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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025111338
(43)【公開日】2025-07-30
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20250723BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005713
(22)【出願日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】内藤 圭太
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 進士
(72)【発明者】
【氏名】北野 高通
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(57)【要約】
【課題】変速時における金属音やペダルの必要以上な回転を抑制することができる電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】電動アシスト自転車1では、第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダル4のアシストが開始されるまで、ペダル4のアシストの大きさが制限されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、前記第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまで、前記ペダルのアシストの大きさが制限されている、電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記制限された前記ペダルのアシストの大きさは、前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストの大きさより小さい、請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記第1の変速比から前記第2の変速比に変更されてから前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間が、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから前記第4の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間に対して異なる、請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間は、前記ペダルの1回転にかかる時間以内である、請求項1から3のいずれかに記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
車輪と、
制御装置と、
減速機と前記ペダルをアシストするモータとを有する回転装置と、
前記車輪の回転数を検出するセンサと、
前記モータの回転を検出するセンサと、
を備え、
Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、grMDUを前記回転装置の減速比として、前記制御装置は、変速比に対応する所定の範囲内に以下の式(1)の大きさが含まれるかを判定する、請求項1から4のいずれかに記載の電動アシスト自転車。
Nm/(grMDU・Nw)・・・式(1)
【請求項6】
制御装置を備え、
停止している前記制御装置を起動してから、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまで、前記ペダルのアシストの大きさが制限されている、電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記制限された前記ペダルのアシストの大きさは、前記変速比に対応する前記ペダルのアシストの大きさより小さい、請求項6に記載の電動アシスト自転車。
【請求項8】
前記変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間は、前記ペダルの1回転にかかる時間以内である、請求項6または7のいずれかに記載の電動アシスト自転車。
【請求項9】
車輪と、
前記制御装置と、
減速機と前記ペダルをアシストするモータとを有する回転装置と、
前記車輪の回転数を検出するセンサと、
前記モータの回転を検出するセンサと、
を備え、
Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、grMDUを前記回転装置の減速比として、
前記制御装置は、前記変速比に対応する所定の範囲内に以下の式(1)の大きさが含まれるかを判定する、請求項6から8のいずれかに記載の電動アシスト自転車。
Nm/(grMDU・Nw)・・・式(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
ペダルに付与される踏力に基づいてアシストの必要の有無を判断し、アシストが必要な場合にはモータを回転させて電動アシスト自転車にアシストを提供するように構成された電動アシスト自転車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-90109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動アシスト自転車では、例えば、モータドライブユニットとも称される駆動系からのアシスト量が大きい際に変速を行うと駆動系から金属音がしたり、軽いギアへと変速した際にペダルが必要以上に回転したりする場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、変速時における金属音の発生又はペダルの必要以上な回転を抑制することができる電動アシスト自転車を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):本発明に係る電動アシスト自転車は、第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、前記第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまで、前記ペダルのアシストの大きさが制限されている。
【0007】
(2):(1)において、前記制限された前記ペダルのアシストの大きさは、前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストの大きさより小さくてもよい。
【0008】
(3):(1)または(2)において、前記第1の変速比から前記第2の変速比に変更されてから前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間が、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから前記第4の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間に対して異なってもよい。
【0009】
(4):(1)から(3)のいずれかにおいて、前記第2の変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間は、前記ペダルの1回転にかかる時間以内であってもよい。
【0010】
(5):(1)から(4)のいずれかにおいて、車輪と、制御装置と、減速機と前記ペダルをアシストするモータとを有する回転装置と、前記車輪の回転数を検出するセンサと、前記モータの回転を検出するセンサと、を備え、Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、grMDUを前記回転装置の減速比として、前記制御装置は、変速比に対応する所定の範囲内に以下の式(1)の大きさが含まれるかを判定してもよい。
Nm/(grMDU・Nw)・・・式(1)
【0011】
(6):本発明に係る別の電動アシスト自転車は、制御装置を備え、停止している前記制御装置を起動してから、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまで、前記ペダルのアシストの大きさが制限されている。
【0012】
(7):(6)において、前記制限された前記ペダルのアシストの大きさは、前記変速比に対応する前記ペダルのアシストの大きさより小さくてもよい。
【0013】
(8):(6)または(7)において、前記変速比に対応する前記ペダルのアシストが開始されるまでの時間は、前記ペダルの1回転にかかる時間以内であってもよい。
【0014】
(9):(6)から(8)のいずれかにおいて、車輪と、前記制御装置と、減速機と前記ペダルをアシストするモータとを有する回転装置と、前記車輪の回転数を検出するセンサと、前記モータの回転を検出するセンサと、を備え、Nwを前記車輪の回転数(rpm)、Nmを前記モータの回転数(rpm)、grMDUを前記回転装置の減速比として、前記制御装置は、前記変速比に対応する所定の範囲内に以下の式(1)の大きさが含まれるかを判定してもよい。
Nm/(grMDU・Nw)・・・式(1)
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における電動アシスト自転車の一例を示す側面図である。
図2図1に示す電動アシスト自転車が備える制御装置、センサ、及びモータの構成を示すブロック図である。
図3図2に示す制御装置の記憶部が格納するテーブルの一例を示す図である。
図4図1に示す電動アシスト自転車が備える制御装置による制御の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態における電動アシスト自転車が備える制御装置、センサ、及びモータの構成を示すブロック図である。
図6図5に示す電動アシスト自転車が備える第4計算部の機能構成を示すブロック図である。
図7(a)】図5に示す電動アシスト自転車の制御の一部を説明するためのフローチャートである。
図7(b)】図5に示す電動アシスト自転車の制御の一制御を説明するためのタイミング図である。
図8図5に示す電動アシスト自転車のその他の制御を説明するためのタイミング図である。
図9図5に示す電動アシスト自転車のその他の制御を説明するためのタイミング図である。
図10図5に示す電動アシスト自転車における変速比状態判定処理を説明するためのフローチャートである。
図11(a)】図5に示す電動アシスト自転車における、変速時の検出及びモータ制御を説明するためのシミュレーション図である。
図11(b)】図11(a)のうち、ギア9からギア8に変更され、図10に示す変速比状態判定処理を経てギア8に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
図11(c)】図11(a)のうち、ギア2からギア1に変更され、図10に示す変速比状態判定処理を経てギア1に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動アシスト自転車を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張又は縮小して示されていたり、ハッチングが省略されて示されていたりする場合がある。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電動アシスト自転車を示す側面図である。図1に示すように、電動アシスト自転車1は、フレームFと、ハンドルHと、サドルSと、伝達体Cと、チェーンリングCRと、スプロケットSPと、バッテリBと、回転機器としてのモータドライブユニット(MDU)100(以下、「MDU100」と記載する。)と、車輪(前輪2及び後輪3)と、ペダル4とを含んでいる。チェーンリングCRは、所定の条件下(例えば、MDU100の駆動力がペダル4に伝わる場合)において、ペダル4とともに回転するギアであり、本実施形態では、1段のギアを含んでいる。スプロケットSPは、後輪3に取り付けられており、複数のギアが積層された多段式ギアとして構成されている。すなわち、スプロケットSPはi段(iは2以上の自然数)のギアを有している。伝達体Cは、チェーンリングCRのギアとスプロケットSPのギアとに架け渡されている。MDU100は、モータ40と、電動アシスト自転車1にアシストを提供するためにモータ40の駆動を制御する制御装置50とを含んでいる。運転者が電動アシスト自転車1のサドルSに座り、ペダル4を漕いでペダル4を回転させると、所定の条件下、チェーンリングCR、スプロケットSP、及び伝達体Cを介して車輪(典型的には後輪3)に駆動力が伝達され、前方への走行が可能となる。この際、所定の条件下、MDU100のモータ40が制御装置50の制御に基づいて回転し、このモータ40の回転によるアシストによって、運転者がペダル4を漕ぐ力が低減(アシスト)される。伝達体Cは、チェーンであってもよく、ベルトであってもよい。
【0018】
