IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011040
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】気体分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20250116BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20250116BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20250116BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20250116BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20250116BHJP
   F24F 3/147 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/02
B01D69/00
B01D71/68
B01D71/44
F24F3/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101024
(22)【出願日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2023112792
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊辻 卓真
(72)【発明者】
【氏名】河井 翔太
【テーマコード(参考)】
3L053
4D006
【Fターム(参考)】
3L053BC08
4D006HA01
4D006JA01A
4D006JA01B
4D006JA02B
4D006JA25A
4D006JA25C
4D006JB01
4D006KA01
4D006KB14
4D006KB30
4D006KE30R
4D006MA01
4D006MA21
4D006MA31
4D006MA33
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC27
4D006MC29
4D006MC37
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC53
4D006NA04
4D006NA10
4D006NA17
4D006NA62
4D006PA10
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC72
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】高流量に対して圧力損失の低い気体分離膜モジュールを提供する。
【解決手段】モジュールケースに、一方向に配列した複数の中空糸膜を内包した気体分離膜モジュールであって、前記モジュールケースの両端において、前記中空糸膜が開口し、前記中空糸膜間および前記中空糸膜と前記モジュールケースとの隙間がポッティング材で封止され、前記中空糸膜の内径が0.6mm以上、6mm以下であり、前記中空糸膜の長手方向に対して前記モジュールケースを垂直に切断した断面における前記中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.04m以上25.0m以下である気体分離膜モジュール。
【選択図】図1(A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールケースに、一方向に配列した複数の中空糸膜を内包した気体分離膜モジュールであって、前記モジュールケースの両端において、前記中空糸膜が開口し、前記中空糸膜間および前記中空糸膜と前記モジュールケースとの隙間がポッティング材で封止され、前記中空糸膜の内径が0.6mm以上、6mm以下であり、前記中空糸膜の長手方向に対して前記モジュールケースを垂直に切断した断面における前記中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.04m以上25.0m以下である気体分離膜モジュール。
【請求項2】
前記中空糸膜の内径が0.6mm以上、3mm以下である請求項1に記載の気体分離膜モジュール。
【請求項3】
前記中空糸膜の長手方向の長さが0.1m以上、5.0m以下である、請求項1に記載の気体分離膜モジュール。
【請求項4】
前記中空糸膜の内径d(mm)と、前記中空糸膜の長手方向の長さL(m)と、前記中空糸膜の長手方向に対して垂直の方向に前記モジュールケースを切断した断面における中空糸膜の中空部の断面積の総和A(m)とが下記の関係式[1]を満たす請求項1に記載の気体分離膜モジュール。
0.2<Ad/L<10.0 [1]式
【請求項5】
前記中空糸膜が、ポリスルホン系ポリマー及びポリビニルピロリドンを含む、請求項1に記載の気体分離膜モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の気体分離膜モジュールの運転方法であり、前記気体分離膜モジュール内の前記中空糸膜の内側に供給する流体について、前記気体分離膜モジュールの通過前後の圧力差から計算される圧力損失P(Pa)と、前記流体の流量F(m/hr)の比(F/P)が0.1以上となる、気体分離膜モジュールの運転方法。
