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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001106
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241225BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241225BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241225BHJP
   G06F 21/44 20130101ALI20241225BHJP
【FI】
H02J7/10 A
H02J7/00 P
B60L53/66
G06F21/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100505
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 圭祐
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CB16
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD05
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BE02
5H125CC06
5H125DD03
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】外部充電前の通信シーケンスの開始時に証明書データの有効期限が切れている場合に、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上させる。
【解決手段】車両100は、車両100の外部に設けられた電力設備300によりバッテリ105を充電する外部充電を実行可能に構成されている。車両100は、記憶装置110と、制御装置150とを備える。記憶装置110は、外部充電の実行を許可するための証明書データ115を記憶する。制御装置150は、外部充電の開始前に電力設備300と車両100との間で実行される通信シーケンスを制御する。証明書データ115は、有効期限を有している。制御装置130は、通信シーケンスの開始時に有効期限が切れている場合に、証明書データ115を更新する更新処理を実行し、更新処理のタイムアウトが予測される場合に、通信シーケンスを一時停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部に設けられた電力設備により車載蓄電装置を充電する外部充電を実行可能な車両であって、
前記外部充電の実行を許可するための証明書データを記憶する記憶装置と、
前記外部充電の開始前に前記電力設備と前記車両との間で実行される通信シーケンスを制御する制御装置とを備え、
前記証明書データは、有効期限を有しており、
前記制御装置は、
前記通信シーケンスの開始時に前記有効期限が切れている場合に、前記証明書データを更新する更新処理を実行し、
前記更新処理のタイムアウトが予測される場合に、前記通信シーケンスを一時停止する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記通信シーケンスの一時停止の後に前記更新処理が完了した場合に前記通信シーケンスを再開する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記更新処理の実行時間が基準時間を超過すると、前記更新処理はタイムアウトし、
前記更新処理の開始から前記基準時間よりも短い所定時間内に前記更新処理が完了しない場合に、前記タイムアウトが予測される、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記更新処理がタイムアウトした場合に前記通信シーケンスを終了する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記電力設備のコネクタに接続可能に構成され、前記電力設備からの給電電力を受電するように構成されたインレットを備え、
前記通信シーケンスは、前記インレットへの前記コネクタの接続に応答して開始され、
前記通信シーケンスにおいて、前記車両が所定の認証を受けていることが前記電力設備により確認され、
