(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025111190
(43)【公開日】2025-07-30
(54)【発明の名称】亀裂検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20250723BHJP
【FI】
G01B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005447
(22)【出願日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】大武 浩司
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA66
2F062AA99
2F062EE01
2F062EE34
2F062FF02
2F062FF25
2F062GG17
2F062GG90
2F062HH21
(57)【要約】
【課題】定量的にかつ正確に対象物表面の亀裂の有無を評価することが可能となる。
【解決手段】この亀裂検出装置10は、先端に向けて尖った形状をなす尖形部材11と、尖形部材11を対象物1の表面1aに沿った向きに移動可能とする移動装置12と、尖形部材11を対象物1の表面1aに向けて付勢可能な付勢部材13と、尖形部材11の付勢方向に沿った向きの加速度aを計測可能な加速度計14とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の亀裂を検出するための装置であって、
先端に向けて尖った形状をなす尖形部材と、
前記尖形部材を前記対象物の表面に沿った向きに移動可能とする移動装置と、
前記尖形部材を前記対象物の表面に向けて付勢可能な付勢部材と、
前記尖形部材の付勢方向に沿った向きの加速度を計測可能な加速度計とを備えた、亀裂検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプレス金型の製作、設計変更に際して当該プレス金型に肉盛り溶接などの溶接加工を施した場合、溶接後に肉盛り部を除去した後の溶接境界(溶接部と金型との境界)に微小な亀裂が残存していることがある。このサイズの亀裂は、溶接を施したプレス金型をそのまま使用する分にはさほど問題にはならないが、成形面の硬度向上を狙ってプレス金型にメッキ処理を施す場合には、メッキ処理の一部としての加熱処理により上記亀裂が広がるおそれが生じる。亀裂が広がることで金型の強度低下はもちろん、プレス成形品の表面に広がった亀裂の形状を反映した痕が残るおそれも生じるため、外観品質の観点からもこの種の亀裂は極力回避すべきである。
【0003】
溶接部に生じる亀裂の有無を検出するための手段として、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、橋梁構造物の溶接部における亀裂の発生又は進展によって橋梁構造物に発生する弾性波を検出することによって、当該亀裂の発生又は進展を検出可能とする亀裂検出装置が提案されている。
【0004】
あるいは、特許文献2には、金属板を溶接することにより構築される船舶などの建造物における溶接部の亀裂の有無を検出するための方法として、溶接ビードに沿って渦電流センサを走査して得られる信号に対して所定の処理を施すことで得られる数値の大きさに基づいて溶接部における亀裂の有無を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-112396号公報
【特許文献2】特開2000-111530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、亀裂の発生又は進展時に生じる現象(弾性波の発生)を検出することで亀裂の有無を検出する方法だと、既に存在している亀裂の有無を検出する用途には適さない。また、特許文献2に記載のように、渦電流などの検出信号を亀裂の存在が疑われる箇所に向けて発した際の反応に基づいて亀裂の有無を検出する方法だと、金型表面に開口している亀裂だけでなく、金型内部に存在している欠陥(空孔など)も検出してしまうため、金型表面の亀裂のみを検出するための手段として適切ではなかった。
【0007】
そのため、現状では、微小亀裂の有無を直接手で触れる(爪が引っ掛かるか否か)方法でチェックしているが、これだと検査する人の技量や感覚によって検査結果が異なるといった問題が起こり得る。探傷法と呼ばれる亀裂検出手段を用いて亀裂の有無のチェックも行ってはいるが、この方法だと、塗料が入り込む隙間全てが着色されるため、正確に溶接境界の亀裂を正確に検出することは難しい。
