(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011021
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】積層造形部材マーキングシステム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
B22F 10/39 20210101AFI20250116BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20250116BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20250116BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20250116BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250116BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20250116BHJP
【FI】
B22F10/39
B22F10/28
B22F10/80
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071998
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】18/323,494
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プルチョ、ジョン ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】マデローネ、ジュニア、ジョン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガンボーン、ジャスティン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マレー、ジェイムズ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ダビドフ、ロバート ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ドジエ、エヴァン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、マクスウェル エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ダルキウィッツ、チャド ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018EA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層造形(AM)プロセスにおいて複数の部材をマーキングする方法を提供する。
【解決手段】方法は、一組の部品のコード化ファイルをテキストベースの部品ツールパスファイルに変換することを含む。部材マーキングジオメトリ内の文字に関する一組のシリアライゼーション(SN)ファイルを作成及びコード化する。コード化SNファイルを一組のテキストベースのSNツールパスファイルに変換する。次に、この方法は、部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルの両方を含むように、部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルの両方を含む結合されたプリントファイルを生成するステップであって、生成が、部材SNロケーションスクリプトからの位置と部材マーキングの詳細をSNツールパスファイルからのSNジオメトリと組合せて、部材マーキング用の修正SNツールパスファイルを作成することを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形(AM)プロセスにおいて複数の部材をマーキングする方法であって、
一組の部品に関するコード化部品ファイルをテキストベースの部品ツールパスファイルに変換するステップと、
部材マーキングジオメトリ内の文字に関する一組のシリアライゼーション(SN)ファイルを作成及びコード化するステップと、
コード化SNファイルを一組のテキストベースのSNツールパスファイルに変換するステップと、
部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルから部品及びSNスキャンパスの両方を含む結合プリント入力ファイルを生成するステップであって、生成が、部材SNロケーションスクリプトからの位置及び部材マーキングの詳細をSNツールパスファイルからのSNジオメトリと組合せて部材マーキング用の修正SNツールパスファイルを作成することを含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
コード化部品ファイル及びSNファイルのコード化セットが、ステレオリソグラフィ(STL)ファイル形式でコード化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テキストベースの部品ツールパスファイル及びテキストベースのSNツールパスファイルがCLI(common layer interface)ファイルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
部材マーキングジオメトリが、所定の文字位置のシーケンスを含んでおり、各文字位置が、所与の文字位置でプリントすることができる一組の文字値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
部材SNロケーションスクリプトが、ビルドプレート上にある部品の数並びに部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルのファイルサーバ位置をさらに定義する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
結合プリント入力ファイルが、ユーザインタフェースへの入力に応答して生成され、入力が、印刷機識別子、バッチ番号及びビルドタイプを含んでおり、ユーザインタフェースが、選択可能なユーザ入力を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
部品スキャンパスが、結合プリント入力ファイルにおけるSNスキャンパスによって妨げられない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一組のSNファイルがコンピュータ支援設計(CAD)SNツールで作成され、コード化SNファイルが、関連するシリアル化文字の文字値及び文字位置を示すラベルで命名される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結合プリント入力ファイルを積層造形プリンタに入力し、選択的レーザ溶融(SLM)を使用して部材マーキングを付した部品にプリントすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コンピューティングシステムであって、当該グシステムが、
メモリと、
前記メモリに結合したプロセッサであって、
部品のバッチに関するAM造形を選択する入力を受信するステップと、
選択されたAM造形に応答して、
AM造形に関連付けられる結合ツールパスフォルダを決定するステップであって、結合ツールパスフォルダが、部材マーキングジオメトリを表すシリアライゼーション(SN)ツールパスファイルと、部品ジオメトリを表す部品ツールパスファイルとを含む、ステップと、
部品のバッチ及び部材マーキングの両方に関するスキャンパスデータを含む結合ツールパスファイルを生成するステップであって、部材マーキングに関するスキャンパスデータは、文字ジオメトリを探索しかつ各部材に対する文字値を選択する部材SNロケーションスクリプトに従って決定される、ステップと
を含むプロセスに従う積層造形(AM)プロセスで部材マーキングを生成するように構成されたプロセッサと
を備える、システム。
【請求項11】
結合ツールパスファイルを結合プリント入力ファイルに変換して、AM造形を実行することをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
SNツールパスファイル及び部品ツールパスファイルが、テキストベースのフォーマットで格納され、テキストベースのフォーマットが、CLI(common layer interface)ファイルを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
部材マーキングジオメトリが、所定の文字位置のシーケンスを含んでおり、各文字位置が、所与の文字位置でプリントすることができる一組の文字値を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
部材SNロケーションスクリプトが、ビルドプレート上にあるシリアル化部品の数並びに部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルのファイルサーバ位置をさらに定義する、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
結合プリント入力ファイルが、オペレータからのユーザインタフェースへの入力に応答して生成され、入力が、印刷機識別子、バッチ番号及びビルドタイプを含んでおり、ユーザインタフェースが、選択可能なユーザ入力を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を含む、請求項11に記載のシステム。?
