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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025110561
(43)【公開日】2025-07-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250722BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004460
(22)【出願日】2024-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松元 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史宏
(72)【発明者】
【氏名】毛利 江鳴
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA34
5H770PA22
5H770PA26
5H770QA01
5H770QA08
(57)【要約】
【課題】
複数のパワー半導体モジュールを近接配置して構成する電力変換装置において、充放電時のパワー半導体モジュール間の熱干渉を平準化することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】
運転中に通過する電流量が略同等である第1半導体モジュールと第4半導体モジュール、および運転中に通過する電流量が略同等である第2半導体モジュールと第3半導体モジュールを有する電力変換部と、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュールとが配置される冷却体と、を備え、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間の第1熱干渉および前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間の第2熱干渉よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間の第3熱干渉の方が小さいことを特徴とする。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に通過する電流量が略同等である第1半導体モジュールと第4半導体モジュール、および運転中に通過する電流量が略同等である第2半導体モジュールと第3半導体モジュールを有する電力変換部と、
前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュールとが配置される冷却体と、を備え、
前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間の第1熱干渉および前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間の第2熱干渉よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間の第3熱干渉の方が小さいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体に、前記第1半導体モジュール、前記第2半導体モジュール、前記第3半導体モジュール、前記第4半導体モジュールの順で、略直線的に配列されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1半導体モジュールと前記第4半導体モジュールは、前記電力変換装置のアウターアームとして機能し、
前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールは、前記電力変換装置のインナーアームとして機能することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間の第1距離および前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間の第2距離よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間の第3距離の方が大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1半導体モジュールと前記第4半導体モジュールに流れる電流量が、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールに流れる電流量よりも大きい第1運転方法と、
前記第1半導体モジュールと前記第4半導体モジュールに流れる電流量が、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールに流れる電流量よりも小さい第2運転方法と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体は、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間の冷却性能および前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間の冷却性能よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間の冷却性能の方が高いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体は、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間に配置される放熱フィンの数、前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間に配置される放熱フィンの数よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間に配置される放熱フィンの数の方が多いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体は、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュールが配置される第1放熱ベースと、
