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特開2025-111336電動アシスト自転車および電動アシスト自転車の変速比の判定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025111336
(43)【公開日】2025-07-30
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車および電動アシスト自転車の変速比の判定方法
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20250723BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20250723BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J45/413
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005711
(22)【出願日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】内藤 圭太
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 進士
(72)【発明者】
【氏名】北野 高通
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(57)【要約】
【課題】変速比の誤判定のリスクを低減するとともに、変速比を高精度に確定する電動アシスト自転車および電動アシスト自転車の変速比の判定方法の提供。
【解決手段】第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダル(4)のアシストが開始されるまでの時間は、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、第4の変速比に対応するペダル(4)のアシストが開始されるまでの時間と異なる、電動アシスト自転車(1)。
【選択図】図4(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、前記第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、前記第4の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間と異なる、電動アシスト自転車。
【請求項2】
制御装置を備え、
停止した前記制御装置の起動から、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、変速比の変更から、変更後の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間に対して大きい、
電動アシスト自転車。
【請求項3】
車輪と、
制御装置と、
減速機と、前記ペダルをアシストするモータと、を有する回転装置と、
前記車輪の回転数を検出するセンサと、
前記モータの回転数を検出するセンサと、
を備え、
を前記車輪の回転数[rpm]、Nを前記モータの回転数[rpm]、grMDUを前記回転装置の減速比として、式(1)を定義し、
/(grMDU・N) 式(1)
前記制御装置は、前記変速比に対応する所定の範囲内に、式(1)の大きさが含まれるかを判定する、
請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
車輪と、
減速機と、前記ペダルをアシストするモータと、を有する回転装置と、
前記車輪の回転数を検出するセンサと、
前記モータの回転数を検出するセンサと、
を備え、
を前記車輪の回転数[rpm]、Nを前記モータの回転数[rpm]、grMDUを前記回転装置の減速比として、式(1)を定義し、
/(grMDU・N) 式(1)
前記制御装置は、前記変速比に対応する所定の範囲内に、式(1)の大きさが含まれるかを判定する、
請求項2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
前記変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間は、車輪の1回転にかかる時間以内である、
請求項1から4のいずれかに記載の電動アシスト自転車。
【請求項6】
前記制御装置は、
第1センサからの車輪の回転数を示す信号および第2センサからのモータの回転数を示す信号に基づいて、式(1)に従って回転数の比を計算し、
すべての変速比のうちの1つまたは複数の変速比に関して、前記回転数の比が所定の回数以上閾値範囲内にある場合、前記1つまたは複数の変速比を仮判定し、
一旦仮判定された変速比に関して、前記回転数の比が閾値範囲内になくなった場合、前記変速比を除外し、
仮判定された1つの変速比に隣接する2つの変速比がともに除外された場合、仮判定さ
れた1つの変速比を変速比として判定する、
請求項3または4に記載の電動アシスト自転車。
【請求項7】
所定の変速比に変更されてから第1の期間の経過前に、前記所定の変速比の候補を判定する第1ステップと、
前記第1の期間の経過後で第2の期間の経過前に、前記所定の変速比の候補から前記所定の変速比を判定する第2ステップと、
を有する、電動アシスト自転車の変速比の判定方法。
【請求項8】
前記電動アシスト自転車は、
車輪と、
制御装置と、
減速機と、ペダルをアシストするモータと、を有する回転装置と、
前記車輪の回転数を検出するセンサと、
前記モータの回転数を検出するセンサと、
を備え、
を前記車輪の回転数[rpm]、Nを前記モータの回転数[rpm]、grMDUを前記回転装置の減速比として、式(1)を定義し、
/(grMDU・N) 式(1)
前記第1ステップにおいて、前記制御装置によって、複数の変速比に対応する数値範囲のうち、式(1)で算出された変速比を含む1つまたは複数の数値範囲が判定され、
前記1つまたは複数の数値範囲に対応する1つまたは複数の変速比が前記所定の変速比の候補である、
請求項7に記載の電動アシスト自転車の変速比の判定方法。
【請求項9】
前記第1の期間および前記第2の期間を含む期間は、車輪の1回転にかかる時間以内である、
