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2025-110090レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025110090
(43)【公開日】2025-07-28
(54)【発明の名称】レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20250718BHJP
【FI】
G02B7/00 A
G02B7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003822
(22)【出願日】2024-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】関根 和則
【テーマコード(参考)】
2H043
【Fターム(参考)】
2H043AA02
2H043AA09
2H043AA18
2H043AA24
2H043AA27
(57)【要約】
【課題】レーザー光の入射方向の遠方から、検査者がレーザー光のオリエンテーションを視認するための器具を開示すること。
【解決手段】レーザー光200のオリエンテーションを視認するための器具100は、レーザー光200を通すための直線状の貫通孔101aが形成された板101を含む。板101は、再帰反射面を構成する第1面部101b1と第2面部101b2を含む。貫通孔101aから僅かにずれたレーザー光200の一部は、貫通孔101aを囲む第1面部101b1で反射し、さらに第1面部101b1を囲む第2面部101b2で反射する。第2面部101b2での反射光の一部は、レーザー光200の入射方向に向かって進む。つまり、レーザー光200の貫通孔101aからの僅かなずれは、貫通孔101aから第2面部101b2で光っている部分までの距離に拡大変換される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具であって、
上記レーザー光を通すための直線状の貫通孔が形成された板
を含み、
上記貫通孔の長さ方向は、上記板の厚さ方向と平行であり、
上記板の一方の面が、その一部として、第1面部と第2面部を含み、
上記第1面部は、上記貫通孔を囲む、上記一方の面の縁であり、
上記第2面部は、上記第1面部を囲む面であり、
上記第1面部と上記第2面部が再帰反射面を構成する
ことを特徴とする器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、
上記厚さ方向に対する上記第1面部の傾斜角が、上記厚さ方向に対する上記第2面部の傾斜角よりも小さい
ことを特徴とする器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の器具において、
上記第1面部は、研磨面である
ことを特徴とする器具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の器具において、
上記第2面部は、粗面である
ことを特徴とする器具。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の器具において、
上記第2面部が蛍光材料で覆われている
ことを特徴とする器具。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の器具において、
上記第2面部がフォトン・アップコンバージョン材料で覆われている
ことを特徴とする器具。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の器具において、
上記一方の面は、上記レーザー光に向かう面である
ことを特徴とする器具。
【請求項8】
レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具であって、
上記レーザー光を通すための直線状の貫通孔が形成された板
を含み、
上記貫通孔の長さ方向は、上記板の厚さ方向と平行であり、
上記板の一方の面が、その一部として、第1面部と第2面部を含み、
上記第1面部は、上記貫通孔を囲む、上記一方の面の縁であり、
上記第1面部は、上記貫通孔を通り且つ上記貫通孔の長さ方向と平行な第1直線の上の第1点を頂点として持つ第1錐体の側面の一部であり、ただし、当該第1点から上記一方の面を見ることができ、
上記第2面部は、上記第1面部を囲む面であり、
上記第2面部は、上記貫通孔の長さ方向と平行な第2直線の上の第2点を頂点として持つ第2錐体の側面の一部である
ことを特徴とする器具。
【請求項9】
請求項8に記載の器具において、
上記第1錐体の立体角が、上記第2錐体の立体角よりも小さい
