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特開2025-11043無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物およびフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011043
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20250116BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20250116BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K5/00
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106395
(22)【出願日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2023113108
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024031432
(32)【優先日】2024-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】内田 大介
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 伸一郎
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA81
4F071AA84
4F071AA88
4F071AC12
4F071AC15
4F071AE22
4F071AF20Y
4F071AF30Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB12W
4J002BB12X
4J002EP006
4J002EW026
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD206
4J002GG02
4J002GK03
(57)【要約】
【解決課題】
フィルムの薄膜化による資源量の使用量削減が可能であり、より具体的には、薄膜化しても剛性もしくはHAZEの片方又はこの両方が好ましいポリプロピレン樹脂組成物、及び当該ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルムを提供すること。
【解決手段】
(1)特性(X-1)~(X-4)を満たすポリプロピレン樹脂(X)を1~50重量%、(2)特性(Y-1)を満たすポリプロピレン樹脂(Y)を99~50重量%、及び(3)0.01~1重量%の結晶核剤(A)を含む、無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量は100重量%である。)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下の特性(X-1)~(X-4)を満たすポリプロピレン樹脂(X)を1~50重量%、
(2)以下の特性(Y-1)を満たすポリプロピレン樹脂(Y)を99~50重量%、及び
(3)0.01~1重量%の結晶核剤(A)を含む、
無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量は100重量%である)。
(X-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が0.1~30g/10分である。
(X-2)GPCによって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0~10.0である。
(X-3)230℃で測定する溶融張力(MT)(単位:g)が以下の(式1)又は(式2)の関係を満たす。
log(MT)+≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)
MT≧15 (式2)
(X-4)GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
(Y-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂(Y)がプロピレン単独重合体である請求項1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の無延伸フィルムからなる層を含む多層フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の無延伸フィルムを含む食品包装用フィルム。
【請求項6】
請求項3に記載の無延伸フィルムを含む保護用フィルム。
【請求項7】
請求項3に記載の無延伸フィルムを含む合成紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無延伸ポリプロピレン系フィルムに関し、詳しくは、従来のポリプロピレン系フィルムと比較して、剛性が高く、透明性・光沢等の光学特性に優れ、引裂強度バランスのとれた無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物、および当該ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは代表的な汎用樹脂である。そのフィルムは光学的特性、機械的特性、包装適性のバランスの良さから、包装分野に広く使用されており、その中でも食品包装に使用されることが多い。
近年、原料費圧縮や高速製膜化による生産性向上、あるいは軽量化などのコスト削減や環境問題の観点から、フィルムの薄肉化が求められているが、過度の薄肉化は、フィルムのコシ、すなわち剛性の低下に繋がる。
その結果、フィルム加工時における運搬性やロールからの繰出し性への悪影響が現れるだけでなく、最終製品である包装体における内容物保護や形状保持といった本来有すべき機能の低下をも招く。
【0003】
これを解決するためには、フィルムを高剛性化すれば良い。高剛性化の主な手法としては、結晶化促進剤である造核剤の添加や、タルクやカーボンナノファイバー、セルロースナノファイバーなどの樹脂強化フィラーの添加が挙げられる。
しかし、無機系の造核剤を添加した場合は、これが異物であるためにフィッシュアイと呼ばれるフィルム外観欠点の原因となり、有機ネットワーク系の造核剤を添加した場合は、造核剤由来の低分子量成分による包装体内容物の汚染が危惧される。
