(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001112
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】電動車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20241225BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20241225BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241225BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241225BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20241225BHJP
B60L 50/61 20190101ALN20241225BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60L50/16
F02D29/06 D
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100514
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅大
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB03
3D202CC24
3D202DD16
3G093AA07
3G093BA19
3G093EA03
3G093FB03
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC24
5H125BD17
5H125CD02
5H125EE31
5H125EE41
(57)【要約】
【課題】内燃機関のNVHと燃費とのバランスを調整可能な電動車両の制御システムを提供する。
【解決手段】電動車両の制御システムは、電動車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関に駆動される発電機と、前記電動車両の車輪を駆動可能なモータと、前記電動車両を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の燃費を優先して前記回転数を上昇させる第1制御と、前記第1制御よりも緩やかに前記回転数を上昇させる第2制御と、を有し、前記制御装置は、前記内燃機関が発電機を駆動して得た電力によって前記モータを駆動するシリーズ運転中に、前記内燃機関の回転数を上昇させる際に、前記内燃機関の目標とする燃費である目標燃費と、前記内燃機関の実際の燃費である実燃費と、を取得し、前記目標燃費と、前記実燃費に応じて、前記第1制御と前記第2制御との重みづけを変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、
前記内燃機関に駆動される発電機と、
前記電動車両の車輪を駆動可能なモータと、
前記電動車両を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の燃費を優先して回転数を上昇させる第1制御と、前記第1制御よりも緩やかに前記回転数を上昇させる第2制御と、を有し、
前記制御装置は、前記内燃機関が前記発電機を駆動して得た電力によって前記モータを駆動するシリーズ運転中に、前記内燃機関の前記回転数を上昇させる際に、前記内燃機関の目標とする燃費である目標燃費と、前記内燃機関の実際の燃費である実燃費と、を取得し、前記目標燃費と、前記実燃費に応じて、前記第1制御と前記第2制御との重みづけを変更する、
電動車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記目標燃費が前記実燃費よりも高い場合、前記第1制御の重みづけを前記第2制御よりも高くする、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1制御において前記回転数を前記内燃機関の最良燃費を通過する第1上昇率によって上昇させ、
前記第2制御において前記回転数を前記第1上昇率よりも小さい第2上昇率によって上昇させ、
前記第1制御と前記第2制御との重みづけを、前記第1上昇率と前記第2上昇率とに係数をかけ合わせて変更する、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、所定期間毎に前記重みづけ変化させる、