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には積層造形に関するものであり、さらに具体的には、積層造形プロセスの際に造形物の部品をシリアライゼーションデータでマーキングするための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形(AM;アディティブマニュファクチャリング)には、材料の除去ではなく、材料の連続的積層によって物品を製造する様々なプロセスが含まれる。そのため、積層造形は、工具、鋳型又は固定具を一切使用せずに、しかも廃棄物をほとんど又は全く出さずに、複雑な形状を作成することができる。材料の中実ビレットから物品を機械加工すること(材料の大半は切除されて廃棄される)に代えて、積層造形で使用される材料は物品の造形に必要とされるものだけである。
【0003】
積層造形技術は、通例、形成すべき物品の3次元コンピュータ支援設計(CAD)ファイルを取得し、物品を複数の層に電子的にスライスし、各層の2次元画像を含むファイルを作成することを含む。このファイルを、様々なタイプの積層造形システムで物品を構築できるようにファイルを解釈するプレパレーションソフトウェアシステムにロードする。3次元(3D)プリンティング、ラピッドプロトタイピング(RP)、ダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)形式の積層造形では、材料層を選択的に分配して物品を作成する。
【0004】
選択的レーザ溶融(SLM)及び直接金属レーザ溶融(DMLM)のような金属粉末積層造形技術では、金属粉末層を順次溶融して物品を形成する。さらに具体的には、金属粉末層を金属粉末床上にアプリケータを用いて均一に分布させた後、順次溶融させる。金属粉末床は垂直軸方向に移動できる。このプロセスは、アルゴン又は窒素のような不活性ガスの精密に制御された雰囲気を有する処理チャンバ内で実施される。各層が作成されると、金属粉末を選択的に溶融することによって、物品ジオメトリの各2次元スライスを融合させることができる。溶融は、例えば100Wのイッテルビウムレーザのような高出力溶融ビームによって実施され、金属粉末を完全に溶着(溶融)して固体金属を形成することができる。溶融ビームは走査鏡を用いてX-Y方向に移動し、金属粉末を完全に溶着(溶融)して固体金属を形成するのに十分な強度を有する。金属粉末床は、その後の2次元層毎に下降され、物品が完全に形成されるまで上記プロセスが繰り返される。
【0005】
特定のAM造形作業では、部品に一義的マーキング(シリアル番号など)を付す必要があることがある。場合によっては、造形作業中に複数の複製部材のバッチ全体を1つのビルドプレートでまとめて製造し、各部品がそれ独自のマーキングを必要とすことがある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様は、積層造形(AM)プロセスにおいて複数の部材をマーキングする方法を提供する。本方法は、一組の部品に関するコード化部品ファイルをテキストベースの部品ツールパスファイルに変換するステップと、部材マーキングジオメトリ内の文字に関する一組のシリアライゼーション(SN)ファイルを作成及びコード化するステップと、コード化SNファイルを一組のテキストベースのSNツールパスファイルに変換するステップと、部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルから部品及びSNスキャンパスの両方を含む結合プリント入力ファイルを生成するステップであって、生成が、部材SNロケーションスクリプトからの位置及び部材マーキングの詳細をSNツールパスファイルからのSNジオメトリと組合せて部材マーキング用の修正SNツールパスファイルを作成することを含む、ステップとを含む。
【0007】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、コード化部品ファイル及び一組のコード化SNファイルは、ステレオリソグラフィ(STL)ファイル形式でコード化される。
【0008】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、テキストベースの部品ツールパスファイル及びテキストベースのSNツールパスファイルは、CLI(common layer interface)ファイルを含む。
【0009】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部材マーキングジオメトリは、文字位置の所定のシーケンスを含んでおり、各文字位置は、所与の文字位置でプリントすることができる一組の文字値を含む。
【0010】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部材SNロケーションスクリプトは、ビルドプレート上にある部品の数並びに部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルのファイルサーバ位置をさらに定義する。
【0011】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、結合プリント入力ファイルは、ユーザインタフェースへの入力に応答して生成され、入力は、印刷機識別子、バッチ番号及びビルドタイプを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、ユーザインタフェースは、選択可能なユーザ入力を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を含む。
【0013】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部品スキャンパスは、結合プリント入力ファイル内のSNスキャンパスによって妨害されない。
【0014】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、一組のSNファイルは、コンピュータ支援設計(CAD)SNツールを用いて作成され、コード化SNファイルは、関連するシリアル化文字の文字値及び文字位置を示すラベルで命名される。