ことを特徴とする器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザー光のオリエンテーション(orientation)を視認するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光は例えば計測、加工などに利用される。このようなレーザー光の実用において、通例、レーザー光を、対象物に対して、定められたオリエンテーション(つまり、幾何学的状態)で照射する。このため、レーザー光を用いて計測、加工などを行う前に、検査者が目視で、対象物に対するレーザー光のオリエンテーションを設定する必要がある。
【0003】
レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具の先行技術のいくつかの例は、特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開平6-164023号公報
【特許文献2】日本国特開2004-340598号公報
【特許文献3】日本国特開2020-27112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される色素レーザー装置は光軸調整用ターゲットを含んでいる。光軸調整用ターゲットは、レーザー光を通過させるための小穴を含む。光軸調整用ターゲットの一面は、レーザー光が乱反射することによってレーザー光の当たっている位置をよく見えるようにするためのスリ面である。レーザー光の光軸が正しい光軸からずれている場合、光軸調整用ターゲットでレーザー光が乱反射するので、レーザー光のずれ方向を知ることができる。特許文献1に開示された発明によると、レーザー光の光軸が正しい光軸から著しくずれている場合、検査者が目視でレーザー光のずれ方向を知ることができる。しかし、レーザー光の光軸が正しい光軸から僅かにずれている場合、小穴の縁の僅かな部分が光るだけであるから、遠方から検査者が目視でレーザー光のずれ方向を知ることは容易でない。
【0006】
特許文献2に開示されるアライメント治具は、被照射体に取り付けられる治具本体を含む。治具本体は、レーザー光を通過させるピンホールを備えた壁部と、壁部に対向して配置された反射鏡と、壁部および反射鏡を相互に固定した状態に保持する開口部を含む。反射鏡で反射したレーザー光は、レーザー光を導入する壁部の内面にレーザースポットを形成する。したがって、検査者は、開口部からそのレーザースポットを観察することによって、レーザー光のずれ方向を知ることができる。しかし、その構造の故に、レーザー光の入射方向からレーザースポットを観察することが不可能である。
【0007】
特許文献3に開示されるアライメント装置は、レーザー光源ユニットと反射鏡ユニットを含む。反射鏡ユニットは、凸面鏡又は凹面鏡である拡散反射鏡と、拡散反射鏡の前面に固定されたピンホール板を含む。レーザー光源ユニットのレーザー光射出面は、拡散反射鏡からの反射光が当たるターゲット面である。拡散反射鏡で反射したレーザー光は、レーザー光源ユニットのレーザー光射出面にレーザースポットを形成する。したがって、検査者は、そのレーザースポットを観察することによって、レーザー光のずれ方向を知ることができる。しかし、その構造の故に、レーザー光の入射方向からレーザースポットを観察することが不可能である。
【0008】
上述の背景技術および技術的課題に鑑みて、レーザー光の入射方向の遠方から、検査者がレーザー光のオリエンテーションを視認するための器具を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに記載される技術事項は、特許請求の範囲に記載された発明を明示的にまたは黙示的に限定するためではなく、さらに、本発明によって利益を受ける者(例えば出願人と権利者である)以外の者が特許請求の範囲に記載された発明を限定できるようにするためでもなく、単に、本発明の要点を容易に理解するために提供される。他の観点からの本発明の概要は、例えば、この特許出願の出願時の特許請求の範囲から理解できる。
【0010】
本開示の器具は、レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具であって、レーザー光を通すための直線状の貫通孔が形成された板を含む。板は、再帰反射面を構成する第1面部と第2面部を含む。貫通孔から僅かにずれたレーザー光の一部は、貫通孔を囲む第1面部で反射し、その後、第1面部を囲む第2面部で反射する。第2面部での反射光の一部は、レーザー光の入射方向に向かって進む。つまり、レーザー光の貫通孔からの僅かなずれは、貫通孔から第2面部で光っている部分までの距離に拡大変換される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の器具によると、レーザー光の入射方向の遠方から、検査者がレーザー光のオリエンテーションを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の器具。(a)斜視図。(b)平面図。(c)Z-Z線断面図。
