(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011139
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】同種異系の細胞療法における抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20250116BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20250116BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250116BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250116BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250116BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250116BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250116BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20250116BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250116BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250116BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K38/12
A61K35/17
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K47/68
C07K16/28
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024168309
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021503594の分割
【原出願日】2019-07-23
(31)【優先権主張番号】62/702,296
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/773,047
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524146413
【氏名又は名称】ハイデルベルク ファーマ リサーチ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ボイタノ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クック
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA24
4C084BA25
4C084BA42
4C084CA05
4C084DA32
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA06
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C085AA02
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA06
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キメラ抗原レセプター(CAR)を発現する免疫細胞の受容を促進するために、CAR療法と共に使用され得るコンディショニング・レジメンを提供する。
【解決手段】本発明は、CAR免疫療法を受けているヒト患者において、CARを発現する免疫細胞の受容を促進するために、CD5+細胞を減少させる方法を提供する。抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、自己又は同種異系のCARを発現する免疫細胞を受けているヒト患者に、前記CARを発現する免疫細胞をヒト患者が受け入れるように、コンディショニング・レジメンとして投与する。本発明の組成物及び方法は、自己免疫疾患及びがんを含む種々の病態を治療するために、CAR療法と併用して使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん又は自己免疫疾患を有するヒト対象において、キメラ抗原レセプター(chimeric an
tigen receptor)(CAR)を発現する免疫細胞の受容を促進する方法、ここで、前記方法は、
以下を含む、
(a) 抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、がん又は自己免疫疾患を有するヒト対
象に投与すること、ここで、前記抗-CD5 ADCは、リンカーを介して細胞毒素にコンジュゲ
ートした抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントを含む;及び、
(b) CARを発現する免疫細胞の治療有効量を前記ヒト対象に投与すること、ここで、
前記CARは、腫瘍抗原又は自己免疫疾患に関連する抗原に結合する細胞外ドメイン、膜貫
通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法、ここで、前記ヒト対象は、ステップ(b)の前、それと同時に、
又はそれの後に、アレムツズマブを投与されない。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法、ここで、前記ヒト対象は、ステップ(b)の前、それと同
時に、又はそれの後に、リンパ球除去化学療法剤を投与されない。
【請求項4】
請求項3に記載の方法、ここで、前記リンパ球除去化学療法剤は、フルダラビン、シク
ロホスファミド、ベンダムスチン、及び/又はペントスタチンである。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の方法、ここで、ステップ(b)の前に抗-CD2 ADCを
前記ヒト対象に投与することを更に含む。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の方法、ここで、前記方法は、ステップ(b)の約12
時間から約21日前に、抗-CD5 ADCを前記ヒト対象に投与することを含む。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の方法、ここで、前記免疫細胞は、同種異系細胞又
は自己細胞である。
【請求項8】
請求項7に記載の方法、ここで、前記同種異系細胞は、同種異系T細胞又は同種異系NK
細胞である。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の方法、ここで、前記CARを発現する同種異系細胞
の治療有効量は、約1×104から約1.0×108細胞/kgである。
【請求項10】
腫瘍を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする対象に以下を投与するこ
とを含む方法、
(i) 抗-CD5 ADC、ここで、前記抗-CD5 ADCは、リンカーを介して細胞毒素にコンジュ
ゲートした抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、及び
(ii) 約1×106から約1×108個の治療有効量の操作したCAR T細胞/kgを患者に投与す
ること。
【請求項11】
請求項10に記載の方法、ここで、前記操作したCAR T細胞の治療有効量は、約1×106
又は約2×106 細胞/kgである。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の方法、ここで、前記抗-CD5 ADCを、単回用量又
は複数回用量として患者に投与する。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の方法、ここで、前記抗-CD5抗体又はその抗原結
合フラグメントは、それぞれ、配列番号(SEQ ID NO) 3、4、及び5に記載のアミノ酸配列
を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域を含む、並びに、それぞれ、配列番号
(SEQ ID NO)6、7、及び8に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖
可変領域を含む。
【請求項14】
請求項13に記載の方法、ここで、前記抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントは、
キメラ化又はヒト化されている。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載の方法、ここで、前記抗-CD5抗体又はその抗原結
合フラグメントは、IgG1アイソタイプ又はIgG4アイソタイプである。
【請求項16】
請求項1から15に記載の方法、ここで、前記細胞毒素は、抗有糸分裂薬剤又はRNAポ
リメラーゼ阻害剤である。
【請求項17】
請求項16に記載の方法、ここで、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマトキシンであ
る。
【請求項18】
請求項16に記載の方法、ここで、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマニチンである
。
【請求項19】
請求項18に記載の方法、ここで、前記アマニチンが、α-アマニチン、β-アマニチン
、γ-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、アマヌリン
酸、及びプロアマヌリンからなる群から選択される。
【請求項20】
請求項17に記載の方法、ここで、アマトキシンにコンジュゲートした抗-CD5抗体又は
その抗原結合フラグメントは、式Ab-Z-L-Amによって表される、ここで、Abは抗体又はそ
の抗原結合フラグメントである、Lはリンカーである、Zは化学的な部分構造である、及び
Amは式(III)によって表されるアマトキシンである、
【化1】
ここで、R
1は、H、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2は、H、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、任意
選択的に置換された5員ヘテロシクロルアルキル基を形成する;
R
3は、H、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9は、H、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは、-L-Zである;
R
Dは、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロ
アルキル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテ
ロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6
ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘ
テロシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘ
テロアリールである;
Lは、リンカーである;及び、
Zは、L上に存在する反応性置換基と、抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメント内に
存在する反応性置換基との間のカップリング反応から形成される化学的な部分構造である
、ここで、Amは正確に1つのR
c置換基を含む。
【請求項21】
請求項20に記載の方法、ここで、前記リンカー(L)は、任意選択的に置換されたC1-C6
アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2-C6
アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C6アルキニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換さ
れたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択的に置換
されたアリール、任意選択的に置換されたヘテロアリールである;又はジペプチドを含む
;又は-(CH2)mO)n(CH2)m-である、ここでm及びnは、それぞれ個別に1、2、3、4、5、6、7
、8、9、及び10から選択されたものである。
【請求項22】
請求項16に記載の方法、ここで、前記抗有糸分裂薬剤は、メイタンシン又はアウリス
タチンである。
【請求項23】
請求項22に記載の方法、ここで、前記アウリスタチンは、モノメチル・アウリスタチ
ンF(MMAF)又はモノメチル・アウリスタチンE(MMAE)である。
【請求項24】
請求項16に記載の方法、ここで、前記抗有糸分裂薬剤は、ピロロベンゾジアゼピン(P
BD)又はカリケアマイシンである。
【請求項25】
請求項1から24の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ADCのリンカーは、N-ベー
タ-マレイミドプロピオニル-Val-Ala-パラ-アミノベンジル(BMP-Val-Ala-PAB)である。
【請求項26】
請求項1又は10に記載の方法、ここで、前記ADCは、以下の構造の何れか1つによって
表される:
【化2】
。
【請求項27】
請求項1又は10に記載の方法、ここで、前記ADCは以下によって表される:
【化3】
又は
【化4】
。
【請求項28】
請求項1から27の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ADCは、3日以下の血清半減
期を有する。
【請求項29】
請求項1から28の何れか一項に記載の方法、ここで、前記CARの細胞外ドメインは、s
cFv抗体又は単鎖T細胞レセプター(scTCR)を含む。
【請求項30】
請求項1から28の何れか一項に記載の方法、ここで、前記細胞外ドメインは、非-免
疫グロブリン・スキャフォールド・タンパク質(scaffold protein)を含む。
【請求項31】
請求項1から30の何れか一項に記載の方法、ここで、前記腫瘍抗原は、CD19、CD22、
CD30、CD7、BCMA、CD137、CD22、CD20、AFP、GPC3、MUC1、メソテリン、CD38、PD1、EGFR
(例えば、EGFRvIII)、MG7、BCMA、TACI、CEA、PSCA、CEA、HER2、MUC1、CD33、ROR2、NKR
-2、PSCA、CD28、TAA、NKG2D、又はCD123からなる群より選択される。
【請求項32】
請求項1から30の何れか一項に記載の方法、ここで、前記CARの細胞内ドメインは、C
D28細胞内シグナリング・ドメイン、CD3ゼータ細胞内シグナリング・ドメイン、OX40細胞
内シグナリング・ドメイン、及び/又はCD137(4-1BB)細胞内シグナリング・ドメインを含
む。
【請求項33】
請求項1から32の何れか一項に記載の方法、ここで、前記CARの細胞内ドメインがCD3
ゼータ細胞内シグナリング・ドメインを含む。
【請求項34】
請求項1から33の何れか一項に記載の方法、ここで、前記がんを有するヒト対象は、
白血病、成人進行がん、膵臓がん、切除不能な膵臓がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸
がん、卵巣がん、トリプル-ネガティブ乳がん、造血系/リンパ系がん、大腸がん肝臓転
移、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、B細胞リンパ腫、再発性又は難治性B細胞リンパ腫、
濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、再発性又は難治性び
まん性大細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、再発性縦隔
、難治性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキン・リンパ腫、非
-ホジキン・リンパ腫、再発又は難治性非-ホジキンリンパ腫、難治性進行性非-ホジキン
リンパ腫、B細胞性非-ホジキン・リンパ腫、難治性非-ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん
腫(colorectal carcinoma)、胃がん(gastric carcinoma)、膵がん(pancreatic carcinoma
)、トリプルネガティブ浸潤性乳がん(triple-negative invasive breast carcinoma)、腎
細胞がん(renal cell carcinoma)、肺扁平上皮がん(lung squamous cell carcinoma)、肝
細胞がん(hepatocellularcarcinoma)、尿路上皮がん(urothelial carcinoma)、白血病、B
細胞性白血病、B細胞性急性リンパ球性白血病(B-cell acute lymphocytic leukemia)、
B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia)、成人急性リ
ンパ芽球性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病(B-cell prolymphocytic leukemia)、
小児急性リンパ芽球性白血病(childhood acute lymphoblastic leukemia)、難治性小児急
性リンパ芽球性白血病(refractory childhood acute lymphoblastic leukemia)、急性白
血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病(prolympho
cytic leukemia)、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、再発性プラズマ細胞性骨
髄腫(recurrent plasma cell myeloma)、難治性プラズマ細胞性骨髄腫(refractory plasm
a cell myeloma)、多発性骨髄腫、再発性又は難治性多発性骨髄腫、骨の多発性骨髄腫、
脳の悪性神経膠腫(malignant glioma of brain)、骨髄異形成症候群、EGFR陽性結腸直腸
がん、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、新生物、芽球性形質細胞様樹状細胞腫
瘍(blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)、肝臓転移、固形腫瘍、進行性固形
腫瘍(advanced solid tumor)、メソテリン陽性腫瘍(mesothelin positive tumor)、血液
悪性腫瘍、及びその他の進行した悪性腫瘍、からなる群から選択されるがんを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年7月23日に出願された米国仮特許出願第62/702296号及び2018年11月29
日に出願された米国仮特許出願第62/773047号に対する優先権の利益を主張する。前記出
願の内容は、本明細書に参照により取り込まれる。
【0002】
[配列一覧]
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出した配列リストを含み、その全体が本明
細書に参照により取り込まれる。2019年7月19日に作成された前記ASCIIのコピーは、M103
034_2060WO_SL.txtという名前で、サイズが85,119 バイトになる。
【0003】
[技術分野]
本発明は、広く、抗-CD5抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を使用することによって、ヒト
対象においてキメラ抗原レセプター(chimeric antigen receptor)(CAR)を発現する免疫細
胞の受容を促進するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
キメラ抗原レセプター(Chimeric antigen receptor)(CAR)療法は、身体自身の免疫シス
テムを利用して、がんなどある特定の疾患に関連する特異的抗原を発現する細胞を破壊す
る免疫学的治療法である。例えば、がんにおいて、CAR療法は、がんを攻撃する患者の免
疫システムの力を得る、及び強化する。過去数年間をかけて、この免疫療法は、有望かつ
革命的な治療法として登場した。CAR療法は、T細胞などの免疫細胞に基づいており、この
免疫細胞は、細胞外抗原結合ドメイン(scFvなど)と、前記細胞に表面レセプターからシ
グナル伝達をする細胞質活性シグナリング及び「共刺激」ドメインとが結合した、一般的
に膜貫通融合タンパク質であるCARを発現する。従って、T-細胞のような免疫細胞がCARを
発現すると、前記免疫細胞はCARの抗原結合ドメインがターゲットとする抗原(例えば、腫
瘍関連抗原)を発現する細胞を認識し、それを殺すことができる(Geyer and Brentjens (2
016) Cytotherapy 18(11): 1393-1409)。
【0005】
CAR療法は信じられないほど強力な技術であるが、重篤なリスク及び有害な副作用を伴
う(Kay and Turtle (2017) Drugs 77(3):237-245; Hill et al. (2018) Blood 131:121-1
30)。リンパ球除去化学療法は、CAR療法を受ける患者がCAR発現細胞を拒絶することを最
小限に抑えるために、CAR療法と併用するコンディショニング治療として一般的に用いら
れている(Wei et al. (2017) Exp Hematol Oncol. 6: 10)。6: 10)。例えば、リンパ球除
去剤フルダラビンとシクロホスファミドを併用すると、レシピエント(recipient)患者に
おいてCAR-T細胞が維持される時間が改善された(Turtle et al. (2016) J Clinic Invest
126(6):2123; US 20170368101も参照)。コンディショニング療法は、CAR-T細胞の有効性
を改善したが、リンパ球除去化学療法はしばしば重篤な負の副作用を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CARを発現する免疫細胞の受容を促進するために、CAR療法と共に使用され得
るコンディショニング・レジメンを提供する。本明細書中に記載する方法は、自己CARを
発現する免疫細胞又は同種異系CARを発現する免疫細胞の何れかの受容を促進するために
使用され得る。これまで、このような細胞の受容は、リンパ球除去化学療法を用いて実現
されてきた。レシピエント(recipient)患者におけるCARを発現する細胞の受容を促進する
改善した方法を、本明細書に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
がん又は自己免疫疾患を有するヒト対象において、キメラ抗原レセプター(chimeric an
tigen receptor)(CAR)を発現する免疫細胞の受容を促進する方法が本発明に含まれる。前
記方法は抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、がん又は自己免疫疾患を有するヒト対
象に投与することを含む、ここで、抗-CD5 ADCは、リンカーを介して細胞毒素にコンジュ
ゲートした抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントを含む;及びCARを発現する免疫細
胞の治療有効量を前記ヒト対象に投与することを含む、ここで、前記CARは、腫瘍抗原又
は自己免疫疾患に関連する抗原に結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内
