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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025110466
(43)【公開日】2025-07-29
(54)【発明の名称】情報処理方法及び軸受寿命予測装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20250722BHJP
【FI】
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004315
(22)【出願日】2024-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】田尾 洋平
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA12
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】電動機として利用される回転電機を、発電機として再利用する場合にも、軸受の寿命を精緻に予測する。
【解決手段】本実施形態に係る予測装置は、回転電機の出力電力を用いて、回転電機が発電機として利用される第2期間において軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出し、算出した第2期間における平均荷重と、回転電機が電動機として利用される第1期間における軸受の劣化状態とから、第2期間における軸受の寿命を予測する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の回転軸を支持する軸受の寿命を予測する処理をプロセッサに実行させる情報処理方法であって、
前記プロセッサは、
前記回転電機が電動機として利用される期間である第1期間における前記回転電機の動作状態から、前記第1期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出し、
前記第1期間における前記平均荷重から、前記第1期間における前記軸受の劣化状態である第1劣化状態を推定し、
前記回転電機が発電機として利用される期間である第2期間における前記回転電機の出力電力を用いて、前記第2期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出し、
前記第1期間における前記第1劣化状態と、前記第2期間における前記平均荷重とから、前記第2期間における前記軸受の前記寿命を予測する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、さらに、前記回転電機の動作状態から、前記回転電機の用途が前記電動機から前記発電機へと変更されたかを判定し、
前記回転電機の用途が前記電動機から前記発電機へと変更されたと判定すると、前記プロセッサは、
前記第2期間における前記平均荷重を算出し、
前記第1劣化状態と、前記第2期間における前記平均荷重とから、前記第2期間における前記軸受の前記寿命を予測する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記第2期間における前記平均荷重は、
前記第2期間における前記回転電機の前記出力電力と、
前記回転電機のトルク-回転特性と
から算出される、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記回転電機を前記電動機として利用する車両が備える、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記回転電機の前記出力電力は、前記回転電機を前記発電機として利用する風力発電における、
風車の発電効率風速、
翼の受風面積、
空気密度、および、
前記風車のパワー係数
の少なくとも1つを用いて決定される、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記回転電機の前記出力電力は、前記回転電機を前記発電機として利用する水力発電における、
水車にかかる水量、
重力加速度、
水頭、および、
効率
の少なくとも1つを用いて決定される、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記回転電機の前記出力電力は、前記回転電機を前記発電機として利用する波力発電における、
波パワー、
波幅、および、
効率
の少なくとも1つを用いて決定される、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記回転電機の前記出力電力は、前記回転電機を前記発電機として利用する地熱発電における、
蒸気流量、
入口出口温度、
蒸気潜熱、および、
効率
の少なくとも1つを用いて決定される、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項9】
回転電機の回転軸を支持する軸受の寿命を予測する軸受寿命予測装置であって、
前記回転電機が電動機として利用される期間である第1期間における前記回転電機の動作状態から、前記第1期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出する第1平均荷重算出部と、
前記第1平均荷重算出部により算出される前記第1期間における前記平均荷重から、前記第1期間における前記軸受の劣化状態である第1劣化状態を推定する劣化状態推定部と、
前記回転電機が発電機として利用される期間である第2期間における前記回転電機の出力電力を用いて、前記第2期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出する第2平均荷重算出部と、
前記劣化状態推定部により推定される前記第1期間における前記第1劣化状態と、前記第2平均荷重算出部により算出される前記第2期間における前記平均荷重とから、前記第2期間における前記軸受の前記寿命を予測する予測部と、
を備える、