【0015】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、結合プリント入力ファイルを積層造形プリンタに入力し、選択的レーザ溶融(SLM)を使用して部材マーキングを付した部品をプリントする。
【0016】
本開示の追加の態様は、メモリと、メモリに結合したプロセッサであって積層造形(AM)プロセスにおいて部材マーキングを生成するように構成されたプロセッサとを有するコンピューティングシステムを提供する。上記プロセスは、部品のバッチに関するAM造形を選択する入力を受信するステップと、選択されたAM造形に応答して、AM造形に関連付けられる結合ツールパスフォルダを決定するステップであって、結合ツールパスフォルダが、部材マーキングジオメトリを表すシリアライゼーション(SN)ツールパスファイルと、部品ジオメトリを表す部品ツールパスファイルとを含む、ステップと、部品のバッチ及び部材マーキングの両方に関するスキャンパスデータを含む結合ツールパスファイルを生成するステップであって、部材マーキングに関するスキャンパスデータは、文字ジオメトリを探索しかつ各部材に対する文字値を選択する部材SNロケーションスクリプトに従って決定される、ステップとを含む。
【0017】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、結合ツールパスファイルを結合プリント入力ファイルに変換して、AM造形を実行することを含む。
【0018】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、SNツールパスファイル及び部品ツールパスファイルは、テキストベースのフォーマットで格納される。
【0019】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、テキストベースのフォーマットは、CLI(common layer interface)ファイルを含む。
【0020】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部材マーキングジオメトリは、文字位置の所定のシーケンスを含んでおり、各文字位置は、所与の文字位置でプリントすることができる一組の文字値を含む。
【0021】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部材SNロケーションスクリプトは、ビルドプレート上にあるシリアル化部品の数並びに部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルのファイルサーバ位置をさらに定義する。
【0022】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、結合プリント入力ファイルは、オペレータからのユーザインタフェースへの入力に応答して生成され、入力は、印刷機識別子、バッチ番号及びビルドタイプを含む。
【0023】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、ユーザインタフェースは、選択可能なユーザ入力を有するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む。
【0024】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部品のバッチについてのスキャンパスデータは、結合プリント入力ファイル内の部材マーキングのためのスキャンパスデータによって妨げられない。
【0025】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、部材マーキングジオメトリは、コンピュータ支援設計(CAD)SNツールを用いて作成される。
【0026】
本開示の例示的な態様は、本明細書に記載の問題及び/又は記載されていない他の問題を解決するように設計される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【
図1】物品を構築する例示的な従来の2つの溶融ビーム積層造形システムの概略斜視図。
【
図2】本開示の実施形態に係る積層造形システムのための部材マーキングプロセスの流れ図。
【
図3】本開示の実施形態に係る部材のバッチについてのCADジオメトリ的形状を示す。
【
図4】本開示の実施形態に係る部材マーキングのシリアライゼーションのためのCAD形状を示す図。
【
図5】本開示の実施形態に係る部材マーキングシステムの概略図。
【
図6】本開示の実施形態に係る結合プリント入力ファイルを生成するための様々なアプローチを示す図。
【0028】
なお、本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本開示の主題を明確に説明するため、積層造形システム内の関連する機械部材について言及及び説明する際に、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部材について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及することが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部材からなるものとして記載することもある。或いは本明細書のある箇所で複数の部材を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0030】
上述の通り、本開示は、金属粉末積層造形(AM)システムのような3次元(3D)プリントシステムにおいて部材をマーキングするための方法及びシステムを提供する。AMを用いて部材に固有のシリアル番号をマーキングしようとすると、様々な難題がある。特に、新しい部材マーキングを追加するために1以上の部材を含むビルドプレート(CAD図面及びその他の表現など)が更新する毎に、得られる部材のスライスファイルは必然的に異なるスキャンパスを有する(つまり、新しいレーザ三角測量が導入される)。そのため、部材の基本ジオメトリが変更されるリスクが生じ、同一部材間でのジオメトリの正確な1対1対応が妨げられる。本開示は、かかる品質損失を解消し、マーキングに関係なく、常に同じスキャンパスで部材ジオメトリを生成することにより、一貫性を担保する。このプロセスによって、部品のスキャンパスファイルを変更せずに、新しいマーキング形状をビルドプレートに入力できるので、更新のための柔軟性が高まる。このプロセスでは、部材マーキングジオメトリを部材ジオメトリにオーバーレイするプリント入力(「ビルド」)ファイルを自動的に生成できるオペレータインターフェースを用いることができるので、効率が向上し、実際の部材の基本部品ジオメトリの変更を回避できる。