ドメインを含む。
【0008】
ある実施形態では、前記ヒト対象は、CARを発現する免疫細胞を投与する前、それと同
時に、又はそれの後に、アレムツズマブを投与されない。別の実施形態では、前記ヒト対
象は、CARを発現する免疫細胞を投与する前、それと同時に、又はそれの後に、リンパ球
除去化学療法剤を投与されない。ある実施形態では、前記リンパ球除去化学療法剤はフル
ダラビン、シクロホスファミド、ベンダムスチン及び/又はペントスタチンである。
【0009】
ある実施形態では、前記方法は、CARを発現する免疫細胞を投与する前に、抗-CD5 ADC
を、前記ヒト対象に投与することを、更に含む。
【0010】
ある実施形態では、前記方法は、CARを発現する免疫細胞を投与する約12時間~約21日
前に、抗-CD5 ADCを前記ヒト対象に投与することを、更に含む。
【0011】
ある実施形態では、前記免疫細胞は、同種異系細胞又は自己細胞である。ある実施形態
では、前記同種異系細胞は、同種異系T細胞又は同種異系NK細胞である。
【0012】
ある特定の実施形態では、前記CARを発現する同種異系細胞の治療有効量は、約1×104
~約1.0×108細胞/kgである。
【0013】
本発明は、更に、腫瘍を有する患者を治療する方法を特徴とする、前記方法は、抗-CD5
ADCを、それを必要とする患者に投与すること(ここで、抗-CD5 ADCは、リンカーを介し
て細胞毒素にコンジュゲートした抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントを含む)、及
び約1×106~約1×108個の治療有効量の操作したCAR T細胞/kgを患者に投与すること、
を含む。ある実施形態では、操作したCAR T細胞の治療有効量は、約1×106 又は約2×106
細胞/kgである。
【0014】
本発明のある特定の実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、単回用量又は複数回用量として
、前記患者に投与する。
【0015】
ある実施形態では、前記抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列
番号(SEQ ID NO): 3、4、及び5に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を含
む重鎖可変領域を含む、並びに、それぞれ、配列番号(SEQ ID NO): 6、7、及び8に記載の
アミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
ある実施形態では、前記抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントは、キメラ化又はヒ
ト化されている。
【0017】
別の実施形態では、前記抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1アイソタイ
プ又はIgG4アイソタイプである。
【0018】
更に別の実施形態では、前記細胞毒素は、抗有糸分裂薬剤又はRNAポリメラーゼ阻害剤
である。
【0019】
他の実施形態では、前記細胞毒素は、メイタンシン、カリケアマイシン、ピロロベンゾ
ジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、又はアウリスタチンである。ある実施形態で
は、前記アウリスタチンは、モノメチル・アウリスタチンF(MMAF)又はモノメチル・アウ
リスタチンE(MMAE)である。ある実施形態では、前記細胞毒素は、メイタンシンである。
ある実施形態では、前記細胞毒素は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。例えば、い
くつかの実施形態では、前記PBDは、テシリン又はタリリンから選択することがある。い
くつかの実施形態では、前記細胞毒素は、カリケアマイシンであってもよい。例えば、い
くつかの実施形態では、前記カリケアマイシンはオゾガミシンであってもよい。
【0020】
ある実施形態では、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマトキシンである。別の実施形
態では、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマニチン(例えば、α-アマニチン、β-アマニ
チン、γ-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、アマヌ
リン酸、又はプロアマヌリン)である。
【0021】
ある実施形態では、前記抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、式Ab-Z-L-Amによって表さ
れる、ここで、AbはCD5に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである、Lはリンカ
ーである、Zは化学的な部分構造である、Amはアマトキシンである。ある特定の実施形態
では、リンカー-アマトキシン・コンジュゲートAm-L-Zは、式(III)で表される、
【化1】
ここで、R
1は、H、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2は、H、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合する酸素原子と一緒になって、任意選択
的に置換された5員ヘテロシクロアルキル基を形成する;
R
3は、H、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9は、H、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは-L-Zである;
R
Dは、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロ
アルキル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテ
ロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6
ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘ
テロシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘ
テロアリールである;
Lは、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロ
アルキル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテ
ロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6
ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘ
テロシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、若しくは任意選択的に置換され
たヘテロアリール、である;又はジペプチドを含む;又は-((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-を含む、こ
こで、m及びnは、それぞれ独立して、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 及び 10から選択され
る;並びに、
Zは、L上に存在する反応性置換基と、抗-CD5抗体、又はその抗原結合フラグメント内
に存在する反応性置換基との間のカップリング反応から形成される化学的な部分構造であ
る。
【0022】
この実施形態では、前記リンカー-アマトキシン・コンジュゲートAm-L-Zは、式(III)で
表される
【化2】
ここで、R
1は、H、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2は、H、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合する酸素原子と一緒になって、任意選択
的に置換された5員ヘテロシクロアルキル基を形成する;
R
3は、H、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9は、H、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは-L-Zである;
R
Dは、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロ
アルキル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテ
ロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6
ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘ
テロシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘ
テロアリールである;
Lはリンカーである;並びに、
Zは、L上に存在する反応性置換基と、抗-CD5抗体、又はその抗原結合フラグメント内
に存在する反応性置換基との間のカップリング反応から形成される化学的な部分構造であ
る。
【0023】
式(III)のある実施形態では、Lは、ペプチドを含むリンカーである。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、一種以上のジペプチド、p-アミノベンジル
(PAB)基、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロ
アルキル、任意選択的に置換されたC2-C6アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテ
ロアルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6アルキニル、任意選択的に置換されたC2-C6
ヘテロアルキニル、任意選択的に置換されたC3-C6シクロアルキル、任意選択的に置換さ
れたヘテロシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換された
ヘテロアリール、溶解度を高める基、-(C=O)-、-(CH2CH2O)p-基(ここで、pは1-6からの
整数である)、((CH2)mO)n(CH2)m-(ここで、n及びmは、それぞれ独立して、1、2、3、4
、5、6、7、8、9及び10から選択される);又はそれらの組み合わせ、を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-基及びヘテロアリール
基を含む、ここで、前記ヘテロアリール基は、トリアゾールである。いくつかの実施形態
では、((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-基及びトリアゾールは、一緒になって以下を含む
【化3】
ここで、nは1~10である、及び波線は、更なるリンカー成分、化学的な部分構造Z、又
はアマトキシンへの結合の位置を示す。
【0026】
いくつかの実施形態では、Amは、丁度1個のRC置換基を含む。
【0027】
ある実施形態では、前記ADCのリンカーは、N-ベータ-マレイミドプロピオニル-Val-Ala
-パラアミノベンジル(BMP-Val-Ala-PAB)である。いくつかの実施形態では、前記リンカー
L及び前記化学的な部分構造Zは、L-Zとして一緒になって、以下である、
【化4】
ここで、Sは、CD5に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント内に存在する反応性置
換基を表す硫黄原子である(例えば、システイン残基の-SH基に由来する)。
【0028】
いくつかの実施形態では、L-Zは、
【化5】
である。
【0029】
ある実施形態では、前記ADCは、以下の構造の何れか一つによって表される:
【化6】
【0030】
