(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011057
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】低転がり抵抗性インナーライナー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/22 20250101AFI20250116BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250116BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20250116BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250116BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20250116BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C08L23/22
C08K3/013
C08K3/06
C08K3/22
C08L7/00
B60C5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109345
(22)【出願日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】18/349,530
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】サビネ・シャンタル・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ジャン-マリー・カエ
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・フェリーツィタス・ブレンメル
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ソーサ
(72)【発明者】
【氏名】アントワン・フランソワ・レニエ
(72)【発明者】
【氏名】ギリス・レネ・マルセル・ボネット
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲ・アンデレス・ゴンザレス
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC25
4J002AC012
4J002BB181
4J002DA036
4J002DA047
4J002DE107
4J002DE236
4J002FD016
4J002FD147
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】満足すべき空気保持性を維持しつつ、タイヤの転がり抵抗性能を改善するインナーライナーを提供する。
【解決手段】インナーライナー(30)のためのゴム組成物が開示されている。ゴム組成物は、少なくとも60phrのブチルゴムおよび0~40phrのジエン系ゴムを含む、100phrのエラストマーと、35~70phrの補強用フィラーと、エラストマーを硬化するための硬化系とを含む。また、25~35phrの天然ゴムと、65~75phrのハロブチルゴムと、45~60phrの炭酸カルシウムと、2~12phrのカーボンブラックと、任意に、油、可塑剤および粘着付与剤樹脂のうちの少なくとも1種と、硫黄系硬化剤と、少なくとも1phrの酸化亜鉛と、硬化促進剤とで構成される、またはそれらから形成されるインナーライナー(30)が開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナー(30)のためのゴム組成物であって、
少なくとも60phrのブチルゴム、および0~40phrのジエン系ゴムを含む100phrのエラストマーと、
35~70phrの補強用フィラーと、
前記エラストマーを硬化するための硬化系と
を含む、ゴム組成物。
【請求項2】
少なくとも65phrのブチルゴム、および/または80phr以下のブチルゴムを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
少なくとも20phrのジエン系ゴム、および/または35phr以下のジエン系ゴムを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ジエン系ゴムが、ポリイソプレンを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
補強用フィラーが、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
補強用フィラーが、炭酸カルシウムおよびゴム補強用カーボンブラックを、少なくとも4:1、または少なくとも5:1および/または30:1までの重量比で含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物を硬化することにより形成される、インナーライナー。
【請求項8】
25~35phrの天然ゴムと、
65~75phrのハロブチルゴムと、
45~60phrの炭酸カルシウムと、
2~12phrのカーボンブラックと、
任意に、油、可塑剤および粘着付与剤樹脂のうちの少なくとも1種と、
硫黄系硬化剤と、
少なくとも1phrの酸化亜鉛と、
硬化促進剤と、
で構成される、またはそれらから形成されるインナーライナー。
【請求項9】
請求項7または8に記載のインナーライナー(30)を含む、空気入りタイヤ。
【請求項10】
タイヤ(10)のインナーライナー(30)を形成する方法であって、
少なくとも60phrのブチルゴム、および40phrまでのポリイソプレンを含む、100phrのエラストマー;炭酸カルシウムおよびカーボンブラックを含む35~70phrの補強用フィラー;ならびに酸化亜鉛および硫黄系硬化剤のうちの少なくとも1種を含む混合物を形成するステップと、
前記混合物を成形してガムストリップを形成するステップと、
前記ガムストリップを硬化して、タイヤ(10)のインナーライナー(30)を形成するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、タイヤのためのインナーライナーを形成するのに好適なゴム組成物、ならびに組成物、インナーライナーおよびタイヤを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの内部表面は典型的には、タイヤの内部空気室からの空気および水分のカーカス中への透過を防止するか又は遅らせるように設計されたエラストマー組成物で形成される。内部表面を画定する材料の薄層は、一般にインナーライナーといわれる。ハロブチルゴム、ならびにブチルゴムおよびハロブチルゴムのブレンドなどのゴムは、空気を比較的透過せず、インナーライナーの主要部として使用されることが多い。
【0003】
インナーライナーは、一般に、適切な幅の未硬化配合ゴムのストリップを形成するカレンダー加工または粉砕技術により調製され、これはガムストリップといわれることもある。典型的には、ガムストリップは、タイヤ組立ドラムに適用されるタイヤの第1の要素であり、当該第1の要素の上および周囲でタイヤの残りが組み立てられる。タイヤが硬化されると、インナーライナーは、同時硬化されたタイヤの一体部分になる。空気保持などの特性を改善するために、タイヤのインナーライナーは、様々な添加剤を組み込むことがある。結果として、インナーライナーは、従来では比較的剛性であった。
