IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三顧股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図1
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図2
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図3
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図4
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図5
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図6
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図7
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図8
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図9
  • 特開-プロセスパラメータの計算方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011052
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】プロセスパラメータの計算方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 5/04 20230101AFI20250116BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250116BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20250116BHJP
【FI】
G06N5/04
G06N20/00
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109315
(22)【出願日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】63/525,786
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524257993
【氏名又は名称】三顧股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】楊▲いん▼臻
(72)【発明者】
【氏名】孫子龍
(72)【発明者】
【氏名】林永松
(72)【発明者】
【氏名】陳宗基
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB40
4B065BC03
4B065BC07
4B065CA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最適化技術をベースとしたアルゴリズム及び訓練済みの予測モデルを応用して未確認プロセスパラメータを逆推定する方法を提供する。
【解決手段】方法は、訓練済み予測モデルを特定待ちプロセスパラメータの関数と見なして、最適化モデルを構築する。特定待ちプロセスパラメータの各々又はそれらの間で満たすべき制約条件の制約を受け、且つ、制約付き最適化問題の解を求めるために、ペナルティ関数及びバリア関数を含む方法を使用して、当該制約付き最適化問題を制約なし最適化問題に変換する。最適化問題ついては、訓練済み予測モデルを訓練した際のデータセットから、目標結果に合致する複数のサンプルを見つけてアンカーとし、多次元の実行可能解空間を形成し、且つ、この実行可能解空間内に初期解を設定或いは作成してから、異なる数値解析法で方向及び刻み幅を見つけ、優良な実行可能解を使用可能な入力パラメータとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられるプロセスパラメータの計算方法であって、前記プロセスパラメータは、複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含み、前記プロセスパラメータの計算方法は、
訓練済み予測モデルを提供し、前記訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットを機械学習することで得られ、前記データセットは複数のサンプルを含み、且つ、各前記サンプルは複数のサンプルパラメータを含み、前記訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、前記入力パラメータに対応する予測結果を生成するために用いられるステップと、
前記訓練済み予測モデルの前記予測結果に対応する目標結果を設定するとともに、前記入力パラメータのうちの前記確認済み入力パラメータを提供するステップと、
前記データセット内の各前記サンプルを前記訓練済み予測モデルに入力することで生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを照合し、前記予測結果が前記目標結果と一致する前記サンプルを複数のアンカーサンプルとして多次元部分空間を形成し、前記多次元部分空間内で初期サンプルを特定するステップと、
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの方向を取得するステップと、
前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って刻み幅を増加させ、前記確認済み入力パラメータと、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記訓練済み予測モデルに入力して、生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを確認するステップと、
前記予測結果が前記目標結果と一致する場合には、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記未確認入力パラメータとするステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルを特定するステップは、更に、
前記多次元部分空間内の少なくとも2つの前記アンカーサンプル間の距離の中点を前記初期サンプルとするステップ、を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項3】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルを特定するステップは、更に、
前記多次元部分空間内の少なくとも2つの前記アンカーサンプルの線形結合を前記初期サンプルとするステップ、を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項4】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、更に、
数値解析法により、各前記アンカーサンプルに沿う前記初期サンプルの第2方向導関数を前記初期サンプルの前記方向として計算するステップ、を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項5】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、更に、
前記初期サンプルを原点に設定し、数値解析法により、各前記アンカーサンプルに向かう前記原点の第3方向導関数を前記初期サンプルの前記方向として計算するステップ、を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項6】
前記訓練済み予測モデルは目的関数で表され、且つ、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、更に、
数値解析法により、各前記アンカーサンプルに向かう前記初期サンプルの距離の変化量に基づいて前記目的関数の関数値の変化量を計算することで、各前記アンカーサンプルに向かう前記初期サンプルの割線方向導関数を取得するステップ、を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項7】
前記訓練済み予測モデルは目的関数で表され、且つ、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、更に、
各前記アンカーサンプルの方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を順に増加及び調整するステップと、
