(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011032
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】電気機械デバイスを駆動するためのドライバ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20250116BHJP
H01H 47/18 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
H01F7/18 Q
H01F7/18 V
H01H47/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024096642
(22)【出願日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】18/337,505
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ロートン
【テーマコード(参考)】
5G057
【Fターム(参考)】
5G057AA20
5G057KK01
5G057RR10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ソレノイドと機械式スイッチとを有する電気機械デバイスを駆動するドライバを提供する。
【解決手段】電気機械システム500において、接触器などの電気機械デバイス510に結合されたドライバ520は、入力ポートVBATx、グランドポートCLx、電気機械デバイスに接続可能な第1、第2の出力ポートCHx、COx及び2つのパワースイッチHS、LSを含む。コントローラ530は、ソレノイド512を充電して機械式スイッチ514を閉じる第1のモード、その状態に維持する第2のモード及びソレノイドを放電して機械式スイッチを開く第3のモードで動作する。第1、第2のモードでは、ローサイドパワースイッチはオン状態であり、ハイサイドパワースイッチは、コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わる。オフ状態では、グランドダイオードD1、ソレノイド及びローサイドパワースイッチを介してグランド間に経路が形成される。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドと機械式スイッチとを含む電気機械デバイスを駆動するためのドライバであって、
バッテリに接続可能な入力ポートと、
グランドに接続されたグランドポートと、
前記電気機械デバイスに接続可能な第1の出力ポートおよび第2の出力ポートであって、前記第1の出力ポートがグランドダイオードを介してグランドに接続される、第1の出力ポートおよび第2の出力ポートと、
ハイサイドパワースイッチと、
ローサイドパワースイッチと、
前記ハイサイドパワースイッチおよび前記ローサイドパワースイッチに結合されたコントローラと、
を含み、
前記コントローラは、前記ソレノイドを充電して前記機械式スイッチを閉じる第1のモード、前記機械式スイッチを閉じた状態に維持する第2のモード、および前記ソレノイドを放電して前記機械式スイッチを開く第3のモードで動作可能であり、
前記第1のモードおよび前記第2のモードでは、前記ローサイドパワースイッチはオン状態であり、前記ハイサイドパワースイッチは、前記コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わるように制御され、これにより、前記オン状態において、前記ハイサイドパワースイッチ、前記ソレノイド、および前記ローサイドパワースイッチを介して前記入力ポートとグランドとの間に経路が形成され、前記オフ状態において、前記グランドダイオード、前記ソレノイド、および前記ローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される、
ドライバ。
【請求項2】
前記第1のモードは、前記ソレノイドを通してターゲット電流に達するまで前記ローサイドパワースイッチおよび前記ハイサイドパワースイッチが共にオン状態である第1の段階と、前記ソレノイドを通して前記ターゲット電流を維持するために前記ハイサイドパワースイッチがオン状態とオフ状態の間で切り替わる第2の段階と、を含む、請求項1に記載のドライバ。
【請求項3】
前記第2のモードは、前記ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値まで落とすために前記コントローラがオフ状態で動作する第1の段階と、前記ソレノイドを通る電流を前記第2のターゲット値に維持するために前記ハイサイドパワースイッチがオン状態とオフ状態の間で切り替わる第2の段階と、を含む、請求項1に記載のドライバ。
【請求項4】
前記第3のモードの間、前記ソレノイドは、ツェナートリガによって制御される前記ローサイドパワースイッチを介して放電される、請求項1に記載のドライバ。
【請求項5】
前記ローサイドパワースイッチと並列にクランプトリガ経路が設けられ、前記クランプトリガ経路は、ダイオードと、ツェナーダイオードと、抵抗と、を含む、請求項4に記載のドライバ。
【請求項6】
接触器を駆動するための接触器ドライバである、請求項1に記載のドライバ。
【請求項7】
マルチプレクサをさらに含む、請求項1に記載のドライバ。
【請求項8】
デジタル回路をさらに含む、請求項1に記載のドライバ。
【請求項9】
前記デジタル回路は、フィードバック電流を測定し、前記フィードバック電流の値に従って前記コントローラを更新するように適合される、請求項8に記載のドライバ。
【請求項10】
前記ハイサイドパワースイッチおよび前記ローサイドパワースイッチは、異なる電圧定格を有する、請求項1に記載のドライバ。
【請求項11】