軸受寿命予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法及び軸受寿命予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の回転軸を支持する軸受(ベアリング)の寿命を予測する技術が知られている。例えば、下掲の特許文献1には、モータのトルクから軸受の平均荷重を求め、軸受の平均荷重と定格荷重とから寿命回転数を算出し、係る寿命回転数とモータの積算回転数とから軸受寿命までの消費率を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-032712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術は、回転電機が電動機(モータ)として利用される状況しか想定できておらず、係る回転電機が発電機として再利用される場合の軸受の寿命を精緻に予測することができない。
【0005】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機として利用される回転電機を、発電機として再利用する場合にも、軸受の寿命を精緻に予測できる情報処理方法及び軸受寿命予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理方法は、回転電機の回転軸を支持する軸受の寿命を予測する処理をプロセッサに実行させる情報処理方法であって、前記プロセッサは、前記回転電機が電動機として利用される期間である第1期間における前記回転電機の動作状態から、前記第1期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出し、前記第1期間における前記平均荷重から、前記第1期間における前記軸受の劣化状態である第1劣化状態を推定し、前記回転電機が発電機として利用される期間である第2期間における前記回転電機の出力電力を用いて、前記第2期間において前記軸受に印加される動等価荷重の平均荷重を算出し、前記第1期間における前記第1劣化状態と、前記第2期間における前記平均荷重とから、前記第2期間における前記軸受の前記寿命を予測する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動機として利用される回転電機を、発電機として再利用する場合にも、軸受の寿命を精緻に予測できる情報処理方法及び軸受寿命予測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る軸受寿命予測装置を含む軸受寿命予測システムの全体概要を示す。
図2】実施の形態に係る軸受寿命予測装置のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。
図3】実施の形態に係る軸受寿命予測装置のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。
図4】実施の形態に係る軸受寿命予測装置の処理手順の一例を示す。
図5】疲労寿命-荷重相関式を利用して、第1期間における平均荷重から、第1期間の疲労寿命を特定する例を示す。
図6】疲労寿命-荷重相関式を利用して、第2期間における平均荷重から、第2期間の疲労寿命を特定する例を示す。
図7】第1期間では第1平均荷重から第1劣化状態を推定し、第2期間では第2平均荷重から第2劣化状態を推定する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。また、「x/y」との記載を、「xおよびyの少なくとも一方」の意味で用いることがある。
【0010】
§1 適用例
図1は、本実施形態に係る軸受寿命予測システム(軸受寿命予測システムSys)の全体概要を示す。軸受寿命予測システムSysは、予測装置1と回転電機2とを含む。予測装置1は、本実施形態に係る軸受寿命予測装置であり、回転電機2の回転軸21を支持する軸受22(ベアリング)の寿命を予測する。回転電機2は、電動機(モータ)または発電機として動作し、本実施形態においては、車両の電動機として利用された後、発電機として(再)利用可能な回転電機である。回転電機2は、例えば、風力発電、水力発電、波力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーの発電機として利用され得る。本実施形態においては、「回転電機2が電動機として利用される期間」を「第1期間FP」と称することがある。同様に、「回転電機2が発電機として利用される期間(回転電機2を発電機として利用しようとする期間、および、回転電機2を発電機として利用している期間の少なくとも一方を含む)」を「第2期間SP」と称することがある。
【0011】
図示の例では、予測装置1は、回転電機2から、回転電機2の動作状態ASを取得し、また、回転電機2が発電機として利用される場合の回転電機2の出力電力OPを入力される。例えば、予測装置1は、取得した(入力された)回転電機2の動作状態ASおよび出力電力OPを用いて、軸受22の寿命を、特に、回転電機2が電動機として利用された後に発電機として再利用される場合の(つまり、第2期間SPにおける)軸受22の寿命を、予測する。
【0012】
動作状態ASは、例えば、回転電機2の、(総)動作時間、(総/平均)回転数、(平均)回転速度、(平均)トルクの少なくとも1つを含む。動作状態ASは、回転電機2の設定、設計に係る情報(例えば、回転電機2のギア比などの定量情報)等をさらに含んでいてもよい。なお、「第1期間FPにおける動作状態AS」を、特に「第1動作状態FAS」と称することがある。第1動作状態FASは、例えば、回転電機2を電動機として利用する車両の(総)走行距離を含む。第1動作状態FASは、さらに、係る車両の設定、設計に係る情報(例えば、係る車両のタイヤ周長(L)などの定量情報)等を含んでいてもよい。つまり、第1動作状態FASは、動作状態ASに加えて、回転電機2を電動機として利用する車両の状態等を含んでいてもよい。出力電力OPは、回転電機2を発電機として利用しようとする期間における、回転電機2の出力電力の予想値、期待値、設定値等であってもよいし、回転電機2を発電機として利用している期間における回転電機2の出力電力の実測値(平均値)であってもよい。
【0013】
図1には、予測装置1と回転電機2とが別々の装置として構成される例が示されている。回転電機2を電動機として利用する車両が、別々に構成された予測装置1と回転電機2とを備える場合、予測装置1と回転電機2とは、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANにより互いに接続され、相互に情報の送受信を行ってもよい。ただし、軸受寿命予測システムSysにとって、予測装置1と回転電機2とを別々の装置として構成することは必須ではなく、両者は一体に構成されてもよい。例えば、回転電機2が備える、回転電機2の動作状態ASを検知、制御する処理を実行するプロセッサ(CPU)と、予測装置1が備える、軸受22の寿命を予測する処理を実行するプロセッサとは、同じプロセッサであってもよい。