前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュールが配置される第2放熱ベースと、
前記第1放熱ベースと前記第2放熱ベースとに挟まれて配置される放熱フィンと、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の構成に係り、特に、複数のパワー半導体モジュールを近接配置して構成する電力変換装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の一種である3レベル型のインバータは、交流電力と直流電力を変換する装置として、パワーコンディショナ等で幅広く用いられている。3レベル型のインバータによる電力変換では、電力変換を行う回路で用いられるパワー半導体モジュールの動作を制御し、所望の電力変換を行う。
【0003】
例えば、3レベル型のインバータの直流側に蓄電池を接続しておき、蓄電池に蓄えた電力を、交流側に放電するようなスイッチング動作の制御が可能である。逆に、交流側を電力系統に接続しておき、電力系統から交流電力を受け、3レベル型のインバータで直流に変換し、蓄電池に充電することも可能である。
【0004】
このような電力変換の過程で、パワー半導体モジュールには電力損失、すなわち発熱が生じる。発熱が継続するとパワー半導体モジュールの温度は上昇し、所定の温度を超えるとパワー半導体モジュールは破損する。破損を防止するためには、所定の温度以下に維持する必要がある。そのため、パワー半導体モジュールにヒートシンク等の冷却装置を接続し、所定の温度以下にパワー半導体モジュールを維持する。一般的に、発熱量が大きくなると、ヒートシンクが大型化する傾向にあるため、発熱量に応じて適正なヒートシンクを設計する必要がある。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1では、2レベル型インバータのU相、V相、W相の発熱のタイミング(位相)が120度ずつずれることに着目し、U相、V相、W相それぞれのパワー半導体モジュールを等距離に配置し、ヒートシンクの冷却効率を高める手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-117783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、3レベル型のインバータでは、直流側ハイサイドの電圧、ローサイドの電圧、中間電圧を出力するために、4つのパワー半導体モジュールを組み合わせて回路を構成する。このうち、ハイサイド側の電圧及びローサイド側の電圧を出力する際にオンするパワー半導体モジュールをアウターアームと呼び、中間電圧を出力する際にオンするパワー半導体モジュールをインナーアームと呼ぶ。
【0008】
3レベル型インバータの放電時には、アウターアームに流れる実効電流が大きくなるため、アウターアームの損失はインナーアームに比べて大きくなる傾向がある。一方、充電時には、インナーアームの実効電流が大きくなるため、充放電で損失の大小関係が逆転する。このような運転をするインバータ装置において、アウターアームは放電時の損失に合わせて、インナーアームは充電時の損失に合わせて、ヒートシンクが設計されることが一般的である。
【0009】
しかしながら、充電時はアウターアームにおいて、放電時はインナーアームにおいてヒートシンクの性能が過剰、すなわち余分に大型化している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、複数のパワー半導体モジュールを近接配置して構成する電力変換装置において、充放電時のパワー半導体モジュール間の熱干渉を平準化することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、運転中に通過する電流量が略同等である第1半導体モジュールと第4半導体モジュール、および運転中に通過する電流量が略同等である第2半導体モジュールと第3半導体モジュールを有する電力変換部と、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュールとが配置される冷却体と、を備え、前記第1半導体モジュールと前記第2半導体モジュール間の第1熱干渉および前記第3半導体モジュールと前記第4半導体モジュール間の第2熱干渉よりも、前記第2半導体モジュールと前記第3半導体モジュール間の第3熱干渉の方が小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のパワー半導体モジュールを近接配置して構成する電力変換装置において、充放電時のパワー半導体モジュール間の熱干渉を平準化することが可能な電力変換装置を実現することができる。
【0013】
これにより、電力変換に伴う最大温度上昇を抑制することができ、ヒートシンク等の冷却装置の小型化、並びに冷却装置を含む電力変換装置の小型化に寄与できる。
【0014】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図2図1の電力変換装置を構成するパワー半導体モジュールの一例を示す図である。