【0004】
例えば、米国特許第8,220,511B2には、ブロモブチルゴムおよびクロロブチルゴムから選択されるエラストマーに分散されているエチレンビニルアルコールポリマーを含有するインナーライナーゴム組成物が記載されている。米国特許出願公開第20110146870A1には、スレート粉末を含有するインナーライナーを有するタイヤが記載されている。米国特許第7,506,677B2には、ブチルゴムおよび予備硬化ジエン系ゴムの分散体で形成されたインナーライナーを有する空気入りタイヤが記載されている。米国特許第6,765,063B2には、低分子量trans-1,4-ポリブタジエンゴムを含有するゴム組成物のインナーライナーを有する空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,220,511B2
【特許文献2】米国特許出願公開第20110146870A1
【特許文献3】米国特許第7,506,677B2
【特許文献4】米国特許第6,765,063B2
【特許文献5】米国特許第5,587,416A
【特許文献6】米国特許第5,708,069A
【特許文献7】米国特許第9,359,215B2
【特許文献8】米国特許出願公開第20020081247A1
【特許文献9】米国特許出願公開第20050032965A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~347頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
満足すべき空気保持性を維持しつつ、タイヤの転がり抵抗性能を改善するインナーライナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な一実施形態によれば、インナーライナーのためのゴム組成物は100phrのエラストマーを含み、当該エラストマーは、少なくとも60phrのブチルゴム、および40phrまでのジエン系ゴムを含む。ゴム組成物は、35~70phrの補強用フィラー、および硬化系をさらに含む。
【0009】
この実施形態の様々な態様において:
ブチルゴムは、少なくとも65phr、または80phr以下、もしくは75phr以下であり得る。
ブチルゴムは、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴムおよびそれらの混合物から選択されるハロブチルゴムを含み得る。
【0010】
ジエン系ゴムは、少なくとも20phr、または35phr以下であり得る。
ジエン系ゴムは、少なくとも1種のポリイソプレン、例えば天然ゴムおよび/または合成ポリイソプレンを含み得る。
【0011】
ゴム組成物において、ブチルゴムおよびポリイソプレン以外のエラストマーは、好ましく10phr以下、または5phr以下で存在する。
【0012】
硬化系は、硫黄系硬化剤および酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を含み得る。
【0013】
ゴム組成物は、有機硬化活性化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤およびそれらの組合せから選択される少なくとも1種の硬化助剤をさらに含み得る。
【0014】
補強用フィラーは、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1種を含むか、またはそれらからなるものでもよい。炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムは、35~70phrまたは45~60phrでゴム組成物に存在し得る。
【0015】
補強用フィラーは、1~20phr、または12phr以下、もしくは10phr以下でゴム補強用カーボンブラックを含み得る。
【0016】
補強用フィラーは、炭酸カルシウムおよびゴム補強用カーボンブラックを、少なくとも4:1、または少なくとも5:1および/または30:1までの重量比で含み得る。
【0017】
ゴム組成物は、油、可塑剤、粘着付与剤樹脂およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の加工助剤をさらに含み得る。
【0018】
別の態様では、インナーライナーは、上記の態様のいずれかのゴム組成物を硬化することにより形成される。
【0019】
別の態様では、空気入りタイヤは、上記の態様のいずれかのゴム組成物を硬化することにより形成されるインナーライナーを含む。
【0020】
別の例示的な実施形態によれば、タイヤのインナーライナーを形成する方法は、100phrのエラストマーであって、少なくとも60phrのブチルゴム、および40phrまでのジエン系ゴムを含むエラストマーと、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックを含む35~70phrの補強用フィラーと、硫黄系硬化剤および酸化亜鉛のうちの少なくとも1種と、を含む混合物を形成するステップを含む。本方法は、混合物を成形してガムストリップを形成するステップ、およびガムストリップを硬化して、タイヤのインナーライナーを形成するステップをさらに含む。
【0021】
この実施形態の様々な態様において:
形成される混合物は、好ましくは10~26M.U.または18~23M.U.の範囲のムーニー粘度を有する。
【0022】
硬化時に、インナーライナーは、好ましくはタイヤの一体部分となる。
【0023】
別の例示的な実施形態によれば、インナーライナーは、20~35phrの天然ゴムと、65~80phrのハロブチルゴムと、45~60phrの炭酸カルシウムと、2~12phrのカーボンブラックと、少なくとも1phrの酸化亜鉛と、硫黄系硬化剤と、硬化促進剤と、任意に、油、可塑剤および粘着付与剤樹脂のうちの少なくとも1種と、で構成されるか、またはそれらから形成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態による乗用車両タイヤの概略断面図である。
【
図2】インナーライナーサンプルに対する空気拡散vs G”のプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的な実施形態において、空気入りゴムタイヤは、硬化ゴム組成物から形成された一体型インナーライナーを有する。インナーライナーは、良好な空気保持性、ならびに低い剛性およびヒステリシスを有し、これにより、タイヤに低転がり抵抗性が付与される。インナーライナーの転がり抵抗性に対する寄与は、転がり抵抗性が低いことを示す低損失弾性率G”を有する歪み制御である。
【0026】
例示的なゴム組成物は、低いフィラー含有量(例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1種、ならびに任意にカーボンブラックを含む、またはそれらからなる)を有する。ゴム組成物のブチルゴム含有量は、比較的高くてもよく、例えば少なくとも60phrであってもよい。
【0027】
例示的な実施形態の別の態様では、剛性が低く、ブチルレベルが高いゴム組成物は、標準的な空気拡散試験に合格し、転がり抵抗性における改善を示す。
【0028】