前記ハイサイドパワースイッチは、前記入力ポートで供給されるバッテリ電圧によって定義される電圧定格を有する、請求項1に記載のドライバ。
【請求項12】
前記ローサイドパワースイッチは、クランプ経路のクランプ電圧によって定義される電圧定格を有する、請求項4に記載のドライバ。
【請求項13】
前記コントローラは、パルス幅変調を実施するように構成される、請求項1に記載のドライバ。
【請求項14】
前記機械式スイッチは、静的接触部材と可動接触部材とを含む、請求項1に記載のドライバ。
【請求項15】
請求項1に記載のドライバに結合された電気機械デバイスを含む電気機械システム。
【請求項16】
ソレノイドと機械式スイッチとを含む電気機械デバイスを駆動するための方法であって、
バッテリに接続可能な入力ポートと、グランドに接続されたグランドポートと、前記電気機械デバイスに接続可能な第1の出力ポートおよび第2の出力ポートであって、前記第1の出力ポートがグランドダイオードを介してグランドに接続される、第1の出力ポートおよび第2の出力ポートと、ハイサイドパワースイッチと、ローサイドパワースイッチと、前記ハイサイドパワースイッチおよび前記ローサイドパワースイッチに結合されたコントローラと、を含むドライバを提供するステップと、
前記ソレノイドを充電して前記機械式スイッチを閉じるために第1のモードで前記コントローラを動作させるステップと、
前記機械式スイッチを閉じた状態に維持するために第2のモードで前記コントローラを動作させるステップであって、前記第1のモードおよび前記第2のモードでは、前記ローサイドパワースイッチはオン状態であり、前記ハイサイドパワースイッチは、前記コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わるように制御され、これにより、前記オン状態において、前記ハイサイドパワースイッチ、前記ソレノイド、および前記ローサイドパワースイッチを介して前記入力ポートとグランドとの間に経路が形成され、前記オフ状態において、前記グランドダイオード、前記ソレノイド、および前記ローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される、ステップと、
前記ソレノイドを放電して前記機械式スイッチを開くために第3のモードで前記コントローラを動作させるステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記第2のモードは、前記ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値まで落とすために前記コントローラがオフ状態で動作する第1の段階と、前記ソレノイドを通る電流を前記第2のターゲット値に維持するために前記コントローラが動作する第2の段階と、を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機械デバイスを駆動するためのドライバに関する。より詳細には、本開示は、高電圧接触器デバイスを駆動するためのドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
接触器デバイスは、電気回路のオン/オフを切り替えるために開閉される2つの接触面を有する。これらは、大型モータ(自動車など)の制御など、高電圧および高電流負荷の用途に使用される。典型的には、接触器は、ソレノイドのようなアクチュエータを使用して開閉される。このアクチュエータは、ばねを介して接触器の第1の表面に取り付けられたプランジャを含む。このプランジャは、導電性材料のコイル内に配置される。
【0003】
ソレノイドは、駆動回路に結合される。これは、ソレノイドのコイルに電流を流し、電磁誘導を引き起こす。プランジャにかかる磁力により、接触面が開位置から閉位置に移動する。接触器を再び開くには、ソレノイドのコイルを非通電状態にして、プランジャにかかる磁力を弱める必要がある。この非通電プロセスは、安全性と機器保全の観点から、迅速に行う必要がある。非通電の速度が十分でないと、接触面が損傷し、溶着して高電圧を遮断できなくなり、危険な状態になる可能性がある。
【0004】
従来、ソレノイドを使用する回路では、コイルは回路内のフリーホイール経路を介して放電される。その単純な設計のためにこの解決策が好まれているが、接触器を高電圧で使用する場合、ソレノイドのコイルを電流が流れ続け、非通電プロセスが遅くなって接触器を溶着させる可能性があるため、フリーホイール経路は好ましくない。頻繁に使用されてきた別の解決策として、フリーホイール経路を電圧クランプ回路で実装することが挙げられる。この回路は、閾値電圧に達するとコイルを放電する。このような解決策は、「Driving Contactors with external PWM(外部PWMによる接触器の駆動)」と題するGigavec Applications Note AN-016の記事(https://www.sensata.com/sites/default/files/a/Sensata-gigavac-driving-contactors-with-external-pwm-app-note.pdf)、David Dongによって発表された、Texas Instruments社の「high-voltage contactor control(高電圧接触器制御)」と題する技術資料(https://www.ti.com/lit/ml/slyp693/slyp693.pdf?ts=1678105349002&ref_url=https%253A%252F%252Fwww.google.com%252F)、ならびにiC-Haus社のiC-JEおよびiC-GEのPWMリレー/ソレノイドドライバに関するデータシート(https://www.ichaus.de/upload/pdf/JE_datasheet_G3en.pdf;https://www.ichaus.de/upload/pdf/GE_datasheet_B1en.pdf)に記載されている。