【0031】
図1は、1以上の部品102A,102Bを生成するための例示的なコンピュータ化された金属粉末積層造形システム100(以下、「AMシステム100」)の概略/ブロック図を示しており、1以上の部品102A,102Bは、部材、クーポンなどを含んでいてもよいが、その1層だけを示す。この例示的なシステム100は、複数の照射装置、例えば、4つのレーザ110,112,114,116を使用する部品の造形について説明するが、本開示の教示は、任意の数の照射装置、すなわち、1以上の照射装置の使用に等しく適用し得る。この例では、AMシステム100は、直接金属レーザ溶融(DMLM)のために配置される。本開示の教示内容全般は、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ焼結(SLS)、電子ビーム溶融(EBM)及び他の形態の積層造形など、他の形態の金属粉末積層造形にも同様に適用できる。部品102A,102Bは、円形構成要素として示してあるが、積層造形プロセスは、ビルドプラットフォーム118上で任意の形状の物品、多種多様な物品及び多数の物品を製造するように容易に適合させることができる。
【0032】
AMシステム100は、一般に、金属粉末積層造形制御システム120(「制御システム」)とAMプリンタ122とを含む。後述の通り、制御システム120は、部品を生成するためにオブジェクトコード124Oを実行する。制御システム120は、コンピュータプログラムコードとしてコンピュータ126に実装された状態で示してある。これに関して、コンピュータ126は、メモリ130及び/又はストレージシステム132、プロセッサユニット(PU)134、入出力(I/O)インターフェース136、及びバス138を含む状態で示してある。また、コンピュータ126は、外部I/Oデバイス/リソース140及びストレージシステム132と通信状態にあるものとして示してある。一般に、プロセッサユニット(PU)134は、メモリ130及び/又はストレージシステム132に格納されたコンピュータプログラムコード124を実行する。コンピュータプログラムコード124を実行している間、プロセッサユニット(PU)134は、メモリ130、ストレージシステム132、I/Oデバイス140及び/又はAMプリンタ122との間でデータを読み書きすることができる。バス138は、コンピュータ126内の各オブジェクト間の通信リンクを提供し、I/Oデバイス140は、ユーザがコンピュータ126と対話できるようにする任意のデバイス(例えばキーボード、ポインティングデバイス、ディスプレイなど)を備えることができる。コンピュータ126は、ハードウェアとソフトウェアの様々な可能な組合せを代表しているに過ぎない。例えば、プロセッサユニット(PU)134は、単一の処理ユニットを備えてもよいし、1以上の場所、例えば、クライアント及びサーバ上の1以上の処理ユニットに分散してもよい。同様に、メモリ130及び/又はストレージシステム132は、1以上の物理的な場所に常駐し得る。メモリ130及び/又はストレージシステム132は、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含む、様々なタイプの非一時的コンピュータ可読記憶媒体の任意の組合せを備えることができる。コンピュータ126は、産業用コントローラ、ネットワークサーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、ハンドヘルドデバイスなど、任意のタイプのコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0033】
上述の通り、AMシステム100、特に制御システム120は、プログラムコード124を実行して1以上の物品102を生成する。プログラムコード124は、とりわけ、AMプリンタ122又は他のシステム部材を操作するための一組のコンピュータ実行可能命令(本明細書では「システムコード124S」という)と、AMプリンタ122によって物理的に生成される1以上の物品を定義する一組のコンピュータ実行可能命令(本明細書では「オブジェクトコード124O」という)を含むことができる。本明細書に記載されるように、積層造形プロセスは、プログラムコード124を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えばメモリ130、ストレージシステム132など)から始まる。AMプリンタ122を動作させるためのシステムコード124Sは、AMプリンタ122を動作させることができる、現在公知の又は将来開発される任意のソフトウェアコードを含んでいてもよい。
【0034】
部品102A,102Bを定義するオブジェクトコード124Oは、物品の正確に定義された3Dモデルを含んでいてもよく、AutoCAD(登録商標)、TurboCAD(登録商標)、DesignCAD3DMaxのような周知のコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアシステムから生成することができる。この点に関して、オブジェクトコード124O(本明細書では「プリント入力」又は「ビルド」ファイルともいう)は、現在公知の又は将来開発される任意のファイルフォーマットを含むことができる。さらに、部品を表すオブジェクトコード124Oは、異なるフォーマット間で変換してもよい。例えば、オブジェクトコード124Oは、ステレオリソグラフィCADシステム用に作成されたSTL(Standard Tessellation Language)ファイル、又は任意のCADソフトウェアが任意のAMプリンタで製造される任意の3次元物品の形状及び組成を記述できるように設計された拡張可能なマークアップ言語(XML)ベースのフォーマットである国際標準である積層造形ファイル(AMF)を含んでいてもよい。物品102を表すオブジェクトコード124Oは、必要に応じて、一組のデータ信号に変換して送信したり、一組のデータ信号として受信したり、コードに変換したり、格納したりすることもできる。いずれにせよ、オブジェクトコード124Oは、AMシステム100への入力であってもよく、部材設計者、知的財産(IP)提供者、設計会社、AMシステム100のオペレータ又は所有者、又は他の供給元に由来するものでもよい。いずれにせよ、制御システム120は、システムコード124S及びオブジェクトコード124Oを実行し、AMプリンタ122を使用して材料の連続層を構築する一組の薄スライスに部品を分割する。