前輪2又は後輪3の例えば回転軸近傍には、車輪(前輪2及び後輪3)の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出するための第1センサ5が配置されている。本明細書において、「車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出する」とは、第1センサ5そのものが車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出することであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を第1センサ5が制御装置50に出力し、制御装置50が車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出することであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を第1センサ5がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置が車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。図1には、後輪3の回転軸近傍に第1センサ5を配置した例が示されている。第1センサ5としては、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出可能な、又は車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第1センサ5は、例えば、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出可能な光学センサであってもよい。また、第1センサ5を配置する位置は、車輪の回転数Nw(rpm)及び電動アシスト自転車1の車速Vb(km/h)を検出可能な位置であればよく、例えば、前輪2又は後輪3の回転軸から離れた位置に配置されていてもよい。
【0019】
また、前輪2又は後輪3の例えば回転軸近傍には、車輪の所定の回転角An(deg)を検出するための第4センサ8が配置されている。本明細書において、「車輪の所定の回転角An(deg)を検出する」とは、第4センサ8そのものが車輪の所定の回転角An(deg)を算出することであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を第4センサ8が制御装置50に出力し、制御装置50が所定の回転角An(deg)を算出することであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を第4センサ8がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置が車輪の所定の回転角An(deg)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。図1には、後輪3の回転軸近傍に第4センサ8を配置した例が示されている。第4センサ8としては、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な、又は車輪の所定の回転角An(deg)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第4センサ8は、例えば、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な光学センサであってもよい。また、第4センサ8を配置する位置は、車輪の所定の回転角An(deg)又は車輪の所定の回転角An(deg)を検出可能な位置であればよく、例えば、前輪2又は後輪3の回転軸から離れた位置に配置されていてもよい。
【0020】
本実施形態において、第4センサ8は、車輪(例えば後輪3)が所定の回転角An(deg)回転する毎に制御装置50(具体的には、後述する第3計算部53)に信号Saを出力する。すなわち、第4センサ8は、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号Saを制御装置50に出力する。所定の回転角An(deg)は、特に限定されるものではないが、例えば、30°であってもよく、120°であってもよく、90°であってもよく、60°であってもよく、45°であってもよく、15°であってもよく、10°であってもよく、1°から360°の範囲内から選ばれた所定の角度であれば、構わない。
【0021】
なお、第4センサ8と第1センサ5とを共通のセンサにしても構わない。
【0022】
MDU100及びバッテリBは、典型的には、ペダル4に接続されたクランクシャフト23の周辺に配置されている。図1に示すように、MDU100は、回転装置70と、制御装置50と、ハウジング60とを含んでいる。ハウジング60は、電動アシスト自転車1の例えばフレームFに固定されており、回転装置70や制御装置50等を内側に収容している。回転装置70は、モータ40、減速機10、及びトルクセンサとしての第3センサ7とを有している。なお、図1では、回転装置70及び制御装置50は、ハウジング60内に収容されて視認できないため、破線で示されている。なお、制御装置50は、一部又は全部がハウジング60の外側に配置されていてもよい。バッテリBは、モータ40及び制御装置50に電力を供給し、この電力によってモータ40及び制御装置50が動作する。
【0023】
回転装置70のモータ40は、制御装置50の制御により駆動して、減速機10を介してペダル4の回転をアシストする。なお、本明細書において、「ペダル4の回転」とは、クランクシャフト23を中心としたペダル4の回転(公転)をいう。また、本明細書において、「アシスト」とは、人力でペダル4を回転させる(ペダル4を漕ぐ)ための力(踏力)を軽減することを含む。モータ40としては特に限定されないが、例えば、3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを有するブラシレスDCモータであってもよい。
【0024】
図1に示すように、モータ40には、モータ40のロータの回転数Nm(rpm)(以下、単に「モータ40の回転数Nm(rpm)」と記載する。)を検出するための第2センサ6が配置されている。本明細書において、「モータ40の回転数Nm(rpm)を検出する」とは、第2センサ6そのものがモータ40の回転数Nm(rpm)を算出することであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を第2センサ6が制御装置50に出力し、制御装置50がモータ40の回転数Nm(rpm)を算出することであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を第2センサ6がその他の演算装置(図示せず)に出力し、出力信号を入力された演算装置がモータ40の回転数Nm(rpm)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。図1には、第2センサ6がモータ40に搭載されている例が示されているが、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な位置であれば、第2センサ6を配置する位置は特に限定されるものではない。第2センサ6としては、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な、又はモータ40の回転数Nm(rpm)を算出するために必要な信号を出力可能な公知のセンサを用いることができる。第2センサ6は、例えば、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な磁気センサ又はホールセンサであってもよく、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出可能な光学センサなどであってもよい。
【0025】
なお、第2センサ6は、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサでなくても構わない。第2センサ6は、例えば、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を直接的に算出することが可能なセンサであってもよい。例えば、チェーンリングCRにマグネットを取り付け、チェーンリングCR近傍に磁気センサを取り付けることによって、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を直接的に検出することが可能である。
【0026】
図1に示すように、クランクシャフト23は、MDU100のハウジング60の内部を貫通している。クランクシャフト23の延在方向(軸方向又は長手方向)における一端部と他端部とのそれぞれにペダル4が固定されている。ペダル4が漕がれて回転することによって、クランクシャフト23が回転する。上述の第3センサ7は、ペダル4に加えられた踏力に起因して変形したクランクシャフト23のひずみを検知することよってペダル4にかかる踏力Tf(N)を検出しても構わない。この検出された踏力等に基づいて、制御装置50がモータ40の駆動を制御する。
【0027】
本明細書において、「ペダル4にかかる踏力Tf(N)を検出する」とは、第3センサ7そのものが踏力Tf(N)を算出することであってもよく、踏力Tf(N)を算出するために必要な信号を第3センサ7が制御装置50に出力し、制御装置50が踏力Tf(N)を算出することであってもよく、踏力Tf(N)を計算するために必要な信号を第3センサ7がその他の演算装置(図示せず)に出力し、信号を入力された演算装置が踏力Tf(N)を算出して制御装置50に出力することであってもよい。また、第3センサ7は、ペダル4に配置されていてもよく、ペダル4とクランクシャフト23とを接続するクランクアームに配置されていてもよく、MDU100のハウジング60に配置されていてもよく、その他の任意の箇所に配置されていてもよい。電動アシスト自転車1では、第3センサ7が検出した踏力Tf(N)等に応じて、モータ40の出力が調節される。
【0028】
回転装置70の減速機10は、複数のギア、複数のシャフト、及び複数のクラッチ(ワンウェイクラッチ)等を含んでいる。このような構成により、減速機10は、所定の減速比grMDUを有しており、この減速比grMDUに基づいてモータ40の回転を減速することができる。減速機10における複数のギアのうちの1つには、チェーンリングCRが固定されている。減速機10の複数のクラッチは、チェーンリングに固定されているギア(以下、「出力ギア」と記載する。)を含む。減速機10の複数のクラッチは、ペダル4(クランクシャフト23)の一方向(正方向)の回転を伝達し、他方向(逆方向)の回転を伝達しないように構成されている。
【0029】
例えば、ペダル4を逆方向(電動アシスト自転車1を前進させるためにペダル4を回転させる方向とは反対側の方向)に回転させる場合、クランクシャフト23は、出力ギアに対して相対的に逆方向に回転する。この場合、ペダル4(クランクシャフト23)の回転は出力ギアに伝達されない。すなわち、この場合、ペダル4(クランクシャフト23)の回転が、出力ギアに固定されたチェーンリングCRに伝達されないため、ペダル4の漕ぎに応じて車輪が回転することが防止されており、運転者のペダル4を漕ぐ力(踏力)が電動アシスト自転車1の推進力になることが防止されている。このように、ペダル4(クランクシャフト23)が相対的に逆方向に回転する場合、減速機10のクラッチ(ワンウェイクラッチ)等によって、モータ40のアシストがペダル4に伝わることが防止される。なお、「相対的な逆方向への回転」を以後、単に「逆方向への回転」と記載することがある。
【0030】
一方、ペダル4(クランクシャフト23)の正方向への回転数が、ある回転数に達すると、クラッチによってクランクシャフト23と出力ギアとが連結し、クランクシャフト23と出力ギアとが同期して一体的に回転する(以下、「同期した正方向への回転」と記載する場合がある。)。こうして、ペダル4(クランクシャフト23)の回転が出力ギアに伝達される。そして、これにより、出力ギアに固定されたチェーンリングCRが回転し、チェーンリングCRのギアとスプロケットSPのギアとに架け渡された伝達体Cを介して後輪3に駆動力が伝達される。換言すると、ペダル4(クランクシャフト23)の正方向への回転数が、ある回転数に達すると、減速機10のクラッチ等によって、モータ40の回転力がペダル4に伝わることが可能となり、ペダル4を踏むのに必要な力が所定の条件下で軽減(アシスト)される。
【0031】
また、図1に示すように、後輪3の回転軸には、クラッチRCが設けられている。このクラッチRCは、ラチェット等のワンウェイクラッチであってもよい。クラッチRCは、後輪3の回転方向に対して正方向に回転するスプロケットSPの回転を後輪3に伝達し、後輪3の回転方向に対して逆方向に回転するスプロケットSPの回転を後輪3に伝達しない構成を備えている。これにより、下り坂を走行すること等により車輪の回転数Nw(rpm)が大きくなる場合には、クラッチRCが外れることにより、車輪の速い回転に追従してペダル4が速く回転することが防止される。したがって、後輪3の回転方向に対して正方向に回転するスプロケットSPの回転が後輪3に伝達されるタイミングで、後輪3のクラッチRCを構成する金属部材同士が相互に接触する結果、ペダル4の回転力及びモータ40の回転力が、チェーンリングCR、スプロケットSP、伝達体C、及び後輪3のクラッチRCを介して、後輪3に伝達される。
【0032】
