(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025111335
(43)【公開日】2025-07-30
(54)【発明の名称】制御装置及び電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20250723BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005710
(22)【出願日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】内藤 圭太
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 進士
(72)【発明者】
【氏名】北野 高通
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(57)【要約】
【課題】電動アシスト自転車に異音が発生することを抑制することができる制御装置及び異音の発生を抑制し得る電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】制御装置50は、車輪の回転数Nw(rpm)とモータ40の回転数Nm(rpm)との比Rが所定の範囲Ra内にあるときにおける、ペダル4の回転をアシストする大きさを、当該車輪の回転数Nw(rpm)と当該モータ40の回転数Nm(rpm)との比Rが所定の範囲Ra外にあるときにおける、当該ペダル4の回転をアシストする大きさよりも大きくする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転数とモータの回転数との比が所定の範囲内にあるときにおける、ペダルの回転をアシストする大きさを、当該車輪の回転数と当該モータの回転数との比が所定の範囲外にあるときにおける、当該ペダルの回転をアシストする大きさよりも大きくする、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置と、
前記モータと減速機とを有する回転装置と、
前記ペダルと、
前記車輪と、
を備え、
前記回転装置により前記ペダルがアシストされているとき、
Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、及びgrMDUを前記回転装置の減速比として、以下の式(1)の大きさが所定の範囲内にある、電動アシスト自転車。
Nm/(Nw・grMDU)・・・(1)
【請求項3】
前記所定の範囲外にある前記モータのトルクの大きさは、前記所定の範囲内にある前記モータのトルクの大きさに対して小さい、請求項2に記載の電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
ペダルに付与される踏力に基づいてアシストの必要の有無を判断し、アシストが必要な場合にはモータを回転させて電動アシスト自転車にアシストを提供するように構成された制御装置、及びかかる制御装置を備える電動アシスト自転車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動アシスト自転車においては、典型的に、ペダルの回転(すなわち、ペダルに連結するクランクシャフトの回転)が所定の条件下にある場合に、モータを備えるモータドライブユニット(MDU)の駆動力がクラッチを介してクランクシャフトに伝わり、制御装置の制御に基づいてペダルの回転がアシストされる。
【0005】
クラッチが、クランクシャフトにモータドライブユニットの駆動力を伝えない状態にある場合に、例えば電動アシスト自転車を加速させる方向にペダルを踏み込むと、クラッチがクランクシャフトに駆動力を伝える状態に移行する。この際、例えば、停止した電動アシスト自転車を動かすためにペダルを強く踏み込む等の理由により、モータが急激に駆動すると、クラッチ等の金属部品が急激に接触し、この急激な接触に起因する金属音等の異音が発生することがある。
【0006】
そこで、本発明は、電動アシスト自転車に異音が発生することを抑制することができる制御装置及び異音の発生を抑制し得る電動アシスト自転車を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御装置は、車輪の回転数とモータの回転数との比が所定の範囲内にあるときにおける、ペダルの回転をアシストする大きさを、当該車輪の回転数と当該モータの回転数との比が所定の範囲外にあるときにおける、当該ペダルの回転をアシストする大きさよりも大きくする。
【0008】
また、本発明に係る電動アシスト自転車は、上述の制御装置と、前記モータと減速機とを有する回転装置と、前記ペダルと、前記車輪と、を備え、前記回転装置により前記ペダルがアシストされているとき、Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、及びgrMDUを前記回転装置の減速比として、以下の式(1)の大きさが所定の範囲内にある。
Nm/(Nw・grMDU)・・・(1)
【0009】
また、上記電動アシスト自転車において、前記所定の範囲外にある前記モータのトルクの大きさは、前記所定の範囲内にある前記モータのトルクの大きさに対して小さくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における電動アシスト自転車の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す電動アシスト自転車が備える回転機器の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図1に示す電動アシスト自転車が備える制御装置、センサ、及びモータの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す電動アシスト自転車が備える制御装置による制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る制御装置及び電動アシスト自転車を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張又は縮小して示されていたり、ハッチングが省略されて示されていたりする場合がある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車を示す側面図である。