図2】実施形態の器具による距離と面積の拡大変換を説明するための図。(a)断面図。(b)平面図。
図3】実施形態の器具の第1面部と第2面部の関係の条件を説明するための図。
図4】実施形態の器具の第1面部と第2面部の関係の条件を説明するための図。
図5】実施形態の器具の第1面部と第2面部の関係の条件を説明するための図。
図6】実施形態の器具の第1面部と第2面部の関係の条件を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本開示の器具の実施形態を説明する。なお、図は実施形態の理解のためのものであり、図示される各構成要素の寸法は実際の寸法と必ずしも同じとは限らない。
【0014】
レーザー光200のオリエンテーションを視認するための器具100(図1図2参照)は、レーザー光200を通すための直線状の貫通孔101aが形成された板101を含む。板101の形状は、これに限定されず、円板である。貫通孔101aの形状は、これに限定されず、円筒状である。板101の材質は、これに限定されず、金属である。貫通孔101aの長さ方向は、板101の厚さ方向と平行である。
【0015】
板101の一方の面101bは、その一部として、再帰反射面を構成する第1面部101b1と第2面部101b2を含む。板101の一方の面101bは、レーザー光200に向かう面である。第1面部101b1は、貫通孔101aを囲む、一方の面101bの内側の縁(ここでの「縁」は、物の周りの、或る幅を持っている部分である)である。第1面部101b1の内側の縁(ここでの「縁」は、物の端つまり境界である)は、貫通孔101aの、一方の面101bにおける開口縁(ここでの「縁」は、物の端つまり境界である)と一致している。つまり、第1面部101b1と貫通孔101aの内壁面は互いに接続している。第2面部101b2は、第1面部101b1を囲む面である。第1面部101b1と第2面部101b2は互いに接続していてもよいし、互いに分離していてもよい。第1面部101b1と第2面部101b2が再帰反射面を構成しているので、貫通孔101aから僅かにずれたレーザー光200の一部は、貫通孔101aを囲む第1面部101b1で反射し、その後、第1面部101b1を囲む第2面部101b2で反射する。一般に、第2面部101b2は完全な平坦ではないので、第2面部101b2での反射光の一部は、レーザー光200の入射方向に向かって進む。つまり、レーザー光200の貫通孔101aからの僅かなずれは、貫通孔101aから第2面部101b2で光っている部分101yまでの距離に拡大変換される。さらに、レーザー光200の貫通孔101aからの僅かなずれによって貫通孔101aの縁で光る部分101xの面積は、第2面部101b2で光っている部分101yの面積に拡大変換される。
【0016】
検査者がレーザー光200の入射方向の遠方から、レーザー光200の貫通孔101aからの僅かなずれを目視することは容易ではない。しかし、上述の距離と面積のそれぞれの拡大変換によって、レーザー光200の入射方向の遠方からであっても、検査者は、第2面部101b2で光っている部分101yを観察することによって、レーザー光200のオリエンテーションを容易に把握することができる。
【0017】
以下、再帰反射面の好ましい構成を説明する。まず、下記条件が成立することが好ましい。傾斜角は、貫通孔101aの長さ方向と面部(第1面部101b1または第2面部101b2)が成す鋭角である。一般に、レーザー光200の入射角は小さい値(例えば-5°から+5°の範囲)が想定されているので、下記条件が成立する場合、板101の厚さを低減できる。図3において、見易さを考慮して、断面のハッチングを省略している。
(条件)
板101の厚さ方向に対する第1面部101b1の傾斜角α(図3参照)は、板101の厚さ方向に対する第2面部101b2の傾斜角β(図3参照)よりも小さい。
【0018】
第1面部101b1は研磨面であることが好ましい。第1面部101b1をできるだけ平坦にすることによって、貫通孔101aから僅かにずれたレーザー光200の一部が鏡面反射し易くなる。第1面部101b1での鏡面反射によって、レーザー光200の一部の反射光の、第1面部101b1の表面形状以外に由来する広がりを抑制できる。
【0019】