請求項1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項5】
前記目標燃費を設定する設定手段と、
前記目標燃費に対する前記実燃費の達成度合いを前記電動車両のユーザに報知する報知手段と、
をさらに備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータによって車輪を駆動する電動車両の制御システムが知られている(例えば特許文献1参照)。このような電動車両では、内燃機関によって発電機を駆動し、発電機で発電した電力によってモータを駆動するシリーズモードを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、シリーズモード運転中(シリーズ運転中)に内燃機関の回転数を上昇させる際に、内燃機関のNVH(NVHはNoise, Vibration, Harshnessの略)を良くするための電動車両の制御システムを開示している。しかし、内燃機関のNVHが良くなるように制御すると、内燃機関の燃費が悪化する。
【0005】
本開示の課題は、内燃機関のNVHと燃費とのバランスを調整可能な電動車両の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両の制御システムは、電動車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関に駆動される発電機と、前記電動車両の車輪を駆動可能なモータと、前記電動車両を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の燃費を優先して回転数を上昇させる第1制御と、前記第1制御よりも緩やかに前記回転数を上昇させる第2制御と、を有し、前記制御装置は、前記内燃機関が発電機を駆動して得た電力によって前記モータを駆動するシリーズ運転中に、前記内燃機関の前記回転数を上昇させる際に、前記内燃機関の目標とする燃費である目標燃費と、前記内燃機関の実際の燃費である実燃費と、を取得し、前記目標燃費と、前記実燃費に応じて、前記第1制御と前記第2制御との重みづけを変更する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、内燃機関のNVHと燃費とのバランスを調整可能な電動車両の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による第1制御による内燃機関の回転数の上昇率を示す図。
【
図3】本開示の一実施形態による第2制御による内燃機関の回転数の上昇率を示す図。
【
図4】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート。
【
図5】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御の一例を示すタイミングチャート。
【
図6】本開示の一実施形態によるディスプレイに表示する目標燃費設定画面の一例。
【
図7】本開示の一実施形態によるディスプレイに表示する燃費達成度合い表示画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、電動車両Cの制御システム3は、内燃機関1と、モータ(FrM:回転電機の一例)2と、発電機(GEN)4と、駆動用電池(BT)6と、トランスアクスル8と、モータ2および発電機4を制御するインバータ12と、電動車両Cのユーザが操作可能なタッチパネル式のディスプレイ(設定手段および報知手段の一例)14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル16と、外部電源に接続可能な充電器18と、車両制御装置(制御装置の一例)20と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置22と、を備える。このほか、電動車両Cの制御システム3は、例えば家電などの外部機器に電力を供給可能な給電装置24と、ユーザが充電を指示する充電ボタン(図示なし)などを備えてもよい。本実施形態では電動車両Cは、充電器18によって外部電源からの電力を駆動用電池6に蓄電可能な外部充電、または、給電装置24によって駆動用電池6からの電力を外部機器に供給可能な外部給電を備えるプラグインハイブリッド車(PHEV)である。
【0011】