【請求項7】
請求項5に記載の気体分離膜モジュールを有した、調湿装置。
【請求項8】
請求項1に記載の気体分離膜モジュールを有した、空調機。
【請求項9】
請求項1に記載の気体分離膜モジュールを有した、全熱交換器。
【請求項10】
請求項1に記載の気体分離膜モジュールを有した、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体分離膜モジュールに関するものである。さらに詳しくは、空調機や熱交換器に使用される調湿ユニットに好適に用いられる気体分離膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、腎不全患者の血液浄化器などの医療用途や、浄水器用などの水処理用途に広く用いられている。また、ガス分離可能なサイズの孔を有している中空糸膜であれば、種々の無機膜の中でも優れた気体分離性を示し、耐薬品性および耐熱性が求められる環境下においても使用可能である。中空糸膜を用いた気体分離対象としては様々なものがあり空気中からの水蒸気や二酸化炭素の分離、工場などの排ガスに含まれる有害成分の分離などが挙げられる。
【0003】
水蒸気を透過させる中空糸膜は、燃料電池システムに内蔵される電解質膜を保湿するために燃料ガスを加湿する用途や、オフィスや家庭などの空間内の水分を除湿する用途などに利用が広がってきている。中空糸膜として限外ろ過膜、精密ろ過膜等が一般的に広く使用されており、湿潤加湿条件下での強度安定性に優れているポリスルホン系樹脂を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-44523
【特許文献2】特開2011-67812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体分離効率を高めるため、中空糸膜内側に大流量の処理または被処理気体を流した場合、モジュールでの圧力損失上昇により、処理のための設備負荷の上昇や、装置全体の効率低下を招く恐れがあった。例えば、特許文献1、2に記載の中空糸膜モジュールは、コンプレッサーで圧縮された高圧の空気を用いて除加湿が行われており、このような中空糸膜モジュールを空調機や送風機に接続した場合、中空糸膜モジュール内で発生する圧力損失が、送風機の最大静圧を超えてしまい、送風機で空気を送り出せない可能性がある。そのため既設の設備に従来の中空糸膜モジュールを導入すると、モジュール内の圧力損失を上回る静圧を有した消費電力の高い送風機を導入する必要が生じる場合などがあり、現実に既設の空調機装置に追加しての設置は困難になるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するため、本発明は以下の構成からなる。
本発明に係る気体分離膜モジュールの特徴は、モジュールケースに、一方向に配列した複数の中空糸膜を内包した気体分離膜モジュールであって、モジュールケースの両端において、中空糸膜が開口し、中空糸膜間および中空糸膜とモジュールケースとの隙間がポッティング材で封止され、中空糸膜の内径が0.6mm以上、6mm以下であり、中空糸膜の長手方向に対してモジュールケースを垂直に切断した断面における中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.04m以上25.0m以下である気体分離膜モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により得られる気体分離膜モジュールは、流体が通過する中空糸膜内の断面積を確保することによって圧力損失を軽減し、中空糸膜内径を適切に設けることで、流体の流出入口部分で生じる流体の急拡大、急縮小による圧力損失を軽減でき、高流量に対して圧力損失の低い気体分離膜モジュールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1(A)】本発明に係る気体分離膜モジュールの斜視図である。
図1(B)】本発明に係る気体分離膜モジュールの俯瞰図である。
図2】空調機の概略図である。
図3】燃料電池車の電力供給に関するブロック図である。
図4】全熱交換器の概略図である。
図5】透湿量を測定する方法を示す模式図である。
図6】エア間欠試験による耐久性評価方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
モジュールケースに、一方向に配列した複数の中空糸膜を内包した気体分離膜モジュールであって、モジュールケースの両端において、中空糸膜が開口し、中空糸膜間および中空糸膜とモジュールケースとの隙間がポッティング材で封止され、中空糸膜の内径が0.6mm以上、6mm以下であり、中空糸膜の長手方向に対してモジュールケースを垂直に切断した断面(以下、垂直断面という)における中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.04m以上25.0m以下である気体分離膜モジュールである。
本発明の気体分離膜モジュールは、中空糸膜の内部に第一の流体を流し、中空糸膜の外部に第二の流体を流し、第一の流体、第二の流体の少なくとも一方を気体として、中空糸膜を介して第一の流体と第二の流体の間で気体分離を行うことにより、高流量の気体分離において、圧力損失を軽減できる。