本発明の記載において、「phr」という用語は、ゴム組成物に含有される未硬化ゴム100重量部当たりの特定の成分の重量部に関する。
「ゴム」および「エラストマー」という用語は、特に指示がない限り互換的に使用される。
「硬化する」および「加硫する」という用語は、特に指示がない限り互換的に使用される。
【0029】
本明細書において、「ブチルゴム」という用語は、特に指示がない限り、ブチルゴム(イソブチレンおよびイソプレンのコポリマー)、また、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムおよびブロモブチルゴム(それぞれ塩素化および臭素化ブチルゴム)を指す。
【0030】
図1を参照すると、空気入りタイヤ10は、タイヤの接地面を画定するタイヤトレッド12を含む。2つのサイドウォール14および16は、トレッドからそれぞれのビード領域18および20へと伸展する。各ビード領域は、それぞれのビードフィラーエイペックス26および28により適所に保持され得るビード(複数可)22および24を含む。インナーライナー30は、タイヤの最内表面を画定し、各末端でそれぞれのサイドウォール14および16と接合される。
【0031】
タイヤは、複数のベルトプライ32、およびベルトプライの内部であるカーカスプライ36のセットも含み得る。図示されているカーカスプライ36は、軸方向に対向する端部38および40の対を含み、この対の各々は、ビード22および24のそれぞれ1つにつながる。カーカスプライ36の各軸方向端部38および40は、それぞれのビードを固定する位置へと折り返され、方向転換することがある。カーカスプライの折り返し部38および40は、それぞれのフリッパー42および44の軸方向の外部表面、およびそれぞれのチッパー46および48の軸方向の内部表面に係合し得る。例示されているトレッド10は、円周溝(例証されている実施形態では4本)を有し、各溝は、トレッド10においてU字型のへこみを画定する。トレッド12、サイドウォールおよびカーカスは、1種または複数のゴム系組成物で形成され得る。例示されているタイヤは、例えば、車両、例えば、トラックまたは乗用自動車のリムに載置するために好適である。認識されるように、タイヤ10の全体的構造は、
図1に示されているものと異なっていてもよく、より少ないまたはより多くの部品を含んでいてもよい。
【0032】
本インナーライナーは、
図1に示されるように、空気入りタイヤにおける一体型インナーライナー30として使用され得る。しかし、タイヤは、示されているものと異なる配置を有し得ることは認識されるべきである。インナーライナーは、ゴム全体の100重量部当たりの重量部(phr)に基づいて、
(A)(1)少なくとも60phrのブチルゴム、および
(2)40phrまでのジエン系ゴム
を含む100phrの加硫性エラストマーと、
(B)35~70phrの補強用フィラー、例えば:
(1)1種または複数の無機フィラー、例えば炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウム、ならびに
(2)20phr以下のゴム補強用カーボンブラック
と、
(C)任意に、1種または複数の加工助剤、例えば油、可塑剤および粘着付与剤樹脂のうちの1種または複数と、
(D)任意に、1種または複数の劣化防止剤、例えばオゾン劣化防止剤および酸化防止剤のうちの1種または複数と、
(E)硫黄系硬化剤および酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を含む硬化系と、
(F)任意に、酸化亜鉛以外の1種または複数の硬化助剤、例えば有機硬化活性化剤、硬化促進剤および硬化遅延剤のうちの1種または複数と
を含む硬化ゴム組成物から形成され得る。
【0033】
A:エラストマー
1.ブチルゴム
ブチルゴムは、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマーである。ブチルゴムは、非ハロゲン化ブチルゴムおよび/またはハロブチルゴム、例えばブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、部分解重合ブロモブチルゴム、部分解重合クロロブチルブチルゴム、および部分解重合ブチルゴム、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0034】
一実施形態では、ブチルゴムは、ブロモブチルゴムを含む。
ブチルゴムは、ゴム組成物におけるエラストマーの主要成分であり、100phrまで(すなわち、他のエラストマーなし)であり得る。ブチルゴムは、少なくとも60phr、または少なくとも65phr、または80phrまで、または75phrまで、例えば65~75phrであり得る。
【0035】
2.ジエン系エラストマー
ジエン系エラストマーは、イソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも1種のポリマー、スチレンとイソプレンおよび1,3-ブタジエンの少なくとも1種とのコポリマー、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物から選択され得る。例えば、ジエン系エラストマーは、ポリイソプレン、例えば天然ゴム(主にcis-1,4-ポリイソプレン)および合成cis-1,4-ポリイソプレン、メチルブタジエン、ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0036】
一実施形態では、ジエン系エラストマーは、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選択されるポリイソプレンを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、天然ゴムは、変性天然ゴム、例えば脱タンパク天然ゴム(DPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴムまたはそれらの混合物を含んでいてもよいし、またはそれらからなるものでもよい。一部の実施形態では、合成ポリイソプレンゴムは、変性合成ポリイソプレンゴム、例えば脱タンパク、エポキシ化、水素化および/もしくはグラフト化合成cis-1,4-ポリイソプレン、またはそれらの混合物を含むものでもよいし、またはそれらからなるものでもよい。
【0037】
本明細書で使用される「天然ゴム」という用語は、天然に存在する、例えば供給源、例としてパラゴムノキ属(Hevea)のゴムノキおよび非パラゴムノキ属の供給源(例えば、グアユールという低木およびタンポポ、例えばTKS)から採取され得るゴムを意味する。言い換えれば、「天然ゴム」という用語は、合成ポリイソプレンを排除するように解釈されるべきである。パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)という木からのフィールドグレードの凝固ゴム(カップランプ)から生成された天然ゴムは、天然ゴムの一般的形態である。例えば、技術的に格付されたブロックゴム(TSR)は、インドネシアから入手できる天然ゴムであり、これは標準インドネシアゴム(SIR)、標準マレーシアゴム(SMR)および標準タイゴム(STR)といわれることがある。これは、TSR 10およびTSR 20を含むいくつかのグレードで得られ、TSR 10グレードは、より高い純度のものである。
【0038】