ある実施形態では、前記ADCは、以下の構造の何れか一つによって表される:
【化7】
又は
【化8】
。
【0031】
ある実施形態では、前記ADCは、3日以下の血清半減期を有する。
【0032】
ある実施形態では、前記CARの細胞外ドメインは、scFv抗体である。ある実施形態では
、前記CARの細胞外ドメインは、単鎖T細胞レセプター(scTCR)である。ある実施形態では
、前記CARの細胞外ドメインは、非-免疫グロブリン・スキャフォールド・タンパク質(sca
ffold protein)を含む。
【0033】
ある実施形態では、前記CARの細胞外ドメインは、CD19、CD22、CD30、CD7、BCMA、CD13
7、CD22、CD20、AFP、GPC3、MUC1、メソテリン、CD38、PD1、EGFR(例えば、EGFRvIII)、M
G7、BCMA、TACI、CEA、PSCA、CEA、HER2、MUC1、CD33、ROR2、NKR-2、PSCA、CD28、TAA、
NKG2D、又はCD123である腫瘍抗原に結合する。
【0034】
ある特定の実施形態では、前記CARの細胞内ドメインは、CD28細胞内シグナリング・ド
メイン、CD3ゼータ細胞内シグナリング・ドメイン、OX40細胞内シグナリング・ドメイン
、及び/又はCD137(4-1BB)細胞内シグナリング・ドメインを含む。ある実施形態では、前
記CARの細胞内ドメインは、CD3ゼータ細胞内シグナリング・ドメインを含む。
【0035】
本明細書に開示する方法及び組成物は、がんを有するヒト対象を治療するために使用す
ることがある、ここで、前記がんとしては、限定されるものではないが、白血病、成人進
行がん、膵臓がん、切除不能な膵臓がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸がん、卵巣がん
、トリプル-ネガティブ乳がん、造血系/リンパ系がん、大腸がん肝臓転移、小細胞肺が
ん、非小細胞肺がん、B細胞リンパ腫、再発性又は難治性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫
、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、再発性又は難治性びまん性大細胞リ
ンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、再発性縦隔、難治性縦隔大
細胞型B細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキン・リンパ腫、非-ホジキン・リ
ンパ腫、再発又は難治性非-ホジキンリンパ腫、難治性進行性非-ホジキンリンパ腫、B細
胞性非-ホジキン・リンパ腫、難治性非-ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん腫(colorectal
carcinoma)、胃がん(gastric carcinoma)、膵がん(pancreatic carcinoma)、トリプルネ
ガティブ浸潤性乳がん(triple-negative invasive breast carcinoma)、腎細胞がん(rena
l cell carcinoma)、肺扁平上皮がん(lung squamous cell carcinoma)、肝細胞がん(hepa
tocellularcarcinoma)、尿路上皮がん(urothelial carcinoma)、白血病、B細胞性白血病
、B細胞性急性リンパ球性白血病(B-cell acute lymphocytic leukemia)、B細胞性急性
リンパ芽球性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia)、成人急性リンパ芽球性
白血病、B細胞性前リンパ球性白血病(B-cell prolymphocytic leukemia)、小児急性リ
ンパ芽球性白血病(childhood acute lymphoblastic leukemia)、難治性小児急性リンパ芽
球性白血病(refractory childhood acute lymphoblastic leukemia)、急性白血病、急性
リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病(prolymphocytic leuk
emia)、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、再発性プラズマ細胞性骨髄腫(recurr
ent plasma cell myeloma)、難治性プラズマ細胞性骨髄腫(refractory plasma cell myel
oma)、多発性骨髄腫、再発性又は難治性多発性骨髄腫、骨の多発性骨髄腫、脳の悪性神経
膠腫(malignant glioma of brain)、骨髄異形成症候群、EGFR陽性結腸直腸がん、多形性
膠芽腫(glioblastoma multiforme)、新生物、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(blastic pl
asmacytoid dendritic cell neoplasm)、肝臓転移、固形腫瘍、進行性固形腫瘍(advanced
solid tumor)、メソテリン陽性腫瘍(mesothelin positive tumor)、血液悪性腫瘍、及び
その他の進行した悪性腫瘍、が挙げられる。
【0036】
上記の態様の何れかのある特定の実施形態では、前記抗-CD5抗体又はその抗原結合フラ
グメントは、以下の表1A及び1Bに記載するように、CDRの組合せ(即ち、CDR-H1、CDR-
H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3領域)を含む。ある特定の実施形態では、抗-CD
5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、表1A及び1Bに記載するような重鎖可変領
域及び軽鎖可変領域の組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、示した抗-CD5抗体又はネガティブ・コントロール(即ち、mIgG1)の各々をMOLT-4細胞(即ち、ヒトTリンパ芽球細胞株)と共にインキュベートし、続いて蛍光色素がコンジュゲートした抗-IgG抗体とインキュベートした、in vitro細胞株結合アッセイの結果をグラフで示す。シグナルをフロー・サイトメトリーにより検出し、抗-CD5抗体濃度(x軸)を横軸とした、蛍光強度の幾何平均(y軸)として示す。
【
図2】
図2は、示した抗-CD5抗体(即ち、「CD5 5D7」)又はネガティブ・コントロール(即ち、hIgG1)を初代ヒトT-細胞と共にインキュベートし、続いて蛍光色素がコンジュゲートした抗-IgG抗体とインキュベートした、in vitro初代細胞結合アッセイの結果をグラフで示す。シグナルをフロー・サイトメトリーにより検出し、抗-CD5抗体の濃度(x軸) を横軸とした、蛍光強度の幾何平均(y軸)として示す。
【
図3】
図3A及び3Bは、薬物対抗体比(DAR)の平均が6で (
図3A)、鎖間コンジュゲートしたアマニチン、又はDARが2で(
図3B)、部位特異的にコンジュゲートしたアマニチン、を有する抗-CD5-アマニチンADC(即ち、5D7-AM又は「CD5 5D7 AM」)を含むin vitro T細胞傷害アッセイの結果をグラフで示す。
図3Aでは、抗-CD5 ADC T-細胞傷害解析を、非-コンジュゲートの抗-CD5 5D7抗体(即ち、「CD5 5D7 NAKED」)と比較して示す。
図3Bでは、抗-CD5 ADC T-細胞傷害解析を、前記抗体の半減期を減少させる(即ち、「CD5 Fast 1/2 Life AM」)H435A変異(即ち、CD5 5D7 D265C.H435A AM)を有する抗-CD5 5D7抗体と比較して示す。本結果は、フロー・サイトメトリーを用いて評価した、ADC(CD5 5D7 AM、CD5 5D7 D265C.H435A AM)又は非-コンジュゲートの抗体(CD5 5D7 NAKED)の濃度(x軸)を横軸とした、生存可能なT-細胞の数(y軸)として示す。
【
図4】
図4A~4Bは、鎖間DARが6である抗-CD5 5D7アマニチンADC(即ち、CD5 5D7-AM)の0.3 mg/kg、1 mg/kg、又は3 mg/kgを単回投与した7日後の、ヒト化NSGマウスの末梢血(
図4A)及び骨髄(
図4B)における、T-細胞(CD3+細胞; y軸)の絶対濃度を示す、in vivo T-細胞減少アッセイの結果をグラフで示したものである。比較のために、
図4A-4Bはまた、示したコントロール(即ち、25 mg/kgの抗-CD5抗体;3 mg/kgのhIgG1-アマニチンADC(即ち、hIgG1-AM)、25 mg/kgのhIgG1、又はPBS)でヒト化NSGマウスを処置した後の、T-細胞が減少したレベルを示す。
【
図5】
図5A~5Cは、部位特異的DARが2である抗-CD5 5D7-アマニチンADC(即ち、CD5 5D7-AM)の1 mg/kg又は3 mg/kgを単回投与した7日後の、ヒト化NSGマウスの末梢血(
図5A)、骨髄(
図5B)、及び胸腺(
図5C)における、T-細胞(CD3+細胞; y軸)の絶対レベルを示す、in vivo T-細胞減少アッセイの結果をグラフで示したものである。比較のために、
図5A-5Cはまた、3mg/kgの非-コンジュゲートの抗-CD5抗体(即ち、CD5 5D7)又は示したコントロール(即ち、3 mg/kgのhIgG1-アマニチン-ADC(「hIgG1-AM」)又はPBS)でヒト化NSGマウスを処置した後の、T-細胞が減少したレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[詳細な説明]
本発明は、CAR療法を受けている患者に抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を投与する
ことにより、CAR療法を受けているヒト対象において、キメラ抗原レセプター(chimeric a
ntigen receptor)(CAR)を発現する免疫細胞(自己又は同種異系)の受容を促進する方法を
提供する。本明細書中に開示する方法を、CARを発現する免疫細胞の拒絶を減少させるた
めのコンディショニング療法として一般的に使用するリンパ球除去化学療法に依存するこ
となく(又は代わりにその使用を減らして)、自己又は同種異系免疫細胞(例えば、T 細胞)
の受容を改善するために使用することがある。
【0039】
1.定義
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、記載される値より5%高い値又は低い値を
いう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「同種異系」は、移植の文脈において使用する場合
、ドナー(donor)から同じ種のレシピエント(recipient)に移植する細胞(又は組織若しく
は臓器)を定義するために使用する、ここで、前記ドナー(donor)及び前記レシピエント(r
ecipient)は同じ対象ではない。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「自己」は、ドナー(donor)及びレシピエント(reci
pient)が同じ対象である細胞又はグラフトを指す。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「異種」は、ドナー(donor)及びレシピエント(reci
pient)の種が異なっている細胞を指す。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫細胞」は、限定されるものではないが、造血
起源であり、及び免疫反応において役割を果たす細胞を含むことが意図される。免疫細胞
としては、限定されるものではないが、T細胞及びナチュラル・キラー(NK)細胞が挙げら
れる。ナチュラル・キラー細胞は、当技術分野で周知である。ある実施形態では、ナチュ
ラル・キラー細胞として、NK-92細胞などの細胞株が挙げられる。NK細胞株の更なる例と
しては、NKG、YT、NK-YS、HANK-1、YTS細胞、及びNKL細胞が挙げられる。免疫細胞は、同
種異系又は自己であることがある。