図1に示すように、電動アシスト自転車1は、フレームFと、ハンドルHと、サドルSと、伝達体Cと、チェーンリングCRと、スプロケットSPと、バッテリBと、回転機器としてのモータドライブユニット(MDU)100(以下、「MDU100」と記載する。)と、車輪(前輪2及び後輪3)と、ペダル4とを含んでいる。スプロケットSPは、後輪3に取り付けられている。伝達体Cは、チェーンリングCRとスプロケットSPとに架け渡されている。MDU100は、モータ40と、電動アシスト自転車1にアシストを提供するためにモータ40の駆動を制御する制御装置50とを含んでいる。運転者が電動アシスト自転車1のサドルSに座り、ペダル4を漕いでペダル4を回転させると、所定の条件下、チェーンリングCR、スプロケットSP、及び伝達体Cを介して車輪(典型的には後輪3)に駆動力が伝達され、前方への走行が可能となる。この際、所定の条件下、MDU100のモータ40が制御装置50の制御に基づいて回転し、このモータ40の回転によるアシストによって、運転者がペダル4を漕ぐ力が低減(アシスト)される。伝達体Cは、チェーンであってもよく、ベルトであってもよい。
【0013】
前輪2又は後輪3の例えば回転軸近傍には、車輪(前輪2及び後輪3)の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出するための第1センサ5が配置されている。本明細書において、「車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を検出する」とは、第1センサ5そのものが車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出することであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を第1センサ5が制御装置50に出力し、制御装置50が車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出することであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を第1センサ5がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置が車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。
図1には、後輪3の回転軸近傍に第1センサ5を配置した例が示されている。第1センサ5としては、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を検出可能な、又は車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第1センサ5は、例えば、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を検出可能な光学センサであってもよい。また、第1センサ5を配
置する位置は、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を検出可能な位置であればよく、例えば、前輪2又は後輪3の回転軸から離れた位置に配置されていてもよい。
【0014】
同様に、前輪2又は後輪3の例えば回転軸近傍には、車輪の所定の回転角An(deg)を検出するための第4センサ8が配置されている。本明細書において、「車輪の所定の回転角An(deg)を検出する」とは、第4センサ8そのものが車輪の所定の回転角An(deg)を算出することであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を第4センサ8が制御装置50に出力し、制御装置50が所定の回転角An(deg)を算出することであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を第1センサ5がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置が車輪の所定の回転角An(deg)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。
図1には、後輪3の回転軸近傍に第4センサ8を配置した例が示されている。第4センサ8としては、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な、又は車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第4センサ8は、例えば、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な光学センサであってもよい。また、第4センサ8を配置する位置は、車輪の所定の回転角An(deg)又は車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な位置であればよく、例えば、前輪2又は後輪3の回転軸から離れた位置に配置されていてもよい。
【0015】
本実施形態において、第4センサ8は、車輪(例えば後輪3)が所定の回転角An(deg)回転する毎に制御装置50に信号Saを出力する。すなわち、第4センサ8は、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号Saを制御装置50に出力する。所定の回転角An(deg)は、特に限定されるものではないが、例えば、30°であってもよく、120°であってもよく、90°であってもよく、60°であってもよく、45°であってもよく、15°であってもよく、10°であってもよく、1°から360°の範囲内から選ばれた所定の角度であれば、構わない。
【0016】
なお、第4センサ8と第1センサ5とを共通のセンサにしても構わない。
【0017】
MDU100及びバッテリBは、典型的には、ペダル4に接続されたクランクシャフト23の周辺に配置されている。
図2は、MDU100の構成を模式的に示す図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、MDU100は、回転装置70と、制御装置50と、ハウジング60とを含んでいる。ハウジング60は、電動アシスト自転車1の例えばフレームFに固定されており、回転装置70や制御装置50等を内側に収容している。回転装置70は、モータ40と、減速機10と、トルクセンサとしての第3センサ7とを有している。なお、
図1では、回転装置70及び制御装置50は、ハウジング60内に収容されて視認できないため、破線で示されている。なお、制御装置50は、一部又は全部がハウジング60の外側に配置されていてもよい。バッテリBは、モータ40及び制御装置50に電力を供給し、この電力によってモータ40及び制御装置50が動作する。