前記外部充電は、前記車両が前記認証を受けていることが前記電力設備により確認された後に自動的に実行されるプラグアンドチャージを含む、請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2022-61185号公報)は、充電認証用装置を開示する。この装置は、車載処理部と、車両側認証部とを備える。車載処理部は、車両に搭載されており、車両外部の充電機器と通信する。充電機器は、車両の充電池を充電するために(外部充電を実行するために)用いられる。車両側認証部は、車両のユーザに対して予め発行された認証用情報をサーバ装置に送信する。この情報は、有効期限を有する電子証明書(証明書データ)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-61185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部充電の開始前、一般的に、車両と、車両外部の電力設備との間で種々の情報をやり取りするために通信シーケンスが実行される。通信シーケンスを実行して外部充電を開始するには、証明書データの有効期限が切れていないことを要する。通信シーケンスの開始時に証明書データの有効期限切れが判明した場合、証明書データを管理するサーバ等にアクセスして証明書データを更新することを要する(証明書データの更新処理)。しかしながら、通信速度の低下等に起因して更新処理に時間を要する場合には、更新処理がタイムアウトすることがある。その結果、通信シーケンスが完了せず途中で終了し、外部充電を開始することができない。その後、外部充電を開始するための操作が再度行われると、前回の通信シーケンスにおいてその開始から途中終了までの間に既にやり取りされていた情報が、今回の通信シーケンスにおいて再びやり取りされる可能性がある。これは、通信シーケンスにおける情報伝達の効率の観点から好ましくない。
【0005】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部充電前の通信シーケンスの開始時に証明書データの有効期限が切れている場合に、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上可能な車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両は、車両外部に設けられた電力設備により車載蓄電装置を充電する外部充電を実行可能に構成されている。この車両は、記憶装置と、制御装置とを備える。記憶装置は、外部充電の実行を許可するための証明書データを記憶する。制御装置は、外部充電の開始前に電力設備と車両との間で実行される通信シーケンスを制御する。証明書データは、有効期限を有している。制御装置は、通信シーケンスの開始時に有効期限が切れている場合に、証明書データを更新する更新処理を実行し、更新処理のタイムアウトが予測される場合に、通信シーケンスを一時停止する、車両。
【0007】
上記の構成とすることにより、通信シーケンスは、更新処理がタイムアウトする前に一時停止される。これにより、通信シーケンスが一時停止されている間に更新処理が完了し、それにより証明書データの有効期限が更新される。その結果、有効期限切れが解消される。したがって、有効期限切れに起因して通信シーケンスが途中で終了する事態が回避される。よって、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外部充電前の通信シーケンスの開始時に証明書データの有効期限が切れている場合に、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に従う充電処理システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】制御装置の構成および機能を詳細に説明するための図である。
図3】P&C(Plug and Charge)に関連して実行される処理を例示するフローチャートである。
図4】P&Cに関連して実行される処理を例示するフローチャートである。
図5】変形例においてHLC(High Level Communication)-ECU(Electronic Control Unit)により実行される処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰り返さない。実施の形態およびその変形例の各々は、適宜互いに組み合わせられてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態に従う充電処理システム1の全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、充電処理システム1は、車両100と、サーバ200と、電力設備300と、証明書サーバ400と、携帯端末500とを備える。
【0012】
車両100は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。車両100は、バッテリ105と、記憶装置110と、DCM(Data Communication Module)120と、HMI(Human Machine Interface)装置130と、インレット140と、制御装置150とを含む。
