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特開2025-110612つの独立なコイルを有する電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法
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  • 特開-2つの独立なコイルを有する電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法 図1
  • 特開-2つの独立なコイルを有する電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011061
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】2つの独立なコイルを有する電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20250116BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20250116BHJP
   F02M 61/04 20060101ALI20250116BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20250116BHJP
   F02M 61/20 20060101ALI20250116BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
F02M61/10 D
F02M51/00 F
F02M61/04 G
F02M61/10 L
F02M61/16 Y
F02M61/20 D
F02M63/00 D
F02M61/20 C
F02M61/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024110036
(22)【出願日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】102023000014394
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】523058504
【氏名又は名称】マレッリ ヨーロッパ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジョ シニョレッリ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ ペトローネ
(72)【発明者】
【氏名】ステーファノ ペトレッキア
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ マティオーリ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーナ ラ マルファ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ザンポッリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ムンド
(72)【発明者】
【氏名】ルカ マンチーニ
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066BA22
3G066CC14
3G066CC15
3G066CE24
3G066CE25
3G066CE26
3G066CE34
3G066DC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】騒音レベルが低くかつ劣化(摩耗)が小さい電磁式燃料インジェクタを提供する。
【解決手段】電磁式インジェクタ1は、管形状の支持体4と、その端に配置された噴射ノズルと、噴射ノズル噴射ノズルに結合された噴射弁と、プランジャー8と、電磁アクチュエータ6で構成される。電磁アクチュエータは、主電磁石11と、二次電磁石12と、閉鎖バネを備えており、主電磁石が、アクティベートされているときに、プランジャーを噴射弁の開位置に向かって押す力を適用するように構成されており、二次電磁石は、アクティベートされているときに、プランジャーを噴射弁の閉位置に向かって押す力を適用するように構成され、閉鎖バネはプランジャーを噴射弁の閉位置に向かって押すように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の電磁式インジェクタ(1)であって、前記電磁式インジェクタ(1)は、
管形状の支持体(4)と、
前記支持体(4)の端に配置された噴射ノズル(3)と、
前記噴射ノズル(3)に結合された噴射弁(7)と、
プランジャー(8)であって、前記噴射ノズル(3)を通る燃料流を調節するために、前記噴射弁(7)の閉位置と開位置の間で可動である、プランジャー(8)と、