請求項7または8に記載の電動アシスト自転車の変速比の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト自転車および電動アシスト自転車の変速比の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変速機とモータとを有しかつ変速機の変速比の変化に応じてモータの駆動回転数とペダルの駆動回転数との比が変化する電動アシスト自転車のアシスト比を適切に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-241045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動アシスト自転車の現在の変速比を判定するためには、モータの回転数および車輪の回転数を測定する必要がある。しかしながら、回転数センサの精度の問題から、「隣接する変速比のどちらが正しいか分からない」という状態が発生しうる。例えば、ギア3に設定されている場合でも、モータの回転数および車輪の回転数を測定した結果からは、ギア2とギア3のどちらに設定されているのかが分からない場合がある。この状態において、ギア2に設定されていると誤って判定すると、電動アシスト自転車が期待しない挙動をするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、「隣接する変速比のどちらが正しいか分からない」という状態の場合、隣接する変速比の両方を候補と仮判定することにより誤判定のリスクを低減すること、および、変速比を高精度に確定することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例である電動アシスト自転車では、第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、前記第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、前記第4の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間と異なる。
【0007】
本発明の一例である電動アシスト自転車は、制御装置を備え、
停止した前記制御装置の起動から、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、変速比の変更から、変更後の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間に対して大きい。
【0008】
本発明の一例である電動アシスト自転車の変速比の判定方法は、
所定の変速比に変更されてから第1の期間の経過前に、前記所定の変速比の候補を判定する第1ステップと、
前記第1の期間の経過後で第2の期間の経過前に、前記所定の変速比の候補から前記所定の変速比を判定する第2ステップと、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御装置(モータ制御駆動装置)を備える電動アシスト自転車の側面図である。
図2】電動アシスト自転車の一部を示す図である。
図3】制御装置、第1センサ、第2センサおよびモータの構成を模式的に示すブロック図である。
図4(a)】本発明における制御を説明するためのフローチャートである。
図4(b)】本発明における制御を説明するためのタイミング図である。
図5】本発明におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。
図6】本発明におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。
図7】変速比状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
図8(a)】電動アシスト自転車における、変速時の検出およびモータ制御を説明するためのシミュレーション図である。
図8(b)】図8(a)のうち、ギア9からギア8に変更され、図7に示す変速比状態判定処理を経てギア8に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
図8(c)】図8(a)のうち、ギア2からギア1に変更され、図7に示す変速比状態判定処理を経てギア1に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、制御装置(モータ制御駆動装置)を備える電動アシスト自転車の側面図である。
電動アシスト自転車1は、フレームF、ハンドルH、サドルS、伝達体C、電池B、回転装置(MDU:モータドライブユニット)100、第1車輪(前輪)2、第2車輪(後輪)3およびペダル4を備える。運転者が電動アシスト自転車1のサドルSに座り、ペダル4を足で漕いで回転させると、必要に応じて回転装置100によるアシストを受けながら、伝達体Cを介して車輪(典型的には後輪3)に駆動力が伝達され、前方への走行が可能となる。伝達体Cは、チェーンであってもよく、ベルトであってもよい。
【0011】
前輪2または後輪3の、例えば回転軸近傍には、車輪の回転数を検出する第1センサ5が配置されている。図1には、後輪3に第1センサ5を配置した例が示されているが、第1センサ5は、車輪の回転数または回転角を検出可能な位置に、例えば、前輪2または後輪3の回転軸から離れた位置に配置されていてもよい。第1センサ5としては、車輪の回転数を検出可能な公知のセンサを用いることができる。第1センサ5は、例えば、磁気センサ(ホールセンサ)である。
【0012】
回転装置100および電池Bは、典型的にはペダル4に接続されたクランクシャフト(図示せず)の周辺に配置されている。回転装置100は、モータMおよび減速機G(図2参照)を有する。電池Bは、モータMおよび制御装置50に電力を供給し、モータMおよび制御装置50が動作する。
【0013】
モータMは、制御装置50によって制御され、減速機Gを介してペダル4の回転をアシストする。なお、本明細書において、「ペダル4の回転」とは、ペダル4の、クランクシャフトの周りの回転を指す。また、本明細書において、「ペダル4の回転をアシストする」とは、ペダル4を回転させて自転車を前進させるために要求される力(踏力)を軽減することを含む。モータMは、例えば、3相(U相、V相およびW相)に対応するコイルを有するブラシレスDCモータであってもよい。
【0014】
第2センサ6は、モータMの回転数を検出するセンサ、例えば、ホールセンサであり、モータMの付近に配置されている。第2センサ6として、クランクシャフトの近傍に取り付けたケイデンスセンサを用いるよりも、ホールセンサを用いて、このホールセンサにより検出したモータMの回転数からチェーンリングの回転数を計算する方が、より正確にチェーンリングの回転数を取得でき、ソフトウェアに使用するのに所望の時間間隔でデータ
を取得できる点で好ましい。ホールセンサを用いた方が正確に回転数を取得できる第1の理由は、ホールセンサは、モータMのロータに対して常に同じ位置になるように固定されているため、常に正確な磁気を取得できるのに対して、ケイデンスセンサは、両ペダル4を繋ぐシャフト上のマグネットと基板上の磁気センサとの間の距離が、踏力によりシャフトがひずむ影響により微小に変化するためである。また、第2の理由として、検出対象である回転体の動力による影響も考えられる。すなわち、ホールセンサでは、検出対象である回転体のモータMの動力は電気であるのに対して、ケイデンスセンサでは、検出対象である回転体のペダル4の動力は人力である。例えば、検出周期を1msとした場合、人力より電気の方が、検出周期ごとの変動が小さくなり、ソフトウェア内でデータとして使用できるようになる。
【0015】
図2は、電動アシスト自転車の一部を示す図である。