【0005】
クランプ回路は、典型的には低いクランプ電圧で実装されるため、高電圧接触器には不向きである。さらに、クランプ回路は、複数のパワーデバイスを使用する必要がある場合が多いため、駆動回路の面積が増大し、製造コストも増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、上述した欠点の1つまたは複数に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、ソレノイドと機械式スイッチとを含む電気機械デバイスを駆動するためのドライバが提供される。ドライバは、バッテリに接続可能な入力ポートと、グランドに接続されたグランドポートと、電気機械デバイスに接続可能な第1の出力ポートおよび第2の出力ポートと、を含む。ここで、第1の出力ポートがグランドダイオードを介してグランドに接続される。また、ドライバは、ハイサイドパワースイッチと、ローサイドパワースイッチと、ハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチに結合されたコントローラと、を含む。ここで、コントローラは、ソレノイドを充電して機械式スイッチを閉じる第1のモード、機械式スイッチを閉じた状態に維持する第2のモード、およびソレノイドを放電して機械式スイッチを開く第3のモードで動作可能である。また、第1のモードおよび第2のモードでは、ローサイドパワースイッチはオン状態であり、ハイサイドパワースイッチは、コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わるように制御される。これにより、オン状態において、ハイサイドパワースイッチ、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介して入力ポートとグランドとの間に経路が形成され、オフ状態において、グランドダイオード、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される。
【0008】
任意選択で、第1のモードは、ソレノイドを通してターゲット電流に達するまでローサイドパワースイッチおよびハイサイドパワースイッチが共にオン状態である第1の段階と、ソレノイドを通してターゲット電流を維持するためにハイサイドパワースイッチがオン状態とオフ状態の間で切り替わる第2の段階と、を含む。
【0009】
任意選択で、第2のモードは、ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値まで落とすためにコントローラがオフ状態で動作する第1の段階と、ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値に維持するためにハイサイドパワースイッチがオン状態とオフ状態の間で切り替わる第2の段階と、を含む。
【0010】
任意選択で、第3モードの間、ソレノイドは、ツェナートリガによって制御されるローサイドパワースイッチを介して放電される。
【0011】
例えば、第3のモードでは、ソレノイドが完全に放電され、機械式スイッチが開く。
【0012】
任意選択で、ローサイドパワースイッチと並列にクランプトリガ経路が設けられる。クランプトリガ経路は、ダイオードと、ツェナーダイオードと、抵抗と、を含む。
【0013】
任意選択で、ドライバは、接触器を駆動するための接触器ドライバである。
【0014】
任意選択で、ドライバは、マルチプレクサをさらに含む。
【0015】
任意選択で、ドライバは、デジタル回路をさらに含む。例えば、デジタル回路またはデジタルコアは、ステートマシンとして実装されてもよい。
【0016】
任意選択で、デジタル回路は、フィードバック電流を測定し、フィードバック電流の値に従ってコントローラを更新するように適合される。例えば、フィードバック電流は、ソレノイドを通る電流であってもよい。
【0017】
任意選択で、ハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチは、異なる電圧定格を有する。例えば、ハイサイドパワースイッチは、45Vの電圧定格を有し、ローサイドパワースイッチは、65Vの電圧定格を有してもよい。
【0018】
任意選択で、ハイサイドパワースイッチは、入力ポートで供給されるバッテリ電圧によって定義される電圧定格を有する。
【0019】
任意選択で、ローサイドパワースイッチは、クランプ経路のクランプ電圧によって定義される電圧定格を有する。
【0020】
任意選択で、コントローラは、パルス幅変調を実施するように構成される。
【0021】
任意選択で、機械式スイッチは、静的接触部材と可動接触部材とを含む。
【0022】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様のドライバに結合された電気機械デバイスを含む電気機械システムが提供される。
【0023】
本開示の第3の態様によれば、ソレノイドと機械式スイッチとを含む電気機械デバイスを駆動するための方法が提供される。該方法は、
・ バッテリに接続可能な入力ポートと、グランドに接続されたグランドポートと、電気機械デバイスに接続可能な第1の出力ポートおよび第2の出力ポートであって、第1の出力ポートがグランドダイオードを介してグランドに接続される、第1の出力ポートおよび第2の出力ポートと、ハイサイドパワースイッチと、ローサイドパワースイッチと、ハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチに結合されたコントローラと、を含むドライバを提供するステップと、
・ ソレノイドを充電して機械式スイッチを閉じるために第1のモードでコントローラを動作させるステップと、