電磁アクチュエータ(6)であって、前記電磁アクチュエータ(6)は、主電磁石(11)を備えており、前記主電磁石(11)は、アクティベートされているときに、前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記開位置に向かって押す力を、前記プランジャー(8)に適用するように構成されており、かつ、前記電磁アクチュエータ(6)は、二次電磁石(12)を備えており、前記二次電磁石(12)は、アクティベートされているときに、前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記閉位置に向かって押す力を、前記プランジャー(8)に適用するように構成されている、電磁アクチュエータ(6)と、
前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記閉位置に向かって押すように構成されている、閉鎖ばね(10)と、
制御ユニット(20)であって、前記噴射弁(7)を開放するために、前記主電磁石(11)が前記閉鎖ばね(10)の弾性力に打ち勝って前記プランジャー(8)を前記開位置に向かって移動させる磁力を生成するように、前記主電磁石(11)をアクティベートするように構成されている、制御ユニット(20)と、
を備える、前記電磁式インジェクタ(1)において、前記制御ユニット(20)は、前記噴射弁(7)を開放することの間かつ前記プランジャー(8)が前記開位置に近いときに、前記二次電磁石(12)が前記開位置に向かう前記プランジャー(8)の移動を減速させる磁力を生成するように、前記二次電磁石(12)をもアクティベートするように構成されている、ことを特徴とする、電磁式インジェクタ(1)。
【請求項2】
前記電磁アクチュエータ(6)は、単一のアーマチュア(19)を備えており、前記アーマチュア(19)は、可動であり、前記プランジャー(8)に統合されており、かつ、それは両方の電磁石(11、12)によって生成された前記磁力を受けるので、両方の電磁石(11、12)によって共有されている、請求項1に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項3】
前記主電磁石(11)は、前記支持体(4)に統合された主アーマチュア(14)と、前記主アーマチュア(14)の領域に配置された主コイル(13)と、を備えており、
前記二次電磁石(12)は、前記支持体(4)に統合された二次アーマチュア(17)と、前記二次アーマチュア(17)の領域に配置された二次コイル(16)と、を備えており、かつ、
前記アーマチュア(19)は、前記主アーマチュア(14)と前記二次アーマチュア(17)の間に配置されている、請求項2に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項4】
前記噴射弁(7)の前記閉位置は、前記噴射弁(7)のバルブシートに対する前記プランジャー(8)のシャッター(9)の接触によって決定され、かつ、
前記噴射弁(7)の前記開位置は、前記主アーマチュア(14)に対する可動な前記アーマチュア(19)の接触によって決定される、請求項3に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項5】
前記2つの電磁石(11、12)の前記2つのコイル(13、16)は、互いに対して直列又は並列に接続されてはおらず、かつ、
前記制御ユニット(20)は、前記2つの電磁石(11、12)の前記2つのコイル(13、16)に、互いに独立に給電するように構成されている、請求項3に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(20)は、前記噴射弁(7)を開放するために、
前記主電磁石(11)が、前記アーマチュア(19)を前記主アーマチュア(14)に向かって引き付け、前記閉鎖ばね(10)の前記弾性力に打ち勝ち、ひいては前記アーマチュア(19)を前記開位置に向かって移動させる、磁力を生成するように、前記主電磁石(11)をアクティベートするように、かつ、
前記アーマチュア(19)が前記開位置に近いときに、前記二次電磁石(12)が前記アーマチュア(19)を前記二次アーマチュア(17)に向かって引き付ける磁力を生成し、結果として前記開位置に向かう前記アーマチュア(19)の移動を減速させるように、前記二次電磁石(12)をアクティベートするようにも、構成されている、請求項3に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(20)は、前記アーマチュア(19)が前記開位置に到達する前に、前記二次電磁石(12)をディアクティベートするように構成されている、請求項6に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項8】
前記制御ユニット(20)は、前記噴射弁(7)を閉鎖するために、