【0014】
軸受22の寿命を予測する処理を実行するプロセッサは、回転電機2を電動機として利用する車両が備えていてもよい。回転電機2を電動機として利用する車両が、軸受22の寿命を予測する処理を実行するプロセッサを備えることで、予測装置1(係るプロセッサに、軸受22の寿命を予測する処理を実行させる情報処理方法PM)は、例えば以下の効果を奏する。すなわち、予測装置1(情報処理方法PM)は、回転電機2が未だ車両に備えられている状態において、回転電機2が発電機として再利用された場合の軸受22の寿命を予測することができる。そのため、予測装置1は、未だ車両に備えられている回転電機2について、例えば、その後の発電機としての再利用の適否、発電機としての利用方法、利用形態(設置位置、発電方法等を含む)などを利用者が適切に判断するための情報を提供することができる。利用者には、回転電機2の利用者(例えば、回転電機2を電動機として利用する車両の所有者など)、回転電機2の利用予定者(例えば、回転電機2を発電機として再利用することを検討している事業者など)が含まれる。ただし、軸受寿命予測システムSysにとって、車両が予測装置1を備えることは必須ではなく、予測装置1は、車両から独立に構成されてもよい。
【0015】
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態に係る予測装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。図2に示されるとおり、本実施形態に係る予測装置1は、制御部11、記憶部12、通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16、およびドライブ17が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図2では、通信インタフェースおよび外部インタフェースを「通信I/F」および「外部I/F」と記載している。
【0016】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラムおよび各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。CPUは、プロセッサ・リソースの一例である。記憶部12は、メモリ・リソースの一例であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。本実施形態では、記憶部12は、予測プログラム120、疲労寿命-荷重相関式122、トルク-回転特性情報124などの各種情報を記憶する。
【0017】
予測プログラム120は、回転電機2の回転軸21を支持する軸受22の寿命を予測する後述の情報処理(図4)を予測装置1に実行させるためのプログラムである。予測プログラム120は、当該情報処理の一連の命令を含む。
【0018】
疲労寿命-荷重相関式122は、軸受22について、疲労寿命(定格疲れ疲労回転数)と荷重(平均荷重)との関係(相関関係)を規定した式であり、両者の関係をプロットした曲線(相関曲線)であってもよい。図5図6に例示する疲労寿命-荷重相関式122(疲労寿命-荷重相関曲線)は、軸受22についての、疲労寿命(L0.5定格疲れ疲労回転数/×109)と荷重(平均荷重/N)との相関関係を示している。本実施形態において疲労寿命-荷重相関式122は、「相関式122」と略記することがある。
【0019】
トルク-回転特性情報124は、回転電機2について、トルクと回転特性(回転数、回転速度等)との関係(相関関係)を示す情報(例えば、式)であり、両者の関係をプロットした曲線(相関曲線)であってもよい。本実施形態においてトルク-回転特性情報124は、「特性情報124」と略記することがある。
【0020】
通信インタフェース13は、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であり、ネットワークを介した有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。上述のとおり、通信インタフェース13は、CANその他の車載LANを介した通信を行うためのインタフェースであってもよい。予測装置1は、この通信インタフェース13を利用して、他の情報処理装置との間で、ネットワークを介したデータ通信を実行してもよい。外部インタフェース14は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート等であり、外部装置と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース14の種類および数は、接続される外部装置の種類および数に応じて適宜選択されてよい。例えば、予測装置1は、通信インタフェース13および外部インタフェース14の少なくとも一方を介して、回転電機2に接続され、回転電機2から、回転電機2の動作状態ASを取得する。
【0021】
入力装置15は、例えば、マウス、キーボード等の入力を行うための装置である。また、出力装置16は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置である。ユーザ等のオペレータは、入力装置15および出力装置16を利用することで、予測装置1を操作することができる。
【0022】
ドライブ17は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むためのドライブ装置である。記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が、記憶されたプログラム等の各種情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。上述の予測プログラム120、相関式122、および特性情報124の少なくとも1つは、記憶媒体91に記憶されていてもよい。予測装置1は、この記憶媒体91から、予測プログラム120、相関式122、および特性情報124の少なくとも1つを取得してもよい。なお、図2では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限られなくてもよく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。ドライブ17の種類は、記憶媒体91の種類に応じて任意に選択されてよい。