各前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加及び調整したあと、前記目的関数の関数値が前記目標結果に更に近付くか否かを順に確認するステップと、
いずれかの前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くことが確認された場合には、前記方向導関数において前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させるステップと、
いずれかの前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くことはないことが確認された場合には、別の前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くか否かを再び確認するステップ、
を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項8】
前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を増加させるステップは、更に、
前記刻み幅の初期サイズを設定し、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を前記初期サイズ分増加させたあと、前記訓練済み予測モデルに入力するとともに、前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付くか否かを確認するステップと、
前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付く場合には、前記初期サイズに前記刻み幅を決定するステップと、
前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付かない場合には、前記予測結果が前記目標結果に近付くまで、引き続き、前記刻み幅のサイズを調整するとともに、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を前記サイズ分増加させたあと、前記訓練済み予測モデルに入力して、最終的な前記サイズに前記刻み幅を決定するステップ、
を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項9】
前記訓練済み予測モデルは、特定待ちプロセスパラメータの関数、目的関数及び少なくとも1つの制約条件を含み、前記目的関数は、前記特定待ちプロセスパラメータの関数の出力値と前記目標結果との差分値を最小化するものであり、前記特定待ちプロセスパラメータの関数、前記目的関数、前記少なくとも1つの制約条件及び前記予測結果に基づいて制約付き最適化問題がモデル化され、前記プロセスパラメータの計算方法は、前記最適化問題について解を求めることで、前記未確認入力パラメータを取得する請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項10】
更に、前記プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たすよう制約すべく、バリア関数を前記目的関数に加えるステップ、を含む請求項9に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項11】
更に、前記プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たすよう制約すべく、ペナルティ関数を前記目的関数に加えるステップ、を含む請求項9に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項12】
前記データセットは、更に、プロセスデータセットを含み、前記プロセスデータセットは複数のプロセスサンプルを含み、且つ、各前記プロセスサンプルの前記サンプルパラメータは入手源パラメータ及び培養パラメータを含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項13】
各前記プロセスサンプルの前記入手源パラメータは、更に、各前記プロセスサンプルの入手源の属性データを含み、各前記プロセスサンプルの前記培養パラメータは、更に、各前記プロセスサンプルにおけるヒト、機器、材料、方法、環境のパラメータを含む請求項12に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項14】
前記訓練済み予測モデルは、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Networks,ANN)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks,CNNs)及び回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Networks,RNNs)のうちのいずれかによって前記データセットを機械学習することで得られる請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項15】
更に、
前記予測結果が前記目標結果と一致しない場合には、前記確認済み入力パラメータ及び前記サンプルの前記サンプルパラメータを再び照合して、前記サンプル内の第2サンプルを選択するステップと、
数値解析法により、前記訓練済み予測モデルの目的関数における前記第2サンプルの勾配を計算するステップと、
前記第2サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記勾配の反対方向に沿って前記刻み幅を増加させ、前記刻み幅を増加させた前記全てのサンプルパラメータを前記訓練済み予測モデルに入力して、生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを確認するステップと、
前記予測結果が前記目標結果と一致する場合には、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記未確認入力パラメータとするステップ、
を含む請求項1に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項16】
プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられるプロセスパラメータの計算方法であって、前記プロセスパラメータは複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含み、前記プロセスパラメータの計算方法は、
複数の訓練済み予測モデルを提供し、前記訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットをそれぞれ機械学習することで得られ、前記データセットは複数のサンプルを含み、且つ、各前記サンプルは複数のサンプルパラメータを含み、前記訓練済みモデルは複数の目的関数にそれぞれ対応しており、前記訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、前記入力パラメータに対応する複数の予測結果を生成するために用いられ、前記予測結果は異なる目標結果のタイプにそれぞれ属するステップと、
前記訓練済み予測モデルの前記目的関数を組み合わせて複合目的関数を形成し、前記複合目的関数に前記入力パラメータを入力すると前記予測結果が生成されるステップと、
前記訓練済み予測モデルの前記予測結果に対応する複数の目標結果を設定するとともに、前記入力パラメータのうちの前記確認済み入力パラメータを提供するステップと、
前記データセット内の各前記サンプルを前記訓練済み予測モデルに入力することで生成される前記予測結果が前記目標結果とそれぞれ一致するか否かを照合し、前記予測結果が前記目標結果と一致する前記サンプルを複数のアンカーサンプルとして多次元部分空間を形成し、前記多次元部分空間内で初期サンプルを特定するステップと、
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの方向を取得するステップと、
前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って刻み幅を増加させ、前記確認済み入力パラメータと、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記複合目的関数に入力して、生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを確認するステップと、
前記予測結果が前記目標結果と一致する場合には、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記未確認入力パラメータとするステップ、
を含む方法。
【請求項17】
更に、前記プロセスパラメータが不等式の制約条件を満たすよう制約すべく、バリア関数を前記複合目的関数に加えるステップ、を含む請求項16に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【請求項18】