【0013】
バッテリ105は、リチウムイオン電池などの二次電池であり、車両100に搭載される蓄電装置の一例である。バッテリ105は、車両100の走行用の電力を蓄える。車両100は、電力設備300によりバッテリ105を充電する外部充電を実行可能に構成されている。この例では、電力設備300から車両100への給電電力は、直流電力である。直流電力を用いた外部充電を「DC充電」とも表す。
【0014】
本実施の形態では、外部充電は、DC充電であって、詳細には、プラグアンドチャージ(P&C)と呼ばれる充電である。P&Cは、車両100が所定の認証を受けている認証車両(後述)であることが電力設備300により確認された後に自動的に実行される。「自動的に実行される」とは、DC充電を開始するためのユーザ操作(例えば、電力設備300の充電開始ボタン305に対する操作)無しで実行されることを意味する。すなわち、P&Cによれば、インレット140への電力設備300のコネクタ301の接続(挿入)に応答して通信シーケンスが自動的に開始され、通信シーケンスの完了後にDC充電が自動的に実行される。したがって、ユーザUは、P&Cの時、基本的にはコネクタ301をインレット140に挿入しさえすればよく、認証のためにICカードなどの電子機器を提示することを要しない。その結果、ユーザUの利便性を向上させることができる。
【0015】
P&Cは、所定のモビリティ事業者から提供されるサービスとして、当該事業者とユーザUとの間の契約に基づいて実行される。以下、外部充電がP&Cである例を主に説明する。
【0016】
記憶装置110は、セキュアメモリであって、証明書データ115を記憶している。証明書データ115は、P&Cの実行を許可するために用いられる。証明書データ115は、車両100が、所定の認証を受けている認証車両であることを電子署名により証明する。この認証は、ユーザUがP&Cによる充電サービスを利用するための契約をモビリティ事業者としている場合に当該事業者から車両100に与えられる。この例では、ユーザUがこの事業者と上記契約をしている。証明書データ115は、有効期限情報116を含む。有効期限情報116は、証明書データ115の有効期限を示す。このように、証明書データ115は、有効期限を有する。有効期限が切れると、上記の認証が失効して、P&Cを実行することができない。証明書データ115は、P&Cの開始前に車両100と電力設備300との間で実行される通信シーケンスにおいて用いられる。
【0017】
通信シーケンスは、P&Cの開始前に車両100と電力設備300との間で各種情報をやり取りする処理である。当該情報は、車両100に関する各種情報(車両情報)と、電力設備300の諸元情報(設備情報)とを含む。車両情報は、充電サービスに関するユーザUの認証情報(例えば、クレジットカード情報)と、車両100の識別情報(例えば、製造業者情報、および識別番号)とを含む。設備情報は、電力設備300の識別情報(例えば、製造業者情報、および識別番号)を含む。
【0018】
通信シーケンスは、車両100が認証車両であることを電力設備300が確認するために、および、電力設備300が認証設備であることを車両100が確認するために実行される。認証設備は、上記モビリティ事業者から与えられる所定の認証を受けている電力設備をいう。通信シーケンスを実行してP&Cを開始するためには、証明書データ115の有効期限が切れていないことを要する。この通信シーケンスは、所定の国際的な通信規格に準拠している。この通信規格は、例えば、ISO15118-20である。
【0019】
DCM120は、車両100の外部機器と無線通信するように構成されている。外部機器は、サーバ200を含む。HMI装置130は、各種画面を表示する。この画面は、証明書データ115の有効期限を切れている場合にその旨をユーザUに報知するための報知画面を含む。
【0020】
インレット140は、電力設備300のコネクタ301に接続可能に構成されている。実施の形態では、インレット140へのコネクタ301の接続に応答して、通信シーケンスが開始される。インレット140は、電力設備300から供給される給電電力を受電するように構成されている。
【0021】
制御装置150は、DCM120およびHMI装置130などの、車両100の各種機器を制御する。制御装置150は、インレット140へのコネクタ301の接続(挿入)を、電力設備300からインレット140を通じて入力される信号CPLTのレベルに基づいて検知する。P&Cの開始前、制御装置150は、電力設備300が認証設備であることを通信シーケンスにおいて確認する。制御装置150の構成および機能については、後ほど詳しく説明する。
【0022】
サーバ200は、車両100と通信するように構成されている。サーバ200は、携帯端末500と通信するようにも構成されている。携帯端末500は、例えばスマートフォンであって、車両100のユーザUにより所有されている。携帯端末500は、各種画面を表示するためのディスプレイを含む。