一実施形態では、天然ゴムは、組成物に使用されるジエン系ゴムの主要部(最高phr)である。
【0039】
使用され得る他のジエン系エラストマーは、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、アルコキシ-シリル末端官能基化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、ならびにケイ素カップリングおよびスズカップリング星状分岐ポリマーを含む。
【0040】
ゴム組成物は、本明細書に記載されているジエン系エラストマーを含まないものでもよい。別の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも10phrのジエン系エラストマー、例えば天然ゴムを含む。ジエン系エラストマー、例えば天然ゴムは、ゴム組成物中に少なくとも25phr、または40phrまで、または35phrまでであり得る。
【0041】
ゴム組成物中に存在する共役ジエン系エラストマーおよび天然ゴムとは別に、少ない量(例えば、10phr未満、または5phrまで、または2phrまで)で使用できる他の好適な加硫性エラストマーは、ニトリルゴム、液状ゴム、ポリノルボルネンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水和アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ブチルゴム、水素化スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム;エチレンモノマー、プロピレンモノマーおよび/もしくはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)から形成されるターポリマー;イソプレン系ブロックコポリマー、ブタジエン系ブロックコポリマー、スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-[エチレン-(エチレン/プロピレン)]-スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、ランダムスチレンコポリマー、水素化スチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン、半結晶性ポリオレフィン、アルファ-ポリオレフィン、リアクターレディ(reactor-ready)ポリオレフィン、アクリレート、メタロセン-触媒ポリオレフィンポリマーおよびエラストマー、リアクターメイド(reactor-made)熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、コポリエステルブロックコポリマー、ポリウレタンブロックコポリマー、ポリアミドブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性加硫物、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンn-ブチルアクリレートコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、ネオプレン、アクリル、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンを含むポリエチレン、エチレン-プロピレンポリマー、プロピレン-ヘキセンポリマー、エチレン-ブテンポリマー、エチレンオクテンポリマー、プロピレン-ブテンポリマー、プロピレン-オクテンポリマー、メタロセン-触媒ポリプロピレンポリマー、メタロセン-触媒ポリエチレンポリマー、エチレン-プロピレン-ブチレンターポリマー;プロピレン、エチレン、C4~C10アルファオレフィンモノマーから生成されたコポリマー;ポリプロピレンポリマー、マレイン化ポリオレフィン、ポリエステルコポリマー、コポリエステルポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ならびに/もしくはポリ酢酸ビニル、およびこれらの混合物から選択することができ、および/または上記ポリマーは、ポリマー鎖末端もしくはポリマー内のペンダント位で、ヒドロキシル基、エトキシ基、エポキシ基、シロキサン基、アミン基、アミンシロキサン基、カルボキシ基、フタロシアニン基およびシラン-スルフィド基の1種または複数から選択される官能基を有し、ならびに/もしくは変性されている。
【0042】
B 補強用フィラー
ゴム組成物は、合計で少なくとも35phrのフィラー、または少なくとも40phr、または少なくとも50phr、または90phrまで、または80phrまで、または70phrまで、または60phrまで、または50phrまでのフィラーを含み得る。フィラーは、無機フィラー、カーボンブラックおよびそれらの混合物から選択され得る。
【0043】
(1)無機フィラー
ゴム組成物に使用され得る無機フィラーの例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタンおよびそれらの混合物を含む。
【0044】
一実施形態では、無機フィラーは、炭酸カルシウム(CaCO3)を含む。特定の一実施形態では、炭酸カルシウムは、使用される唯一の無機フィラーである。
【0045】
ゴム組成物は、少なくとも35phrの炭酸カルシウム、または少なくとも40phr、または少なくとも45phr、または70phrまで、または65phrまで、または60phrまでの炭酸カルシウムを含み得る。
【0046】
一実施形態では、炭酸カルシウムは、フィラー100部当たりの重量部(phf)で60重量部以上、例えば少なくとも70phf、または少なくとも80phf、または少なくとも90phf、または100phfまでで存在し、フィラーの合計量は、存在するすべての炭素系フィラーおよびすべての無機フィラーを含む。
【0047】
他の実施形態では、すべてまたは一部の炭酸カルシウムを、炭酸マグネシウムで置き換えてよい。
【0048】
一実施形態では、ゴム組成物は、シリカ、例えば、少なくとも1phrのシリカ、または少なくとも3phr、または少なくとも5phr、または40phrまで、または30phrまで、または20phrまで、または8phrまで、または6phrまでのシリカも含み得る。別の実施形態では、シリカは、ゴム組成物から除外してもよく、または1phr以下で存在してもよい。
【0049】
シリカは、非晶質(例えば沈降)シリカおよび/または結晶性シリカであり得る。「シリカ」という用語は、二酸化ケイ素SiO2(少量、一般に1wt.%未満の不純物を含有し得、シリカが形成されるプロセスから生じる)を指すように本明細書で使用される。「沈降シリカ」という用語は、典型的には、シリケートを酸性化剤で沈降させるプロセスにより得られる合成非晶質シリカを指すように使用される。沈降シリカは、例えば、籾殻または他の生物学的廃棄物で見出される非晶質シリカを水酸化ナトリウムで消化して、ケイ酸ナトリウムを形成し、酸性化剤、例えば硫酸または二酸化炭素との反応によってケイ酸ナトリウムからシリカを沈殿させることにより調製され得る。あるいは、シリカは、シリカゲルから、例えば、シリカヒドロゲルをオルガノメルカプトシランおよびアルキルシランで疎水化し(hydrophobate)、生成物を乾燥させることにより、生成され得る。沈降シリカを調製するための方法は、例えば、米国特許第5,587,416A、第5,708,069Aおよび第9,359,215B2、ならびに米国特許出願公開第20020081247A1および第20050032965A1に開示されている。