次に、制御装置50について詳細に説明する。図2は、制御装置50、第1センサ5、第2センサ6、第3センサ7、第4センサ8、及びモータ40の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置50は、制御回路50aと駆動回路50bとを含んでいる。なお、図2に示される制御装置50の機能や構成は、制御装置50の全体の機能や構成の一部であってもよい。すなわち、制御装置50は、図2に示される機能や構成以外の構成又は構成を含んでもよい。
【0033】
制御回路50aは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAMやROM等の各記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)によって実現されている。
【0034】
図2に示すように、本実施形態において、制御回路50aは、機能ブロックとして、第1計算部51と、第2計算部52と、第3計算部53と、第4計算部54と、判定部56と、モード決定部57と、記憶部(メモリ)58と、駆動信号生成部59と、出力抑制部80とを含んでいる。記憶部58は、上述のRAM、ROM等の各記憶装置の全部又は一部であってもよい。第1計算部51、第2計算部52、第3計算部53、第4計算部54、判定部56、モード決定部57、駆動信号生成部59、及び出力抑制部80は、例えば、制御回路50aとしてのプログラム処理装置において、プロセッサが、記憶部58を含む上述の各記憶装置に記憶された各種プログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。本実施形態では、上記の各種プログラムには、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)と車輪の回転数Nw(rpm)とに基づいて、スプロケットSPの現在のギアの段(以下、「現在の段」と記載することがある。)を判定するプログラム(以下、「段判定プログラム」と記載することがある。)が含まれる。
【0035】
なお、第2センサ6がモータ40の回転数Nm(rpm)を検出する例えばホールセンサ等である場合、段判定プログラムは、モータ40の回転数Nm(rpm)に減速機10の減速比grMDUの逆数を乗じてチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を算出した上で、この算出したチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)と車輪の回転数Nw(rpm)とに基づいて、現在の段を判定してもよい。また、第2センサ6がチェーンリングCRの回転数を直接的に検出するセンサである場合、段判定プログラムは、第2センサ6が検出したチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)と、車輪の回転数Nw(rpm)とに基づいて、現在の段を判定してもよい。
【0036】
本実施形態において、記憶部58には、上述のプログラムに加えて、減速機10の減速比grMDUのデータ(以下、「減速比データ」と記載することがある。)、電動アシスト自転車1の変速比GrのテーブルT、現在の段を示すデータ、及び1つ前の現在の段を示すデータ等が格納されている。なお、制御回路50aは、その他の機能ブロックを有していても構わない。
【0037】
ここで、変速比GrのテーブルTについて説明する。図3は、テーブルTの一例を示す図である。上述のように、本実施形態において、チェーンリングCRは1段のギアを含んでおり、スプロケットSPはi段(iは2以上の自然数)のギアを有している。したがって、チェーンリングCRの歯数nは定数であり、スプロケットSPの歯数n はスプロケットSPのギアの段(1段~i段)によって異なる。ここで、スプロケットSPが1段の場合のスプロケットSPの歯数をn と記載し、スプロケットSPが2段の場合のスプロケットSPの歯数をn と記載し、スプロケットSPが3段の場合のスプロケットSPの歯数をn と記載し、スプロケットSPがi段の場合のスプロケットSPの歯数をn と記載する。本実施形態において、電動アシスト自転車1の変速比Grは、以下の式(A)によって定義される。
Gr=n /n・・・(A)
図3に示すように、テーブルTでは、スプロケットSPのギアの段(1段~i段)のそれぞれに、式(A)に基づく変速比Grのデータが対応付けられている。
【0038】
図2に示すように、制御回路50aには、前述した車輪の回転数Nw及び電動アシスト自転車1の車速Vbを検出する第1センサ5、前述したモータ40のロータの回転数Nwを検出する第2センサ6、前述したトルクセンサとしての第3センサ7、及び前述した車輪の所定の回転角Anを検出する第4センサ8から出力された信号が入力される。第1計算部51は、第1センサ5から入力された信号を基に、車輪の回転数Nw(rpm)を算出する。第2計算部52は、第2センサ6から入力された信号を基に、モータ40の回転数Nm(rpm)を算出する。
【0039】
第3計算部53は、第4センサ8から信号Saが第3計算部53に入力された時に、第1計算部51により算出された車輪の回転数Nw(rpm)と、第2計算部52により算出されたモータ40の回転数Nm(rpm)と、記憶部58に格納された減速比データ(減速機10の減速比grMDUのデータ)とに基づいて、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)と車輪(例えば後輪3)の回転数Nw(rpm)との比R(Nc/Nw)を算出する。ここで、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)は、モータ40の回転数Nm(rpm)に減速機10の減速比grMDUの逆数を乗じた値に等しい。したがって、第3計算部53は、以下の式(1)に基づいて、比R(Nc/Nw)を算出する。
R=Nm/(grMDU・Nw)・・・式(1)
【0040】
なお、本実施形態では、例えば上述のチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を直接的に検出するセンサを用いてチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を検出することによって、比Rを算出することも可能である。すなわち、チェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を直接的に検出するセンサを用いてチェーンリングCRの回転数Nc(rpm)を検出する場合、第3計算部53が、以下の式(2)によって比Rを算出してもよい。
R=Nc/Nm・・・式(2)
【0041】
ただし、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサ(典型的には、ホールセンサ)は、ペダル(クランクシャフト)の回転数を直接的に検出するセンサに比べて精度高く回転角を検出できる場合があるため、式(1)を用いて比Rを算出することによって、より精度高く(例えば、ソフトウェアに使用したい時間間隔で)比Rのデータを取得し得る。モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサを用いた方が正確に回転数を取得できる第1の場合として、ペダルの回転数を直接的に検出するセンサの場合、両ペダル4を繋ぐシャフト上のマグネットと磁気センサとの間の距離が、踏力によりシャフトがひずむ影響により微小に変化する場合が挙げられる。一方、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサは、モータ40のロータに対して常に同じ位置になるように固定されているため、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサによれば実質的に常に正確な磁気を取得できる。また、第2の場合として、検出対象である回転体の動力による影響が挙げられる。すなわち、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するセンサでは、検出対象である回転体のモータ40の動力は電気であるのに対して、ペダルの回転数を直接的に検出するセンサでは、検出対象である回転体の動力は人力である。例えば、検出周期を1msとした場合、人力より電気の方が、検出周期ごとの変動が小さくなり、ソフトウェア内でデータとして使用できるようになる。
【0042】
第4計算部54は、第3センサ7から入力された信号を基にペダル4にかかる踏力Tf(N)を算出し、さらに、第1計算部51で算出された車輪の回転数Nw(rpm)及び車速Vb(km/h)を基に、所定のトルクをモータ40に発揮させる目標値であるトルク指令値Tm(Nm)を算出する。
【0043】
記憶部58には、「現在の段を示すデータ」と「1つ前の現在の段を示すデータ」とが格納されている。
【0044】
判定部56は、第3計算部53により算出された比Rに基づいて、段判定プログラムを用いて現在の段を判定し、判定した現在の段を示すデータを記憶部58に格納する。具体的には、判定部56は、直近で判定した現在の段を示すデータを「現在の段を示すデータ」として記憶部58に格納する。これに伴い、判定部56は、今まで記憶部58に「現在の段を示すデータ」として格納されていたデータを「1つ前の現在の段を示すデータ」に移行(更新)するとともに、今まで記憶部58に「1つ前の現在の段を示すデータ」として格納されていたデータを消去する。
【0045】
また、判定部56は、記憶部58からテーブルT及び「1つ前の現在の段を示すデータ」を読み出して、第3計算部53で算出された比Rが、1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれているかを判定する。換言すると、現在の段が1つ前の現在の段から変更されていないかを判定する。なお、Xの値は、電動アシスト自転車の性能(例えば、モータの出力、減速機の減速比、車輪の直径等)に基づいて個別具体的に設定されてもよく、10(すなわち、±10%)であってもよく、5(すなわち、±5%)であってもよく、15(すなわち、±15%)であってもよく、その他の値であってもよい。そして、判定部56は、比Rが1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれていると判定する場合には、第1信号S1をモード決定部57に出力し、比Rが1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれていないと判定する場合には、第2信号S2をモード決定部57に出力する。
【0046】
モード決定部57は、カウンタ57Cを含んでいる。このカウンタ57Cは、判定部56からカウンタ57Cに第1信号S1が連続してN回以上入力したときに第3信号S3を出力抑制部80に出力するように構成されている。なお、Nは1以上の自然数である。すなわち、モード決定部57(カウンタ57C)は、第1信号S1が連続してN回入力したときに出力抑制部80に第3信号S3を出力し、第1信号S1が連続して(N+1)回、(N+2)回、・・・、(N+n(nは1以上の自然数))回入力したときも出力抑制部80に第3信号S3を出力する。この第3信号S3は、スプロケットSPの現在の段を示す信号である。すなわち、第3信号S3は、比Rが現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれていると判定された場合に出力される。一方、モード決定部57は、第1信号S1がモード決定部57に連続してN回以上入力しないとき、換言すると、第2信号S2がモード決定部57に入力するとき、第4信号S4を出力抑制部80に出力する。なお、後に再び言及するが、モード決定部57は、第4信号S4を出力した際にカウンタ57Cの値をゼロにリセットしてもよく、nの値が所定の値に達したときにカウンタ57Cの値をNに戻してもよい。
【0047】
出力抑制部80は、モード決定部57から第3信号S3が入力されると、第3計算部53により算出されたトルク指令値Tm(Nm)を示す第5信号S5を駆動信号生成部59に出力する。トルク指令値Tm(Nm)に基づいてモータ40を駆動させる制御モードが通常出力モードである。一方、出力抑制部80は、モード決定部57から第4信号S4が入力されると、第3計算部53により算出されたトルク指令値Tm(Nm)を抑制したトルク指令値(以下、「抑制トルク指令値RTm(Nm)」と記載することがある。)を示す第6信号S6を駆動信号生成部59に出力する。抑制トルク指令値RTm(Nm)に基づいてモータ40を駆動させる制御モードが出力抑制モードである。
【0048】
ここで、出力抑制モードのための抑制トルク指令値RTm(Nm)は、通常出力モードのためのトルク指令値Tm(Nm)よりも小さく、例えば、通常出力モードのうち最も小さなモータ40のトルク(Nm)に対して1よりも小さな数M(0<M<1)を乗じたトルクであってもよい。つまり、電動アシスト自転車1において、比Rが、ある変速比Grの値の±X%の範囲外にある場合におけるモータ40の抑制トルク指令値RTm(Nm)は、第1信号S1が連続してN回以上入力したときのそれぞれにおいて比Rが所定の範囲Ra内にある場合におけるモータ40のトルク指令値Tm(Nm)に対して小さい。
【0049】