前記アーマチュア(19)が前記閉鎖ばね(10)によって生成された前記弾性力によって前記閉位置に向かって押されるように、前記主電磁石(11)をオフにするように、かつ、
前記アーマチュア(19)が前記閉位置に近いときに、前記主電磁石(11)が前記アーマチュア(19)を前記主アーマチュア(14)に向かって引き付ける磁力を生成し、結果として前記閉位置に向かう前記アーマチュア(19)の移動を減速させるように、前記主電磁石(11)をアクティベートするように、構成されている、請求項6に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項9】
前記制御ユニット(20)は、前記アーマチュア(19)が前記閉位置に到達する前に、前記主電磁石(11)をディアクティベートするように構成されている、請求項8に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項10】
前記制御ユニット(20)は、前記プランジャー(8)が前記開位置に到達する前に、前記二次電磁石(12)をディアクティベートするように構成されている、請求項1から9のうち一項に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(20)は、前記噴射弁(7)を閉鎖するために、
前記プランジャー(8)が前記閉鎖ばね(10)によって生成された前記弾性力によって前記閉位置に向かって押されるように、前記主電磁石(11)をオフにするように、かつ、
前記プランジャー(8)が前記閉位置に近いときに、前記主電磁石(11)が前記閉位置に向かう前記プランジャー(8)の移動を減速させるように、前記主電磁石(11)をアクティベートするように、構成されている、請求項1から9のうち一項に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項12】
前記制御ユニット(20)は、前記プランジャー(8)が前記閉位置に到達する前に、前記主電磁石(11)をディアクティベートするように構成されている、請求項11に記載の電磁式インジェクタ(1)。
【請求項13】
燃料の電磁式インジェクタ(1)を制御する制御方法であって、前記電磁式インジェクタ(1)は、
管形状の支持体(4)と、
前記支持体(4)の端に配置された噴射ノズル(3)と、
前記噴射ノズル(3)に結合された噴射弁(7)と、
プランジャー(8)であって、前記噴射ノズル(3)を通る燃料流を調節するために、前記噴射弁(7)の閉位置と開位置の間で可動である、プランジャー(8)と、
電磁アクチュエータ(6)であって、前記電磁アクチュエータ(6)は、主電磁石(11)を備えており、前記主電磁石(11)は、アクティベートされているときに、前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記開位置に向かって押す力を、前記プランジャー(8)に適用するように構成されており、かつ、前記電磁アクチュエータ(6)は、二次電磁石(12)を備えており、前記二次電磁石(12)は、アクティベートされているときに、前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記閉位置に向かって押す力を、前記プランジャー(8)に適用するように構成されている、電磁アクチュエータ(6)と、
前記プランジャー(8)を前記噴射弁(7)の前記閉位置に向かって押すように構成されている、閉鎖ばね(10)と、を備えており、
前記制御方法は、前記噴射弁(7)を開放するために、前記主電磁石(11)が前記閉鎖ばね(10)の弾性力に打ち勝って前記プランジャー(8)を前記開位置に向かって移動させる磁力を生成するように、前記主電磁石(11)をアクティベートするステップを含んでいる、
制御方法において、前記制御方法は、前記噴射弁(7)を開放することの間かつ前記プランジャー(8)が前記開位置に近いときに、前記二次電磁石(12)が前記開位置に向かう前記プランジャー(8)の移動を減速させる磁力を生成するように、前記二次電磁石(12)をもアクティベートするステップを含んでいる、ことを特徴とする、制御方法。
【請求項14】
前記制御方法は、
前記プランジャー(8)が前記ばね(10)によって生成された前記弾性力によって前記閉位置に向かって押されるように、前記主電磁石(11)をオフにするステップと、
アーマチュア(19)が前記閉位置に近いときに、前記主電磁石(11)が前記閉位置に向かう前記プランジャー(8)の移動を減速させるように、前記主電磁石(11)をアクティベートするステップと、を含む、請求項13に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本特許出願は、2023年7月10日に出願されたイタリア国特許出願第102023000014394号に対する優先権を主張する。該出願の開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法に関する。