【0023】
なお、予測装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換および追加が可能である。例えば、プロセッサ・リソースは、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)等で構成されてよい。記憶部12は、制御部11に含まれるRAMおよびROMにより構成されてもよい。通信インタフェース13、外部インタフェース14、入力装置15、出力装置16およびドライブ17の少なくともいずれかは省略されてもよい。予測装置1は、複数台のコンピュータで構成されてもよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。また、予測装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、PC(Personal Computer)等であってもよい。
【0024】
[ソフトウェア構成]
図3は、本実施形態に係る予測装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。予測装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された予測プログラム120をRAMに展開する。そして、制御部11は、CPUにより、RAMに展開された予測プログラム120に含まれる命令を解釈および実行して、各構成要素を制御する。これにより、図3に示されるとおり、本実施形態に係る予測装置1は、第1平均荷重算出部110、劣化状態推定部112、判定部114、第2平均荷重算出部116、および、予測部118をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。すなわち、本実施形態では、予測装置1の各ソフトウェアモジュールは、制御部11(CPU)により実現される。
【0025】
第1平均荷重算出部110は、第1期間FPにおける回転電機2の動作状態AS(つまり、第1動作状態FAS)を取得し、取得した第1動作状態FASから、第1期間FPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重ALを算出する。動等価荷重は、ラジアル荷重とアキシアル荷重との和である。本実施形態においては、「第1期間FPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重AL」を、「第1平均荷重FAL」とも称する。第1平均荷重算出部110は、第1動作状態FASを、回転電機2から取得してもよいし、回転電機2の第1動作状態FASを検知する装置、第1動作状態FASを記憶するサーバ等から取得してもよい。第1動作状態FASの取得元は特に限られない。
【0026】
劣化状態推定部112は、第1平均荷重FALから、第1期間FPにおける軸受22の劣化状態である第1劣化状態FDSを推定する。例えば、劣化状態推定部112は、記憶部12を参照して相関式122(軸受22の疲労寿命-荷重相関式)を取得し、取得した相関式122と、第1平均荷重FALとから、第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)を算出する。そして、劣化状態推定部112は、算出した「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に対する、第1期間FPにおける軸受22の(積算)回転数の、消費率(または残余率)[%]を、第1劣化状態FDSとして推定してもよい。上述の「残余率」を、本実施形態では「残寿命率」とも称する。『「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に対する、「第1期間FPにおける軸受22の回転数」の残余率(残寿命率)』は、第1劣化状態FDSを示す情報の一例である。ただし、劣化状態推定部112が第1平均荷重FALから第1劣化状態FDSを推定する方法は、上述の方法に限られるものではない。
【0027】
判定部114は、回転電機2の動作状態ASから、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されたかを判定する。判定部114は、例えば、回転電機2(軸受22)に印加される荷重(ラジアル荷重およびアキシアル荷重の少なくとも一方)を用いて、回転電機2の用途の変更を判定してもよく、例えば、平均荷重が所定値よりも小さくなると、変更があったと判定してもよい。判定部114は、回転数に対する荷重(平均荷重)を用いて、回転電機2の用途の変更を判定してもよく、例えば、回転数に対する平均荷重が所定値よりも小さくなると、変更があったと判定してもよい。ただし、動作状態ASから回転電機2の用途の変更を判断する方法は、上に説明したものに限られるものではない。
【0028】
詳細は後述するが、判定部114により、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された(変更される)と判定されると、予測装置1は、第2期間SP(つまり、回転電機2が発電機として利用される期間)における軸受22の劣化(摩耗等)を予測する。そして、予測装置1は、第1期間FP(つまり、回転電機2が発電機として利用される期間)における軸受22の劣化(第1劣化状態FDS)と、第2期間SPにおける軸受22の劣化とから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測する。そのため、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されたかを、回転電機2の動作状態ASから判定することで、予測装置1は、以下の効果を奏する。すなわち、予測装置1は、回転電機2の動作状態ASから、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されたかを高精度に判定することができ、用途が変更されたと判定すると、自動的に、発電機用途における軸受22の寿命を、精緻に予測することができる。
