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特開2025-11062工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011062
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20250116BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 53/053 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 5/00 20060101ALI20250116BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B24B49/18
B23Q17/00 A
B24B53/12 Z
B24B53/053
B24B5/00 Z
B24B53/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024110043
(22)【出願日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】23184455
(32)【優先日】2023-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519198557
【氏名又は名称】ジー・エフ マシーニング ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】GF Machining Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Roger-Federer-Allee 7,2504 Biel,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロマン クレーエンビュール
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フラッハスバート
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー クーパー
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C034AA20
3C034CA11
3C034CA26
3C034CB12
3C034DD20
3C043AA10
3C043CC03
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C047AA06
3C047AA15
3C047BB01
3C047BB04
3C047BB10
3C047BB15
3C047EE11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善されたキャリブレーション精度で工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法を提供する。
【解決手段】ドレッシングスピンドルの傾斜角形成Tαを決定するために、主軸上に装着された研削工具をタッチプローブ40に置き換え、ドレッシング工具を、ドレッシングスピンドル上に試験マンドレルをクランプするための座部32と、座部上の細長い本体31とを備えた試験マンドレル30に置き換える。タッチプローブ40は試験マンドレルの本体31の近傍に位置決めされており、試験マンドレルの本体31の側面上の点Q1およびQ2に接触するように制御ユニットによって制御される。測定された点Q1およびQ2の座標、Q1およびQ2が制御ユニットに入力され、試験マンドレル30の傾斜角Tαを計算することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械ヘッドに配置された主軸(4)と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドル(10)とを有する工作機械(1)の前記ドレッシングスピンドル(10)をキャリブレーションする方法であって、研削工具を前記主軸上に装着することができ、ドレッシング工具を前記ドレッシングスピンドル上に装着することができ、前記ドレッシング工具により前記研削工具をドレッシングするために、前記研削工具と前記ドレッシング工具とを互いに対して移動させることができる方法において、該方法が、
a.細長い本体(31)と座部(32)とを備えた試験マンドレル(30)を準備し、