【0003】
本発明は、有利には、電磁式水素インジェクタに適用される。以下の議論は、電磁式水素インジェクタに対して明示的に言及するが、それによって一般性は失われない。
【背景技術】
【0004】
概して、電磁式燃料インジェクタ(例えば、特許文献1に記載のもの)は、中央供給チャネルを有する円筒管状支持体を備えている。この円筒管状支持体は、燃料ダクトとして作用し、かつ、電磁アクチュエータによって制御される噴射弁によって調節される噴射ノズルで終わる。噴射弁はプランジャーを備えており、このプランジャーが、電磁アクチュエータの作用によって、プランジャーを閉位置に向かって押す閉鎖ばねの作用に抗して、噴射ノズルの閉位置と開位置の間で移動させられる。このプランジャーは、噴射弁のバルブシートに対してシールして着座するように適合された、シャッターヘッドで終わる。
【0005】
この電磁式アクチュエータは、上記支持体の外側であり上記支持体の周囲である固定位置に配置された、(少なくとも1つの)コイルと、プランジャーに堅固に接続されておりかつ支持体の内部で可動であるように取付けられている、強磁性体材料で作製された可動アーマチュアと、支持体の内側でコイルの領域に配置されておりかつコイルが励磁されたときには該アーマチュアを磁気的に引き付けるように適合されている、強磁性体材料で作製された固定アーマチュア(又は底部)と、を備えている。
【0006】
液体燃料が噴射されるとき、支持体内部における液体燃料の存在が、可動アーマチュアの移動に関連する障害を構成するのであり、事実上、可動アーマチュアの移動速度を制限する水圧ダンパーを形成する。一方では、気体燃料が噴射される(特に、極めて軽い気体である水素が噴射される)ときには、支持体内部における気体燃料の存在が可動アーマチュアの移動に関連する障害を構成することはなく、従って可動アーマチュアは高速で移動し、開放移動の最後には、アーマチュアに対して激しく衝突する。開放移動の最後におけるアーマチュアに対する可動アーマチュアの激しい衝突は、高い騒音レベル及び劣化(摩耗)の加速の両方を引き起こす。さらに、開放移動の最後におけるアーマチュアに対する可動アーマチュアの激しい衝突は、噴射される燃料の量に一定のランダム性の要素を導入する、関連する跳ね返り現象も引き起こす。
【0007】
このような点で、水素は密度が低い(2つの水素原子のみから成る非常に単純な分子を有している)ので、従って、十分な量(質量)の水素を燃焼室に噴射することを可能にするためには、それに関連する対応した量の水素を噴射することが必要であり、このことは、特に噴射弁を通る水素の通過領域の面積が大きいことを必要とすることに(即ち、水素インジェクタを出るために水素が通過しなければならない開口は、大きくなければならないことに)注意することが、重要である。噴射弁を通る水素の大面積の通過領域を有するためには、プランジャーが(ひいては可動アーマチュアが)閉位置と開位置の間で長距離移動を有することが必要であり、このことは、開放移動の最後におけるアーマチュアに対する可動アーマチュアの衝突速度のさらなる増加を引き起こす。
【0008】
開放移動の最後におけるアーマチュアに対する可動アーマチュアの衝突速度を制限するために、電磁アクチュエータのコイルを通過する特定の電流プロファイルが現在利用されており、これは、可動アーマチュアがアーマチュアに近いときには、可動アーマチュアをアーマチュアに向かって引き付ける磁力を減少させることを可能にすべきである。しかしながら、可動アーマチュアがアーマチュアに近いときの可動アーマチュアをアーマチュアに向かって引き付ける磁力の制御は、極めて複雑でありかつ精度もかなり高くない。というのも、この位置において、可動アーマチュアをアーマチュアに向かって引き付ける磁力は、強い非線形性を有している(即ち、可動アーマチュアとアーマチュアの間の空隙が非常に小さくなるときには、指数関数的に増加する)からである。
【0009】
特許文献2は、ディーゼルエンジンのための燃料インジェクタを記載している。該燃料インジェクタは、噴射路を閉鎖するための絞りニードル弁と、該ニードル弁に取付けられたアーマチュアと、アーマチュアを噴射路の開位置に向かって移動させる誘導磁場をアーマチュアに適用するための開放用電動ソレノイドと、アーマチュアを噴射路の閉位置に向かって移動させる誘導磁場をアーマチュアに適用するための閉鎖用電動ソレノイドと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1611384号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10101060号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上記の欠点を持たない電磁式燃料インジェクタを製造することであり、即ち、騒音レベルが低くかつ劣化(摩耗)が小さく、同時に、製造が容易かつ費用対効果が高い、電磁式燃料インジェクタを製造することである。