更に、前記プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たすよう制約すべく、ペナルティ関数を前記複合目的関数に加えるステップ、を含む請求項16に記載のプロセスパラメータの計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスパラメータの計算方法に関し、特に、最適化技術をベースとしたアルゴリズム及び訓練済みの予測モデルを応用して未確認プロセスパラメータを逆推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用工学技術の進歩に伴って、現在、疾病の臨床治療における再生医療の応用はますます多様化している。再生医療とは、主として、損傷した組織や器官を細胞の再生能力を利用して修復する医療技術であり、応用範囲が非常に広い。また、組織工学や分子生物学等の医療技術を組み合わせることで、例えば、糖尿病、神経疾患、心血管疾患及び癌等のかつては治療困難とされていた疾病の改善及び治療が可能になることが期待されている。現在、再生医療は、主に、器官の修復、免疫細胞治療及び幹細胞療法に応用されている。また、再生医療における細胞治療の研究及び応用は各界からますます注目を浴びている。細胞治療とは、人体の細胞を体外で培養又は加工する手順を経たあと、それらの細胞を個々の体内に移植して使用するものである。
【0003】
近年、多くの国の政府が細胞治療の応用を徐々に解禁していることから、国内外の多くの学者が相次いで細胞治療の研究に参入している。その結果、例えば、自家線維芽細胞による皮膚欠損の治療、自家軟骨細胞による膝関節軟骨欠損の治療、自家骨髄間葉系幹細胞による脊髄損傷の治療など、多くの疾病の治療において、細胞治療は著しい研究の進歩を遂げている。また、細胞治療の製品の品質は、治療の安全性及び有効性に直接的な影響を及ぼす。そのため、細胞培養プロセスでは、細胞の成長状態を厳格にコントロールするとともに、細胞成長の培養パラメータ及び環境パラメータを即時にモニタリングして、培養過程における細胞の汚染又は品質の悪化を回避する必要がある。また、従来の研究より、異なる事案間で細胞の多様性(variability)は極めて高くなるため、異なる事案に適用される細胞製剤の最適な培養パラメータ及び環境パラメータは完全には同じとならないことが分かっている。これより、細胞製剤ごとに、プロセス内で各プロセスパラメータを設計及び調整して所期の結果を達成する必要があるため、固定のプロセスパラメータで各細胞製剤の生産を行うことはできない。そのほか、プロセスの複雑性及び相関性に起因して、従来技術では、通常、単一のパラメータのみを最適化可能であり、プロセス全体における各パラメータ間の相互の総合的な影響については軽視されている。
【0004】
従来技術では、機械学習によって大量のサンプルのデータセットについて訓練を行い、予測モデルを取得する。この予測モデルは、各種プロセスパラメータを入力して細胞培養の予測結果を生成することが可能なため、ユーザは、設計する細胞培養プロセスの効果を事前にシミュレーションできる。しかしながら、機械学習で訓練される上記の予測モデルでは、ユーザの所期の結果から細胞培養プロセスのプロセスパラメータを逆推定することはできない。換言すると、細胞培養プロセスを設計する際に、ユーザは、異なるプロセスパラメータを大量に試す必要があるため、細胞培養プロセスの設計及び改良に大量の労力と資源が費やされる。また、細胞プロセスのほか、その他の分野で機械学習により得られる予測モデルについても、入力パラメータを逆推定できないとの問題が存在する。
【0005】
一般的に、機械学習で訓練して得られる予測モデルは、関数(f(x))で表すことができる。また、予測モデルの所期の結果から適切な入力パラメータを逆推定する方法は、当該関数の最適化演算と見なすことができる。この最適化演算には、当該関数の導関数が用いられることが多い。つまり、当該関数を微分することが多い。しかしながら、通常、機械学習で訓練して得られる予測モデルの目的関数は非シンボリック(non-symbolic)であり、微分できない場合も多く、不連続の場合すらある。よって、数値解析法では、この関数について導関数を計算することが難しい。換言すれば、予測モデルの目的関数を用いて入力パラメータを直接逆推定することは難しい。
【0006】
そこで、プロセスにおける複数のパラメータを特定して最適化するために、所期の結果に合致するプロセスのプロセスパラメータを逆推定可能であり、より総合的且つ正確な方法を研究開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、本発明は、以上で述べた従来の課題を解決するために、プロセスパラメータの計算方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられるプロセスパラメータの計算方法を提供する。前記プロセスパラメータは、複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含む。前記プロセスパラメータの計算方法は、訓練済み予測モデルを提供し、前記訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットを機械学習することで得られ、前記データセットは複数のサンプルを含み、且つ、各前記サンプルは複数のサンプルパラメータを含み、前記訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、前記入力パラメータに対応する予測結果を生成するために用いられるステップと、前記訓練済み予測モデルの前記予測結果に対応する目標結果を設定するとともに、前記入力パラメータのうちの前記確認済み入力パラメータを提供するステップと、前記データセット内の各前記サンプルを前記訓練済み予測モデルに入力することで生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを照合し、前記予測結果が前記目標結果と一致する前記サンプルを複数のアンカーサンプルとして多次元部分空間を形成し、前記多次元部分空間内で初期サンプルを特定するステップと、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの方向を取得するステップと、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って刻み幅を増加させ、前記確認済み入力パラメータと、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記訓練済み予測モデルに入力して、生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを確認するステップと、前記予測結果が前記目標結果と一致する場合には、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記未確認入力パラメータとするステップ、を含む。
【0009】
多次元部分空間内で前記初期サンプルを特定するステップは、前記多次元部分空間内の少なくとも2つの前記アンカーサンプル間の距離の中点を前記初期サンプルとするステップ、を含む。
【0010】
多次元部分空間内で前記初期サンプルを特定するステップは、前記多次元部分空間内の少なくとも2つの前記アンカーサンプルの線形結合を前記初期サンプルとするステップ、を含む。
【0011】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、前記数値解析法により、各前記アンカーサンプルに沿う前記初期サンプルの第2方向導関数を前記初期サンプルの前記方向として計算するステップ、を含む。
【0012】
前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、前記初期サンプルを原点に設定し、前記数値解析法により、各前記アンカーサンプルに向かう前記原点の第3方向導関数を前記初期サンプルの前記方向として計算するステップ、を含む。
【0013】
訓練済み予測モデルは目的関数で表される。且つ、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、前記数値解析法により、各前記アンカーサンプルに向かう前記初期サンプルの距離の変化量に基づいて前記目的関数の関数値の変化量を計算することで、各前記アンカーサンプルに向かう前記初期サンプルの割線方向導関数を取得するステップ、を含む。
【0014】