【0035】
AMプリンタ122は、例えば、レーザのための設定圧力及び温度、又は電子ビーム溶融のための真空という、部材プリントのための制御された雰囲気を供給するために密閉処理チャンバ142を含んでいてもよい。物品102が造形されるビルドプラットフォーム118は、処理チャンバ142内に配置される。多数の照射装置110,112,114,116は、ビルドプラットフォーム118上の金属粉末の層を溶融して物品102を生成するように構成される。
【0036】
図1に示すように、アプリケータ164は、空白キャンバスとして広げられた原料166の薄層を作成することができ、その上で最終物品の連続スライスの各々が作成される。アプリケータ164は、リニア搬送システム168の制御下で移動し得る。リニア搬送システム168は、移動アプリケータ164のための現在公知の又は将来される任意の配置を含んでいてもよい。一実施形態では、リニア搬送システム168は、ビルドプラットフォーム118の対向する側方に延在する一対の対向するレール170,172と、レール170,172に沿って移動させるためのアプリケータ164に結合した電気モータのようなリニアアクチュエータ174とを含んでいてもよい。リニアアクチュエータ174は、アプリケータ164を移動させるように制御システム120によって制御される。他の形態のリニア搬送システムも使用し得る。アプリケータ164は、様々な形態をとる。一実施形態では、アプリケータ164は、対向するレール170,172に沿って移動するように構成された部材176と、ビルドプラットフォーム118(すなわちビルドプラットフォーム118又は以前に形成された物品102の層)の上に金属粉末を均等に広げて原料の層を作成するように構成された先端、ブレード又はブラシの形態のアクチュエータ要素(
図1には示されていない)とを含むことができる。アクチュエータ要素は、任意の数の方法でホルダ(図示せず)を使用して部材176に結合し得る。このプロセスでは、金属粉末の形で様々な原料を使用できる。原料は、幾つかの方法でアプリケータ164に供給し得る。
図1に示す一実施形態では、原料の在庫は、アプリケータ164によってアクセス可能なチャンバの形態で原料供給源178内に保持し得る。他の配置では、原料は、アプリケータ164を通して(例えばアプリケータ要素の前方の部材176を通して)及びビルドプラットフォーム118上に送達し得る。いずれにせよ、オーバーフローチャンバ179は、ビルドプラットフォーム118上に層状化されていない原料のオーバーフローを捕捉するために、アプリケータ164の遠位側に設けてもよい。
図1では、1つのアプリケータ164だけを示す。幾つかの実施形態では、アプリケータ164は、アプリケータ164が能動的なアプリケータであり、他の交換用アプリケータ(図示せず)がリニア搬送システム168と共に使用するために格納される複数のアプリケータの中にあり得る。使用済みアプリケータ(図示せず)を、使用できなくなった後も保管することもできる。
【0037】
一実施形態では、部品は、純金属又は合金を含んでいてもよい金属から製造し得る。一例では、金属は、実質的に任意の非反応性金属粉末、すなわち、非爆発性又は非導電性の粉末、例えば、限定されるものではないが、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)合金、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-モリブデン-ニオブ合金(NiCrMoNb)(例えばInconel 625又はInconel 718)、ニッケル-クロム-鉄-モリブデン合金(NiCrFeMo)(例えばHaynes International社から入手可能なハステロイ(登録商標)X)、又はニッケル-クロム-コバルト-モリブデン合金(NiCrCoMo)(例えばHaynes International社から入手可能なHaynes282)等が挙げられる。別の例では、金属は、工具鋼(例えばH13)、チタン合金(例えばTi6Al4V)、ステンレス鋼(例えば316L)、コバルト-クロム合金(例えばCoCrMo)、及びアルミニウム合金(例えばAlSi10Mg)のような実質的に任意の金属を含んでいてもよい。別の例では、金属は、それらの商品名で知られているもの、すなわち、Inconel 738、IN738LC、Rene 108、FSX414、X-40、X-45、MarM247、MAR-M509、MAR-M302、CM247又はMerl72/Polymet972のような実質的にあらゆる反応性金属を含んでいてもよいが、その一部は、ガンマプライム硬化超合金として分類し得る。
【0038】
処理チャンバ142内の雰囲気は、使用する特定のタイプの照射装置について制御される。例えば、レーザの場合、処理チャンバ142は、アルゴン又は窒素のような不活性ガスで満たされ、酸素を最小化又は除去するように制御し得る。制御システム120は、不活性ガス182の供給源から処理チャンバ142内の不活性ガス混合物180の流れを制御するように構成される。この場合、制御システム120は、不活性ガス用のポンプ184及び/又は流量弁システム186を制御して、混合ガス180の含有量を制御し得る。流量弁システム186は、特定のガスの流れを正確に制御することができる、1以上のコンピュータ制御可能な弁、流量センサ、温度センサ、圧力センサなどを含んでいてもよい。ポンプ184は、弁システム186の有無にかかわらず設けてもよい。ポンプ184が省略される場合、不活性ガスは、処理チャンバ142への導入に先立って、単に導管又はマニホールドに入り得る。不活性ガス182の供給源は、その中に含まれる材料のための任意の従来の供給源、例えば、タンク、リザーバ又は他の供給源の形態をとることができる。混合ガス180を測定するために必要な任意のセンサ(図示せず)を設けてもよい。混合ガス180は、従来の方法でフィルタ188を用いて濾過することができる。或いは電子ビームの場合、処理チャンバ142は、真空を維持するように制御してもよい。制御システム120は、真空を維持するようにポンプ184を制御してもよく、また、流量弁システム186、不活性ガス182及び/又はフィルタ188の供給源は省略してもよい。真空を維持するために必要な任意のセンサ(図示せず)を使用し得る。