・ 機械式スイッチを閉じた状態に維持するために第2のモードでコントローラを動作させるステップであって、第1のモードおよび第2のモードでは、ローサイドパワースイッチはオン状態であり、ハイサイドパワースイッチは、コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わるように制御され、これにより、オン状態において、ハイサイドパワースイッチ、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介して入力ポートとグランドとの間に経路が形成され、オフ状態において、グランドダイオード、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される、ステップと、
・ ソレノイドを放電して機械式スイッチを開くために第3のモードでコントローラを動作させるステップと、
を含む。
【0024】
任意選択で、第2のモードは、ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値まで落とすためにコントローラがオフ状態で動作する第1の段階と、ソレノイドを通る電流を第2のターゲット値に維持するためにコントローラが動作する第2の段階と、を含む。
【0025】
本開示の第1の態様に関して説明した選択肢は、本開示の第2および第3の態様にも共通する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら本開示を例示的にさらに詳細に説明する。
【
図1A】先行技術による接触器を駆動するためのドライバを示す図である。
【
図1B】グランド短絡接続を示す
図1Aの回路を示す図である。
【
図2A】オン段階における
図1のドライバの動作を示す図である。
【
図2B】フリーホイールオフ段階における
図1のドライバの動作を示す図である。
【
図2C】クランプオフ段階における
図1のドライバの動作を示す図である。
【
図3】
図1のドライバの代替実施形態を示す図である。
【
図4】本開示による電気機械デバイスの駆動方法のフローチャートである。
【
図5A】
図4の方法を実施するためのドライバを示す図である。
【
図5B】ソレノイドを流れる電流を時間の関数として示すプロット図である。
【
図6A】
図5の回路の動作のオン段階における電流経路を示す図である。
【
図6B】ソレノイドを流れる電流を時間の関数として示す図であり、動作におけるオン動作状態を強調して示している。
【
図6C】
図5の回路のフリーホイールオフ状態の動作における電流経路を示す図である。
【
図6D】ソレノイドを流れる電流を示すプロット図であり、フリーホイールオフ状態を強調して示している。
【
図6E】
図5の回路のクランプオフ状態の動作における電流経路を示す図である。
【
図6F】ソレノイドを流れる電流を示すプロット図であり、クランプオフ状態を強調して示している。
【
図7A】異なる構成のパワースイッチが回路チップ上で占める面積を示す図である。
【
図7B】
図1のドライバのパワースイッチが占める面積を、
図5のドライバのパワースイッチが占める面積と比較して示す図である。
【
図9B】安全でないターンオフを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1Aは、先行技術による接触器などの電気機械デバイスを駆動するためのドライバを示す図である。ドライバ100は、ソレノイド(負荷)と機械式スイッチとを含む接触器110に結合される。ドライバは、ソレノイドを駆動して機械式スイッチを作動させるように適合されている。ドライバ100は、電圧VBATを有するバッテリに接続された入力ポートと、グランドに接続されたグランドポート(CLx)と、接触器のソレノイドに接続された2つの出力ポートCHxおよびCoxと、を有する。第1の出力ポートCHxは、バッテリおよびソレノイドの両方に接続される。
【0028】
ドライバ100は、電界効果トランジスタ(FET)として実装されたハイサイドパワースイッチHS1およびHS2、ならびにローサイドパワースイッチLSを制御するコントローラ120に結合されたデジタルコア140を含む。ツェナートリガ130は、ドライバのハイサイドとローサイドとの間に結合される。ツェナートリガは、リニアモードでドライバをオンにして、クランプを提供する。
【0029】
ドライバ100は、高電圧クランプとフリーホイール経路の両方を採用した高電圧接触器ドライバである。高電圧クランプは、ツェナーダイオードを含むツェナートリガ130を有するように実装される。これは、ツェナーダイオードにおける電圧が閾値電圧に達したときのみ、電流がクランプ経路に流れることを可能にする。
図1Aに示すドライバと同様のドライバの先行技術における実装では、クランプは、50V未満に制限されていたが、高電圧接触器の場合(例えば、自動車用接触器)には、最大60Vのクランプが必要である。
図1Aのドライバ100は、60Vのクランプで実装することができる。本実施形態のドライバ100のフリーホイール経路は、ドライバのHS側の切り替え可能なフリーホイール経路である。
【0030】
このトポロジーでは、ドライバは、HS1、HS2、およびLSがパルス幅変調PWMコントローラとして実装されたコントローラ120によって制御されるように実装される。PWMコントローラ120は、ドライバ100のLSおよびHSの両方のフィードバック電流を検出するように適合されたデジタルコア140を介して動作する。ドライバ100のLSおよびHSのフィードバック電流の値は、PWMコントローラ120がスイッチに送る信号を決定する。この特定のトポロジーは、3つのモードで動作する。
【0031】
図2A、
図2B、および
図2Cは、