前記訓練済み予測モデルは目的関数で表される。且つ、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの前記方向を取得するステップは、各前記アンカーサンプルの方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を順に増加及び調整するステップと、各前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加及び調整したあと、前記目的関数の関数値が前記目標結果に更に近付くか否かを順に確認するステップと、いずれかの前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くことが確認された場合には、前記方向導関数において前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させるステップと、いずれかの前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くことはないことが確認された場合には、別の前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の前記関数値が前記目標結果に更に近付くか否かを再び確認するステップ、を含む。
【0015】
前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を増加させるステップは、更に、前記刻み幅の初期サイズを設定し、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を前記初期サイズ分増加させたあと、前記訓練済み予測モデルに入力するとともに、前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付くか否かを確認するステップと、前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付く場合には、前記初期サイズに前記刻み幅を決定するステップと、前記訓練済み予測モデルから出力される前記予測結果が前記目標結果に近付かない場合には、前記予測結果が前記目標結果に近付くまで、引き続き、前記刻み幅のサイズを調整するとともに、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って前記刻み幅を前記サイズ分増加させたあと、前記訓練済み予測モデルに入力して、最終的な前記サイズに前記刻み幅を決定するステップ、を含む。
【0016】
前記訓練済み予測モデルは、特定待ちプロセスパラメータの関数、目的関数及び少なくとも1つの制約条件を含む。前記目的関数は、前記特定待ちプロセスパラメータの関数の出力値と前記目標結果との差分値を最小化するものであり、前記特定待ちプロセスパラメータの関数、前記目的関数、前記少なくとも1つの制約条件及び前記予測結果に基づいて制約付き最適化問題がモデル化される。前記プロセスパラメータの計算方法は、前記最適化問題について解を求めることで、前記未確認入力パラメータを取得する。
【0017】
本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、前記プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たすよう制約すべく、バリア関数を前記目的関数に加えるステップ、を含む。
【0018】
本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、前記プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たすよう制約すべく、ペナルティ関数を前記目的関数に加えるステップ、を含む。
【0019】
前記データセットは、更に、プロセスデータセットを含む。前記プロセスデータセットは複数のプロセスサンプルを含む。且つ、各前記プロセスサンプルの前記サンプルパラメータは入手源パラメータ及び培養パラメータを含む。
【0020】
各前記プロセスサンプルの前記入手源パラメータは、更に、各前記プロセスサンプルの入手源の属性データを含む。各前記プロセスサンプルの前記培養パラメータは、更に、各前記プロセスサンプルにおけるヒト、機器、材料、方法、環境のパラメータを含む。
【0021】
前記訓練済み予測モデルは、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Networks,ANN)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks,CNNs)及び回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Networks,RNNs)のうちのいずれかによって前記データセットを機械学習することで得られる。
【0022】
本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、予測結果が目標結果と一致しない場合には、確認済み入力パラメータ及びサンプルのサンプルパラメータを再び照合して、サンプル内の第2サンプルを選択するステップと、前記数値解析法により、前記訓練済み予測モデルの目的関数における前記第2サンプルの勾配を計算するステップと、第2サンプルのサンプルパラメータについて、勾配の反対方向に沿って刻み幅を増加させ、刻み幅を増加させた全てのサンプルパラメータを訓練済み予測モデルに入力して、生成される予測結果が目標結果と一致するか否かを確認するステップと、予測結果が目標結果と一致する場合には、確認済み入力パラメータに対応しない刻み幅を増加させたサンプルパラメータを未確認入力パラメータとするステップ、を含む。
【0023】
本発明は、別の局面において、プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられるプロセスパラメータの計算方法を提供する。前記プロセスパラメータは複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含む。前記プロセスパラメータの計算方法は、複数の訓練済み予測モデルを提供し、前記訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットをそれぞれ機械学習することで得られ、前記データセットは複数のサンプルを含み、且つ、各前記サンプルは複数のサンプルパラメータを含み、前記訓練済みモデルは複数の目的関数にそれぞれ対応しており、前記訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、前記入力パラメータに対応する複数の予測結果を生成するために用いられ、前記予測結果は異なる目標結果のタイプにそれぞれ属するステップと、前記訓練済み予測モデルの前記目的関数を組み合わせて複合目的関数を形成し、前記複合目的関数に前記入力パラメータを入力すると前記予測結果が生成されるステップと、前記訓練済み予測モデルの前記予測結果に対応する複数の目標結果を設定するとともに、前記入力パラメータのうちの前記確認済み入力パラメータを提供するステップと、前記データセット内の各前記サンプルを前記訓練済み予測モデルに入力することで生成される前記予測結果が前記目標結果とそれぞれ一致するか否かを照合し、前記予測結果が前記目標結果と一致する前記サンプルを複数のアンカーサンプルとして多次元部分空間を形成し、前記多次元部分空間内で初期サンプルを特定するステップと、前記多次元部分空間内で前記初期サンプルの方向を取得するステップと、前記初期サンプルの前記サンプルパラメータについて、前記方向に沿って刻み幅を増加させ、前記確認済み入力パラメータと、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記複合目的関数に入力して、生成される前記予測結果が前記目標結果と一致するか否かを確認するステップと、前記予測結果が前記目標結果と一致する場合には、前記確認済み入力パラメータに対応しない前記刻み幅を増加させた前記サンプルパラメータを前記未確認入力パラメータとするステップ、を含む。
【0024】
本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、前記プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たすよう制約すべく、バリア関数を前記複合目的関数に加えるステップ、を含む。
【0025】
本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、前記プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たすよう制約すべく、ペナルティ関数を前記複合目的関数に加えるステップ、を含む。
【発明の効果】
【0026】