一般的に自転車では、クランク(フロント)8のギア歯数に対して、多段式の(リア)ギア・スプロケット9の選択されたギア歯数の違いによって回転数に差が生じる。
例えば、本実施形態では、クランク8のギア歯数は、44であり、ギア・スプロケット9は、9段であり、そのギア歯数が11-13-15-17-20-23-26-30-36である。
リアのギアポジション例としては、1段目とはギア歯数36の位置であり、2段目とはギア歯数30の位置であり、3段目とはギア歯数26の位置である。ギア1が一番軽く、ギア9が一番重い。
表1に、本実施形態のギアの設定値を示す。表1を含め、以下に示す表は、制御回路50a(図3参照)の記憶装置に記憶されている。回転数の比Rの理論値は、リアのギア歯数/フロントのギア歯数により計算できる。表1では、小数第三位までしか記載していないが、実際の計算では、小数第四位以下も使用している。
本実施形態では、判定に用いる閾値の下限は、回転数の比の理論値の90%であり、閾値の上限は、回転数の比の理論値の110%であるが、閾値の上下限は任意に設定可能である。
【0016】
【表1】
【0017】
実際の回転数の比Rは、Nを後輪3の回転数[rpm]、NをモータMの回転数[rpm]、grMDUを回転装置100の減速比とすると、式(1)によって表される。
R=N/(grMDU・N) 式(1)
後述する変速比状態判定処理において、制御装置50は、各変速比に対応する所定の範囲(表1の閾値範囲)内に、回転数の比R、すなわち、式(1)の大きさが含まれるかを判定する。
【0018】
図3は、制御装置、第1センサ、第2センサおよびモータの構成を模式的に示すブロック図である。
制御装置50は、例えば、制御回路50aおよび駆動回路50bを有する。図3に示される制御装置50の構成要素は、全体の一部であり、制御装置50は、図3に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0019】
制御回路50aは、例えば、CPUなどのプロセッサと、RAM、ROMなどの各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路および入出力I/F回路などの周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)によって実現されている。
【0020】
制御回路50aは、例えば、機能ブロックとして、回転数計算部51、i比較部52、閾値比較部53、変速比設定部54、i設定部55、C設定部56、カウント閾値比較部57および駆動制御信号生成部58を有する。回転数計算部51、i比較部52、閾値比較部53、変速比設定部54、i設定部55、C設定部56、カウント閾値比較部57および駆動制御信号生成部58は、例えば、制御回路50aとしてのプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路などの周辺回路を制御することによって実現される。なお、制御回路50aは、その他の機能を有していてもよい。
【0021】
駆動制御信号生成部58は、駆動指令信号に基づいて、モータMを駆動させるための駆動制御信号Sdを生成し、モータMの駆動を制御する。駆動制御信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0022】
駆動回路50bは、駆動制御信号Sdに基づき、モータMの3相(U相、V相およびW相)に対応するコイルを励磁することにより、モータMを駆動する。駆動回路50bは、例えば、各コイルを駆動するインバータ回路、駆動制御信号Sdに応じてインバータ回路を駆動するプリドライブ回路および各コイルに流れる電流を検出する電流検出回路などを有していてもよい。
【0023】
制御装置50は、制御回路50aの一部または全部と駆動回路50bの一部または全部とが1つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、制御回路50aおよび駆動回路50bがそれぞれ個別の集積回路装置としてそれぞれパッケージ化された構成であってもよい。
【0024】
回転数計算部51、i比較部52、閾値比較部53、変速比設定部54、i設定部55、C設定部56およびカウント閾値比較部57の機能および動作は、後述する変速比状態判定処理のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
図4(a)は、本発明における制御を説明するためのフローチャートであり、図4(b)は、この制御を説明するためのタイミング図である。
ステップS1において、制御装置50は、変速比が、第1の変速比から第2の変速比に変更されたか否かを検出する。変速比が、第1の変速比から第2の変速比に変更された時点をt=t10とする。
ステップS2において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理を行う。
ステップS3において、制御装置50は、第2の変速比に対応するペダルのアシストが
開始されるように制御する。第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始された時点をt=t11とする。
第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、(t11-t10)である。
ここで処理は終了するが、変速比が変更されるたびに、この処理が行われる。
【0026】
例えば、第3の変速比から第4の変速比に変更された時点をt=t12とし、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始された時点をt=t13とすると、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、(t13-t12)である。
本発明では、後述する変速比状態判定処理に起因して、第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t11-t10)は、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t13-t12)と異なる。
【0027】
図5は、本発明におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。
制御装置50が停止している状態から時点t=t20において起動する場合を検討する。
ペダルのアシストは、起動と同時に開始されるわけではなく、所定の時間後に開始される。例えば、時点t=t21において、起動時に設定されている変速比に対応するペダルのアシストが開始されるとする。
制御装置50が起動してから所定時間経過後の時点t=t22において、変速比が変更された場合を検討する。
制御装置50の起動時と同様に、変速比の変更と同時にその変更された変速比でのペダルのアシストが適用されるわけではなく、所定の時間後に適用される。例えば、時点t=t23において、変更後の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるとする。