【0029】
なお、予測装置1にとって、判定部114を備えることは必須ではなく、つまり、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されたか(変更されるか)を、予測装置1が判定することは必須ではない。例えば、予測装置1は、外部の装置から、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された(変更される)ことを示す情報を取得してもよいし、係る用途の変更を示すユーザ操作を受け付けてもよい。係る情報、ユーザ操作の取得、受付があると、予測装置1は、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測する処理を実行してもよい。
【0030】
第2平均荷重算出部116は、判定部114から「回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された」との判定結果を通知されると、回転電機2の出力電力OPを用いて、第2期間SPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重ALを算出する。本実施形態においては、「第2期間SPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重AL」を、「第2平均荷重SAL」とも称する。第2平均荷重算出部116は、出力電力OPを、回転電機2から取得してもよいし、回転電機2を発電機として利用する外部の装置等から取得してもよいし、回転電機2を発電機として(再)利用する((再)利用しようとする)ヒトからの入力として取得してもよい。出力電力OPの取得元は、第1動作状態FASの取得元と同様に、特に限られない。
【0031】
予測装置1にとって、判定部114による「回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された」との判定結果を契機として、第2平均荷重算出部116が、回転電機2の出力電力OPを用いて第2平均荷重SALを算出することは必須ではない。第2平均荷重算出部116は、出力電力OP(または、後述する「出力電力OPを決定可能な各種パラメータ」)を取得したり、出力電力OPを入力するユーザ操作を受け付けたりすると、出力電力OPを用いて第2平均荷重SALを算出してもよい。
【0032】
第2平均荷重算出部116は、記憶部12を参照して特性情報124(回転電機2のトルク-回転特性)を取得し、取得した特性情報124と、出力電力OPとから、第2平均荷重SALを算出してもよい。例えば、特性情報124と、「トルク、回転数、出力の関係式:H=T×(2πN/60)[H:出力、N:回転速度、T:トルク]」とから、出力電力OP(H:出力)により、第2期間SPにおける回転電機2のトルクを算出することができる。そして、算出した第2期間SPにおける回転電機2のトルクから、第2期間SPにおける軸受22の平均荷重ALを、つまり、第2平均荷重SALを、求めることができる。係る方法により第2平均荷重SALを算出することで、第2平均荷重算出部116は、出力電力OPと、特性情報124とから、第2平均荷重SALを精緻に算出することができる。ただし、第2平均荷重算出部116が出力電力OPを用いて第2平均荷重SALを算出する方法は、上述のものに限られない。
【0033】
回転電機2を風力発電における発電機として利用する場合、出力電力OPは、係る風力発電における、風車の発電効率風速、翼の受風面積、空気密度、および、風車のパワー係数の少なくとも1つを用いて決定されてもよい。例えば、風車の発電効率風速[V]、翼の受風面積[A]、空気密度[ρ]、風車のパワー係数[Cp]から、「出力電力OP=Cp×(1/2)×ρ×A×V3」として、出力電力OPは算出されてもよい。予測装置1は、不図示の出力電力算出部を備えてもよく、係る出力電力算出部が上述の各種変数から出力電力OPを算出し、算出された出力電力OPを、第2平均荷重算出部116が利用してもよい。回転電機2を発電機として利用する風力発電における、風車の発電効率風速、翼の受風面積、空気密度、および、風車のパワー係数の少なくとも1つを用いて、出力電力OPを決定する(算出する)ことで、予測装置1は、以下の効果を奏する。すなわち、予測装置1は、例えば出力電力OPが不明であるような場合であっても、上述の変数(出力電力OPを決定可能な各種パラメータ)から、出力電力OPを精緻に決定することができる。
【0034】
回転電機2を水力発電における発電機として利用する場合、出力電力OPは、係る水力発電における、水車にかかる水量、重力加速度、水頭、および、効率の少なくとも1つを用いて決定されてもよい。例えば、水車にかかる水量[Q]、重力加速度[g]、水頭[h]、効率[ηh]から、「出力電力OP=Q×g×h×ηh」として、出力電力OPは算出されてもよい。風力発電の場合と同様に、不図示の出力電力算出部が、上述の各種変数から、回転電機2を発電機として利用する水力発電の出力電力OPを算出し、算出された出力電力OPを、第2平均荷重算出部116が利用してもよい。
【0035】
回転電機2を波力発電における発電機として利用する場合、出力電力OPは、係る波力発電における、波パワー、波幅、および、効率の少なくとも1つを用いて決定されてもよい。例えば、波パワー[P]、波幅[B]、効率[ηw]から、「出力電力OP=P×B×ηw」として、出力電力OPは算出されてもよい。風力発電の場合と同様に、不図示の出力電力算出部が、上述の各種変数から、回転電機2を発電機として利用する波力発電の出力電力OPを算出し、算出された出力電力OPを、第2平均荷重算出部116が利用してもよい。
【0036】
回転電機2を地熱発電における発電機として利用する場合、出力電力OPは、係る地熱発電における、蒸気流量、入口出口温度、蒸気潜熱、および、効率の少なくとも1つを用いて決定されてもよい。例えば、蒸気流量[Q]、入口出口温度[T]、蒸気潜熱[h]、効率[ηb]から、「出力電力OP=Q×T×h×ηb」として、出力電力OPは算出されてもよい。風力発電の場合と同様に、不図示の出力電力算出部が、上述の各種変数から、回転電機2を発電機として利用する地熱発電の出力電力OPを算出し、算出された出力電力OPを、第2平均荷重算出部116が利用してもよい。