また、樹脂強化フィラーを添加した場合は、風合いや触感などの感触や光学特性に著しい変化を伴うだけでなく、比重も大きくなるため軽量化目的にはそぐわない。
【0004】
石油樹脂等の脂環式炭化水素樹脂成分を添加する手法も提案されているが、脂環式炭化水素樹脂成分は高価であり、生産性向上や軽量化などのコスト圧縮のための高剛性化の目的にはそぐわない。
【0005】
なお、押出し温度の低下による配向結晶化の促進や、冷却固化温度の上昇による結晶成長の促進などといった製膜条件の調整によっても高剛性化は可能であるが、得られたフィルムの厚み精度悪化や光学特性の変化を伴うため、好ましい手法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-3364号公報
【特許文献2】特開平9-118776号公報
【特許文献3】特開2008-127487号公報
【特許文献4】特開2011-236357号公報
【特許文献5】特開2016-11380号公報
【特許文献6】特開2021-4359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の造核剤添加の技術では得られなかった高い剛性と透明性がありフィッシュアイが少ないフィルムであって、更にフィルムの高剛性化による資源量の使用量削減が可能であり、より具体的には、薄膜化しても高い剛性を得ることができるポリプロピレン樹脂組成物、及び当該ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
(1)以下の特性(X-1)~(X-4)を満たすポリプロピレン樹脂(X)を1~50重量%、
(2)以下の特性(Y-1)を満たすポリプロピレン樹脂(Y)を99~50重量%、及び
(3)0.01~1重量%の結晶核剤(A)を含む、
無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量は100重量%である)。
(X-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が0.1~30.0g/10分である。
(X-2)GPCによって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0~10.0である。
(X-3)230℃で測定する溶融張力(MT)(単位:g)が以下の(式1)又は(式2)の関係を満たす。
log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)
MT≧15 (式2)
(X-4)GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
(Y-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である。
[2]
ポリプロピレン樹脂(Y)がプロピレン単独重合体である[1]に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物。
[3]
[1]または[2]に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルム。
[4]
[3]に記載の無延伸フィルムからなる層を含む多層フィルム。
[5]
[3]に記載の無延伸フィルムを含む食品包装用フィルム。
[6]
[3]に記載の無延伸フィルムを含む保護用フィルム。
[7]
[3]に記載の無延伸フィルムを含む合成紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フィルムの薄膜化による資源量の使用量削減が可能であり、より具体的には、薄膜化しても高い剛性を持つポリプロピレン樹脂組成物、及び当該ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルムを提供することができる。
また、本発明により、フィルムの薄膜化が可能となることで、樹脂の使用量を減らすことができ、フィルムの製造コストの削減が可能であり、環境問題の観点からも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、項目毎に、詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に本発明は、何ら限定されるものではない。
【0011】
1.無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物は、
(1)以下の特性(X-1)~(X-4)を有するポリプロピレン樹脂(X)を1~50重量%、
(2)以下の特性(Y-1)を有するポリプロピレン樹脂(Y)を99~50重量%、及び
(3)0.01~1重量%の結晶核剤(A)を含む、
(ただし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量は100重量%である。)ことを特徴とする。
(X-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が0.1~30g/10分である。
(X-2)GPCによって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0~10.0である。
(X-3)230℃で測定する溶融張力(MT230℃)(単位:g)が下記(式1)又は(式2)の関係を満たす。
log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)
MT≧15 (式2)
(X-4)GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
(Y-1)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である。
【0012】
1-1.ポリプロピレン樹脂(X)
ポリプロピレン樹脂(X)は、(X-1)~(X-4)の各特性を有する。
【0013】
1-1-1.特性(X-1):MFR(230℃、荷重2.16kgf)が0.1~30g/10分である。
MFRは、溶融流動性を示す指標であり、重合体の分子量が大きくなると、この値が小さくなる。一方、分子量が小さくなると、この値は大きくなる。
MFRが0.1g/10分以上である溶融流動性がよくなり、押出成形に対して押出機の負荷が低く成形しやすい。一方でMFRが30g/10分以下であると溶融張力が高くネックインや破膜がせず、フィルム成形しやすい。
したがって、MFRは、0.1~30g/10分であり、好ましくは1~20g/10分であり、より好ましくは2~15/g/10分である。更に好ましくは7~10g/10分である。