第一の流体、第二の流体は、どちらか一方が気体であり、もう一方は気体または液体である。気体としては、大気、工場空気、室内空気、乾燥空気、天然ガス、水素ガス、二酸化炭素を含んだ混合気体、水蒸気を含んだ混合気体、および各種混合気体などが挙げられる。液体としては、純水、イオン液体、および各種混合液体が挙げられるが、気体分離膜モジュールを介して透過する気体が溶解する溶液であることが好ましい。
【0011】
液体の質量密度が増加すると圧力損失も増加するため、第二の流体は気体であることが好ましい。例えば、第一の流体または第二の流体が水蒸気を含んだ混合気体、もう一方の流体が乾燥空気である場合、気体分離膜モジュールは分圧差により水蒸気が中空糸膜を透過し、第一の流体または第二の流体の湿度を調整することが可能となる。また例えば、第一の流体または第二の流体が臭気や汚染物質を含んだ、換気時に取り込む外気、もう一方の流体が換気時に排出する室内空気である場合、気体分離膜モジュールは分圧差により臭気や汚染物質を、排出する室内空気に移動させ、換気時に取り込む外気中の臭気や汚染物質を低減することが可能となる。
【0012】
図1(A)は、本発明に係る気体分離膜モジュール100の斜視図であり、図1(B)は本発明に係る気体分離膜モジュール100の俯瞰図である。
気体分離膜モジュール100は、複数の中空糸膜101を矩形モジュールケース110に内包している。また、中空糸膜101および矩形モジュールケース110の端部はポッティング材120で固定されている。ポッティング材の材料は端部が封止できれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン、ナイロン等を適宜選択して用いることができる。気体分離膜モジュール100は、第一の流体の入口面121、第一の流体の出口面122、第二の流体の入口面123、および第二の流体の出口面124を有し、それぞれ第一の流体の供給管125、第一の流体の排出管126、第二の流体の排出管127、第二の流体の供給管128に接続される。
第一の流体は、第一の流体の入口面121から中空糸膜101の内部を通り、第一の流体の出口面122へと流れる。ここで第一の流体の入口面121と第一の流体の出口面122は中空糸膜101の端部を固定した面となる。第一の流体の入口面121と第一の流体の出口面122における中空糸膜101の中空部の断面積は、気体分離膜モジュール100における第一の流体の流れに対する流路断面積になる。また、第二の流体は第二の流体の入口面123から矩形モジュールケース110内における中空糸膜101の外側を通り、第二の流体の出口面124へと流れる。ここで矩形モジュールケース110内において中空糸膜間は第二の流体の入口面123及び第二の流体の出口面124の間で連通している。
本発明に係る気体分離膜モジュールは中空糸膜の長手方向に対してモジュールケースを垂直に切断した断面における中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.04m以上25.0m以下である。中空部の断面積の総和を大きくすることで、第一の流体の流量に対する流速を低下させ、圧力損失を抑制することができる。一方で、中空部の断面積の総和が過剰に大きくなる場合、中空糸膜モジュール全体の断面積も大きくなってしまい、取り付けが困難になる。また、中空糸膜の長手方向に対してモジュールケースを垂直に切断した断面における中空糸膜の中空部の断面積の総和が0.09m以上4.0m以下であることが好ましい。この範囲とすることで、さらに圧力損失を抑えることが可能になり、気体分離膜モジュールサイズをさらに小型化することができる。
中空部の断面積の総和は、以下の方法で測定できる。まず中空糸膜の固定化されている端部の面において、重ならないように任意の10カ所を選ぶ。選んだ10カ所の部分について画像寸法測定器を用いて画像を撮影する。撮影した画像を画像処理・計測ソフト(例えば、三谷商事株式会社製、WinROOF)を用いて中空部とそれ以外の領域に二値化して画像内の中空部の総断面積を測定し、面積あたりの中空部の断面積を算出する。同様の測定を10カ所に対して行い、得られた合計10カ所の面積あたりの中空部の断面積の平均値を算出し、中空糸膜の端部の面の面積との積から中空部の断面積の総和を算出する。
中空糸膜の内径は以下の方法で算出することができる。まず、中空糸膜5本に対し、それぞれ5カ所ずつ切り出し断面を得る。中空糸膜がモジュールケースに固定されている場合は、気体分離膜モジュールから任意の中空糸膜5本を抜き出し、それぞれ5カ所ずつ切り出し断面を得る。得られた中空糸膜断面を、光学顕微鏡や画像寸法測定器などを用いて測定しやすい倍率(例えば、倍率100倍等が挙げられるが、中空糸膜の大きさによっては倍率1000倍であっても、10倍であってもよい)で中空糸膜の画像を撮影する。撮影した画像を画像処理・計測ソフトを用いて、中空部の内接円の直径(=内径)を測定する。切り出した5カ所の断面それぞれについて撮影した5枚の画像について、同様に中空糸膜の内径を測定する。
以上の一連の測定を任意の中空糸膜5本に対して行い、得られた合計25カ所の中空糸膜の内径平均値を算出する。