【0019】
回転装置70のモータ40は、制御装置50の制御により駆動して、減速機10を介してペダル4の回転をアシストする。なお、本明細書において、「ペダル4の回転」とは、クランクシャフト23を中心としたペダル4の回転をいう。また、本明細書において、「アシスト」とは、人力でペダル4を回転させる(ペダル4を漕ぐ)ための力(踏力)を軽減することを含む。モータ40としては特に限定されないが、例えば、3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを有するブラシレスDCモータであってもよい。
【0020】
図2に示すように、モータ40には、モータ40のロータの回転数Nm(rpm)(以下、単に「モータ40の回転数Nm(rpm)」と記載する。)を検出するための第2センサ6が配置されている。本明細書において、「モータ40の回転数Nm(rpm)を検出する」とは、第2センサ6そのものがモータ40の回転数Nm(rpm)を算出することであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を第2センサ6が制御装置50に出力し、制御装置50がモータ40の回転数Nm(rpm)を算出することであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を第2センサ6がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置がモータ40の回転数Nm(rpm)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。
図2には、第2センサ6がモータ40に搭載されている例が示されているが、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な位置であれば、第2センサ6を配置する位置は特に限定されるものではない。第2センサ6としては、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な、又はモータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第2センサ6は、例えば、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な光学センサなどであってもよい。
【0021】
図2に示すように、クランクシャフト23は、MDU100のハウジング60の内部を貫通している。クランクシャフト23の延在方向(軸方向又は長手方向)において、クランクシャフト23は、一端部23aと他端部23bとを有している。一端部23a及び他端部23bはハウジング60の外側にあり、一端部23a及び他端部23bのそれぞれにペダル4が固定されている。ペダル4が漕がれて回転することによって、クランクシャフト23が回転する。なお、
図1は、クランクシャフト23の延在方向(軸方向又は長手方向)に視線を向けて電動アシスト自転車1を見た図である。上述の第3センサ7は、ハウジング60の内側に収容されており、例えば、クランクシャフト23を囲むように取り付けられてもよい。第3センサ7は、例えば、ペダル4に加えられた踏力に起因して変形したクランクシャフト23のひずみを検知することよって、ペダル4にかかる踏力Tf(N)を検出してもよいし、その他のセンサ(例えば、磁歪式のセンサ)によって上記踏力Tf(N)を検知してもよい。
【0022】
本明細書において、「ペダル4にかかる踏力Tf(N)を検出する」とは、第3センサ7そのものが踏力Tf(N)を算出することであってもよく、踏力Tf(N)を算出するために必要な信号を第3センサ7が制御装置50に出力し、制御装置50が踏力Tf(N)を算出することであってもよく、踏力Tf(N)を計算するために必要な信号を第3センサ7がその他の演算装置(図示せず)に出力し、信号を入力された演算装置が踏力Tf(N)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。また、第3センサ7は、ペダル4に配置されていてもよく、ペダル4とクランクシャフト23とを接続するクランクアームに配置されていてもよく、MDU100のハウジング60に配置されていてもよく、その他の任意の箇所に配置されていてもよい。電動アシスト自転車1では、第3センサ7が検出した踏力Tf(N)等に応じて、モータ40の出力が調節される。
【0023】
図2に示すように、回転装置70の減速機10は、出力ギア16と、クラッチ33と、他の部材群11とを含んでいる。本実施形態において、クラッチ33は、ワンウェイクラッチである。他の部材群11は、ある減速比で、モータ40の出力軸40Sの回転力を出力ギア16に伝達するように構成されており、例えば、複数のギア、複数のシャフト、及び複数のクラッチ(例えば、ワンウェイクラッチ)を含んでもよい。したがって、減速機10は、出力ギア16と他の部材群11とから生じる所定の減速比gr
MDUを有しており、この減速比gr
MDUに基づいてモータ40の回転を減速することができる。
【0024】
本実施形態において、出力ギア16は、筒状の形状を有しており、略円環状の歯車16aと、歯車16aと同軸に設けられた略円筒状の突出部16bとを有する。出力ギア16の内側の空間をクランクシャフト23が貫通している。
【0025】
出力ギア16の歯車16aは、クラッチ33を介してクランクシャフト23に固定されている。より具体的には、歯車16aの内周面(クランクシャフト23に近い側の周面)は、クラッチ33の外周面(クランクシャフト23から遠い側の周面)に固定されている。一方、歯車16aの外周面は、減速機10の他の部材群11に含まれるギアに噛合している。歯車16aはハウジング60の内側に収容されている。
【0026】
出力ギア16の突出部16bは、歯車16aに接続されており、クランクシャフト23の延在方向(軸方向又は長手方向)において、歯車16aから他端部23bの側に突出している。なお、必要に応じ、突出部16bは、周方向に並んだ複数の歯を有する領域(例:歯車)や、螺旋状に形成された溝を有する領域(例:ウォーム)を有していてもよい。出力ギア16の突出部16bの一部は、ハウジング60の外側にある。突出部16bのうちハウジング60の外側にある部分の外周面には、チェーンリングCRが固定されている。
【0027】