総括すると、本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、訓練済み予測モデルを特定待ちプロセスパラメータの関数と見なして、最適化モデルを構築する。目的関数は、前記関数値と目標結果との差分値を最小化するものであるとともに、特定待ちプロセスパラメータの各々又はそれらの間で満たすべき制約条件の制約を受ける。且つ、上記の制約付き最適化問題の解を求めるために、ペナルティ関数及びバリア関数を含む方法を使用して、当該制約付き最適化問題を制約なし最適化問題に変換することで、解をより求めやすくなる。この最適化問題については、まず、訓練済み予測モデルを訓練した際のデータセットから、目標結果に合致する複数のサンプルを見つけてアンカーとし、多次元の実行可能解空間を形成する。且つ、この実行可能解空間内に初期解を設定或いは作成してから、異なる数値解析法で方向及び刻み幅を見つけることで、更に優良な実行可能解を見つける。そして、この優良な実行可能解が使用可能な入力パラメータとなる。そのほか、本発明におけるプロセスの効果の予測及び最適化方法は、細胞プロセス分野への応用のほか、その他何らかの訓練済みの機械学習モデルに応用して、プロセスパラメータ及び未確認入力パラメータの逆推定に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。
図2図2は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法の更なるステップのフローチャートである。
図3図3は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法の更なるステップのフローチャートである。
図4図4は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。
図5図5は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。
図6図6は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。
図7図7は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。
図8図8は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。
図9図9は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。
図10図10は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の利点、精神及び特徴をより容易且つ明確に理解可能となるよう、続いて、具体的実施例を用いるとともに、図面を参照して、詳述及び検討する。注意すべき点として、これらの具体的実施例は本発明の代表的な具体的実施例にすぎず、例示する特定の方法、装置、条件、材質等は本発明又は対応する具体的実施例を限定するものではない。且つ、図中の各構成要素は、それらの相対的位置を表すためにのみ用いられ、実際の比率に基づき記載されてもいない。また、本発明のステップ番号は異なるステップを区別するためのものにすぎず、ステップの順序を表してはいない。以上について予め説明しておく。
【0029】
図1を参照する。図1は、本発明の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法は、プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられる。プロセスパラメータは、複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含む。確認済み入力パラメータは、ユーザが操作時に確認済みであるか、実際に実行済みの入力パラメータである。また、未確認入力パラメータは、ユーザがまだ確認していないか、実行していない入力パラメータである。プロセスパラメータの計算方法は、以下を含む。
【0030】
ステップS10:訓練済み予測モデルを提供する。訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットを機械学習することで得られる。データセットは複数のサンプルを含む。また、各サンプルは複数のサンプルパラメータを含む。訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、入力パラメータに対応する予測結果を生成するために用いられる。
【0031】
ステップS11:訓練済み予測モデルの予測結果に対応する目標結果を設定するとともに、入力パラメータのうちの確認済み入力パラメータを提供する。
【0032】
ステップS12:データセット内の各サンプルを訓練済み予測モデルに入力することで生成される予測結果が目標結果と一致するか否かを照合する。そして、予測結果が目標結果と一致するサンプルを複数のアンカーサンプル(anchor sample)として多次元部分空間を形成し、多次元部分空間内で初期サンプルを特定する。
【0033】
ステップS13:多次元部分空間内で初期サンプルの方向を取得する。
【0034】
ステップS14:初期サンプルのサンプルパラメータについて、前記方向に沿って刻み幅を増加させる。そして、確認済み入力パラメータと、確認済み入力パラメータに対応しない刻み幅を増加させたその他のサンプルパラメータを訓練済み予測モデルに入力して、生成される予測結果が目標結果と一致するか否かを確認する。
【0035】
ステップS15:予測結果が目標結果と一致する場合には、確認済み入力パラメータに対応しない刻み幅を増加させたサンプルパラメータを未確認入力パラメータとする。
【0036】
本具体的実施例におけるステップS10の訓練済み予測モデルは、オープンプラットフォームで得られる機械学習の訓練を完了したいずれかのモデルであってもよいし、ユーザ自身で機械学習の訓練を行った予測モデルであってもよい。また、本具体的実施例におけるデータセットは、機械学習の訓練、テスト及び検証に使用可能な何らかのデータで形成される集合としてもよい。実際の応用において、本具体的実施例のプロセスパラメータの計算方法は、その他何らかの訓練済みの機械学習モデルに応用して、未確認入力パラメータの逆推定に用いることも可能である。また、本具体的実施例における訓練済み予測モデルは、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Networks,ANN)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks,CNNs)、回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Networks,RNNs)、或いは、その他何らかの機械学習アルゴリズム又はニューラルネットワークアルゴリズムによってデータセットを機械学習することで得られる。機械学習又はニューラルネットワークアルゴリズムの選択は、ユーザのニーズに応じて行われる。
【0037】
実用において、細胞培養プロセスでは、多くの入力パラメータが同時に存在する場合があり、その中には特定済み或いは実行済みのパラメータも含まれる。本発明のシステム及び方法は、実行されていないパラメータを逆推定して、それを実行することで所期の目標結果を取得するために使用可能である。例えば、ユーザが21日間の細胞培養プロセスを実施しようとしており、生成しようする細胞製剤が95%の細胞生存率を有さねばならず、且つ、ユーザがすでに7日間のプロセスを実施済みである(つまり、確認済み入力パラメータをすでに有している)が、その後の8~21日目のプロセスについて、実施やプロセスパラメータ(つまり、未確認入力パラメータ)の調整をどのように行えば予め設定した21日目に所望の目標結果を得られるのかを確認していない場合がある。そのため、ステップS11は、入力パラメータの逆推定条件を設定するステップとなっている。
【0038】
ステップS12では、訓練済み予測モデルの訓練に用いたデータセットのうち、特定の複数のサンプルが、ユーザの設定する目標結果(例えば、上述した細胞製剤が95%の細胞生存率を有さねばならない)と一致する。よって、これらのサンプルは、入力パラメータの逆推定において相当の参考価値を有しており、アンカーサンプルとして多次元部分空間を形成するために使用可能である。この多次元部分空間内の点(入力パラメータのベクトルを表す)を訓練済み予測モデルの目的関数に入力した場合には、いずれも目標結果と一致する関数値が得られる。そのため、この多次元部分空間は、訓練済み予測モデルの関数の実行可能解空間となり得る。しかしながら、実行可能解空間内の点の関数値は目標結果と一致するにすぎず、最適な関数値ではない。そこで、ステップS12では、更に、実行可能解を見つけるための初期点となる点を実行可能解空間内で特定する必要がある。即ち、初期サンプルを特定する必要がある。
【0039】
ステップS13及びステップS14で述べたように、初期サンプルを特定したあとは、更に、この初期サンプルから、少なくとも1つの方向及び少なくとも1つ分の刻み幅で、実行可能解に向かって進行させる必要がある。ステップS13で方向を決定したあとは、ステップS14で述べたように、当該方向に沿って少なくとも刻み幅1つ分進行させるとともに、刻み幅を増加させたサンプルパラメータのうち、確認済み入力パラメータに対応しない部分を一緒に訓練済み予測モデルに入力して、出力される関数値が目標結果と一致するか否かを確認する。注意すべき点として、上述した訓練済み予測モデルに入力される入力パラメータは、確認済み入力パラメータ及び実行可能解空間内の点の一部のパラメータである。即ち、組み合わせたあとの入力パラメータである。
