(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025110823
(43)【公開日】2025-07-29
(54)【発明の名称】固定治具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20250722BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20250722BHJP
【FI】
H01M50/262 Z
H01M50/50 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004888
(22)【出願日】2024-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】幡野 涼
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AA20
5H040AT02
5H040AT04
5H040AY10
5H040CC20
5H040CC34
5H040DD02
5H040DD13
5H043AA19
5H043CA04
5H043CA08
5H043FA05
5H043FA40
5H043HA02F
5H043HA07F
5H043JA13D
(57)【要約】
【課題】電池セルが膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セルと電極タブとの接合部分が広がったりするのを抑制可能な固定治具の提供を目的とした。
【解決手段】固定治具10は、タブ状に形成された電極タブ110がセル本体102の端部から突出するように設けられた複数の電池セル100について、それぞれの電極タブ110を電気的に接続した状態で固定するものであり、電極タブ110を巻くこと、あるいは畳むことにより形成されたタブ積層部114を保持する保持部20と、保持部20に保持されたタブ積層部114に対し、電極タブ110の積層方向に向けて加圧力を作用させる加圧部50と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブ状に形成された電極タブがセル本体の端部から突出するように設けられた複数の電池セルについて、それぞれの前記電極タブを電気的に接続した状態で固定するものであり、
前記電極タブを巻くこと、あるいは畳むことにより形成されたタブ積層部を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記タブ積層部に対し、前記電極タブの積層方向に向けて加圧力を作用させる加圧部と、
を有すること、を特徴とする固定治具。
【請求項2】
前記加圧部は、前記タブ積層部に加えて前記セル本体を加圧すること、を特徴とする請求項1に記載の固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブ状に形成された電極タブがセル本体の端部から突出するように設けられた複数の電池セルについて、それぞれの電極タブを電気的に接続した状態で固定するための固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているような電池モジュールが提供されている。特許文献1の電池モジュールは、シート形の複数の電池セルを積層して構成されている。また、特許文献1の電池モジュールにおいては、電池セルの各々の両端から電極タブが延びており、電池セルの各々の両側に電極タブを保持するホルダが設けられている。また、ホルダは、電極タブが挿入される挿入口を有し、挿入口の内部には電極タブの各々を電気的に接続する接続端子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術の電池モジュールのように、電極タブを単に圧接して電気的に接続する構成とした場合、電池セルが熱等の影響によって膨張した場合に、電極タブに張力が作用する。これにより、従来技術の電池モジュールにおいては、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セルのパックと電極タブとの接合部分が広がって、パックの強度低下、パックの破損、パックの内部に収容されている電解液の漏洩等の問題が生じる懸念がある。
【0005】
そこで本発明は、熱等の影響によって電池セルが膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セルと電極タブとの接合部分が広がったりするのを抑制しつつ、電極タブ同士を固定可能な固定治具の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の固定治具は、タブ状に形成された電極タブがセル本体の端部から突出するように設けられた複数の電池セルについて、それぞれの前記電極タブを電気的に接続した状態で固定するものであり、前記電極タブを巻くこと、あるいは畳むことにより形成されたタブ積層部を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記タブ積層部に対し、前記電極タブの積層方向に向けて加圧力を作用させる加圧部と、を有すること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の固定治具は、上記(1)のように、電極タブを巻くこと、あるいは畳むことによってタブ積層部としたものを、保持部によって保持することができる。これにより、本発明の固定治具は、タブ積層部をなすそれぞれの電極タブの接触面積を十分に確保しつつ、電極タブの配置に必要なスペースを最小限に抑制できる。さらに、本発明の固定治具は、保持部によって保持されたタブ積層部に対し、電極タブの作用方向に加圧力を作用させることにより、電池セルが膨張した場合に電極タブに張力がかかるのを抑制できる。従って、本発明の固定治具は、電池セルが膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セルと電極タブとの接合部分が広がったりするのを抑制できる。
【0008】
(2)上述した本発明の固定治具において、前記加圧部は、前記タブ積層部に加えて前記セル本体を加圧するものであると良い。