【0008】
上述した問題は溶接部に限ったことではなく、物体表面に生じる亀裂の有無を検出する必要がある対象物全てに起こり得る。
【0009】
以上の事情に鑑み、本明細書では、定量的にかつ正確に対象物表面の亀裂の有無を評価可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明に係る亀裂検出装置によって達成される。すなわち、この評価装置は、対象物の亀裂を検出するための装置であって、先端に向けて尖った形状をなす尖形部材と、尖形部材を対象物の表面に沿った向きに移動可能とする移動装置と、尖形部材を対象物の表面に向けて付勢可能な付勢部材と、尖形部材の付勢方向に沿った向きの加速度を計測可能な加速度計とを備えた点をもって特徴付けられる。
【0011】
上記構成に係る亀裂検出装置を用いて亀裂の検出を行った場合、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、尖形部材の先端部を対象物の表面に接触させた状態で移動装置により尖形部材を移動させた場合、尖形部材は付勢部材により対象物の表面に付勢された状態で移動する。そのため、尖形部材が通過する軌跡上に亀裂が存在しない場合、尖形部材は、対象物の表面に倣って上下動しながら当該表面に沿って移動する。一方、尖形部材が亀裂上を通過する際、亀裂の直上部分では尖形部材に作用する付勢力を受ける物体が存在しないため、尖形部材は付勢方向に加速し、尖形部材の先端部が亀裂に嵌まり込む。表面の例えば凹部や凸部を通過する際も尖形部材は上下動するが、その間、尖形部材の先端部は常に対象物の表面に接触した状態にある。そのため、尖形部材の加速度が大きく変動する可能性は極めて低い。以上より、本発明によれば、亀裂の有無を定量的にかつ正確に評価することができ、これにより亀裂の検出結果に対する信頼性を高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る亀裂検出装置は、加速度計で計測した尖形部材の加速度の値に基づいて、加速度を計測した地点における亀裂の有無を判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明に係る亀裂検出装置によれば、尖形部材の加速度の値に基づいて、亀裂の存在及びその位置を定量的に評価し得る。よって、加速度の値に基づいて、亀裂の有無を判定する判定部を設けることによって、自動的に亀裂の有無及びその位置を検出することが可能となる。これにより、亀裂の検出結果に対する信頼性をさらに高めることが可能となる。
【0014】
また、亀裂検出装置が判定部を備える場合、本発明に係る亀裂検出装置において、判定部は、機械学習により、対象物の表面に亀裂が存在している場合に加速度計で計測される尖形部材の加速度の大きさを学習し、亀裂が存在していると判定される場合の加速度の閾値を取得し、加速度計で計測して得た加速度の値が閾値を上回っている場合に、亀裂が存在していると判定するように構成してもよい。
【0015】
このように、判定部が、機械学習により亀裂が存在していると判定される場合の加速度の閾値を取得し、この閾値と加速度の計測値とに基づいて、亀裂の有無を判定するようにすれば、判定対象の種類が変わっても、その都度機械学習により自動的に加速度の閾値を取得して、取得した閾値を用いて対象物の亀裂の有無の判定を自動的にかつ連続的に実施することが可能となる。これにより、さらに使用者の主観が入り込む余地を排除して、より普遍的に亀裂の有無を評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る亀裂検出装置によれば、定量的にかつ正確に対象物表面の亀裂の有無を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す亀裂検出装置の要部平面図である。
【
図3】
図1に示す亀裂検出装置の使用態様の一例を概念的に示す図で、(a)尖形部材の移動態様を模式的に示す図と、(b)尖形部材の加速度の変動態様を模式的に示すグラフである。
【
図4】尖形部材が亀裂上を通過するときの挙動を模式的に描いた図である。
【
図5】尖形部材が表面の凹部を通過するときの挙動を模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置の内容を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置10の全体構成を示している。この亀裂検出装置10は、対象物1の表面1aに存在する亀裂2(後述する