本発明に係る気体分離膜モジュールは、中空糸膜101の内径は0.6mm以上、6mm以下である。この範囲とすることで、第一の流体が中空糸膜101の内側を通過する際の第一の流体の抵抗を抑えることが可能となり、さらに、中空糸膜101の耐久性を保つことが可能となる。また中空糸膜101の内径は0.6mm以上、3mm以下とすることが好ましい。この範囲とすることで、第一の流体が中空糸膜内を通過する際の抵抗を抑えつつ、中空糸膜の耐久性をさらに高め、気体分離膜モジュールサイズを小型化することができる。
本発明に係る気体分離膜モジュールの中空糸膜の長手方向の長さは、0.1m以上5.0m以下が好ましい。この範囲とすることで中空糸膜101を介して透過する気体の総量の低下を防ぎつつ、圧力損失を抑えることができる。また、中空糸膜の長手方向の長さは0.2m以上、2.0m以下とすることがより好ましい。この範囲とすることで、さらに圧力損失を抑えることが可能になり、より低い静圧環境でも気体分離膜モジュールを適用することが可能となる。ここで、中空糸膜の長手方向の長さは、気体分離膜モジュールが内包する中空糸膜10本をポッティング材により固定された部分を含めて切り出し、それぞれについて測定した長さの平均値として算出する。
本発明に係る気体分離膜モジュールは、下記の関係式[1]を満たすことが好ましい。
0.2<Ad/L<10 [1]式
ここで、Aは気体分離膜モジュールの中空糸膜の長手方向に対してモジュールケースを垂直に切断した断面における中空糸膜の中空部の断面積の総和であり、dは中空糸膜の内径(前述の平均値)であり、Lは中空糸膜の長手方向の長さ(前述の平均値)である。
この範囲を満たすよう気体分離膜モジュールを構成することで、気体分離膜モジュールサイズを小型化しつつ、第一の流体が中空糸膜内を通過する際の抵抗をより好適に抑えることが可能である。
また、本発明に係る気体分離膜モジュールは下記の関係式[2]を満たすことがより好ましい。
【0013】
・ 2<Ad/L<1.0 [2]式
この範囲を満たす様に気体分離膜モジュールを構成することで、中空糸膜の中空部の断面積の総和に対する中空糸膜の長手方向の長さが適切に保たれ、第一の流体と第二の流体との間で気体が効率的に透過し、圧力損失の抑制と透湿性の向上を両立することができる。
本発明に係る気体分離膜モジュールの中空糸膜101の膜厚は、中空糸膜101の内径に対し、0.05倍以上0.4倍以下が好ましく0.1倍以上、0.3倍以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、中空糸膜の強度を保ちつつ、中空糸膜を介した第一の流体と第二の流体の透過量の低下を防ぐことができる。
図1には矩形モジュールケース110に複数の中空糸膜を内包した構造を示したが、本発明に係るモジュールケース110の形状はこれに限るものでなく、例えば、円筒型、多角面型のモジュール構造であっても構わない。また、中空糸膜101はモジュールケース110の内側で直線上に並んでいなくても良い。ただし、中空糸膜101が曲線を描き気体分離膜モジュール内に内包されている場合、第一の流体がモジュール内で消失する圧力が増加するため、中空糸膜101はモジュール内で直線に近い形状で内包されることが好ましい。
また、図1に示した気体分離膜モジュールの第一の流体の入口面121および第一の流体の出口面122は平面であるが、本発明にかかるモジュールの形状はこれに限るものでなく、例えば、曲面や凹凸面を有していても良い。
本発明に係る気体分離膜モジュールの中空糸膜101の間には、第二の流体が流れるための空間を設けてもよく、波板、仕切り板、メッシュ状物、カバリング糸などの流路材を設けてもよい。特に流路材を設けることで、中空糸膜を介した第一の流体と第二の流体の透過が効率的に行うことができ、かつ第二の流体が流れることによる中空糸膜の揺動を抑えることができるため好適である。流路材の素材は特に限定されないが、機械的性質、気体分離膜モジュールを利用する温度に対する耐熱性、第二の流体および中空糸膜を介して透過するガスに対する耐薬品性、耐溶剤性を有することが好ましい。特にポリエチレンおよびポリプロピレンは中空糸膜の表面を傷つけにくく、また安価であるので好適である。また流路材の形状は限定されないが、中空糸膜と第二の流体が接するための領域が設けられる形状が好ましい。
本発明に係る気体分離膜モジュールの運転方法は、気体分離膜モジュール内の中空糸膜の内側に流体を供給し、気体分離膜モジュールの通過前後の圧力差から計算される圧力損失P(Pa)と、流体の流量F(m/hr)の比(F/P)が0.1以上となるように運転することが好ましい。この条件で運転することにより、気体分離膜モジュールで発生する圧力損失が、供給する流体の気体分離膜モジュール前後の静圧差を下回り、気体分離膜モジュールから排出される流量の低減を抑えることが可能となる。比(F/P)を0.1以上とするためには、気体分離膜モジュールにおける流体の入口面および出口面において流体の圧力を測定し、2つの圧力差から気体分離膜モジュールで発生する圧力損失を算出する。得られた圧力損失の値から比(F/P)を0.1以上とするようにポンプ、送風機など、気体分離膜モジュールに流体を供給する装置の出力を調整する。
<中空糸膜>
中空糸膜の材料は、特に限定されないが、中空糸膜を形成しやすく、気体分離機能層を形成しやすい材料を選ぶとよい。例えば、水蒸気を対象とする場合、ポリスルホン系ポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどが挙げられる。これらの中でも、中空糸膜を形成しやすい観点から、ポリスルホン系ポリマーを含むことが好ましい。ポリスルホン系ポリマーを主成分とし、さらに親水性高分子が含まれていることが好ましい。親水性高分子としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンは、ポリスルホン系ポリマーとの相溶性に優れ、高い親水性を有するため、好ましい。