【0023】
電力設備300は、車両100の外部に設けられており、商用電源(図示せず)に接続されている。電力設備300は、コネクタ301と、電力ケーブル302と、給電部303と、充電開始ボタン305と、通信部307と、制御部309とを含む。コネクタ301は、電力ケーブル302の先端に設けられている。給電部303は、商用電源からの交流電力を直流電力に変換し、変換後の電力を電力ケーブル302を通じて車両100に供給するように構成されている。充電開始ボタン305は、DC充電の開始を指示するユーザ操作を受けることができる。通信部307は、証明書サーバ400(後述)と無線通信するように構成されている。通信部307は、車両100との間で通信シーケンスを実行するようにも構成されている。制御部309は、給電部303および通信部307を制御する。P&Cの開始前、制御部309は、車両100が認証車両であることを通信シーケンスにおいて確認する。
【0024】
証明書サーバ400は、P&Cによる充電サービスを提供するモビリティ事業者により運用される。証明書サーバ400は、証明書データ115の有効期限が切れている場合に、新たな証明書データを別途発行することができる。証明書サーバ400は、電力設備300と無線通信するように構成されている。
【0025】
図2は、制御装置150の構成および機能を詳細に説明するための図である。図2を参照して、制御装置150は、車両ECU155と、充電制御ECU160と、HLC-ECU170とを含む。
【0026】
車両ECU155は、車両100の制御を統括的に実行する。車両ECU155は、例えば、DCM120、HMI装置130、および充電制御ECU160を制御する。
【0027】
充電制御ECU160は、CPU162と、メモリ164とを含む。CPU162は、各種の演算処理を実行する。メモリ164は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、CPU162により実行されるプログラムを記憶する。インレット140へコネクタ301が接続された時、充電制御ECU160は、HLC-ECU170に起動指令を送信する。HLC-ECU170の起動中、HLC-ECU170は、通信シーケンスの状態を示す情報をHLC-ECU170から逐次受信して通信シーケンスを管理し、それにより、HLC-ECU170を制御するための制御指令をHLC-ECU170に送信する。DC充電中、充電制御ECU160は、バッテリ105の充電状態を示す情報を車両ECU155に送信する。この情報は、バッテリ105のSOC(States Of Charge)を含む。
【0028】
HLC-ECU170は、CPU172と、メモリ174とを含む。CPU172は、各種の演算処理を実行する。メモリ174は、ROMおよびRAMを含む。ROMは、CPU172により実行されるプログラムを記憶する。HLC-ECU170は、HLC通信により電力設備300と通信し、それにより、P&C前の通信シーケンスを制御したり、P&Cの開始後の給電電力を制御したりする。
【0029】
HLC-ECU170は、通信シーケンスの開始時に証明書データ115の有効期限が切れている場合に、証明書データ115を更新する更新処理を実行するように構成されている。この更新処理は、証明書データ115の有効期限を現在日時よりも後の日時に更新(延長)する処理を含む。現在日時とは、更新処理が実行される日時である。
【0030】
更新処理は、HLC通信により電力設備300に証明書要求信号を送信する処理を含む。この信号は、証明書サーバ400に新たな証明書データを発行させることと、発行された証明書データを取得することと、証明書データの取得完了を示す取得完了通知を車両100に送信することと、取得された証明書データを車両100に送信することとを電力設備300に要求する要求信号である。更新処理は、電力設備300から新たな証明書データを受信する処理と、有効期限切れの古い証明書データを削除する処理と、新たな証明書データを証明書データ115として記憶装置110に格納(インストール)する処理とをさらに含む。
【0031】
更新処理の実行時間が基準時間を超過した場合、更新処理がタイムアウトする。この基準時間は、前述の通信規格に基づいて定められており、例えば5秒である。
【0032】