クラッチ33は、クランクシャフト23の一方向(正方向)の回転を伝達し、他方向(逆方向)の回転を伝達しないように構成されている。例えば、ペダル4を逆方向(電動アシスト自転車1を前進させるためにペダル4を回転させる方向とは反対側の方向)に回転させる場合、これに伴い、クランクシャフト23は、出力ギア16に対して相対的に逆方向に回転する。この場合、クラッチ33の金属部材が離れた状態になり、クランクシャフト23の回転は出力ギア16に伝達されない。すなわち、この場合、ペダル4の回転(クランクシャフト23の回転)が、出力ギア16に固定されたチェーンリングCRに伝達されないため、ペダル4の漕ぎに応じて後輪3が回転することが防止されている。一方、ペダル4を正方向(電動アシスト自転車1を前進させるためにペダル4を回転させる方向)に回転させ、ペダル4(クランクシャフト23)の正方向への回転数が、ある回転数に達すると、クラッチ33の金属部材同士が相互に接触して、クランクシャフト23、クラッチ33、及び出力ギア16が連結し、クランクシャフト23と出力ギア16とが一体的に回転する。こうして、クランクシャフト23の回転が出力ギア16に伝達される。そして、これにより、出力ギア16に固定されたチェーンリングCRが回転し、チェーンリングCRとスプロケットSPとに架け渡された伝達体Cを介して後輪3に駆動力が伝達される。換言すると、ペダル4(クランクシャフト23)の正方向への回転数が、ある回転数に達すると、クラッチ33と他の部材群11のクラッチとによって、モータ40の回転力が後輪3に伝わることが可能となり、ペダル4を踏むのに必要な力が所定の条件下で軽減(アシスト)される。一方、ペダル4(クランクシャフト23)が相対的に逆方向に回転する場合には、クラッチ33と他の部材群11のクラッチとによって、モータ40のアシストが後輪3に伝わることが防止される。なお、「相対的な逆方向への回転」を以後、単に「逆方向への回転」と記載することがある。
【0028】
また、例えば、スプロケットSPの変速ギア(図示せず)が重いギアから軽いギアへシフトされた場合、直前までのモータ40のアシストされた回転力によって出力ギア16がクランクシャフト23に対して一瞬進み、クランクシャフト23が出力ギア16に対して一瞬逆方向に回転することがある。したがって、この場合、クラッチ33の金属部材が離れた状態になり、クランクシャフト23の回転は出力ギア16に伝達されない。その後、クランクシャフト23が正方向に回転する。この場合、クラッチ33及び他の部材群11のクラッチのそれぞれの金属部材同士が相互に接触してクランクシャフト23、クラッチ33、及び出力ギア16が連結し、クランクシャフト23と出力ギア16とが一体的に回転し、クランクシャフト23の回転が出力ギア16に伝達される。換言すると、モータ4
0の回転力が出力ギア16を介して後輪3に伝わることが可能となり、ペダル4を踏むのに必要な力が所定の条件下で軽減(アシスト)される。
【0029】
また、
図1に示すように、後輪3の車軸には、クラッチRCが設けられている。このクラッチRCは、ラチェット等のワンウェイクラッチであってもよい。クラッチRCは、後輪3の回転方向に対して正方向に回転するスプロケットSPの回転を後輪3に伝達し、後輪3の回転方向に対して逆方向に回転するスプロケットSPの回転を後輪3に伝達しない構成を備えている。したがって、後輪3の回転方向に対して正方向に回転するスプロケットSPの回転が後輪3に伝達されるタイミングで、後輪3におけるクラッチRCを構成する金属部材同士が相互に接触する結果、ペダル4の回転力及びモータ40の回転力が、チェーンリングCR、スプロケットSP、伝達体C、及び後輪3のクラッチRCを介して、後輪3に伝達される。
【0030】
また、例えば、電動アシスト自転車1が下り坂を走行してから平地や上り坂を走行する場合を考える。この場合、下り坂では後輪3の回転数が、ペダル4の回転から伝わるスプロケットSPの回転数よりも大きくなる場合があるが、そのような場合でも、平地や上り坂になると、やがて、後輪3の回転数はペダル4の回転から伝わるスプロケットSPの回転数と同じになる(同期する)。すなわち、後輪3の回転数がペダル4から伝わるスプロケットSPの回転数よりも大きくなった後、後輪3の回転数がペダル4から伝わるスプロケットSPの回転数と同じになる(同期する)。特に、電動アシスト自転車1が下り坂を走行している場合には、スプロケットSPが後輪3に対して逆方向に回転することになるため、クラッチRCの金属部材が離れた状態になり、ペダル4へ加える踏力は後輪3に伝達されなくなるためモータ40の駆動(アシスト)は解除されることが望ましい。一方、電動アシスト自転車1が下り坂から平地又は上り坂へと走行して、後輪3の回転数が、スプロケットSPの回転数まで下がった場合には、クラッチRCを構成する金属部材同士が相互に接触して、後輪3とスプロケットSPが一体的に回転する。換言すると、駆動されたモータ40の回転力が後輪3に伝わることが可能となり、後輪3を回転させるのに必要なペダル4へ加える踏力が所定の条件下で軽減(アシスト)される。
【0031】
次に、制御装置50について詳細に説明する。
図3は、制御装置50、第1センサ5、第2センサ6、第3センサ7、第4センサ8、及びモータ40の構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御装置50は、制御回路50aと駆動回路50bとを含んでいる。なお、
図3に示される制御装置50の機能や構成は、制御装置50の全体の機能や構成の一部であってもよい。すなわち、制御装置50は、
図3に示される機能や構成以外の機能又は構成を含んでもよい。
【0032】
制御回路50aは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAMやROM等の各記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)によって実現されている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態において、制御回路50aは、機能ブロックとして、第1計算部51と、第2計算部52と、第3計算部53と、第4計算部54と、出力抑制部55と、判定部56と、モード決定部57と、記憶部(メモリ)58と、駆動信号生成部59とを含んでいる。記憶部58は、上述のRAM、ROM等の各記憶装置の全部又は一部であってもよい。第1計算部51、第2計算部52、第3計算部53、第4計算部54、出力抑制部55と、判定部56、モード決定部57、及び駆動信号生成部59は、例えば、制御回路50aとしてのプログラム処理装置において、プロセッサが、記憶部58を含む上述の各記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0034】