第2面部101b2は粗面であることが好ましい。第2面部101b2が粗面であることによって、第1面部101b1からの反射光が乱反射(つまり、粗い表面での鏡面反射)し易くなる。したがって、第2面部101b2での反射光の一部は、レーザー光200の入射方向に向かって進む。
【0020】
第2面部101b2は蛍光材料で覆われていてもよい。レーザー光200が紫外レーザーである場合、第1面部101b1からの反射光が当たった第2面部101b2の部分101yは発光するので、視認性が向上する。
【0021】
第2面部1010b2はフォトン・アップコンバージョン材料で覆われていてもよい。レーザー光200が赤外レーザーである場合、第1面部101b1からの反射光が当たった第2面部101b2の部分101yは発光するので、視認性が向上する。
【0022】
図4を参照して別の観点から述べれば、第1面部101b1は、例えば、貫通孔101aを通り且つ貫通孔101aの長さ方向と平行な第1直線L1の上の第1点P1を頂点として持つ第1錐体の側面(つまり、錐体面の一部)の一部であり、第2面部101b2は、貫通孔101aの長さ方向と平行な第2直線L2の上の第2点P2を頂点として持つ第2錐体の側面(つまり、錐体面の一部)の一部である。ただし、第1点P1から一方の面101bを見ることができる。第1錐体は直錐でも斜錐でもよく、第1錐体が直錐である場合、第1錐体は円錐でも多角錐でもよい。第2錐体は直錐でも斜錐でもよく、第2錐体が直錐である場合、第1錐体は円錐でも多角錐でもよい。第1直線L1と第2直線L2は一致していてもよいし(図4参照)、一致していなくてもよい。第1錐体の立体角が第2錐体の立体角よりも小さいことが好ましい。このことは、上記条件に対応する。図4において、見易さを考慮して、断面のハッチングを省略している。
【0023】
上述のとおり、第1面部101b1と第2面部101b2は互いに分離していてもよく、この場合、例えば、第1面部101b1と第2面部101b2の間に位置し、第1面部101b1と第2面部101b2のそれぞれに接続している第3面部101b3が存在する。第1面部101b1からの反射光を遮らないという条件を除いて、第3面部101b3の形状に限定は無い。通例、第3面部101b3は板101の厚さ方向と直交する方向を法線として持つ平面である(図5参照)。
【0024】
図5を参照してさらに別の観点から、再帰反射面の構成を説明する。説明の便宜から、第1面部101b1は円錐体の側面の一部であり、第2面部101b2は円錐体の側面の一部であり、第3面部101b3は、第1面部101b1と第2面部101b2の間に位置し、且つ、第1面部101b1と第2面部101b2のそれぞれに接続している。図5において、見易さを考慮して、断面のハッチングを省略している。
【0025】
以下、角度は、貫通孔101aの中心軸線101a1から反時計回りに計測する。図5において記号の定義は下記のとおりである。
A:第1面部101b1の最も内側、かつ、レーザー光200の一部が反射する位置
B:第2面部101b2上で、第1面部101b1からの反射光が当たる位置
C:第1面部101b1の最も外側の位置
D:第2面部101b2の最も内側の位置
K:第1面部101b1と第2面部101b2をそれぞれ外挿した時の交点
θ1:レーザー光200の入射角
θ2:第1面部101b1の角度
θ3:第1面部101b1からの反射光の角度
θ4:第2面部101b2の角度
θ5:第1面部101b1からの反射光と第2面部101b2の成す角
1:Aを通り貫通孔101aの中心軸線と平行な直線と点Kの間の距離
2:Aを通り貫通孔101aの中心軸線と平行な直線と点Bの間の距離(第2面部101b2の最も外側の位置)
3:Aを通り貫通孔101aの中心軸線と平行な直線と点Cの間の距離(第1面部101b1の最も外側の位置)
4:Aを通り貫通孔101aの中心軸線と平行な直線と点Dの間の距離(第2面部101b2の最も内側の位置)
【0026】
(必須条件)
再帰反射が成立するための、角度と寸法の範囲に関する必須条件は次のとおりである。まず、レーザー光200の一部が第1面部101b1で第2面部101b2に向かって反射し、その後、第2面部101b2に当たるための角度と寸法の範囲は次のとおりである。
-90°<θ1<90°
90°<θ2<180°
【0027】
θ1とθ2の関係は、第1面部101b1での反射が起きるために、次の関係が成立する。
θ1+180°>θ2
【0028】
さらに、入射角と反射角の関係から、次の関係が成立する。
θ3=2θ2-θ1-180°
【0029】
さらに、第1面部101b1からの反射光が第2面部101b2に当たるために、次の関係が成立する。
0°<θ4<θ3
【0030】
次に、L1とL2の関係を説明する。点Aを原点(0,0)としたとき、点Kの位置座標は(-L1,-L1tan(θ2-90°))である。ただし、2次元直交座標系を図5に示すとおりに設定した。また、L2は式(1)で表される。