【0040】
上記の組み合わせたあとの入力パラメータを訓練済み予測モデルに入力して得られる関数値が目標結果と一致する場合、実行可能解空間内の前記点は実行可能解となる。よって、ステップS15で述べたように、当該点の一部のパラメータ(つまり、確認済み入力パラメータに対応しないその他のパラメータ)を未確認入力パラメータとすることができる。例えば、21日間の細胞培養プロセスのうち、最初の7日間のプロセスについては特定済み(確認済み入力パラメータ)である場合、ステップS15で特定される未確認入力パラメータは、前記点の8~21日目の入力パラメータである。
【0041】
上述した具体的実施例では、ステップS12において多次元部分空間内で初期サンプルを特定するが、本発明の方法は、この初期サンプルを特定するステップにおいて、更に、複数の方法を含む。ここで、図2及び図3を参照する。図2及び図3は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法の更なるステップのフローチャートである。図2に示すように、本具体的実施例は、ステップS12が更にステップS120及びサブステップS122を含む点で上記の具体的実施例と異なっている。ステップS120は、上記ステップS12におけるデータセットから複数のアンカーサンプルを見つけて多次元部分空間を形成するステップである。また、ステップS122では、多次元部分空間内の少なくとも2つのアンカーサンプル間の距離の中点を初期サンプルとする。そのほか、図3に示すように、本具体的実施例は、ステップS12が更にステップS120及びステップS124を含む点で異なっている。ステップS124では、多次元部分空間内の少なくとも2つのアンカーサンプル間の線形結合を初期サンプルとする。上記の具体的実施例は、実行可能解空間内で初期点を特定するための複数の方法のうちの2つにすぎない。実用において、本発明は、初期点又は初期サンプルを特定可能な何らかの方法をいずれも使用可能である。また、図2及び図3の具体的実施例において、上述した具体的実施例に対応するステップは同じであるため、ここでは改めて詳述しない。
【0042】
初期点を特定したあとは、初期点からの進行方向を決定する必要がある。ここで、図4及び図5を参照する。図4及び図5は、本発明の複数の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。図4に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、プロセスパラメータの計算方法は、更に、以下を含む。
【0043】
ステップS132:数値解析法により、各アンカーサンプルに沿う初期サンプルの第2方向導関数(second directional derivative)を初期サンプルの方向として計算する。
【0044】
図5に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、プロセスパラメータの計算方法は、更に、以下を含む。
【0045】
ステップS134:初期サンプルを原点に設定し、数値解析法により、各アンカーサンプルに向かう原点の第3方向導関数(third directional derivative)を初期サンプルの方向として計算する。
【0046】
或いは、図4の具体的実施例では、アンカーサンプルに向かう初期サンプルの接線方向を進行方向として選択してもよい。つまり、数値解析法により第2方向導関数を計算してもよい。注意すべき点として、アンカーサンプルは複数あるため、これらのアンカーサンプルに対して、初期サンプルも複数の第2方向導関数を有する。実用においては、初期サンプルから1つの第2方向導関数を選択して刻み幅1つ分進行させ、進行後の点の一部の入力パラメータを確認済み入力パラメータと組み合わせたあと、訓練済み予測モデルに入力することで、出力される関数値がより良好となるか否か(つまり、出力される関数値が目標結果に更に近付くか否か)を確認してもよい。そして、関数値がより良好となる場合には、この第2方向導関数を初期サンプルの方向とする。一方、関数値がより良好とならない場合には、次の第2方向導関数を選択して、関数値がより良好となり得る第2方向導関数が見つかるまで同様のステップを行えばよい。また、図5の具体的実施例では、まず、初期サンプルを多次元部分空間内の原点に設定してから、前記数値解析法により、各アンカーサンプルに向かう原点の第3方向導関数を計算してもよい。そして、図4の具体的実施例と同様に、関数値がより良好となり得る第3方向導関数を初期サンプルの方向として選択する。図5の具体的実施例では、初期サンプルから刻み幅1つ分進行したあとに、実行可能解空間において到達した新たな点を新たな出発点としてもよい。即ち、現在の解(current solution)を再び原点に設定して、図5のステップS134を繰り返すことで、再び刻み幅1つ分進行させてもよい。
【0047】
図4の具体的実施例では、接線方向を進行方向とするが、図6の具体的実施例に示すように、初期サンプルからアンカーサンプルまでの割線方向を進行方向としてもよい。図6は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。図6に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、本具体的実施例における訓練済み予測モデルは目的関数で表すことができる。また、更に、以下を含む。
【0048】
ステップS136:数値解析法により、各アンカーサンプルに向かう初期サンプルの距離の変化量に基づいて目的関数の関数値の変化量を計算することで、各アンカーサンプルに向かう初期サンプルの割線方向導関数を取得する。
【0049】
上記の方向決定のステップでは、初期サンプルが実行可能解と反対の方向に進行した場合、関数値が悪化するか、期待と一致しなくなる可能性がある。そのため、本発明の方法によれば、関数値が良好となり得る方向を順番に探すことができる。ここで、図7を参照する。図7は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法における方向決定のステップのフローチャートを示す。図7に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、本具体的実施例における訓練済み予測モデルは、目的関数で表すことができる。また、更に、以下のステップを含む。
【0050】
ステップS1380:各アンカーサンプルの方向導関数(directional derivative)に向かって、初期サンプルの刻み幅を順に増加及び調整する。
【0051】
ステップS1382:各アンカーサンプルの方向導関数に向かって初期サンプルの刻み幅を増加及び調整したあと、目的関数の関数値がより良好となるか否か(つまり、目的関数の関数値が目標結果に更に近付くか否か)を順に確認する。
【0052】
ステップS1384:いずれかの前記アンカーサンプルの方向導関数に向かって初期サンプルの刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の関数値がより良好となることが確認された場合には、初期サンプルの刻み幅を増加させる。
【0053】
ステップS1386:いずれかの前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の関数値がより良好とはならないことが確認された場合には、別の前記アンカーサンプルの前記方向導関数に向かって前記初期サンプルの前記刻み幅を増加させたあと、前記目的関数の関数値がより良好となるか否かを再び確認する。
【0054】
よって、本具体的実施例では、まず、初期サンプルから1つ目のアンカーサンプルの方向に向かって刻み幅を繰り返し調整し、刻み幅の増加後に関数値がより良好となるか否かを確認する。そして、適切な刻み幅を見つけた場合には、その方向に沿って当該刻み幅で進行させればよい。しかし、刻み幅を一定回数調整しても、関数値がより良好となる適切な刻み幅を見つけられない場合には、次のアンカーサンプルの方向に向かって、初期サンプルにつき再び上記の調整を繰り返す。なお、上記の刻み幅の調整については、まず、刻み幅に関して初期サイズを設定し、初期サンプルの進行がこの初期サイズを有してから、訓練済み予測モデルに入力したあとに出力される予測結果が目標結果に近付くか否かを確認してもよい。そして、目標結果に更に近付く場合には、この初期サイズの刻み幅で進行可能とする。一方、目標結果に近付かない場合には、訓練済み予測モデルから出力される予測結果が目標結果に近付くまで刻み幅のサイズを繰り返し調整し、目標結果に近付く刻み幅で初期サンプルを進行させればよい。実用では、全てのアンカーサンプルの方向において、関数値がより良好となる適切な刻み幅を見つけられない場合には(例えば、刻み幅のサイズを10回調整したあと)、プロセスパラメータの計算方法を停止する。上記のステップは循環的な探索のステップである。初期点が次の実行可能解空間内の点まで進行した場合には、新たな点を現在の解(current solution)に設定して、再び上記のステップを行ってもよい。