中空糸膜の製造方法としては、一態様として次のような方法があげられる。すなわち、ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンをポリスルホンの良溶媒(N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および貧溶媒の混合溶液に溶解させた製膜原液を二重環状口金から吐出する際に内側に芯液を流し、乾式部を走行させた後、凝固溶液中で凝固させる。また、芯液組成としてはプロセス適性から製膜原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。芯液濃度としては、一例としてN,N-ジメチルアセトアミドを用いたときは、10~60質量%、さらには20~50質量%の水溶液が好適に用いられる。
【0014】
凝固させた中空糸膜は、40℃以上90℃以下の温水で洗浄され、巻き取られる。次いで、所望の空隙の大きさに固定するために熱処理を行うことで、乾燥状態の中空糸膜が得られる。熱処理し、湿潤状態の多孔質膜を乾燥させることにより、空隙の大きさは収縮する。
製膜原液のポリスルホン系ポリマー濃度としては、製膜原液全体に対して20質量%以上35質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以上30質量%以下である。製膜原液のポリスルホン系ポリマー濃度が20質量%未満であると、中空糸膜の空隙率が高くなり、耐久性が低くなりやすい。
製膜原液に添加されるポリビニルピロリドン(以下、PVPと略することがある)としては、重量平均分子量が約10,000~1,200,000のものが存在し、分子量が約40,000~1,200,000の物が好ましく用いられる。ポリスルホン系ポリマー100質量%当りPVP5~50質量%の割合で用いることが好ましく、より好ましくは8~30質量%の割合で用いられる。ポリスルホン系ポリマーに対して5質量%よりも少ない場合は、中空糸膜表面に親水性を付与しにくく、水蒸気との親和性が低くなってしまう懸念がある。50質量%を超える場合は、中空糸膜の強度が低くなり、製膜が困難になる場合がある。
このように製造した中空糸膜は外表面近傍での相分離挙動が調整され、微多孔質膜として形成される。この微多孔質膜の孔径を水蒸気透過に適した大きさに制御することで、優れた透湿性を有した気体分離膜とすることができる。
<気体分離膜モジュールの製造方法>
本発明の気体分離膜モジュールを製造する方法としては、特に限定されないが、 一例を示すと次の通りである。
【0015】
まず中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を同一方向に並べ、中空糸膜同士の両端部を固定することで中空糸膜シートを形成する。中空糸膜同士を固定する方法としては、テープ、接着剤、熱融着等を用いることができる。次に複数の中空糸膜シートを、中空糸膜の長手方向が同一方向となるように積層することで中空糸膜の積層体を得る。この際、積層した中空糸膜シート間に空間が生じるよう積層してもよく、積層した中空糸膜シート間に流路材を設けて積層してもよい。また、中空糸膜シートは曲面を有した状態で中空糸膜の積層体を得てもよく、中空糸膜シートを形成せず、複数の中空糸膜を束ねたものを中空糸膜の積層体としてもよい。その後、得られた中空糸膜の積層体をモジュールケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、気体分離膜モジュールを得る。
<気体分離膜モジュールの適用の可能性>
本発明の気体分離膜モジュールは、水素製造装置、二酸化炭素分離回収装置、排気ガス分離回収装置、天然ガス分離装置、脱臭装置、調湿装置、除湿器、加湿器、除加湿器等の空調機、燃料電池システム、デシカント空調システム、全熱交換器などに適用可能である。
<調湿装置>
本発明の実施の形態に係る気体分離膜モジュールを含有する調湿装置について説明する。この調湿装置は、中空糸膜を介して2つの流体の間で水蒸気を交換する装置である。例えば、中空糸膜の内側に水または水蒸気を含んだ空気を供給し、中空糸膜の外側に空気を供給することにより、水蒸気が中空糸膜外側に透過し、中空糸膜の外側に供給した空気を加湿する装置である。また、例えば、中空糸膜の内側に乾燥空気、または塩化リチウム水溶液などの吸湿性の液体を供給し、中空糸膜の外側に水蒸気を含んだ空気を供給することで、水蒸気が中空糸膜を透過し、中空糸膜の外側の空気を除湿する装置である。
<空調機>
本発明の実施の形態に係る気体分離膜モジュールを含有する空調機について説明する。この空調機は、例えば加湿器、除湿器、除加湿器、エアーコンディショナーなどのような、一般家庭・ビル・オフィス・工場などで湿度管理を行う装置である。
本発明の空調機は上述の気体分離膜モジュールによって、取り込まれた外気の湿度調整が行われる装置である。空調機の模式図の一例を図2に示す。外気が空調機20の中に取り込まれるとエアフィルター21、冷却コイル22、加熱コイル23、気体分離膜モジュール24、送風機25の順に通過し室内に給気される。室内を加湿するか除湿するかで冷却コイル22や加熱コイル23が動作する。また、気体分離膜モジュール24の中空糸膜に除湿剤を加えることで加湿または除湿を行っても構わない。
