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特開2025-11024合金組成物及びかかる組成物から形成された物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011024
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】合金組成物及びかかる組成物から形成された物品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/60 20060101AFI20250116BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C22C38/60
C22C38/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083626
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】18/338,652
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレズナク、ジェフリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュンユン
(72)【発明者】
【氏名】パロリーニ、ジェイソン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンクーテン、ポール アンソニー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト及び向上した破断延性を有する鉄基合金を提供する。
【解決手段】組成物は、約10重量%~約11重量%のクロム、約0.030重量%以下のアルミニウム、約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、残部の鉄及び残渣元素を含む。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10重量%~約11重量%のクロム、
約0.030重量%以下のアルミニウム、
約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、
約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、
約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、
約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素
を含む、組成物。
【請求項2】
当該組成物が約10.25重量%~約11重量%のクロムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該組成物が0.015重量%以下のアルミニウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物が約0.12重量%~約0.18重量%の炭素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
当該組成物が約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物が約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
当該組成物が約0.015重量%~約0.060重量%のチタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約10.25重量%~約11重量%のクロム、
約0.015重量%以下のアルミニウム、
約0.12重量%~約0.18重量%の炭素、
約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素、
約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウム、
約0.015重量%~約0.060重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
約0.10重量%~約1.0重量%のマンガン、及び/又は
約0.40重量%~約1.2重量%のモリブデン
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約0.50重量%~約1.0重量%のマンガン、及び/又は
約0.60重量%~約0.80重量%のモリブデン
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
当該組成物が約200°F未満の凝固範囲を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
当該組成物が約175°F未満の凝固範囲を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
当該組成物が、約450°F~約550°Fの範囲内のマルテンサイト開始温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
当該組成物が、約250°F~約350°Fの範囲内のマルテンサイト90%温度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
当該組成物が鍛造組成物及び/又は鋳造組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の分野は、広義には組成物に関するものであり、さらに具体的には、合金組成物及び合金組成物で形成された物品に関する。合金組成物は、耐酸化性の向上、残留デルタフェライトの低減、及び/又は破断延性の向上した合金を必要とする用途に広く応用できる。
【0002】
鉄基合金は、鋳造及び鍛錬鋼製品に常用されている。しかし、従来の鉄基合金は、過度の酸化及び不十分な長期破断特性(デルタフェライト及び破断延性など)を示す。ある種の鉄基合金ではこれらの特性の1又は2が改善されたが、これらの特性がすべて最大化された鉄基合金はない。このことは、構造的健全性を含めずに、様々な部品の効率を高めるため一段と高い温度及び圧力で鉄基合金が動作する発電業界で特に当てはまる。
【0003】
しかし、クロム含有量を高めるような酸化の改善を目的とした化学的変更は、デルタフェライトの潜在性を増加させ、そのため高温破断特性の低下を招くおそれがある。タングステンの添加は、破断性能を向上させることができるが、高温酸化速度を増加させる。溶銑を脱酸化するためのアルミニウムの使用も、鉄基合金の破断延性を低下させることが判明した。