駆動信号生成部59は、モータ40を駆動させる駆動信号Sdを生成して、駆動回路50bに出力する。具体的には、駆動信号生成部59は、第5信号S5が入力されると第5信号S5が示すトルク指令値Tm(Nm)のトルクをモータ40に発揮させるための駆動信号Sdを、第6信号S6が入力されると第6信号S6が示す抑制トルク指令値RTm(Nm)のトルクをモータ40に発揮させるための駆動信号Sdを、駆動回路50bに出力する。駆動信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0050】
駆動回路50bは、駆動信号Sdに基づき、例えばモータ40が3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを有するブラシレスDCモータである場合には、モータ40の3相(U相、V相、及びW相)に対応するコイルを励磁することにより、モータ40を駆動する。駆動回路50bは、例えば、各コイルを駆動するインバータ回路、駆動信号に応じてインバータ回路を駆動するプリドライブ回路、及び各コイルに流れる電流を検出する電流検出回路等を有していてもよい。
【0051】
なお、上述のような制御装置50は、制御回路50aの一部又は全部と、駆動回路50bの一部又は全部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、制御回路50aと駆動回路50bがそれぞれ個別の集積回路装置としてそれぞれパッケージ化された構成であってもよい。
【0052】
次に、制御装置50による制御におけるステップの一例について説明する。図4は、制御装置50による制御におけるステップの一例を示すフローチャートである。なお、制御装置50による制御におけるステップは、図4に示される制御におけるステップに限られない。図4に示すように、本実施形態に係る制御におけるステップは、ステップSt1~ステップSt9を含んでいる。ここで、以下、図4に示す制御におけるステップのうち、ステップSt2~ステップSt9を「モード決定フローMF」と記載することがある。
【0053】
本実施形態では、例えば、モータ40の駆動が開始されると、制御を開始させるステップが開始(START)されてもよい。具体的には、駆動信号生成部59がモータ40を駆動させる駆動信号Sdを生成して、駆動回路50bに出力したタイミングで、制御を開始させるステップが開始されてもよい。この際、記憶部58には、制御におけるステップが開始(START)される直前に設定されていたスプロケットSPのギアの段が、「現在の段を示すデータ」として記憶されている。なお、START時においては、「1つ前の現在の段を示すデータ」が記憶部58に記憶されていなくてもよい。
【0054】
(ステップSt1)
制御装置50は、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号Saが第3計算部53に入力された場合には、制御におけるステップをステップSt2に進め、モード決定フローMFを開始する。一方、制御装置50は、信号Saが第3計算部53に入力されない場合には、本ステップを繰り返す。なお、信号Saは、車輪が所定の回転角An(deg)回転したことを示す信号である必要はなく、例えば、所定のタイマから一定期間ごとに送信される信号であってもよい。
【0055】
(ステップSt2)
第4センサ8から第3計算部53に信号Saが入力されると、制御装置50は、第3計算部53において、上述の式(1)に基づいて比Rを算出する。具体的には、第3計算部53は、第1計算部51により算出された車輪の回転数Nw(rpm)と、第2計算部52により算出されたモータ40の回転数Nm(rpm)と、記憶部58に格納された減速比データ(減速機10の減速比grMDU)とに基づいて、比Rを算出する。制御装置50は、第3計算部53が比Rを算出すると、比Rを示す信号を判定部56に出力し、制御におけるステップをステップSt3に進める。なお、本ステップにおいて、式(2)に基づいて比Rを算出してもよい。
【0056】
(ステップSt3)
制御装置50は、第3計算部53から比Rを示す信号が入力されると、本ステップを実行する。具体的には、制御装置50は、第3計算部53により算出された比Rと、上述の段判定プログラムとに基づいて、現在の段を判定する。判定部56は、判定した現在の段を示すデータを「現在の段を示すデータ」として記憶部58に格納する。これに伴い、判定部56は、今まで記憶部58に「現在の段を示すデータ」として格納されていたデータを「1つ前の現在の段を示すデータ」に移行(更新)する。
【0057】
例えば、現在実行されているモード決定フローMFが(m+1)回目のモード決定フローMF(mは自然数)である場合において、電動アシスト自転車1が変速されていない(本実施形態では、スプロケットSPのギアの段が変更されていない)場合を考える。この場合、(m+1)回目のモード決定フローMFの本ステップ及び1つ前のm回目のモード決定フローMFの本ステップのそれぞれにおいて、「現在の段」は例えばi段と判定される。すなわち、(m+1)回目のモード決定フローMFにおいて本ステップを経ることにより、記憶部58には、「1つ前の現在の段を示すデータ」及び「現在の段を示すデータ」のそれぞれとして、i段を示すデータが格納される。
【0058】
一方、現在実行されているモード決定フローMFが(m+1)回目のモード決定フローMFである場合において、電動アシスト自転車1が変速された(本実施形態では、スプロケットSPのギアの段が変更された)場合を考える。例えば、m回目のモード決定フローMFにおいて例えば(i-1)段と判定されていて、(m+1)回目のモード決定フローMFの本ステップにおいてi段と判定された場合、制御装置50は、「現在の段を示すデータ」としてi段を示すデータを記憶部58に上書き(更新)し、これに伴い、「1つ前の現在の段を示すデータ」として(i-1)段を示すデータを記憶部58に上書き(更新)する。
【0059】
そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt4に進める。
【0060】
(ステップSt4)
制御装置50は、記憶部58から、「1つ前の現在の段を示すデータ」とテーブルTとを読み出し、判定部56において、ステップSt2で算出された比Rが、ステップSt3で更新された1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれているかを判定する。すなわち、制御装置50は、1つ前の現在の段の変速比Grに対応する所定の範囲内に、式(1)又は式(2)により求めた比R(大きさ)が含まれるかを判定する。制御装置50は、判定部56において、比Rが1つ前の現在の段の変速比Grの値(例えば、i段の変速比Grであるn /nc)の±X%の範囲に含まれていないと判定する場合には、制御におけるステップをステップSt5に進める。具体的に、判定部56が第2信号S2をモード決定部57に出力することによって、制御におけるステップがステップSt5に進む。例えば、1つ前のモード決定フローMFのステップSt2で(i-1)段と判定されており、現在実行されているモード決定フローMFの際に電動アシスト自転車1がi段に変速された場合、現在実行されているモード決定フローMFのステップSt2で算出された比R(i段に基づいて算出された比R)は、1つ前のモード決定フローMFのステップSt2で判定された段((i-1)段)に基づいて算出された「1つ前の現在の段の変速比(n i-1/nc)」の±X%の範囲に含まれていないことが想定される。
【0061】
一方、制御装置50は、判定部56において、比Rが1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲に含まれていると判定する場合には、制御におけるステップをステップSt6に進める。例えば、1つ前のモード決定フローMFでi段と判定されており、現在実行されているモード決定フローMFのステップSt3でもi段と判定された場合、現在実行されているモード決定フローMFのステップSt2で算出された比R(i段に基づいて算出された比R)は、1つ前のモード決定フローMFのステップSt3で判定された段(i段)に基づいて算出された「1つ前の現在の段の変速比n /nc」及び現在のモード決定フローMFのステップSt3で判定された段(i段)に基づいて算出された「現在の段の変速比n /nc」の±X%の範囲に含まれていることが想定される。
【0062】
(ステップSt5)
本ステップにおいて、制御装置50は、第4信号S4をモード決定部57から出力抑制部80に出力する。なお、制御装置50は、第4信号S4を出力した際に、モード決定部57のカウンタ57Cの値がゼロよりも大きい場合には、カウンタ57Cの値をゼロにリセットしてもよい。制御装置50は、第4信号S4が出力抑制部80に入力されると、第3計算部53が算出したトルク指令値Tm(Nm)を抑制した抑制トルク指令値RTm(Nm)を示す信号S6を駆動信号生成部59に入力する。制御装置50は、駆動信号生成部59において、抑制トルク指令値RTm(Nm)に基づく駆動信号Sdを生成して、この駆動信号Sdを駆動回路50bに出力する。そして、制御装置50は、駆動回路50bを介して、抑制トルク指令値RTm(Nm)の駆動信号Sdに基づいてモータ40の動作を制御する。こうして、制御装置50は、出力抑制モードをONにする。すなわち、本ステップを経ることにより、モータ40が通常出力モードよりも小さなトルクで回転し、その結果、モータ40によるアシストが通常出力モードに比べて低減される。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。
【0063】
(ステップSt6)
制御装置50は、判定部56において、第1信号S1をモード決定部57に出力する。この第1信号S1は、モード決定部57のカウンタ57Cに入力される。すなわち、本ステップにおいて、制御装置50は、判定部56において、カウンタ入力信号である第1信号S1をモード決定部57に出力する。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt7に進める。
【0064】
(ステップSt7、ステップSt8)
ステップSt7において、制御装置50は、モード決定部57のカウンタ57Cをプラス1するとともに、第1信号S1の入力が、N回以上の連続したカウンタ57Cへの入力であるか否かを判定する。なお、「連続したカウンタ57Cへの入力」とは、現在実行されているモード決定フローMFが(m+1)回目のモード決定フローMFである場合に、m回目のモード決定フローMFにおけるステップSt7においても、第1信号S1がカウンタ57Cに入力していた場合をいう。以下、この点についてさらに説明する。
【0065】
制御装置50は、m回目のモード決定フローMFのステップSt7において、第1信号S1のカウンタ57Cへの入力がN回以上の連続したカウンタ57Cへの入力でない場合には、制御におけるステップをステップSt8に進める。制御装置50は、ステップSt8において、ステップSt5と同様に出力抑制モードをONにする。これにより、モータ40が通常出力モードよりも小さなトルクで回転し、その結果、モータ40によるアシストが通常出力モードに比べて低減される。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。制御装置50は、この戻されたステップSt1において、判定部56に信号Saが入力した場合には、制御装置50は、(m+1)回目のモード決定フローMFを実行する。逆に言えば、制御装置50は、信号Saが判定部56に入力しない場合には(m+1)回目のモード決定フローMFを実行せず、信号Saが判定部56に入力するまでステップSt1を繰り返す。
【0066】
制御装置50は、(m+1)回目のモード決定フローMFのステップSt2で算出した比Rが、1つ前の現在の段(すなわち、m回目のモード決定フローMFで算出した現在の段)の変速比Grの値の±X%の範囲内にない場合、制御におけるステップをステップSt5に進める。すなわち、制御装置50は、m回目のモード決定フローMFにおいて出力抑制モードである場合には、(m+1)回目のモード決定フローMFのステップSt7に基づいて出力抑制モードを維持し、m回目のモード決定フローMFにおいて通常出力モードである場合には、(m+1)回目のモード決定フローMFのステップSt7に基づいて出力抑制モードに切り替える。m回目のモード決定フローMFにおいて通常出力モードであった場合に、(m+1)回目のモード決定フローMFによって出力抑制モードに切り替わり、次いで、(m+2)回目のモード決定フローMFにおいてステップSt7に至ったとしても、(m+2)回目のモード決定フローMFのステップSt7における第1信号S1のカウンタ57Cへの入力は、第1信号S1のカウンタ57Cへの連続した入力とはならない。この場合、制御装置50は、カウンタ57Cの値をゼロにリセットし、制御におけるステップをステップSt1に戻す。
【0067】