内燃機関1は、発電機4と接続され、発電機4を駆動する。さらに、本実施形態では、内燃機関1は、トランスアクスル8を介して車輪C1を駆動可能である。本実施形態の内燃機関1は、直列4気筒型のガソリンエンジンである。内燃機関1は、燃料タンク(Fuel TANK)26から燃料の供給を受け、燃料を燃焼させて消費する。
【0012】
モータ2は、トランスアクスル8および車軸10を介して車輪C1と接続され、車輪C1を駆動する。本実施形態のモータ2は、複数のコイルと複数の永久磁石を有する三相交流モータである。発電機4は、内燃機関1に接続され、内燃機関1を駆動可能である。発電機4は、駆動用電池6からの電力によって力行する間は、内燃機関1を駆動するモータリングを行う。一方、発電機4は、内燃機関1の運転中において内燃機関1に駆動されて発電する。したがって、発電機4は、力行と発電が可能なモータ・ジェネレータである。
【0013】
駆動用電池6は、モータ2および発電機4に電力を出力するとともに、モータ2および発電機4が発生した電力が入力される。さらに駆動用電池6は、充電器18を介して外部電力が入力される。
【0014】
トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10に伝達される。
【0015】
インバータ12は、駆動用電池6から供給された直流電力を交流電力に変換するとともに、モータ2に供給する電力を調整することによって、モータ2の力行トルクを制御する。また、インバータ12は、モータ2が回生する場合、モータ2から供給される交流電力を直流電力に変換するとともに、駆動用電池6に供給する電力を調整することによって、モータ2の回生トルクを制御する。
【0016】
ディスプレイ14は、電動車両Cのユーザが視認できる位置に配置され、ユーザに電動車両Cに関する情報を報知可能な装置である。本実施形態では、ディスプレイ14は、電動車両Cの車室内に配置されるタッチパネル式の液晶型または有機EL型のディスプレイである。ディスプレイ14は、車両制御装置20に電気的に接続され、車両制御装置20から電動車両Cに関する情報を取得し、報知画面を生成するとともに、ユーザがタッチ操作可能なボタンを生成する。
【0017】
車両制御装置20は、インバータ12を介してモータ2と電気的に接続され、モータ2を制御する装置である。モータ2は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置20は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cを制御する。
【0018】
本実施形態の車両制御装置20は、さらにエンジン制御装置22と電気的に接続される。エンジン制御装置22は、内燃機関1が備える各種装置と電気的に接続され、内燃機関1を制御する。なお、内燃機関1の制御は、エンジン制御装置22のほか、車両制御装置20によって実行してもよい。また、車両制御装置20は、電動車両Cのこのほかの各種装置と電気的に接続され、様々な制御を実行してもよい。
【0019】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や充電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置20が各モードを切り替え、インバータ12を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置22に内燃機関1を制御させる。
【0020】
このような電動車両Cでは、シリーズモードにおいてアクセルペダル16が踏み込まれた場合、アクセルペダル16の踏み込み量に基づいて内燃機関1の要求される出力であるエンジン要求出力を演算する。車両制御装置20は、エンジン要求出力となるように、内燃機関1の回転数を上昇させる。これによって、車両制御装置20は、発電機4による発電量を上昇させる。車両制御装置20は、内燃機関1の回転数を上昇させる際に、内燃機関1の燃費を優先して回転数を上昇させる第1制御と、第1制御よりも緩やかに回転数を上昇させ、内燃機関1のNVHを第1制御よりも良くする第2制御と、を有する。
【0021】
図2および
図3は、内燃機関1の等燃費マップである。
図2および
図3の実線で示す実線Tmaxは、内燃機関1の各回転数における最大トルクを示す。渦状の実線は、各エンジン回転数および各トルクにおいて、同じ燃費となる線を結んだ線である。等燃費マップでは、渦の中心に近いほど燃費が良い。実線FEbは、A点の内燃機関1の回転数およびトルクから、B点の内燃機関1の回転数およびトルクまで、内燃機関1がシリーズ運転によって回転数を上昇させた場合による最良燃費ライン(最良燃費の一例)である。
【0022】