【数1】
【0031】
図5に示す断面での幾何学的関係から、L3とL4について次の関係が成立する。
0<L3<L1
1<L4<L2
【0032】
(θ1=0°の場合の実用のための条件)
次に、入射角θ1=0°の場合において、実用的な器具100を実現するための、角度と寸法の範囲に関する好ましい条件は次のとおりである。入射角θ1=0°の場合は、レーザー光200の進行方向が貫通孔101aの長さ方向と一致しているものの、レーザー光200のオリエンテーションが貫通孔101aの長さ方向と直交する方向にずれる可能性を考慮している場合である。下記の好ましい条件は、上記必須条件の成立を前提としている。
【0033】
上述した距離の拡大変換の観点から、θ3は90°に近い値であることが好ましい。したがって、例えば次の関係が成立する。
70°≦θ3≦110°
【0034】
この場合、上述の関係式θ3=2θ2-θ1-180°から、次の関係が成立する。
125°≦θ2≦145°
【0035】
θ4が小さすぎるならば上述した面積の拡大変換が不十分であり、θ4が大きすぎるならば第2面部101b2での反射光の輝度が小さくなる。換言すれば、θ5=θ3-θ4が小さすぎても大きすぎてもいけない。したがって、例えば次の関係が成立することが好ましい。
45°≦θ4≦θ3-15°
【0036】
角度θ2,θ3,θ4のそれぞれの値の例を表1に示す。
【表1】
【0037】
レーザー光の光軸が正しい光軸から僅かにずれている場合、検査者は器具100のアドバンテージを実感できる。したがって、L1とL3について例えば次の関係が成立することが好ましい。Dは貫通孔101aの直径である。
0.5D≦L3<L1≦D
【0038】
器具100の実用的な大きさの観点から、L2について例えば次の関係が成立することが好ましい。
2≦100D
【0039】
(θ1≠0°の場合の実用のための条件)
次に、入射角θ1≠0°の場合において、実用的な器具100を実現するための、角度と寸法の範囲に関する好ましい条件は次のとおりである。入射角θ1≠0°の場合は、レーザー光200の進行方向が貫通孔101aの長さ方向と一致しない可能性を考慮している場合である。下記の好ましい条件は、上記必須条件の成立を前提としている。また、角度θ2,θ3,θ4のそれぞれの範囲は、上述したθ1=0°の場合の実用のための条件に従う。
【0040】
検査者は、通例、レーザー光200を貫通孔101aに正しく通すことを望むので、レーザー光200の進行方向が貫通孔101aの長さ方向と一致しない場合であっても、入射角θ1の範囲は大きくなく、例えば次のとおりであると考えてよい。
-5°≦θ1≦5°
【0041】
以上に説明した条件に基づく角度θ1,θ2,θ3,θ4,θ5のそれぞれの値の例を表2に示す。
【表2】
【0042】
-5°<θ1<5°の範囲および127.5°<θ2<142.5°の範囲においてθ1,θ2が任意の値を取った場合、70°<θ3<110°且つ15°<θ5が成り立つθ4の範囲を表3に示す。
【表3】
【0043】
また、L1,L2,L3,L4のそれぞれの範囲は、上述したθ1=0°の場合の実用のための条件に従う。
【0044】
図6を参照して、さらに別の観点から、再帰反射面の構成を説明する。説明の便宜から、第1面部101b1は円錐体の側面の一部であり、第2面部101b2は円錐体の側面の一部であり、第1面部101b1と第2面部101b2は互いに接続している。もちろん、第3面部101b3が存在してもよい。図6において、見易さを考慮して、断面のハッチングを省略している。
【0045】
記号は、板101の貫通孔101aの中心軸線101a1を含む任意に選択された平面による板101の断面を示す図6に基づいて改めて定義される。
α:板101の厚さ方向に対する第1面部101b1の傾斜角
β:第1面部101b1と第2面部101b2が成す角
γ:レーザー光200の入射角の想定される最大値
D:第1面部101b1で反射した入射角γのレーザー光200の、第2面部101b2までの最大到達距離
H:貫通孔101aの長さ
R:第2面部101b2の長さ
S:第1面部101b1の長さ
【0046】
図6示す断面図における幾何学的関係から、式(2),(3),(4)が成立しなければならない。式(2)の左辺の値が小さすぎるならば第2面部101b2での反射光の輝度が小さくなるので、予め定めた閾値Tに対して式(2’)が成立するのが好ましい。Tの具体的な値は例えばπ/12[rad]である。γの値は例えばπ/36[rad]である。さらに好ましくはπ/9≦α≦π/4,α<βである。
【数2】
【0047】