【0004】
そこで、向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト、向上した破断延性を有する鉄基合金が求められている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、組成物を提供する。本組成物は、約10重量%~約11重量%のクロム、約0.030重量%以下のアルミニウム、約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、残部の鉄及び残渣元素を含む。
【0006】
別の態様では、組成物を含む物品を提供する。本組成物は、約10重量%~約11重量%のクロム、約0.030重量%以下のアルミニウム、約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、残部の鉄及び残渣元素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。本開示の上記その他の特徴については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
図1A】比較組成物CE1に関する模擬マトリックス相の例示的な結果を示す図。
図1B】比較組成物CE2に関する模擬マトリックス相の例示的な結果を示す図。
図1C】比較組成物CE3に関する模擬マトリックス相の例示的な結果を示す図。
図1D】本発明の組成物IE1に関する模擬マトリックス相の例示的な結果を示す図。
図2A】比較組成物CE1に関する模擬焼入れ性の例示的な結果を示す図。
図2B】比較組成物CE2に関する模擬焼入れ性の例示的な結果を示す図。
図2C】比較組成物CE3に関する模擬焼入れ性の例示的な結果を示す図。
図2D】本発明の組成物IE1に関する模擬焼入れ性の例示的な結果を示す図。
図3A】比較組成物及び本発明の組成物に関する模擬YS焼戻しの例示的な結果を示す図。
図3B】比較組成物及び本発明の組成物に対する模擬UTS焼戻しの例示的な結果を示す図。
図4】比較組成物及び本発明の組成物に関する模擬短期破断の例示的な結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
今回、本開示技術に係る組成物が鍛造及び鋳造合金に使用できることが判明した。本組成物は、他の合金組成物と比べると、Cr、Al、Si、C、Al、Ti及びVの元素含有量の変更を含む。Cr含有量は特に顕著である。組成物は、向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト及び向上した破断延性を示す。本開示技術に係る組成物は、向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト及び/又は向上した破断延性を有する合金が必要とされる用途に広く適用できる。
【0009】
今回、特に、クロム含有量を8.5%から9.5%、最大11%まで増加させると、クリープ強度強化フェライト(CSEF)鍛造鋼製品の内側及び外側酸化物層の形成が大幅に減少するという知見が得られた。クロム含有量を増加させると、クロム当量(CE)も高まり、デルタフェライトが残留する可能性がある。デルタフェライトは低クリープ耐性相であり、長期破断強度の低下を招く。そのため、最終製品中の残留デルタフェライトの量は一般に5%未満である。本開示技術に係る組成物は、残留デルタフェライト及び不十分な破断延性に起因する早期破断破壊のリスクを低減しながら、改善された酸化性能を達成するため、鋳造10~11%クロム合金の化学組成を最適化する。
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、公知の鉄基合金の短所の少なくとも一部を解消する。本明細書に記載の例示的な実施形態は、組成物を含む。本組成物は、約10重量%~約11重量%のクロム、約0.030重量%以下のアルミニウム、約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、残部の鉄及び残渣元素を含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のクロム(Cr)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物はCrを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約10重量%~約11重量%のクロムを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約10.25重量%~約11重量%のクロムを含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、組成物は、約10.0重量%以上のCr、約10.1重量%以上のCr、約10.2重量%以上のCr、約10.3重量%以上のCr、約10.4重量%以上のCr、約10.5重量%以上のCr、約10.6重量%以上のCr、約10.7重量%以上のCr、約10.8重量%以上のCr又は約10.9重量%以上のCrを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約10.1重量%以下のCr、約10.2重量%以下のCr、約10.3重量%以下のCr、約10.4重量%以下のCr、約10.5重量%以下のCr、約10.6重量%以下のCr、約10.7重量%以下のCr、約10.8重量%以下のCr、約10.9重量%以下のCr又は約11.0重量%以下のCrを含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のアルミニウム(Al)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物はアルミニウムを含まない。幾つかの実施形態では、組成物は0.030重量%以下のアルミニウムしか含まない。幾つかの実施形態では、組成物は0.015重量%以下のアルミニウムしか含まない。
【0014】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.005重量%以上のAl、約0.010重量%以上のAl、約0.015重量%以上のAl、約0.020重量%以上のAl又は約0.025重量%以上のAlを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.010重量%以下のAl、約0.015重量%以下のAl、約0.020重量%以下のAl、約0.025重量%以下のAl又は約0.030重量%以下のAlを含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量の炭素(C)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.08重量%~約0.20重量%の炭素を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.12重量%~約0.18重量%の炭素を含む。