本発明において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:2014の「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:230℃、荷重2.16kgfで測定した値である。
メルトフローレート(MFR)は、重合の温度や圧力を変えるか、または、一般的な手法としては、水素などの連鎖移動剤を重合時に添加する方法により、容易に調整することができる。
【0014】
1-1-2.特性(X-2):GPCによって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0~10.0である。
【0015】
Mw/Mnは、分子量分布の広がりを表す指標であり、この値が大きいほど分子量分布が広いことを意味する。Mw/Mnが小さすぎると、低分子量成分が減少し溶融流動性が悪くなる。したがって、Mw/Mnは、3.0以上であれば、低分子量成分が増え、溶融流動性が改良する。Mw/Mnは好ましくは3.1以上、より好ましくは3.2以上である。一方、Mw/Mnが10.0以下であると、高分子量成分が相対的に少なくなり溶融流動性が改善する。Mw/Mnは、好ましくは9.6以下、より好ましくは9.2以下である。
【0016】
同じく、Mz/Mwは、分子量分布の広がりを表す指標であり、Mw/Mnと比較して高分子量側の広がりを示す指標である。これらの値が大きいほど分子量分布が高分子量側へ広いことを意味する。Mz/Mwが2以上であれば、高分子量成分が増加し溶融張力が向上する。したがって、Mz/Mwは、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上である。一方、Mz/Mwが5.0以下であれば、高分子量成分の量が相対的に減少し、溶融流動性が改善する。したがって、Mz/Mwは、5.0以下であり、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。
【0017】
1-1-3.特性(X-3):230℃で測定する溶融張力(MT;MT230℃と記載することもできる)(単位:g)が下記(式1)又は(式2)の要件を満たす。
log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)
MT≧15 (式2)
【0018】
ここでMT230℃は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で、測定したときの溶融張力を表し、単位はグラムである。ただし、試料のMTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。また、MFRの測定条件、単位は、前述の通りである。
【0019】
(式1)は、ポリプロピレン樹脂(X)が充分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、MTは、MFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。上記のMTとMFRとの関係式は、(式1):log(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7で表されるが、好ましくはlog(MT)≧-0.9×log(MFR)+1.0(式1a)で、より好ましくはlog(MT)≧-0.9×log(MFR)+1.5(式1b)で表される。
ポリプロピレン樹脂(X)は、上記(式1)を満たせば、ネックインの低減効果が得られるばかりでなく、溶融膜に均一に応力が伝搬するために、レゾナンス現象と称されるフィルム厚みの不均一現象やエッジ部の伸縮による不安定現象が抑制される。
【0020】
ポリプロピレン樹脂(X)は、(式1)又は(式2)の要件を満たすことが必要であり、その場合フィルムの剛性は高くなる。
【0021】
MTの上限値について、MTが40g以下であれば、樹脂の延展性があり上記測定がしやすくなる。また、成形時のフィルム破断も発生しなくなる。したがって、MTは好ましくは40g以下、より好ましくは37g以下、さらに好ましくは35g以下である。
上記の(式1)の要件を満たすためには、例えばポリプロピレン樹脂(X)の長鎖分岐量を増大させて、溶融張力を高くすればよい。例えば後述する好ましいメタロセン触媒の種類、組み合わせ、量比、予備重合条件等を制御して長鎖分岐を多く導入することが可能である。
【0022】
1-1-4.特性(X-4):GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満である。
【0023】
ポリプロピレン樹脂(X)が分岐を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]linによって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
すなわち、g’<1のポリプロピレンは「長鎖分岐ポリプロピレン」であることを意味する。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
【0024】
g’は、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
本発明で使用するポリプロピレン樹脂(X)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の成分のg’が0.40以上0.93未満であることが好ましく、より好ましくは0.50以上0.92未満、更に好ましくは0.60以上0.91未満である。
g’が0.40以上であると、高度に架橋した成分が形成されておらず、ゲルの生成が無い、あるいは非常に少ない。一方で、g’が0.93以下あると長鎖分岐構造を形成する樹脂の性能が発現し、剛性が高くなる。
【0025】
また290℃以上の高温で混練した際や、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さいため、フィルム成形性の低下(ネックイン増大や低速引取りでのレゾナンス現象発生)が生じにくいという点で、櫛型構造を有する分岐状ポリマーであることが好ましい。
具体的なg’の算出方法は、以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN-Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR-H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983.Chapter1.)