通信シーケンスの開始時に証明書データ115の有効期限切れが判明した場合、証明書サーバ400にアクセスして新たな証明書データを発行させて証明書データ115を更新することを要する。しかしながら、証明書データ115のデータサイズは一般的に大きい。車両100と電力設備300との間のHLC通信の速度が低下することもある。よって、証明書データ115の更新処理と、前述の車両情報および設備情報のやり取りとの双方がHLC通信により実行されると、HLC通信のデータ量が増大する。加えて、電力設備300と証明書サーバ400との間の通信速度が低下することもある。このような場合、更新処理に時間を要する。更新処理に時間を要し更新処理がタイムアウトすると、証明書データ115が更新されず(新たな証明書データが取得されず)、証明書データ115の有効期限切れが解消されない。その結果、通信シーケンスが完了せず途中で終了し、P&Cを開始することができない。その後、充電開始ボタン305が再度操作され得るが、前回の通信シーケンスの開始から途中終了までの間にやり取りされていた情報(前述の車両情報および設備情報の一部)が、今回の通信シーケンスにおいて再びやり取りされる可能性がある。これは、通信シーケンスにおける情報伝達の効率の観点から好ましくない。
【0033】
実施の形態に従う制御装置150は、そのような問題に対処するための構成を有する。具体的には、制御装置150は、通信シーケンスの開始時に証明書データ115の有効期限切れが判明した場合に、更新処理のタイムアウトが予測されるときに通信シーケンスを一時停止(スリープ)する処理を実行する。この処理は、通信シーケンスを一時停止するための一時停止要求を電力設備300に送信する処理を含む。
【0034】
このような構成とすることにより、電力設備300は、一時停止要求に応答して通信シーケンスを一時停止する。これにより、通信シーケンスは、更新処理がタイムアウトする前に一時停止される。通信シーケンスの一時停止に起因して、HLC通信のデータ量が低減され、制御装置150(HLC-ECU170)のデータ処理負荷が低減され、更新処理の処理速度が向上する。その結果、通信シーケンスが一時停止されている間に(更新処理のタイムアウト前に)更新処理が完了し、それにより証明書データ115の有効期限が更新されて、有効期限切れが解消される。したがって、有効期限切れに起因して通信シーケンスが途中で終了する事態が回避される。よって、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上させることができる。
【0035】
更新処理の実行時間が基準時間を超過するか(タイムアウトが引き起こされるか)否かは、更新処理の開始から基準時間よりも短い所定時間内に更新処理が完了したか否かに従って制御装置150により予測(判定)される。所定時間は、例えば3秒である。この例では、更新処理の開始から上記所定時間内に更新処理が完了しない場合、タイムアウトが予測される。更新処理の開始から所定時間内に更新処理が完了している場合、タイムアウトが引き起こされない(更新処理が基準時間内に完了した)と判定される。
【0036】
更新処理の開始から所定時間内に更新処理が完了していない場合、更新処理が長引いている可能性がある。この場合、更新処理に起因して通信シーケンスの実行時間が基準時間を超過してタイムアウトする可能性がある。上記のように所定時間に基づく予測処理によれば、タイムアウトが引き起こされるか否かを適切に予測することができる。
【0037】
なお、更新処理が完了したか否かは、HLC-ECU170が電力設備300から証明書データの取得完了通知と新たな証明書データとを受信してこの証明書データを記憶装置110に格納する処理が完了したか否に従って判定される。
【0038】
制御装置150は、通信シーケンスの一時停止の後に証明書データ115の更新処理が完了した場合に、通信シーケンスの一時停止を解除して通信シーケンスを再開する処理を実行する。この処理は、通信シーケンスを再開するための再開要求を電力設備300に送信する処理を含む。
【0039】
このような構成とすることにより、有効期限切れが解消された状態で通信シーケンスが再開される。これにより、P&Cの開始前に通信シーケンスを完了することができる。その結果、通信シーケンスの開始時に証明書データ115の有効期限が切れていることが判明した場合であっても、インレット140へのコネクタ301の再挿入、充電開始ボタン305の押下などのユーザ操作無しでDC充電を自動的に開始することができる。
【0040】
図3および図4は、P&Cに関連して実行される処理を例示するフローチャートである。このフローチャートは、インレット140へのコネクタ301の接続が検知されると開始する。
【0041】
図3を参照して、充電制御ECU160は、HLC-ECU170に起動指令を送信する(S105)。HLC-ECU170は、この指令に応答して起動し、電力設備300との間で通信シーケンスを開始する(S207)。HLC-ECU170は、通信シーケンスの開始時に有効期限情報116に基づいて証明書データ115の有効期限を確認する(S210)。
【0042】
HLC-ECU170は、現在日時が有効期限前であるか否かを判定する(S215)。現在日時が有効期限前である、すなわち、有効期限が切れていない場合(S215においてYES)、HLC-ECU170は、通信シーケンスを継続する。通信シーケンスの完了後、HLC-ECU170の処理は、図4のS297に進む。現在日時が有効期限よりも後、すなわち、有効期限が切れている場合(S215においてNO)、HLC-ECU170は、証明書データ115の有効期限切れを充電制御ECU160に通知する(S220)