本実施形態において、記憶部58には、上述のプログラムに加えて、減速機10の減速比grMDUのデータ(以下、「減速比データ」と記載することがある。)、及び後述する比Rの範囲を示すデータ(以下、「範囲データ」と記載することがある。)等が格納されている。なお、制御回路50aは、その他の機能ブロックを有していても構わない。
【0035】
制御回路50aには、前述した車輪の回転数Nw及び電動アシスト自転車1の車速Vbを検出する第1センサ5、前述したモータ40のロータの回転数Nwを検出する第2センサ6、前述したトルクセンサとしての第3センサ7、及び前述した車輪の所定の回転角Anを検出する第4センサ8から出力された信号が入力される。第1計算部51は、第1センサ5から入力された信号を基に、車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を算出する。第2計算部52は、第2センサ6から入力された信号を基に、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出する。
【0036】
ところで、モータ 40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサ(典型的には、ホールセンサ)は、ペダル(クランクシャフト)の回転数Npの回転数(rpm)を直接的に検出するセンサに比べて精度高く回転角を検出できる場合があるため、式(B)を用いてペダル4の回転数Np(rpm)を算出することによって、より精度高く(例えば、ソフトウェアに使用したい時間間隔で)ペダル4の回転数Np(rpm)のデータを取得し得る。モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサを用いた方が正確に回転数を取得できる第1の場合として、ペダルの回転数Np(rpm)を直接的に検出するセンサの場合、両ペダル4を繋ぐシャフト上のマグネットと磁気センサとの間の距離が、踏力によりシャフトがひずむ影響により微小に変化する場合が挙げられる。一方、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサは、モータ40のロータに対して常に同じ位置になるように固定されているため、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサによれば実質的に常に正確な磁気を取得できる。また、第2の場合として、検出対象である回転体の動力による影響が挙げられる。すなわち、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサでは、検出対象である回転体のモータ40の動力は電気であるのに対して、ペダルの回転数Np(rpm)を直接的に検出するセンサでは、検出対象である回転体の動力は人力である。例えば、検出周期を1msとした場合、人力より電気の方が、検出周期ごとの変動が小さくなり、ソフトウェア内でデータとして使用できるようになる。
【0037】
第3計算部53は、第3センサ7から入力された信号を基にペダル4にかかる踏力Tf(N)を算出し、さらに、第1計算部51で算出された車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を基に、所定のトルクをモータ40に発揮させる目標値であるトルク指令値Tm(Nm)を算出する。
【0038】
第4センサ8は、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号Saを第4計算部54に出力する。
【0039】
第4計算部54は、信号Saが第4計算部54に入力されると、第1計算部51により算出された車輪の回転数Nw(rpm)と、第2計算部52により算出されたモータ40の回転数Nm(rpm)と、記憶部58に格納された減速比データ(減速機10の減速比grMDUのデータ)とに基づいて、以下の式(1)によって得られる大きさ(なお、この大きさを、車輪の回転数とモータの回転数との比R又は単に比Rという場合がある。)を算出する。
R=Nm/(Nw・grMDU)・・・(1)
【0040】
判定部56は、記憶部58から上述の範囲データを読み出して、第4計算部54で算出された比Rが所定の範囲Ra内にあるか否かを判定する。なお、範囲データである比Rの
所定の範囲Raは、例えば減速機10の減速比grMDUが挙げられ、0.736≦R≦0.900であってもよく、0.225≦R≦0.275であってもよい。なお、所定の範囲Raは、電動アシスト自転車の性能(例えば、モータの出力、減速機の減速比、車輪の直径等)に基づいて個別具体的に設定されてもよく、特に限定はされない。そして、判定部56は、比Rが所定の範囲Ra内にあると判定する場合には、第1信号S1をモード決定部57に出力し、比Rが所定の範囲Ra外にあると判定する場合には、第2信号S2をモード決定部57に出力する。なお、「所定の範囲Ra内」の範囲として、範囲Raの上限値と下限値とが含まれると規定してもよいし、上限値または下限値が含まれていると規定してもよい。本明細書では、便宜上、「所定の範囲Ra内」に上限値と下限値とが含まれるものとする。
【0041】
なお、例えば車輪が30°回転する毎に信号Saが第4計算部54に入力された場合(すなわち、所定の回転角An(deg)が30°の場合)、判定部56は、第4計算部54で算出された比Rが所定の範囲Ra内にあるか否かを、車輪1回転あたり12回判定する。また、例えば車輪が60°回転する毎に信号Saが第4計算部54に入力される場合(すなわち、所定の回転角An(deg)が60°の場合)、判定部56は、第4計算部54で算出された比Rが所定の範囲Ra内にあるか否かを、車輪1回転あたり6回判定する。同様に、判定部56は、所定の回転角An(deg)が90°の場合は車輪1回転あたり4回判定し、所定の回転角An(deg)が45°の場合は車輪1回転あたり8回判定し、所定の回転角An(deg)が15°の場合は車輪1回転あたり24回判定し、所定の回転角An(deg)が10°の場合は車輪1回転あたり36回判定する。また、判定部56は、所定の回転角An(deg)が360°の場合は車輪1回転につき1回判定する。
【0042】
モード決定部57は、カウンタ57Cを含んでいる。このカウンタ57Cは、判定部56からカウンタ57Cに第1信号S1が連続してN回以上入力されたときに第3信号S3を出力抑制部55に出力するように構成されている。なお、Nは1以上の自然数である。すなわち、モード決定部57(カウンタ57C)は、第1信号S1が連続してN回入力されたときに出力抑制部55に第3信号S3を出力し、第1信号S1が連続して(N+1)回、(N+2)回、・・・、(N+n(nは1以上の自然数))回入力されたときも出力抑制部55に第3信号S3を出力する。一方、モード決定部57は、第1信号S1がモード決定部57に連続してN回以上入力しないとき、換言すると、第2信号S2がモード決定部57に入力されるとき、第4信号S4を出力抑制部55に出力する。なお、後に再び言及するが、モード決定部57は、第4信号S4を出力した際にカウンタ57Cの値をゼロにリセットしてもよく、nの値が所定の値に達したときにカウンタ57Cの値をNに戻してもよい。