【0016】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.08重量%以上の炭素、約0.09重量%以上の炭素、約0.10重量%以上の炭素、約0.11重量%以上の炭素、約0.12重量%以上の炭素、約0.13重量%以上の炭素、約0.14重量%以上の炭素、約0.15重量%以上の炭素、約0.16重量%以上の炭素、約0.17重量%以上の炭素、約0.18重量%以上の炭素又は約0.19重量%以上の炭素を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.09重量%以下の炭素、約0.10重量%以下の炭素、約0.11重量%以下の炭素、約0.12重量%以下の炭素、約0.13重量%以下の炭素、約0.14重量%以下の炭素、約0.15重量%以下の炭素、約0.16重量%以下の炭素、約0.17重量%以下の炭素、約0.18重量%以下の炭素、約0.19重量%以下の炭素又は約0.20重量%以下の炭素を含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のケイ素(Si)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素を含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%以上のSi、約0.15重量%以上のSi、約0.20重量%以上のSi、約0.25重量%以上のSi、約0.30重量%以上のSi、約0.35重量%以上のSi、約0.40重量%以上のSi、約0.45重量%以上のSi、約0.50重量%以上のSi又は約0.55重量%以上のSiを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.15重量%以下のSi、約0.20重量%以下のSi、約0.25重量%以下のSi、約0.30重量%以下のSi、約0.35重量%以下のSi、約0.40重量%以下のSi、約0.45重量%以下のSi、約0.50重量%以下のSi、約0.55重量%以下のSi又は約0.60重量%以下のSiを含む。
【0019】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のバナジウム(V)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウムを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウムを含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.05重量%以上のV、0.10重量%以上のV、約0.15重量%以上のV、約0.20重量%以上のV、約0.25重量%以上のV、約0.30重量%以上のV又は約0.35重量%以上のVを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%以下のV、約0.15重量%以下のV、約0.20重量%以下のV、約0.25重量%以下のV、約0.30重量%以下のV、約0.35重量%以下のV又は約0.40重量%以下のVを含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のチタン(Ti)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.01重量%~約0.10重量%のチタンを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.015重量%~約0.060重量%のチタンを含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.010重量%以上のTi、約0.015重量%以上のTi、約0.020重量%以上のTi、約0.025重量%以上のTi、約0.030重量%以上のTi、約0.035重量%以上のTi、約0.040重量%以上のTi、約0.045重量%以上のTi、約0.050重量%以上のTi又は約0.055重量%以上のTiを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.015重量%以下のTi、約0.020重量%以下のTi、約0.025重量%以下のTi、約0.030重量%以下のTi、約0.035重量%以下のTi、約0.040重量%以下のTi、約0.045重量%以下のTi、約0.050重量%以下のTi、約0.055重量%以下のTi又は約0.060重量%以下のTiを含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のマンガン(Mn)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約1.0重量%のマンガンを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.50重量%~約1.0重量%のマンガンを含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%以上のMn、約0.15重量%以上のMn、約0.20重量%以上のMn、約0.25重量%以上のMn、約0.30重量%以上のMn、約0.35重量%以上のMn、約0.40重量%以上のMn、約0.45重量%以上のMn、約0.50重量%以上のMn、約0.55重量%以上のMn、約0.60重量%以上のMn、約0.65重量%以上のMn、約0.70重量%以上のMn、約0.75重量%以上のMn、約0.80重量%以上のMn、約0.85重量%以上のMn、約0.90重量%以上のMn又は約0.95重量%以上のMnを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.15重量%以下のMn、約0.20重量%以下のMn、約0.25重量%以下のMn、約0.30重量%以下のMn、約0.35重量%以下のMn、約0.40重量%以下のMn、約0.45重量%以下のMn、約0.50重量%以下のMn、約0.55重量%以下のMn、約0.60重量%以下のMn、約0.65重量%以下のMn、約0.70重量%以下のMn、約0.75重量%以下のMn、約0.80重量%以下