【0055】
本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法を細胞培養プロセスの分野に応用する場合、本具体的実施例のデータセットは細胞データセットを更に含んでもよい。細胞データセットは複数の細胞サンプルを含む。且つ、各細胞サンプルのサンプルパラメータは入手源パラメータ及び培養パラメータを含む。実用において、前記細胞データセットは、オープンプラットフォームで得られるいずれかのデータであってもよいし、ユーザ自身で収集したデータであってもよい。そのほか、細胞サンプルの種類は、免疫細胞(例えば、樹状細胞(DC cells)、サイトカイン誘導キラー細胞(CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー細胞(NK cells)及びCAR-T細胞)、幹細胞(例えば、末梢血幹細胞、脂肪幹細胞、骨髄間葉系幹細胞)、軟骨細胞、線維芽細胞等としてもよいが、実際の応用ではこれに限らず、ユーザが実行したい細胞培養の種類に応じて決定すればよい。加えて、本具体的実施例において、各細胞サンプルの入手源パラメータは、更に、各細胞サンプルの入手源の属性データを含んでもよい。細胞データセット内の各細胞サンプルは、細胞に対応する細胞入手源及び入手源が有する属性データを含んでもよい。属性データは、入手源の生理学的データ、又は、例えば、入手源の性別、年齢、病歴、生活環境、居住地域等の入手源に関連するその他のデータであってもよい。ただし、実際の応用においてはこれらに限らず、細胞サンプルの入手源パラメータは、更に、細胞プロセスに影響を及ぼす可能性があり、且つ細胞入手源に関連するその他のパラメータを含んでもよい。
【0056】
また、本具体的実施例において、各細胞サンプルの培養パラメータは、更に、各細胞サンプルにおけるヒト、機器、材料、方法、環境のパラメータを含む。細胞培養過程は多くのステップを含み、各ステップはいずれも多くの培養パラメータに関連する。当該培養パラメータには、例えば、細胞入手源の性別及び年齢、細胞培養操作者の経験及び安定性といったヒト関連のパラメータや、例えば、細胞操作プラットフォーム(cell operation platform)の種類及びグレード、細胞培養装置の温度制御及び湿度制御の安定性や精度といった機器関連のパラメータや、例えば、細胞培養シャーレの材質、細胞培養培地の成分及び比率・配合といった材料関連のパラメータや、例えば、細胞培養操作者の手法、細胞培養プロセスの方法といった方法関連のパラメータや、例えば、細胞培養の環境温度、湿度、二酸化炭素濃度といった環境関連のパラメータ、が含まれる。
【0057】
プロセス内で、各プロセスパラメータは任意に設定されるのではなく、実際の状況に応じて各種の制約条件を有する可能性がある。訓練済み予測モデルは、特定待ちプロセスパラメータの関数、目的関数及び少なくとも1つの制約条件を含む。前記目的関数は、前記特定待ちプロセスパラメータの関数の出力値と前記目標結果との差分値を最小化するものであり、前記特定待ちプロセスパラメータの関数、前記目的関数、前記少なくとも1つの制約条件及び前記予測結果に基づいて、制約付き最適化問題がモデル化される。前記プロセスパラメータの計算方法は、前記最適化問題について解を求めることで、前記未確認入力パラメータを取得する。ここで、図8を参照する。図8は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。図8に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、以下を含む。
【0058】
ステップS100:訓練済み予測モデルを提供する。訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットを機械学習することで得られる。訓練済み予測モデルは、特定待ちプロセスパラメータの関数、目的関数及び少なくとも1つの制約条件を含む。目的関数はバリア関数を含む。データセットは複数のサンプルを含む。また、各サンプルは複数のサンプルパラメータを含む。訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、入力パラメータに対応する予測結果を生成するために用いられる。
【0059】
本具体的実施例において、バリア関数は、プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たすよう制約するために設定される。バリア関数には、バリア領域が設けられるとともに、バリア関数値が含まれる。プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たす場合には、バリア領域外となり、これに対応して得られるバリア関数値は0となる。即ち、訓練済み予測モデルの予測結果に影響を及ぼさない。一方、プロセスパラメータ間が不等式の制約条件を満たさない場合には、バリア領域内となり、これに対応して得られるバリア関数値が大きくなることで、訓練済み予測モデルの予測結果に大きな影響を及ぼす。注意すべき点として、本具体的実施例におけるその他のステップは上述した具体的実施例における対応するステップと同じであるため、ここでは改めて詳述しない。
【0060】
また、図9を参照する。図9は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。図9に示すように、本具体的実施例は、上述した具体的実施例と以下の点において異なっている。即ち、本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法は、更に、以下を含む。
【0061】
ステップS102:訓練済み予測モデルを提供する。訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットを機械学習することで得られる。訓練済み予測モデルは目的関数及び少なくとも1つの制約条件を有し、目的関数はペナルティ関数を含む。データセットは複数のサンプルを含む。また、各サンプルは複数のサンプルパラメータを含む。訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、入力パラメータに対応する予測結果を生成するために用いられる。
【0062】
本具体的実施例において、ペナルティ関数は、プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たすよう制約するために設定される。ペナルティ関数には、ペナルティ領域が設けられるとともに、ペナルティ関数値が含まれる。プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たす場合には、ペナルティ領域内となり、これに対応して得られるペナルティ関数値は0となる。一方、プロセスパラメータ間が等式の制約条件を満たさない場合には、ペナルティ領域外となり、これに対応して得られるペナルティ関数値が大きくなることで、訓練済み予測モデルの予測結果に大きな影響を及ぼす。よって、バリア関数及び/又はペナルティ関数を有する訓練済み予測モデルにサンプルパラメータを入力すると、生成される予測結果が目標結果と一致するか否かを確認できるだけでなく、入力されたパラメータが実際の制約条件を満たすか否かについても判断できる。入力されたプロセスパラメータがバリア関数及び/又はペナルティ関数の条件を満たさない場合には、予測結果が大幅に解離することから、条件を満たさないためにプロセスパラメータを使用できない旨が示される。注意すべき点として、本具体的実施例におけるその他のステップは、上述した具体的実施例における対応するステップと同じであるため、ここでは改めて詳述しない。
【0063】
上述した実際の制約条件については、例えば、細胞プロセスにおいて、10日目に細胞培養液に添加されるストレプトマイシン(Streptomycin)とアンホテリシンB(Amphotericin B)を合わせた抗生物質濃度が200μg/mL以下でなければならず、8日目と10日目の細胞培養液中の血清濃度値の合計が20%以下でなければならない、とする。
【0064】