さらに、ランドルト環に基づく視力1の、2m離れた位置での分解能は約0.6mmであり、視力0.5のそれは約1.2mmであり、視力0.2のそれは約3mmである。したがって、器具100が検査者から2m離れた位置に置かれている場合、距離の拡大変換の観点からDは好ましくは1mm以上であり、さらに好ましくは2mm以上であり、望ましくは5mm以上である。逆に、ランドルト環に基づく視力ξを持つ検査者が器具100を使用する場合、検査者と器具100の間の最大距離G[mm]は、式(4)で定まるD[mm]を用いて式(5)で与えられる。
【数3】
【0048】
<補遺1>
上述の各種の実施形態およびその変形例に開示された技術的特徴は互いに排他的であるとは限らない。技術的観点から矛盾の無い限り、或る実施形態あるいはその変形例の技術的特徴を他の実施形態あるいはその変形例の技術的特徴に適用してもよい。
【0049】
本願の出願時の請求の範囲に記載されたクレームは、この明細書で開示された全ての発明を余すところなく網羅的にクレームしているとは限らない。この点に関して、本願の出願人が、本願の出願時にクレームされていない発明について特許を受ける権利を出願前に放棄したと理解あるいは解釈してはならない。本願の出願を受理した国または地域の法規あるいは条約が許す限り、本願の出願人は、本願においてクレームされていない発明について特許を受ける権利、当該発明のために分割出願する権利、補正によって当該発明をクレームする権利、その他一切の権利を留保する。しかし、本願の出願人が明示的かつ確定的に反対の意思表示をしたときは、この限りではない。
【0050】
別の観点に基づく本開示の要約の一例は下記のとおりである。
【0051】
第1の発明は、レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具であって、レーザー光を通すための直線状の貫通孔が形成された板を含み、貫通孔の長さ方向は板の厚さ方向と平行であり、板の一方の面がその一部として第1面部と第2面部を含み、第1面部は貫通孔を囲む一方の面の縁であり、第2面部は第1面部を囲む面であり、第1面部と第2面部が再帰反射面を構成することを特徴とする。
【0052】
第2の発明は、第1の発明の器具において、厚さ方向に対する第1面部の傾斜角が、厚さ方向に対する第2面部の傾斜角よりも小さいことを特徴とする。
【0053】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明の器具において、第1面部が研磨面であることを特徴とする。
【0054】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかの器具において、第2面部が粗面であることを特徴とする。
【0055】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの器具において、第2面部が蛍光材料で覆われていることを特徴とする。
【0056】
第6の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの器具において、第2面部がフォトン・アップコンバージョン材料で覆われていることを特徴とする。
【0057】
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれかの器具において、板の一方の面がレーザー光に向かう面であることを特徴とする。
【0058】
第8の発明は、レーザー光のオリエンテーションを視認するための器具であって、レーザー光を通すための直線状の貫通孔が形成された板を含み、貫通孔の長さ方向は、板の厚さ方向と平行であり、板の一方の面がその一部として第1面部と第2面部を含み、第1面部は貫通孔を囲む一方の面の縁であり、第1面部は、貫通孔を通り且つ貫通孔の長さ方向と平行な第1直線の上の第1点を頂点として持つ第1錐体の側面の一部であり、ただし、当該第1点から板の一方の面を見ることができ、第2面部は第1面部を囲む面であり、第2面部は、貫通孔の長さ方向と平行な第2直線の上の第2点を頂点として持つ第2錐体の側面の一部であることを特徴とする。
【0059】
第9の発明は、第8の発明に器具において、第1錐体の立体角が第2錐体の立体角よりも小さいことを特徴とする。
【0060】
第10の発明は、第8の発明または第9の発明の器具において、第1面部が研磨面であることを特徴とする。
【0061】
第11の発明は、第8の発明から第10の発明のいずれかの器具において、第2面部が粗面であることを特徴とする。
【0062】
第12の発明は、第8の発明から第11の発明のいずれかの器具において、第2面部が蛍光材料で覆われていることを特徴とする。
【0063】
第13の発明は、第8の発明から第11の発明のいずれかの器具において、第2面部がフォトン・アップコンバージョン材料で覆われていることを特徴とする。