【0043】
出力抑制部55は、モード決定部57から第3信号S3が入力されると、第3計算部53により算出されたトルク指令値Tm(Nm)を示す第5信号S5を駆動信号生成部59に出力する。トルク指令値Tm(Nm)に基づいてモータ40を駆動させる制御モードが通常出力モードである。一方、出力抑制部55は、モード決定部57から第4信号S4が入力されると、第3計算部53により算出されたトルク指令値Tm(Nm)を抑制したトルク指令値(以下、「抑制トルク指令値RTm(Nm)」と記載することがある。)を示す第6信号S6を駆動信号生成部59に出力する。抑制トルク指令値RTm(Nm)に基づいてモータ40を駆動させる制御モードが出力抑制モードである。
【0044】
ここで、出力抑制モードのための抑制トルク指令値RTm(Nm)は、通常出力モードのためのトルク指令値Tm(Nm)よりも小さく、例えば、通常出力モードのうち最も小さなモータ40のトルク(Nm)に対して1よりも小さな数M(0<M<1)を乗じたトルクであってもよい。つまり、電動アシスト自転車1において、比Rが所定の範囲Ra外
にある場合におけるモータ40の抑制トルク指令値RTm(Nm)は、第1信号S1が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にある場合におけるモータ40のトルク指令値Tm(Nm)に対して小さい。
【0045】
駆動信号生成部59は、モータ40を駆動させる駆動信号Sdを生成して、駆動回路50bに出力する。具体的には、駆動信号生成部59は、第5信号S5が入力されると第5信号S5が示すトルク指令値Tm(Nm)のトルクをモータ40に発揮させるための駆動信号Sdを、第6信号S6が入力されると第6信号S6が示す抑制トルク指令値RTm(Nm)のトルクをモータ40に発揮させるための駆動信号Sdを、駆動回路50bに出力する。駆動信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0046】
駆動回路50bは、駆動信号Sdに基づき、例えばモータ40が3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを有するブラシレスDCモータである場合には、モータ40の3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを励磁することにより、モータ40を駆動する。駆動回路50bは、例えば、各コイルを駆動するインバータ回路、駆動信号Sdに応じてインバータ回路を駆動するプリドライブ回路、及び各コイルに流れる電流を検出する電流検出回路等を有していてもよい。
【0047】
なお、上述のような制御装置50は、制御回路50aの一部又は全部と、駆動回路50bの一部又は全部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、制御回路50aと駆動回路50bがそれぞれ個別の集積回路装置としてそれぞれパッケージ化された構成であってもよい。
【0048】
次に、制御装置50による制御におけるステップの一例について説明する。
図4は、制御装置50による制御におけるステップの一例を示すフローチャートである。なお、制御装置50による制御におけるステップは、
図4に示される制御におけるステップに限られない。
図4に示すように、本実施形態に係る制御におけるステップは、ステップSt1~ステップSt8を含んでいる。ここで、以下、
図4に示す制御におけるステップのうち、ステップSt2~ステップSt8を「モード決定フローMF」と記載することがある。
【0049】
本実施形態では、例えば、モータ40の駆動が開始されると、制御を開始させるステップが開始(START)されてもよい。具体的には、駆動信号生成部59がモータ40を駆動させる駆動信号Sdを生成して、駆動回路50bに出力したタイミングで、制御を開始させるステップが開始されてもよい。
【0050】
(ステップSt1)
制御装置50は、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号Saが第4計算部54に入力された場合には、制御におけるステップをステップSt2に進め、モード決定フローMF(St2~St8)を開始する。一方、制御装置50は、信号Saが第4計算部54に入力されない場合には、制御を開始させるステップに戻ってステップSt1に進むサイクルを信号Saが判定部56に入力されるまで繰り返す。なお、信号Saは、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号である必要はなく、例えば、所定のタイマから一定期間ごとに送信される信号であってもよい。
【0051】
(ステップSt2)
信号Saが第4計算部54に入力されると、制御装置50は、第4計算部54において、上述の式(1)に基づいて比Rを算出する。具体的には、第4計算部54は、第1計算部51により算出された車輪の回転数Nw(rpm)と、第2計算部52により算出されたモータ40の回転数Nm(rpm)と、記憶部58に格納された減速比データ(減速機
10の減速比grMDU)とに基づいて、比Rを算出する。制御装置50は、第4計算部54が比Rを算出すると、制御におけるステップをステップSt3に進める。
【0052】
(ステップSt3)
制御装置50は、記憶部58に格納された範囲データを参照して、判定部56において、第4計算部54により算出された比Rが所定の範囲Ra内にあるかを判定する。制御装置50は、比Rが所定の範囲Ra外にあると判定した場合、制御におけるステップをステップSt4に進める。具体的に、判定部56が第2信号S2をモード決定部57に出力することによって、制御におけるステップがステップSt4に進む。一方、制御装置50は、比Rが所定の範囲Ra内にあると判定した場合、制御におけるステップをステップSt5に進める。
【0053】
(ステップSt4)