図3等を参照)を検出するためのもので、尖形部材11と、移動装置12と、付勢部材13と、加速度計14と、判定部15とを備える。本実施形態では、亀裂検出装置10は、対象物1への固定部16をさらに備える。
【0020】
尖形部材11は、先端に向けて尖った形状をなすもので、本実施形態では、全体として柱状をなしかつその先端部11aが円錐形状をなしている。また、尖形部材11の先端部11a外周面の角度(円錐形状をなす場合であれば円錐面をなす母線の中心線に対する角度)は、特に制限なく設定可能であるが、あまりに大きいと、亀裂2の大きさ(深さ)に応じた嵌まり込みが阻害され、また、あまりに小さいと亀裂2に嵌まり込んだ後に亀裂2から尖形部材11が抜け出るのを阻害するおそれがある。よって、実際には、上述した二つの条件を満たすように、先端部11a外周面の角度を設定するのがよい。一例として、先端部11a外周面の角度は10°~30°の範囲内に設定される。
【0021】
移動装置12は、尖形部材11を対象物1の表面1aに沿って移動可能とするもので、本実施形態では、回転駆動部17と、回転駆動部17で発生させた回転駆動力を直進運動に変換する直進変換機構18と、直進変換機構18の直進部18aに取付けられ、直進部18aの直進方向Yに直交する向きに尖形部材11を移動可能に支持する支持部19とを有する。
【0022】
ここで、回転駆動部17は例えばモータであって、図示しない電源から供給された電力により回転駆動する。また、直進変換機構18は例えばボールねじ機構であって、ねじ部18bの外周に取付けられたナット部を含む直進部18aを、ねじ部18bの軸回転に伴いねじ部18bの長手方向にスライド可能に構成されている。
【0023】
支持部19は、直進変換機構18のねじ部18bから平面方向にずれた位置に配設されている(
図2を参照)。また、本実施形態では、支持部19は全体として筒状をなしており、基端側(
図1でいえば上側)で尖形部材11を挿通支持可能な第一小径部19aと、先端側で尖形部材11を挿通支持可能な第二小径部19bと、第一及び第二小径部19a,19bに対して内周面が大径で、かつ付勢部材13としての圧縮ばね20を尖形部材11との間に収容可能な大径部19cとを一体に有する。この場合、尖形部材11の外周に鍔部11bが一体的に設けられ、この鍔部11bと第一小径部19aとの間に圧縮ばね20が配設される。この場合、圧縮ばね20が常に圧縮された状態となるように、尖形部材11を対象物1の表面1a上に配置することで(本実施形態でいえば固定部16により尖形部材11及び移動装置12を対象物1の表面1aに対して所定の高さ位置に固定することで)、尖形部材11の先端部11aは対象物1の表面1aに常に押し付けられた状態となる(
図3(a)を参照)。なお、本実施形態では、尖形部材11の先端部11aが対象物1の表面1aに当接していない状態では、
図1に示すように、尖形部材11の鍔部11bが第二小径部19bと軸方向で当接した状態となるように圧縮ばね20の自然長が所定の長さに調整される。
【0024】
加速度計14は、尖形部材11に固定されて尖形部材11と一体的に移動可能とされる。ここで加速度計14としては、少なくとも尖形部材11の長手方向に沿った方向の加速度(より正確には付勢方向に沿った向きの加速度a)が計測可能な限りにおいて、任意の種類の加速度計が適用可能である。
【0025】
判定部15は、少なくとも加速度計14と電気的に接続されており、加速度計14で計測した尖形部材11の長手方向に沿った向きの加速度aの値に基づいて、当該加速度を計測した地点における亀裂2の有無を判定可能に構成されている。
【0026】
本実施形態では、判定部15は、尖形部材11の加速度aと亀裂2との関係について機械学習を行うと共に(機械学習ステップS1)、機械学習の結果を利用して亀裂2の発生に係る加速度aの閾値Taを設定し(閾値設定ステップS2)、かつ設定した閾値Taを用いて亀裂2の有無を判定する(判定ステップS3)ように構成されている。
【0027】
まず機械学習ステップS1では、機械学習により、対象物1の表面1aに亀裂2が存在している場合に加速度計14で計測される尖形部材11の加速度aの大きさを学習する。この場合、亀裂2が存在した場合の加速度データ(特に加速度aの最大値に係るデータ)と、亀裂2が存在しない場合の加速度データとを学習することにより、亀裂2が存在する場合における尖形部材11の加速度aの大きさを学習する。