【0009】
本発明の固定治具は、上記(2)のように加圧部によって電池セルとともに電極タブを加圧する構成とすることにより、電池セル及び電極タブを別々に加圧する構成とする場合に比べて構成や、固定治具を用いた固定作業の簡略化を図れる。
【0010】
(3)上述した本発明の固定治具において、前記保持部は、前記電池セルの厚みに相当する厚みとされた前記タブ積層部を保持するものであると良い。
【0011】
本発明の固定治具は、上記(3)のように、電池セルの厚みに相当する厚みとされたタブ積層部を保持部によって保持するものとすることにより、電池セルの膨張が生じてもこれにより電極タブに過剰な張力が作用するのを抑制できる。
【0012】
(4)上述した本発明の固定治具において、前記保持部は、前記電極タブの積層方向に対して交差する方向への前記タブ積層部の移動を抑制する移動抑制部を有するものであると良い。
【0013】
本発明の固定治具は、上記(4)のような構成とすることにより、保持部によって保持されたタブ積層部が積層方向に対して交差する方向に位置ずれするのを抑制できる。これにより、タブ積層部の位置ずれによって保持部による保持力が変動するのを抑制できる。
【0014】
(5)上述した本発明の固定治具において、前記保持部は、前記タブ積層部を前記電極タブの積層方向一方側及び他方側から把持する把持部を有するものであり、前記把持部は、前記電極タブの積層方向一方側及び他方側に配される第一構成部及び第二構成部を有するものであり、前記移動抑制部は、前記第一構成部から前記第二構成部に向けて突出した凸部を含んで構成されるものであると良い。
【0015】
本発明の固定治具は、上記(5)のような構成とすることにより、第一構成部及び第二構成部を備えた把持部によってタブ積層部を把持しつつ、移動抑制部を構成する凸部によってタブ積層部の位置ずれを抑制できる。従って、本発明の固定治具は、上記(5)に係る構成を採用することにより、より一層安定的にタブ積層部を保持できる。
【0016】
(6)上述した本発明の固定治具において、前記第二構成部は、前記凸部を受ける受部を有し、前記凸部及び前記受部が係合することにより、前記把持部が前記積層方向に開くのを抑制できるものであると良い。
【0017】
本発明の固定治具は、上記(6)のような構成とすることにより、凸部及び受部を係合させることにより、保持部におけるタブ積層部の保持力をさらに向上させることができる。
【0018】
(7)上述した本発明の固定治具は、前記加圧部が、第一エンドプレートと、前記第一エンドプレートに対して対向配置される第二エンドプレートと、を有し、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間に前記電池セルが配された状態において、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間隔を調整することにより、前記保持部及び前記セル本体に対して作用する加圧力を調整可能なものであると良い。
【0019】
本発明の固定治具は、上記(7)に係る構成を採用することにより、第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔調整により、保持部に作用する加圧力に加え、セル本体に作用する加圧力についても一緒に調整できる。従って、本発明の固定治具は、加圧部を保持部及びセル本体の加圧において共用できるため、構成や固定作業の簡略化を図れる。
【0020】
(8)上述した本発明の固定治具は、前記加圧部が、対向配置された第一エンドプレート及び第二エンドプレートと、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間に配される加圧体と、を有するものであり、前記加圧体が、前記第一エンドプレート及び前記保持部に対して直接的あるいは間接的に当接する当接部と、前記第二エンドプレートに設けられた被挿入部に対して挿入される挿入部と、を有するものであり、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間に前記セル本体が配されるとともに、前記当接部及び前記第二エンドプレートの間に前記保持部が配された状態において、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間隔を調整することにより、前記セル本体及び前記保持部に対して作用する加圧力を調整可能なものであり、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間隔に応じて、前記被挿入部に対する前記挿入部の挿入量を変更可能であるものであると良い。
【0021】
本発明の固定治具は、上記(8)に係る構成を採用することにより、上記(7)の構成を採用した場合と同様に、第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔調整によって、保持部及びセル本体に作用する加圧力の双方を一緒に調整できる。従って、本発明の固定治具は、上記(8)に係る構成を採用することにより、装置構成や固定作業の簡略化を図れる。
【0022】
また、本発明の固定治具は、上記(8)のように、加圧体の当接部を保持部及び第一エンドプレートに対して当接させつつ、第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔を調整することにより、加圧体を介して保持部に対して作用する加圧力を調整可能とされている。これにより、本発明の固定治具は、上記(8)に係る構成を採用することにより、保持部に対して作用する加圧力を、加圧体の当接部と保持部との接触領域に亘って分散させて作用させることができる。従って、本発明の固定治具は、保持部に保持されたタブ積層部に対して局所に加圧力が集中するのを抑制できる。
【0023】
さらに、本発明の固定治具は、上記(8)のように、加圧体の挿入部を、第二エンドプレートに設けられた被挿入部に対して挿入可能なものとされている。これにより、本発明の固定治具は、加圧体の位置ずれを抑制し、加圧体を介して保持部に保持されたタブ積層部に対して適確に加圧力を作用させることができる。
【0024】