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲において特許請求されているとおりの電磁式燃料インジェクタ及び関連する制御方法が提供される。
【0013】
添付の特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分である、本発明の好ましい実施形態を例示している。
【0014】
ここで、本発明は、添付の図面を参照しつつ記述される。添付の図面は、本発明の非限定的で例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って製造された燃料インジェクタの一部の長手方向の断面図である。
図2図1の細部の拡大スケールでの図である。
図3】噴射弁を開放すること及びその後の閉鎖することの間の、可動アセンブリの位置及び図1の燃料インジェクタの2つの電磁石のアクティベーションの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では、参照符号1が、全体として、電磁式気体燃料(特に、水素)インジェクタを示しており、これは、長手方向軸2を中心とした円筒対称性を有しており、かつ、水素を噴射ノズル3を通じて噴射するために制御されるように適合されている。噴射ノズル3は、内燃機関のシリンダの燃焼室(図示されてはいない)内へと直接吹き込んでいる。
【0017】
電磁式インジェクタ1は、支持体4を備えており、支持体4は、断面が長手方向軸2に沿って変化する円筒管形状を有しており、かつ、加圧された水素を噴射ノズル3に向けて供給するための、支持体4の長さ全体に沿って延びる供給チャネル5を有している。
【0018】
支持体4は、電磁アクチュエータ6及び噴射弁7を格納している。使用時には、噴射弁7は、電磁アクチュエータ6によって、噴射弁7の領域で得られる噴射ノズル3を通る水素の流れを調節するために、動作させられる。
【0019】
電磁アクチュエータ6は、シャッター9で終わるプランジャー8を備える可動アセンブリを、軸方向に(即ち、長手方向軸2に沿って)移動させるように、構成されている。シャッター9は、噴射ノズル3を通る水素の流れを調節するために、噴射弁7のバルブシートと協働する。換言すれば、支持体4は、(少なくとも1つの)貫通孔であって、そこでバルブシートが定められかつシャッター9によって係合される、貫通孔で終わる。特に、電磁アクチュエータ6は、シャッター9を、噴射弁7の閉位置と開位置の間で移動させるように、構成されている。さらに、電磁アクチュエータ6は、電磁式インジェクタ1を通常は閉鎖されているように維持する閉鎖ばね10に結合されている。閉鎖ばね10は、即ち、シャッター9を噴射弁7の閉位置に向かって押しているのである。換言すれば、通常、噴射弁7は、プランジャー8を閉位置に向かって押す閉鎖ばね10の効果によって閉鎖されており、閉位置においては、プランジャー8のシャッター9は、噴射弁7のバルブシートに対して押し付けられているのである。
【0020】
添付の図面に示された実施形態では、噴射弁7は、内側に向かう軸方向移動を伴って開放され、好ましくは、シャッター9は、球形状を有している。図示されていない異なる実施形態によれば、噴射弁7は、外側に向かう軸方向移動を伴って開放され、好ましくは、シャッター9は、円錐台形状を有している。
【0021】
図2によりよく示されているところによれば、電磁アクチュエータ6は、独立して制御される、主電磁石11と、二次電磁石12とを備えている。主電磁石11は、(アクティベートされているときに)噴射弁7を開放する(従って、閉鎖ばね10によって生成された弾性力に抗する方向の)力をプランジャー8にかけるように構成されている。一方、二次電磁石12は、(アクティベートされているときに)噴射弁7を閉鎖する(従って、閉鎖ばね10によって生成された弾性力と調和的な)力をプランジャー8にかけるように構成されている。換言すれば、2つの電磁石11及び12は、互いに反対方向である力をプランジャー8にかけるように構成されている。
【0022】
主電磁石11は、支持体4の外側に格納された主コイル13と、磁性材料から作製された主アーマチュア14(磁極又は底部又は磁気拡張部)とを備えている。主アーマチュア14は、支持体4の内側で、主コイル13の領域の固定位置に格納されており、燃料が噴射ノズル3に向かって流れることができるようにする中央ホール15を有している。即ち、このアーマチュア14は、支持体4の内側に挿入され、支持体4に統合されている(一般的には、それは支持体4に溶着されている)。
【0023】
二次電磁石12は、支持体4の外側に格納された二次コイル16と、磁性材料から作製された二次アーマチュア17(磁極又は底部又は磁気拡張部)とを備えている。二次アーマチュア17は、支持体4の内側で、二次コイル16の領域の固定位置に格納されており、燃料が噴射ノズル3に向かって流れることができるようにする中央ホール17を有している。即ち、このアーマチュア17は、支持体4の内側に挿入され、支持体4に統合されている(一般的には、それは体部4に溶着されている)。