【0050】
補強用フィラーに使用されるシリカは、ASTM D6845-20「Standard Test Method for Silica,Precipitated,Hydrated-CTAB(Cetyltrimethylammonium Bromide)Surface Area」に従って、少なくとも20m2/g、または少なくとも120m2/g、または少なくとも140m2/g、および/または500m2/gまで、または400m2/gまで、または300m2/gまでのCTAB比表面積を有し得る。
【0051】
一実施形態では、シリカは、例えば、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコールで表面処理されていることがあり、その後、前処理したシリカをゴム組成物中に組み込む。前処理は、シリカのエラストマーへの分散および/または接着を向上させる機能を有し得る。別の実施形態では、シリカは、一般に硬化剤を添加する前に、in situで、ゴム組成物内において、カップリング剤および/またはポリアルキレンオキシドで処理され得る。
【0052】
代表的なカップリング剤は、ビス(3-トリアルコキシシリルプロピル)ポリスルフィドを含み、そのアルコキシ基の少なくとも2種、および任意に3種すべてがエトキシ基であり、そのポリスルフィド架橋は、平均少なくとも2個の連結硫黄原子、例えば4個まで、または2個までの連結硫黄原子、およびアルコキシオルガノメルカプトシランを有し、アルコキシオルガノメルカプトシランは、ゴム組成物との混合中に好適なブロック剤でブロックされるメルカプト部分を任意に有し得る。アルコキシ基は、例えば、エトキシ基であり得る。
【0053】
ゴム組成物は、インナーライナー組成物に望ましい様々な物理的性質に応じて、例えば、タルク、クレイおよびマイカならびにそれらの混合物の少なくとも1種も、例えば、約2~25phr、または5phrまでの範囲で含有し得る。
【0054】
(2)カーボンブラック
一実施形態では、ゴム組成物は、カーボンブラック、例えば、少なくとも1phrのカーボンブラック、または少なくとも2phr、または少なくとも3phr、または20phrまで、または12phrまで、または10phrまでのカーボンブラックを含む。別の実施形態では、カーボンブラックは、ゴム組成物から除外してよい。
【0055】
カーボンブラックは、ゴム組成物に存在する場合、単一の補強用カーボンブラックであってもよく、または、2種以上の異なるタイプのカーボンブラックを含んでいてもよい。
【0056】
ゴム組成物に有用なカーボンブラックは、ASTM D6556-21「Standard Test Method for Carbon Black-Total and External Surface Area by Nitrogen Adsorption」に従って判定して、15m2/g~300m2/g、または少なくとも40m2/gの窒素表面積(NSA)を有し得る。例示的なカーボンブラックは、ASTM D1765-21「Standard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Products」による指定の通り、ASTM表示N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。
【0057】
一実施形態では、カーボンブラックは前処理し、その後例えばケイ素を用いてゴム組成物を形成する。一例のケイ素で処理したカーボンブラックは、Cabot CorporationからCRX(商標)2000 ECOBLACK(登録商標)として入手できる。
【0058】
一実施形態では、補強用フィラーは、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックを、少なくとも4:1、または少なくとも4.5:1、または少なくとも5:1および/または30:1までの炭酸カルシウム対ゴム補強用カーボンブラックの重量比で含んでいてもよく、またはそれらからなるものでもよい。
【0059】
C.加工助剤
加工助剤は、ゴム組成物に合計0~10.0phr、または少なくとも0.5phr、または少なくとも1phr、または6phrまで、または2phrまで使用され得、加工油、可塑剤、例えば炭化水素樹脂、ワックスおよび粘着付与剤樹脂のうちの1種または複数を含み得る。
【0060】
(1)加工油
加工油は、ゴム組成物形成の非生産的段階において使用され、および組成物加工を助成する油であり、また、有益な性質を硬化ゴム組成物に付与する場合もある。加工油は、室温にて液体である(すなわち、25℃以上にて、大気圧で液体である)。一般に、油および他の液体可塑剤は、0℃を下回るTg、一般に、例えば-30℃未満、または-40℃未満、または-50℃未満を大きく下回る、例えば0℃~-100℃のTgを有する。使用される油(複数可)のTgは、-40℃~-100℃であり得る。エラストマーまたは油のガラス転移温度(Tg)は、DIN 53445「Torsion Pendulum Test,Testing of Polymer Materials」(1986)に従って、特に指示がない限り1分当たり1℃の加熱速度で判定される。
【0061】
ゴム組成物は、少なくとも0.5phr、または少なくとも1phr、または5phrまで、または4phrまで、または3phrまで、または2phrまでの加工油を含み得る。別の実施形態では、加工油は、ゴム組成物から除外してよい。
【0062】
例示的な加工油は、石油、植物系油およびそれらの混合物を含む。石油系油は、芳香族、ナフテン系、低多環式芳香族(PCA)油およびそれらの混合物を含み得る。植物系油は、野菜、木の実、種子から採取した油およびその誘導体、例えばトリグリセリドおよびエステル化アルコキシ化ポリオールを含み得る。例示的な加工油は、植物系トリグリセリド油、およびやはり植物系であってもよいエステル化アルコキシ化ポリオールのブレンドを含んでいてもよいし、またはそれからなるものでもよい。他の加工油も想定される。
【0063】
(2)可塑剤
ゴム組成物に対する可塑剤の例は、アルキル化および芳香族炭化水素樹脂を含む。ゴム組成物は、少なくとも0.2phr、または少なくとも0.5phr、または4phrまで、または3phrまで、または2phrまでの可塑剤を含み得る。別の実施形態では、そのような可塑剤は、ゴム組成物から除外してよい。
【0064】
炭化水素樹脂の例は、少なくとも30℃、または50℃までのTgを有し得る。炭化水素樹脂のTgは、エラストマーのTg測定について上述の手順に従ってDSCにより判定され得る。炭化水素樹脂は、少なくとも70℃、または100℃までの軟化点を有し得る。炭化水素樹脂の軟化点は、一般にTgに関連している。Tgは、一般にその軟化点より低く、Tgが低いほど軟化点は低い。
【0065】
脂肪族樹脂の例は、C5留分ホモポリマーおよびコポリマー樹脂を含む。脂環式樹脂の例は、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびそれらの組合せを含む。
【0066】
