ba1、Ba2…バッテリセル群,SMRB、SMRG、SMRP、DCRG、DCRB、DCRNG、DCR、DCRN…リレー
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0019】
回路システムの構成
本実施形態の方法は、図1に示されている如き回路システム1、即ち、電気自動車、プラグインハイブリッド車等の電動車に搭載され、スタンドなどの直流電力を出力する外部充電器6から充電可能なバッテリBaからインバータ4を経て駆動用モータ3へ駆動用電力を伝送するための回路システム、に於いて設けられたバッテリBaとインバータ4及び直流電力充電用回路線5との間を選択的に導通/遮断するリレーSMRBと、バッテリBa内に於ける二つのバッテリセル群Ba1、Ba2間を選択的に導通/遮断するリレーDCRとの溶着診断に適用される。
【0020】
図示の回路システム1に於いては、より詳細には、モータ3の駆動時には、バッテリBaは、全てのバッテリセル群Ba1、Ba2を直列に接続し、それらの端子間電圧の和にて、例えば、800Vの電圧にて、使用される。一方、バッテリBaの充電時には、外部充電器6の出力電圧が、バッテリBaの端子間電圧(バッテリセル群Ba1、Ba2の端子間電圧の和)よりも低くない場合(高圧充電。例えば、800V)とバッテリBaの端子間電圧よりも低い場合(低圧充電。例えば、400V)とのいずれでも、充電可能となるように、外部充電器6の接続される直流電力充電用回路線5に対して、バッテリセル群Ba1、Ba2を直列又は並列に接続できるよう回路の切換が可能となっている。具体的には、バッテリBaがインバータ4及び直流電力充電用回路線5に電気的に接続されるときには、リレーSMRB、SMRG(又はSMRP)、DCRB、DCRGがON(導通状態)されるところ、直流電力充電用回路線5に対してバッテリセル群Ba1、Ba2を直列に接続するときには、リレーDCRがONにされ、リレーDCRNG、DCRNB、DCRNがOFF(遮断状態)にされ、直流電力充電用回路線5に対してバッテリセル群Ba1、Ba2を並列に接続するときには、リレーDCRがOFFにされ、リレーDCRNG、DCRNB、DCRNがONにされる(この場合、バッテリセル群Ba1は、外部充電器6へ直接に接続され、バッテリセル群Ba2は、インバータ4とモータ3のコイルの中性点3aを介して外部充電器6へ接続される。)。なお、インバータ4のバッテリ側の両端子間には、平滑化コンデンサ10が、モータコイルの中性点3aと接地線との間には、平滑化コンデンサ11が設けられ、それぞれの電圧をモニターする電圧センサが設けられる。また、バッテリBaの両端子とインバータ4(及びモータ3)とは、ワイヤハーネス2を介して接続されるところ、バッテリBaとモータとを電気的に切り離す際に、ワイヤハーネス2に於いて、バッテリ電圧が印加されたままとなることによる感電を防止するべく、バッテリBaとモータとの間を遮断するリレーSMRB、SMRG(又はSMRP)、DCRNG、DCRNBは、全て、ワイヤハーネス2よりもバッテリ側に設けられる(図示の如く、交流電力を出力する充電器ACによるバッテリの充電のための構成7が設けられていてもよい。)。
【0021】
リレーSMRBとリレーDCRの溶着診断
既に触れた如く、バッテリBa-インバータ4及び直流電力充電用回路線5間のリレーSMRBと、バッテリセル群Ba1、Ba2間のリレーDCRとは、それぞれ導通状態にされ、電流が流れているときに、溶着してしまうことがあるので、各リレーは、ONからOFFにされる度に、溶着の診断、即ち、OFFの指令が与えられているにもかかわらず、ONとなっていないかどうかの診断が実行されることが好ましい。この点に関し、リレーSMRBとリレーDCRとは、直列に接続されているので、一方の溶着診断の際には、他方はONとなっている必要がある。また、二つのリレーの溶着診断に際して、一方について溶着がないことが診断された後に、他方の溶着診断のためだけに、診断の終わった一方をONにすると、そのリレーをOFFにするときに、再度、溶着診断が必要となり、処理が煩わしくなる(診断処理が必要以上に繰返されることとなり得る。)。更に、バッテリBaをインバータ4から電気的に切り離すときには、ワイヤハーネス2での感電防止のために、ワイヤハーネス2に直接に接続されたリレーSMRBは、できるだけ速やかにOFFにしておくことが好ましいのに対し、バッテリBa内のリレーDCRは、OFFになっていなくても、リレーSMRBがOFFになっていれば、ワイヤハーネス2に於ける電位には影響がない。