b.前記本体の軸方向の軸が前記ドレッシングスピンドルの回転軸と平行であるように、前記座部を前記ドレッシングスピンドルに接続することによって、前記ドレッシングスピンドル上に前記試験マンドレルを装着し、
c.複数の位置において前記試験マンドレルの前記本体に測定装置を接触させることによって、前記本体上の複数の位置を測定し、
d.処理ユニットにより前記試験マンドレル上の測定された前記複数の位置に基づいて、前記ドレッシングスピンドルの前記回転軸の傾斜角を決定し、ここで、前記傾斜角は、鉛直方向に対する前記ドレッシングスピンドルの前記回転軸の角形成であり、
e.接続部分(22)と、該接続部分の頂部に設けられた治具(21)とを有するキャリブレーション球(20)を前記ドレッシングスピンドル上に装着し、前記キャリブレーション球は、前記ドレッシングスピンドル上に同心的に配置されており、
f.前記主軸上にタッチプローブ(40)を装着し、
g.前記複数の位置において前記タッチプローブを前記治具に接触させることにより、前記治具上の複数の位置を測定し、
h.前記処理ユニットにより、前記キャリブレーション球の測定された複数の位置に従って前記キャリブレーション球の中心位置(P)を決定し、
i.前記キャリブレーション球の決定された中心位置と、前記ドレッシングスピンドルの前記回転軸の前記傾斜角と、前記キャリブレーション球の寸法とに基づいて、前記ドレッシングスピンドルの基準点(R)の位置を前記処理ユニットにより決定し、該基準点は、前記ドレッシングスピンドルの基準面(FR)上の中心位置に配置されている
ことを含む方法。
【請求項2】
前記測定装置が、タッチプローブまたはダイヤルインジケータである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
全ての測定位置において三次元座標が測定される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記基準点の決定された前記位置が、運動学的な補償モデルに加えられ、特に、決定された前記基準位置が、運動学的な補償モデルに自動的に供給される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記タッチプローブが、前記測定を行うために前記工作機械の制御ユニットにより制御される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記タッチプローブが、前記測定を行う前にキャリブレーションされる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ドレッシングスピンドルの傾斜角形成を決定するために前記ドレッシングスピンドル上に前記試験マンドレルを装着する前に、当初の中心位置を決定するために前記キャリブレーション球が最初に使用される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記キャリブレーション球の高さが、前記ドレッシングスピンドルの前記基準点を決定するために考慮される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
機械ヘッドに配置された主軸(4)と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドル(10)とを有する工作機械によってワークピースを研削する方法であって、機械テーブル上に装着された前記ワークピースを研削するために、研削工具を前記主軸上に装着することができ、ドレッシング工具をドレッシングスピンドル上に装着することができ、かつ前記ドレッシング工具により前記研削工具をドレッシングするために、前記研削工具と前記ドレッシング工具とを互いに対して移動させることができ、前記ドレッシングスピンドルの回転軸が、鉛直方向に対して傾斜Tαを有しており、
a.請求項1から8までのいずれか1項に従って前記ドレッシングスピンドルをキャリブレーションし、
b.前記ドレッシング工具により前記研削工具をドレッシングし、
c.ドレッシングされた前記研削工具により前記ワークピースを研削する
ことを含む方法。
【請求項10】
機械ヘッドに配置された主軸(4)と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドル(10)とを備えた、ワークピースを研削するための工作機械(1)であって、
機械テーブル上に装着された前記ワークピースを研削するために、研削工具を前記主軸上に装着することができ、ドレッシング工具をドレッシングスピンドル上に装着することができ、かつ前記ドレッシング工具により前記研削工具をドレッシングするために、前記研削工具と前記ドレッシング工具とを互いに対して移動させることができ、前記ドレッシングスピンドルの回転軸が、鉛直方向に対して傾斜Tαを有している、工作機械(1)。