次に、第1制御および第2制御において、
図2および
図3のA点からB点まで内燃機関1に要求される出力が変化した場合における、第1制御および第2制御の相違点について説明する。
【0023】
第1制御において車両制御装置20は、内燃機関1の最良燃費となるトルクと回転数となるように、内燃機関1を制御する。本実施形態では車両制御装置20は、第1制御において、実線FEbに沿って内燃機関1の回転数とトルクを上昇させる。より具体的には、車両制御装置20は、最良燃費ラインの第1回転変化率(第1上昇率の一例)d1を記憶している。車両制御装置20は、この第1回転変化率d1を用いることによって、
図2に示すように、最良燃費ラインを通過しながらエンジン要求出力(B地点)まで内燃機関1の回転数を増加させる。このように、第1制御では、燃費の良い回転数とトルクを通過しながら、内燃機関1の回転数が上昇するため、内燃機関1の燃費が良い。しかし、燃費を優先しているためNVHが第2制御よりも悪化するおそれがある。具体的には、内燃機関1の出力は、トルクと回転数の積で決まるが、最良燃費ラインの出力はB点(エンジン要求出力)における出力よりも低い。このため、車両制御装置20が第1制御のみによって内燃機関1を運転した場合、内燃機関1の回転数上昇中は、エンジン要求出力に対して内燃機関1の出力が不足した状態となる。エンジン要求出力に対して内燃機関1の出力が不足した状態を少なくするため、車両制御装置20は、第1制御において内燃機関1の出力を最良燃費ラインに沿って速やかに上昇させることが好ましい。このため、第1回転変化率d1は、後述する第2回転変化率d2よりも高い変化率に設定することが好ましい。この結果、車両制御装置20は、内燃機関1の回転数を第2制御よりも早く上昇させる。これによって、第1制御は、第2制御に比べるとNVHが悪化しやすい。
【0024】
図3に示すように、第2制御において車両制御装置20は、内燃機関1の回転数を緩やかに上昇させながら内燃機関1を制御する。本実施形態では、
図3の破線に示すように、回転数を維持しながら一旦エンジン要求出力(B点と同じ出力)となるC点まで内燃機関1のトルクを上昇させたのち、出力を一定にしながら最良燃費ライン上にあるB点までトルクを下げながら回転数を緩やかに上昇させる。
図3のC点からB点の破線は、内燃機関1のトルクと回転数の積がB点と同じ出力となる線を示している。車両制御装置20は、この破線に沿ってトルクを下げながら回転数を上昇させる。このとき、車両制御装置20は、第1回転変化率d1よりも緩やかな回転変化率である第2回転変化率(第2上昇率の一例)d2によって回転数を上昇させる。第2回転変化率d2は、内燃機関1の回転数の上昇が、電動車両Cのユーザに不快感を与えない程度のNVHとなるように、予め実験などによって設定された値である。車両制御装置20は、この予め設定された第2回転変化率d2を記憶している。車両制御装置20は、この第2回転変化率d2を用いることによって、エンジン要求出力を達成しながらB点まで内燃機関1の回転数を上昇させる。このように、第2制御では、NVHを優先しながら、内燃機関1の回転数が上昇する。しかし、燃費が悪いトルクと回転数を通過するため、第1制御よりも燃費が悪くなる。
【0025】
このように、第1制御および第2制御は、それぞれにメリットとデメリットを有する。そこで、車両制御装置20は、第1制御と第2制御の重みづけを変更可能である。本実施形態では車両制御装置20は、第1回転変化率d1と第2回転変化率d2にかけ合わせる変化率係数Kを変更することによって、第1制御と第2制御の重みづけを変更する。なお、本実施形態では、車両制御装置20は、ユーザが目標燃費を設定可能な燃費モードを有し、ユーザが燃費モードを選択している場合、重みづけの変更が可能である。ユーザが燃費モードを選択していない場合は、車両制御装置20は、第2制御によって内燃機関1を制御する。
【0026】
次に、
図4のフローチャートを用いて、車両制御装置20が実行する制御手順について説明する。本実施形態では、車両制御装置20は、燃費モードを選択した場合、制御手順を開始する。
【0027】
ステップS1では車両制御装置20は、目標燃費設定画面をディスプレイ14に表示する。
図6に示すように、目標燃費設定画面は、例えば目標燃費Ftの大きさを棒状に表示し、目標燃費Ftの上限値と下限値と、棒状に表示した目標燃費Ftに重ねて表示してもよい。さらに、車両制御装置20は、目標燃費Ftをユーザが上下させるためのボタン30を表示してもよい。いずれにせよ、目標燃費設定画面は、ユーザが目標燃費Ftを設定できる画面であればよい。車両制御装置20は、ユーザが目標燃費Ftを設定した場合、目標燃費Ftを記憶する。車両制御装置20は、目標燃費Ftを記憶すると、ステップS2に処理を進める。