本発明の固定治具は、上記(8)に係る構成とすることにより、第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔に応じて、第二エンドプレートに設けられた被挿入部に対して挿入される加圧体の挿入部の挿入量を変更できる。これにより、本発明の固定治具は、第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔について、挿入部の長さを下回る大きさまで減少させることができる。従って、本発明の固定治具は、挿入部の長さに拘束されることなく第一エンドプレート及び第二エンドプレートの間隔を縮小させ、加圧体を介して保持部に保持されたタブ積層部に対して適正な加圧力を作用させることができる。
【0025】
(9)上述した本発明の固定治具は、前記被挿入部に対して挿入された前記挿入部の抜け止めとなる爪が設けられているものであると良い。
【0026】
本発明の固定治具は、上記(9)に係る構成とすることにより、被挿入部に挿入された挿入部が被挿入部から離脱することにより、加圧体が位置ずれするのを抑制できる。
【0027】
(10)上述した本発明の固定治具は、前記加圧部が、前記第一エンドプレート及び前記第二エンドプレートの間に配される挟圧プレートを有するものであり、前記挟圧プレートが、前記セル本体及び前記第一エンドプレートの間に配され、前記セル本体に対して当接するセル本体当接部と、前記加圧体及び前記第一エンドプレートによって挟み込まれる挟持部と、を有するものであり、前記セル本体当接部、及び前記第一エンドプレートの間に空隙が形成されるものであると良い。
【0028】
本発明の固定治具は、上記(10)のような構成とすることにより、挟圧プレートの本体当接部及び挟持部によって、セル本体、加圧体、及びタブ積層部に対して適切な加圧力を作用させることができる。また、本発明の固定治具は、上記(10)のようにセル本体当接部、及び第一エンドプレートの間に空隙が形成されるものとすることにより、加圧体及びタブ積層部に対して適切な加圧力を作用させつつ、セル本体の膨張収縮を吸収することができる。
【0029】
(11)上述した本発明の固定治具において、複数の前記電池セルの少なくとも一つが備える前記電極タブは、バスバーが接続されたものであり、前記バスバーとともに前記電極タブを巻くこと、あるいは畳むことにより、前記バスバーを含む前記タブ積層部が構成されるものであると良い。
【0030】
本発明の固定治具は、上記(11)に係る構成とすることにより、電極タブに対してバスバーを接続する必要のある電池セルについてもタブ積層部の形態で固定できる。また、バスバーが接続される電極タブによって構成されたタブ積層部は、バスバーによって補強されたものとなる。
【0031】
(12)本発明の電池モジュールは、上述した本発明の固定治具により複数の電池セルが固定されるものである。
【0032】
本発明の電池モジュールは、上述した本発明の固定治具によって複数の電池セルを固定したものであるため、熱等の影響によって電池セルが膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セルと電極タブとの接合部分が広がったりするのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、上述した課題を解決した固定治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固定冶具、及びこれを用いて構成される電池モジュールを示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した電池モジュールの断面構造を模式的に示した模式図である。
【
図3】
図1に示した電池モジュールを構成する電池セルを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した固定冶具を構成する保持部に対する電極タブの取付構造を示す図であり、(a)は取り付け前の状態を示す分解斜視図、(b)は取り付け後の状態を示す斜視図である。
【
図5】電極タブに対するバスバーの取付構造を説明するための図であり、(a)はタブ積層部を構成する前の状態を示す模式図、(b)はタブ積層部を構成した後の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図1に示した固定冶具を用いた電池モジュールの組立工程において電極タブに対して保持部を取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1に示した固定冶具を用いた電池モジュールの組立工程において電極タブに対して保持部を取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【
図8】
図1に示した固定冶具を用いた電池モジュールの組立工程において全ての電池セルの電極タブに対して保持部を取り付けた後、加圧体を取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示した固定冶具を用いた電池モジュールの組立工程において全ての電池セルの電極タブに対して保持部を取り付けた後、加圧体を取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【
図10】第二エンドプレートに設けられた被挿入部に対して加圧体の挿入部を差し込んだ状態を説明する説明図であり、(a)は加圧体に対して加圧力を作用させる前の状態を示す説明図、(b)は加圧体に対して加圧力を作用させた後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態に係る固定治具10、及びこれを用いて構成された電池モジュールMについて、図面を参照しつつ詳細を説明する。なお、各図は、理解が容易なように模式的に表したものであり、実際の形状・サイズや構成部品の配置とは異なる場合があることに留意されたい。また、各図における断面において、ハッチングを省略する場合があることに留意されたい。
【0036】
