(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025110073
(43)【公開日】2025-07-28
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20250718BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003789
(22)【出願日】2024-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 政信
(72)【発明者】
【氏名】仲田 徹
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 良輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 章博
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609QQ02
5H609QQ03
5H609QQ04
5H609RR36
5H609RR69
(57)【要約】
【課題】ステータコア内に冷媒流路を備えた、高出力なポンプが不要な回転電機を提供する。
【解決手段】本発明の回転電機は、ロータとステータとを備え、上記ステータが、ステータコアと該ステータコアのスロットに配置された界磁コイルと、冷媒流路とを有する。
そして、上記冷媒流路は、少なくとも一部に上記ロータの軸と平行な部分を有し、その平行部の内部に回転ベーンを備え、上記回転ベーンは、少なくとも一部が磁性体で形成されていることとしたため、低出力なポンプであっても冷媒を循環できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを備え、
上記ステータが、ステータコアと該ステータコアのスロットに配置された界磁コイルと、冷媒流路とを有する回転電機であって、
上記冷媒流路は、少なくとも一部に上記ロータの軸と平行な部分を有し、その平行部の内部に回転ベーンを備え、
上記回転ベーンは、少なくとも一部が磁性体で形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記回転ベーンは、その羽根の径方向先端が上記平行部の内周面に当接しており、
上記平行部の内周面及び/又は上記羽根の当接部に固体潤滑剤層を有することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
上記回転ベーンは、羽根が樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
上記冷媒流路の平行部が、上記ステータコアに形成された貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
上記界磁コイルが中空管のコイル線で形成され、
上記冷媒流路が、上記コイル線内に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に係り、更に詳細には、ステータコア内に冷媒流路を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は導電材と磁性材とを用いているため発熱が不可避であり、出力トルクを向上させるには効率よく冷却することが不可欠である。特に電気自動車(EV)の回転電機は、車両の限られたスペース有効に活用するため、小型かつ高性能であることが要望される。
【0003】
特許文献1には、ステータコアを貫通し、ハウジングに締結する中空ボルトの内部に冷媒を流すことでステータを効率よく冷却できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷媒は鉄心に比して透磁率が低く、ステータコア内の冷媒流路は、磁束密度の低下の原因ともなるため、冷媒流路を大径化することができない。このため、ステータコア内の冷媒流路は細く形成され圧力損失が大きくなるため、高出力な高価なポンプが必要となる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高出力なポンプが不要な、ステータコア内に冷媒流路を備える回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ステータコアの冷媒流路内に磁性体で形成された回転ベーンを備えることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の回転電機は、ロータとステータとを備え、上記ステータが、ステータコアと該ステータコアのスロットに配置された界磁コイルと、冷媒流路とを有する。
そして、上記冷媒流路は、少なくとも一部に上記ロータの軸と平行な部分を有し、その平行部の内部に回転ベーンを備え、上記回転ベーンは、少なくとも一部が磁性体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステータコアの冷媒流路内に磁性体で形成された回転ベーンを備えるすることとしたため、高出力なポンプが不要な回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の回転電機の一例を示す模式図である。
【
図3】ロータの回転に伴って、冷媒流路内の回転ベーンが回転する状態を説明する図である。
【
図4】回転ベーンのN極とS極の配列状態の一例を示す図である。
【
図5】ステータに形成された冷媒流路の配置状態の一例を示す断面図である。
【