図3図1の電力変換装置の放電時におけるアウターアームの瞬時電流波形及び実効電流波形の一例を示す図である。
図4図1の電力変換装置の放電時におけるインナーアームの瞬時電流波形及び実効電流波形の一例を示す図である。
図5図1の電力変換装置の放電時における損失の例を示す図である。
図6図1の電力変換装置の充電時における損失の例を示す図である。
図7図1の電力変換装置におけるパワー半導体モジュールとヒートシンクの実装例を示す図である。
図8図7の実装例における温度上昇のシミュレーション結果を示す図である。
図9】本発明の実施例2に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュールとヒートシンクの実装例を示す図である。
図10】本発明の実施例3に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュールとヒートシンクの実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0017】
図1から図8を参照して、本発明の実施例1に係る電力変換装置について説明する。
【0018】
図1は、本実施例の電力変換装置100の概略構成を示す回路図である。
【0019】
図1に示すように、本実施例の電力変換装置100は、直流側が蓄電池104に接続され、交流側が電力系統103に接続されている。直流側の蓄電池104から供給される直流電力を、電力変換装置100の直流サイドより受電する。電力変換装置100は、蓄電池104からの直流電力を三相の交流電力に変換して、電力系統103に供給する。
【0020】
また、図1に示すように、電力変換装置100は、ハイレベル電位と中間電位とローレベル電位の3つのレベルの電位の電力を出力するように構成されている。具体的には、蓄電池104の正極からの直流電圧の入力である正極側と、反対の負極側との入力に基づき、電力変換動作を行い3つのレベルの電位を出力する、3レベル型インバータ回路を有する。
【0021】
本構成では、インナーアームは、互いに直列に接続されたIGBT101c及びダイオード102dと、互いに直列に接続されたIGBT101d及びダイオード102cとが逆並列に接続された構成となっている。ハイレベル出力時またはローレベル出力時に、IGBT101aまたはIGBT101bの一つの素子に通流する。このような構成は、一般的にT型3レベルと呼ばれる。
【0022】
図1の例では、1つのIGBT101(101a~101d)と、1つのダイオード102(102a~102d)とが、それぞれペアとなって、1つのパワー半導体モジュール106を構成している。なお、図1では、IGBT101dとダイオード102dの組み合わせのパワー半導体モジュールのみに符号106を示している。
【0023】
IGBT101aとダイオード102aで、第1半導体モジュール(後述する図7の符号106a)を構成する。また、IGBT101cとダイオード102cで、第2半導体モジュール(後述する図7の符号106c)を構成する。また、IGBT101dとダイオード102dで、第3半導体モジュール(後述する図7の符号106d)を構成する。また、IGBT101bとダイオード102bで、第4半導体モジュール(後述する図7の符号106b)を構成する。
【0024】
第1半導体モジュール(IGBT101aとダイオード102a)と、第2半導体モジュール(IGBT101cとダイオード102c)と、第3半導体モジュール(IGBT101dとダイオード102d)と、第4半導体モジュール(IGBT101bとダイオード102b)とで、電力変換装置100の電力変換部が構成される。
【0025】
第1半導体モジュール(IGBT101aとダイオード102a)及び第4半導体モジュール(IGBT101bとダイオード102b)は、電力変換装置100の運転中に通過する電流量が略同等である。また、第2半導体モジュール(IGBT101cとダイオード102c)及び第3半導体モジュール(IGBT101dとダイオード102d)は、電力変換装置100の運転中に通過する電流量が略同等である。
【0026】
電力変換装置100を構成する各パワー半導体モジュール106は、ゲート駆動回路112から出力されるゲート駆動信号113により、それぞれオン・オフ制御される。
【0027】
図2は、図1の電力変換装置100を構成するパワー半導体モジュール106の一例を示す図である。
【0028】
図2の左図に示すように、パワー半導体モジュール106は、電力変換装置100を構成する一組のIGBT101とダイオード102を含む。パワー半導体モジュール106内部で、IGBT101とダイオード102は半平行に接続されており、IGBT101のコレクタ107とエミッタ108とゲート109が、それぞれの端子を介して、パワー半導体モジュール106の外部と電気的に接続可能なように構成されている。
【0029】
図2の右図に示すように、パワー半導体モジュール106の裏面には、放熱面111が備えらえられている。放熱面111は、IGBT101及びダイオード102と熱的に接続されており、IGBT101及びダイオード102の発熱は、放熱面111を通じて外部に放熱される。
【0030】
図2の中図及び右図に示すように、パワー半導体モジュール106は、取付穴110を備えており、取付穴110とねじ等の固定具を用いて、ヒートシンク等の冷却装置に取り付けて、固定することが可能である。このような固定により、放熱面111とヒートシンクを接触させることができるので、IGBT101及びダイオード102での発熱は放熱面111を通じて、ヒートシンクに伝わり外部へ放熱される。