図1に示すように、電池モジュールMは、複数(図示例では8個)の電池セル100をセル本体102の厚み方向(図示例では上下方向)に重ね合わせて配置するとともに、積層方向に隣接する電池セル100,100が備える電極タブ110,110を電気的に接続することによって構成される。
【0037】
ここで、
図3等に示すように、電池モジュールMに用いられる電池セル100は、パック状に形成されたセル本体102の端部から、タブ状に形成された電極タブ110が突出するように設けられたものである。
図1や
図3等に示した例では、電池セル100は、セル本体102の一端から正極の電極タブ110、及び負極の電極タブ110が突出するように設けられている。
図1等に示した電池モジュールMにおいては、複数の電池セル100が、積層方向に向けて、正極用の電極タブ110(正極用電極タブ110a)及び負極の電極タブ110(負極用電極タブ110b)が交互に並ぶように配置されている。そのため、積層方向一方側の端部(図示例では下端側)に位置する正極用電極タブ110a、及び積層方向他方側の端部(図示例では上端側)に位置する負極用電極タブ110bを除き、他の電極タブ110について、上下に隣接する正極用電極タブ110a及び負極用電極タブ110bを電気的に接続することにより、複数の電池セル100を直列に繋いだ電池モジュールMを構成できる。
【0038】
固定治具10は、電池モジュールMにおいて、正極用電極タブ110a及び負極用電極タブ110bを電気的に接続するために用いられる。また、固定治具10は、複数の電池セル100を直列に接続した電気系統の終端部に位置する正極用電極タブ110a、及び負極用電極タブ110bを、バスバー130に対して固定するためにも用いられる。
図1等に示すように、固定治具10は、保持部20、及び加圧部50を有する。
【0039】
保持部20は、電極タブ110を保持するものである。
図4等に示すように、保持部20は、電極タブ110,110(正極用電極タブ110a及び負極用電極タブ110b)を重ね合わせてなるタブ重畳体112をさらに巻いたり畳んだりすることで、電極タブ110,110が積層されたタブ積層部114の形態として電極タブ110,110を保持できる。本実施形態では、正極用電極タブ110a及び負極用電極タブ110bを重ね合わせてタブ重畳体112とし、さらにこれを巻き回すことにより形成された巻回体がタブ積層部114とされる。
【0040】
また、保持部20は、電気的に接続される複数の電池セル100の終端部に位置する正極用電極タブ110a及び負極用電極タブ110bについて、
図5に示すようにバスバー130とともに巻いたり畳んだりして形成されたタブ積層部114を保持できる。本実施形態では、
図5に示すように、一方の終端部(図示例では下端部)に位置する正極用電極タブ110a及びバスバー130を重ね合わせて接合したものを巻き回して形成された巻回体がタブ積層部114とされる。同様に、他方の終端部(図示例では上端部)に位置する負極用電極タブ110b及びバスバー130を重ね合わせて接合したものを巻き回して形成された巻回体がタブ積層部114とされる。
【0041】
保持部20は、上述したようにして形成されたタブ積層部114を保持できる。保持部20が保持できるタブ積層部114の厚みや保持形態は適宜のものとすることができる。本実施形態では、保持部20は、電池セル100(セル本体102)に相当する厚みのタブ積層部114を挟持して保持できるものとされている。保持部20は、電気的絶縁性を有する素材(本実施形態では樹脂)によって形成されている。
図4に示すように、保持部20は、把持部22及び移動抑制部24を有する。
【0042】
把持部22は、上述のようにして形成されたタブ積層部114を、電極タブ110の積層方向一方側及び他方側から把持する部分である。具体的には、把持部22は、側面視した状態において略「コ」字状の形状になるように形成されたものであり、第一構成部26及び第二構成部28を有する。把持部22は、図示例において天面側に第一構成部26、底面側に第二構成部28を有し、両者が対向したものとされている。把持部22は、第一構成部26及び第二構成部28の間に、タブ積層部114を収容するための収容空間30を有する。第一構成部26は、タブ積層部114における電極タブ110の積層方向一方側(図示例では上方側)に接触する部分である。また、第二構成部28は、タブ積層部114における電極タブ110の積層方向一方側(図示例では上方側)に接触する部分である。また、把持部22は、第一構成部26及び第二構成部28の一端側において両者に対して交差するように延びる第三構成部32によって接続されている。
【0043】
把持部22は、第三構成部32に対向する部分が開放されており、当該開放部分から第一構成部26及び第二構成部28の間に形成された収容空間30にタブ積層部114を挿入可能とされている。把持部22は、可撓性を有する素材によって形成されており、第一構成部26及び第二構成部28を近接離反する方向に撓ませることができる。また、収容空間30の高さ(第一構成部26及び第二構成部28の間隔)は、タブ積層部114と同等あるいは僅かに小さい程度とされる。そのため、収容空間30に対してタブ積層部114を挿入すると、第一構成部26及び第二構成部28によってタブ積層部114が把持(挟持)された状態になる。
【0044】
移動抑制部24は、把持部22において把持されたタブ積層部114が把持部22の幅方向(収容空間30へのタブ積層部114の挿入方向に対して交差する方向)に移動して位置ずれを起こすのを抑制するためのものである。移動抑制部24は、第一構成部26に設けられた凸部34、及び第二構成部28に設けられた受部36を備えたものとされている。凸部34は、第一構成部26の内面(第二構成部28に対向する面)から第二構成部28に向けて突出した部分である。凸部34は、タブ積層部114を収容空間30内の適正な位置に収容した状態において、タブ積層部114に対して把持部22の幅方向に隣接する位置に設けられている。また、凸部34には、爪部34aが設けられている。一方、受部36は、第二構成部28において凸部34に対応する位置に設けられている。移動抑制部24は、凸部34の爪部34aが受部36と係合することにより、第一構成部26から第二構成部28に向けて立設された状態なり、タブ積層部114の移動を抑制できる。
【0045】