のMn、約0.85重量%以下のMn、約0.90重量%以下のMn、約0.95重量%以下のMn又は約1.0重量%以下のMnを含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のモリブデン(Mo)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約1.0重量%のモリブデンを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.50重量%~約1.0重量%のモリブデンを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.40重量%以上のMo、約0.45重量%以上のMo、約0.50重量%以上のMo、約0.55重量%以上のMo、約0.60重量%以上のMo、約0.65重量%以上のMo、約0.70重量%以上のMo、約0.75重量%以上のMo、約0.80重量%以上のMo、約0.85重量%以上のMo、約0.90重量%以上のMo、約0.95重量%以上のMo、約1.0重量%以上のMo、約1.05重量%以上のMo、約1.1重量%以上のMo又は約1.15重量%以上のMoを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.45重量%以下のMo、約0.50重量%以下のMo、約0.55重量%以下のMo、約0.60重量%以下のMo、約0.65重量%以下のMo、約0.70重量%以下のMo、約0.75重量%以下のMo、約0.80重量%以下のMo、約0.85重量%以下のMo、約0.90重量%以下のMo、約0.95重量%以下のMo、約1.0重量%以下のMo、約1.05重量%以下のMo、約1.1重量%以下のMo、約1.15重量%以下のMo又は約1.2重量%以下のMoを含む。
【0027】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のニッケル(Ni)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約1.0重量%のニッケルを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.50重量%~約1.0重量%のニッケルを含む。
【0028】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%以上のNi、約0.15重量%以上のNi、約0.20重量%以上のNi、約0.25重量%以上のNi、約0.30重量%以上のNi、約0.35重量%以上のNi、約0.40重量%以上のNi、約0.45重量%以上のNi、約0.50重量%以上のNi、約0.55重量%以上のNi、約0.60重量%以上のNi、約0.65重量%以上のNi、約0.70重量%以上のNi、約0.75重量%以上のNi、約0.80重量%以上のNi、約0.85重量%以上のNi、約0.90重量%以上のNi又は約0.95重量%以上のNiを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.15重量%以下のNi、約0.20重量%以下のNi、約0.25重量%以下のNi、約0.30重量%以下のNi、約0.35重量%以下のNi、約0.40重量%以下のNi、約0.45重量%以下のNi、約0.50重量%以下のNi、約0.55重量%以下のNi、約0.60重量%以下のNi、約0.65重量%以下のNi、約0.70重量%以下のNi、約0.75重量%以下のNi、約0.80重量%以下のNi、約0.85重量%以下のNi、約0.90重量%以下のNi、約0.95重量%以下のNi又は約1.0重量%以下のNiを含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のニオブ(Nb)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.01重量%~約0.12重量%のニオブを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.05重量%~約0.10重量%のニオブを含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.01重量%以上のNb、約0.02重量%以上のNb、約0.03重量%以上のNb、約0.04重量%以上のNb、約0.05重量%以上のNb、約0.06重量%以上のNb、約0.07重量%以上のNb、約0.08重量%以上のNb、約0.09重量%以上のNb、約0.10重量%以上のNb又は約0.11重量%以上のNbを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.02重量%以下のNb、約0.03重量%以下のNb、約0.04重量%以下のNb、約0.05重量%以下のNb、約0.06重量%以下のNb、約0.07重量%以下のNb、約0.08重量%以下のNb、約0.09重量%以下のNb、約0.010重量%以下のNb、約0.11重量%以下のNb又は約0.12重量%以下のNbを含む。
【0031】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量の窒素(N)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.01重量%~約0.10重量%の窒素を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.03重量%~約0.07重量%の窒素を含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.01重量%以上のN、約0.02重量%以上のN、約0.03重量%以上のN、約0.04重量%以上のN、約0.05重量%以上のN、約0.06重量%以上のN、約0.07重量%以上のN、約0.08重量%以上のN又は約0.09重量%以上のNを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.02重量%以下のN、約0.03重量%以下のN、約0.04重量%以下のN、約0.05重量%以下のN、約0.06重量%以下のN、約0.07重量%以下のN、約0.08重量%以下のN、約0.09重量%以下のN又は約0.010重量%以下のNを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量の銅(Cu)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.05重量%~約0.25重量%の銅を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