【0031】
なお、本実施例では、1つのアームにつき1個のパワー半導体モジュール106が用いられる例を示すが、電力変換装置の出力容量を高めるなどの目的のために、1つのアームに2個以上のパワー半導体モジュール106を並列に接続することも可能である。
【0032】
図3及び図4を用いて、電力変換装置100の放電時の瞬時電流及び実効電流について説明する。
【0033】
図3は、電力変換装置100の放電時におけるアウターアームの瞬時電流波形201及び実効電流波形202の一例を示し、図4は、電力変換装置100の放電時におけるインナーアームの瞬時電流波形203及び実効電流波形204の一例を示している。
【0034】
図3には、放電モードで運転時のIGBT101aの通流電流を示しており、相対的に瞬時電流値201が大きい領域でIGBT101aのオン時間が長いことがわかる。そのため、IGBT101aのオンデューティ(キャリア周期当たりのオン時間)と瞬時電流値201の積で表される実効電流値202は瞬時電流値が大きい領域の範囲で大きくなる。
【0035】
一方、図4には、IGBT101aと対をなしてスイッチング(IGBT101aがオンするときにオフ、IGBT101aがオフするときにオン)するIGBT101dの通流電流を示しており、相対的に瞬時電流値203が小さい領域でのIGBT101dのオン時間が長く、実効電流値204は全体的に小さくなる。
【0036】
従って、交流1周期分の実効電流値は、前者(IGBT101a)が後者(IGBT101d)よりも大きくなる。
【0037】
IGBT101bと、IGBT101bと対をなしてスイッチングするIGBT101cのそれぞれの実効電流値にも同様の偏りがある。
【0038】
このような実効電流値の偏りの結果、T型3レベルの電力変換装置の放電モードにおいて、インナーアームの損失はアウターアームの損失に比べて小さくなる。一方、交流側から直流側へ電力を送る充電モードの場合、アウターアームに比べてインナーアームの実効電流値、及び損失が大きくなる。充電モードと放電モードでは、アウターアームの損失とインナーアームの損失の大小関係が逆転する。
【0039】
つまり、電力変換装置100は、アウターアームに流れる電流量が、インナーアームに流れる電流量よりも大きい運転方法と、アウターアームに流れる電流量が、インナーアームに流れる電流量よりも小さい運転方法を有することになる。
【0040】
図5に、T型3レベルの電力変換装置での放電モードにおける、アウターアームとインナーアームの損失の試算例を示す。図5に示すように、アウターアームはインナーアームに比べて損失が大きく、本試算例では、その差は約1.5倍の結果である。
【0041】
図6に、T型3レベルの電力変換装置での充電モードにおける、アウターアームとインナーアームの損失の試算例を示す。図6に示すように、インナーアームはアウターアームに比べて損失が大きく、本試算例では、その差は約1.5倍の結果である。
【0042】
このような損失に対応するためには、インナーアームは最大損失が発生する充電時の損失を想定したヒートシンクを取り付ける必要がある。一方、アウターアームは放電時の損失を想定したヒートシンクを取り付ける必要がある。しかしながら、損失が小さな運転モードの時には、ヒートシンクが過剰な性能となるため、電力変換装置が大型化する課題がある。
【0043】
そこで、本実施例では、電力変換装置100を図7に示すような構成で実装する。
【0044】
図7は、電力変換装置100におけるパワー半導体モジュール106とヒートシンク115の実装例を示す図である。
【0045】
図7に示すように、1個のアウターアームであるパワー半導体モジュール106aと、1個のインナーアームであるパワー半導体モジュール106cとを近接配置して1つの組とするデバイスブロック114aを構成する。さらに、もう1個のアウターアームであるパワー半導体モジュール106bと、もう1個のインナーアームであるパワー半導体モジュール106dとを近接配置して1つの組とするデバイスブロック114bを構成する。
【0046】
デバイスブロック114a内で、アウターアームを構成するパワー半導体モジュール106aと、インナーアームを構成するパワー半導体モジュール106cとの距離をαとする。また、デバイスブロック114b内で、アウターアームを構成するパワー半導体モジュール106bと、インナーアームを構成するパワー半導体モジュール106dとの距離をαとする。さらに、デバイスブロック114a,114b間の距離をβとしたとき、距離βが距離αより大きくなるように構成する(β>α)。
【0047】
図7の例においては、合計4個のパワー半導体モジュール106a~106dを、プリント基板105上に一列に並べ、α、βの距離を直線的に配列する構成とし、4個のパワー半導体モジュール106a~106dを1個のヒートシンク115に接続し放熱する構造としている。ヒートシンク115と平行に冷却風116は通風し、ヒートシンク115の熱を外部へと放熱する。パワー半導体モジュール106a~106dは、ヒートシンク115に対しても、半導体モジュール106a、半導体モジュール106c、半導体モジュール106d、半導体モジュール106bの順で、略直線的に配列される。
【0048】
デバイスブロック114a,114bの各々は、アウターアームとインナーアームが近接配置されて1組で構成されるため、各デバイスブロック内の合計損失は、充電時の損失と、放電時の損失の偏りが、アウターアームとインナーアームがそれぞれ個別の場合よりも小さくなる。
【0049】