【0039】
垂直調整システム190を設けても、各々の新しい層の追加に対応するためにAMプリンタ122の様々な部分の位置を垂直に調整してもよく、例えば、ビルドプラットフォーム118は、各層の後に上昇し、及び/又はチャンバ142及び/又はアプリケータ164を上昇させてもよい。垂直調整システム190は、制御システム120の制御下にあるかかる調整をもたらすために、現在公知の又は将来開発される任意のリニアアクチュエータを含んでいてもよい。
【0040】
動作中、処理チャンバ142内には金属粉末を載せたビルドプラットフォーム118が設けられ、制御システム120は処理チャンバ142内の雰囲気を制御する。制御システム120はまた、AMプリンタ122、特に、アプリケータ164(例えばリニアアクチュエータ174)及び照射装置110,112,114,116を制御して、ビルドプラットフォーム118上の金属粉末の層を順次溶融して、本開示の実施形態に係る物品102を生成する。注記したように、AMプリンタ122の様々な部分は、各々の新しい層の追加に対応するために垂直調整システム190を介して垂直方向に移動してもよく、例えば、ビルドプラットフォーム118が下降し、及び/又はチャンバ142及び/又はアプリケータ164が各層の後に上昇してもよい。
【0041】
図2は、
図1に示すAMシステム206のための例示的な部材マーキングプロセスを示す。「部材」及び「部品」という用語は、本明細書において、プリントされる任意の物品を一般的に記述するために同じ意味で使用される。したがって、「部材マーキング」という用語は、ビルドプレート上の任意の物品のマーキングをいう。幾つかの実施形態では、部材マーキングは、シリアライゼーション(SN)データ、例えば、シリアル番号等を含む。しかし、所与の部材マーキングは、部材から部材へと変化し得る任意のタイプのプリントされた表示、例えば、番号、文字、パターン、コードのような識別文字を含んでいてもよい。場合によっては、ビルドプレートに複製部材のバッチが含まれており、各部材には独自のシリアライゼーションがある場合がある。例えば、複製部材は、それぞれ、すべての部材に共通する文字を有する通し番号と、個々の部材に固有の1以上の文字とを含んでいてもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、このプロセスは、オペレータ202が、例えば、部材ファミリ、ビルドタイプ、印刷機識別子、バッチ番号などを指定するビルドオペレーションを選択できるようにする部材マーキングツールパスジェネレータ200(以下、「ツールパスジェネレータ200」)を利用する。幾つかの場合において、ツールパスジェネレータ200は、選択可能なユーザ入力、例えば、ビルド及びビルドオプションを選択するためのドロップダウンメニューを備えたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む。ツールパスジェネレータ200へのオペレータ入力に応答して、結合プリント入力ファイル204が生成され、ビルドを実行するためにAMシステム206に提出される。結合プリント入力ファイル204は、ベース(すなわち、部品)スキャンパスデータと、部材マーキング(すなわち、シリアライゼーション)スキャンパスデータの両方を含む。
【0043】
造形作業を実施するためにツールパスジェネレータ200が必要とする情報を作成するプロセスは、一般に、ボックス208に示されている。このプロセスは、最初に2つのパスを含んでおり、最初のパスS1からS3は、ビルド内の部品のジオメトリ/スキャンパスを定義する部品ツールパスファイルを生成し、2番目のパスS4からS6は、部材マーキングジオメトリを提供する部材マーキングファイルを作成する。S1から、CADツールを使用して、ビルドプレート上の一組の部品の部品ジオメトリのファイルを設定する。CAD出力300の一例が
図3に示されており、これは、ビルドプレート302、複製部材304のバッチ、及びクーポン306を含む。次に、S2において、公知の技術を用いて、CAD出力300をSTLファイル形式にコード化し、そこから部品プリント入力ファイルが生成される。S3では、部品のプリント入力ファイルは、CLI(common layer interface)ファイルのようなテキストベースのツールパスファイルに変換され部品ツールパスファイルメトリのレイヤのスキャンパスをテキストベースで表現するユニバーサルフォーマットである。
【0044】
第2の経路に沿って、S4において、CAD部材マーキングツール220が、部材マーキングジオメトリを作成するために利用される。この例示の実施形態では、部材マーキングジオメトリは、一組のシリアライゼーション(すなわち、SN)ファイルに格納される。CAD部材マーキングツール220は、例えば、既知のCAD技術を利用して、リンクされた面を作成し、多種多様な面、エッジ/曲線、及び形状、並びに異なる積層変形並びにスケーリング及びサイジングオプションに従うシリアライゼーション文字を生成するパラメトリックモデルを提供し得る。
図4A、
図4B、
図4Cは、CAD生成部材マーキングジオメトリ400、402、404の3つの例をそれぞれ示している。各ジオメトリは、部材マーキングを適用する部材の形状又は面に適合するように生成される。これらの例では、各ジオメトリは、16文字位置406の所定のシーケンスを含んでおり、各位置406は、所与の文字位置を埋めることができる一組の可能な文字値を含む。例えば、文字位置408は1つの可能な文字値Zしか持たないが、文字位置410は2つの可能な文字値B又はを有する。各位置には、A-Z、0-9、特殊文字など、任意の数の文字値を含めることができ、部材マーキングジオメトリ内の一組の文字ジオメトリを定義する。したがって、部材マーキングジオメトリは、所定の文字位置のシーケンスを含んでおり、各文字位置は、所与の文字位置でプリントすることができる文字値のセットを含む。ある実施形態では、各位置/文字値についてのCADデータは、文字形状を定義する一義的SNファイルに格納される。したがって、部材マーキングジオメトリは、後で動的に選択し、ロケーションデータと組合せて、ビルド中に関連部材の部材マーキングプリント入力を作成できる部材マーキング文字のライブラリを提供する。