【0044】
「操作した細胞」は、遺伝子、DNA若しくはRNA配列、又はタンパク質若しくはポリぺポ
リペプチドの付加又は改変によって、改変した、形質転換した、又は操作した任意の生物
の任意の細胞を意味する。本開示の単離した細胞、宿主細胞、及び遺伝子操作した細胞と
しては、CARをコードするDNA又はRNA配列を含み、細胞表層にCARを発現するNK細胞及びT
細胞などの、単離された免疫細胞が挙げられる。単離した宿主細胞及び操作した細胞を、
例えば、NK細胞活性又はTリンパ球活性を増強する、がんを治療する、及び自己免疫疾患
を治療するために使用することがある。ある実施形態では、前記操作した細胞として、免
疫細胞、例えば、T-細胞又はナチュラル・キラー(NK細胞)、が挙げられる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する、又は
特定の抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子をいう。抗体としては、限定さ
れるものではないが、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポ
リクローナル抗体、マルチスペシフィック抗体(multispecific antibody)(例えば、バイ
スペシフィック抗体(bispecific antibody))、及び抗体フラグメントが挙げられる。
【0046】
一般的に、抗体は、抗原結合領域を含む重鎖及び軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域
(本明細書では、HCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域から構成される。前記重鎖定常領域
は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明
細書では、LCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域から構成される。前記軽鎖定常領域は、1
つのドメイン(CL)から構成される。前記VH及びVL領域は、超可変性の領域(相補性決定
領域(CDR)と呼ばれる)に更に細分化することができ、より保存された領域(骨格領域(FR
)と呼ばれる)が点在する。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末
端からカルボキシル末端に向かって、以下の順序で配列する:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR
3、CDR3、FR4。前記重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む
。前記抗体の定常領域は、前記免疫グロブリンが宿主の組織又は因子(例えば、免疫シス
テムの種々の細胞(例、エフェクター細胞)及び古典的補体システムの第一成分(C1q)等)
に結合することを、仲立ちすることがある。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」は、ターゲット抗原に特
異的に結合する作用能を保持する抗体の1つ以上の部分をいう。抗体の抗原結合機能を、
全長抗体のフラグメントによって果たすことができる。前記抗体フラグメントは、例えば
、Fab、F(ab')2、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ナノボディ、アプ
タマー、又はドメイン抗体であることがある。抗体の「抗原結合フラグメント」という用
語に包含される結合フラグメントの例としては、限定されるものではないが、以下が挙げ
られる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(
ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した、2つのFabフ
ラグメントを含む二価フラグメント;(iii) VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント
;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v) VH及びVLドメ
インを含むdAb;(vi) VHドメインからなるdAbフラグメント(例えば、Ward et al., Natur
e 341:544-546、1989を参照のこと);(vii) VH又はVLドメインからなるdAb;(viii)単離
した相補性決定領域(CDR);並びに(ix)合成リンカーによって任意選択的に連結すること
がある2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)の単離したCDRの組み合わせ。更
に、Fvフラグメントの2つのドメイン(VL及びVH)は、別々の遺伝子によってコードされ
ているが、それらを、組換え方法を使用することで、リンカーによって連結して、単一タ
ンパク質鎖(VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する)とすることができる(単鎖F
v(scFv)として公知である;例えば、Bird et al.,Science 242:423-426, 1988 及びHusto
n et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988を参照のこと)。これらの抗
体フラグメントを、当業者に公知の従来の技術を使用して入手することができ、及び前記
フラグメントを、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングするこ
とができる。抗原結合フラグメントを、組換えDNA技術、インタクトな免疫グロブリンの
酵素的な又は化学的な切断によって、又は、ある場合には、当該技術分野で公知の化学的
ペプチド合成手順によって、産生することができる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「インタクト」又は「全長」抗体は、ジスルフィド結合
によって相互接続された2つの重(H)鎖ポリペプチド及び2つの軽(L)鎖ポリペプチドを有す
る抗体を指す。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「抗-CD5抗体」又は「CD5に結合する抗体」又は「抗-CD
5 ADC」又は「CD5に結合するADC」という用語は、CD5がT細胞などの細胞の細胞表面上に
見出される場合、ヒトCD5に特異的に結合する抗体又はADCを指す。抗-CD5抗体(又は抗-CD
5 ADC)が結合するヒトCD5のアミノ酸配列を、配列番号(SEQ ID NO): 20として、以下に記
載する。
【0050】
用語「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、抗体(又はADC)が、タンパ
ク質一般というよりも、特異的なタンパク質構造(エピトープ)を認識し、結合する能力を
指す。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識した「A」及び前記抗体を含む反
応において、エピトープA(又は遊離の、非標識のA)を含む分子が存在すると、前記抗体に
結合する標識したAの量が減少する。例えば、抗体は(標識されている場合)、対応する
非標識抗体によってそのターゲットから競合して離れることができる場合、ターゲットに
「特異的に結合する」。ある実施形態では、抗体は、ターゲット(例えば、CD5)に特異
的に結合する(前記抗体が、少なくとも約10-4 M、10-5M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-
9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、又はそれ未満(未満とは、10-12未満の数値を意味する
、例えば10-13)の、前記ターゲットに対するKDを有する場合)。ある実施形態では、「CD
5に対する特異的な結合」又は「CD5に特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使
用される場合、又はCD5に結合し、そして表面プラズモン共鳴によって決定されるように
、1.0×10-7 M以下の酸解離定数(KD)を有する、抗体を指す。ある実施形態では、KDを、
標準的なバイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)(BLI)に従って測定する。し
かし、前記抗体は、配列が関連する2つ以上の抗原に特異的に結合することができること
を理解されたい。例えば、ある実施形態では、抗体は、CD5のヒト及び非-ヒト(例えば、
マウス又は非-ヒト霊長類)オルソログの両方に特異的に結合することがある。
【0051】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって産
生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、任意の真核生物、原核生物、又は
ファージクローンを含む単一のクローンから、当技術分野で利用可能な、又は公知の任意
の手段によって、得られる。本開示と供に有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ
、組換え、及びファージ・ディスプレイ技術、又はそれらの組合せを使用することを含む
、当技術分野で公知の多種多様な技術を使用して調製することができる。
【0052】
本明細書で使用される用語「キメラ」抗体は、ラット又はマウス抗体などの非-ヒト免
疫グロブリンに由来する可変配列、及び典型的にはヒト免疫グロブリン・テンプレートか
ら選択されるヒト免疫グロブリン定常領域、を有する抗体を指す。キメラ抗体を産生する
ための方法は、当該分野で公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229(4719):12
02-7; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214-221; Gillies et al., 1985, J. Immunol
. Methods 125:191-202; U.S. Pat. Nos. 5,807,715; 4,816,567; 及び 4,816,397を参照
のこと。
【0053】
非-ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非-ヒト免疫グロブリンに由来する
配列を最小限に含むキメラ免疫グロブリンである。概して、ヒト化抗体は少なくとも1つ
、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全て又は実質
的に全ては非-ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒ
ト免疫グロブリン配列のものである。前記ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(F
c)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列の少なくとも一
部を含むことがある。抗体ヒト化の方法は、当該分野で公知である。例えば、Riechmann
et al., 1988, Nature 332:323-7; U.S. Pat. Nos. 5,530,101; 5,585,089; 5,693,761;
5,693,762; and 6,180,370 to Queen et al.; EP239400; PCT publication WO 91/09967;
U.S. Pat. No. 5,225,539; EP592106; EP519596; Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:48
9-498; Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814; Roguska et al., 1994, Proc.