【0028】
そして、閾値設定ステップS2では、機械学習ステップS1で学んだ、亀裂2が存在する場合における加速度aの大きさに基づいて、亀裂2が存在していると判定される場合の加速度aの閾値Taを設定する。なお、ここでいう「亀裂2が存在する場合」とは、「検出すべき大きさの亀裂2が存在する」ことを意味する。よって、例えば対象物1(プレス金型など)にとって問題とならないオーダーのサイズの亀裂2が加速度aの値から検出できたとしても、当該亀裂2は閾値Taの設定に際しては考慮されない。検出すべきサイズの亀裂2が存在する場合に計測された加速度aの値に基づいて、加速度aの閾値Taを設定するのがよい。
【0029】
このようにして加速度aの閾値Taを設定した後、判定ステップS3で、実際に評価対象となる対象物1の表面1aを伝って尖形部材11が移動した際に計測された加速度aの値に基づいて、尖形部材11の移動範囲(先端部11aと表面1aとの接触点の軌跡上)に亀裂2が存在しているか否かを判定する。詳細には、まず加速度計14で計測した尖形部材11の加速度aの値を閾値Taと比較する。そして、計測した加速度aの値が閾値Taを上回っている場合には、当該加速度aを計測した地点に亀裂2が存在しているものと判定する。あるいは、計測した加速度aの値が閾値Ta以下である場合には、当該加速度aを計測した地点に亀裂2は存在しないものと判定する。
【0030】
固定部16は、亀裂検出装置10のうち少なくとも尖形部材11と機械的に接続された部分(本実施形態でいえば移動装置12、付勢部材13、加速度計14)を対象物1に固定するためのもので、本実施形態では磁石で構成される。これにより、対象物1の表面1aに対する尖形部材11の移動開始位置及び高さ位置を設定することが可能となる(
図3(a)を参照)。もちろん、磁石は一例に過ぎない。例えば対象物1が鋼材の如き磁性体でない場合には吸着機構を採用し、あるいは対象物1が板状をなす場合にはクランプ機構を採用する等、対象物1の形状、材質に応じて固定部16を構成してもよい。
【0031】
次に、上記構成の亀裂検出装置10を用いた亀裂検出方法の一例を主に
図3~
図5に基づいて説明する。
【0032】
まず固定部16により亀裂検出装置10を対象物1に固定する。この際、尖形部材11の先端部11aが対象物1の表面1aと当接し、被当接状態と比べて尖形部材11が上方に位置するように亀裂検出装置10を固定する。これにより、圧縮ばね20には下向きの付勢力f(弾性復元力)が発生し、尖形部材11が表面1aに向けて付勢された状態となる(
図3(a)を参照)。
【0033】
このように尖形部材11に対象物1の表面1aに向けた付勢力fを作用させた状態で、移動装置12により尖形部材11を表面1aに沿って移動させる。本実施形態では、回転駆動部17の駆動により直進変換機構18のねじ部18bに回転駆動力が伝達され、伝達された回転駆動力はねじ部18bから直進部18aに直進力に変換された状態で伝達される。これにより、直進部18aが所定の向きに直進移動を行うと共に、直進部18aに設けられた支持部19(
図2を参照)を介して尖形部材11が直進部18aと共に移動する。
【0034】
この際、尖形部材11は付勢部材13(圧縮状態の圧縮ばね20)により下方への付勢力fを付与された状態にあるので、直進方向Y(
図1を参照)への移動に伴い、尖形部材11の先端部11aが対象物1の表面1aに当接した状態を維持したまま直進方向Yに移動する。よって、尖形部材11は表面1aの形状に倣って上下動しながら直進方向Yに移動する(
図3(a)を参照)。
【0035】
ここで、尖形部材11が表面1aに存在する亀裂2上を通過する場合、亀裂2上では、尖形部材11の先端部11aは何らの物体とも接触していない状態となるため、圧縮ばね20からの付勢力fを対象物1で受けることができず、結果、尖形部材11は下方に加速しながら亀裂2に嵌まり込む(
図4を参照)。この際、加速度計14で計測される尖形部材11の加速度aは急激に増加する(
図3(b)の対応箇所を参照)。
【0036】
一方、尖形部材11が表面1aに存在する凹部3上を通過する場合、尖形部材11は常に下方に付勢されているため、凹部3上を進むにつれて尖形部材11は下方に移動していくが、その間、先端部11aと凹部3表面との接触状態は維持されている(
図5を参照)。そのため、凹部3上を通過する間、尖形部材11の加速度aが急激に増加することはない(ほとんど変動しない)。