【0045】
S5(
図2)では、各SNファイルがSTLフォーマットにコード化され、そこから一組のSNプリント入力ファイルが生成される。一実施形態では、SNプリント入力ファイルのセットは、CAD部材マーキングツール220のエクスポート機能によって作成され、この製品は、各SNプリント入力ファイルに、その位置及び文字値を識別するためのラベルを付けて命名する。この命名規則により、後のプロセスで必要な文字に対応するファイルを簡単に選択できる。
【0046】
部材マーキングジオメトリは、CAD部材マーキングツール220によって、設計をベースモデルに組み立て、関連する部品上に設計を配置することによって作成される。次に、CAD部材マーキングツール220によって作成されたSNジオメトリ(例えばジオメトリ400、
図4A)におけるシリアライゼーション文字の完全なセットは、文字値及び位置を示すラベルとともにエクスポートされ、これは、ツールパスジェネレータ200による後のアクションを容易にする。エクスポートツールは、三角測量されたジオメトリファイル(例えばSTLファイル)を、CADシステムにおける特徴の一般的に使用される表現である、それらのCAD特徴ツリーにおいてそれらに与えられた名前でエクスポートするCAD部材マーキングツール220に含まれ得る。例えば、SNプリント入力ファイル“1_A.stl”は、部材マーキングジオメトリ内の位置1にシリアライゼーション文字Aを保持するように指定できる。
【0047】
S6では、SNプリント入力ファイルは、CLIファイルのような一組のテキストベースのSNツールパスファイルに変換される。前述の通り、CLIはジオメトリのレイヤのスキャンパスをテキストベースで表現したものである。次に、S7で、部品ツールパスファイル及びSNツールパスファイルの両方が、結合ツールパスフォルダ(例えばファイルサーバ上の指定された場所)に保存される。部品及び部材マーキングジオメトリの両方にテキストベースのフォーマットを使用する利点は、それらが容易に編集及び操作できること、例えば、セクションがツールパスジェネレータ200によって追加、編集、削除等し得ることである。S1からS7は、特定のビルドを作成するために1回だけ実行する必要があることに注意してください。
【0048】
この実施形態では、部材マーキングツールパスジェネレータ200は、S8で構成される各固有のビルドのための部材SNロケーションスクリプトを利用する。部材SNロケーションスクリプトは、例えば、部材ツールパスファイル内の部材数、各部材上の部材マーキングジオメトリの位置、ツールパスファイルの場所、各部材に適用する文字値(例えば一義的シリアル番号の作成、使用するレーザなど)を定義する。したがって、例えば、ビルドプレート上の各部材マーキングには、部材のSNロケーションスクリプトで定義されているように、指定された位置が割り当てられる。場合によっては、各部材マーキングは、平行移動、すなわち、3D空間内のある点を基準として位置決めしてもよい、例えば、「部材5:(26,42,0,45)」、26,42,0は、x、y、及びz方向のmmであり、45は、所定の基準位置からの文字の角度回転である。また、部材SNロケーションスクリプトは、部材マーキングの詳細、つまり、部材1にはABC1XYZ、部材2にはABC2XYZなど、各部材にどの文字をプリントするかを決定する。さらに、部材のSNロケーションスクリプトでは、結合ツールパスフォルダ内の部品及びSNスキャンパスファイルの場所/名前を指定することもできる。この並進能力は、CAD部材マーキングツール220の部材マーキングジオメトリ出力を動的にパターン化して、ビルドプレート上の複製部材の各々を一意にマーキングできるようにする。そのため、部材マーキングを作成し、複製部材毎に個別の場所に設定する必要はない。代わりに、SNツールパスファイルは、特定の部品タイプの部材マーキングを作成するために必要に応じて利用される(ビルドプレート上の部材の複製の数に関係なく)、固有のジオメトリ、サイズ、及び位置要件がある場合がある。
【0049】
S10では、ツールパスジェネレータ200へのオペレータ入力に応答して、部品及びSNジオメトリの両方をプリントするために、結合プリント入力ファイル204が生成される。この一環として、ツールパスジェネレータ200は、SNツールパスファイル(例えばキャラクタジオメトリを提供する)及び部材SNロケーションスクリプト(例えば位置情報、シリアライゼーション情報、レーザ情報などを指定する)を処理して、ビルドにおける各部材マーキングについて完成したスキャンパスデータを提供するSNツールパスファイルの修正されたセットを生成する。テキストベースのSNツールパスファイルと部品ツールパスファイルが結合され、SLMに適したプリント入力ファイルフォーマット、又は部材マーキング付きの部品のプリントに使用できるその他のプリントファイルフォーマットに変換される。自明であろうが、一旦組み合わされたツールパスフォルダ及び部材SNロケーションスクリプトが各ビルドについて確立されると、オペレータ202は、単にツールパスジェネレータ200とインターフェースして、プリント入力ファイルを選択及び作成することができ、処理時間を短縮し、以前にセットアップされたビルド全体にわたるプリント入力ファイルの確実な生成を可能にする。
【0050】
一実施形態では、結合プリント入力ファイル204を生成するために、ツールパスジェネレータ200は、各部材マーキングに必要な文字位置/文字値毎に、関連するSNツールパスファイル内の形状詳細を利用する。例えば、“ABC1XYZ”とマークされた部材の場合、SNツールパスは文字位置1、文字値“A”のファイルである。文字位置2、文字値“B”。などが処理され、選択したSNツールパスファイルのジオメトリと、部材のSNロケーションスクリプトの位置と文字値の情報を組合せた修正されたツールパスファイルが生成される。このプロセスは、ビルドの部材マーキング毎に繰り返される。
【0051】