【0028】
ステップS2では車両制御装置20は、目標燃費Ftが基準範囲内か否か判断する。本実施形態では目標燃費Ftが基準範囲内か否かを、ユーザが設定した目標燃費Ftが上限値から下限値の間にあるか否かによって判断する。上限値は、例えば電動車両Cが達成し得る最良燃費値である。下限値は、例えば電動車両Cの最も悪い燃費値である。車両制御装置20は、目標燃費Ftが基準範囲内であると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。
【0029】
ステップS3では車両制御装置20は、燃費の計測を開始する。車両制御装置20は、内燃機関1の実際の燃料消費量である実燃費を、燃料タンク26の残量などを検知することによって取得する。車両制御装置20は、燃費の計測を開始するとステップS4に処理を進める。
【0030】
ステップS4では車両制御装置20は、1から0の間の値である変化率係数Kの初期値K0を決定する。車両制御装置20は、変化率係数Kの初期値K0を決定するとステップS5に処理を進める。
【0031】
ステップS5では車両制御装置20は、回転変化率αを決定する。本実施形態では回転変化率αの初期値α0は、第1回転変化率d1に変化率係数Kの初期値K0を掛け合わせ、第2回転変化率d2に1から初期値K0を引いた値を掛け合わせ、これら積の和によって求める。すなわち、車両制御装置20は、回転変化率αの初期値α0を下記式(1)によって演算する。
α0=d1×K0+d2×(1-K0)・・・式(1)
車両制御装置20は、回転変化率αの初期値α0を決定するとステップS6に処理を進める。
【0032】
ステップS6では車両制御装置20は、電動車両Cが所定期間走行したか否か判断する。本実施形態では、車両制御装置20は、電動車両Cが所定距離ODt走行したか否か判断する。具体的には、車両制御装置20は、燃費計測の開始(ステップS3)からの電動車両Cの走行距離ODをカウントし、走行距離ODが所定距離ODtに到達する毎にステップS7以降の処理へ進めるためのフラグを立てる。所定距離ODtは、目標燃費Ftの値と実燃費の値が比較可能な距離であればどのような値であってもよい。また、車両制御装置20は、所定距離ODtに代えて、燃費計測の開始(ステップS3)からの時間をカウントし、所定時間T毎にステップS7以降の処理へ進めるためのフラグを立ててもよい。車両制御装置20は、所定期間走行したと判断すると(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0033】
ステップS7では車両制御装置20は、目標燃費Ftと実燃費とを取得し、目標燃費Ftと実燃費とを比較する。車両制御装置20は、目標燃費Ftと実燃費とを比較すると、ステップS8に処理を進める。
【0034】
ステップS8では車両制御装置20は、実燃費が目標燃費Ft以上か否か判断する。車両制御装置20は、実燃費が目標燃費Ft以上であると判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。
【0035】
ステップS9では車両制御装置20は、変化率係数Kの初期値K0から所定値Ktだけ減算する。所定値Ktは、例えば目標燃費Ftと実燃費の乖離が大きいほど、大きくなる値としてもよい。ただし、所定値Ktは、上限値を設けてもよい。所定値Ktの設定が特に大きくなる値とした場合、内燃機関の回転数の傾きが急激に変化することになり、内燃機関のNVHが急激に良くなる。これによって、ユーザに違和感を与えてしまうことがある。所定値Ktに上限値を設けることによって、ユーザに違和感をあたえることが防止できる。実燃費が目標燃費Ft以上である場合、車両制御装置20は、燃費向上よりもNVHを優先する方が好ましい。そこで、車両制御装置20は、変化率係数Kの値を下げ、燃費を優先した第1制御の重みづけを減少させ、NVHを優先した第2制御の重みづけを増加させる。車両制御装置20は、変化率係数Kの初期値K0から所定値Ktだけ減算すると、ステップS10に処理を進める。
【0036】
ステップS10では車両制御装置20は、初期値K0から所定値Ktだけ減算した変化率係数K1によって、回転変化率αを演算し、回転変化率α1を決定する。本実施形態では車両制御装置20は、回転変化率α1を下記式(2)によって演算する。
α1=d1×K1+d2×(1-K1)・・・式(2)
このように車両制御装置20は、回転変化率αを初期値α0から回転変化率α1に変更し、ステップS11に処理を進める。