【請求項11】
工作機械に制御ユニットが設けられていて、かつ請求項1記載のステップを実施するために使用される、請求項10記載の工作機械。
【請求項12】
前記工作機械が、キャリブレーション球と試験マンドレルとを備えており、前記試験マンドレルを、請求項1に従って前記ドレッシングスピンドルをキャリブレーションするために、前記ドレッシングスピンドル上に装着することができ、前記キャリブレーション球が、接続部分(22)と、該接続部分の頂部に設けられた治具(21)とを備えており、前記試験マンドレル(30)が、座部(32)と、該座部の頂部に形成された細長い本体(31)とを備えている、請求項10または11記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削機械は、研削のために使用される工作機械である。研削プロセスは通常、高い表面品質と高い形状精度とを達成するために、ワークピースを機械加工するために使用される。研削のための工作機械は、ワークピースを保持するための機械ベッドと、研削工具を内部に収容するための主軸とを備えている。研削工具は、ワークピースから材料を除去することによりワークピースを成形するために必須の要素である。ワークピースの材料は、削摩によって除去されるので、研削工具は、その元の形状を復元するために定期的にコンディショニングされなければならない。したがって、研削工具を再成形するために、ドレッシングホイールが研削機械において主軸の近傍に配置されている。適切なドレッシングは、機械加工された部分の品質に直接的な影響を与える。
【0003】
全ての工作機械に云えることだが、ドレッシングホイールの運動学的なキャリブレーションは必須である。また、ドレッシングホイールの位置は、正確に決定されていなければならない。ドレッシングホイールは工作機械において鉛直方向に配置されていないことがある。例えば、工作機械「Miron Mill S」では、ドレッシングホイールの回転軸は、鉛直方向に対する傾斜を有している。図3aおよび図3bに示すように、研削工具は、直径の仕様を満たすために横方向にドレッシングされ、かつ研削工具の正面を再成形するために底部からドレッシングされなければならない。ドレッシングスピンドルがZ軸に関する傾斜なしに装着されている場合、研削工具の正面を確実に再成形することは困難である。この理由から、ドレッシングスピンドルは、Z軸に対して所定の角度で装着されている。したがって、ドレッシングホイールの回転軸と鉛直方向との間で角形成(angulation)が生じる。この角形成は、通常、5~20度の範囲である。ドレッシングホイールの角度配向は、標準的なキャリブレーション手順によってドレッシングホイールの位置を正確に測定することを困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、改善されたキャリブレーション精度で工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、簡単な機器を用いて工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、これらの課題は、独立請求項に記載された特徴によって達成される。加えて、さらなる有利な実施形態は、従属請求項および明細書から得られる。
【0006】
本発明では、工作機械のドレッシングスピンドルをキャリブレーションする方法が提供される。工作機械は、機械ヘッドに配置された主軸と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドルとを備えており、研削工具は主軸上に装着されており、ドレッシング工具はドレッシングスピンドル上に装着されている。ドレッシング工具により研削工具をドレッシングするために、研削工具とドレッシング工具とは互いに対して移動することができる。この方法は、細長い本体と座部とを有する試験マンドレルを準備するステップと、本体の軸方向の軸がドレッシングスピンドルの回転軸と平行であるように、座部をドレッシングスピンドルに接続することによって、ドレッシングスピンドル上に試験マンドレルを装着するステップと、複数の位置において試験マンドレルの本体に測定装置を接触させることによって、本体上の複数の位置を測定するステップと、処理ユニットにより、試験マンドレル上の測定された複数の位置に基づいてドレッシングスピンドルの回転軸の傾斜角を決定するステップであって、この傾斜角は、鉛直方向に対するドレッシングスピンドルの回転軸の角形成である、ステップと、主軸上にタッチプローブを装着するステップと、接続部分とこの接続部分の頂部に