一方、m回目のモード決定フローMFでステップSt7に至りカウンタ57Cがプラス1されていて、かつ、m回目のモード決定フローMFにおいて第1信号S1がカウンタ57Cに連続してN回以上入力されていない場合に、(m+1)回目のモード決定フローMFでステップSt7に至った場合は、カウンタ57Cがさらにプラス1される(積算される)。ここで、例えばmが1である場合(すなわち、1回目のモード決定フローMFの場合)を考える。1回目(m回目)のモード決定フローMFでステップSt7に至ると、カウンタ57Cがプラス1されてカウンタ57Cの値が1となる。次いで、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおいてステップ7に至った場合には、カウンタ57Cがプラス1(積算)されてカウンタ57Cの値が2となる。ここで、例えばNを4とすると、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおけるカウンタ57Cの値は2であり、4より小さい。すなわち、この場合、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFにおいて第1信号S1がカウンタ57Cに連続して4回(N回)以上入力されていない。したがって、制御装置50は、2回目((m+1)回目)のモード決定フローMFのステップSt7及びステップSt8を経てステップSt1に戻し、3回目((m+2)回目)のモード決定フローMFを実行する。そして、3回目のモード決定フローMF及び4回目((m+3)回目)のモード決定フローMFのそれぞれでステップSt7に至った場合には、カウンタ57Cの値が積算されて4になるため、N回以上の条件を満たす。したがって、この場合、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt9に進める。
【0068】
(ステップSt9)
本ステップにおいて、制御装置50は、第3信号S3をカウンタ57Cから出力抑制部80に出力する。そして、制御装置50は、トルク指令値Tm(Nm)を示す第5信号S5を出力抑制部80から駆動信号生成部59へと出力する。こうして、本ステップにおいて、通常出力モードがONになる。そして、制御装置50は、制御におけるステップをステップSt1に戻す。
【0069】
ところで、以後の制御におけるステップのサイクルにおいて、連続してステップSt7に至る場合には、カウンタ57Cの値が順次積算され、カウンタ57Cの値が増大していく。そのため、これを防ぐためにカウンタ57Cの値に上限を定めておき、ある制御におけるステップのステップSt7においてカウンタ57Cの値が上限に達した場合にカウンタ57Cの値をNに戻すようにしてもよい。
【0070】
このように、図4に示される制御におけるステップでは、電動アシスト自転車1の制御装置50は、N回以上連続して第1信号S1(カウンタ入力信号)が入力する場合に「現在の段の変速比に入った」と判定して、現在の段に対応する通常出力モードを実行する。一方、電動アシスト自転車1は、比Rが「1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲外」にあるときは、ペダル4の回転をアシストする大きさ(モータ40のトルク(Nm))を、通常出力モードのモータ40のトルクNm(rpm)に対して小さくする。
【0071】
上述のように、1つ前のモード決定フローMFのステップSt3で(i-1)段と判定されており、現在実行されているモード決定フローMFの際に電動アシスト自転車1がi段に変速された場合、現在実行されているモード決定フローMFのステップSt2で算出された比Rは、1つ前のモード決定フローMFのステップSt3で判定された段に基づいて算出された「1つ前の現在の段の変速比n i-1/nc」の±X%の範囲に含まれていないことが想定される。すなわち、比Rが、「1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲」に収まらないケースは、電動アシスト自転車1が変速されたタイミング、具体的には、本実施形態では、スプロケットSPのギアが第1の変速比から第2の変速比に変更されたタイミングと推定できる。本実施形態の電動アシスト自転車1は、上述のように、比Rが「1つ前の現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲外」にあるときに、ペダル4の回転をアシストする大きさ(モータ40のトルク(Nm))を、通常出力モードのモータ40のトルク(Nm)に対して小さくする。すなわち、電動アシスト自転車1によれば、第1の変速比(1つ前の現在の段の変速比)から第2の変速比(現在の段の変速比)に変更されてから、第2の変速比に対応するペダル4のアシストが開始されるまで、ペダル4のアシストの大きさが制限される。また、電動アシスト自転車1によれば、制限されたペダル4のアシストの大きさ(出力抑制モードにおけるアシストの大きさ)は、第2の変速比に対応するペダル4のアシストの大きさ(通常出力モードにおけるアシストの大きさ)よりも小さい。このような構成によれば、電動アシスト自転車1が変速されたタイミング(本実施形態では、スプロケットSPのギアが変更されたタイミング)で、モータ40からのアシストが制限されるため、変速時における金属音やペダルの必要以上の回転を抑制することができる。
【0072】
また、電動アシスト自転車1によれば、上述のような制御に基づいて変速を検出するため、変速を検出するためのセンサを別途設ける必要がない。そのため、部品点数の増加やコストの増加を招くことなく、変速時における金属音やペダルの必要以上の回転を抑制することができる。
【0073】
また、上述のように、本実施形態に係る制御装置50は、N回以上連続して第1信号S1(カウンタ入力信号)が入力したときに「現在の段の変速比に入った」と判定して、現在の段に対応する通常出力モードを実行する。すなわち、本実施形態に係る制御装置50は、比Rが安定して現在の段の変速比Grの値の±X%の範囲内に収まるようになったタイミング、すなわち、駆動系から金属音がしたり、ギアを変速した時にペダルが必要以上に回転したりすることが生じ難いことがより正確に確定したタイミングで、通常出力モードを実行する。したがって、本実施形態に係る電動アシスト自転車1によれば、変速時における金属音やペダルの必要以上の回転を抑制することができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電動アシスト自転車について説明する。本実施形態の電動アシスト自転車は、現在の段を判定する方法(図4に示すステップSt3)が第1実施形態に係る電動アシスト自転車のステップSt3と異なる点において第1実施形態の電動アシスト自転車1と主に異なっている。
【0075】
より具体的には、本実施形態の電動アシスト自転車200は、図5に示すように、第1実施形態に係る電動アシスト自転車1の判定部56とは異なる判定部1556を備える点、図4に示すステップSt3において後述する変速比状態判定処理を行うことにより現在の段を判定する点、及び第1実施形態の電動アシスト自転車1では第2センサ6としてモータ40の回転数Nm(rpm)を検出するホールセンサ等及びチェーンリングCR(車輪)の回転数Nc(rpm)を直接的に検出するセンサのいずれも使用可能であるのに対し、本実施形態の電動アシスト自転車200では前者(モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するホールセンサ等)を使用する点において、第1実施形態に係る電動アシスト自転車1と異なり、その他の点においては電動アシスト自転車1と概ね共通する。したがって、本実施形態については、これらの相違点について主に説明し、その他の構成については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施形態では、電動アシスト自転車の現在の変速比(現在の段)を判定するために、モータの回転数及び車輪の回転数を測定する。しかしながら、回転数センサの精度の問題から、「隣接する変速比のどちらが正しいか分からない」という状態が発生しうる。例えば、ギア3(3段)に設定されている場合でも、モータの回転数及び車輪の回転数を測定した結果からは、ギア2(2段)とギア3(3段)のどちらに設定されているのかが分からない場合がある。この状態において、ギア2に設定されていると誤って判定すると、電動アシスト自転車が期待しない挙動をするおそれがある。しかし、本実施形態によれば、「隣接する変速比(段)のどちらが正しいか分からない」という状態を高精度に確定することが可能となる。以下、この点について説明する。
【0077】
本実施形態の電動アシスト自転車200のスプロケットSPのギアポジションの例としては、ギアの歯数が36の位置が1段目であり、ギアの歯数が30の位置が2段目であり、ギアの歯数が26の位置が3段目であってもよい。ギア1(1段)が一番軽く、ギア9(9段)が一番重い。表1に、本実施形態のギア(段)の設定値を示す。表1を含め、以下に示す表(テーブル)は、例えば、制御回路50a(図2参照)の記憶部58に記憶されていてもよい。リア(スプロケットSP)の歯数とフロント(チェーンリングCR)の歯数との比(リア歯数/フロント歯数)は、リアとフロントとの回転数の比(理論値)に対応しており、かかる理論値(すなわち、変速比Gr)は、上述の式(A)に基づいて、リア(スプロケットSP)のギア歯数(n )/フロント(チェーンリングCR)のギア歯数(n)により計算できる。表1では、小数第三位までしか記載していないが、実際の計算では、小数第四位以下も使用している。本実施形態では、判定に用いる閾値の下限は、回転数の比の理論値の90%であり、閾値の上限は、回転数の比の理論値の110%であるが、閾値の上下限は任意に設定可能である。
【0078】
【表1】
【0079】
一方で、実際の回転数の比Rは、上述の式(1)によって表される。後述する変速比状態判定処理において、制御装置50は、各変速比Grに対応する所定の範囲(表1の閾値範囲)内に、比R、すなわち、式(1)の大きさが含まれるかを判定する。
【0080】
図5に示すように、電動アシスト自転車200は、判定部1556の構成を除いて同様の構成を有する。したがって、以下、判定部1556について説明し、その他の構成についての詳細な説明を省略する。
【0081】
図6は、判定部1556の機能構成を示すブロック図である。図6に示すように、判定部1556は、機能ブロックとして、例えば、回転数計算部1541、i比較部1542、閾値比較部1543、変速比設定部1544、i設定部1545、C設定部1546、及びカウント閾値比較部1547を有する。回転数計算部1541、i比較部1542、閾値比較部1543、変速比設定部1544、i設定部1545、C設定部1546、及びカウント閾値比較部1547は、例えば、制御回路50aとしてのプログラム処理装置において、プロセッサが、記憶部58を含む上述の各記憶装置に記憶された各種プログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。なお、判定部1556は、その他の機能ブロックを有していてもよい。また、第1実施形態で説明した第3計算部53が回転数計算部1541を兼ねてもよい。第3計算部53が回転数計算部1541を兼ねる場合、判定部1556は、機能ブロックとして第3計算部53を含んでもよい。回転数計算部1541、i比較部1542、閾値比較部1543、変速比設定部1544、i設定部1545、C設定部1546及びカウント閾値比較部1547の機能及び動作については、後述する変速比状態判定処理のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
本実施形態の電動アシスト自転車200では、現在の段を判定するステップSt3のフローが第1実施形態の電動アシスト自転車1のステップSt3と異なっている。図7(a)は、本実施形態の電動アシスト自転車200の制御におけるステップの一部を説明するためのフローチャートであり、具体的には、電動アシスト自転車200におけるステップSt3において行われる制御を説明するためのフローチャートである。図7(b)は、図7(a)に示す制御を説明するためのタイミング図である。
【0083】
図7(a)に示すように、本実施形態では、ステップSt3において、ステップSt1100、ステップSt1200、及びステップSt1300が行われる。ステップSt1100において、制御装置50は、変速比(スプロケットSPの段)が、第1の変速比(第1の段)から第2の変速比(第2の段)に変更されたか否かを検出する。変速比が、第1の変速比から第2の変速比に変更された時点をt=t10(図7(b)参照)とする。ステップSt1200において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理を行う。ステップSt1300において、制御装置50は、第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるように制御する。第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始された時点をt=t11(図7(b)参照)とする。第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、(t11-t10)である。ここで本実施形態におけるステップSt3の処理は終了するが、本実施形態では、変速比(段)が変更されるたびに、この処理が行われる。
【0084】