【0024】
添付の図面に図示された実施形態では、単一のアーマチュア19が設けられている。このアーマチュア19は、プランジャー8に統合されており(即ち、可動アセンブリの一部であり)、2つのアーマチュア14と17の間に配置されており、電磁石11及び12の両方によって共有されている。即ち、このアーマチュア19は、主コイル13及び二次コイル17の両方に磁気的に結合されており、即ち、主コイル13によって生成された磁気フラックスによって通過されるので、主コイル13に磁気的に結合され、かつ、二次コイル17によって生成された磁気フラックスによって通過されるので、二次コイル17に磁気的に結合されている。即ち、主コイル13を励磁することにより生成された磁場が、アーマチュア19を主アーマチュア14に向かって引き付け、同様にして、二次コイル16を励磁することによって生成された磁場が、アーマチュア19を二次アーマチュア17に向かって引き付ける。図示されていない異なる実施形態によれば、各電磁石11又は12は、それ自身のアーマチュア19を備えており、ひいては2つのアーマチュア19は互いに対して別個かつ独立して設けられ、その両方がプランジャー8に統合されている(即ち、可動アセンブリの一部である)。この実施形態では、各電磁石11又は12は、上記の対応するアーマチュア19のみを磁気的に引き付ける。
【0025】
電磁式インジェクタ1は、制御ユニット20(図1において概略的に示されている)を備えている(それに接続されている)。制御ユニット20は、2つの電磁石11及び12の2つのコイル13及び16に互いに独立して給電する。即ち、制御ユニット20は、主電磁石11の主コイル13を、二次電磁石12の二次コイル16とは独立に駆動する(給電する)。特に、制御ユニット20は、主コイル13のみに給電するために主コイル13のみに接続されるコントローラ21と、二次コイル16のみに給電するために二次コイル16のみに接続されるコントローラ22と、を備えている。
【0026】
換言すれば、電磁石11及び12は、独立して制御されるのであって、即ち、2つのコイル13及び16は、異なるか又は差異化された電流によって通過されるために、互いに対して直列又は並列には接続されず、2つの異なるコントローラ21及び22によって給電されている(このことは、以下でよりよく説明される)。
【0027】
使用時には、電磁石11及び12が除勢されているときには、アーマチュア19は、磁気起源を有するいかなる力も受けず、従って、閉鎖ばね10によって生成された、アーマチュア19をプランジャー8と一緒に閉位置に向かって(即ち、下方向に)押す弾性力のみを受ける。この状況では、噴射弁7は閉鎖されている。好ましくは、閉位置では、アーマチュア19は、二次アーマチュア17に近い(その近傍にある)が、二次アーマチュア17に接触してはいない。即ち、アーマチュア19と二次アーマチュア17の間には自由空間が存在している(結果として、閉位置の「ストップ」が、噴射弁7のバルブシートに対するシャッター9の接触によって、確立されるのであって、二次アーマチュア17に対するアーマチュア19の接触によって確立されるのではない)。
【0028】
使用時には、噴射弁7を開放するために、主電磁石11が、閉鎖ばね10の弾性力に打ち勝ってアーマチュア19を主アーマチュア14に向かって(即ち、開位置に向かって)引き付ける磁力を生成するように、主電磁石11がアクティベートされる(即ち、主コイル13が励磁される)。結果として、アーマチュア19は、主アーマチュア14に向かって(即ち、開位置に向かって)移動し、噴射弁7の漸進的な開放が決定される。アーマチュア19が主アーマチュア14に近いとき(即ち、開位置に近いとき)、二次電磁石12が、アーマチュア19をアーマチュア17に向かって引き付ける磁力を生成するように、二次電磁石12もアクティベートされる(即ち、二次コイル16が励磁される)。結果として、主アーマチュア14に向かう(即ち、開位置に向かう)アーマチュア19の移動が減速される。二次電磁石12によって生成された磁力が、主アーマチュア14に向かう(即ち、開位置に向かう)アーマチュア19の移動を停止又は反転させることはできず(即ち、それに足るほど強くはなく)、主アーマチュア14に向かう(即ち、開位置に向かう)アーマチュア19の移動を減速させる(ブレーキをかける)効果のみを有するということに注意することが、重要である。従って、開放するステップの最後には、アーマチュア19は、主アーマチュア14に対するその移動を終了し(開位置の「ストップ」は、主アーマチュア14に対するアーマチュア19の接触によって確立される)、アーマチュア19は、二次電磁石12によって及ぼされる減速(ブレーキ)作用の効果によって、主アーマチュア14に対してかなり小さな速度で衝突する(より一般的には、開位置の「ストップ」は、支持体4に統合された固定要素に対する可動アセンブリの要素の接触によって確立される)。