加圧部50は、保持部20に保持されたタブ積層部114に対し、電極タブ110の積層方向に向かう加圧力を作用させるものである。加圧部50は、タブ積層部114のみに加圧力を作用させるものとすることも可能であるが、本実施形態ではタブ積層部114に加えて、セル本体102についても加圧力を作用させるものとされている。
図1等に示すように、加圧部50は、第一エンドプレート52、第二エンドプレート54、挟圧プレート56、及び加圧体58を有する。
【0046】
第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54は、それぞれ略全体が平坦な板体によって構成されている。第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54は、対向配置され、両者の間に複数の電池セル100、及びこれらを電気的に接続するための保持部20を挟み込むことが可能な大きさの板体である。本実施形態では、第二エンドプレート54に対して第一エンドプレート52が上方に配置され、第二エンドプレート54の上に配された複数の電池セル100及び保持部20に対してさらに上方側に52が配置される。
【0047】
図1及び
図10等に示すように、第二エンドプレート54は、被挿入部60及びバスバー固定部61を有する。被挿入部60は、後に詳述する加圧体58の挿入部72を加圧力の作用方向(図示例では上下方向)に移動可能とするためのものである。本実施形態では、被挿入部60は、挿入部72を挿入可能な貫通孔によって構成されている。被挿入部60は、第二エンドプレート54において保持部20が配置される領域(保持部配置領域54a)の周部に設けられている。本実施形態では、被挿入部60は、保持部配置領域54aの四隅に設けられている。また、バスバー固定部61は、保持部配置領域54aに対して隣接する位置に設けられている。バスバー固定部61は、保持部20から突出したバスバー130を固定するものである。バスバー固定部61には、バスバー130がネジ等の固定具によって固定される。バスバー固定部61は、第二エンドプレート54から突出している。バスバー固定部61は、第二エンドプレート54に対して略平行に突出したバスバー130を、第二エンドプレート54側(図示例では下方側)から支持可能な位置まで突出している。そのため、バスバー61は、バスバー130を屈曲させることなく固定できる。
【0048】
挟圧プレート56は、第二エンドプレート54の上に配置される電池セル100、及び保持部20に対して装着される加圧体58と、第一エンドプレート52との間に配される板体である。挟圧プレート56は、セル本体接触部62、及び接続部64,64を有する。挟圧プレート56は、セル本体接触部62に対して一方側、及び他方側に隣接する位置に接続部64,64を有し、セル本体接触部62と接続部64,64との間に段差を有する。これにより、挟圧プレート56は、側面視においてハット型に形成されている。
【0049】
セル本体接触部62は、第二エンドプレート54の上に配置された電池セル100のセル本体102に対して当接する部分である。接続部64,64は、挟圧プレート56が第一エンドプレート52に対して接続される部分である。接続部64,64のうち一方(以下、「第一接続部64a」とも称す)は、セル本体102の上にセル本体接触部62を配した状態において、電極タブ110の突出方向に隣接する位置、すなわち保持部20、及びこれに装着される加圧体58が設けられる位置に配される。第一接続部64aは、電池モジュールMの組み立て状態において、加圧体58及び第一エンドプレート52の間に挟み込まれる。第一接続部64aは、第二エンドプレート54との間において保持部20及び加圧体58を挟持する挟持部66として機能する。
【0050】
図1、
図8及び
図9等に示すように、加圧体58は、第二エンドプレート54の上に複数の電池セル100を配置して積み重ねられた状態とされた保持部20に対し、上から被さるように装着される部材である。加圧体58は、当接部70、及び挿入部72を有する。
【0051】
当接部70は、第一エンドプレート52、及び保持部20に対して当接する部分である。当接部70は、平板状に形成されている。当接部70は、保持部20においてタブ積層部114が保持される部分を含む領域に対して覆い被さるように配される。加圧体58を保持部20に対して装着した状態において、当接部70は、保持部20に対して部位によらず略均等に接触する。
【0052】
挿入部72は、第二エンドプレート54に設けられた被挿入部60に対して挿入される部分である。挿入部72は、当接部70の四隅において、当接部70に対して交差する方向に伸びるように形成されている。挿入部72の先端側(図示例では下端側)には、爪74が設けられている。爪74は、被挿入部60に対して挿入された挿入部72の抜け止めとして機能するものである。
【0053】
電池モジュールMは、上述した構成の固定治具10を用いて複数の電池セル100を固定することにより形成される。具体的には、固定治具10を用いて電池モジュールMを組み立てる場合には、
図6及び
図7に示すように、先ず電池セル100を積層しつつ、それぞれの電池セル100の電極タブ110により形成されるタブ積層部114を保持部20によって保持した状態とする。その後、
図8に示すように、複数重ね合わせた電池セル100及び保持部20は、第二エンドプレート54の上に配した状態とされる。また、
図8及び
図9に示すように、複数の電池セル100の積層方向に積層された複数の保持部20に対して加圧体58が装着される。
【0054】
上述したようにして加圧体58が装着された後、
図1に示すように、複数の電池セル100及び保持部20に対し、第二エンドプレート54とは反対側に挟圧プレート56及び第一エンドプレート52を配する。挟圧プレート56は、セル本体102に対してセル本体接触部62が接触し、保持部20に対して装着された加圧体58の当接部70に対して接続部64(第一接続部64a)が接触した状態とされる。この状態において、セル本体接触部62と第一エンドプレート52との間には、空隙68(
図2参照)が形成される。このようにして、第一エンドプレート52及び挟圧プレート56と、第二エンドプレート54との間に複数の電池セル100及びこれらに取り付けられた保持部20が挟み込まれた状態とされる。