本ステップにおいて、制御装置50は、第4信号S4をモード決定部57から出力抑制部55に出力する。なお、制御装置50は、第4信号S4を出力した際に、モード決定部57のカウンタ57Cの値がゼロよりも大きい場合には、カウンタ57Cの値をゼロにリセットしてもよい。制御装置50は、第4信号S4が出力抑制部55に入力されると、第3計算部53が算出したトルク指令値Tm(Nm)を抑制した抑制トルク指令値RTm(Nm)を示す信号S6を駆動信号生成部59に入力する。制御装置50は、駆動信号生成部59において、抑制トルク指令値RTm(Nm)に基づく駆動信号Sdを生成して、この駆動信号Sdを駆動回路50bに出力する。そして、制御装置50は、駆動回路50bを介して、抑制トルク指令値RTm(Nm)の駆動信号Sdに基づいてモータ40の動作を制御する。こうして、制御装置50は、出力抑制モードをONにする。すなわち、本ステップを経ることにより、モータ40が通常出力モードよりも小さなトルクで回転し、その結果、モータ40によるアシストが通常出力モードに比べて低減される。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。
【0054】
(ステップSt5)
制御装置50は、判定部56において、第1信号S1をモード決定部57に出力する。この第1信号S1は、モード決定部57のカウンタ57Cに入力される。すなわち、本ステップにおいて、制御装置50は、判定部56において、カウンタ入力信号である第1信号S1をモード決定部57に出力する。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt6に進める。
【0055】
(ステップSt6、ステップSt7)
ステップSt6において、制御装置50は、モード決定部57のカウンタ57Cをプラス1するとともに、第1信号S1の入力が、N回以上の連続したカウンタ57Cへの入力であるかを判定する。なお、「連続したカウンタ57Cへの入力」とは、現在実行されているモード決定フローMFが(m+1)回目(mは自然数)のモード決定フローMFである場合に、m回目のモード決定フローMFにおけるステップSt6においても、第1信号S1がカウンタ57Cに入力していた場合をいう。以下、この点についてさらに説明する。
【0056】
制御装置50は、m回目のモード決定フローMFのステップSt6において、第1信号S1のカウンタ57Cへの入力がN回以上の連続したカウンタ57Cへの入力でない場合には、制御におけるステップをステップSt7に進める。制御装置50は、ステップSt7において、ステップSt4と同様に出力抑制モードをONにする。これにより、モータ40が通常出力モードよりも小さなトルクで回転し、その結果、モータ40によるアシストが通常出力モードに比べて低減される。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。制御装置50は、この戻されたステップSt1(すなわち、
(m+1)回目のステップSt1)において、判定部56に信号Saが入力した場合には、(m+1)回目のモード決定フローMFを実行する。逆に言えば、制御装置50は、信号Saが判定部56に入力しない場合には(m+1)回目のモード決定フローMFを実行せず、信号Saが判定部56に入力するまでステップSt1を繰り返す。したがって、本実施形態では、車輪がAn(deg)(例えば、30°)回転する毎にモード決定フローMFが実行される。
【0057】
制御装置50は、(m+1)回目のモード決定フローMFのステップSt3において比Rが所定の範囲Ra外の場合又は(m+1)回目のモード決定フローMFのステップSt6における第1信号S1(カウンター入力信号)の入力がN回以上連続した入力でない場合において、m回目のモード決定フローMFにおいて出力抑制モードである場合には、(m+1)回目のモード決定フローMFにおいても出力抑制モードを維持し、一方、m回目のモード決定フローMFにおいて通常出力モードである場合には、(m+1)回目のモード決定フローMFにおいて出力抑制モードに切り替える。ここで、m回目のモード決定フローMFにおいて通常出力モードであった場合に、(m+1)回目のモード決定フローMFによって出力抑制モードに切り替わり、次いで、(m+2)回目のモード決定フローMFにおいてステップSt6に至ったとしても、(m+2)回目のモード決定フローMFにおける第1信号S1(カウンター入力信号)のカウンタ57Cへの入力は、第1信号S1(カウンター入力信号)のカウンタ57Cへの連続した入力とはならない。このような場合、制御装置50は、(m+2)回目のモード決定フローMFにおけるステップSt6においてカウンタ57Cの値をゼロにリセットする。
【0058】
一方、m回目のモード決定フローMFでステップSt6に至りカウンタ57Cがプラス1されていて、かつ、m回目のモード決定フローMFにおいて第1信号S1がカウンタ57Cに連続してN回以上入力されていない場合に、(m+1)回目のモード決定フローMFでステップSt6に至った場合は、カウンタ57Cがさらにプラス1される(積算される)。ここで、例えばmが1である場合(すなわち、1回目のモード決定フローMFの場合)を考える。1回目(m回目)のモード決定フローMFでステップSt6に至ると、カウンタ57Cがプラス1されてカウンタ57Cの値が1となる。次いで、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおいてステップSt6に至った場合には、カウンタ57Cがプラス1(積算)されてカウンタ57Cの値が2となる。ここで、例えばNの値を4(回)とすると、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおけるカウンタ57Cの値は2であり、4より小さい。すなわち、この場合、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおいて第1信号S1がカウンタ57Cに連続して4回(N回)以上入力されていない。したがって、制御装置50は、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFのステップSt6及びステップSt7を経てステップSt1に戻し、3回目((m+2)回目)のモード決定フローMFを実行する。そして、3回目のモード決定フローMF及び4回目((m+3)回目)のモード決定フローMFのそれぞれにおいてステップSt6に至った場合には、4回目((m+3)回目)のモード決定フローMFにおいてカウンタ57Cの値が積算されて4になるため、4回(N回)以上の条件を満たす。したがって、この場合、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt8に進める。
【0059】
(ステップSt8)