【0037】
予測部118は、第1劣化状態FDSと、第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測し、本実施形態では、第2期間SPにおける軸受22の残寿命を予測する。第2期間SPにおける軸受22の残寿命は、例えば、回転電機2の発電機としての(再)利用開始時点から、軸受22の基本定格寿命(回転数)までの、時間(年数)であってもよい。予測部118は、予測した「第2期間SPにおける軸受22の残寿命」を出力し、例えば、出力装置16(表示装置)に表示する。
【0038】
例えば、予測部118は、第2平均荷重SALから、第2期間SPにおける軸受22の劣化状態である第2劣化状態SDSを推定する。一例を挙げれば、予測部118は、記憶部12を参照して相関式122を取得し、取得した相関式122と、第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)を、第2劣化状態SDSとして算出する。そして、予測部118は、算出した第2劣化状態SDSと、第1劣化状態FDSとから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を、例えば、第2期間SPにおける軸受22の残寿命を、予測してもよい。上述のとおり、第1劣化状態FDSは、例えば、『「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に対する、「第1期間FPにおける軸受22の回転数」の残余率(残寿命率)[%]』である。そこで、予測部118は、係る残余率を、第2劣化状態SDS(例えば、第2期間SPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数))に乗じて、第2期間SPにおける軸受22の残寿命(回転数)を、「第2期間SPにおける軸受22の寿命」として予測してもよい。予測部118は、予測した「第2期間SPにおける軸受22の残寿命(回転数)」を、残寿命(年)に変換してもよい。本実施形態においては、「第2期間SPにおける軸受22の残寿命」を、「第2残寿命SRL」とも称し、第2残寿命SRLは、例えば、第2残寿命SRL(回転数)または第2残寿命SRL(年)であり、「第2期間SPにおける軸受22の寿命」を示す情報の一例である。
【0039】
§3 動作例
図4は、本実施形態に係る予測装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明する処理手順は、「回転電機2の回転軸21を支持する軸受22の寿命を予測する」情報処理方法PMの処理手順の一例である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。更に、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、および追加が可能である。
【0040】
(ステップS110)
ステップS110では、制御部11は、第1平均荷重算出部110として動作し、第1動作状態FASから第1平均荷重FALを算出する。例えば、制御部11は、回転電機2から、第1期間FPにおける回転電機2の動作状態AS(第1動作状態FAS)を取得し、取得した第1動作状態FASから、第1平均荷重FALを算出する。
【0041】
(ステップS120)
ステップS120では、制御部11は、劣化状態推定部112として動作し、ステップS110で算出した第1平均荷重FALから、第1劣化状態FDSを推定する。例えば、制御部11は、第1平均荷重FALと相関式122(軸受22の疲労寿命-荷重相関式)とから、第1劣化状態FDSを推定する。例えば、制御部11は、相関式122と第1平均荷重FALとから算出する「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に対する、「第1期間FPにおける軸受22の(積算)回転数」の残余率(残寿命率)[%]を、第1劣化状態FDSとして推定する。
【0042】
(ステップS130)
ステップS130では、制御部11は、判定部114として動作し、回転電機2の動作状態ASから、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されたかを判定する。制御部11は、外部の装置から、回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された(変更される)ことを示す情報を取得したかを判定してもよい。また、制御部11は、電動機から発電機への回転電機2の用途の変更を示すユーザ操作を受け付けたかを判定してもよい。電動機から発電機への回転電機2の用途の変更を示すユーザ操作は、出力電力OPの入力であってもよいし、出力電力OPを決定可能な変数、パラメータの入力であってもよい。回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更された(上述の情報を取得した、上述のユーザ操作を受け付けた)と判定すると(S130でYes)、制御部11はステップS140に進む。回転電機2の用途が電動機から発電機へと変更されていない(上述の情報を取得していない、上述のユーザ操作を受け付けていない)と判定すると(S130でNo)、制御部11はステップS160に進む。
【0043】
(ステップS140)
ステップS140では、制御部11は、第2平均荷重算出部116として動作し、出力電力OPを用いて第2平均荷重SALを算出する。制御部11は、出力電力OPと、特性情報124(回転電機2のトルク-回転特性)とから、第2平均荷重SALを算出してもよい。
【0044】
(ステップS150)
ステップS150では、制御部11は、予測部118として動作し、ステップS120で推定した第1劣化状態FDSと、ステップS140で算出した第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測する。制御部11は、例えば、第2期間SPにおける軸受22の残寿命(第2残寿命SRL(回転数)または第2残寿命SRL(年))を、予測する。一例を挙げれば、制御部11は、先ず、相関式122と、第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)を算出する。そして、制御部11は、算出した「第2期間SPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に、ステップS120で推定した第1劣化状態FDS(例えば、残余率[%])を乗じて、第2残寿命SRL(回転数)を予測してもよい。制御部11は、予測した第2残寿命SRL(回転数)を、第2残寿命SRL(年)に変換してもよい。