2.Polymer,45,6495-6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424-2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945-6952(2000)
【0026】
[分岐指数(g’)の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐状ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には、長鎖分岐構造を有することを意味する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark-Houwink-Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
【0027】
分岐指数g’を0.30以上0.95未満にするには、長鎖分岐を多く導入することにより達成される。例えば、好ましいメタロセン触媒の種類、組み合わせ量比、予備重合条件等を制御して重合することで可能となる。
【0028】
1-1-5.本発明のポリプロピレン樹脂(X)は、好ましくは以下の特性(X-5)を満たす。
特性(X-5):13C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上である。
【0029】
本発明のポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さは、13C-NMRによって評価することができ、13C-NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上の立体規則性を有するものがよい。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭-尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であるので、上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど高度に制御されていることを意味する。mm分率が一定の値より高いと、製品の弾性率が向上し、フィルムの剛性が高くなる。従って、mm分率は、95%以上であり、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
【0030】
なお、13C-NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
・フリップ角:90度
・パルス間隔:10秒
・共鳴周波数:100MHz以上
・積算回数:10,000回以上
・観測域:-20ppmから179ppm
・データポイント数:32768
【0031】
プロピレン単位3連鎖のmm分率は、13C-NMR測定により測定された13Cシグナルの積分強度を、次式に代入することにより求められる。
mm(%)=Imm×100/(Imm+3×Imrrm)
ここで、Imm=I23.6~21.1、Imrrm=I19.8~19.7で示される量である。
プロピレン単位3連鎖のmm分率を求めるための13C-NMR測定法は、上記測定と同じ方法で行うことができる。
スペクトルの帰属は、Polymer Jounral,16巻,717頁(1984),朝倉書店や、Macromolecules,8卷,687頁(1975年)や、Polymer,30巻 1350頁(1989年)を参考に行うことができる。
【0032】
mm分率を95%以上にするには、高結晶性の重合体を達成する重合触媒により可能であり、後述する好ましいメタロセン触媒を使用して重合することで可能となる。
【0033】
1-1-6.ポリプロピレン樹脂(X)の製造方法
ポリプロピレン樹脂(X)は、上記した(X-1)~(X-2)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009-57542号公報に開示される方法が挙げられる。この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、マクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の製造が可能である。マクロマー共重合法はゲルの発生が無く長鎖分岐含有ポリプロピレン系樹脂を得ることができ、本発明に好適である。また、マクロマー共重合法にて生産されたポリプロピレン系樹脂は架橋していないため、リサイクル性も良好である。
【0034】
本発明に係るポリプロピレン樹脂(X)は、プロピレンモノマーを単独重合して得られる、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンモノマーとプロピレンを除く炭素数2~20のα-オレフィンコモノマー、例えば、エチレンおよび/又は1-ブテンとを共重合して得られるプロピレン・α-オレフィン共重合体であってもよい。
ポリプロピレン樹脂(X)の形状は、特に限定されず、パウダー状、またはその造粒物である粒子状であってもよい。
【0035】
本発明に係るポリプロピレン樹脂(X)には、必要に応じて後述する他の付加的成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得られ、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練して造粒物としてもよい
【0036】
1-2.ポリプロピレン樹脂(Y)
ポリプロピレン樹脂(Y)は、特性(Y-1)を有する。
【0037】
1-2-1.特性(Y-1):MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1g/10分~30g/10分である。
ポリプロピレン樹脂(Y)のMFRは、1~30g/10分、好ましくは2~25g/10分である。MFRが1g/10分以上であると、ポリプロピレン樹脂組成物の流動性があり、フィルム成形時にメルトフラクチャーが生じにくい。一方、MFRが30g/10分以下であると、溶融張力がありネックインを低減でき、製品の製造効率を向上させることができる。
【0038】
ポリプロピレン樹脂(Y)のMFRは、プロピレン重合の温度や圧力条件を変えるか、または、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法により、容易に調整される。
【0039】
1-2-2.ポリプロピレン樹脂(Y)の製造方法
ポリプロピレン樹脂(Y)は、その製造方法に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒で製造されたものでよく、メタロセン系触媒により製造されたものでもよい。なお、ポリプロピレン樹脂(Y)はポリプロピレン樹脂(X)に該当するものを含まない。
チーグラー・ナッタ系触媒は、たとえば「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会(1998)の2.3.1節(20~57ページ)に概説されているような触媒系のことであり、例えば、三塩化チタンとハロゲン化有機アルミニウムからなる三塩化チタニウム系触媒や、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、電子供与性化合物を含有する固体触媒成分と有機アルミニウムと有機珪素化合物からなるマグネシウム担持系触媒や、固体触媒成分を有機アルミニウム及び有機珪素化合物を接触させて形成した有機珪素処理固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み合わせた触媒のことを指す。