Natl. Acad. Sci. 91:969-973; 及び U.S. Pat. No. 5,565,332を参照。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「キメラ抗原レセプター(chimeric antigen recept
or)」又は「CAR」は、抗原に特異的に結合し得る少なくとも1つの細胞外ドメイン、膜貫
通ドメイン、及び少なくとも1つの細胞内シグナリング・ドメインを含む組換えポリぺプ
チドをいう。一般に、CARは、免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を、所定の抗原を提示
する細胞に向けるように遺伝子操作をしたレセプターである。CARは、所望の抗原(例えば
、腫瘍抗原)に対する抗体ベースの特異性を、T細胞受容体-活性化細胞内ドメインと組み
合わせて、特異的な細胞性免疫活性を示すキメラ・タンパク質を生成する分子である。特
定の実施形態では、CARは、細胞外ドメイン(結合ドメイン又は抗原特異的結合ドメインと
も呼ばれる)、膜貫通ドメイン、及び細胞内(細胞質)シグナリング・ドメインを含む。前
記CARの抗原結合ドメインが、ターゲット細胞の表面上のターゲット抗原と結合すると、
前記CARはクラスター化し、活性化刺激をCAR含有細胞に送る。CARの主要な特徴は、免疫
エフェクター細胞の特異性を転換する作用能であり、それにより、モノクローナル抗体、
可溶性リガンド又は細胞特異的コ-レセプターの細胞特異的ターゲティングの作用能を利
用しながら、増殖、サイトカイン産生、ファゴサイトーシス又は主要組織適合性(MHC)非
依存的に、ターゲット抗原を発現する細胞の細胞死を媒介することができる分子の産生を
トリガーする。いくつかの実施形態では、CARは、腫瘍抗原に特異的に結合する細胞外結
合ドメイン;膜貫通ドメイン;及び1つ以上の細胞内シグナリング・ドメインを含む。様
々な実施形態では、CARは、ヒトCD5に特異的に結合する細胞外結合ドメイン;膜貫通ドメ
イン;及び1つ以上の細胞内シグナリング・ドメインを含む。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「CAR療法」は、CARを発現するように操作した免疫
細胞を、所与の疾患(例えば、がん又は自己免疫疾患)を治療するために、ヒト対象へ投与
することを言う。CAR療法は、操作した免疫細胞を使って、前記患者を特異的に治療する
ことをいい、そしてCAR細胞療法と併せて一般的に使用される療法(例えば、リンパ球除去
化学療法)を含むことは意図されない。特に、用語「細胞」が全体を通して使用される場
合、細胞の集団もまた、特に明記されない限り、この用語に含まれる。例えば、CAR療法
は、捜査した細胞の集団を投与することを必要とする。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「併用」又は「併用療法」は、単一のヒト患者にお
いて、2つ(又はそれ以上)の治療を使用することをいう。これらの用語は、合剤組成物を
指すことを意図していない。例えば、本明細書に記載することは、抗-CD5 ADCを投与する
こと及びCAR療法、を含む併用療法である。
【0057】
用語「コンディショニング」は、CAR療法を必要とする患者を、好適な条件のために、
準備をすることを指す。本明細書中で使用されるコンディショニングとしては、限定され
るものではないが、内因性リンパ球の数を減少させること、サイトカイン・シンク(cyto
kine sink)を除去すること、1種以上のホメオスタシス・サイトカイン又は向-炎症性因
子の血清中レベルを増加させること、コンディショニング後に投与するT細胞のエフェク
ター機能を増強すること、抗原提示細胞の活性化及び/又は利用可能性を増強すること、
又はT細胞療法前のそれらの任意の組合せ、が挙げられる。
【0058】
用語「減少させる(deplete)」は、CD5発現細胞に対する抗-CD5抗体又はADCの効果に
関する文脈において、CD5発現細胞を、数で減少させる又は排除することを指す。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」又は「治療有効量」は、所望の結果を達
成するために、又は自己免疫疾患若しくはがんに対する効果を有するために、十分な量を
いう。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、本明細書中に記載するよ
うな特定の疾患又は症状のための治療を受ける、ヒトのような生物をいう。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「治療する」又は「治療」は、疾患の任意の結果に対し
て任意の向上(例えば、生存期間の延長、より少ない罹患率、及び/又は代替の治療モダ
リティの副産物である副作用の減少)をもたらすことを言う;当該分野で容易に認識され
るように、疾患の完全な根絶は好ましいが、治療行為の必要条件ではない。有益な又は所
望の臨床成績としては、限定されるものではないが、CARを発現する免疫細胞(同種異系又
は自己-いずれもCAR療法を受けている患者において免疫反応を引き起こし得る)の受容を
促進することが挙げられる。本発明の方法が障害を予防することに向けられる限り、用語
「予防する」は、前記疾患の状態が完全に阻止されることを必要としないことが理解され
る。寧ろ、本明細書中で使用される場合、用語の予防することとは、障害に対して感受性
がある集団を同定する当業者の能力をいい、その結果、疾患が発症する前に、本発明の化
合物を投与することがある。前記用語は、疾患の状態を完全に回避することを意味するも
のではない。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、DNAベクター、プラ
スミド、RNAベクター、ウイルス、又は他の好適なレプリコン等の、核酸ベクターを含む
。本明細書中に記載する発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、並びに、例えば、タン
パク質を発現させる及び/又は哺乳動物細胞のゲノムの中にこれらのポリヌクレオチド配
列を組み込ませるために使用する更なる配列エレメントを含むことがある。CARを発現さ
せるのに用いることができる特定のベクターとしては、遺伝子転写を指示する調節配列(
例えば、プロモータ領域及びエンハンサー領域等)を含むプラスミドが挙げられる。抗体
又はCARを発現させるための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳効率を高める
か、又は遺伝子転写から生じるmRNAの安定性又は核外への移行を改善するポリヌクレオチ
ド配列を含む。これらの配列要素は、例えば、発現ベクター上にある遺伝子を効率的に転
写するようにするために、5'及び3'非翻訳領域及びポリアデニル化シグナル部位を含むこ
とがある。本明細書中に記載する発現ベクターはまた、このようなベクターを含む細胞を
選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含むこともある。好適なマーカ
ーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、 カナマイシン、及びノウルセ
オスリシン(nourseothricin)等の抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる
。
【0063】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体薬物コンジュゲート」又は「ADC」は、細胞
毒素に連結した抗体を指す。ADCは、ある分子(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメン
ト)の反応性官能基と、別の分子(例えば、本明細書中に記載する細胞毒素)の適切な反応
性官能基との化学結合によって形成される。コンジュゲートは互いに結合した2つの分子
間(例えば、抗体と細胞毒素との間)にリンカーを含むことがある。特に、用語「コンジュ
ゲート」(化合物をいう場合)はまた、本明細書中で、「薬物コンジュゲート」、「抗体薬
物コンジュゲート」又は「ADC」とも、互換的に称される。コンジュゲートの形成に用い
ることができるリンカーの例としては、ペプチド含有リンカー(例えば、天然に存在する
又は天然に存在しないアミノ酸、例えば、D-アミノ酸を含有するリンカー)が挙げられる
。リンカーを、本明細書中に記載する、及び当該技術分野で公知である、種々のストラテ
ジーを使用して調製することがある。その中の反応性成分に依存して、リンカーを、例え
ば、酵素的加水分解、光分解、酸性条件下での加水分解、塩基性条件下での加水分解、酸
化、ジスルフィド還元、求核切断、又は有機金属切断によって、切断することがある(例
えば、Leriche et al., Bioorg. Med. Chem., 20:571-582, 2012を参照のこと)。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「カップリング反応」は、互いに反応するのに適し
た2つ以上の置換基が反応して、それぞれの置換基に結合した分子フラグメントが(例えば
、共有結合的に)結合した化学的な部分構造を形成する化学反応を指す。カップリング反
応には、細胞毒素(例えば、当該技術分野で公知の又は本明細書中に記載する細胞毒素)
であるフラグメントに結合した反応性置換基が、抗体、又はその抗原結合フラグメント(
例えば、当該技術分野で公知の若しくは本明細書中に記載される、CD5に結合する、抗体
、その抗原結合フラグメント、又は特異的な抗-CD5抗体)であるフラグメントに結合した
好適な反応性置換基と反応する反応が含まれる。好適な反応性置換基の例としては、求核
/求電子対(例えば、特に、チオール/ハロアルキル対、アミン/カルボニル対、又はチ
オール/α, β-不飽和カルボニル対等)、ジエン/ジエノフィル対(例えば、とりわけ、
アジド/アルキン対)等が挙げられる。カップリング反応としては、限定されるものでは
ないが、チオール・アルキル化、ヒドロキシル・アルキル化、アミン・アルキル化、アミ
ン縮合、アミド化、エステル化、ジスルフィド形成、環化付加(例えば、特に、[4+2]Diel
s-Alder環化付加、[3+2]Huisgen環化付加)、芳香族求核置換、芳香族求電子置換、及び当
該技術分野で知られているか又は本明細書に記載されている他の反応様式が挙げられる。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「微小管結合剤」という語は、細胞における有糸分裂及
び間期細胞機能に必須である微小管ネットワークを破壊することによって作用する化合物
をいう。微小管結合剤の例としては、限定されるものではないが、メイタシン、メイタン
シノイド、及びそれらの誘導体(本明細書に記載するか、又は当該技術分野で公知のもの
など)、ビンブラスチン、ビンブラスチン硫酸、ビンクリスチン、ビンクリスチン硫酸、
ビンデシン、及びビノレルビン等のビンカ・アルカロイド、ドセタキセル及びパクリタキ