充電制御ECU160は、この通知に応答して、証明書データ115を更新するようにHLC-ECU170に指令する(S125)。HLC-ECU170は、この指令に応答して、証明書データ115の更新処理を開始する(S230)。具体的には、HLC-ECU170は、電力設備300に証明書要求信号CR-RQを送信する。
【0043】
HLC-ECU170は、更新処理のタイムアウト(更新処理の実行時間が基準時間を超過すること)が予測されるか否かを判定する(S235)。具体的には、HLC-ECU170は、所定時間PT内に更新処理が完了したか否かを判定する。タイムアウトが予測されない場合、すなわち、所定時間PT内に更新処理が完了した場合(S235においてNO)、HLC-ECU170の処理は、図4のS297に進む。タイムアウトが予測される場合、すなわち、所定時間PT内に更新処理が完了しない場合(S235においてYES)、HLC-ECU170の処理は、図4のS240に進む。
【0044】
図4を参照して、HLC-ECU170は、通信シーケンスの一時停止を要求する一時停止要求TS-RQを電力設備300に送信する(S240)。
【0045】
電力設備300は、一時停止要求TS-RQに応答して、通信シーケンスの一時停止を受け入れ可能であるか否かを判定する(S342)。電力設備300が通信シーケンスの一時停止を受け入れ不可能である場合、例えば、仮に通信シーケンスが前述の通信規格に準拠していない場合(S342においてNO)、電力設備300の処理が終了する。電力設備300は、通信シーケンスの一時停止を受け入れ可能である場合(S342においてYES)、通信シーケンスを一時停止する。そして、電力設備300は、通信シーケンスの一時停止の受け入れをHLC-ECU170に通知する(S345)。具体的には、電力設備300は、一時停止受け入れ通知をHLC-ECU170に送信する。その後、電力設備300は、新たな証明書データを証明書サーバ400に発行させ、発行された証明書データをHLC通信によりHLC-ECU170に送信する(S360)。
【0046】
HLC-ECU170は、S240から所定期間内(例えば2秒以内)に一時停止受け入れ通知を受信したか否かを判定する(S250)。HLC-ECU170は、所定期間内にこの通知を受信していない場合(S250においてNO)、その旨を充電制御ECU160に通知する。この場合、更新処理がタイムアウトする。充電制御ECU160は、HLC-ECU170からの通知に応答して、証明書データ115の有効期限切れを示す有効期限切れ通知を車両ECU155に送信し、それにより、この通知がDCM120およびサーバ200を介して携帯端末500に送信される(S155)。携帯端末500は、有効期限切れ通知に応答して、証明書データ115の有効期限切れをユーザUに報知するための報知画面を表示する(S60)。この画面は、有効期限切れに起因するエラーが引き起こされたことを報知する画面として表示されてもよい。この画面は、車両100のHMI装置130に表示されてもよい。
【0047】
HLC-ECU170は、所定期間内に一時停止受け入れ通知を受信した場合(S250においてYES)、新たに発行された証明書データをHLC通信により電力設備300から受信する(S265)。HLC-ECU170は、この証明書データを証明書データ115として古い証明書データに代えて記憶装置110に格納し、それにより更新処理を完了する(S270)。
【0048】
HLC-ECU170は、充電制御ECU160に有効期限更新通知を送信する(S275)。この通知は、更新処理の完了に起因して証明書データ115の有効期限が更新されたことを示す。充電制御ECU160は、この通知を車両ECU155に送信し、それにより、この通知がDCM120およびサーバ200を介して携帯端末500に送信される(S185)。携帯端末500は、有効期限更新通知に応答して、証明書データ115の有効期限の更新をユーザUに報知するための報知画面を表示する(S90)。この画面は、車両100のHMI装置130に表示されてもよい。
【0049】
HLC-ECU170は、S275の後、通信シーケンスの再開を要求する再開要求RS-RQを電力設備300に送信する(S292)。電力設備300は、再開要求RS-RQに応答して通信シーケンスを再開する(S394)。その後、通信シーケンスが完了する。
【0050】
HLC-ECU170は、通信シーケンスの完了後、P&C(外部充電)を開始するための処理を実行する(S297)。この処理は、車両100への給電開始を指令する給電開始指令を充電制御ECU160からの指令に従って電力設備300に送信する処理を含む。電力設備300は、給電開始指令に応答して車両100への給電を開始する。これにより、P&Cが開始する。