図6】中空管のコイル線に冷媒流路を形成した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の回転電機について詳細に説明する。
本発明の回転電機1は、ハウジングに回転自在に装着されたロータ5と、該ロータ5の外周側に配置されたステータ4とを備える。
【0012】
上記ステータ4は、
図1に示すように、ステータコア41とコイル線42と有し、上記コイル線はステータコア41のスロットに挿通されて軸方向に延びている。そして、ステータコア41の軸方向端部で折り返して再びスロット内に挿通され、これを複数回繰り返して周方向に巻かれた界磁コイルを形成しており、ステータコアの両端にはコイルエンド43が形成される。
【0013】
上記ステータ4は、さらに冷媒流路2を備える。この冷媒流路2を流れる冷媒は、上記ステータ4と外部の熱交換器との間を循環することでステータ4を冷却する。
【0014】
上記冷媒としては、水やオイルなどの液体の他、空気などの気体も使用することができる。
【0015】
上記冷媒流路2は、ステータコア41の一端から他端に向けて上記ロータ5の軸と平行に延びる平行部21を有する。この平行部21は、断面が円形をしており、その内部に回転ベーン3を備える。
【0016】
上記回転ベーン3は、
図2に示すように、中心軸31の周囲に螺旋状の羽根32、すなわちスクリューを有する。また、少なくとも一部が磁性体で形成されており、この磁性体は、回転電機内において磁界の向きが上記中心軸31と直交した磁石を形成する。
【0017】
このように、上記回転ベーン31は、その一部が磁石を形成しているので、上記ロータ5が回転すると、
図3に示すように、その磁界の変化に同期して回転し、上記冷媒流路2と共に冷媒を軸方向に移送するネジポンプを形成する。
【0018】
本発明の回転電機は、冷媒流路の平行部21がネジポンプとして機能し、このネジポンプは、ロータ5の回転速度によって回転速度が変化するので、発熱量が大きくなる高回転時においては高速回転して多量の冷媒を移送できる。
【0019】
したがって、圧力損失が大きな細い冷媒流路であっても充分な量の冷媒を流すことができ、高出力な外部ポンプが不要となり、外部ポンプが低出力であっても冷媒を循環できる。
【0020】
上記回転ベーン3は、冷媒を移送する際に冷媒から軸方向の反力を受けるが、磁性体がロータ5の磁力に引き付けられて所定の位置に戻るので、冷媒流路2内に回転ベーンの軸受けを設けて軸方向の移動を規制する必要がなく、軸受け設置による圧力損失を防止できると共に作製が容易である。
【0021】
上記磁性体は永久磁石であることが好ましい。磁性体が、
図4に示すように、複数のN極とS極とが周方向に交互に並んだ構成であると、N極とS極とが1つずつである永久磁石に比してロータの回転速度に対する回転ベーンの回転速度が速くなり、冷媒の移送量を増加させることができる。
【0022】
上記回転ベーン3は、その全体が磁性体で形成されていてもよく、羽根32を樹脂で形成して中心軸31を磁性体で形成してもよく、要求される冷媒の移送能力により選択できる。
【0023】
回転ベーンの全体が磁性体で形成されていると、ロータの回転による磁界の変化に追従して回転し脱調し難くなるので、羽根の部分を大きくすることができ、冷媒の移送量を増加させることができ、また、羽根32を樹脂で形成することで軽量化を図ることができる。
【0024】
上記回転ベーン3は、羽根32の径方向先端が全域に亘って冷媒流路2の内周面に当接していることが好ましい。羽根32の先端が冷媒流路2に当接し、冷媒流路の内周面と羽根とで閉空間を形成していることで、冷媒の逆流を防止することができ、冷媒の移送効率、すなわち、冷却効率が向上する。
【0025】
また、上記羽根32が当接する冷媒流路2の内周面や羽根の当接部に固体潤滑剤層が形成されていると、上記羽根が回転摺動することによる摩耗を抑制することができ、長期に亘り冷媒を効率よく移送することができる。
【0026】
上記固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン(MoS2),二硫化タングステン(WS2),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの固体潤滑剤の他、グラファイト、フラーレン(C60),カーボンナノチューブ(CNT)DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素系固体潤滑剤を挙げることができる。
【0027】
上記冷媒流路2は、上記ステータコア41を軸方向に貫通した貫通孔によって形成できる。
上記貫通孔はスロットよりも外周側に設けられる。貫通孔をスロットの外側に設けることで、磁束密度の低下を抑制しつつ、漏れ磁束を利用して冷媒を移送することができる。
【0028】
このように、冷媒がステータコア41内を流れることで、冷却が困難なステータの界磁コイルに近くで抜熱することができ、冷却効率が向上する。
【0029】
上記冷媒流路と2なる貫通孔は、
図5に示すように、周方向に等間隔で複数設けることが好ましい。これにより周方向の冷却ムラを小さくすることができる。
【0030】
また、上記冷媒流路は、
図6に示すように、界磁コイルを中空管のコイル線42で形成することによっても形成できる。界磁コイルを中空のコイル線で形成し、該コイル線の中に冷媒を流すことで、冷却が困難なステータの界磁コイル自体を直接冷却することができ、冷却効率が向上する。
【符号の説明】
【0031】
1 回転電機
2 冷媒流路
21 平行部
3 回転ベーン
31 中心軸
32 羽根
4 ステータ
41 ステータコア
42 コイル線
43 コイルエンド
5 ロータ