【0045】
(ステップS160)
ステップS160では、制御部11は、劣化状態推定部112として動作し、ステップS120で推定した第1劣化状態FDSから軸受22の寿命を予測し、特に、第1期間FPにおける軸受22の寿命を予測する。例えば、制御部11は、第1平均荷重FALと相関式122とから算出する「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」と、「第1期間FPにおける軸受22の回転数」とから、第1期間FPにおける軸受22の残寿命(回転数)を予測してもよい。制御部11は、予測した「第1期間FPにおける軸受22の残寿命(回転数)」を、「第1期間FPにおける軸受22の残寿命(年)」に変換してもよい。
【0046】
<回転電機の回転軸を支持する軸受の寿命を予測する情報処理の具体例>
図5図6を用いて、情報処理方法PMを、以下の想定ケースに対して適用した場合の具体例を説明する。想定ケースは、(総)走行距離が「150,000[km]」である車両の電動機として利用してきた回転電機2を、出力電力OPが「7.5[kW]」の水力発電(小水力発電)の発電機として再利用しようとする事例である。
【0047】
(第1期間における軸受の劣化状態の推定)
予測装置1は、先ず、回転電機2の動作状態ASを取得し、特に、第1期間FPにおける動作状態AS(つまり、第1動作状態FAS)を取得する。例えば、予測装置1は、動作状態ASとして、回転電機2の「ギア比:8.193」を取得し、また、第1動作状態FASとして、少なくとも、上述の車両の「タイヤ周長(L):1.99[m]」、「走行距離:150,000[km]」を取得する。
【0048】
予測装置1(第1平均荷重算出部110)は、取得した動作状態AS(特に、第1動作状態FAS)から、第1平均荷重FALを算出する。想定ケースにおいて、上述の車両は例えば社用車として用いられてきたものであり、予測装置1は、第1動作状態FASから、「第1平均荷重FAL:620[N]」を算出する。
【0049】
次に、予測装置1(劣化状態推定部112)は、「第1平均荷重FAL:620[N]」から、「第1期間FPにおける疲労寿命(L0.5寿命)」を求める。例えば、予測装置1は、「第1平均荷重FAL:620[N]」と、相関式122(軸受22の疲労寿命-荷重相関式)とから、図5に例示するように、「第1期間FPにおける疲労寿命:3×109[回]」を求める。
【0050】
また、予測装置1は、「走行距離:150,000[km]」の車両の電動機として利用されてきた回転電機2について、軸受22の回転数を算出し、つまり、第1期間FPにおける軸受22の(積算)回転数(第1回転数)を算出する。想定ケースにおいて、回転電機2の「ギア比:8.193」、車両の「タイヤ周長:1.99[m]」であるから、予測装置1は、「150,000×103[m]/1.99[m/回]×8.193=0.6×109[回]」を、第1回転数とする。
【0051】
予測装置1は、「第1期間FPにおける疲労寿命:3×109[回]」と「第1回転数:0.6×109[回]」とから、第1期間FPにおける軸受22の残寿命率(残余率)を、つまり、第1残寿命率を以下のように求める。すなわち、予測装置1は、「100-0.6×109[回]/3×109[回]×100=80[%]」を、第1残寿命率とする。第1残寿命率は、上述の『「第1期間FPにおける軸受22の基本定格寿命(回転数)」に対する、「第1期間FPにおける軸受22の回転数」の残余率(残寿命率)』を言い換えたものである。
【0052】
(第2期間における軸受の寿命の予測)
予測装置1は、水力発電(小水力発電)の発電機として再利用される回転電機2の出力電力OP(上述のとおり、「7.5kW」)を取得する。予測装置1(第2平均荷重算出部116)は、出力電力OPを用いて第2平均荷重SALを算出し、想定ケースにおいては、「第2平均荷重SAL:152[N]」を算出する。予測装置1は、出力電力OPと特性情報124とから、「第2平均荷重SAL:152[N]」を算出してもよい。予測装置1は、併せて、第2期間SPにおける回転電機2の回転数(平均回転数)として「208[rpm]」を取得してもよい(算出してもよい)。
【0053】
予測装置1(予測部118)は、「第2平均荷重SAL:152[N]」から、「第2期間SPにおける疲労寿命(L0.5寿命)」を求める。例えば、予測装置1は、「第2平均荷重SAL:152[N]」と、相関式122とから、図6に例示するように、「第2期間SPにおける疲労寿命:19×109[回]」を求める。
【0054】
予測装置1は、第2期間SPにおける疲労寿命に、第1残寿命率を掛けて、第2期間SPにおける軸受22の残寿命を、つまり、第2残寿命SRL(回転数)を試算する(算出する)。上述のとおり、「第2期間SPにおける疲労寿命:19×109[回]」であり、「第1残寿命率:80[%]」であるから、予測装置1は、「19×109[回]×80[%]=15×109[回]」を、第2残寿命SRL(回転数)とする。
【0055】
予測装置1は、第2残寿命SRL(回転数)を、年数(RUL、残存耐用年数)に変換してもよく、つまり、第2残寿命SRL(年)に変換してもよい。想定ケースにおいては、「第2期間SPにおける回転電機2の平均回転数:208[rpm]」であり、「ギア比:8.193」である。そこで、予測装置1は、「15×109[回]/(208[rpm]×8.193)/60[min]/24[h]/365[day]=17[年]」を、第2残寿命[年]とする。