【0037】
ステップS11では車両制御装置20は、目標燃費Ftの達成度合いをユーザに報知する。また、車両制御装置20は、回転変化率αを変化させた場合、その旨をユーザに報知する。
図7に示すように、目標燃費Ftの達成度合いは、例えば、実燃費を棒グラフによって示し、目標燃費Ftを実線によって示し、棒グラフと目標燃費Ftの実線との距離によって目標燃費Ftの達成度合を示してもよい。
図7では、実燃費が目標燃費Ft以上となっており、棒グラフが目標燃費Ftの実線を超えた状態を示している。本実施形態では、車両制御装置20がこれら情報を生成し、ディスプレイ14に表示させる。また、回転変化率αが変化した旨は、文字情報または記号、もしくはこれらの組み合わせによって表示してもよい。車両制御装置20は、ステップS11の処理を実行すると、ステップS12に処理を進める。
【0038】
ステップS12では車両制御装置20は、燃費モードが終了したか否か判断する。本実施形態では、ユーザが燃費モードの選択を解除した場合、車両制御装置20は燃費モードが終了したと判断する。車両制御装置20は、燃費モードが終了したと判断した場合(ステップS12 YES)、処理を終了する。
【0039】
ステップS2において、車両制御装置20が、目標燃費Ftが基準範囲外であると判断した場合(ステップS2 NO)、車両制御装置20は、ステップS13に処理を進める。ステップS13では車両制御装置20は、基準範囲内にある値からユーザが選択した燃費に最も近い値を目標燃費Ftに設定する。具体的には、目標燃費Ftの上限よりも高い燃費をユーザが選択した場合、車両制御装置20は、上限値の燃費を目標燃費として設定する。反対に目標燃費Ftの下限値よりも高い燃費をユーザが選択した場合、車両制御装置20は、下限値の燃費を目標燃費として設定する。車両制御装置20は、目標燃費Ftを基準範囲内に設定するとステップS3に処理を進める。
【0040】
ステップS6において、車両制御装置20が、電動車両Cが所定期間走行していないと判断した場合(ステップS6 NO)、車両制御装置20は、ステップS6の処理を繰り返す。すなわち、車両制御装置20は、電動車両Cが所定期間走行するまで、処理を待つ。
【0041】
ステップS8において、車両制御装置20が、実燃費が目標燃費Ft未満であると判断した場合(ステップS8 NO)、車両制御装置20は、ステップS14に処理を進める。ステップS14では車両制御装置20は、変化率係数Kの初期値K0に所定値Ktだけ加算する。この場合においても、所定値Ktに上限値を設けてもよい。所定値Ktの設定が特に大きくなる値とした場合、内燃機関の回転数の傾きが急激に変化することになり、内燃機関のNVHが急激に悪くなることがある。これによって、ユーザに違和感を与えてしまうことがある。実燃費が目標燃費Ft未満である場合、車両制御装置20は、NVH向上よりも燃費向上を優先する方が好ましい。そこで、車両制御装置20は、変化率係数Kの値を上げ、燃費を優先した第1制御の重みづけを増加させ、NVHを優先した第2制御の重みづけを減少させる。車両制御装置20は、変化率係数Kの初期値K0から所定値Ktだけ加算すると、ステップS10に処理を進める。
【0042】
ステップS10では車両制御装置20は、初期値K0から所定値Ktだけ加算した変化率係数K2によって、回転変化率αを演算し、回転変化率α2を決定する。本実施形態では車両制御装置20は、回転変化率α1を下記式(3)によって演算する。
α2=d1×K2+d2×(1-K2)・・・式(3)
このように車両制御装置20は、回転変化率αを初期値α0から回転変化率α2に変更し、ステップS11に処理を進める。
【0043】
ステップS12において、車両制御装置20が、燃費モードが終了していないと判断した場合(ステップS12 NO)、車両制御装置20は、ステップS6に処理を進め、ステップS6からステップS12、およびステップS14までの処理を繰り返す。このように、車両制御装置20は、変化率係数Kを更新しながら第1制御と第2制御との重みづけを変更する。
【0044】
次に、上記の制御を用いた一例について
図5のタイミングチャートを用いて説明する。
【0045】
時刻t0において車両制御装置20が燃費計測を開始(ステップS3参照)する。時刻t0から時刻t1に示すように、車両制御装置20は、変化率係数Kを初期値K0(本実施形態では0.5)に設定し、回転変化率αを初期値α0として内燃機関1の回転数を上昇させる(ステップS4およびステップS5参照)。回転変化率αが初期値α0の場合、第1制御と第2制御の重みづけが均等である。このため、第1回転変化率d1と第2回転変化率d2の中間の回転変化率αによって内燃機関1の回転数が上昇する。