本発明では、後述する変速比状態判定処理に起因して、停止した制御装置50の起動から、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t21-t20)は、変速比の変更から、変更後の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t23-t22)に対して大きい。
【0028】
ここで、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、車輪の1回転にかかる時間以内であることが好ましい。具体的には、時間(t11-t10)、(t13-t12)、(t21-t20)および(t23-t22)は、後輪3の1回転にかかる時間以内であることが好ましい。
【0029】
図6は、本発明におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。
時点t=t30において、所定の変速比に変更されるとする。
所定の変速比に変更されてから第1の期間p1の経過前の時点t=31において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理により、所定の変速比の候補を判定(仮判定)する。例えば、ギア2、3を候補として判定(仮判定)する。
第1の期間p1の経過後で第2の期間p2の経過前の時点t=32において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理により、所定の変速比の候補から所定の変速比を判定する。例えば、2つの候補(ギア2、3)からギア3が現在の変速比であると判定する。
【0030】
ここで、第1の期間p1および第2の期間p2を含む期間は、車輪(後輪3)の1回転にかかる時間以内であることが好ましい。
【0031】
なお、ある電動アシスト自転車において、本発明の特徴事項である時間の大小関係(タ
イムラグ)を有するかを確認する方法としては、ギアポジションを表示するディスプレイ(表示装置)を確認すること、ギアポジションが確定するまでにアシスト出力に抑制がかかることを確認すること、モータ電流などによりアシストの出力にタイムラグが発生することを確認することなどが考えられる。
【0032】
図7は、変速比状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
現在の変速比は、ギア3に設定されているが、上述したように、モータの回転数および車輪の回転数を測定した結果からは、ギア2とギア3のどちらに設定されているのかが分からない場合がある。「隣接する変速比のどちらが正しいか分からない」という状態は、例えば、変速比を変更したとき、および、システム(制御装置50)を停止した状態から起動してペダルを漕ぎ始めるときに起こりうる。
本発明では、変速比状態判定処理により、どのギアにあるのかを仮判定または確定することができる。
実施例1として、回転数の比がR=0.63で変化しない場合を示し、実施例2として、回転数の比がR=0.63からR=0.55に変化する場合を示し、実施例3として、回転数の比がR=0.55からR=0.63に変化する場合を示す。
【0033】
実施例1では、回転数の比がR=0.63で変化せず、車速パルスが来るたび、ギア2およびギア3のカウント値Cが増加し、カウント値Cがカウント閾値を超えると、ギア2およびギア3が「仮判定」となる。以下、フローチャートに沿って詳細に説明する。なお、本実施形態では、第1センサ5として、車輪が1周するうちに12回のパルス(以下、車速パルスと呼称する)を出力する使用するセンサを用いる。
【0034】
ステップS11において、回転数計算部51は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速を変更するタイミング(1/12車速パルスが来たか)を検出する。以下、車速を変更するタイミングを車速変更タイミングと呼称する。
車速変更タイミングにおいて(1/12車速パルスが来ると)、ステップS12において、回転数計算部51は、第1センサ5からの信号および第2センサ6からのモータの回転数を示す信号に基づいて、上述した式(1)に従って回転数の比Rを計算する。実施例1では、回転数の比R=0.63であるとする。
【0035】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。iの初期値は1であり、Ngearは変速比の個数(ギア・スプロケットの段数)であり、本実施形態では9である。ここで、i<9であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表2のとおり、すべてのギア1~9の変速比状態の初期値は「未定」であり、ギア1の変速比状態も「未定」であるので、ステップS21に進む。
【表2】
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0036】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア2のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表3のギア2のカウント値Cを0から1に変更する。表3を含め、以下に示す表において、このステップにおいて変更した箇所にを付している。
【表3】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア2のカウント値Cをカウント閾値と比較する。カウント閾値は、何回連続でそのギアが閾値を満たしたかを示す数であり、本実施例では6とする。C<6であるのでステップS15に進む。
なお、ギア判定をより高速にする場合、カウント閾値は小さい数とすべきであり、一方、ギア判定をより正確にする場合、カウント閾値は大きい数とすべきである。カウント閾値は任意に設定可能である。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表3のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0037】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア3のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表4のギア3のカウント値Cを0から1に変更する。
【表4】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア3のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表4のとおり、ギア3の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0038】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=4であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.535であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表4のとおり、ギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0039】