例えば、第3の変速比から第4の変速比に変更された時点をt=t12(図7(b)参照)とし、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始された時点をt=t13(図7(b)参照)とすると、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、(t13-t12)である。本発明では、後述する変速比状態判定処理に起因して、第1の変速比から第2の変速比に変更されてから、第2の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t11-t10)は、第3の変速比から第4の変速比に変更されてから、第4の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t13-t12)と異なる。
【0085】
図8は、本実施形態におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。制御装置50が停止している状態から時点t=t20において起動する場合を検討する。ペダルのアシストは、起動と同時に開始されるわけではなく、所定の時間後に開始される。例えば、図8に示す時点t=t21において、起動時に設定されている変速比に対応するペダルのアシストが開始されるとする。制御装置50が起動してから所定時間経過後の時点t=t22において、変速比が変更された場合を検討する。制御装置50の起動時と同様に、変速比の変更と同時にその変更された変速比でのペダルのアシストが適用されるわけではなく、所定の時間後に適用される。例えば、時点t=t23において、変更後の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるとする。本実施形態では、後述する変速比状態判定処理に起因して、停止した制御装置50の起動から、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t21-t20)は、変速比の変更から、変更後の変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間(t23-t22)に対して大きい。
【0086】
ここで、変速比に対応するペダルのアシストが開始されるまでの時間は、例えば、車輪の1回転にかかる時間以内であってもよい。具体的には、時間(t11-t10)、(t13-t12)、(t21-t20)及び(t23-t22)は、後輪3の1回転にかかる時間以内であってもよい。
【0087】
図9は、本実施形態におけるその他の制御を説明するためのタイミング図である。図9に示す時点t=t30において、所定の変速比に変更されるとする。所定の変速比に変更されてから第1の期間p1の経過前の時点t=31において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理により、所定の変速比の候補を判定(仮判定)する。例えば、ギア2、3(2段、3段)を候補として判定(仮判定)する。第1の期間p1の経過後で第2の期間p2の経過前の時点t=32において、制御装置50は、後述する変速比状態判定処理により、所定の変速比の候補から所定の変速比を判定する。例えば、2つの候補(ギア2、3)からギア3(3段)が現在の変速比(現在の段)であると判定する。
【0088】
ここで、第1の期間p1及び第2の期間p2を含む期間は、例えば、車輪(後輪3)の1回転にかかる時間以内であることが好ましい。
【0089】
なお、ある電動アシスト自転車において、本発明の特徴事項である時間の大小関係(タイムラグ)を有するかを確認する方法としては、ギアポジションを表示するディスプレイ(表示装置)を確認すること、ギアポジションが確定するまでにアシスト出力に抑制がかかることを確認すること、モータ電流などによりアシストの出力にタイムラグが発生することを確認することなどが考えられる。
【0090】
図10は、変速比状態判定処理(図7に示すステップSt1200)を説明するためのフローチャートである。以下の説明では、現在の変速比(現在の段)がギア3(3段)に設定されているとする。しかし、上述したように、モータの回転数及び車輪の回転数を測定した結果からは、現在の段がギア2(2段)とギア3(3段)とのどちらに設定されているのかが分からない場合がある。「隣接する変速比のどちらが正しいか分からない」という状態は、例えば、変速比を変更したとき、及び、システム(制御装置50)を停止した状態から起動してペダルを漕ぎ始めるときに起こりうる。本実施形態の電動アシスト自転車200によれば、図10に示す変速比状態判定処理により、現在の段がどのギア(段)であるのかを仮判定または確定することができる。実施例1として、回転数の比がR=0.63で変化しない場合を示し、実施例2として、回転数の比がR=0.63からR=0.55に変化する場合を示し、実施例3として、回転数の比がR=0.55からR=0.63に変化する場合を示す。
【0091】
実施例1では、回転数の比がR=0.63で変化せず、電動アシスト自転車200の車速を示す信号(車速パルス)が来るたび、ギア2(2段)及びギア3(3段)のカウント値Cが増加し、カウント値Cがカウント閾値を超えると、ギア2(2段)及びギア3(3段)が「仮判定」となる。以下、図10のフローチャートに沿って詳細に説明する。なお、本実施形態では、第1センサ5として、車輪が1周するうちに12回のパルス(以下、車速パルスと呼称する)を出力する使用するセンサを用いる。
【0092】
ステップSt1211において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの車輪の回転数Nw(rpm)を示す信号を受信し、車速を変更するタイミング(1/12車速パルスが来たか)を検出する。以下、車速を変更するタイミングを車速変更タイミングと呼称する。車速変更タイミングにおいて(1/12車速パルスが来ると)、ステップS1212において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの信号及び第2計算部52からのモータ40の回転数Nm(rpm)を示す信号に基づいて、上述した式(1)に従って回転数の比R(実際の回転数の比)を計算する。実施例1では、比R=0.63であるとする。
【0093】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。iの初期値は1であり、Ngearは変速比の個数(スプロケットSPの段数)であり、本実施形態では9である。ここで、i≠9であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、比R=0.63は閾値範囲内にないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表2のとおり、すべてのギア1~9の変速比状態の初期値は「未定」であり、ギア1の変速比状態も「未定」であるので、ステップSt1221に進む。
【表2】
ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0094】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表3のギア2(2段)のカウント値Cを0から1に変更する。表3を含め、以下に示す表において、このステップにおいて変更した箇所に*を付している。
【表3】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア2のカウント値Cをカウント閾値と比較する。カウント閾値は、何回連続でそのギア(段)が閾値を満たしたかを示す数であり、本実施例では6とする。C<6であるのでステップSt1215に進む。なお、ギア(段)の判定をより高速にする場合、カウント閾値は小さい数とすべきであり、一方、ギア(段)の判定をより正確にする場合、カウント閾値は大きい数とすべきである。カウント閾値は任意に設定可能である。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表3のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0095】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表4のギア3のカウント値Cを0から1に変更する。
【表4】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア3の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表4のとおり、ギア3の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0096】
ステップS13において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=4であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.535であり、比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア4の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表4のとおり、ギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0097】
i=5~9は、上述したi=4の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0098】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=9であるので、ステップSt1222に進む。ステップSt1222において、i設定部1545は、i=1にリセットした後、ステップSt1223に進む。ステップSt1223において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表4のとおり、すべてのギア(段)の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1224に進む。ステップSt1224において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態を「未定」に設定する。実施例1では、すでにすべてのギア(段)の変速比状態は「未定」であるので何もせず、ステップSt1211に戻る。
【0099】
ステップSt1211において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの車輪の回転数Nw(rpm)を示す信号を受信し、車速変更タイミング(2/12車速パルスが来たか)を検出する。車速変更タイミングにおいて(2/12車速パルスが来ると)、ステップSt1212において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの信号及び第2計算部52からのモータ40の回転数Nm(rpm)を示す信号に基づいて、比Rを計算する。実施例1では、比R=0.63のまま変化しないものとしているため、i=1の場合、ステップSt1212~ステップSt1221は、上述した1/12車速パルスの場合と同様である。それゆえ、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=2となったところまでスキップする。
【0100】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表5のギア2(2段)のカウント値Cを1から2に変更する。
【表5】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表5のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0101】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表6のギア3(3段)のカウント値Cを1から2に変更する。
【表6】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア3の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表6のとおり、ギア3の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0102】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(3/12、4/12、5/12車速パルスが来ると)、表7のとおり、C設定部は、ギア2、3のカウント値Cをカウントアップする。
【表7】
【0103】
各車速変更タイミング(3/12、4/12、5/12車速パルス)のフローは上述した場合と同様である。また、車速変更タイミング(6/12車速パルス)のフローにおいて、i=1の場合、ステップSt1212~ステップSt1221は、上述した各車速変更タイミング(1/12、2/12、3/12、4/12、5/12車速パルス)の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=2となったところまでスキップする。
【0104】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表8のギア2のカウント値Cを5から6に変更する。