【0055】
上述した状態において、第一エンドプレート52、挟圧プレート56、及び第二エンドプレート54に亘ってボルト120が挿通され、第二エンドプレート54の裏側(図示例では下方側)に設けられたナット(不図示)に対して締結される。ボルト120は、第一エンドプレート52、及び第二エンドプレート54の四隅に設けられた挿通孔に挿通される。また、ボルト120は、挟圧プレート56において接続部64に設けられた挿通孔に挿通される。
【0056】
固定治具10は、四隅に設けられたそれぞれのボルト120の締結度を調整することにより、第一エンドプレート52(挟圧プレート56)及び第二エンドプレート54の間隔を調整できる。これにより、固定治具10は、保持部20及びセル本体102に対して作用する加圧力を調整可能とされている。また、固定治具10は、第一エンドプレート52(挟圧プレート56)及び第二エンドプレート54の間隔に応じて、第二エンドプレート54に設けられた被挿入部60に対する加圧体58の挿入部72の挿入量を変更可能とされている。これにより、固定治具10は、挿入部72の長さに拘束されることなく、第一エンドプレート52(挟圧プレート56)及び第二エンドプレート54の間隔を調整し、保持部20に保持されたタブ積層部114に対して適正な加圧力を作用させることができる。
【0057】
≪作用効果≫
上述した実施形態に係る固定治具10は、以下の(a)~(l)に示すような特徴的構成を有し、これにより本発明に特有の効果が得られる。
【0058】
(a)上述した本発明の一実施形態に係る固定治具10は、タブ状に形成された電極タブ110がセル本体102の端部から突出するように設けられた複数の電池セル100について、それぞれの電極タブ110を電気的に接続した状態で固定するものであり、電極タブ110を巻くこと、あるいは畳むことにより形成されたタブ積層部114を保持する保持部20と、保持部20に保持されたタブ積層部114に対し、電極タブ110の積層方向に向けて加圧力を作用させる加圧部50と、を有すること、を特徴とするものである。
【0059】
固定治具10は、上記(a)のように、電極タブ110を巻くこと、あるいは畳むことによってタブ積層部114としたものを、保持部20によって保持することができる。これにより、固定治具10は、タブ積層部114をなすそれぞれの電極タブ110の接触面積を十分に確保しつつ、電極タブ110の配置に必要なスペースを最小限に抑制できる。さらに、固定治具10は、保持部20によって保持されたタブ積層部114に対し、電極タブ110の作用方向に加圧力を作用させることにより、電池セル100が膨張した場合に電極タブ110に張力がかかるのを抑制できる。従って、固定治具10は、電池セル100が膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セル100と電極タブ110との接合部分が広がったりするのを抑制できる。
【0060】
(b)上述した固定治具10において、加圧部50は、タブ積層部114に加えてセル本体102を加圧するものである。
【0061】
固定治具10は、上記(b)のように加圧部50によって電池セル100とともに電極タブ110を加圧する構成とすることにより、電池セル100及び電極タブ110を別々に加圧する構成とする場合に比べて構成や、固定治具10を用いた固定作業の簡略化を図れる。
【0062】
(c)上述した固定治具10において、保持部20は、電池セル100の厚みに相当する厚みとされたタブ積層部114を保持するものである。
【0063】
固定治具10は、上記(c)のように、電池セル100の厚みに相当する厚みとされたタブ積層部114を保持部20によって保持するものとすることにより、電池セル100の膨張が生じてもこれにより電極タブ110に過剰な張力が作用するのを抑制できる。
【0064】
(d)上述した固定治具10において、保持部20は、電極タブ110の積層方向に対して交差する方向へのタブ積層部114の移動を抑制する移動抑制部24を有するものである。
【0065】
固定治具10は、上記(d)のような構成とすることにより、保持部20によって保持されたタブ積層部114が積層方向に対して交差する方向に位置ずれするのを抑制できる。これにより、タブ積層部114の位置ずれによって保持部20による保持力が変動するのを抑制できる。
【0066】
(e)上述した固定治具10において、保持部20は、タブ積層部114を電極タブ110の積層方向一方側及び他方側から把持する把持部22を有するものであり、把持部22は、電極タブ110の積層方向一方側及び他方側に配される第一構成部26及び第二構成部28を有するものであり、移動抑制部24は、第一構成部26から第二構成部28に向けて突出した凸部34を含んで構成されるものである。
【0067】
固定治具10は、上記(e)のような構成とすることにより、第一構成部26及び第二構成部28を備えた把持部22によってタブ積層部114を把持しつつ、移動抑制部24を構成する凸部34によってタブ積層部114の位置ずれを抑制できる。従って、固定治具10は、上記(e)に係る構成を採用することにより、より一層安定的にタブ積層部114を保持できる。
【0068】
(f)上述した固定治具10において、第二構成部28は、凸部34を受ける受部36を有し、凸部34及び受部36が係合することにより、把持部22が積層方向に開くのを抑制できるものである。
【0069】
固定治具10は、上記(f)のような構成とすることにより、凸部34及び受部36を係合させることにより、保持部20におけるタブ積層部114の保持力をさらに向上させることができる。
【0070】
(g)上述した固定治具10は、加圧部50が、第一エンドプレート52と、第一エンドプレート52に対して対向配置される第二エンドプレート54と、を有し、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間に電池セル100が配された状態において、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔を調整することにより、保持部20及びセル本体102に対して作用する加圧力を調整可能なものである。