i=5~9は、上述したi=4の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0040】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=10であるので、ステップS22に進む。
ステップS22において、i設定部55は、i=1にリセットした後、ステップS23
に進む。
ステップS23において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表4のとおり、すべてのギアの変速比状態は「未定」であるので、ステップS24に進む。
ステップS24において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態を「未定」に設定する。実施例1では、すでにすべてのギアの変速比状態は「未定」であるので何もせず、ステップS11に戻る。
【0041】
ステップS11において、回転数計算部51は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速変更タイミング(2/12車速パルスが来たか)を検出する。
車速変更タイミングにおいて(2/12車速パルスが来ると)、ステップS12において、回転数計算部51は、第1センサ5からの信号および第2センサ6からのモータの回転数を示す信号に基づいて、回転数の比Rを計算する。実施例1では、回転数の比R=0.63のまま変化しないものとしているため、i=1の場合、ステップS12~ステップS21は、上述した1/12車速パルスの場合と同様である。それゆえ、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=2となったところまでスキップする。
【0042】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア2のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表5のギア2のカウント値Cを1から2に変更する。
【表5】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア2のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表5のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0043】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=3である
ので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア3のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表6のギア3のカウント値Cを1から2に変更する。
【表6】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア3のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表6のとおり、ギア3の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0044】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(3/12、4/12、5/12車速パルスが来ると)、表7のとおり、C設定部は、ギア2、3のカウント値Cをカウントアップする。
【表7】
【0045】
各車速変更タイミング(3/12、4/12、5/12車速パルス)のフローは上述した場合と同様である。また、車速変更タイミング(6/12車速パルス)のフローにおいて、i=1の場合、ステップS12~ステップS21は、上述した各車速変更タイミング
(1/12、2/12、3/12、4/12、5/12車速パルス)の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=2となったところまでスキップする。
【0046】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア2のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表8のギア2のカウント値Cを5から6に変更する。
【表8】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア2のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップS18に進む。
ステップS18において、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表8のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップS19に進む。
ステップS19において、表9のとおり、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態を「未定」から「仮判定」に変更する。
【表9】
【0047】
同様に、車速変更タイミング(6/12車速パルス)のループにおいて、ギア3のカウント値Cも6になるので、表10のとおり、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態も「仮判定」に変更する。
【表10】
【0048】
i=4~9は、上述した各車速変更タイミング(1/12、2/12、3/12、4/12、5/12車速パルス)の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0049】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=10であるので、ステップS22に進む。
ステップS22において、i設定部55は、i=1にリセットした後、ステップS23に進む。
ステップS23において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表10のとおり、ギア2、3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS25に進む。