設けられた治具とを有するキャリブレーション球をドレッシングスピンドル上に装着するステップであって、キャリブレーション球がドレッシングスピンドル上に同心的に配置されている、ステップと、複数の位置においてタッチプローブを治具に接触させることにより、治具上の複数の位置を測定するステップと、処理ユニットにより、キャリブレーション球の測定された複数の位置に従ってキャリブレーション球の中心位置を決定するステップと、キャリブレーション球の決定された中心位置と、ドレッシングスピンドルの回転軸の傾斜角と、キャリブレーション球の寸法とに基づいて、ドレッシングスピンドルの基準点の位置を決定するステップであって、基準点が、ドレッシングスピンドルの基準面上の中心位置に配置されている、ステップと、を有している。
【0007】
工作機械は、研削加工またはミーリング加工または研削加工のための工作機械であってよい。工作機械は、機械テーブルと、主軸と、ドレッシングスピンドルとを有している。ワークピースはワークピーステーブル上に装着されていてよく、ワークピーステーブルは機械テーブル上に配置されている。主軸は、工作機械の機械ヘッド上に装着されている。ワークピースを研削するために、研削工具を主軸上に装着することができる。工作機械は、少なくとも3つの直線軸(X,Y,Z)を有しており、これにより主軸と機械テーブルとを互いに対して移動させることができる。特に、工作機械は、3つの直線軸および少なくとも2つの回転軸を備えている。
【0008】
ドレッシングスピンドルも工作機械に組み込まれており、かつこれにより、機械加工効率を改善するために、研削工具を着脱することなしに同一の工作機械内で直接にコンディショニングを行うことができる。ドレッシング工具は、ドレッシングスピンドル上に装着されていてよい。研削工具をコンディショニングしなければならない場合、研削工具とドレッシング工具とを互いに対して移動させることができ、これにより、コンディショニングのためにドレッシング工具の近傍の要求された位置に研削工具を位置決めすることができる。コンディショニング中に、主軸およびドレッシングスピンドルは両方とも反対方向または同一方向に回転し、研削工具は、コンディショニングすべきドレッシング工具に接触する。
【0009】
工作機械の運動学に応じて、ドレッシングスピンドルは、1つまたは複数の直線軸を有している。例えば、主軸は、機械ヘッドに沿ってY方向およびZ方向に移動させることができる。機械テーブルはX方向に移動させることができる。ドレッシングスピンドルは、機械テーブル上に装着されており、特に機械テーブルの側部に装着されており、X方向に移動させることもできる。
【0010】
研削工具の適切なドレッシングを可能にするために、ドレッシング工具の回転軸は、研削工具を保持している主軸の回転軸に比べて僅かに傾斜していなければならない。典型的には、傾斜角は20度未満である。
【0011】
ドレッシングプロセスから得られる研削工具の正確な最終的な幾何学形状を保証するために、ドレッシングスピンドルの回転軸の位置および配向は正確に決定されなければならない。決定された位置は、工作機械の運動学的モデルにおいて指定することができる。さらに、例えばドレッシングスピンドルの交換のようなドレッシングスピンドル位置の外乱後または機械の搬送後には、幾何学的な制御が必要とされる。このことは、ドレッシングスピンドルの正確な位置および傾斜角が測定されなければならないことを意味する。正確な位置および傾斜角を測定するために、標準的なキャリブレーションのために使用されるタッチプローブを使用することができる。しかし、ドレッシング工具上での直接的なプロービングは、一般に、ドレッシングスピンドルの回転軸の傾斜角度のために十分に正確ではない。加えて、タッチプローブによる測定のためにドレッシング工具上で小さな接触面しか利用可能ではない。これにより、測定エラーも生じる。本発明は、ドレッシング工具を専用の試験マンドレルに置き換えることによって解決手段を提供し、特定のキャリブレーション手順に従ってドレッシングスピンドルを正確にキャリブレーションするためのものである。基準点はドレッシングスピンドル上に規定されている。目標は、この基準点の位置を正確に決定することである。さらに、複雑なキャリブレーションの手順は時間を要するので、キャリブレーション手順は単純であることが望ましい。
【0012】