【0071】
固定治具10は、上記(g)に係る構成を採用することにより、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔調整により、保持部20に作用する加圧力に加え、セル本体102に作用する加圧力についても一緒に調整できる。従って、固定治具10は、加圧部50を保持部20及びセル本体102の加圧において共用できるため、構成や固定作業の簡略化を図れる。
【0072】
(h)上述した固定治具10は、加圧部50が、対向配置された第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54と、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間に配される加圧体58と、を有するものであり、加圧体58が、第一エンドプレート52及び保持部20に対して直接的あるいは間接的に当接する当接部70と、第二エンドプレート54に設けられた被挿入部60に対して挿入される挿入部72と、を有するものであり、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間にセル本体102が配されるとともに、当接部70及び第二エンドプレート54の間に保持部20が配された状態において、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔を調整することにより、セル本体102及び保持部20に対して作用する加圧力を調整可能なものであり、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔に応じて、被挿入部60に対する挿入部72の挿入量を変更可能であるものである。
【0073】
固定治具10は、上記(h)に係る構成を採用することにより、上記(g)の構成を採用した場合と同様に、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔調整によって、保持部20及びセル本体102に作用する加圧力の双方を一緒に調整できる。従って、固定治具10は、上記(h)に係る構成を採用することにより、装置構成や固定作業の簡略化を図れる。
【0074】
また、固定治具10は、上記(h)のように、加圧体58の当接部70を保持部20及び第一エンドプレート52に対して当接させつつ、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔を調整することにより、加圧体58を介して保持部20に対して作用する加圧力を調整可能とされている。これにより、固定治具10は、上記(h)に係る構成を採用することにより、保持部20に対して作用する加圧力を、加圧体58の当接部70と保持部20との接触領域に亘って分散させて作用させることができる。従って、固定治具10は、保持部20に保持されたタブ積層部114に対して局所に加圧力が集中するのを抑制できる。
【0075】
さらに、固定治具10は、上記(h)のように、加圧体58の挿入部72を、第二エンドプレート54に設けられた被挿入部60に対して挿入可能なものとされている。これにより、固定治具10は、加圧体58の位置ずれを抑制し、加圧体58を介して保持部20に保持されたタブ積層部114に対して適確に加圧力を作用させることができる。
【0076】
固定治具10は、上記(h)に係る構成とすることにより、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔に応じて、第二エンドプレート54に設けられた被挿入部60に対して挿入される加圧体58の挿入部72の挿入量を変更できる。これにより、固定治具10は、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔について、挿入部72の長さを下回る大きさまで減少させることができる。従って、固定治具10は、挿入部72の長さに拘束されることなく第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔を縮小させ、加圧体58を介して保持部20に保持されたタブ積層部114に対して適正な加圧力を作用させることができる。
【0077】
(i)上述した固定治具10は、被挿入部60に対して挿入された挿入部72の抜け止めとなる爪が設けられているものである。
【0078】
固定治具10は、上記(i)に係る構成とすることにより、被挿入部60に挿入された挿入部72が被挿入部60から離脱することにより、加圧体58が位置ずれするのを抑制できる。
【0079】
(j)上述した固定治具10は、加圧部50が、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間に配される挟圧プレート56を有するものであり、挟圧プレート56が、セル本体102及び第一エンドプレート52の間に配され、セル本体102に対して当接するセル本体接触部62と、加圧体58及び第一エンドプレート52によって挟み込まれる挟持部66と、を有するものであり、セル本体接触部62、及び第一エンドプレート52の間に空隙68が形成されるものである。
【0080】
固定治具10は、上記(j)のような構成とすることにより、挟圧プレート56の本体当接部及び挟持部66によって、セル本体102、加圧体58、及びタブ積層部114に対して適切な加圧力を作用させることができる。また、固定治具10は、上記(j)のようにセル本体接触部62、及び第一エンドプレート52の間に空隙68が形成されるものとすることにより、加圧体58及びタブ積層部114に対して適切な加圧力を作用させつつ、セル本体102の膨張収縮を吸収することができる。
【0081】
(k)上述した固定治具10において、複数の電池セル100の少なくとも一つが備える電極タブ110は、バスバー130が接続されたものであり、バスバー130とともに電極タブ110を巻くこと、あるいは畳むことにより、バスバー130を含むタブ積層部114が構成されるものである。
【0082】
固定治具10は、上記(k)に係る構成とすることにより、電極タブ110に対してバスバー130を接続する必要のある電池セル100についてもタブ積層部114の形態で固定できる。また、バスバー130が接続される電極タブ110によって構成されたタブ積層部114は、バスバー130によって補強されたものとなる。