【0040】
また、メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒は、いずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0041】
上記(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60-35007号、特開昭61-130314号、特開昭63-295607号、特開平1-275609号、特開平2-41303号、特開平2-131488号、特開平2-76887号、特開平3-163088号、特開平4-300887号、特開平4-211694号、特開平5-43616号、特開平5-209013号、特開平6-239914号、特表平7-504934号、特開平8-85708号の各公報に開示されているもの等が好ましく使用できる。
【0042】
さらに、具体的には、
メチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン1,2-(4-フェニルインデニル)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4-メチルシクロペンタジエニル)(3-t-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(2-メチル-4-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(3’-t-ブチル-5’-メチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[4-(1-フェニル-3-メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(フルオレニル)t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(1-ナフチル)-インデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(3-フルオロビフェニリル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド
などのジルコニウム化合物が例示できる。
【0043】
上記において、ジルコニウムをチタニウム、又はハフニウムに置き換えた化合物も、同様に使用できる。また、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することも好ましい。また、クロリドは、他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることができる。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が特に好ましい。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。
該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
また、上記(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が好ましく挙げられる。
【0045】
さらに、上記(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が好ましく挙げられる。
【0046】
ポリプロピレン樹脂(Y)の製造方法については、特に制限はなく、従来公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等のいずれでも製造可能であり、また、範囲内であれば、多段重合法を利用して、ポリプロピレン及びプロピレン系ランダム共重合体を製造することも可能である。
【0047】
本発明に係るポリプロピレン樹脂(Y)は、必要に応じて後述する他の付加的成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得られ、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
【0048】
ポリプロピレン樹脂(Y)は、プロピレンモノマーを単独重合して得られるプロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンモノマーとプロピレンを除く炭素数2~20のα-オレフィンコモノマー、例えば、エチレンおよび/又は1-ブテンとを共重合して得られるプロピレン・α-オレフィン共重合体であってもよい。
ポリプロピレン樹脂(Y)は、好ましくはコモノマーとしてエチレンを0~6.0質量%含有する。より好ましくはエチレンを0~5.0質量%含有し、さらに好ましくはエチレンを0~4.0質量%含有する。エチレンの含有量が6.0質量%以下であると、結晶性が高く、剛性や耐熱性が高くなる。
【0049】
また、本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の1つの好ましい態様において、ポリプロピレン樹脂(Y)はプロピレン単独重合体である。ポリプロピレン樹脂(Y)がプロピレン単独重合体であると、剛性が高くなる。
また、上記の通り、ポリプロピレン樹脂(Y)は、ポリプロピレン樹脂(X)に該当するものを含まないが、本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物の1つの好ましい態様において、ポリプロピレン樹脂(Y)は、分岐指数g’が0.30以上0.95未満の範囲にはない。
【0050】
ポリプロピレン樹脂(Y)の形状は、特に限定されず、パウダー状、またはその造粒物である粒子状であってもよい。
【0051】
1-3.無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物
1-3-1.ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)の割合
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物における上記ポリプロピレン樹脂(X)と上記ポリプロピレン樹脂(Y)の割合は、(X)と(Y)の含有量の合計を100重量%基準として、ポリプロピレン樹脂(X)1~50重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)50~99重量%である。好ましくはポリプロピレン樹脂(X)5~40重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)60~95重量%、より好ましくはポリプロピレン樹脂(X)8~35重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)65~92重量%である。
上記の範囲とすることで、剛性が高く、更に透明性と引き裂きバランスの改善された無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物が得られる。