ステップS25において、変速比設定部54は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表10のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアは、ギア2、3の2個であるので、ステップS11に戻る。
【0050】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(7/12、8/12、9/12車速パルスが来ると)、表11のとおり、C設定部は、ギア2、3のカウント値Cをカウントアップする。実施例1では、回転数の比R=0.63のまま変化しないものとしているため、変速比状態の変更はなく、ループを継続する。それゆえ、変速比状態は確定することはなく、ギア2、3は、ともに仮判定の状態である。その結果、隣接する変速比の両方(ギア2、3)を候補と仮判定することにより、誤判定のリスクを低減することができる。ただし、カウント値Cがカウント閾値に達した場合、それ以降のカウントアップをしなくても良い。すなわち、表11において、ギア2と3のカウント値Cは6で止めても良い。
【表11】
【0051】
実施例1では、制御装置50によって、表1に示すように、複数の変速比(ギア1~9)に対応する数値範囲のうち、式(1)で算出された変速比を含む1つまたは複数の数値範囲が判定され(ステップS14)、1つまたは複数の数値範囲に対応する1つまたは複数の変速比(ギア2、3)が所定の変速比の候補である。
【0052】
実施例2では、回転数の比が実施例1の状態(R=0.63)からR=0.55に変化し、変化後最初の車速パルスが来たときに、ギア2は閾値から逸脱する(ステップS14においてNO)。ギア2は仮判定になっていたため(ステップS15においてYES)、ギア2は「除外」される(ステップS20)。R=0.55は、ギア3およびギア4の両方の閾値に含まれるため(ステップS14)、ギア3およびギア4のカウント値Cが増加し(ステップS16)、カウント閾値を超える(ステップS17においてYES)。その結果、ギア3およびギア4が「仮判定」となる(ステップS19)。以下、フローチャートに沿って詳細に説明する。
【0053】
ステップS11において、回転数計算部51は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速変更タイミング(10/12車速パルスが来たか)を検出する。
車速変更タイミングにおいて(10/12車速パルスが来ると)、ステップS12において、回転数計算部51は、第1センサ5からの信号および第2センサ6からのモータの回転数を示す信号に基づいて、回転数の比Rを計算する。実施例2では、回転数の比R=0.55であるとする。
【0054】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=1であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、回転数の比R=0.55は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表11のとおり、ギア1の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0055】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、回転数の比R=0.55は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表11のとおり、ギア2の変速比状態は、「仮判定」であるので、ステップS20に進む。
ステップS20において、表12のとおり、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態を「仮判定」から「除外」に変更し、C設定部56は、カウント値Cをリセット(ゼロに)する。
【表12】
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0056】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、回転数の比R=0.55は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア3のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表13のギア3のカウント値Cを9から10に変更する。
【表13】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア3のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップS18に進む。
ステップS18において、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表13のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS19に進む。
ステップS19において、ギア3の変速比状態はすでに「仮判定」であるので何もせず、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0057】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=4である
ので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.575であり、回転数の比R=0.55は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア4のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表14のギア4のカウント値Cを0から1に変更する。
【表14】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア4のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表14のとおり、ギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0058】
i=5~9は、上述したi=1の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0059】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=10であるので、ステップS22に進む。
ステップS22において、i設定部55は、i=1にリセットした後、ステップS23に進む。
ステップS23において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表14のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS25に進む。