セル等のタキサン、ディスコデルモリド、コルヒチン(cochicine)及びエポチロン等のマ
クロライド、並びにそれらの誘導体(エポチロンB又はそれらの誘導体など)が挙げられる
。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「アマトキシン」は、Amanita phalloides mushroo
msによって産生されるペプチドのアマトキシン・ファミリーのメンバー、又はその誘導体
(例えば、RNAポリメラーゼII活性を阻害し得るそのバリアント若しくは誘導体)のこと
をいう。本明細書に記載する組成物及び方法と併用して有用なアマトキシンとしては、限
定されるものではないが、式(II)の化合物(例えば、α-アマニチン、β-アマニチン、γ
-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、アマヌリン酸、
又はプロアマヌリン)が挙げられる。アマトキシンを、種々のキノコ種(例えば、Amanita
phalloides、Galerina marginata、Lepiota brunneo-incarnata)から単離することがあ
る、又は半合成的若しくは合成的に調製することがある。このファミリーのメンバー(α
-アマニチン)は、Wieland, Int. J. Pept. Protein Res.1983, 22(3):257-276に記載さ
れている。アマトキシンの誘導体を、天然に存在する化合物を化学的に改変すること(「
半合成」)によって得ることがある、又は完全に合成の供給源から得ることがある。種々
のアマトキシン誘導体の合成経路は、例えば、米国特許第9,676,702 及びPerrin et al.,
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, p. 6513-6517に記載されている(これらの各々は、アマ
トキシンを調製する及び誘導体化するための合成方法に関して、その全体が本明細書に参
照により取り込まれる)。
【0067】
本明細書中に記載するように、アマトキシンを、例えば、リンカー部分(L)を介して、
抗体、又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートさせることがある(これにより、
ADCを形成する)。例示的なアマトキシン-リンカー・コンジュゲートの構造は、式(III)、
(IIIA)、及び(IIIB)によって表される。アマトキシンをコンジュゲートする例示的な方法
及びそのようなプロセスに有用なリンカーを以下に記載する。前記組成物及び方法による
、抗体、又は抗原結合フラグメントへのコンジュゲートに有用な、例示的なリンカー含有
アマトキシンもまた、本明細書に記載する。
【0068】
本明細書で使用される用語「アシル」は、-C(=O)Rを指す、ここで、本明細書で定義さ
れるように、RはH(「アルデヒド」)、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキ
ニル、C3-C7カルボシクリル、C6-C20アリール、5-10員ヘテロアリール、又は5-10員ヘテ
ロシクリルである。非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾ
イル、及びアクリロイルが挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される用語「C1-C12アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖又
は分岐の飽和炭化水素を指す。代表的なC1-C12アルキル基としては、限定されるものでは
ないが、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、及び-n-ヘキシルが
挙げられる;一方、分岐C1-C12アルキルとしては、限定されるものではないが、-イソプ
ロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、及び2-メチルブチ
ルが挙げられる。C1-C12のアルキル基は、置換されていない、又は置換されていることが
ある。
【0070】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、不飽和の少なくとも1つの部位、即ち、
炭素-炭素、sp2二重結合、を有する、通常の、第2級の、又は第3級の炭素原子を含むC2-C
12炭化水素を指す。例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:エチレ
ン又はビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル
、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブ
テニルなどが挙げられる。アルケニル基は、置換されていない、又は置換されていること
がある。
【0071】
本明細書で使用される「アルキニル」は、不飽和の少なくとも1つの部位、即ち、炭素-
炭素、sp三重結合を有する、通常の、第2級の、又は第3級の炭素原子を含むC2-C12炭化水
素を指す。例としては、限定されるものではないが、アセチレン及びプロパルギルが挙げ
られる。アルキニル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
【0072】
本明細書で使用される「アリール」は、C6-C20炭素環芳香族基を指す。アリール基の例
としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げら
れる。アリール基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
【0073】
本明細書で使用される「アリールアルキル」は、炭素原子(典型的には末端又はsp3炭
素原子)に結合した水素原子の1つがアリール・ラジカルで置換されている、非環状アル
キル・ラジカルを指す。代表的なアリールアルキル基としては、限定されるものではない
が、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、
2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニ
ルエタン-1-イルなどが挙げられる。前記アリールアルキル基は6~20個の炭素原子を含み
、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分(例えば、アルカニル、アルケニル又はア
ルキニル基等が挙げられる)は1~6個の炭素原子であり、アリール部分は5~14個の炭素
原子である。アルカリル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
【0074】
本明細書で使用される「シクロアルキル」は、飽和炭素環ラジカルを指し、これは単環
式又は二環式であることがある。シクロアルキル基としては、単環として3~7個の炭素原
子を有する環、又は二環として7~12個の炭素原子を有する環が挙げられる。単環式シク
ロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘ
キシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル基は、置換
されていない、又は置換されていることがある。
【0075】
本明細書で使用される「シクロアルケニル」は不飽和炭素環ラジカルを指し、これは単
環式でも二環式でもよい。シクロアルケニル基としては、単環として3~6個の炭素原子を
有する環、又は二環として7~12個の炭素原子を有する環が挙げられる。単環式シクロア
ルケニル基の例としては、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シク
ロペント-3-エニル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、及び1-シク
ロヘキサ-3-エニルが挙げられる。シクロアルケニル基は、置換されていない、又は置換
されていることがある。
【0076】
本明細書で使用される「ヘテロアラルキル」は、炭素原子(典型的には末端又はsp3炭
素原子)に結合した水素原子の1つがヘテロアリール・ラジカルで置換されている、非環
状アルキル・ラジカルを指す。典型的なヘテロアリールアルキル基としては、限定される
ものではないが、2-ベンズイミダゾリルメチル、2-フリルエチル等が挙げられる。前記ヘ
テロアリールアルキル基は6~20個の炭素原子を含み、例えば、ヘテロアリールアルキル
基のアルキル部分(アルカニル、アルケニル又はアルキニル基等が挙げられる)は1~6個の
炭素原子である、並びにヘテロアリール部分は5~14個の炭素原子である並びにN、O、P、
及びSから選択される1~3個のヘテロ原子である。前記ヘテロアリールアルキル基のヘテ
ロアリール部分は、3~7個の環員を有する単環(2~6個の炭素原子)であることがある、又
は7~10個の環員を有する二環(4~9個の炭素原子並びにN、O、P、及びSから選択される1
~3個のヘテロ原子)であることがある、例えば:二環[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]シ
ステム。
【0077】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」及び「ヘテロシクロアルキル」は、それぞれ
芳香族又は非芳香族環システムを指し、ここで1つ以上の環原子は、ヘテロ原子、例えば
窒素、酸素、及び硫黄である。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル・ラジカルは、
2~20個の炭素原子及びN、O、P、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む。ヘテ
ロアリール又はヘテロシクロアルキルは、3~7個の環員を有する単環(2~6個の炭素原子
並びにN、O、P、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子)であることがある、又は7~10
個の環員を有する二環(4~9個の炭素原子並びにN、O、P、及びSから選択される1~3個の
ヘテロ原子)であることがある、例えば:二環[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]システム
。ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルは、置換されていない、又は置換されている
ことがある。
【0078】
ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキル基は、Paquette, Leo A.; "Principles of M
odern Heterocyclic Chemistry" (W. A. Benjamin, New York, 1968), 特に1, 3, 4, 6,