図1の回路の動作を示す図である。ドライバ100は、オン段階、フリーホイールオフ段階、クランプオフ段階とも呼ぶ3つの段階で動作する。210a、b、cでは、各段階における時間の関数として負荷を通る電流が示されており、220a、b、cでは、各段階におけるドライバ100および電気機械デバイス110を通る電流経路が示されている。
【0032】
図2Aに示す第1の段階では、電圧VBATをもつバッテリポートから電気機械デバイス110およびLSパワースイッチを介してグランドGNDに電流経路が形成される。初期段階において、ドライバがオンになると、LSスイッチはオンになり、スイッチHS1とHS2はオフになる。ソレノイドを流れる電流が蓄積されると、デジタルコア140は、その値を監視し続ける。電流が閾値を超えると、デジタルコア140は、HSスイッチおよびLSスイッチがPWM制御される時点に関する警告をコントローラ120に発する。PWM制御が引き継がれる時点は、210aの電流対時間プロットで電流が急激に増加し終わる時点と一致する。この時点の後、ドライバ100は、オン段階とフリーホイールオフ段階を含む2つの段階の間を行き来するように切り替わる。
図2Bに示すように、フリーホイールオフ段階の間、PWM制御120は、LSスイッチをオフにし、HS1およびHS2スイッチをオンにする。この段階では、切り替え可能なフリーホイール経路がオンとなり、電流は、HS1、HS2、および電気機械デバイス110を含む円形経路を流れる。HSフリーホイール経路により、LSがオフの間、負荷内で電流を維持することができる。オン段階およびフリーホイールオフ段階は、接触器を閉じるように動作するドライバ100の単一の動作段階とみなすことができ、以下ではこれをターンオン(またはオン)とも呼ぶ。
【0033】
接触器が閉じた後、オフされたときに接触器は直ちに開く必要があり、ドライバ100は、
図2Cに示す動作の第2の段階であるターンオフに入る。この段階が始まると、HSスイッチおよびLSスイッチの両方がオフになり、ツェナートリガ130における電圧が閾値(この例では、閾値電圧は60V)を超えるまで上昇する。この時点で、ツェナーダイオードは、導通を開始し、クランプ経路が開かれて負荷の放電が可能になる。ここで、ドライバ100は、第3の段階、すなわちクランプオフ段階に入る。クランプ経路が開かれると、LSスイッチはオンになり、リニアモードで動作し始める。回路の出力は、バッテリを上回るVDZにクランプされる。ここで、VDZは、ツェナーダイオードの閾値電圧である。このクランプにより、負荷の非通電が可能になり、接触器が開く。
図1および
図2に示すドライバ100のスイッチHS1およびHS2の目的は、クランプ中にフリーホイール経路を遮断して、電流が最も抵抗の少ない経路を通ることによって負荷の非通電が遅くなり、接触器が溶着して損傷する可能性、ひいては安全上の問題を引き起こす可能性を防止することである。したがって、ドライバ100は、動作するために3つのパワースイッチを必要とし、そのうちの2つは互いに直列に結合されているため、回路チップ上の占有面積が増大し、製造コストが増加する。
【0034】
図1Aに示すトポロジーには、
図1Bに示すようなドライバ100のローサイドでグランド短絡が発生した場合、第1の出力ポートCHxがバッテリに直接接続されているため、電気機械デバイス110が依然として作動するという欠点がある。そのため、接触器が意図しないときに閉じてしまい、安全上の懸念が生じる。
【0035】
図3は、
図1Aのドライバを改良したものである。ドライバ300は
図1に示すドライバとほぼ同一であり、そのため、同じ構成要素を示すために同じ参照符号が使用される。この場合、システムの安全性を向上させるために、追加のパワースイッチ310がバッテリポートと第1の出力ポートCHxとの間に結合される。パワースイッチ310は、ドライバ100のローサイドでグランド短絡が発生した場合に、VbatからCHxへの電圧供給をオフにする。
【0036】
ドライバ100にさらに別のパワースイッチを追加すると、回路チップ上の占有面積がさらに増加する。さらに、すべてのパワースイッチ(HS1、HS2、LS、および310)は、高電圧を維持する必要がある。オフ(クランプ)段階では、電圧クランプは、バッテリからグランド経路に対して発生する。そのため、すべてのパワースイッチは、バッテリ電圧VBATにクランプ電圧を加えた電圧を維持できる必要がある。高電圧接触器の例では、必要なクランプ電圧は60Vであり、最低限必要なバッテリ電圧は18Vである。そのため、パワースイッチには少なくとも80Vの電圧定格が必要である。この高電圧定格により、回路の占有面積がさらに増大する。ドライバの安全性を向上させるためにパワースイッチ310を追加すると、製造コストが増加する。
【0037】
本開示は、チップ上の占有面積、製造コスト、安全上の危険性の問題に対処しようとするものであり、同時に、接触器の損傷を防ぐためにソレノイドの通電を迅速に解除できるドライバを提供するものでもある。
【0038】
図4は、本開示による電気機械デバイスの駆動方法のフローチャートである。電気化学デバイスは、機械式スイッチに結合されたソレノイドを含む。
【0039】
ステップ410では、ドライバが提供される。ドライバは、バッテリに接続可能な入力ポートと、グランドに接続されたグランドポートと、電気機械デバイスに接続可能な第1の出力ポートおよび第2の出力ポートと、を含む。第1の出力ポートは、グランドダイオードを介してグランドに接続される。ドライバは、ハイサイドパワースイッチと、ローサイドパワースイッチと、ハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチに結合されたコントローラと、をさらに含む。
【0040】
ステップ420では、コントローラは、ソレノイドを充電して機械式スイッチを閉じる第1のモードで動作する。
【0041】