ステップS25において、変速比設定部54は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表14のとおり、変速比状態が「仮判定」であるギアは、ギア3の1個であり、かつ、ギア3の上のギア2の変速比状態は「除外」であり、ギア3の下のギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップS11に戻る。
【0060】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(11/12、12/12、1/12、2/12車速パルスが来ると)、表15のとおり、C設定部56は、ギア3、4のカウント値Cをカウントアップする。
【表15】
【0061】
各車速変更タイミング(11/12、12/12、1/12、2/12車速パルス)のフローは上述した場合と同様であるので、車速変更タイミング(3/12車速パルス)のループのステップS16において、表16のとおり、ギア4のカウント値Cが6になったところまでスキップする。
【表16】
【0062】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア4のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップS18に進む。
ステップS18において、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表16のとおり、ギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップS19に進む。
ステップS19において、表17のとおり、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態を「未定」から「仮判定」に変更する。
【表17】
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0063】
i=5~9は、実施例1のi=4の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0064】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=10であるので、ステップS22に進む。
ステップS22において、i設定部55は、i=1にリセットした後、ステップS23に進む。
ステップS23において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表17のとおり、ギア3、4の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS25に進む。
ステップS25において、変速比設定部54は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表17のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアはギア3、4の2個であるので、ステップS11に戻る。
実施例2では、変速比状態は確定することはなく、ギア3、4は、ともに仮判定の状態である。その結果、隣接する変速比の両方(ギア3、4)を候補と仮判定することにより、誤判定のリスクを低減することができる。
【0065】
実施例3では、回転数の比が実施例2の状態(R=0.55)からR=0.63に変化し、変化後最初の車速パルスが来たときに、ギア4は閾値から逸脱する(ステップS14においてNO)。ギア4は仮判定になっていたため(ステップS15においてYES)、ギア4は「除外」される(ステップS20)。このとき、ギア3はまだ「除外」されておらず、仮判定または確定になっている変速比はギア3のみである(ステップS23においてYES)。ギア3の上下のギア2およびギア4は「除外」されているため、ギア3は「確定」となる(ステップS25においてYES)。以下、フローチャートに沿って詳細に説明する。
【0066】
ステップS11において、回転数計算部51は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速変更タイミング(4/12車速パルスが来たか)を検出する。
車速変更タイミングにおいて(4/12車速パルスが来ると)、ステップS12において、回転数計算部51は、第1センサ5からの信号および第2センサ6からのモータの回転数を示す信号に基づいて、回転数の比Rを計算する。実施例3では、回転数の比R=0
.63であるとする。
【0067】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=1であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表17のとおり、ギア1の変速比状態は「未定」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0068】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア2のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表18のギア2のカウント値Cを0から1に変更する。
【表18】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア2のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表18のとおり、ギア2の変速比状態は、「除外」であるので、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0069】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップS16に進む。
ステップS16において、C設定部56は、ギア3のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表19のギア3のカウント値Cを15から16に変更する。
【表19】
ステップS17において、カウント閾値比較部57は、ギア3のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップS18に進む。
ステップS18において、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表19のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS19に進む。
ステップS19において、ギア3の変速比状態はすでに「仮判定」であるので何もせず、ステップS21に進む。
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13に戻る。
【0070】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=4であるので、ステップS14に進む。