【0022】
上記の事情を考慮して、本実施形態に於いては、リレーSMRBとリレーDCRとがONからOFFへ切り換えられるモータの駆動又は高圧充電の終了時に、リレーDCRをONにしたまま、リレーSMRBの溶着診断を実行し、リレーSMRBとリレーDCRとがOFFからONへ切り換えられるモータの駆動又は高圧充電の開始の直前に、リレーSMRBをONにして、リレーDCRの溶着診断を実行し、これにより、一のリレーの溶着診断のためだけに別のリレーのOFF/ONの切換を実行せずに、二つのリレーの溶着診断がより効率的に達成される。二つのリレーの溶着診断は、以下の如く実行されてよい。
【0023】
(1)リレーSMRBの溶着診断
図1を参照して、モータの駆動又は高圧充電の実行中は、リレーSMRB、SMRG、DCRがONとなっているところ、モータの駆動又は高圧充電の終了に際して、まず、リレーSMRGがOFFにされ、更に、モータ3を駆動して、平滑化コンデンサ10が0Vになるまで放電される(ここで、平滑化コンデンサ10が放電されない場合には、リレーSMRGの溶着が判定される。)。しかる後、リレーSMRBにOFF指令を与え、リレーSMRGと並列の回路13を導通するリレーSMRPがONとされる(回路13とリレーSMRPは、平滑化コンデンサ10のプリチャージのために通常に設けられる回路要素である。)。この状態に於いて、平滑化コンデンサ10の電圧が0Vのままであれば、リレーSMRBは、導通しておらず、溶着は発生していないと診断される。一方、平滑用コンデンサ10の電圧が増大したときには、リレーSMRBが導通していることとなり、溶着は発生していると診断されることとなる。かかる診断の後、リレーDCRとリレーSMRPにOFF指令が与えられる。
【0024】
(2)リレーDCRの溶着診断
モータの駆動もバッテリの充電も実行していないとき、リレーSMRB、SMRG、SMRPがOFFとなっており(これらのリレーの溶着の有無は、モータの駆動又は高圧充電の終了時に診断済みである。もし溶着があれば、モータの駆動又は高圧充電は開始されない。)、リレーDCRには、OFF指令が与えられている状態である。この状態で、モータの駆動又は高圧充電の開始の際に、リレーDCRにON指令を与えずに、リレーSMRB、SMRPがONにされる。そうすると、リレーDCRがOFF状態となっていれば、バッテリセル群Ba1、Ba2が接続されていないので、平滑化コンデンサ10の充電は起こらない。これに対し、リレーDCRが溶着していると、バッテリセル群Ba1、Ba2が直列に接続され、平滑化コンデンサ10の電圧が上昇することとなるので、かくして、リレーDCRの溶着の有無が診断できることとなる。ここで、リレーDCRに溶着がなく、正常であることが診断されれば、リレーDCRがONにされ、平滑化コンデンサ10のプリチャージが実行され、しかる後に、リレーSMRGがONにされ、リレーSMRPがOFFにされて、モータの駆動又は高圧充電が開始される。
【0025】
上記のリレーの溶着診断に於いて、溶着があると診断されると、システムは作動が停止されることとなる。
【0026】
上記の本実施形態の構成によれば、バッテリBa-インバータ4及び直流電力充電用回路線5間のリレーSMRBと、バッテリセル群Ba1、Ba2間のリレーDCRとが設けられている回路システムに於いて、これら二つのリレーの溶着診断を実行する具体的な処理手順が提供される。本実施形態によれば、リレーの溶着診断のためにリレーを回路から取り出す必要はなく、また、溶着診断は、リレーの状態の操作をしながら、通常に回路に装備されている平滑化コンデンサの電圧をモニターするだけでよく、診断のための特別な要素を必要としない点でも有利である。
【0027】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1