.10重量%~約0.20重量%の銅を含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、組成物は、約0.05重量%以上のCu、約0.06重量%以上のCu、約0.07重量%以上のCu、約0.08重量%以上のCu、約0.09重量%以上のCu、約0.10重量%以上のCu、約0.11重量%以上のCu、約0.12重量%以上のCu、約0.13重量%以上のCu、約0.14重量%以上のCu、約0.15重量%以上のCu、約0.16重量%以上のCu、約0.17重量%以上のCu、約0.18重量%以上のCu、約0.19重量%以上のCu、約0.20重量%以上のCu、約0.21重量%以上のCu、約0.22重量%以上のCu、約0.23重量%以上のCu又は約0.24重量%以上のCuを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約0.06重量%以下のCu、約0.07重量%以下のCu、約0.08重量%以下のCu、約0.09重量%以下のCu、約0.10重量%以下のCu、約0.11重量%以下のCu、約0.12重量%以下のCu、約0.13重量%以下のCu、約0.14重量%以下のCu、約0.15重量%以下のCu、約0.16重量%以下のCu、約0.17重量%以下のCu、約0.18重量%以下のCu、約0.19重量%以下のCu、約0.20重量%以下のCu、約0.21重量%以下のCu、約0.22重量%以下のCu、約0.23重量%以下のCu、約0.24重量%以下のCu又は約0.25重量%以下のCuを含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量の鉄(Fe)を含んでいてもよい。多くの実施形態では、組成物は残部の鉄を含む。これらの実施形態では、鉄の量は、組成物の総重量%を100重量%にするのに十分である。
【0036】
幾つかの実施形態では、組成物は、約84重量%以上のFe、約85重量%以上のFe又は約86重量%以上のFeを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約85重量%以下のFe、約86重量%以下のFe又は約87重量%以下のFeを含む。
【0037】
幾つかの実施形態では、組成物は、混入元素を含んでいてもよい。本明細書では、混入元素は、組成物中に本質的に存在し得る元素であって、組成物の材料特性を実質的に変化させる元素を含む。幾つかの実施形態では、混入元素は、組成物では必要ではなく、組成物に何の利益ももたらさない。
【0038】
幾つかの実施形態では、組成物は、残部の鉄及び残渣元素を含む。本明細書では、残渣元素は、組成物中に本質的に存在し得るが、適切に制限すれば組成物の材料特性を実質的に変化させない元素を含む。
【0039】
これらの実施形態では、鉄及び残渣元素の量は、組成物の総重量%を100重量%にするのに十分である。
【0040】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物に資する適量のマンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、窒素(N)、銅(Cu)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、水素(H)及びコバルト(Co)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、マンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルトを5重量%以下しか含まない。
【0041】
幾つかの実施形態では、組成物は、クロム、炭素、ケイ素、バナジウム、チタン、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅及び鉄を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、アルミニウム(Al)、リン(P)、硫黄(S)、タングステン(W)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、水素(H)、コバルト(Co)及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0042】
幾つかの実施形態では、組成物は、リン(P)、硫黄(S)、タングステン(W)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、水素(H)及び/又はコバルト(Co)を含まない。幾つかの実施形態では、組成物は、リン、硫黄、タングステン、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及び/又はコバルトを0.5重量%以下しか含まない。幾つかの実施形態では、組成物は、リン、硫黄、タングステン、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及び/又はコバルトを0.25重量%以下しか含まない。
【0043】
幾つかの実施形態では、組成物は合金組成物である。幾つかの実施形態では、組成物は、鍛造組成物及び/又は鋳造組成物である。
【0044】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物の使用に資する凝固範囲を有し得る。凝固範囲は、液相線温度と固相線温度の差として定義される。幾つかの実施形態では、組成物は、約200°F未満の凝固範囲を有する。幾つかの実施形態では、組成物は、約175°F未満の凝固範囲を有する。
【0045】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物の使用に資するマルテンサイト開始温度を有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、約450°F~約550°Fの範囲内のマルテンサイト開始温度を有する。
【0046】
幾つかの実施形態では、組成物は、本願記載の組成物の使用に資するマルテンサイト90%温度を有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、約250°F~約350°Fの範囲内のマルテンサイト90%温度を有する。
【0047】
また、本明細書では、組成物を含む物品についても記載する。一般に、組成物は、本願記載の組成物の使用に資する当技術分野で公知の適切な物品に含めることができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、物品は、限定されるものではないが、鍛造プロセス及び/又は鋳造プロセスを用いて製造される。幾つかの実施形態では、物品は、鋳造プロセスを用いて製造される。