第1のステップでは、ドレッシングスピンドルの傾斜角形成を決定しなければならない。細長い本体および座部を有する試験マンドレルが使用される。座部は、ドレッシングスピンドル上に容易かつ正確に装着可能であるように設計されている。試験マンドレルは、装着状態において、その軸方向の軸がドレッシングスピンドルの回転軸と平行になるように設計され、製造される。したがって、本体の傾斜角形成を決定することができる場合、ドレッシングスピンドルの傾斜角形成を簡単に求めることができる。測定装置は、主軸上に装着され、ドレッシングスピンドルの近傍に移動される。少なくとも2つの位置、特に本体上の互いに異なる鉛直方向の位置を有する2つの位置が、測定装置によって測定される。本体の傾斜角形成は、三角法を使用することによって求めることができる。
【0013】
測定装置は、タッチプローブまたはダイヤルインジケータであってよい。タッチプローブは、測定を自動的に行うことができるので、好適な変化形である。タッチプローブが使用される場合、自動的な手順がプログラムされてよい。制御ユニットは、タッチプローブが工作機械の幾つかの定義された位置に移動されるように主軸を制御し、測定された位置は、工作機械の制御ユニットに自動的に保存される。したがって、処理ユニットは、工作機械の制御ユニットであってよい。
【0014】
さらなるステップでは、キャリブレーション球の中心位置が決定される。したがって、試験マンドレルが、キャリブレーション球に置き換えられる。タッチプローブは、計算のための複数の位置に接触するために、工作機械の制御ユニットによって制御される。キャリブレーション球の位置は、定義された測定シーケンスでタッチプローブによって測定される。キャリブレーション球の様々な位置は、タッチプローブを定義された位置に位置決めするように主軸運動を作動させることによって求められる。測定されたキャリブレーション位置から、キャリブレーション球の中心位置を決定することができる。
【0015】
次いで、決定された傾斜角形成およびキャリブレーション球の中心点が、処理ユニット、特に工作機械の制御ユニットに入力される。さらに、基準点の位置を計算するために、治具の直径およびキャリブレーション球の高さが要求され、したがって、これら2つのパラメータも、工作機械の制御ユニットに入力される。キャリブレーション球の高さは、基準点とキャリブレーション球の中心点との間の距離を提供する。
【0016】
好適な変化形では、処理ユニットは、工作機械の制御ユニットである。代替的に、処理ユニットは、工作機械の制御ユニットから独立して配置されている。処理ユニットは、工作機械に組み込むことができ、または工作機械の外部に組み込むことができる。処理ユニットは、工作機械の制御ユニットと通信することができる。
【0017】
本発明の方法によれば、ドレッシング工具の回転軸の位置の決定精度を向上させることができる。これによっても、研削工具のより正確なドレッシングが可能となる。
【0018】
幾つかの変化形では、全ての測定位置において三次元座標が測定される。
【0019】
特に、基準点の決定された位置が運動学的な補償モデルに加えられ、特に、決定された基準位置が、運動学的な補償モデルに自動的に供給される。好適には、運動学的な補償モデルは、工作機械全体のキャリブレーションのために生成される。
【0020】
測定精度をさらに改善するために、ドレッシングスピンドルの傾斜角形成を決定する前に、球の当初の中心位置を決定するためにキャリブレーション球が最初に使用される。したがって、試験マンドレルをドレッシングスピンドル上に装着する前に、キャリブレーション球がドレッシングスピンドル上に装着され、タッチプローブは、球の当初の中心位置を計算するために複数の位置を測定する。これにより、試験マンドレルによる角度測定のための粗い位置を得ることができる。この変形形では、キャリブレーション球が、試験マンドレルの使用前後に2回使用される。
【0021】
本発明の要旨は、可能な限り正確に球の基準点を測定し、可能な限り正確に試験マンドレルを使用して角度を測定することである。これら2つの値と、キャリブレーション球に関連する既知の値とを有することにより、ドレッシングホイールの基準位置を計算することができる。
【0022】
本発明は、機械ヘッドに配置された主軸と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドルとを有する工作機械によってワークピースを研削する方法に関する。機械テーブル上に装着されたワークピースを研削するために、研削工具を主軸上に装着することができる。ドレッシング工具をドレッシングスピンドル上に装着することができ、ドレッシング工具により研削工具をドレッシングするために、研削工具とドレッシング工具とを互いに対して移動させることができる。ドレッシングスピンドルの回転軸は、鉛直方向に対して傾斜Tαを有しており、方法は、本発明のキャリブレーション方法に従ってドレッシングスピンドルをキャリブレーションするステップと、ドレッシング工具により研削工具をドレッシングするステップと、ドレッシングされた研削工具によってワークピースを研削するステップと、を含んでいる。