【0037】
以上より、判定部15は、加速度計14で計測された尖形部材11の加速度aの値を、予め閾値設定ステップS2で設定しておいた閾値Taと比較し、当該加速度aの値が閾値Taを超える場合には当該加速度aを計測した地点(位置P1)に亀裂2が存在しているものと判定する(
図3(a)及び(b)の左側部分を参照)。また、計測した加速度aの値が閾値Ta未満である場合には、当該加速度aを計測した地点(位置P2,P3)に亀裂2は存在せず、あるいは亀裂2は存在しても問題にならない程度のごく微小な亀裂2(2′)に過ぎないものと判定する(
図3(a)及び(b)の右側部分を参照)。このようにして、対象物1の表面1aにおける亀裂2の検出が自動的に行われる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態に係る亀裂検出装置10によれば、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、尖形部材11の先端部11aを対象物1の表面1aに接触させた状態で移動装置12により尖形部材11を移動させた場合、尖形部材11は付勢部材13(圧縮ばね20)により対象物1の表面1aに付勢された状態を維持して移動する。そのため、尖形部材11が通過する軌跡上に亀裂2が存在しない場合、尖形部材11は、対象物1の表面1aに倣って上下動しながら当該表面1aに沿って移動する(
図3(a)を参照)。一方、尖形部材11が亀裂2上を通過する際、亀裂2の直上部分では尖形部材11に作用する付勢力fを受ける物体が存在しないため、瞬間的に尖形部材11は付勢方向に加速し、尖形部材11の先端部11aが亀裂2に嵌まり込む(
図4を参照)。表面1aの例えば凹部3を通過する際も尖形部材11は上下動するが、その間、尖形部材11の先端部11aは常に対象物1の表面1aに接触した状態にある(
図5を参照)。そのため、尖形部材11の加速度aが大きく変動することはない。以上より、本実施形態に係る亀裂検出装置10によれば、尖形部材11の加速度aの値に基づいて、亀裂2の有無を定量的にかつ正確に評価することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、計測された加速度aの値に基づいて、亀裂2の有無を自動的に判定する判定部15をさらに備えると共に、この判定部15が、機械学習により対象物1の表面1aに亀裂2が存在していると判定される場合の加速度aの閾値Taを設定し、計測した加速度aの値が閾値Taを上回っている場合に、当該加速度aを計測した地点に亀裂2が存在していると判定するようにした。このように、判定部15が、機械学習により亀裂2が存在していると判定される場合の加速度aの閾値Taを設定し、この閾値Taと計測した加速度aの値とに基づいて、亀裂2の有無を判定するようにすれば、判定対象(対象物1)の種類が変わっても、その都度機械学習により自動的に加速度の閾値Taを取得して、取得した閾値Taを用いて対象物1の亀裂2の有無の判定を自動的にかつ連続的に実施することが可能となる。これにより、さらに使用者の主観が入り込む余地を排除して、より普遍的に亀裂2の有無を評価することが可能となる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る亀裂検出装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0041】
例えば上記実施形態では、移動装置12を、回転駆動部17と、直進変換機構18としてのボールねじ機構と、支持部19とで構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成をとることも可能である。例えば図示は省略するがシリンダにより支持部19を所定の向きに沿って直進運動させ得るように移動装置12を構成してもよい。ただし、何れにしても、付勢状態にある尖形部材11の先端部11aが対象物1の表面1aとの当接状態を維持できる程度に直進方向Yの移動速度を制御することが肝要となる。
【符号の説明】
【0042】
1 対象物
1a 表面
2 亀裂
3 凹部
10 亀裂検出装置
11 尖形部材
11a 先端部
11b 鍔部
12 移動装置
13 付勢部材
14 加速度計
15 判定部
16 固定部
17 回転駆動部
18 直進変換機構
18a 直進部
18b ねじ部
19 支持部
20 圧縮ばね
a 尖形部材の加速度
Ta 加速度の閾値
f 付勢力
Y 直進方向