【0052】
1-3-2.本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物は、結晶核剤(A)を必須的に含む。結晶核剤を含むことにより、本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物は、剛性を高くしてもHAZEは低くなる。
【0053】
結晶核剤には有機系、無機系があり、本発明には有機系結晶核剤の使用が好ましい。例えば、ソルビトール系結晶核剤、アミド系結晶核剤およびリン酸エステル系結晶核剤などがある。
アミド系結晶核剤は、アミド基を有する結晶核剤である。アミド系結晶核剤は、例えば、1,3,5―トリス(2,2―ジメチルプロパンアミド)ベンゼン、N,N’,N’’-トリス(2-メチルシクロヘキシル)プロパン-1,2,3-トリカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドおよびN,N',N''―トリシクロヘキシル―トリメシン酸アミドなどがある。
ソルビトール系結晶核剤は、ソルビトール誘導体である結晶核剤である。ソルビトール系結晶核剤は、例えば、1-[8-プロピル-2,6-ビス(4-プロピルフェニル)テトラヒドロ[1,3]ジオキシノ[5,4-d][1,3]ジオキシン-4-イル]エタン-1,2-ジオール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1-O,3-O:2-O,4-O-ビス(4-メチルベンジリデン)-D-グルシトールおよび1,3:2,4―O―ビス(4―エチルベンジリデン)―ソルビトールなどがある。
結晶核剤は、複数の結晶核剤を混合して利用してもよい。
アミド系結晶核剤は、公的な規制および/または、剛性を高めるため、(X)+(Y)を100重量%として、0.01~1重量%が好ましく、0.01~0.03重量%がより好ましい。
ソルビトール系結晶核剤は、公的な規制および/または、剛性を高めるため、樹脂組成物を100重量%として、0.01~1重量%が好ましく、0.1~0.6重量%がより好ましい。
【0054】
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物が含有する結晶核剤(A)としては、例えば、ナトリウム=2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-オキソ-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン-6-オラート、ステアリン酸亜鉛、ビス(4-tert-ブチルベンゾアト-κO)ヒドロキシドアルミニウム、1-[8-プロピル-2,6-ビス(4-プロピルフェニル)テトラヒドロ[1,3]ジオキシノ[5,4-d][1,3]ジオキシン-4-イル]エタン-1,2-ジオール、アルミニウム=ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシド、1-O,3-O:2-O,4-O-ビス(4-メチルベンジリデン)-D-グルシトール、N,N’--ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドが挙げられる。
【0055】
結晶核剤(A)は、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)と混合して無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物を調製することもできる。
また、結晶核剤(A)は樹脂に含有させてマスターバッチとして使用することができる。例えば、ポリプロピレン樹脂(X)、ポリプロピレン樹脂(Y)、またはポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)いずれにも該当しない樹脂のうち一つ以上を使用して結晶核剤(A)を含有したマスターバッチを調整した後、ポリプロピレン樹脂(X)およびポリプロピレン樹脂(Y)に混合して無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物を調製することもできる。
【0056】
1-3-3.その他成分
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物は、必要に応じて、上記ポリプロピレン樹脂(X)、ポリプロピレン樹脂(Y)、結晶核剤(A)以外の、下記各種成分を添加して用いることができる。
【0057】
1-3-3-1.添加剤
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げるものではない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜加えることができる。
具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1010」)やn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8~22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤などを添加してもよい。
【0058】
また、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤と光安定剤を加えることができる。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。光安定剤としては、ヒンダードアミン系の化合物を用いることが一般的であり、HALSと呼ばれる。
【0059】
1-3-3-2.その他のポリマー
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できるエラストマー、ポリエチレン系樹脂などの改質剤を、適宜、加えることができる。
上記のうち、エラストマーとしては、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレンと炭素数4~12のα-オレフィンとの二元ランダム共重合体樹脂、プロピレンとエチレンと炭素数4~12のα-オレフィンとの三元ランダム共重合体樹脂を挙げることができる。
【0060】
さらに、スチレン系エラストマーも加えることができ、スチレン系エラストマーとしては、市販されているものの中から、適宜選択して使用することもでき、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」の商品名で、また、旭ケミカルズ(株)より「タフテック」の商品名で、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン-ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン-ブタジエンランダム共重合体の水素添加物として(株)ENEOSマテリアルズより「ダイナロン」の商品名で、販売されており、これらの商品群より、適宜選択して用いてもよい。
【0061】
また、ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンといったエチレン/α-オレフィン共重合体が挙げられ、その密度は0.860~0.964g/cmの範囲であることが好ましく、0.870~0.960g/cmであることがより好ましく、0.875~0.950g/cmであることがさらに好ましい。