【0023】
本発明は、機械ヘッドに配置された主軸と、機械加工領域に配置されたドレッシングスピンドルとを備えた、ワークピースを研削するための工作機械に関する。機械テーブル上に装着されたワークを研削するために、研削工具を主軸上に装着することができる。ドレッシング工具をドレッシングスピンドル上に装着することができ、ドレッシング工具により研削工具をドレッシングするために、研削工具とドレッシング工具とを互いに対して移動させることができる。ドレッシングスピンドルの回転軸は、鉛直方向に対して傾斜Tαを有している。
【0024】
特に工作機械は、キャリブレーション球と試験マンドレルとを備えている。キャリブレーション球と試験マンドレルとは、ドレッシングスピンドルをキャリブレーションするために、ドレッシングスピンドル上に装着されることができる。キャリブレーション球は、接続部分と、この接続部分の頂部に設けられた治具とを備えており、試験マンドレルは、座部と、座部の頂部に形成された細長い本体とを備えている。
【0025】
以下に、本発明のより具体的な説明をさらに記載する。実施形態は、添付の図面を参照しながら詳細に説明され、かつ記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】主軸およびドレッシングスピンドルを有する工作機械を示す側面図である。
図2】ドレッシングスピンドルが装着されている機械加工領域を示す側面図である。
図3a】研削工具の側面のドレッシングを示す概略図である。
図3b】研削工具の下面のドレッシングを示す概略図である。
図4】ドレッシングスピンドルを示す概略図である。
図5】細長い本体と座部とを有する、ドレッシングスピンドル上に装着された試験マンドレルを示す概略図である。
図6】傾斜角形成の計算のための三角法を示す図である。
図7】ドレッシングスピンドル上に装着された、治具と支持要素とを有するキャリブレーション球を示す概略図である。
図8】本発明の方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、研削のために使用可能な工作機械を示している。特に、図1は、ミーリング加工および研削のための工作機械を示している。工作機械1は、3つの直線軸X,Y,Zと2つの回転軸B,Cとを有している。工作機械は、軸Xに沿って直線的に移動することができる機械テーブル2を備えている。Y軸およびZ軸に沿った直線運動は、機械ヘッド4によって行われる。クレードル3は、機械テーブル上に装着されており、回転軸Bを中心として回転可能である。クレードルは、ワークピースをその上に装着するためのワークピーステーブル6を備えており、ワークピーステーブルは、第2の回転軸Cを中心として回転可能である。主軸5は、様々な機械加工工具、例えば研削工具を内部にクランプするために機械ヘッド内に装着されている。ドレッシングスピンドル10は機械テーブル上に固定的に装着されているので、ワークピーステーブルに沿って移動可能ではない。
【0028】
図2は、図1に示したドレッシングスピンドルの配置を示している。取付具11が、機械テーブルの側面に装着されている。ドレッシングスピンドルは、取付具の頂部面に装着されている。ドレッシングスピンドルの頂部には、研削工具をコンディショニングするために、ドレッシング工具12が装着されていてよい。図2に示すように、ドレッシングスピンドル10の回転軸はZ方向に対して平行ではなく、傾斜角Tαを有している。傾斜の理由は、図3aおよび図3bに示されている。
【0029】
研削工具を再成形するために、研削工具の側面7aだけではなく研削工具の正面7bもドレッシングしなければならない。図3aは、研削工具の側面をドレッシングする状態を概略的に示している。図3bは、研削工具の正面をドレッシングする状態を概略的に示している。ドレッシングのために、研削工具が主軸上に装着され、ドレッシング工具により接触されるように、ドレッシング工具の近傍に移動される。ドレッシング工具は、ドレッシングスピンドル上に固定的に装着されているが、ドレッシング中に回転する。ドレッシング工具が底面にも到達することができるように、ドレッシングスピンドルが傾斜角を有していなければならないことが明らかに分かる。
【0030】