<燃料電池システム>
本発明の実施の形態に係る気体分離膜モジュールを含有する燃料電池システムについて説明する。この燃料電池システムは、例えば燃料電池車や家庭用燃料電池などに適用される。
燃料電池システムとは、上述の気体分離膜モジュールと、燃料電池とを少なくとも有するものである。この燃料電池システムの例としては、特に制限はないが、気体分離膜モジュールを用いて加湿された空気および(または)水素が燃料電池に供給されながら給電を行うシステムが挙げられる。例えば気体分離膜モジュール31と、燃料電池32とを有する燃料電池車についての電力供給に関するブロック図を図3に示すが、得られた電力はパワーコントロールユニット33を経由してモーター34やバッテリー35へ供給される。また、気体分離膜モジュール31は加湿器として機能するために、金属製または樹脂製の筐体に内蔵され、使用する用途によって、気体分離膜モジュールの搭載本数を自由に変えることで必要スペックを調整することができる。
<全熱交換器>
本発明の実施の形態に係る気体分離膜モジュールを含有する全熱交換器について説明する。全熱交換器とは室内からの空気と、室外からの空気の熱と水蒸気を交換しながら換気を行う装置であり、省エネルギー対策として住宅、ビル、工場に普及している。
本発明の全熱交換器は上記の気体分離膜モジュールによって、室内気と室外気の圧力損失を抑えながら、空気の熱と水蒸気の交換を行う装置である。全熱交換器の概略図を図4に示す。全熱交換器60は上記の気体分離膜モジュール61の室外側に外気を吸引する室外吸込口62と室内気を排気する室外吹出口64とが設けられ、一方気体分離膜モジュール61の室内側には、外気を室内に供給する外気供給通路63と、室内気を室外に放出する室内気放出通路65とが設けられている。
また、室外吹出口62と気体分離膜モジュール61との間には、室内気を排出するための送風機66が設けられ。外気供給通路63と気体分離膜モジュール61との間には、外気を取り込むための送風機67が設けられている。
全熱交換機60を用いることで、外気は排出される室内気と、気体分離膜モジュール61を介して水蒸気と熱とを交換し、外気供給通路63を通り室内に供給されることで、外気に余剰の潜熱、顕熱を加える必要がなくなる。
【実施例0016】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
なお、本発明は下記実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例における各評価法を以下の[1]~[6]で説明する。
【0017】
[1]中空糸膜の膜厚、内径および断面積
中空糸膜を膜厚方向に片刃で切断し、マイクロウォッチャー(KEYENCE社製、VH-Z100)にセットした。切断により中空糸膜断面が潰れてしまった場合には、略真円になるまで切断をやり直した。中空糸膜断面を1000倍レンズで観察し、断面を投影させたモニター画面上で中空糸膜の膜厚幅を範囲指定し、モニター画面上に表示された数値を読み取った。また、中空糸膜内径は中空部幅を範囲指定することで、モニター画面上に数値が表示される。気体分離膜モジュールに存在する任意の中空糸膜5本を抜き出し、同じ測定を行い、平均値を算出し、中空糸膜の膜厚および内径とした。
【0018】
[2]気体分離膜モジュールにおける中空部の断面積の総和の測定
気体分離膜モジュールに存在する中空糸膜が固定化されている端部の面において、任意の10カ所を選んだ。選んだ部分を画像寸法測定器(KEYENCE社製、IM-8030)にセットし、5倍レンズで画像を撮影し、コンピュータに取り込んだ。次に画像処理ソフト上にて画像内で既知の長さを示しているスケールバーのピクセル数を計測し、1ピクセル数あたりの長さ(mm)を算出した。取り込んだ画像のサイズは横45mm×縦25mmであった。
コントラストと明るさを調節し、中空糸膜の中空部を認識しやすく中空部を黒、中空糸膜を白くした後に、しきい値を設定して二値化処理した画像を得て解析した。二値化処理した画像から、領域分割によって中空糸膜間で黒色に処理された部分を取り除き、中空糸膜間の中空部だけが黒色になった画像を得て、画像内の中空部の個数および各中空部の面積を解析した。同じ測定を選んだ10カ所に対して行い、面積あたりの中空部の断面積の平均値を算出した。
中空糸膜が固定化されている端部の1つ面の面積を測定し、面積あたりの中空部の断面積の平均値との積から、気体分離膜モジュールにおける中空部の断面積の総和を算出した。
【0019】
[3]中空糸膜の長手方向の長さの寸法測定
気体分離膜モジュールに存在する任意の中空糸膜10本を抜き出し、長さの測定を行い、平均値を算出し、中空糸膜の長手方向の長さとした。
【0020】
[4]導通圧力損失試験
気体分離膜モジュールの圧力損失は以下のように測定した。
まず、気体分離膜モジュールの中空糸膜が開口した2つの面に配管を接続する。接続した配管の一方から、中空糸膜内側に温度35℃の乾燥空気を流して、もう一方の配管から排気した。二つの配管にマノスターゲージを接続し、気体分離膜モジュールにより発生する圧力損失を求め、以下の基準で評価を行った。
A(良好):圧力損失(Pa)と乾燥空気の流量(m/hr)の比(F/P)が1.0以上である。