【0051】
以上のように、実施の形態によれば、制御装置150は、証明書データ115の更新処理のタイムアウトが予測される場合に、通信シーケンスを一時停止する。これにより、証明書データ115の有効期限切れに起因して通信シーケンスが途中で終了する事態が回避される。よって、通信シーケンスにおける情報伝達の効率を向上させることができる。
【0052】
証明書データ115の有効期限が切れている場合、制御装置150は、証明書データ115の更新を促す通知をDCM120およびサーバ200を通じて携帯端末500に送信し得るが、ユーザUがこの通知に気付いていないことがある。実施の形態は、ユーザUがコネクタ301をインレット140に挿入した時(P&Cの開始直前)にそのような通知に気付いてない場合に効果的である。
【0053】
[実施の形態の変形例]
通信シーケンスが一時停止されたにも拘わらず更新処理が長引いてタイムアウトする場合、更新処理に関連する通信が不安定である可能性がある。この通信は、例えば、電力設備300と証明書サーバ400との間の無線通信である。上記のように通信が不安定である場合、更新処理の再試行時にもタイムアウトが引き起こされる可能性が高いため、証明書データ115の更新が困難である。この場合、通信シーケンスが完全に終了することが好ましい。
【0054】
この変形例に従うHLC-ECU170は、更新処理がタイムアウトした場合に通信シーケンスを完全に終了するための処理を実行する。この処理は、通信シーケンスの終了を要求する終了要求を電力設備300に送信する処理を含む。
【0055】
このような構成とすることにより、更新処理がタイムアウトした場合(例えば、通信状況が不安定と考えられる場合)、通信シーケンスが完全に終了する。これにより、通信シーケンスが一時停止された状況が長時間にわたって継続して時間が浪費される事態を回避することができる。
【0056】
図5は、この変形例においてHLC-ECU170により実行される処理を例示するフローチャートである。図5を参照して、S250,S155の処理は、図4において示されたものと同じである。
【0057】
更新処理がタイムアウトした場合(S250においてNO)、HLC-ECU170は、通信シーケンスの終了を要求する終了要求EN-RQを電力設備300に送信する(S252)。電力設備300は、終了要求EN-RQに応答して通信シーケンスを完全に終了する。S252の後、処理は、S155に進む。この場合、S155の有効期限切れ通知は、不安定な通信状況に起因して証明書データ115の更新が困難であることをユーザUに通知するための情報を含んでもよい。
【0058】
以上のように、この変形例によれば、更新処理がタイムアウトした場合に、通信シーケンスが完全に終了される。これにより、通信シーケンスが一時停止された状況が長時間にわたって継続して時間が浪費される事態を回避することができる。
【0059】
[その他の変形例]
車両100は、外部充電を実行可能である限り、エンジンをさらに含むプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの他の種類の電動車両であってもよい。
【0060】
電力設備300の給電電力は、直流電力であるものとしたが、交流電力であってもよい。交流電力を用いた外部充電を「AC充電」とも表す。車両100のAC充電が実行される場合、車両100は、充電装置(図示せず)を含む。この充電装置は、電力設備300からの交流電力をバッテリ105の充電用の直流電力に変換し、変換後の電力をバッテリ105に供給する。このように、外部充電(P&C)は、DC充電に限定されず、AC充電であってもよい。
【0061】
制御装置150は、更新処理のタイムアウトが引き起こされるか否かを証明書データ115(更新前の証明書データ)のデータサイズに基づいて予測してもよい。例えば、このデータサイズがしきい値以上である場合、タイムアウトが引き起こされると予測される。他方、このデータサイズがしきい値未満である場合、タイムアウトが引き起こされない(更新処理が基準時間内に完了する)と予測される。このデータサイズを示す情報は、記憶装置110に予め記憶されている。
【0062】
DCM120は、証明書サーバ400と無線通信するように構成されていてもよい。この場合、制御装置150は、HLC通信に代えて無線通信により証明書サーバ400からDCM120を通じて新たな証明書データを取得し、取得されたデータに基づいて証明書データ115の更新処理を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 充電処理システム、100 車両、105 バッテリ、110 記憶装置、115 証明書データ、150 制御装置、300 電力設備、400 証明書サーバ、500 携帯端末。
図1
図2
図3
図4
図5