本ステップにおいて、制御装置50は、第3信号S3をカウンタ57Cから出力抑制部55に出力する。そして、制御装置50は、トルク指令値Tm(Nm)を示す第5信号S5を出力抑制部55から駆動信号生成部59へと出力する。こうして、本ステップにおいて、通常出力モードがONになる。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。
【0060】
ところで、以後の制御におけるステップのサイクルにおいて比Rが連続して所定の範囲Ra内にある場合には、カウンタ57Cの値が順次積算され、カウンタ57Cの値が増大していく。そのため、これを防ぐためにカウンタ57Cの値に上限を定めておき、ある制御におけるステップのステップSt6においてカウンタ57Cの値が上限に達した場合に、カウンタ57Cの値をNに戻すようにしてもよい。
【0061】
このように、
図4に示される制御におけるステップでは、制御装置50は、第1信号S1が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にあるとき(通常出力モード)における、ペダル4の回転をアシストする大きさ(モータ40のトルク(トルク指令値Tm(Nm)))を、比Rが所定の範囲Ra外のとき(出力抑制モード)における、ペダル4の回転をアシストする大きさ(モータ40のトルク(抑制トルク指令値Rtm(Nm)))より大きくする。換言すると、
図4に示される制御におけるステップでは、制御装置50は、第1信号S1(カウンタ入力信号)が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にあるときを「比Rが所定の範囲Ra内にある」と判定して、通常出力モードを実行する。そして、電動アシスト自転車1は、比Rが所定の範囲Ra外にあるときのモータ40のトルクを、比Rが所定の範囲Ra内にあるときのモータ40のトルクに対して小さくするように構成されている。
【0062】
上述したように、クランクシャフト23が出力ギア16に対して逆方向に回転する状態から、クランクシャフト23が出力ギア16と同期して正方向に回転する状態に移行する際、クラッチ(例えば、クラッチ33、他の部材群11のクラッチ、及び後輪3の車軸に設けられたクラッチ)の金属部材同士が相互に接触して、クランクシャフト23、クラッチ33、出力ギア16、他の部材群11のクラッチ、及び後輪3の車軸に設けられたクラッチ等が連結し、モータ40の回転力が伝達可能となる。そのため、クランクシャフト23や後輪3が逆方向に回転する状態からクランクシャフト23が出力ギア16と同期して正方向に回転する状態に移行すると、モータ40の回転力によってMDU100に含まれる複数の金属部材(例えば、クラッチ33を始めとする各種クラッチに含まれる金属部材等)が急激に連結する結果、金属音が生じることがある。
【0063】
この点に関して発明者らが鋭意研究した結果、発明者らは、クランクシャフト23や後輪3が逆方向に回転する状態からクランクシャフト23が出力ギア16と同期して正方向に回転する状態に移行する際、上記式(1)から得られる比Rの経時的な推移が不安定になることを見出した。具体的に、発明者らは、クランクシャフト23や後輪3が逆方向に回転する状態からクランクシャフト23が出力ギア16と同期して正方向に回転する状態に移行する際の所定の時間範囲において、比Rが所定の範囲Raから逸脱する傾向があることを見出した。すなわち、比Rが所定の範囲Ra外にあるときは、クランクシャフト23や後輪3が逆方向に回転する状態からクランクシャフト23が出力ギア16と同期して正方向に回転する状態に移行するタイミングであり、上述の金属音が発生するタイミングといえる。
【0064】
上述のように、本実施形態に係る制御装置50は、比Rが所定の範囲Ra内のときにおける、ペダル4の回転をアシストする大きさを、比Rが所定の範囲Ra外のときにおける、ペダル4の回転をアシストする大きさより大きくする。また、本実施形態に係る電動アシスト自転車1では、所定の範囲Ra外にあるモータ40のトルクが、所定の範囲Ra内にあるモータ40のトルクに対して小さい。このような構成によれば、金属部材が連結する際においてモータ40の回転力が抑制されるため、金属部材同士が急激に連結することが抑制され、その結果、上述の金属音等の異音が電動アシスト自転車1に発生することが抑制される。
【0065】
また、上述のように、本実施形態に係る制御装置50は、第1信号S1(カウンタ入力
信号)が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にあるときを「比Rが所定の範囲Ra内にある」と判定して、通常出力モードを実行する。すなわち、本実施形態に係る制御装置50は、比Rが安定して所定の範囲Ra内に収まるようになったタイミング、つまり、金属音が生じ難いことがより正確に確定したタイミングで通常出力モードを実行する。したがって、本実施形態に係る制御装置50及び電動アシスト自転車1によれば、金属音等の異音が発生することをより抑制することができる。
【0066】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記実施形態では、トルク指令値(モータ40のトルク)に基づいてペダル4の回転をアシストする大きさを調整する例を説明したが、トルク指令値に代えて、モータの回転数を指令値としてペダル4の回転をアシストする大きさを調整するようにしても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、制御装置50が、第1信号S1が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にあるときを「比Rが所定の範囲Ra内にある」と判定して、通常出力モードを実行する例を説明した。しかし、制御装置50に第1信号S1が始めて入力したときの比Rが所定の範囲Ra内にあるときを「比Rが所定の範囲Ra内にある」と判定して、通常出力モードを実行するようにしても構わない。すなわち、この場合、例えばモード決定部57にカウンタ57Cを設ける必要はなく、また、ステップSt6を省略することができ、また、モード決定フローMFを繰り返す必要がない。
【0069】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の制御装置及び電動アシスト自転車を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1…電動アシスト自転車、2…前輪(車輪)、3…後輪(車輪)、4…ペダル、10…減速機、40…モータ、50…制御装置、70…回転装置、grMDU…減速比、Nm…モータの回転数、Nw…車輪の回転数、R…比(大きさ)、Ra…所定の範囲