【0064】
第14の発明は、第8の発明から第13の発明のいずれかの器具において、板の一方の面がレーザー光に向かう面であることを特徴とする。
【0065】
さらに、上述した数値範囲および/あるいは条件(式(1),(2),(2’),(3),(4),(5)を含む)を第1の発明から第14の発明のそれぞれに適用できる。
【0066】
<補遺2>
例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、その要素を均等物で置き換えることができることを理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定のシステム、デバイス、またはそのコンポーネントを本発明の教示に適合させるために、多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むものとする。
【0067】
さらに、「第1」、「第2」などの用語の使用は順序や重要性を示すものではなく、「第1」、「第2」などの用語は要素を区別するために使用される。本明細書で使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものでは決してない。用語「含む」とその語形変化は、本明細書および/または添付の請求の範囲で使用される場合、言及された特徴、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を明らかにするが、一つまたは複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。「および/または」という用語は、それがもしあれば、関連するリストされた要素の一つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。請求の範囲および明細書において、特に明記しない限り、「接続」、「結合」、「接合」、「連結」、またはそれらの同義語、およびそのすべての語形は、例えば互いに「接続」または「結合」されているか互いに「連結」している二つの間の一つ以上の中間要素の存在を必ずしも否定しない。請求の範囲および明細書において、「任意」という用語は、それがもしあれば、特に明記しない限り、全称記号∀と同じ意味を表す用語として理解されるべきである。例えば、「任意のXについて」という表現は「すべてのXについて」あるいは「各Xについて」と同じ意味を持つ。
【0068】
特に断りが無い限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、明示的に定義されていない限り、理想的にまたは過度に形式的に解釈されるものではない。
【0069】
本発明の説明において、多くの技法およびステップが開示されていることが理解されるであろう。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれ他の開示された技法の一つ以上、または場合によってはすべてと組み合わせて使用することもできる。したがって、煩雑になることを避けるため、本明細書では、個々の技法またはステップのあらゆる可能な組み合わせを説明することを控える。それでも、明細書および請求項は、そのような組み合わせが完全に本発明および請求項の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0070】
以下の請求項において手段またはステップと結合したすべての機能的要素の対応する構造、材料、行為、および同等物は、それらがあるとすれば、他の要素と組み合わせて機能を実行するための構造、材料、または行為を含むことを意図する。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更と変形が許される。選択され且つ説明された実施形態は、本発明の原理およびその実際的応用を解説するためのものである。本発明は様々な変更あるいは変形を伴って様々な実施形態として使用され、様々な変更あるいは変形は期待される用途に応じて決定される。そのような変更および変形のすべては、添付の請求の範囲によって規定される本発明の範囲に含まれることが意図されており、公平、適法および公正に与えられる広さに従って解釈される場合、同じ保護が与えられることが意図されている。
【符号の説明】
【0072】
100 器具
101 板
101a 貫通孔
101a1 中心軸線
101b 一方の面
101b1 第1面部
101b2 第2面部
101b3 第3面部
101x 貫通孔の縁で光る部分
101y 第1面部からの反射光が当たっている第2面部の部分
200 レーザー光
L1 第1直線
L2 第2直線
P1 第1点
P2 第2点
図1
図2
図3
図4
図5
図6