【0083】
(l)電池モジュールMは、上述した固定治具10により複数の電池セル100が固定されるものである。
【0084】
電池モジュールMは、上述した固定治具10によって複数の電池セル100を固定したものであるため、熱等の影響によって電池セル100が膨張した場合であっても、電極タブ同士の非接触領域が増えたり、電池セル100と電極タブ110との接合部分が広がったりするのを抑制することができる。
【0085】
≪変形例≫
上述した固定治具10は、本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜構成の変更や省略、追加等を行うことができる。具体的には、上述した固定治具10は、必ずしも上記(b)のように、加圧部50によりタブ積層部114及びセル本体102を加圧できる構成とする必要はない。例えば、固定治具10は、加圧部50についてタブ積層部114のみを加圧し、セル本体102を加圧しないものとすることも可能である。
【0086】
固定治具10は、上記(c)のように、保持部20が電池セル100の厚みに相当する厚みのタブ積層部114を保持するものでなくても良い。保持部20は、電池セル100の厚みよりも薄い、あるいは厚いタブ積層部114を保持するものでも良い。
【0087】
上述した固定治具10は、上記(d)のように移動抑制部24を設けたものであるが、本発明はこれに限定されない。固定治具10は、移動抑制部24を備えていないものや、上述したのとは異なる形態の移動抑制部24を備えたものでも良い。
【0088】
上述した固定治具10は、保持部20について、上記(e)のような把持部22や移動抑制部24を備えないものとすることも可能である。固定治具10は、保持部20が把持部22以外の構成によりタブ積層部114を把持等して保持するもの等とすることができる。
【0089】
上述した固定治具10は、保持部20について、上記(f)のような凸部34及び受部36が係合する構成を備えていないもの等とすることが可能である。
【0090】
上述した固定治具10は、上記(g)のように加圧部50が、第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔調整を行うことにより、保持部20及びセル本体102に対して作用する加圧力を調整するものでなくても良い。例えば、固定治具10は、加圧部50が保持部20及びセル本体102を個別に加圧する構成を備えたもの等とすることが可能である。
【0091】
上述した固定治具10は、上記(h)のように第一エンドプレート52及び第二エンドプレート54の間隔に応じて、被挿入部60に対する挿入部72の挿入量を変更可能とした構成を採用したものでなくても良い。例えば、固定治具10は、加圧部50が挿入部72や被挿入部60を備えていない構成とすることが可能である。
【0092】
上述した固定治具10は、上記(i)のように被挿入部60に対して挿入された挿入部72の抜け止めとなる爪74を備えていないものとすることが可能である。爪74を設けない場合には、固定治具10は、他の構成により挿入部72が被挿入部60から抜けるのを抑制できるようにすると良い。
【0093】
上述した固定治具10は、上記(j)のように、セル本体接触部62及び第一エンドプレート52の間に空隙68が形成されることにより、セル本体102の膨張収縮を吸収できる構成としたが、本発明はこれに限定されない。固定治具10は、セル本体接触部62及び第一エンドプレート52の間に空隙68が形成されいる構成とすることが可能である。このような構成とする場合、固定治具10は、セル本体接触部62及び第一エンドプレート52の間以外の箇所において、セル本体102の膨張収縮を吸収できる構成とすると良い。
【0094】
上述した固定治具10は、上記(k)のように、バスバー130とともに電極タブ110を巻くこと、あるいは畳むことにより、バスバー130を含むタブ積層部114を構成したものであるが、本発明はこれに限定されない。固定治具10は、タブ積層部114とは別にバスバー130を設け、上述したのとは異なる構成によりタブ積層部114とバスバー130とを電気的に接続したもの等とすることができる。
【0095】
上述した電池モジュールMは、上記(a)~(k)に係る全ての構成を具備した固定治具10によって複数の電池セル100が固定されたものであるが、本発明はこれに限定されない。電池モジュールMは、上述実施形態に係る構成の一部を備えていない固定治具10や、上述実施形態において例示した構成に加えて他の構成を備えた固定治具10等によって複数の電池セル100を固定したもの等とすることが可能である。
【0096】
本願発明は、上述した実施の形態等に記載の構成に限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲において適宜設計変更等することが可能である。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素または課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても、本願または本願に基づく分割出願、変更出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、タブ状に形成された電極タブがセル本体の端部から突出するように設けられた複数の電池セルについて、それぞれの電極タブを電気的に接続した状態で固定する用途全般において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 固定治具
20 保持部
22 把持部
24 移動抑制部
26 第一構成部
28 第二構成部
34 凸部
36 受部
50 加圧部
52 第一エンドプレート
54 第二エンドプレート
56 挟圧プレート
58 加圧体
60 被挿入部
62 セル本体接触部
66 挟持部
68 空隙
70 当接部
72 挿入部
74 爪
100 電池セル
102 セル本体
110 電極タブ
114 タブ積層部
130 バスバー
M 電池モジュール