自明であろうが、このアプローチは部材のマーキングに大きな柔軟性をもたらす。例えば、新しいビルドで各部材の部材マーキング位置をxyz空間のz方向に微調整する必要がある場合は、部材のSNロケーションスクリプトを編集して調整を作成するだけである。同様に、同じ部品及びSNジオメトリを使用して新しいビルドに異なる文字値が必要な場合、部材のSNロケーションスクリプトを簡単に編集できる。様々な実施形態では、部材SNロケーションスクリプトは、Pythonのようなプログラミング言語で実装することができ、これは、固有のビルドのために、管理者によって単に編集及び保存し得る。
【0052】
加えて、S9で示されるように、ツールパスジェネレータ200は、例えば、新しいビルドを追加する、結合ツールパスフォルダの場所を指定する、部材SNロケーションスクリプトの場所を指定する、機械の詳細を追加するのような構成を必要とし得る。幾つかの実施形態では、ツールパスジェネレータ200は、プログラミング言語(例えばPython)で実装され、管理者によって単に編集し得る。他の実施形態では、ツールパスジェネレータ200は、管理者が修正を行うこと、例えば、新しいビルド構成を追加できるようにするための管理インターフェースを含んでいてもよい。
【0053】
図5は、
図2に説明されるプロセスのさらなる実装を詳述する例示的な部材マーキングシステム500を描写する。図に示す通り、システム500は、組み合わされたツールパスフォルダ212のセット(すなわち、一義的部品/部材マーキングジオメトリを有する各ビルドに対して1つ)と、(すなわち、異なるビルド毎に)部材SNロケーションスクリプト210のセットを含む。オペレータ202は、GUIを介してツールパスジェネレータ200とインターフェースし、例えば、ドロップダウンメニュー等を使用してビルドを選択する。オペレータの入力に応答して、ツールパスジェネレータ200は、適切な結合ツールパスフォルダ212及びスクリプト210を選択し、ツールパスフォルダ212内の部品及びSNスキャンパスファイルを処理して、結合されたテキストベースのツールパスファイルを生成し、特定の部材マーキング位置、シリアライゼーションデータ、レーザなどを有する部材マーキングジオメトリを作成する。次に、結果として生じる結合ツールパスファイルは、結合プリント入力ファイル204に変換される。システム500は、管理者214が、例えば、管理者インターフェースを介して、ツールパスジェネレータ200に新しいビルドオプションを追加することを可能にし得る。部材マーキングツールパスジェネレータ200は、任意のタイプのコンピューティングシステム502内に実装し得る。例えば、コンピューティングシステム502は、
図1のコンピューティングシステム126を参照して説明したものと同様のコンピュータシステムを使用して実装し得る。
【0054】
図6は、結合プリント入力ファイル(ファイルが視覚的表現として描かれる)を生成するための3つの例示的アプローチを示す。各アプローチは、部品の層を形成する矢印によって表されるスキャンパスを有する部品ツールパスファイル600を含む。トップアプローチでは、部品ツールパスファイル600及びSNツールパスファイル602は、部品及びSNが別個のレイヤとしてプリントされる結合プリント入力ファイル604に含まれ、すなわち、結合プリント入力ファイル604は、部品スキャンパス及びSNスキャンパスの両方を含んでおり、部品スキャンパスは、結合プリント入力ファイル604内のSNスキャンパスによって妨げられない。中間のアプローチでは、部品ツールパスファイル600及びSNツールパスファイル606は、部品及びSNが共通のスキャンパスでプリントされるように、すなわち、部品ツールパスファイル600がその境界を拡張するように修正されるように、結合プリント入力ファイル608にマージされる。ボトムアプローチでは、SNツールパスファイル610は、修正されたスキャンパスとのエッチング境界を達成するために、結合プリント入力ファイル612内の部品ツールパスファイル600から除去される。
【0055】
本明細書に記載のプロセス及びシステムは、AMプロセスで部材に部材マーキング(例えばシリアル番号)を施す際に、より良い部材ジオメトリを与えるという技術的効果を有する。特に、部材ジオメトリのスキャンパスは、ビルド毎に一貫性があり、部材のマーキングがより適切に定義される。すなわち、部品スキャンパスは、結合プリント入力ファイル内のSNスキャンパスによって妨げられない。さらに、このプロセスにより、部材のマーキング位置、値、ビルドタイプのような指定と変更の柔軟性と速度が向上する。例えば、このアプローチでは、ビルドのバリエーション(つまり、異なるビルドタイプ)を簡単に作成できるため、オペレータは部材又はクーポンの異なるレイアウトを選択できる(例えばビルドタイプが関連するシリアライゼーションでクーポンを追加したり、別のビルドタイプではプレート上の部品部材が1つ少なくなったりする)。
【0056】
幾つかの代替的な実施態様では、記載された行為は、関与する行為によっては、記載された順序通りに起こらなくてもよいし、或いは例えば実質的に同時に又は逆の順序で実行してもよい。
【0057】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。さらに、本明細書において、「備える」、「含む」及び/又は「有する」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部材が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部材及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本的機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から別途明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。“範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0059】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0060】
100 積層造形システム
102 物品
118 ビルドプラットフォーム
120 制御システム
122 積層造形プリンタ
124 コード
126 コンピュータ
130 メモリ
132 ストレージシステム
134 プロセッサ
136 入出力インターフェース
138 バス
140 I/Oデバイス
142 処理チャンバ
164 アプリケータ
168 リニア搬送システム
【外国語明細書】