上記の範囲内であると、透明性の高いフィルムが得られる。なお、密度は、JIS K7112に準拠し、23℃で測定した値である。
エチレン/α-オレフィン共重合体に用いられるα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~18のα-オレフィンである。具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等を挙げることができる。また、α-オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
かかるエチレン/α-オレフィン共重合体としては、エチレン系エラストマー、エチレン-プロピレン系ゴム等を例示できる。特に、透明性低下の少ないメタロセン系触媒を用いて製造された、メタロセン系ポリエチレンと称されるエチレン/α-オレフィン共重合体が好適である。
【0062】
ポリエチレン系樹脂などのその他のポリマーを配合する場合の量は、前記(X)、(Y)の合計100重量%に対し、好ましくは2~30重量%であり、より好ましくは3~25重量%であり、更に好ましくは5~20重量%である。
【0063】
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物は、必要に応じて本発明の効果を損なわないその他の成分を配合することができる。これら成分の混合方法としてはヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する手法と、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により溶融混練する方法が例として挙げられる。いずれにおいても本発明の効果を損なわなければ、特に混合方法においては限定されない。
【0064】
1-4.フィルムの製造
フィルムの製造に用いるフィルム成形機はTダイより溶融押出ししてフィルム成形される成形機であり、例えば公知のTダイフィルム加工装置や公知のTダイ押出しラミネート加工装置などが挙げられ、好ましくはTダイフィルム加工装置である。Tダイフィルム加工装置の製造における好ましい製膜条件としては、樹脂温度160~260℃、冷却ロール温度20~80℃の条件を適用することができる。得られるTダイフィルムは、単層フィルム、または該無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物からなる層が少なくとも1層含まれる多層フィルムであってもよい。
該フィルムを使用する用途は、特に限定されるものではないが、例えばパン、野菜等の食品包装用フィルム用途やシャツなどの衣類包装用フィルム用途、工業用部品包装用フィルム用途として保護用フィルムや合成紙等に使用することが出来る。また、該フィルムはドライラミネート法、サンドラミ法等のラミネーション法等公知の技術によりセロハン、紙、織物、板紙、アルミニウム箔、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、延伸ポリプロピレン等のフィルムにラミネートしたフィルムの基材として利用することもできる。
【0065】
ポリプロピレン樹脂(X)を得る方法は特に限定されず、上記「1-1-6.ポリプロピレン樹脂(X)の製造方法」に記載の方法で製造することができる。
ポリプロピレン樹脂(Y)を得る方法は特に限定されず、上記「1-2-2.ポリプロピレン樹脂(Y)の製造方法」に記載の方法で製造することができる。
ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)を混合する方法は特に限定されず、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する手法が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)を溶融混練する方法は特に限定されず、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により溶融混練する方法が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)の割合は、上記「1-3-1.ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)の割合」に記載の割合を挙げることができる。
【0066】
2.フィルム
本発明のフィルムは、本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む無延伸フィルムであって、前記ポリプロピレン樹脂組成物層は、上記特性(X-1)~(X-4)を有するポリプロピレン樹脂(X)1~50重量%、上記特性を有するポリプロピレン樹脂(Y)99~50重量%、及び0.01~1重量%の結晶核剤(A)を含む(ただし、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量は100重量%である。)ことを特徴とする。
【0067】
ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)の割合は、上記「1-3-1.ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)の割合」に記載の割合を挙げることができる。
【0068】
本発明の1つの態様は、本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物からなる無延伸フィルムである(以下「本発明の無延伸フィルム」とも言う)。
また、本発明のもう1つの態様は、本発明の無延伸フィルムからなる層を含む多層フィルムである。
【0069】
また、本発明のもう1つの態様は、本発明の無延伸フィルムを含む食品包装用フィルムである。
【0070】
また、本発明のもう1つの態様は、本発明の無延伸フィルムを含む保護用フィルムである。
また、本発明のもう1つの態様は、本発明の無延伸フィルムを含む合成紙である。
【0071】
本発明の無延伸フィルムの製造方法は特に限定されず、上記「1-4.フィルムの製造」に記載の方法で製造することができる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0073】
1.評価方法
評価は別途の記載がない限り20~25℃で実施した。
(1)MFR
MFRは、JIS K7210:2014に準拠して測定した。MFRの単位はg/10分である。
(2)Mw/MnおよびMz/Mn
Mw/MnおよびMz/Mnは、前述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(3)MT
MTは、前述した方法に従って、東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、測定した。
(4)g’
g’は、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCによって求めた。
(5)mm分率
mm分率は、前述した方法に従って、13C-NMRにより求めた。
mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009-275207号公報の段落[0053]~[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行った。mm分率の単位は%である。