ステップ430では、コントローラは、機械式スイッチを閉じた状態に維持する第2のモードで動作する。第1のモードおよび第2のモードでは、ローサイドパワースイッチはオン状態であり、ハイサイドパワースイッチは、コントローラによってオン状態とオフ状態の間で切り替わるように制御される。オン状態において、ハイサイドパワースイッチ、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介して入力ポートとグランドとの間に経路が形成される。オフ状態において、グランドダイオード、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される。オフ状態は、グランドとグランドの間に低インピーダンスの経路が形成されるフリーホイールオフ状態ともいえる。
【0042】
ステップ440では、コントローラは、ソレノイドを放電して機械式スイッチを開くために第3のモードで動作する。
【0043】
このアプローチを使用することで、ソレノイドを迅速に消磁することができ、機械式スイッチの接触器を迅速に開くことができる。これにより、接触器の寿命が延びる。
【0044】
図5Aは、
図4の方法を実施するためのドライバを含む電気機械システムを示す。
【0045】
電気機械システム500は、電気機械デバイスを駆動するための接触器などの電気機械デバイス510に結合されたドライバ520を含む。電気化学デバイスは、機械式スイッチ514と、機械式スイッチ514に結合されたソレノイド512と、を有する。ドライバ520は、ハイサイドパワースイッチHSと、ローサイドパワースイッチLSと、ハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチに結合されたコントローラ530と、を含む。ドライバ520は、バッテリ(図示せず)に接続可能な入力ポートVBATxと、グランドに接続されたグランドポートCLxと、電気機械デバイス510に接続可能な第1の出力ポートCHxおよび第2の出力ポートCOxと、を含む複数のポートを有する。第1の出力ポートCHxは、グランドダイオードD1(使用されるプロセス技術によっては、デバイスに内蔵されていてもよい)を介してグランドに接続される。
【0046】
コントローラ530は、ハイサイドパワースイッチHSおよびローサイドパワースイッチLSを駆動するためのパワースイッチドライバ534に結合されたデジタルコア532を含んでもよい。デジタルコア532は、最初に電流をプルイン閾値に制御し、プルイン時間が経過した後に電流を低ホールド電流レベルに制御するステートマシンであってもよい。例えば、デジタルコアは、
図1Aの場合と同様に実装されてもよい。ステートマシンのデジタル電流レベル出力は、PWMを使用して電流を調整するPIコントローラの入力となる。
【0047】
パワースイッチは、様々な方法で実装されてもよい。例えば、パワースイッチは、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。この実装例では、クランプトリガ経路550は、第2の出力ポートCOxとグランドとの間に設けられる。これにより、クランプトリガ経路550およびローサイドパワースイッチLSは、並列に接続される。システム500は、電流を再循環させるためにVBATxにダイオードを追加することによって、クランプ経路なしで実現されてもよい。ただし、クランプ経路の追加は、ソレノイドのより迅速な放電を可能にするので、有利である。
【0048】
クランプトリガ経路550は、ダイオードD2、ツェナーダイオードDZ、および抵抗R1を含む。この例示的なトポロジーでは、クランプは、ドライバのローサイドにのみ発生する。これは、2つのパワースイッチLSおよびHSは、同じ電圧定格である必要がないことを意味する。ハイサイドのパワースイッチHSは、バッテリVBATからの電圧に対応するだけでよく、スイッチLSは、クランプ電圧に対応することができる電圧定格を必要とする。
【0049】
例えば、ドライバ520は、高電圧接触器を動作させるために実装されてもよい。この場合、比較的高いクランプ電圧が必要になる場合がある。数値例では、クランプ電圧は60V、バッテリ電圧は40Vである。これにより、HSスイッチおよびLSスイッチの電圧定格は、それぞれ45Vおよび65Vとなる。
図5のドライバは、
図1のドライバと比較すると、パワースイッチの電圧定格が低く、ドライバを安全に動作させるために必要なパワースイッチの数が減るため、占有面積が小さくなり、製造コストが削減される。
【0050】
パワースイッチドライバ534は、パルス幅変調PWMドライバであってもよい。この例では、PWMドライバ534は、センサ535を介してローサイドパワースイッチにおけるフィードバック電流を検出するように適合されたデジタルコア532によって動作される。例えば、電流センサは、ADCセンサであってもよい。フィードバック電流の値は、PWMコントローラ530がHSスイッチに送信する信号を決定する。
【0051】
任意選択で、マルチプレクサ540が提供されてもよい。この例では、マルチプレクサ540は、入力ポートVBATxに結合された第1の入力と、HSパワースイッチに結合された第2の入力と、ADC536を介してデジタルコア532に結合された出力と、を有する。マルチプレクサ540は、1つのADCを使用してVBAT電圧とハイサイド電流の両方を測定できるため、さらなる面積削減を実現する。
【0052】
コントローラ530は、ソレノイドを充電して機械式スイッチを閉じるプルインモードとも呼ぶ第1のモードと、機械式スイッチを閉じた状態に維持するホールドモードとも呼ぶ第2のモードと、ソレノイドが迅速に放電して機械式スイッチを開くオフモードとも呼ぶ第3のモードとを含む3つの状態またはモードで動作する。
【0053】
図5Bは、第1のモード(プルインモード)、第2のモード(ホールドモード)、第3のモード(オフモード)における、ソレノイドを流れる電流を時間の関数として示すプロット図である。
【0054】