ステップS14において、閾値比較部53は、回転数の比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.575であり、回転数の比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップS15に進む。
ステップS15において、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表19のとおり、ギア4の変速比状態は、「仮判定」であるので、ステップS20に進む。
ステップS20において、表20のとおり、変速比設定部54は、ギア4の変速比状態を「仮判定」から「除外」に変更し、C設定部56は、カウント値Cをリセット(ゼロに)する。
【表20】
ステップS21において、i設定部55は、iをカウントアップして、ステップS13
に戻る。
【0071】
i=5~9は、上述したi=1の場合と同様であるので、ステップS21において、i設定部55がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0072】
ステップS13において、i比較部52は、iをNgearと比較する。i=10であるので、ステップS22に進む。
ステップS22において、i設定部55は、i=1にリセットした後、ステップS23に進む。
ステップS23において、変速比設定部54は、すべてのギアの変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表20のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップS25に進む。
ステップS25において、変速比設定部54は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表20のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアはギア3の1個であり、かつ、ギア3の上のギア2の変速比状態は「除外」であり、ギア3の下のギア4の変速比状態も「除外」であるので、ステップS26に進む。
ステップS26において、表21のとおり、変速比設定部54は、ギア3の変速比状態を「仮判定」から「確定」に変更する。
【表21】
このように、実施例3では、現在の変速比がギア3であることを高精度に確定することができる。
【0073】
制御装置50は、回転数の比Rが、所定の期間(車輪(後輪3)が1回転する間の時間)、表1の閾値範囲内にあるとき、その変速比になっていると判定する。ただし、判定した後も、変速比状態判定処理は継続する。
運転者が変速比を変更した場合、変更前に判定した変速比は、式(1)を満たさなくなる。このとき、制御装置50は、変速比が変更されたことを検出し、モータの出力を制限する。
モータの出力が制限された後、変速比状態判定処理に従って所定の変速比になっていると判定された場合、モータの出力の制限を解除する。
【0074】
実施例1~3をまとめると、制御装置50は、以下のとおりに構成される。
第1センサからの車輪の回転数を示す信号および第2センサからのモータの回転数を示す信号に基づいて、式(1)に従って回転数の比Rを計算する(ステップS11およびS12)。
すべての変速比(ギア1~9)のうちの1つまたは複数の変速比に関して、回転数の比
Rが所定の回数(カウント閾値、本実施例では6)以上閾値範囲内にある場合(ステップS17)、1つまたは複数の変速比を仮判定する(ステップS19)。
一旦仮判定された変速比に関して、回転数の比Rが閾値範囲内になくなった場合(ステップS15)、変速比を除外する(ステップS20)。
仮判定された1つの変速比に隣接する2つの変速比がともに除外された場合(ステップS25)、仮判定された1つの変速比を変速比として判定する(ステップS26)。
【0075】
図8(a)は、電動アシスト自転車における、変速時の検出およびモータ制御を説明するためのシミュレーション図である。
縦軸は、ソフトウェア内のギア判定の状況を電圧出力により表し、横軸は時間を表す。「未連結」とは、ペダルの漕ぎ始めにアシスト出力が抑制されている場合や、ギア変更を検出してアシスト出力が抑制されている場合を表す。
図8(a)に示すように、ギア9からギア8に変更され、上述した変速比状態判定処理を経てギア8に確定するまでの時間taは、ギア8からギア7に変更され、ギア7に確定するまでの時間tbより長い。同様の大小関係が成立し、ギア2からギア1に変更され、ギア1に確定するまでの時間tcが最も短い。これは、重いギアの方が上下のギア間の歯数の差が小さいので、軽いギアと比べて、ギアが確定するまでにかかる時間が長いからである。例えば、表1に示すように、ギア9の歯数は11であり、ギア8の歯数は13であるため、ギア9、8の間の歯数の差は2である一方、ギア2の歯数は30であり、ギア1の歯数は36であるため、ギア2、1の間の歯数の差は6である。なお、ギア9からギア8に変更され、ギア8に確定するまでの時間は、ギア8からギア9に変更され、ギア9に確定するまでの時間と同一である。
【0076】
図8(b)は、図8(a)のうち、ギア9からギア8に変更され、図7に示す変速比状態判定処理を経てギア8に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
ギア9からギア8に変更された直後は、アシスト出力が抑制される。
次に、ギア8が仮判定され、電圧出力は、ギア8の電圧レベルになる。
次に、一旦ギア8と7が仮判定され、電圧出力は、ギア8とギア7の間の電圧レベルになる。
次に、ギア7が除外され、仮判定されているのはギア8のみとなるので、電圧出力は、ギア8の電圧レベルになる。
次に、ギア9も仮判定され、ギア8とギア9が仮判定されているため、電圧出力は、ギア8とギア9の間の電圧レベルになる。
最後に、ギア9が除外され、ギア8が確定し、電圧出力は、ギア8の電圧レベルになる。
【0077】
図8(c)は、図8(a)のうち、ギア2からギア1に変更され、図7に示す変速比状態判定処理を経てギア1に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
ギア2からギア1に変更された直後は、アシスト出力が抑制される。
次に、ギア1が仮判定され、電圧出力は、ギア1の電圧レベルになる。
上述したように、ギア2、1の間の歯数の差が大きいため、曖昧な判定にならない。
【符号の説明】
【0078】
1…電動アシスト自転車、2…第1車輪(前輪)、3…第2車輪(後輪)、4…ペダル、5…第1センサ、6…第2センサ、8…クランク(フロント)、9…(リア)ギア・スプロケット、50…制御装置、50a…制御回路、50b…駆動回路、51…回転数計算部、52…i比較部、53…閾値比較部、54…変速比設定部、55…i設定部、56…C設定部、57…カウント閾値比較部、58…駆動制御信号生成部、100…回転装置(MDU:モータドライブユニット)
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】