B(可):圧力損失(Pa))と乾燥空気の流量(m/hr)の比(F/P)が0.1以上、1.0未満である。
C(不可):圧力損失(Pa))と乾燥空気の流量(m/hr)の比(F/P)が0.1未満である。
【0021】
[5]透湿量の測定
透湿量は以下のように測定した。まず、気体膜モジュールを図6のように接続した。
図6において、70は空気流量計、71は乾燥空気入口、72は調湿空気出口、73は気体分膜モジュール、74は乾燥空気出口、75は温・湿度測定箇所、76は調湿空気入口、77は加湿容器を示す。77で湿度を調整した調湿空気を76から、71から乾燥空気を73に流入させ、透過した水蒸気が74から流出する。75で相対湿度と温度を測定することで、74から流出した時間当りの透湿量を算出した。
気体分離膜モジュールを用い、中空糸膜内側の領域に温度35℃の乾燥空気を、中空糸膜外側の領域に温度25℃、相対湿度70%RHの調湿空気をそれぞれ1パスのクロスフローで流して、時間当りの気体分離膜モジュールの透湿量を測定し、以下の基準で評価を行った。
A(良好):水蒸気透過速度(g/hr)が800以上である。
B(可):水蒸気透過速度(g/hr)が420以上、800未満である。
C(不可):水蒸気透過速度(g/hr)が420未満である。
【0022】
[6] エア間欠試験による耐久性評価
エア間欠試験による耐久性評価は以下のように測定した。まず、気体分離膜モジュールを図6のように接続した。気体分離膜モジュールの中空糸膜外側に水蒸気を流し、気体分離膜モジュール本体の温度を95℃以上に保持した。気体分離膜モジュールの中空糸膜内側の一方を圧力センサで封止し、もう一方から乾燥空気を間欠的(ON:200kPaの状態を10秒間、OFF:0kPaの状態を5秒間の1サイクル15秒)にかけた。この時、ONの状態で圧力センサが150kPa未満となった時点で膜に損傷が発生したと判断し、試験を停止した。試験開始から試験停止までのサイクル数で耐久性を以下の基準で評価を行った。
A(良好):サイクル数を10万回繰り返しても圧力センサが150kPa未満とならなかった。
B(可):サイクル数を1万回繰り返しても圧力センサが150kPa未満とならなかった。
C(不可):サイクル数を1万回未満で圧力センサが150kPa以上となった。
【0023】
(実施例1)
ポリスルホン(ソルベイ社製“ユーデル”P-3500)28質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製K30)3.0質量%、N,N-ジメチルアセトアミド68質量%、水1質量%の合計100質量%を加熱溶解し、製膜原液とした。N,N-ジメチルアセトアミド30質量%、水70質量%の合計100質量%の溶液を芯液とした。
【0024】
製膜原液を紡糸口金部へ送り、オリフィス型二重管口金の外側の管より吐出し、芯液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は調湿されたドライゾーン雰囲気を通過した後、凝固浴に導かれ、40℃の水洗工程を通過する。得られた湿潤状態の中空糸膜を巻き取り束とした。巻き取った中空糸膜の束を乾熱乾燥機で100℃、24時間乾燥し、乾燥状態の中空糸膜を得た。中空糸膜の内径は0.8mm、膜厚0.1mmであった。
【0025】
ステンレス製の内寸法が縦0.75m、横0.4m、奥行き0.45mの、矩形モジュールケースの中に、中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.09mとなるよう、中空糸膜を180000本充填し、かつ中空糸膜の両端をポッティング材により矩形モジュールケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部を切断することで中空糸膜の両端を両面開口させ、気体分離膜モジュールAとした。ここで、中空糸膜の両端は矩形モジュールケースの長さ方向に固定し、気体分離膜モジュールAにおける中空糸膜の長さは0.4mであった。気体分離膜モジュールAの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールAにおいて、導通圧力損失試験、透湿量の測定およびエア間欠試験による耐久性評価の結果はすべてB(可)であった。圧力損失の抑制に優れるだけでなく、透湿量および耐久性に優れた気体分離膜モジュールが得られた。
【0026】
(実施例2)
ステンレス製の内寸法が縦0.75m、横0.75m、奥行き0.68mの、矩形モジュールケースの中に、中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.25mとなるよう、中空糸膜を500000本充填したこと以外は実施例1と同じ方法で気体分離膜モジュールBを得た。気体分離膜モジュールBにおける中空糸膜の長さは0.6mであった。気体分離膜モジュールBの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールBにおいて、導通圧力損失試験、透湿量の測定の結果はともにA(良好)であり、エア間欠試験による耐久性評価はB(可)であった。中空部分の断面積の総和が大きいため圧力損失が抑制され、また中空糸膜が長いため、調湿空気から乾燥空気への水蒸気の透過が十分行われることで、透湿量に優れた気体分離膜モジュールが得られた。