第1のモードは、接触器が最初に作動したときに開始され、ドライバは、ドライバ制御のオン状態(オン段階とも呼ぶ)を使用して、プルイン電流閾値に達するまでバッテリ電圧をフルに印加する。その後、電流は、電力を節約するためにPWMによって調整され、オン状態とオフ状態またはフリーホイールオフ段階とも呼ぶフリーホイールオフ状態との間で交互に切り替わる。第1のモードは、プランジャが完全に閉じるまでのプルイン時間とも呼ぶ期間だけ維持され、この期間の後、第2のモード(ホールドモード)に入る。
【0055】
第2のモードは、電流レベルを低い値に設定し、電力を節約しながら機械式スイッチの接点を閉じたままにする。このモードでは、コントローラは、オン状態とフリーホイールオフ状態(単にオフ状態とも呼ぶ)とを切り替えるPWM制御を使用して、ホールド電流レベルとも呼ぶ第2のターゲットレベルで電流を調整する。
【0056】
第3のモードは、クランプオフ状態を使用して負荷を迅速に非通電にする。
【0057】
【0058】
図6Aは、第1のモード(プルインおよびホールドの動作モード)のオン状態における電流経路を示す図である。
図6Bは、接触器電流とも呼ぶソレノイドを通る電流を時間の関数として示す図であり、動作のオン状態の間のオン段階が強調して示されている。
【0059】
電流波形には、時間t0~t7が示されている。第1の(プルイン)モードは、時間t0からt4の間に起こる。第2の(ホールド)モードは、時間t4からt6の間に起こる。第3の(オフ)モードは、このプロット図において、開始からt0までと、t6からこのプロット図の終わりまでの2回発生する。
【0060】
時間t0にハイサイドパワースイッチおよびローサイドパワースイッチの両方がオンになり、電流経路は、HSスイッチ、ソレノイド512、およびLSスイッチを介して、入力ポートとグランドとの間に形成される。電流は、増加し始めてプランジャに力を発生させる。プランジャは、t1で逆起電力(EMF)を発生させて動き始め、コイル電流を減少させ、時間t1で局所的な最大値を引き起こす。電流は、プランジャが移動するにつれて減少し続け、プランジャが移動の終点に達したときに突然停止する。これは、局所的な最小値として時間t2で示されている。この時点で機械式スイッチは閉じられ、プランジャは完全にプルインされる。時間t2とt3との間で、逆起電力がもはや存在しないため、電流は再び増加し、経路抵抗によって制限されるか、第1のターゲット電流値に達するまで継続する。第1のターゲット電流値は、不要な電力散逸を回避しながらプルインを確保するために、接触器の特性によって定義された所定の値である。デジタルコア532は、パワースイッチドライバ534に信号を送信し、PWMによってHSパワースイッチを駆動することにより、この電流レベルを維持する。
【0061】
図6Cは、フリーホイールオフ状態の動作における電流経路を示す図である。
図6Dは、ソレノイドを通る電流を示す図であり、フリーホイールオフ状態が強調して示されている。フリーホイールオフ状態では、グランドダイオード、ソレノイド、およびローサイドパワースイッチを介してグランドとグランドとの間に経路が形成される。
【0062】
時間t4とt6との間の第2のモード(ホールドモード)の動作の間、コントローラは、オン状態とフリーホイールオフ状態との間で切り替わり、機械式スイッチを閉じた状態に維持する。t4からt5の間、ドライバはフリーホイールオフ状態にあり、電流は第1のターゲットレベルから第2のターゲットレベル(ホールド電流レベルとも呼ぶ)までゆっくりと減少する。ホールド電流レベルに達すると、電流は第2ターゲット値で実質的に一定に維持される。ホールド電流レベルは、PWMを用いて維持されてもよい。第2のターゲット値は、接触器の特性によって定義された所定の値であってもよい。
【0063】
フリーホイール経路は、ソレノイド512およびローサイドパワースイッチLSを介して、ダイオードから接地への分岐D1とGNDとの間に発生する。この経路では、ソレノイド(負荷)を介して電流が流れるが、抵抗の低い経路を通る。ダイオードD1の存在は、このモード中に回路経路に追加電流が導入されないことを意味する。PWMドライバ534は、HSをオン状態とオフ状態の間で切り替えることにより、オン段階/状態とオフ段階/状態(フリーホイール)の間を切り替える。ソレノイド(負荷)の電流レベルは維持されるため、ソレノイドへの通電が維持され、機械式スイッチが閉じられる。
【0064】
その後、電気機械デバイス510は、機械式スイッチを安全に開くために、迅速に非通電にする必要がある。
【0065】
第3のモードは、時間t6から始まる。時間t6において、コントローラは、クランプオフ状態で動作する。
【0066】
図6Eは、クランプオフ状態の動作における電流経路を示す図である。
図6Fは、ソレノイドを通る電流を示す図であり、クランプオフ状態が強調して示されている。
【0067】
クランプトリガ経路は、ローサイドパワースイッチと並列に形成される。クランプトリガ経路は、ダイオードと、ツェナーダイオードと、直列に結合された抵抗器と、を含む。電圧がツェナークランプトリガ閾値に達すると、ローサイドドライバは、リニアモードで作動される。クランプオフ状態の間、2つの電流経路がコイルに異なる電圧を発生させるため、ソレノイドを流れる電流は、フリーホイールオフ状態よりもはるかに速く減少する。
【0068】
最初は、HSパワースイッチおよびLSパワースイッチの両方がオフであり、電圧は、ツェナーダイオードDZにVDZの閾値に達するまで蓄積される(高電圧接触器の例では60Vのクランプが必要である)。この閾値に達すると、ツェナーダイオードDZは、抵抗R1における電圧を作りながら導通を開始し、リニアモードでLSトランジスタを作動させて負荷の放電を可能にするクランプ経路を提供する。その後、ソレノイドを流れる電流がゼロになった後、時間t6のすぐ後、時間t7の頃に機械式スイッチが開く。