芳香族樹脂の例は、芳香族ホモポリマー樹脂および芳香族コポリマー樹脂を含む。芳香族コポリマー樹脂は、1種または複数の芳香族モノマーと1種または複数の他の(非芳香族)モノマーと組合せであって、すべてのモノマーの重量の大半が一般に芳香族である組合せを含む炭化水素樹脂を指す。
【0067】
芳香族樹脂の具体的な例は、クマロン-インデン樹脂、アルキル-フェノール樹脂、およびビニル芳香族ホモポリマーまたはコポリマー樹脂を含む。アルキル-フェノール樹脂の例は、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、例えばp-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば低重合度を有するもの)を含む。ビニル芳香族樹脂は、以下のモノマー:アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンなどのうちの1種または複数を含み得る。ビニル芳香族コポリマー樹脂の例は、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えばリモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、およびDCPD/スチレンコポリマー樹脂)を含む。
【0068】
上述のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン)のうちの1種または複数をベースとする芳香族樹脂の場合、芳香族樹脂におけるモノマーの少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または100重量%までは、芳香族モノマーであってよい。
【0069】
(3)粘着付与剤樹脂
粘着付与剤樹脂は、ゴムコンパウンドに添加して、タイヤの異なるパーツを、それらが硬化するまで一緒に結合するのを助け、加工段階中にゴムコンパウンドの層の間に粘着性を持たせる。粘着付与剤樹脂は、一般に室温にて固体である。ゴム組成物に使用され得る粘着付与剤樹脂の例は、非反応性フェノールホルムアルデヒド樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペンフェノール樹脂、ならびに4~18個の炭素原子を含有する追加の不飽和炭化水素と2-メチル-2-ブテンおよびピペリレンを重合することにより調製される樹脂を含む。
【0070】
一実施形態では、そのような粘着付与剤樹脂は、ゴム組成物に含まれていなくてもよい。別の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも0.1phr、または少なくとも0.2phr、または2phrまで、または1phrまでの粘着付与剤樹脂を含み得る。
【0071】
(4)ワックス
好適なワックス、特にマイクロクリスタリンワックスは、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、346および347頁に示されているタイプのものであり得る。ワックスの例としては、分岐であっても非分岐であってもよいC22~C60飽和炭化水素、およびそれらの混合物を含む。ワックスは、使用される場合、ゴム組成物に1~5phrで存在し得る。他の実施形態では、ワックスは、ゴム組成物に含まれていない。
【0072】
上記の加工助剤のうちの1種または複数に加えて、ゴム組成物は、ペプタイザー、例えばペンタクロロチオフェノール、ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、またはそれらの混合物を含み得る。典型的なペプタイザーの量は、使用される場合、0.1phr~1phrであり得る。
【0073】
D.劣化防止剤(酸化防止剤、オゾン劣化防止剤)
一部の実施形態では、特にエラストマーが天然ゴムを含む場合、ゴム組成物は、1種または複数の劣化防止剤、例えばオゾン劣化防止剤および/または酸化防止剤を含み得る。これらの化合物は、タイヤを酸化およびオゾン化から保護するのを支援する。代表的な劣化防止剤は、アミン系酸化防止剤、例えばモノフェノール、ビスフェノール、チオビスフェノール、ポリフェノール、ポリマー性ヒンダードフェノール、ヒドロキノン誘導体、ホスファイト、ホスフェートブレンド、チオエステル、ナフチルアミン、ジフェノールアミン、ならびに、他のジアリールアミン誘導体、パラ-フェニレンジアミン(PPD)、キノリンおよびブレンドアミンを含む。アミン系酸化防止剤の例としては、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、オリゴマー化2,2,4-トリメチル-キノリン(TMQ)、および例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~347頁で開示されている他のアミン系酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、少なくとも0.1phr、または少なくとも0.3phr、または少なくとも1phr、または少なくとも2phr、または10phrまで、または5phrまでのゴム組成物であり得る。別の実施形態では、酸化防止剤はゴム組成物に含まれてない。
【0074】
オゾン劣化防止剤の例としては、物理的保護物質、例えばワックスを含む。好適なワックスは、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、346および347頁に記載されたタイプのものであり得るパラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスを含む。ワックスは、0.1phr以上、例えば少なくとも0.3phr、または少なくとも0.5phr、または5phrまで、または2phrまでで存在し得る。別の実施形態では、オゾン劣化防止剤はゴム組成物に含まれていない。
【0075】
E.硬化系
硬化系の例としては、硫黄系硬化剤、例えば元素状硫黄(遊離硫黄)、不溶性ポリマー状硫黄、可溶性硫黄、および硫黄供与性加硫剤、例えばアミンジスルフィド、ポリマー状ポリスルフィド、または硫黄オレフィン付加物、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0076】
硫黄系硬化剤は、ゴム組成物中0.1~10phr、例えば少なくとも0.3phr、または少なくとも0.4phr、または少なくとも0.6phr、または2phrまで、または1.5phrまで、または1phrまで、または0.8phrまでの量で使用され得る。
【0077】
他の実施形態では、例えばポリイソプレンがゴム組成物に存在しない場合、硫黄系硬化剤は、除外してよい。
【0078】
酸化亜鉛(ZnO)は、存在する場合、ハロブチルゴムに対する架橋(すなわち硬化)剤としての機能を果たす一方、ジエンエラストマーを硬化する硫黄系硬化剤に対する活性化剤としての機能も果たす。酸化亜鉛は、少なくとも1phr、例えば、少なくとも2phr、または少なくとも3phr、または10phrまで、または8phrまで、または7phrまで、または5phrまでの量で存在し得る。
【0079】
F.有機硬化活性化剤、硬化促進剤および硬化遅延剤
(1)有機硬化活性化剤
硬化活性化剤は、加硫をサポートするために使用される添加剤である。硬化活性化剤は、無機硬化活性化剤(例えば上記の酸化亜鉛)および有機硬化活性化剤の両方を含む。
【0080】