【0029】
アーマチュア19が主アーマチュア14に接触するに至ると、噴射弁7を開放状態に維持するために、主電磁石11のみがアクティブ状態に維持される(一般的には、より強度の小さい電流を主コイル13に給電することによる。というのも、開位置を維持するためには、減少された磁力で十分だからである)。一方で、二次電磁石12は、オフにされる(というのも、その機能は、アーマチュア19が静止して主アーマチュア14に接触しているときには無用であるからである)。
【0030】
使用時には、噴射弁7を閉鎖するために、主電磁石11がオフにされ、アーマチュア19はもはや磁気起源を有するいかなる力も受けず、閉鎖ばね10によって生成された弾性力によって閉位置に向かって(即ち、下向きに)押され、アーマチュア19は主アーマチュア14から脱離し、二次アーマチュア17に向かって移動する(これが達せられることはない。即ち、二次アーマチュア17と接触するに至ることはない。というのも、二次アーマチュア17に対するアーマチュア19の接触が起こる前に、閉位置の「ストップ」が、噴射弁7のバルブシートに対するシャッター9の接触によって確立されるからである)。一般的には、閉鎖するステップ全体の間、二次電磁石12はオフにされたままであり、というのも、噴射弁7を迅速に閉鎖するためには、閉鎖ばね10によって生成された弾性力で十分であるからである。代替的な実施形態によれば、少なくとも閉鎖するステップの最初の部分において、主アーマチュア14に向かうアーマチュア19の速度を上昇させ、ひいては閉鎖するステップを迅速化するために、二次電磁石12が(二次コイル16を励磁することによって)アクティベートされる場合もある。
【0031】
シャッター9が噴射弁7のバルブシートに近いとき、主電磁石11は少しの間だけアクティベート(再アクティベート)され(即ち、主コイル13が励磁され)、主電磁石11は、アーマチュア19を主アーマチュア14に向かって引き付ける磁力を生成し、結果として、閉位置に向かうアーマチュア19の移動が減速される。閉鎖するステップの最後に主電磁石11によって生成された磁力は、閉位置に向かうアーマチュア19の移動を停止又は反転させることはできず(即ち、それに足るほど強くはなく)、閉位置に向かうアーマチュア19の移動を減速させる(又はブレーキをかける)効果のみを有するということに注意することが、重要である。従って、閉鎖するステップの最後には、シャッター9が噴射弁7のバルブシートに対して衝突したときに、アーマチュア19はその移動を終了し(閉位置の「ストップ」は、噴射弁7のバルブシートに対するシャッター9の接触によって確立される)、シャッター9は、主電磁石11によって及ぼされる減速(ブレーキ)作用の効果によって、噴射弁7のバルブシートに対してかなり小さな速度で衝突する。
【0032】
上記されたことは、図3において概略的に示されており、同図は、上側領域においては、閉位置(「閉」)と開位置(「開」)の間を移動する可動アセンブリの(即ち、アーマチュア19の、プランジャー8の、かつ、シャッター9の)位置の時間トレンドを示している。中間領域においては、主電磁石11の状態の時間トレンドが示されており、これはディアクティベート状態(「オフ」)とアクティブ状態(「オン」)の間で変化し、下側領域においては、二次電磁石12の状態の時間トレンドが示されており、これはディアクティベート状態(「オフ」)とアクティブ状態(「オン」)の間で変化する。
【0033】
図3に示されているところによると、時刻tの前には、電磁石11及び12がオフにされており、アーマチュア19は(即ち、可動アセンブリは)依然として閉位置にある。時刻tにおいて、主電磁石11がアクティベートされ、時刻tにおいては(電磁慣性及び機械慣性の効果によって)主電磁石11が、アーマチュア19を閉位置から開位置に向かって移動開始させ、時刻tにおいて開位置に到達する。時刻tと時刻tの間では、開位置に近いアーマチュア19を(即ち、アーマチュア19が主アーマチュア14に衝突する直前に)減速させる(ブレーキをかける)ために、二次電磁石12もアクティベートされる。二次電磁石12の効果は、電磁慣性及び機械慣性の効果によって即時的なものではなく、二次電磁石12は、電磁慣性及び機械慣性の効果を形成するように、アーマチュア19が開位置に到達する前にディアクティベートされる。時刻tにおいて、主電磁石11はディアクティベートされ、時刻tにおいて、(電磁慣性及び機械慣性の効果による)閉鎖ばね10の作用がアーマチュア19を閉位置に向かって押し、時刻時刻t10において閉位置に到達する。時刻tと時刻tの間では、開位置に近いアーマチュア19を(即ち、シャッター9が噴射弁7のバルブシートに対して衝突する直前に)減速させる(ブレーキをかける)ために、主電磁石11がアクティベートされる。主電磁石11の効果は、電磁慣性及び機械慣性の効果によって即時的なものではなく、主電磁石11は、電磁慣性及び機械慣性の効果を形成するように、アーマチュア19が閉位置に到達する前にディアクティベートされる。