図4は、ドレッシングスピンドル本体13と工具インタフェース14とを備えるドレッシングスピンドル10の概略図を示している。工具インタフェースは、ドレッシング工具をその上でクランプするためのインタフェースとして機能し、ドレッシングスピンドル本体の頂部面に配置されている。スピンドル本体13の接続面と工具インタフェースとは、基準面FRとして定義されている。基準面の中心点は、基準点Rとして定義されている。キャリブレーションの目標は、この位置の座標およびドレッシングスピンドルの傾斜角形成を正確に決定することである。決定された値は、ドレッシングのための主軸の運動を計算するために、工作機械の制御ユニットに保存することができる。標準的なタッチプローブは、XY作業面およびZ軸で試験することしかできない。ドレッシングスピンドルの傾斜のために、標準のタッチプローブによって基準点の位置を決定することは不可能である。
【0031】
ドレッシングスピンドルの傾斜角形成Tαを決定するために、主軸上に装着された研削工具をタッチプローブ40に置き換え、ドレッシング工具を試験マンドレル30に置き換える。図5に示すように、試験マンドレルは、ドレッシングスピンドル上に試験マンドレルをクランプするための座部32と、座部上の細長い本体31とを備えている。座部は、円筒形の本体と、円筒形の本体の内面に、ドレッシングスピンドル上に正確に装着されるように設けられたクランプインタフェースとを有している。クランプインタフェースは、スピンドルの工具インタフェースと簡単に結合することができるように設計されている。特に、装着された状態では、試験マンドレルの中心軸は、ドレッシングスピンドルの回転軸と一致している。タッチプローブは、本体の様々な位置に接触し、測定された位置に基づいて傾斜角を決定するために、工作機械の制御ユニットによって制御される。
【0032】
図5に示すように、タッチプローブは本体の近傍に位置決めされており、例えば本体の側面上の点Q1およびQ2に接触するように制御ユニットによって制御される。測定された点Q1およびQ2の座標、Q1(xQ1,yQ1,zQ1)およびQ2(xQ2,yQ2,zQ2)が制御ユニットに入力され、マンドレルの傾斜角Tαを計算することができる。
【0033】
図6に示されているように、傾斜角形成Tαを計算するために、三角法が使用されなければならない。長さaは、Z方向での測定された位置の距離、すなわちzQ1とzQ1の2つの値の差である。長さbは、Y方向での測定された位置の距離、すなわち、yQ1とyQ2の2つの値の差である。
【0034】
さらなるステップでは、キャリブレーション球が使用される。試験マンドレルはキャリブレーション球に置き換えられる。キャリブレーション球は、ドレッシングスピンドル上にクランプするための接続部分22と、接続部分の頂部に形成された治具21とを備えている。接続部分は、円筒形の本体を有しており、ドレッシングスピンドル上に正確に装着されるようにクランプインタフェースを備えている。特に、キャリブレーション球の中心軸は、ドレッシングスピンドルの回転軸と一致している。タッチプローブは、工作機械の制御ユニットによって制御されて、治具上の様々な位置に接触し、測定された位置、すなわち、図7に示した点Pの座標に基づいて、治具の中心位置を決定する。距離Aは、キャリブレーション球の製造に基づいて知られている。治具Bの直径も、製造データに基づいて知られている。治具の中心点Pの座標が求められているので、三角法を使用して基準点Rの座標を決定することができる。
【0035】
図8は、本発明の方法の順序を示す。ステップS1では、タッチプローブが主軸上に装着される。ステップS2では、ドレッシングスピンドルが試験マンドレルに置き換えられる。ステップS3では、マンドレルの複数の位置においてマンドレルにタッチプローブを接触させることにより、ドレッシングスピンドルの回転軸の傾斜角が決定される。ステップS4では、試験マンドレルをキャリブレーション球に置き換えられる。ステップS5では、複数の位置においてタッチプローブをキャリブレーション球に接触させることにより、キャリブレーション球上の複数の位置が測定され、測定された位置が記録される。ステップS6では、処理ユニットにより、複数のキャリブレーション球の位置に基づいて、キャリブレーション球の中心位置が決定される。ステップS7では、決定されたキャリブレーション球の中心位置、ドレッシングスピンドルの回転軸の傾斜角度およびタッチプローブの寸法に基づいて、ドレッシングスピンドルの中心位置が決定される。
【符号の説明】
【0036】
1 工作機械
2 機械テーブル
3 クレードル
4 機械ヘッド
5 主軸
6 ワークピーステーブル
7 研削工具
7a 研削工具の側面
7b 研削工具の正面
8 ドレッシング工具
10 ドレッシングスピンドル
11 取付具
13 ドレッシングスピンドル本体
14 工具インタフェース
20 キャリブレーション球
21 治具
22 接続部分
30 試験マンドレル
31 試験マンドレルの本体
32 座部
40 タッチプローブ
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】