有機硬化活性化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、それらの混合物、先述の各々の亜鉛塩、ならびにチオ尿素化合物、例えばチオ尿素、およびジヒドロカルビルチオ尿素、例えばジアルキルチオ尿素、およびジアリールチオ尿素、ならびにそれらの混合物を含む。特定のチオ尿素化合物は、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素およびo-トリルチオ尿素を含む。一般的に使用される有機硬化活性化剤のうちの1種は、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸のブレンドであり、ステアリン酸はブレンドの主要成分である。
【0081】
有機硬化活性化剤の合計量は、使用される場合、0.1~10phr、例えば少なくとも0.5phr、または少なくとも2phr、または少なくとも3phr、または8phrまでであり得る。別の実施形態では、有機硬化活性化剤は、ゴム組成物から除外される。
【0082】
(2)硬化促進剤
硬化促進剤は、硫黄系硬化剤に対する触媒として作用する。促進剤は、加硫に必要とされる時間および/または温度を制御するために、ならびに、加硫物の性質を改善するために使用される。単一の促進剤系、すなわち一次促進剤は、約0.5~8.0phrの範囲の量で使用され得る。代替として、活性化するために、および加硫物の性質を改善するために、一般により多い量(0.3~3.0phr)で使用される一次促進剤、および一般により少ない量(0.05~1.0phr)で使用される二次促進剤からなり得る2種以上の促進剤の組合せが使用され得る。
【0083】
好適な硬化促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、キサンテートおよびそれらの混合物を含む。ジスルフィドの例は、アルキルフェノールジスルフィドポリマー、例えばポリ-tert-ブチルフェノールジスルフィドを含む。チアゾール硬化促進剤の例は、2-メルカプトベンゾチアゾールおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)を含む。スルフェンアミド硬化促進剤の例は、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、およびN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)を含む。グアニジン硬化促進剤は、ジフェニルグアニジン(DPG)を含む。
【0084】
使用され得る他の促進剤の例は、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(BDBZTH)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトライソブチルチウラムジスルフィド(TiBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TDEC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBED)、ジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、ブチルキサントゲン酸亜鉛(ZBX)、エチルキサントゲン酸ナトリウム(SEX)、イソブチルキサントゲン酸ナトリウム(SIBX)、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム(SIPX)、n-ブチルキサントゲン酸ナトリウム(SNBX)、アミルキサントゲン酸ナトリウム(SAX)、エチルキサントゲン酸カリウム(PEX)、アミルキサントゲン酸カリウム(PAX)、亜鉛2-エチルヘキシルホスホロジチオエート(ZDT/S)およびそれらの混合物を含む。
【0085】
いくつかのケースでは、他方より速く作用する促進剤との組合せが使用される。これらの促進剤の組合せは、最終的な特性における相乗効果を生じることが知られており、これらの促進剤の組みあわせによる最終的な特性は、いずれかの促進剤単体により生成されたものよりやや良好なことが知られている。さらに、通常の加工温度により影響を受けないが、普通の加硫温度にて満足すべき硬化を生じる遅延作用促進剤が使用され得る。一次促進剤として、ジスルフィドまたはスルフェンアミドが使用され得る。
【0086】
硬化促進剤は、ゴム組成物に0.1~10phr、または少なくとも0.5phr、または少なくとも1phr、または少なくとも1.5phr、または8phrまで、または7phrまで、または6phrまでで組み込まれ得る。硬化促進剤の量は、例えば90分よりも短い許容できる硬化時間を与えるように選択され得る。
【0087】
3)硬化遅延剤
硬化遅延剤は、硬化プロセスを制御するため、および一般に、望ましい時間および/または温度に達するまで硬化を遅らせるか、または阻害するために使用され得る。硬化遅延剤の例は、シクロヘキシルチオフタルイミドを含む。
【0088】
硬化遅延剤の量は、使用される場合、少なくとも0.1phr、または3phrまで、または2phrまでであり得る。
一実施形態では、硬化遅延剤は、ゴム組成物から除外される。
【0089】
ゴム組成物の調製
ゴム組成物は、エラストマー、無機フィラーおよびカーボンブラック、ならびに硬化系(硫黄系硬化剤および/または酸化亜鉛)を含まない他のゴム配合成分を、少なくとも1つの機械的ミキサーを用いる、通常「非生産的」混合段階(複数可)といわれる少なくとも1つの逐次的な混合段階で高せん断のゴム混合条件下において昇温された温度まで混合し、続いて、最後の「生産的」混合段階で混合することにより調製され得る。「生産的」混合段階では、硬化パッケージ、例えば硫黄系硬化剤、酸化亜鉛、および1種または複数の硬化促進剤が、混合物に添加され、生産的混合段階中にゴム混合物を不必要に予備硬化することを避けるために、より低い混合温度にて混合される。
【0090】
成分は、非生産的混合段階(複数可)で約2~3分、130℃~200℃、例えば約140℃~160℃の温度に混合され得る。2つ以上の非生産的段階が、一部の実施形態では使用され得る。硬化パッケージ(硫黄系硬化剤(例えば可溶性硫黄)、促進剤およびいずれかの残りの活性化剤を含む)が添加されると、後続の生産的混合ステップは、ゴム組成物の望ましくない予備硬化を避けるために、加硫(硬化)温度よりも低い温度、例えば、120℃以下、例えば少なくとも40℃、または少なくとも60℃にて、例えば105~115℃の温度にて2分実施され得る。混合は、例えば、バンバリーミキサー内で、または粉砕ロール(milled roll)上で成分を一緒に混練することにより行われ得る。ゴム組成物は、混合段階の各々の間で、40℃を下回る温度まで冷却され得る。例えば、ゴム組成物は、各混合ステップの後で、ミキサーから落とされ、またはオープンミルから外にシート状に繰り出され、各混合ステップの後で40℃未満まで冷却され得る。
【0091】
生じた混合物は、10~26M.U.または18~23M.U.のムーニー粘度を有し得る。本明細書で使用されるムーニー粘度(ML1+4)は、ASTM D1646-19a「Standard Test Methods for Rubber-Viscosity,Stress Relaxation,and Pre-Vulcanization Characteristics(Mooney Viscometer)」に従って、100℃にて、M.U.で測定される。