【0034】
好ましい実施形態によれば、電磁石11及び12は、開ループ制御であり、事前決定された電流トレンド(プロファイル)がそれぞれのコイル13及び16で循環するようにする。噴射弁7の実際の開放及び/又は閉鎖の時刻を推定する自己較正ロジックが設けられ得るのであり、それらは、噴射弁7の実際の開放及び/又は閉鎖の時刻に基づいて、事前決定された電流トレンド(プロファイル)に対する修正を(必要に応じて)行うことができる。
【0035】
可能な実施形態によれば、閉鎖するステップ全体の間、(特に、二次電磁石12もオフにされたままである場合に)主電磁石11はオフにされたままである。
【0036】
代替的な実施形態によれば、アーマチュア19が閉位置の「ストップ」(噴射弁7のバルブシートに対するシャッター9の接触によって確立される)に近いとき、主電磁石11はアクティベートされ(即ち、主コイル13は励磁され)アーマチュア19を主アーマチュア14に向かって引き付ける磁力を生成し、結果として、主アーマチュア14に向かうアーマチュア19の移動を減速させる。閉鎖するステップの間に主電磁石11によって生成される磁力が、二次アーマチュア17に向かうアーマチュア19の移動を停止又は反転させることができず(即ち、それに足るほど強くはなく)、二次アーマチュア17に向かうアーマチュア19の移動を減速させる(ブレーキをかける)効果のみを有することに注意することが、重要である。従って、閉鎖するステップの最後には、シャッター9が噴射弁7のバルブシートとの接触(衝突)に至ったとき(即ち、閉位置の「ストップ」に到達したとき)、アーマチュア19は、その移動を終える。この接触(衝突)は、主電磁石11によって及ぼされる減速(ブレーキ)作用の効果によって、かなり小さな速度で起こる。
【0037】
好ましい実施形態によれば、2つのコイル13及び16は、それらが異なる強度の磁力を異なる条件で生成する必要があるので、互いに対して異なっている。主コイル13は(主アーマチュア14と組み合わせられて)、閉鎖ばね10の弾性力に打ち勝ってアーマチュア19を主アーマチュア14に向かって引き付けるのに十分な磁力を生成しなければならない。一方、二次コイル16は(二次アーマチュア17と組み合わせられて)、主アーマチュア14に向かうアーマチュア19の移動の最終部分を(停止させることなく)減速させなければならない。従って、2つのコイル13及び16は、一般的には、巻き数ひいては形状及び/又は寸法において、互いに対して異なっている。
【0038】
上記されたことを要約すると、可動アセンブリは(ひいてはシャッター9を搬送するプランジャー8は)、(閉鎖ばね10によって生成される弾性力に加えて)互いに独立した2つの磁力を受ける。というのも、それらの磁力は互いに対して独立して駆動される2つの電磁石11及び12によって生成されるからである。
【0039】
上記の好ましい実施形態では、電磁式インジェクタ1は、水素を噴射するように構成されているが、代替的には、電磁式インジェクタ1は、任意の他のタイプの気体燃料を、例えばメタンを噴射するように構成されてよいし、又は、(一般的には、特にプランジャー8の長距離移動を必要とする、高い噴射流量が必要であるときに)液体燃料又は水を噴射するようにも構成され得る。
【0040】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせられ得る。
【0041】
上記の電磁式燃料インジェクタ1は、多くの有利な点を有する。
【0042】
第一に、上記の電磁式燃料インジェクタ1は、(開放するステップの最後における)主アーマチュア14に対するアーマチュア19の衝突及び(閉鎖するステップの最後における)噴射弁7のバルブシートに対するシャッター9の衝突がかなり減速された衝突速度で起こるという事実により、騒音レベルが低くかつ劣化(摩耗)が小さい。さらに、このようにすることで、噴射される燃料の量に一定のランダム性の要素を導入する跳ね返り現象が減少させられる。
【0043】
さらに、上述の電磁式燃料インジェクタ1は、類似の既知の電磁式インジェクタと比較して、簡単に製造できる設計上の相違点がほとんどないので、製造が簡単かつ安価である。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料インジェクタ
2 長手方向軸
3 噴射ノズル
4 支持体
5 供給チャネル
6 電磁アクチュエータ
7 噴射弁
8 プランジャー
9 シャッター
10 閉鎖ばね
11 主電磁石
12 二次電磁石
13 主コイル
14 主アーマチュア
15 中央ホール
16 二次コイル
17 二次アーマチュア
18 中央ホール
19 アーマチュア
20 制御ユニット
21 コントローラ
22 コントローラ
図1
図2
図3
【外国語明細書】