【0027】
(実施例3)
紡糸口金部を変更したこと以外は実施例1と同じ方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の内径は0.65mm、膜厚0.1mmであった。ステンレス製の内寸法が縦0.75m、横0.4m、奥行き0.5mの、矩形モジュールケースの中に、中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.06mとなるよう、中空糸膜を180000本充填したこと以外は実施例1と同じ方法で気体分離膜モジュールCを得た。気体分離膜モジュールCにおける中空糸膜の長さは0.4mであった。気体分離膜モジュールCの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールCにおいて、導通圧力損失試験、透湿量の測定の結果はともにB(可)であり、エア間欠試験による耐久性評価はA(良好)であった。圧力損失の抑制と透湿量に優れるだけでなく、中空糸膜の内径を小さくすることで耐久性に特に優れた気体分離膜モジュールが得られた。
【0028】
(実施例4)
ステンレス製の内寸法が縦0.9m、横0.45m、奥行き0.35mの、矩形モジュールケースの中に、中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.16mとなるよう、中空糸膜を483000本充填したこと以外は実施例2と同じ方法で気体分離膜モジュールDを得た。気体分離膜モジュールDにおける中空糸膜の長さは0.3mであった。気体分離膜モジュールDの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールDにおいて、導通圧力損失試験、透湿量の測定、およびエア間欠試験による耐久性評価の結果はすべてA(良好)であった。中空部分の断面積の総和が得られた。
【0029】
(実施例5)
紡糸口金部を変更したこと以外は実施例1と同じ方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の内径は1.20mm、膜厚0.15mmであった。
【0030】
ステンレス製の内寸法が縦0.9m、横0.45m、奥行き0.25mの、矩形モジュールケースの中に、中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.16mとなるよう、中空糸膜を142000本充填し、かつ中空糸膜の両端をポッティング材により矩形モジュールケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部を切断することで中空糸膜の両端を両面開口させ、気体分離膜モジュールEとした。ここで、中空糸膜の両端は矩形モジュールケースの長さ方向に固定し、気体分離膜モジュールEにおける中空糸膜の長さは0.2mであった。気体分離膜モジュールEの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールEにおいて、導通圧力損失試験の結果はA(良好)であり、透湿量の測定の結果とエア間欠試験による耐久性評価はともにB(可)であった。中空部分の断面積の総和が大きいため、圧力損失の抑制に特に優れた気体分離膜モジュールが得られた。
【0031】
(比較例1)
中空糸膜の中空部分の断面積の総和が有効数字3桁で0.02mとなるよう、中空糸膜を60000本充填したこと以外は実施例2と同じ方法で気体分離膜モジュールFを得た。気体分離膜モジュールFにおける中空糸膜の長さは0.4mであった。気体分離膜モジュールFの構成および評価結果を表1に示す。
得られた気体分離膜モジュールFにおいて、導通圧力損失試験、透湿量の測定の結果はともにC(不可)であり、エア間欠試験による耐久性評価はA(良好)であった。中空糸膜の内径が小さいため耐久性に特に優れるが、中空部分の断面積の総和が小さいため、圧力損失の抑制と透湿量に優れない気体分離膜モジュールが得られた。
【0032】
【表1】
【符号の説明】
【0033】
20:空調機
21:エアフィルター
22:冷却コイル
23:加熱コイル
24:気体分離膜モジュール
25:送風機
31:気体分離膜モジュール
32:燃料電池
33:パワーコントロールユニット
34:モーター
35:バッテリー
60:全熱交換器
61:気体分離膜モジュール
62:室外吸込口
63:外気供給通路
64:室外吹出口
65:室内気放出通路
66:送風機
67:送風機
70:空気流量計
71:乾燥空気入口
72:調湿空気出口
73:気体分膜モジュール
74:乾燥空気出口
75:温・湿度測定箇所
76:調湿空気入口
77:加湿容器
80:レギュレーター
81:乾燥空気入口
82:水蒸気
83:水蒸気入口
84:水蒸気出口
85:圧力計
86:中空糸膜
87:気体分離膜モジュール
88:電磁弁
89:インパルスユニット
100:気体分離膜モジュール
101:中空糸膜
110:矩形モジュールケース
120:ポッティング材
121:第一の流体の入口面
122:第一の流体の出口面
123:第二の流体の入口面
124:第二の流体の出口面
125:第一の流体の供給管
126:第一の流体の排出管
127:第二の流体の供給管
128:第二の流体の排出管
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4
図5
図6