【表8】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップSt1218に進む。ステップSt1218において、変速比設定部1544は、ギア2の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表8のとおり、ギア2の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1219に進む。ステップSt1219において、表9のとおり、変速比設定部1544は、ギア2(2段)の変速比状態を「未定」から「仮判定」に変更する。
【表9】
【0105】
同様に、車速変更タイミング(6/12車速パルス)のループにおいて、ギア3のカウント値Cも6になるので、表10のとおり、変速比設定部1544は、ギア3(3段)の変速比状態も「仮判定」に変更する。
【表10】
【0106】
i=4~8は、上述した各車速変更タイミング(1/12、2/12、3/12、4/12、5/12車速パルス)の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=9となったところまでスキップする。
【0107】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=9であるので、ステップSt1222に進む。ステップSt1222において、i設定部1545は、i=1にリセットした後、ステップSt1223に進む。ステップSt1223において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表10のとおり、ギア2、3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1225に進む。ステップSt1225において、変速比設定部1544は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表10のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアは、ギア2、3の2個であるので、ステップSt1211に戻る。
【0108】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(7/12、8/12、9/12車速パルスが来ると)、表11のとおり、C設定部は、ギア2、3のカウント値Cをカウントアップする。実施例1では、比R=0.63のまま変化しないものとしているため、変速比状態の変更はなく、ループを継続する。それゆえ、変速比状態は確定することはなく、ギア2、3は、ともに仮判定の状態である。その結果、隣接する変速比の両方(ギア2、3)を候補と仮判定することにより、誤判定のリスクを低減することができる。ただし、カウント値Cがカウント閾値に達した場合、それ以降のカウントアップをしなくても良い。すなわち、表11において、ギア2と3のカウント値Cは6で止めても良い。
【表11】
【0109】
実施例1では、制御装置50によって、表1に示すように、複数の変速比(ギア1~9)に対応する数値範囲のうち、式(1)で算出された変速比を含む1つまたは複数の数値範囲が判定され(ステップSt1214)、1つまたは複数の数値範囲に対応する1つまたは複数の変速比(ギア2、3)が所定の変速比の候補である。
【0110】
実施例2では、回転数比が実施例1の状態(R=0.63)からR=0.55に変化し、変化後最初の車速パルスが来たときに、ギア2(2段)は閾値から逸脱する(ステップSt1214においてNO)。ギア2(2段)は仮判定になっていたため(ステップSt1215においてYES)、ギア2(2段)は「除外」される(ステップSt1220)。R=0.55は、ギア3(3段)及びギア4(4段)の両方の閾値に含まれるため(ステップSt1214)、ギア3(3段)及びギア4(4段)のカウント値Cが増加し(ステップSt1216)、カウント閾値を超える(ステップSt1217においてYES)。その結果、ギア3(3段)及びギア4(4段)が「仮判定」となる(ステップSt1219)。以下、フローチャートに沿って詳細に説明する。
【0111】
ステップSt1211において、回転数計算部1541は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速変更タイミング(10/12車速パルスが来たか)を検出する。車速変更タイミングにおいて(10/12車速パルスが来ると)、ステップSt1212において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの信号及び第2計算部52からのモータ40の回転数Nm(rpm)を示す信号に基づいて、比Rを計算する。実施例2では、比R=0.55であるとする。
【0112】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=1であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、比R=0.55は閾値範囲内にはないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表11のとおり、ギア1の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0113】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、比R=0.55は閾値範囲内にはないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア2の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表11のとおり、ギア2の変速比状態は、「仮判定」であるので、ステップSt1220に進む。ステップSt1220において、表12のとおり、変速比設定部1544は、ギア2の変速比状態を「仮判定」から「除外」に変更し、C設定部1546は、カウント値Cをリセット(ゼロに)する。
【表12】
ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0114】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、比R=0.55は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表13のギア3(3段)のカウント値Cを9から10に変更する。
【表13】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア3のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップSt1218に進む。ステップSt1218において、変速比設定部1544は、ギア3(3段)の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表13のとおり、ギア3(3段)の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1219に進む。ステップSt1219において、ギア3(3段)の変速比状態はすでに「仮判定」であるので何もせず、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0115】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=4であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.55が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.575であり、比R=0.55は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア4(4段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表14のギア4のカウント値Cを0から1に変更する。
【表14】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア4(4段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア4(4段)の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表14のとおり、ギア4(4段)の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0116】
i=5~9は、上述したi=1の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0117】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=9であるので、ステップSt1222に進む。ステップSt1222において、i設定部1545は、i=1にリセットした後、ステップSt1223に進む。ステップSt1223において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表14のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1225に進む。ステップSt1225において、変速比設定部1544は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表14のとおり、変速比状態が「仮判定」であるギアは、ギア3の1個であり、かつ、ギア3の上のギア2の変速比状態は「除外」であり、ギア3の下のギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1211に戻る。
【0118】
同様に、後続する車速変更タイミングにおいて(11/12、12/12、1/12、2/12車速パルスが来ると)、表15のとおり、C設定部1546は、ギア3、4のカウント値Cをカウントアップする。
【表15】
【0119】
各車速変更タイミング(11/12、12/12、1/12、2/12車速パルス)のフローは上述した場合と同様であるので、車速変更タイミング(3/12車速パルス)のループのステップSt1216において、表16のとおり、ギア4のカウント値Cが6になったところまでスキップする。
【表16】
【0120】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア4(4段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップSt1218に進む。ステップSt1218において、変速比設定部1544は、ギア4の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表16のとおり、ギア4の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1219に進む。ステップSt1219において、表17のとおり、変速比設定部1544は、ギア4(4段)の変速比状態を「未定」から「仮判定」に変更する。
【表17】
ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0121】
i=5~9は、実施例1のi=4の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0122】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=9であるので、ステップSt1222に進む。ステップSt1222において、i設定部1545は、i=1にリセットした後、ステップSt1223に進む。ステップSt1223において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表17のとおり、ギア3、4の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1225に進む。ステップSt1225において、変速比設定部1544は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表17のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアはギア3、4の2個であるので、ステップSt1211に戻る。実施例2では、変速比状態は確定することはなく、ギア3、4は、ともに仮判定の状態である。その結果、隣接する変速比の両方(ギア3、4)を候補と仮判定することにより、誤判定のリスクを低減することができる。
【0123】
実施例3では、回転数比が実施例2の状態(R=0.55)からR=0.63に変化し、変化後最初の車速パルスが来たときに、ギア4(4段)は閾値から逸脱する(ステップSt1214においてNO)。ギア4(4段)は仮判定になっていたため(ステップSt1215においてYES)、ギア4(4段)は「除外」される(ステップSt1220)。このとき、ギア3(3段)はまだ「除外」されておらず、仮判定または確定になっている変速比はギア3(3段)のみである(ステップSt1223においてYES)。ギア3(3段)の上下のギア2及びギア4は「除外」されているため、ギア3(3段)は「確定」となる(ステップSt1225においてYES)。以下、フローチャートに沿って詳細に説明する。