【0092】
このようにして形成されたインナーライナーゴム組成物は、一般的にガムストリップといわれるものに成形される。ゴムガムストリップは、タイヤのタイプ、寸法および使用目的に応じて、0.4~10mm、または0.5~5mmの範囲の厚さを有し得る。ガムストリップは、ミル、カレンダー、マルチヘッド押出機または他の好適な成形手段を通してゴムコンパウンドをプレスするか、または通過させることにより生成され得る。未硬化ガムストリップは、次いで、カーカスとしても知られる未硬化ゴムタイヤ構造の内部表面(露出した内側表面)として構築される。インナーライナーは、次いで、加熱および圧力条件下で、タイヤ硬化作業中に、タイヤカーカスと共に同時硬化される。
【0093】
タイヤの加硫は、例えば、100℃~200℃、例えば110℃~180℃の温度にて実行され得る。通常の加硫プロセス、例えばプレスもしくは鋳型中での加熱、過熱蒸気もしくは熱塩による加熱、または塩浴中での加熱のいずれも使用され得る。
【0094】
この加硫の結果として、インナーライナーは、タイヤと同時硬化されることによりタイヤの一体部分になる。したがって、インナーライナーは、未硬化ゴムタイヤの内部表面を画定する配合ゴムガムストリップとして、最初に構築され、次いでタイヤ硬化作業中にタイヤと同時硬化されてもよい。
【0095】
一体型インナーライナーを有する空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラックタイヤ、または他のタイプのバイアス構造もしくはラジアル構造の空気入りタイヤの形態で構築され得る。ゴム組成物は、タイヤにおける使用に限定されず、ゴム手袋、手術用機器などにも応用され得る。
【0096】
表1に、インナーライナーゴム組成物の例を示す。
【0097】
【0098】
以下の実施例は、例示的な実施形態の範囲を限定することを意図せずに、例示的なゴム組成物、インナーライナー、インナーライナーを含むタイヤの調製、およびそれらの性質を例証する。
【実施例0099】
ブチルゴムタイプのゴム組成物A~Hは、表2に示す成分を使用して調製する。
非生産的段階では、天然ゴム、ハロブチルゴム、炭酸カルシウム、カーボンブラック(使用される場合)、脂肪酸および加工助剤は、使用される場合、電動ミキサー中で合わせられ、2~3分混合され、次いで約140℃の温度にてミキサーから滴下される。生産的段階では、硫黄、酸化亜鉛および促進剤が混合物に添加され、約2分混合され、次いで約110℃の温度にてミキサーから滴下される。
混合物は、ガムストリップに形成され、170℃にて約23分硬化される。
【0100】
【0101】
ゴム組成物の評価
コンパウンド試験
以下の試験をインナーライナーサンプルで行う:
G’(貯蔵弾性率)およびG”(損失弾性率)は、ゴムプロセスアナライザーを用いてMPaで判定される。結果は、100℃にて、1%、10%および50%歪み、および1ヘルツの周波数で得られる。G’に対するG”の比(G”:G’)であるTanδは、10%歪み、100℃および1ヘルツのサンプルで判定される。G”の値が低いほど良好と考えられる。
【0102】
空気拡散試験は、約150mmの長さおよび1.27mm±20%の厚さを有する硬化したサンプルで行われる。試験では、Cooper Tire & Rubber Company、Findlay、Ohioにより設計された空気拡散機器が、3.45bar(約3.52kg/cm2)の空気圧下で、70℃の温度にて使用された。
【0103】
結果を表3に示す。参考例1~3で表されている乗用車用タイヤのための従来のインナーライナーも評価する。
【0104】
【0105】
実施例A、BおよびCは、一般に損失弾性率G”の結果により立証されるように、参考サンプル(従来のインナーライナー)より軟らかい材料であることがわかる。
【0106】
タイヤ試験
空気拡散試験は、表2に示す組成物のいくつかから形成された一体型インナーライナーを有する乗用自動車用タイヤで行われる。インナーライナーは、未硬化状態で1.2mmの厚さを有する。参考例1~3で表されている乗用車用タイヤも、同一のインナーライナーの厚さで評価される。45±2℃の温度で15日間、および21±3℃の温度で60日間を、促進後の空気保持性(air retention)および空気拡散性(air diffusion)の測定にそれぞれ使用した。
【0107】
転がり抵抗性は、ISO 28580:2009「Passenger Car,Truck And Bus Tyres - Methods Of Measuring Rolling Resistance - Single Point Test And Correlation Of Measurement Results」に従って判定される。ISO 28580:2009は、主に乗用自動車、トラックおよびバスで使用するために設計された新しい空気入りタイヤに対し、制御された研究室条件下で転がり抵抗性を測定するための方法を指定している。試験では、試験室温にて3時間のコンディショニング、および30分のウォームアップの後、荷重80%、インフレーション2.1SL/2.5XL、25℃にて、80km/時の速度での乗用車用タイヤ試験条件が使用された(205/55R16タイヤで試験した)。結果を、表4に示す。
【0108】
【0109】
表4に示すように、実施例のインナーライナーを有するタイヤ4、5および6は、従来のインナーライナーを有するタイヤ1~3より低い転がり抵抗性係数(<5kg/t)を有する。従来のインナーライナーに対する転がり抵抗性の増大が2~7%である一方、空気透過性は、従来のインナーライナーの範囲内に保持される。全体として、実施例のインナーライナーは、転がり抵抗性と空気透過性との間でより良好な折衷策を提供する。
【0110】
全体として、実施例のインナーライナーは、タイヤの良好な空気保持性を維持しつつ、転がり抵抗性を低下させる利益を示す。
【0111】
実施例のインナーライナーは、歪みが制御され、G”(損失弾性率)が低いほど、転がり抵抗性が低くなる。
【0112】
図2は、実施例A、BおよびCのすべてが、低G”および低空気拡散の両方が目標域内にあることを例証する。
【0113】
インナーライナー組成物で行われる他の物理的試験は、従来のインナーライナーのものと比べて有利であり、ここには含まれていない。
【0114】
本明細書に開示されている軟らかいインナーライナーは、消費者向けタイヤに低転がり抵抗性および良好な空気保持性を付与する。別の利点は、タイヤのインナーライナーを形成するのに炭酸カルシウムおよびより少量のカーボンブラックを使用することで、参考例のタイヤと比較した場合、インナーライナーの全体的コストを削減できることである。
【0115】
特に指示がない限り、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、商用グレードに存在すると通常理解される異性体、副生成物、誘導体および他のそのような材料を含有し得る商用グレード材料と解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、特に指示がない限り、商用材料に慣例的に存在し得るいかなる溶媒または希釈油も含まない。本明細書に明記されている量、範囲の上限ならびに下限および比の限界は、独立して組み合わされ得ることは理解されるべきである。同様に、本発明の各要素に対する範囲および量は、いずれかの他の要素に対する範囲または量と共に使用され得る。