【0049】
幾つかの実施形態では、物品はタービン部品である。幾つかの実施形態では、タービンは、ガスタービン又は蒸気タービンである。
【0050】
幾つかの実施形態では、物品は、限定されるものではないが、ノズル、シュラウド、スプラッシュプレート、燃焼器部品、ディフューザケース、内側ディフューザケース、圧縮機ケース、内側圧縮機ケース、スプリッタ、内側バレル、タービンシェル、圧縮機ブレード、圧縮機ベーン、ガイドベーン、保持リング及びこれらの組合せのようなタービン部品である。
【0051】
幾つかの実施形態では、物品は、限定されるものではないが、ケース内蒸気タービン高圧ロータ用の内側ケーシング、ケース内蒸気タービン中圧ロータ用の内側ケーシング、ケース内蒸気タービン高圧ロータ用の外側ケーシング、ケース内蒸気タービン用高圧ロータ用の外側ケーシング、ケース内蒸気タービン中圧ロータ用の外側ケーシング、パッキングヘッド、ダイヤフラムケーシング及びこれらの組合せのようなタービン部品である。
【0052】
幾つかの実施形態では、物品は、ターボチャージャ部品の部品である。幾つかの実施形態では、物品は自動車の部品である。
【0053】
幾つかの実施形態では、物品は、750℃の最大動作温度で使用されるように構成される。
【0054】
本開示技術の追加の態様を、以下の実施態様項に示す。
[実施態様1]
約10重量%~約11重量%のクロム、
約0.030重量%以下のアルミニウム、
約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、
約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、
約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、
約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素
を含む、組成物。
[実施態様2]
当該組成物が約10.25重量%~約11重量%のクロムを含む、実施態様項1に記載の組成物。
[実施態様3]
当該組成物が0.015重量%以下のアルミニウムを含む、実施態様項1又は実施態様項2に記載の組成物。
[実施態様4]
当該組成物が約0.12重量%~約0.18重量%の炭素を含む、実施態様項1乃至実施態様項3のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様5]
当該組成物が約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素を含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様6]
当該組成物が約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウムを含む、実施態様項1乃至実施態様項5のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様7]
当該組成物が約0.015重量%~約0.060重量%のチタンを含む、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様8]
約10.25重量%~約11重量%のクロム、
約0.015重量%以下のアルミニウム、
約0.12重量%~約0.18重量%の炭素、
約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素、
約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウム、
約0.015重量%~約0.060重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素
を含む、実施態様項1乃至実施態様項7のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様9]
約0.10重量%~約1.0重量%のマンガン、及び/又は
約0.40重量%~約1.2重量%のモリブデン
をさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項8のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様10]
約0.50重量%~約1.0重量%のマンガン、及び/又は
約0.60重量%~約0.80重量%のモリブデン
をさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項9のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様11]
当該組成物が約200°F未満の凝固範囲を有する、実施態様項1乃至実施態様項10のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様12]
当該組成物が約175°F未満の凝固範囲を有する、実施態様項1乃至実施態様項11のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様13]
当該組成物が、約450°F~約550°Fの範囲内のマルテンサイト開始温度を有する、実施態様項1乃至実施態様項12のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様14]
当該組成物が、約250°F~約350°Fの範囲内のマルテンサイト90%温度を有する、実施態様項1乃至実施態様項13のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様15]
当該組成物が鍛造組成物及び/又は鋳造組成物である、実施態様項1乃至実施態様項14のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様16]
組成物を含む物品であって、前記組成物が、
約10重量%~約11重量%のクロム、
約0.030重量%以下のアルミニウム、
約0.08重量%~約0.20重量%の炭素、
約0.10重量%~約0.60重量%のケイ素、
約0.05重量%~約0.40重量%のバナジウム、
約0.01重量%~約0.10重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素
を含む、物品。
[実施態様17]