(6)融点
融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて5分間置き、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。融点の単位は℃である。
【0074】
(7)HAZE
HAZEは、JIS K7136:2000に準拠して測定した。HAZEの値が小さいほど透明性がよい。HAZEの単位は%である。
【0075】
(8)ヤング率
ヤング率は、JIS K7127-1989に準拠し、下記条件にてフィルム流れ方向(MD)についての引張弾性率(ヤング率)を測定した。ヤング率の単位はMPaである。
サンプル形状:短冊
サンプル長さ:150mm
サンプル幅:15mm
チャック間距離:100mm
クロスヘッド速度:1mm/min
(9)曲げ弾性率
曲げ弾性率はJIS K7171:2022(ISO178)に準拠して求めた。曲げ弾性率の単位はMPaである。
サンプル形状:短冊
サンプル長さ:80mm
サンプル幅:25mm
曲げ速度:2mm/min
【0076】
4.使用材料
(1)ポリプロピレン樹脂(X)
ポリプロピレン樹脂(X1)として、マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX3」を用いて、MFR、GPC、MT、g’、13C-NMR、融点の評価を行った。評価結果を表1に示す。ポリプロピレン樹脂(X1)は要件(X-3)のlog(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)を満たす。
ポリプロピレン樹脂(X2)として、マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX6」を用いて、MFR、GPC、MT、g’、13C-NMR、融点の評価を行った。評価結果を表1に示す。ポリプロピレン樹脂(X2)は要件(X-3)のlog(MT)≧-0.9×log(MFR)+0.7 (式1)を満たす。
【0077】
【表1】
【0078】
(2)ポリプロピレン樹脂(Y)
ポリプロピレン樹脂(Y1)として、プロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FB3HBT(融解ピーク温度Tm:164℃、MFR:10g/10分、MT:0.5g)。
ポリプロピレン樹脂(Y2)として、プロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP SA03(融解ピーク温度Tm:164℃、MFR:30g/10分、GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満でない)
ポリプロピレン樹脂(Y3)として、プロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FY6H(融解ピーク温度Tm:164℃、MFR:1.9g/10分、GPC測定による分岐指数g’が0.30以上0.95未満でない)
ポリプロピレン樹脂(Y4)として、プロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP EA6A(融解ピーク温度Tm:167℃、MFR:1.9g/10分、MT:2.7g)。
ポリプロピレン樹脂(Y5)として、プロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FL4(融解ピーク温度Tm:164℃、MFR:4g/10分、MT:1.0g)
【0079】
(3)結晶核剤(A)
結晶核剤(A1)であるミリケン・ジャパン合同会社製の1-[8-プロピル-2,6-ビス(4-プロピルフェニル)テトラヒドロ[1,3]ジオキシノ[5,4-d][1,3]ジオキシン-4-イル]エタン-1,2-ジオール(商品名:ミラッド(Millad) NX8000J)
結晶核剤(A2)であるBASF・ジャパン株式会社製の1,3,5―トリス(2,2―ジメチルプロパンアミド)ベンゼン(商品名:Irgaclear XT 386)
結晶核剤(A3)である株式会社ADEKA製のナトリウム=2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-オキソ-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン-6-オラート(商品名:アデカスタブ NA-11)
【0080】
[実施例1~3][比較例1~4]
ポリプロピレン樹脂(X1)、ポリプロピレン樹脂(Y)を表2に示す割合でヘンシェルミキサーにて混合した後、スクリュー径50mmΦの押出機を用いて220℃の温度で溶融押出してペレット化した。
得られたペレットを、樹脂温度が220℃になるよう温度設定した口径35mmφの押出機を用い、単層Tダイ(ダイ幅330mm、ダイリップ開度0.8mm)へ導入して溶融押出を行い、30℃に温調され20m/minで回転する#200梨地表面加工された冷却ロールにて冷却固化させて、厚さ30μmの単層未延伸フィルムを得た。
得られたペレットおよびフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表2にその評価結果を掲載する。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例1~9のフィルムは、ポリプロピレン樹脂組成物に含まれるポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)が本発明の特定物性を全て満足しているため、剛性、HAZEのバランスに優れるものであった。
比較例1はポリプロピレン樹脂(X)及び結晶核剤(A1)若しくは(A2)が含まれていないため、剛性が不足し、HAZEも悪い結果となった。比較例2、3は結晶核剤(A)が含まれていないため、HAZEが悪い結果となった。
比較例4はポリプロピレン樹脂(X)が含まれていないため、剛性が実施例1~3よりも低い結果となった。
【0083】
[実施例10~13]、[比較例5及び6]
ポリプロピレン樹脂(X2)、ポリプロピレン樹脂(Y4)及び(Y5)を表3に示す割合でヘンシェルミキサーにて混合した後、スクリュー径50mmΦの押出機を用いて220℃の温度で溶融押出してペレット化した。
得られたペレットを、樹脂温度が250℃になるよう温度設定した口径40mmφの押出機を用い、ダイス(ダイス幅400mm、ダイリップ開度0.8mm)へ導入して溶融押出を行い、40℃に温調され3m/minで回転する鏡面加工された冷却ロールにて冷却固化させて、厚さ400μm、300μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表3にその評価結果を掲載する。
【0084】
【表3】
【0085】
実施例10~13のフィルムは、ポリプロピレン樹脂組成物に含まれるポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)が本発明の特定物性を全て満足しているため、剛性、HAZEのバランスに優れるものであった。
比較例5はポリプロピレン樹脂(X)及び結晶核剤(A)が含まれていないため、剛性が不足し、HAZEも悪い結果となった。
比較例6は結晶核剤(A)が含まれていないため、HAZEが悪い結果となった。