実用において、ペナルティ関数及びバリア関数は、機械学習に一般的に使用されて、自然環境条件における実際のプロセスの状況に適合するよう、機械学習モデルのパラメータを合理的な範囲に制限するために用いられる。例えば、細胞培養温度や相対湿度が負の値とならず、培地の成分濃度が細胞を傷付けない条件を制約するために用いられる。バリア関数及びペナルティ関数を設定してパラメータの範囲を制限することで、パラメータ間の関連性を総合的に考慮して、所期の目標結果に最も近付くプロセスパラメータの組み合わせを見つける。加えて、実際の応用において、バリア関数は未確認入力パラメータの制約に応用してもよいし、ペナルティ関数は確認済み入力パラメータの制約に応用してもよい。これらは、ユーザのニーズに応じて互換的に使用可能である。本具体的実施例において、目的関数は、前記関数値と目標結果との差分値を最小化するものであるとともに、特定待ちプロセスパラメータの各々又はそれらの間で満たすべき制約条件の制約を受ける。且つ、上記の制約付き最適化問題の解を求めるために、ペナルティ関数及びバリア関数を含む方法を使用して、当該制約付き最適化問題を制約なし最適化問題に変換することで、解をより求めやすくなる。
【0065】
また、実用において、複数の異なる訓練済み予測モデルは、例えば、細胞生存率、増殖細胞数及び培養時間等の入力パラメータの異なる結果を予測するために使用可能である。ここで、図10を参照する。図10は、本発明の別の具体的実施例に基づくプロセスパラメータの計算方法のステップのフローチャートを示す。本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法は、プロセスにおける複数のプロセスパラメータを確認して最適化するために用いられる。プロセスパラメータは、複数の確認済み入力パラメータ及び複数の未確認入力パラメータを含む。プロセスパラメータの計算方法は、以下を含む。
【0066】
ステップS10’:複数の訓練済み予測モデルを提供する。訓練済み予測モデルは、機械学習方法によってデータセットをそれぞれ機械学習することで得られる。データセットは複数のサンプルを含む。また、各サンプルは複数のサンプルパラメータを含む。訓練済みモデルは複数の目的関数にそれぞれ対応している。訓練済み予測モデルは、複数の入力パラメータを入力して、入力パラメータに対応する複数の予測結果を生成するために用いられる。予測結果は、異なる目標結果のタイプにそれぞれ属する。
【0067】
ステップS11’:訓練済み予測モデルの目的関数を組み合わせて、複合目的関数を形成する。複合目的関数に入力パラメータを入力することで予測結果が生成される。
【0068】
ステップS12’:訓練済み予測モデルの予測結果に対応する複数の目標結果を設定するとともに、入力パラメータのうちの確認済み入力パラメータを提供する。
【0069】
ステップS13’:データセット内の各サンプルを訓練済み予測モデルに入力することで生成される予測結果が目標結果とそれぞれ一致するか否かを照合する。そして、予測結果が目標結果と一致するサンプルを複数のアンカーサンプルとして多次元部分空間を形成し、多次元部分空間内で初期サンプルを特定する。
【0070】
ステップS14’:多次元部分空間内で初期サンプルの方向を取得する。
【0071】
ステップS15’:初期サンプルのサンプルパラメータについて、方向に沿って刻み幅を増加させる。そして、確認済み入力パラメータと、確認済み入力パラメータに対応しない刻み幅を増加させたサンプルパラメータを複合目的関数に入力して、生成される予測結果が目標結果と一致するか否かを確認する。
【0072】
ステップS16’:予測結果が目標結果と一致する場合には、確認済み入力パラメータに対応しない刻み幅を増加させたサンプルパラメータを未確認入力パラメータとする。
【0073】
本具体的実施例におけるプロセスパラメータの計算方法によれば、各訓練済み予測モデルにより1群の入力パラメータを逆推定して、異なる所期の結果を同時に満たすことが可能となる(例えば、培養後の細胞製品の細胞生存率が90%よりも高く、細胞数が1x10個よりも多く、培養時間が7日間であることが同時に満たされる)。本具体的実施例において、上記の各訓練済み予測モデルの目的関数は、例えば、互いに直接加算したり、新たな関数を形成したりというように、任意の方式で組み合わせ可能である。そして、本発明で記載する各種ステップにより、この新たな関数について逆推定を行うことで、上記の条件を同時に満たし得る1群の入力パラメータを取得可能である。また、別の具体的実施例において、これらの訓練済み予測モデルでも同様に、それぞれが上記の方法を用いて、訓練済み予測モデルの複合目的関数にバリア関数及び/又はペナルティ関数を加えてもよい。目的関数にバリア関数又はペナルティ関数を加えることで、比較的複雑な制約条件が目的関数に移行されて、解を求めやすくなる。
【0074】
上述した具体的実施例において、各訓練済み予測モデルの目的関数は、直接加算して組み合わせることで新たな関数を形成する。つまり、各訓練済み予測モデルの目的関数の重み値はいずれも1とされる。ただし、実際の応用において、各訓練済み予測モデルの目的関数の重み値は、プロセス別の所期の結果の優先順位や重要性の順序に従って調整してもよい。且つ、各訓練済み予測モデルにおける目的関数のそれぞれに含まれるバリア関数及びペナルティ関数についても、プロセスの所期の結果の優先順位に従って重み値を設定及び調整してもよい。そのほか、複数の訓練済みモデルに対する最適化問題の構築は、以下の2種類の方法で達成可能である。
【0075】
第1の方法:各訓練済み予測モデルのそれぞれが制約付き最適化問題を保持する場合には、まず、各訓練済み予測モデルの目的関数を正規化(normalize)し(例えば、各訓練済み予測モデルの目的関数を最小化目的関数の形式に変換する)、それぞれに重み値を割り当てて複合目的関数を形成する。続いて、複合目的関数につき制約条件を考慮して統合し(即ち、各訓練済み予測モデルに含まれる制約条件の組み合わせを取得する)、制約付き最適化問題を制約なし最適化問題に変換する。例えば、等式制約をペナルティ関数で処理し、不等式制約をバリア関数で処理することで、新たな関数を形成する。なお、各訓練済み予測モデルの目的関数に含まれる制約条件は、プロセスの所期の結果の優先順位に従って異なる重み値を有する。各制約条件を統合してバリア関数による処理及びペナルティ関数による処理に変換するとともに、各訓練済み予測モデルの目的関数を考慮することで、バリア関数及びペナルティ関数の重み値を導く。
【0076】
第2の方法:各訓練済み予測モデルの最適化問題が制約なし最適化問題にそれぞれ変換される場合(即ち、各訓練済み予測モデルに含まれる制約条件がいずれもバリア関数及び/又はペナルティ関数で処理されて目的関数に加えられる場合)には、制約条件を調整する必要はなく、各訓練済み予測モデルの目的関数を正規化するとともに、対応する重み値を調整して、複合目的関数を形成する。そして、各訓練済み予測モデルの目的関数に含まれるバリア関数及び/又はペナルティ関数を加えて、新たな関数を形成する。なお、各訓練済み予測モデルの目的関数は、それぞれ、各々のバリア関数及びペナルティ関数を含んでもよい。また、各バリア関数及びペナルティ関数には、目的関数の優先順位に従って対応する重み値を付与可能である。注意すべき点として、本具体的実施例におけるその他のステップは、上述した具体的実施例における対応するステップと同じであるため、ここでは改めて詳述しない。
【0077】
総括すると、本発明におけるプロセスパラメータの計算方法は、訓練済み予測モデルを特定待ちプロセスパラメータの関数と見なして、最適化モデルを構築する。目的関数は、前記関数値と目標結果との差分値を最小化するものであるとともに、特定待ちプロセスパラメータの各々又はそれらの間で満たすべき制約条件の制約を受ける。且つ、上記の制約付き最適化問題の解を求めるために、ペナルティ関数及びバリア関数を含む方法を使用して、当該制約付き最適化問題を制約なし最適化問題に変換することで、解をより求めやすくなる。この最適化問題については、まず、訓練済み予測モデルを訓練した際のデータセットから、目標結果に合致する複数のサンプルを見つけてアンカーとし、多次元の実行可能解空間を形成する。且つ、この実行可能解空間内に初期解を設定或いは作成してから、異なる数値解析法で方向及び刻み幅を見つけることで、更に優良な実行可能解を見つける。そして、この優良な実行可能解が使用可能な入力パラメータとなる。そのほか、本発明におけるプロセスの効果の予測及び最適化方法は、細胞プロセス分野への応用のほか、その他何らかの訓練済みの機械学習モデルに応用して、プロセスパラメータ及び未確認入力パラメータの逆推定に用いることも可能である。
【0078】
以上の好ましい具体的実施例の詳細な記載は、本発明の特徴及び精神をより明瞭に記載可能とすることを意図しており、上記で開示した好ましい具体的実施例によって本発明の範囲を制限するものではない。むしろ、各種の変更及び均等性を有する構成が本発明で請求しようとする特許請求の範囲内に網羅されることを意図している。よって、本発明で請求しようとする特許請求の範囲は、全ての可能な変更及び均等性を有する構成を網羅すべく、上記の説明に基づき最も広く解釈すべきである。
【符号の説明】
【0079】
S10~S15,S120~S124,S132~S136 ステップ
S10’~S16’,S1380~S1386 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】