【0046】
時刻t0から時刻t1までに電動車両Cが所定期間走行(本実施形態では所定距離ODt走行)すると、車両制御装置20は時刻t1においてフラグを立てる(ステップS6 YES参照)。本実施形態では、時刻t1において、車両制御装置20は、実燃費が目標燃費Ft以上であると判断している(ステップS8 YES参照)。この場合、車両制御装置20は、変化率係数Kを初期値K0から所定値Kt(本実施形態では0.3)だけ減算した変化率係数K1によって回転変化率α1を演算する(ステップS9、ステップS10参照)。車両制御装置20は、回転変化率α1によって内燃機関1の回転数を上昇させる。回転変化率α1は、初期値α0に比べると、第2制御の重みづけが大きく、第1制御の重みづけが小さい。このため、第2回転変化率d2の影響が大きくなるため、回転変化率αの初期値α0による内燃機関1の回転数の上昇よりも緩やかに内燃機関1の回転数が上昇する。これによって、回転変化率αが初期値α0のときよりも、回転変化率α1の時の方が、NVHがよくなる。
【0047】
時刻t1から時刻t2までに電動車両Cが所定期間走行すると、車両制御装置20は時刻t2においてフラグを立てる(ステップS6 YES参照)。本実施形態では、時刻t2において、車両制御装置20は、実燃費が目標燃費Ft未満であると判断している(ステップS8 NO参照)。この場合、車両制御装置20は、変化率係数Kを初期値K0から所定値Kt(本実施形態では0.3)だけ加算した変化率係数K2によって回転変化率α2を演算する(ステップS14、ステップS10参照)。車両制御装置20は、回転変化率α2によって内燃機関1の回転数を上昇させる。回転変化率α2は、初期値α0に比べると、第1制御の重みづけが大きく、第2制御の重みづけが小さい。このため、第1回転変化率d1の影響が大きくなるため、回転変化率αの初期値α0による内燃機関1の回転数の上昇よりも高く内燃機関1の回転数が上昇する。これによって、回転変化率αが初期値α0のときよりも、回転変化率α2の時の方が、燃費がよくなる。
【0048】
時刻t2から時刻t3までに電動車両Cが所定期間走行すると、車両制御装置20は時刻t3においてフラグを立てる(ステップS6 YES参照)。本実施形態では、時刻t3において、車両制御装置20は、実燃費が目標燃費Ft未満であるが、その乖離が時刻t2から時刻t3までの間よりも小さくなっていると判断している。この場合、車両制御装置20は、変化率係数Kを初期値K0から所定値Kt(本実施形態では0.2)だけ加算した変化率係数K3によって回転変化率α3を演算する。車両制御装置20は、回転変化率α3によって内燃機関1の回転数を上昇させる。回転変化率α3は、初期値α0に比べると第1制御の重みづけが大きく、第2制御の重みづけが小さい。一方、回転変化率α3は、回転変化率α2に比べると第1制御の重みづけが小さく、第2制御の重みづけが大きい。このため、回転変化率α2のときよりも、内燃機関1の回転数の上昇が緩やかになる。これによって、回転変化率α2のときよりも、回転変化率α3の時の方が、NVHがよくなる。
【0049】
以上説明した通り、本開示によれば、内燃機関のNVHと燃費とのバランスを調整可能な電動車両の制御システム3を提供できる。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0051】
(a)上記実施形態では、変化率係数Kの初期値K0を0.5とする例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。初期値K0は、例えば、燃費を優先する場合は0.5よりも高い値としてもよい。一方、例えば、NVHを優先する場合は0.5よりも低い値としてもよい。
【0052】
(b)上記実施形態では、電動車両Cは、シリーズ運転を有するプラグインハイブリッド車を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。電動車両Cは、例えばハイブリッド車両であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:内燃機関,2:モータ,3:制御システム,4:発電機
C:電動車両,C1:車輪
FEb:最良燃費ライン(最良燃費の一例)
Ft:目標燃費,K:変化率係数
ODt:所定距離(所定期間の一例)
T:所定時間(所定期間の一例))
d1:第1回転変化率(第1上昇率の一例)
d2:第2回転変化率(第2上昇率の一例)