また、デバイスブロック114a,114b間の距離βは、各デバイスブロック内の距離αに比べて大きく設定するので、熱的な干渉は、各デバイスブロック内(アウターアームとインナーアーム間)よりも、デバイスブロック同士が小さくなる。例えば、充電時、α=βまたはα>βとする配置の場合に比べて、インナーアームのフィン熱抵抗が低減するので、温度上昇を抑制することができる。一方、アウターアームにとっては、α=βまたはα>βの場合よりもインナーアームからの熱干渉が増加するため、フィン熱抵抗が増加して見える。
【0050】
図8に、α>βの場合と、α<βの場合(図7の構成)の、インナーアームの損失がアウターアームの損失に比べて大きい充電時の熱流体シミュレーションを用いた温度上昇の計算結果例を示す。
【0051】
インナーアーム(パワー半導体モジュール106c,106d)の温度上昇は、α>βの場合に比べてα<βの場合が小さくなった。一方、アウターアーム(パワー半導体モジュール106a,106b)の温度上昇は、α>βの場合に比べてα<βの場合が大きくなった。
【0052】
従って、α<β(図7の構成)とすることで、アウターアームの温度上昇と、インナーアームの温度上昇の差が低減され、最大温度上昇を抑制できるので、ヒートシンクの利用効率が向上する効果があることがわかる。
【0053】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置100は、運転中に通過する電流量が略同等である第1半導体モジュール106aと第4半導体モジュール106b、および運転中に通過する電流量が略同等である第2半導体モジュール106cと第3半導体モジュール106dを有する電力変換部と、第1半導体モジュール106aと第2半導体モジュール106cと第3半導体モジュール106dと第4半導体モジュール106bとが配置される冷却体(ヒートシンク115)とを備えており、第1半導体モジュール106aと第2半導体モジュール106c間の第1熱干渉および第3半導体モジュール106dと第4半導体モジュール106b間の第2熱干渉よりも、第2半導体モジュール106cと第3半導体モジュール106d間の第3熱干渉の方が小さくなるように構成されている。
【0054】
これにより、電力変換装置100の充放電時のパワー半導体モジュール106間の熱干渉を平準化することができる。その結果、電力変換に伴う最大温度上昇を抑制することができ、ヒートシンク115等の冷却装置の小型化、並びに冷却装置を含む電力変換装置100の小型化に寄与できる。
【実施例0055】
図9を参照して、本発明の実施例2に係る電力変換装置について説明する。
【0056】
図9は、本実施例の電力変換装置100におけるパワー半導体モジュール106とヒートシンク115の実装例を示す図である。
【0057】
図9に示すように、本実施例の電力変換装置100では、パワー半導体モジュール106a~106dを等距離(等間隔)で、アウターアーム、インナーアーム、インナーアーム、アウターアームの順に並べる。また、ヒートシンク115において、放熱フィンを密に配置することで冷却能力を高めた高冷却性能領域301と、放熱フィンが領域301よりも疎に配置された低冷却性能領域302を備える。
【0058】
高冷却性能領域301は、デバイスブロック114aともう一方のデバイスブロック114bの間に配置する。低冷却性能領域302は、各デバイスブロック114a,114b内に配置する。
【0059】
つまり、ヒートシンク115は、半導体モジュール106aと半導体モジュール106c間に配置される放熱フィンの数(図9では2枚)、半導体モジュール106dと半導体モジュール106b間に配置される放熱フィンの数(図9では2枚)よりも、半導体モジュール106cと半導体モジュール106d間に配置される放熱フィンの数(図9では5枚)の方が多い。
【0060】
このような配置を取ることで、デバイスブロック114a,114b間の熱干渉を、各デバイスブロック114a,114b内の熱干渉よりも抑制することができるので、実施例1と同様に、アウターアームの温度上昇と、インナーアームの温度上昇の差が低減され、最大温度上昇を抑制することができる。
【実施例0061】
図10を参照して、本発明の実施例3に係る電力変換装置について説明する。
【0062】
図10は、本実施例の電力変換装置100におけるパワー半導体モジュール106とヒートシンク115の実装例を示す図である。
【0063】
図10に示すように、本実施例の電力変換装置100では、2枚の放熱ベース401で、放熱フィン402を挟み込む構成のヒートシンク115を備える。一方の放熱ベース401にデバイスブロック114aを配置し、もう一方の放熱ベース401にデバイスブロック114bを配置する。
【0064】
冷却風116はデバイスブロック114a,114b間のヒートシンク115に通流するため、デバイスブロック114a,114b間の熱干渉を抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
100…電力変換装置
101,101a,101b,101c,101d…IGBT
102,102a,102b,102c,102d…ダイオード
103…電力系統
104…蓄電池
105…プリント基板
106,106a,106b,106c,106d…パワー半導体モジュール
107…コレクタ(端子)
108…エミッタ(端子)
109…ゲート(端子)
110…取付穴
111…放熱面
112…ゲート駆動回路
113…ゲート駆動信号
114,114a,114b…デバイスブロック
115…ヒートシンク
116…冷却風
201,203…瞬時電流値(波形)
202,204…実効電流値(波形)
301…高冷却性能領域
302…低冷却性能領域
401…放熱ベース
402…放熱フィン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10