【0124】
ステップSt1211において、回転数計算部1541は、第1センサ5からの車輪(後輪3)の回転数を示す信号を受信し、車速変更タイミング(4/12車速パルスが来たか)を検出する。車速変更タイミングにおいて(4/12車速パルスが来ると)、ステップSt1212において、回転数計算部1541は、第1計算部51からの信号及び第2計算部52からのモータ40の回転数Nm(rpm)を示す信号に基づいて、比Rを計算する。実施例3では、比R=0.63であるとする。
【0125】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=1であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=1の閾値は、0.736~0.900であり、比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア1の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表17のとおり、ギア1の変速比状態は「未定」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0126】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=2であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=2の閾値は、0.614~0.750であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表18のギア2のカウント値Cを0から1に変更する。
【表18】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア2(2段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。C<6であるのでステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア2(2段)の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表18のとおり、ギア2(2段)の変速比状態は、「除外」であるので、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0127】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=3であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=3の閾値は、0.532~0.650であり、比R=0.63は閾値範囲内にあるので、ステップSt1216に進む。ステップSt1216において、C設定部1546は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウントアップする。具体的には、表19のギア3のカウント値Cを15から16に変更する。
【表19】
ステップSt1217において、カウント閾値比較部1547は、ギア3(3段)のカウント値Cをカウント閾値(本実施例では6)と比較する。6≦CであるのでステップSt1218に進む。ステップSt1218において、変速比設定部1544は、ギア3の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表19のとおり、ギア3(3段)の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1219に進む。ステップSt1219において、ギア3(3段)の変速比状態はすでに「仮判定」であるので何もせず、ステップSt1221に進む。ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0128】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=4であるので、ステップSt1214に進む。ステップSt1214において、閾値比較部1543は、比R=0.63が閾値範囲内にあるかを確認する。表1より、i=4の閾値は、0.470~0.575であり、比R=0.63は閾値範囲内にはないので、ステップSt1215に進む。ステップSt1215において、変速比設定部1544は、ギア4(4段)の変速比状態が「仮判定」または「確定」かを確認する。表19のとおり、ギア4(4段)の変速比状態は、「仮判定」であるので、ステップSt1220に進む。ステップSt1220において、表20のとおり、変速比設定部1544は、ギア4(4段)の変速比状態を「仮判定」から「除外」に変更し、C設定部1546は、カウント値Cをリセット(ゼロに)する。
【表20】
ステップSt1221において、i設定部1545は、iをカウントアップして、ステップSt1213に戻る。
【0129】
i=5~9は、上述したi=1の場合と同様であるので、ステップSt1221において、i設定部1545がiをカウントアップして、i=10となったところまでスキップする。
【0130】
ステップSt1213において、i比較部1542は、iをNgearと比較する。i=9であるので、ステップSt1222に進む。ステップSt1222において、i設定部1545は、i=1にリセットした後、ステップSt1223に進む。ステップSt1223において、変速比設定部1544は、すべてのギア(段)の変速比状態のうち「仮判定」または「確定」の変速比状態が1個以上あるかを確認する。表20のとおり、ギア3の変速比状態は「仮判定」であるので、ステップSt1225に進む。ステップSt1225において、変速比設定部1544は、「仮判定」の変速比状態が1個であり、かつ、この上下の変速比状態が「除外」であるかを確認する。表20のとおり、「仮判定」の変速比状態であるギアはギア3の1個であり、かつ、ギア3の上のギア2の変速比状態は「除外」であり、ギア3の下のギア4の変速比状態も「除外」であるので、ステップSt1226に進む。ステップSt1226において、表21のとおり、変速比設定部1544は、ギア3(3段)の変速比状態を「仮判定」から「確定」に変更する。
【表21】
このように、実施例3では、現在の変速比がギア3であることを高精度に確定することができる。
【0131】
本実施形態では、図4のステップSt3,St9のそれぞれにおいて、制御装置50は、回転数の比R(実際の回転数の比)が、所定の期間(例えば、車輪(後輪3)が1回転する間の時間)、表1の閾値範囲内にあるとき、その変速比Gr(段)になっていると判定する。ただし、判定した後も、変速比状態判定処理は継続する。運転者が変速比Gr(段)を変更した場合、変更前に判定した変(段)速比は、式(1)を満たさなくなる。このとき、制御装置50は、変速比Grが変更されたことを検出する。
【0132】
実施例1~3をまとめると、判定部1556は、以下のとおりに構成される。第1計算部51からの車輪の回転数Nw(rpm)を示す信号及び第2計算部52からのモータ40の回転数Nm(rpm)を示す信号に基づいて、式(1)に従って回転数の比R(実際の回転数の比)を計算する(ステップSt1211及びS12)。すべての変速比Gr(ギア1~9)に関して、比Rが閾値範囲内にあるかを確認する(ステップSt1214)。すべての変速比Grのうちの1つまたは複数の変速比Grに関して、比Rが所定の回数(カウント閾値、本実施例では6)以上閾値範囲内にある場合(ステップSt1217)、1つまたは複数の変速比Gr(段)を仮判定する(ステップSt1219)。一旦仮判定された変速比Gr(段)に関して、比Rが閾値範囲内になくなった場合(ステップSt1215)、その変速比Gr(段)を除外する(ステップSt1220)。仮判定された1つの変速比Gr(段)に隣接する2つの変速比Gr(段)がともに除外された場合(ステップSt1225)、仮判定された1つの変速比Gr(段)を確定する(ステップSt1226)。このようにして、本実施形態の電動アシスト自転車200によれば、モータ40の回転数Nm(rpm)を検出するホールセンサ等を使用することにより、判定部1556によって、現在の段をより高精度に判定することができる。
【0133】
図11(a)は、電動アシスト自転車における、変速時の検出及びモータ制御を説明するためのシミュレーション図である。図11(a)において、縦軸は、ソフトウェア内のギア判定の状況を電圧出力により表し、横軸は時間を表す。「未連結」とは、ペダルの漕ぎ始めにアシスト出力が抑制されている場合や、ギア変更を検出してアシスト出力が抑制されている場合を表す。図11(a)に示すように、ギア9(9段)からギア8(8段)に変更され、上述した図10に示す変速比状態判定処理を経てギア8(8段)に確定するまでの時間taは、ギア8(8段)からギア7(7段)に変更され、ギア7(7段)に確定するまでの時間tbより長い。同様の大小関係が成立し、ギア2(2段)からギア1(1段)に変更され、ギア1(1段)に確定するまでの時間tcが最も短い。これは、重いギアの方が上下のギア間の歯数の差が小さいので、軽いギアと比べて、ギアが確定するまでにかかる時間が長いからである。例えば、表1に示すように、ギア9(9段)の歯数は11であり、ギア8(8段)の歯数は13であるため、ギア9、8の間の歯数の差は2である一方、ギア2(2段)の歯数は30であり、ギア1(1段)の歯数は36であるため、ギア2、1の間の歯数の差は6である。なお、ギア9(9段)からギア8(8段)に変更され、ギア8(8段)に確定するまでの時間は、ギア8(8段)からギア9(9段)に変更され、ギア9(9段)に確定するまでの時間と同一である。
【0134】
図11(b)は、図11(a)のうち、ギア9(9段)からギア8(8段)に変更され、図10に示す変速比状態判定処理を経てギア8(8段)に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。ギア9(9段)からギア8(8段)に変更された直後は、アシスト出力が抑制される。次に、ギア8(8段)が仮判定され、電圧出力は、ギア8(8段)の電圧レベルになる。次に、一旦ギア8と7が仮判定され、電圧出力は、ギア8(8段)とギア7(7段)の間の電圧レベルになる。次に、ギア7(7段)が除外され、仮判定されているのはギア8(8段)のみとなるので、電圧出力は、ギア8(8段)の電圧レベルになる。次に、ギア9(9段)も仮判定され、ギア8(8段)とギア9(9段)とが仮判定されているため、電圧出力は、ギア8(8段)とギア9(8段)との間の電圧レベルになる。最後に、ギア9(9段)が除外され、ギア8(8段)が確定し、電圧出力は、ギア8(8段)の電圧レベルになる。
【0135】
図11(c)は、図11(a)のうち、ギア2(2段)からギア1(1段)に変更され、図10に示す変速比状態判定処理を経てギア1(1段)に確定するまでの部分を拡大したシミュレーション図である。ギア2(2段)からギア1(1段)に変更された直後は、アシスト出力が抑制される。次に、ギア1(1段)が仮判定され、電圧出力は、ギア1(1段)の電圧レベルになる。上述したように、ギア2、1の間の歯数の差が大きいため、曖昧な判定にならない。
【0136】
以上のように、本実施形態の電動アシスト自転車200によれば、第1実施形態において説明した利点に加えて、図4に示すステップSt3において、現在の段をより高精度に判定することができる。
【0137】
以上、本発明について上記第1実施形態及び上記第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0138】
例えば、停止している制御装置50が起動してから、ある変速比Grに対応するペダル4のアシストが開始されるまで、ペダル4のアシストの大きさを、第1実施形態及び第2実施形態で説明した制御に基づいて制限するように電動アシスト自転車を構成してもよい。
【0139】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、制御装置50が、N回以上連続して第1信号S1(カウンタ入力信号)が入力したときに「現在の段の変速比に入った」と判定して、現在の段に対応する通常出力モードを実行する例を説明した。しかし、制御装置50に第1信号S1が始めて(1回)入力したときを「現在の段に入った」と判定して、通常出力モードを実行するようにしても構わない。すなわち、この場合、例えば、モード決定部57にカウンタ57Cを設ける必要がなく、ステップSt7を省略することができ、モード決定フローMFを繰り返す必要がない。
【0140】
以上、本発明について上記第1実施形態及び上記第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の電動アシスト自転車を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0141】
1,200…電動アシスト自転車、4…ペダル、10…減速機、50…制御装置、Gr…変速比
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】