当該物品が、ケース内蒸気タービン高圧ロータ用内側ケーシング、ケース内蒸気タービン中圧ロータ用内側ケーシング、ケース内蒸気タービン高圧ロータ用外側ケーシング、ケース内蒸気タービン用中圧ロータ用外側ケーシング、パッキングヘッド、ダイヤフラムケーシング及びこれらの組合せからなる群から選択されるタービン部品である、実施態様項16に記載の物品。
[実施態様18]
当該物品が、ノズル、シュラウド、スプラッシュプレート、燃焼器部品、ディフューザケース、内側ディフューザケース、圧縮機ケース、内側圧縮機ケース、スプリッタ、内側バレル、タービンシェル、圧縮機ブレード、圧縮機用ベーン、ガイドベーン、保持リング及びこれらの組合せからなる群から選択されるタービン部品である、実施態様項16又は実施態様項17に記載の物品。
[実施態様19]
前記組成物が、
約10.25重量%~約11重量%のクロム、
約0.015重量%以下のアルミニウム、
約0.12重量%~約0.18重量%の炭素、
約0.20重量%~約0.40重量%のケイ素、
約0.10重量%~約0.30重量%のバナジウム、
約0.015重量%~約0.060重量%のチタン、
5重量%以下のマンガン、リン、硫黄、モリブデン、タングステン、ニッケル、ニオブ、窒素、銅、ホウ素、ジルコニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、鉛、水素及びコバルト、
残部の鉄及び残渣元素
を含む、実施態様項16乃至実施態様項18のいずれか1項に記載の物品。
[実施態様20]
前記組成物が、
約0.10重量%~約1.0重量%のマンガン、及び/又は
約0.40重量%~約1.2重量%のモリブデン
をさらに含む、実施態様項16乃至実施態様項19のいずれか1項に記載の物品。
【0055】
以上の説明において「幾つかの実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。
【実施例0056】
これ以上説明しなくても、当業者であれば、以上の説明から、本発明を最大限活用できると思料される。以下の実施例は、単なる例示にすぎず、本開示を限定するものではない。以下の実施例の出発材料は、必ずしも他の実施例に手順が記載された特定の調製例で調製したものとは限らない。また、本明細書に記載された数値範囲は、下限値から上限値までのあらゆる値を包含する。例えば、範囲が10~50と記載されている場合、本明細書では、12~30、20~40、30~50のような値が明示的に記載されているものとする。これらは、具体的に意図されているものの一例にすぎず、記載された下限と上限の間の数値のあらゆる可能な組合せが、本願に明示的に記載されていると解される。
【0057】
例1.組成
本開示に係る組成物を以下の表に示す。CE1及びCE5は、鍛造形態の比較例である。CE2、CE3及びCE4は鋳造形態の比較例である。IE1は鋳造形態の実施例である。「max」は元素の上限を意味し、「min」は元素の下限を意味し、「N/A」は元素が存在しないことを意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
例2.模擬マトリックス相
予想される物性を決定するため、本開示技術に係る組成物の特性を模擬実験した。模擬マトリックス相特性を以下の表及び図1A図1Dに示す。
【0061】
凝固範囲は、鋳造性の相対的予測因子として使用できることが多い。凝固範囲が狭いほど、一般に収縮傾向が小さくなり、凝固高温割れも発生しにくくなる。CE2及びIE1は、模擬凝固範囲温度が類似しており、類似した鋳造性を示すと考えられる。
【0062】
【表3】
【0063】
例3.模擬焼入れ性
模擬マルテンサイト焼入れ性特性を図2A図2Dに示す。Msはマルテンサイトの開始温度である。M50は50%マルテンサイト変態温度である。M90は90%マルテンサイト変態温度である。HRCはロックウェルC硬さである。
【0064】
模擬実験した4種類の組成物はすべて、卓越した焼入れ性を示した。IE1マルテンサイト開始温度は約500°Fであり、マルテンサイト90%温度は約300°Fであった。IE1鋳造物は、焼入れ/冷却中に非常に厚い部分でも100%のマルテンサイトを達成すると考えられる。ベイナイト/フェライト/パーライトノーズは、非常に長時間に押し出される。
【0065】
例4.模擬焼戻し
模擬焼戻し特性を図3A図3Bに示す。図3Aは予測降伏強度を示し、図3Bは極限引張強度を示す。4種類の模擬組成物すべてが同様の焼戻し応答を示すことが観察された。焼戻しは、強度と靭性を調和させるために使用できる。
【0066】
例5.模擬短期破断
模擬実験した短期破断特性を図4に示す。IE1はCE1と同様の短期破断特性を有することが観察された。
【0067】
今回、本開示技術に係る組成物を、鍛造及び/又は鋳造合金に使用できることが判明した。組成物は、向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト及び向上した破断延性を示す。本開示技術に係る組成物は、向上した耐酸化性、低下した残留デルタフェライト及び/又は向上した破断延性を有する合金を必要とする用途に広く適用可能である。
【0068】
別途記載されていない限り、本明細書において、「略」、「実質的に」及び「約」などの近似的表現は、それらで修飾された用語が、絶対的又は厳密なものではなく、当業者に自明の近似的なものにすぎないことを示す。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似的表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。さらに、別途記載されていない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本願では単なる付票にすぎず、それらが付されたものに、数的、位置的又は階層的要件を課すものではない。さらに、例えば「第2」という場合、例えば「第1」以下又は「第3」以上のものの存在を必要とするものでも、排除するものでもない。
【0069】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴が、ある図面には記載され、他の図面には記載されていないこともあるが、これは便宜上のものにすぎない。本明細書において「幾つかの実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。本発明の原理に則して、ある図面に記載された特徴は、他の図面に記載された特徴との組合せとして参照及び/又は特許請求の範囲に記載することができる。
【0070】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、当業者が本発明を実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
【外国語明細書】