【0069】
第3のモードであるクランプオフ状態では、コイルのエネルギーは、グランドダイオード、ソレノイド、およびツェナートリガによる高いクランプ電圧を有するようにリニアモードで作動するローサイドパワースイッチを介して、グランドとグランドの間に形成された経路によって迅速に消散される。高電圧クランプは、コイルを迅速に消磁するため、接点が迅速に開き、フリーホイール経路または低いクランプ電圧による遅い消磁の欠点を回避し、接点の寿命を延ばすことができる。
【0070】
図5に示すトポロジーは、
図1に示すトポロジーの欠点を克服している。ドライバ520のローサイドでグランド短絡が発生した場合、デジタルコア532は、HSパワースイッチおよびLSパワースイッチの両方を無効にする。ドライバ520では、先行技術とは異なり、電気機械デバイス510からバッテリへの唯一の経路がHSパワースイッチを介している。したがって、HSがオフの場合、負荷に電流が流れないため、新しいトポロジーは、追加のパワースイッチを必要とすることなく、
図1に示す設計で発生する安全上の危険を防止する。
【0071】
図5に示すトポロジーとその動作方法(上記参照)には、2つのパワースイッチ(HSおよびLS)だけが必要である。
図1に示すトポロジーでは、ローサイドには単一のパワースイッチがあったが、フリーホイール経路はドライバのハイサイドにあり、そのトポロジーではフリーホイール経路を切り替え可能でなければならなかったため、直列に接続された2つのパワースイッチが必要だった。
図7Aに示すように、2つのパワースイッチを直列に接続すると、占有面積は単一のパワースイッチの4倍になる。
【0072】
図7Aは、異なる構成のパワースイッチによる回路チップ上の占有面積を示している。左側の710は、単一のパワースイッチの占有面積を示しており、オン抵抗のターゲットはRonだけである。右側の720は、2つのパワースイッチが直列に接続されている場合、各パワースイッチがオン抵抗のターゲットを満たすために2倍の面積を必要とすることを示している。これは、パワーデバイスが単一だけの場合の面積の4倍に相当する。
【0073】
さらに、
図1に示す元のトポロジーでは、各パワースイッチは、バッテリ電圧とクランプ電圧の両方を維持する必要があった。クランプ電圧が60Vで、最低バッテリ電圧が18Vの場合、各パワースイッチの電圧定格は80Vとなり、回路チップ上でのパワースイッチの占有面積も大きくなる。
【0074】
図7Bは、
図1の回路の元のトポロジー810におけるパワースイッチの占有面積と、
図5の提案されているトポロジー820における2つのパワースイッチの占有面積とを直接比較した図である。ドライバ520では、ハイサイドパワースイッチHSは、バッテリ電圧を維持するだけでよく、ローサイドパワースイッチLSは、クランプ電圧を維持するだけでよい。したがって、クランプ電圧が60Vで、バッテリ負荷が40Vの場合、ハイサイドおよびローサイドのパワースイッチは、それぞれ45Vおよび65Vの電圧定格だけを必要する。このようにパワースイッチの電圧定格が低いということは、小型化できることを意味し、回路チップの占有面積が少なくて済む。
【0075】
図5の提案されているトポロジーでは、低電圧定格のパワースイッチの数が少なくて済むため、チップ上の占有面積が減少し、ドライバの製造コストも削減できる。また、提案されている設計では、電気機械デバイスの高電圧クランプと高速非通電が可能になるため、安全性が向上し、接触器の損傷を防ぐことができる。このドライバ520には、グランド短絡が発生しても電気機械デバイスが作動しないという安全上の利点もある。
【0076】
図8Aは、ソレノイドと機械式スイッチから構成される電気機械デバイスの分解側面図である。機械式スイッチは、静的接触部材と可動接触部材とを含む。ソレノイドは、コイルを有し、コイル内には、ばねに結合されたプランジャ(
図8B参照)が存在する。ばねは、プランジャを可動接触部材に接続する。
【0077】
コイルに電流が流れると、電磁誘導が起こる。これは、プランジャに力を加えさせる。この力がばねと静摩擦の力を上回ると、プランジャは動き始め、可動接触部材を静的接触部材に近づける。その後、2つの接触面が合わさり、機械式スイッチがオンになる。コイルを通して電流を放電することで、2つの接触面を離すことができ、機械式スイッチは開位置になる。
【0078】
図8Bは、電気機械デバイスを組み立てたときの側面図である。この図で示すのは、ソレノイドのコイルと接点ブロックだけである。
【0079】
図9Aおよび
図9Bは、電流を時間の関数として示す図である。
図9Aは、本開示に記載の実施形態によって実施される安全なターンオフの場合を示し、
図9Bは、従来技術において実施されてきた安全でないターンオフの場合を示す。
【0080】
図9Aでは、高電圧クランプ回路を実装する場合、「コイル非通電」の点での大きく急激な降下によって示されるように、コイル内のエネルギーが迅速に消散されることがわかる。これにより、機械式スイッチの接触面を可能な限り速く開くことができる。
【0081】
図9Bでは、安全でないターンオフは、フリーホイール経路のみを利用している。電流は、ソレノイドのコイルを通して連続的にフリーホイールし、その結果、コイルは、ゆっくりと非通電になる。これは、
図9Bの下側の線の振動でわかるように、コイルを通るプランジャのゆっくりとした動きによって電流の向きが逆になり、プランジャにかかる力が変動するため、機械式スイッチの複数の開閉イベントを引き起こす可能性がある。
【0082】
当業者は、本開示から逸脱することなく開示された配置の変形が可能であることを理解するであろう。したがって、具体的な実施形態に関する上記の説明は、例示のためのものであり、限定を目的とするものではない。当業者には、上述した動作に大きな変更を加えることなく、軽微な変更を加えることができることは明らかであろう。
【外国語明細書】