【0056】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係る予測装置1(軸受寿命予測装置)は、回転電機2の回転軸21を支持する軸受の寿命を予測する軸受寿命予測装置である。予測装置1は、第1平均荷重算出部110、劣化状態推定部112、第2平均荷重算出部116、および、予測部118を備える。第1平均荷重算出部110は、第1期間FPにおける回転電機2の動作状態AS(つまり、第1動作状態FAS)から、第1期間FPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重AL(つまり、第1平均荷重FAL)を算出する。第1期間FPは、回転電機2が電動機として利用される期間である。劣化状態推定部112は、第1平均荷重FALから、第1期間FPにおける軸受22の劣化状態である第1劣化状態FDSを推定する。第2平均荷重算出部116は、第2期間SPにおける回転電機2の出力電力OPを用いて、第2期間SPにおいて軸受22に印加される動等価荷重の平均荷重AL(つまり、第2平均荷重SAL)を算出する。第2期間SPは、回転電機2が発電機として利用される期間である。予測部118は、第1劣化状態FDSと第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測し、例えば、第2期間SPにおける軸受22の残寿命(第2残寿命SRL(回転数)または第2残寿命SRL(年))を予測する。
【0057】
本実施形態に係る情報処理方法PM(情報処理方法)は、回転電機2の回転軸21を支持する軸受22の寿命を予測する処理をプロセッサ(例えば、予測装置1のCPU)に実行させる情報処理方法である。係るプロセッサは、上述のステップS110、S120、S140、S150を実行する。すなわち、ステップS110においてプロセッサは、第1動作状態FASから第1平均荷重FALを算出する。ステップS120においてプロセッサは、第1平均荷重FALから、第1劣化状態FDSを推定する。ステップS140においてプロセッサは、発電機として利用される回転電機2の出力電力OPを用いて、第2平均荷重SALを算出する。ステップS150においてプロセッサは、第1劣化状態FDSと、第2平均荷重SALとから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測する。
【0058】
当該構成によれば、予測装置1(情報処理方法PM)は、第1期間FPにおける軸受22の劣化(第1劣化状態FDS)と、その後の第2期間SPにおける軸受22の劣化とから、第2期間SPにおける軸受22の寿命を予測する。特に、予測装置1は、第1期間FPにおける軸受22の劣化(第1劣化状態FDS)については、第1期間FPにおける回転電機2の動作状態AS(第1動作状態FAS)から、特に、第1動作状態FASに対応する第1平均荷重FALから、推定する。また、予測装置1は、第2期間SPにおける軸受22の劣化については、第2期間SPにおける回転電機2の出力電力OPから、特に、出力電力OPに対応する第2平均荷重SALから、予測する。そのため、予測装置1は、第1期間FPにおける軸受22の劣化を、第1動作状態FASを用いて高精度に推定することができ、また、第2期間SPにおける軸受22の劣化を、出力電力OPを用いて高精度に予測することができる。そして、予測装置1は、それぞれ高精度に推定(予測)した、「第1期間FPにおける軸受22の劣化」および「第2期間SPにおける軸受22の劣化」から、第2期間SPにおける軸受22の寿命を精緻に予測することができる。したがって、予測装置1は、電動機として利用される回転電機2を発電機として再利用する場合にも、軸受22の寿命を精緻に予測することができる。予測装置1は、第2期間SPにおける軸受22の寿命を、例えば、第2期間SPにおける軸受22の残寿命(第2残寿命SRL(回転数)または第2残寿命SRL(年))を、予測する。そのため、予測装置1は、回転電機2を発電機として再利用する場合の軸受22(回転電機2)の残寿命に係る情報等を、回転電機2の(再)利用者((再)利用予定者)等に提供することができる。利用者は、予測装置1が提供する上述の情報を利用して、回転電機2について、発電機としての再利用の適否の判断、発電機としての適切な評価(価格など)、好適なリユースアプリケーションの選定(例えば、設置位置、発電方法など)を行なうことができる。
【0059】
図7は、予測装置1(情報処理方法PM)が、第1期間FPでは第1平均荷重FALから第1劣化状態FDSを推定し、第2期間SPでは第2平均荷重SALから第2劣化状態SDSを推定する例を示す。図7に示す例では、時刻t=Tにおいて、回転電機2の用途が変更されている。すなわち、第1期間FPでは回転電機2を「電動車両を駆動するための電動機」として利用し、第2期間SPでは回転電機2を「再生可能エネルギー発電のための発電機」として利用するように、回転電機2の用途が時刻t=Tにおいて変更されている。予測装置1(情報処理方法PM)は、係る用途の変更を、回転電機2の動作状態ASから判定してもよく、言い換えれば、回転電機2の動作状態ASにより、回転電機2の用途の変更を検知してもよい。そして、予測装置1(情報処理方法PM)は、第1期間FPでは第1平均荷重FALから第1劣化状態FDSを推定し、第2期間SPでは第2平均荷重SALから第2劣化状態SDSを推定している。例えば、第1期間FPについて、予測装置1は、第1期間FPにおける回転電機2の動作状態AS(第1動作状態FAS)に対応する第1平均荷重FALから、第1劣化状態FDSを推定する。また、第2期間SPについて、予測装置1は、第2平均荷重SALから、第2劣化状態SDSを推定(予測)する。本実施形態においては、第2平均荷重SALを、第2期間SPにおける回転電機2の出力電力OPから算出する例について説明してきた。ただし、予測装置1(情報処理方法PM)は、第2平均荷重SALを、第2期間SPにおける回転電機2の動作状態ASから算出してもよい。例えば、回転電機2が既に発電機として利用されている場合には、軸受寿命予測システムSysは、係る発電機としての利用時における回転電機2の動作状態ASを検知し、取得してもよい。そして、予測装置1(情報処理方法PM)は、発電機としての利用時における回転電機2の動作状態AS(例えば、検出値、測定値)から、つまり、第2期間SPにおける回転電機2の動作状態ASから、第2平均荷重SALを算出してもよい。
【0060】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…予測装置(軸受寿命予測装置)、2…回転電機、21…回転軸、22…軸受、
110…第1平均荷重算出部、112…劣化状態推定部、116…第2平均荷重算出部、
118…予測部、AL…平均荷重、AS…動作状態、FDS…第1劣化状態、
FP…第1期間、OP…出力電力、SP…第2期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7