7, 及び 9章; "The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs" (
John Wiley & Sons, New York, 1950 to present), 特に Volumes 13, 14, 16, 19, 及び
28; 並びに J. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566、に記載されている。
【0079】
ヘテロアリール基の例としては、例えば、限定されるものではないが、ピリジル、チア
ゾリル、テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピ
ラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリ
ル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、イソキサゾリル
、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-イ
ンダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリ
ニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、
フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル
、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イ
ミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ベンゾトリアゾリル
、ベンゾイソオキサゾリル、及びイサチノイルが挙げられる。
【0080】
ヘテロシクロアルキルの例としては、例えば、限定されるものではないが、ジヒドロピ
リジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル
、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒド
ロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソ
キノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、ピペラジニル、キヌ
クリジニル、及びモルホリニルが挙げられる。
【0081】
限定ではなく例として、炭素結合ヘテロアリール類及びヘテロシクロアルキル類は、ピ
リジンの2、3、4、5、若しくは6位、ピリダジンの3、4、5、若しくは6位、ピリミジンの2
、4、5、若しくは6位、ピラジンの2、3、5、若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン
、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4、若しく
は5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4、若しくは5位、イソオキ
サゾール、ピラゾール、若しくはイソチアゾールの3、4、若しくは5位、アジリジンの2、
若しくは3位、アゼチジンの2、3若しくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7、若しくは8
位、又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7、若しくは8位、で結合する。更に典型的には
、炭素結合ヘテロシクリルとしては、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル
、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-
ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピ
ラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、又は5-チアゾリ
ルが挙げられる。
【0082】
限定ではなく例として、窒素結合ヘテロアリール類及びヘテロシクロアルキル類は、ア
ジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール
、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラ
ゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダ
ゾールの1位で、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカル
バゾール又はベータ・カルボリンの9位、に結合している。更に典型的には、窒素結合ヘ
テロ環としては、1-アジリジル、1-アゼテジル(1-azetedyl)、1-ピロリル、1-イミダゾリ
ル、1-ピラゾリル、及び1-ピペリジニルが挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される、並びに上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルなどの何れかに適
用される、「置換された」とは1個以上の水素原子がそれぞれ独立して置換基で置換され
ていることを意味する。個々の置換基を定義することによる制約が特に無い場合、上記の
化学的な部分構造、例えば「アルキル」、「アルキレン」、「ヘテロアルキル」、「ヘテ
ロアルキレン」、「アルケニル」、「アルケニレン」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロ
アルケニレン」、「アルキニル」、「アルキニレン」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロ
アルキニレン」、「シクロアルキル」、「シクロアルキレン」、「ヘテロシクロアルキル
」、「ヘテロシクロアルキレン」、「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」
、及び「ヘテロアリーレン」基は任意選択的に置換されていることがある。
【0084】
典型的な置換基には、限定されるものではないが、-X, -R, -OH, -OR, -SH, -SR, NH2,
-NHR, -N(R)2, -N+(R)3, -CX3, -CN, -OCN, -SCN, -NCO, -NCS, -NO, -NO2, -N3, -NC(=
O)H, -NC(=O)R, -C(=O)H, -C(=O)R, -C(=O)NH2, -C(=O)N(R)2, -SO3-, -SO3H, -S(=O)2
R, -OS(=O)2OR, -S(=O)2NH2, -S(=O)2N(R)2, -S(=O)R, -OP(=O)(OH)2, -OP(=O)(OR)2, -P
(=O)(OR)2, -PO3, -PO3H2, -C(=O)X, -C(=S)R, -CO2H, -CO2R, -CO2-, -C(=S)OR, -C(=O)
SR, -C(=S)SR, -C(=O)NH2, -C(=O)N(R)2, -C(=S)NH2, -C(=S)N(R)2, -C(=NH)NH2, 及び -
C(=NR)N(R)2、が含まれる;ここで、各Xは、F、Cl、Br、及びIから、それぞれの場合につ
いて独立に選択される;及び、各Rは、C1-C12アルキル、C6-C20アリール、C3-C14ヘテロ
シクロアルキル又はヘテロアリール、保護基及びプロドラック部分から、それぞれの場合
について独立に選択される。基が「任意選択的に置換される」と記載されている場合はど
んな場合でも、その基は、それぞれの場合について独立に、1個以上の上記の置換基で置
換されることがある。
【0085】
あるラジカルの命名規則には、状況に応じて、モノ-ラジカル又はジ-ラジカルの何れか
が含まれうることを理解しておく必要がある。例えば、置換基が分子の残りの部分への2
つの結合の位置を必要とする場合、前記置換基はジ-ラジカルであると理解される。例え
ば、2点の結合の位置を必要とするアルキルとして識別される置換基には、-CH2-、-CH2CH
2-、-CH2CH(CH3)CH2-、等のジ-ラジカルが含まれる。他のラジカル命名規則は、前記ラジ
カルが「アルキレン」、「アルケニレン」、「アリーレン」、「ヘテロシクロアルキレン
」等のようなジ-ラジカルであることを明確に示す。
【0086】
置換基がジ-ラジカルとして示される(即ち、分子の残りの部分への2つの結合の位置を
有する)場合はどこでも、前記置換基は、別段の指示がない限り、任意の方向性配置で結
合することができることを理解されたい。
【0087】
「異性 (Isomerism)」とは、同一の分子式を有するが、その原子の結合の配列、又はそ
の原子の空間配置が異なる化合物を意味する。その原子の空間配置が異なる異性体を「立
体異性体」と呼ぶ。互いに鏡像関係にない立体異性体を「ジアステレオマー」と呼ぶ、及
び互いに重ね合わせることができない、鏡像関係にある立体異性体を「エナンチオマー」
と呼び、時には「光学異性体」と呼ぶ。
【0088】
4つの非-同一置換基に結合した炭素原子を「キラル中心」と呼ぶ。「キラル異性体」と
は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。1つ以上のキラル中心を有す
る化合物は、個々のジアステレオマーとして、又は「ジアステレオマー混合物(diastereo
meric mixture)」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在することがある。1つ
のキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(R又はS)によっ
て特徴付けることができる。絶対配置とは、前記キラル中心に結合した置換基の空間配置
をいう。検討するキラル中心に結合した置換基を、Cahn、Ingold及びPrelogの配列規則に
従ってランク付けする。(Cahn et al., Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; erra
ta 511; Cahn et al., Angew. Chem. 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc.
1951 (London), 612; Cahn et al., Experientia 1956, 12, 81; Cahn, J. Chem. Educ.
1964, 41, 116)。キラリティーが反対である個々のエナンチオマー形態を等量で含む混合
物を、「ラセミ混合物」と呼ぶ。
【0089】
本明細書及び特許請求の範囲に開示される化合物は、1つ以上の不斉中心を含むことが
ある、及び、各化合物の異なるジアステレオマー及び/又はエナンチオマーが存在するこ
とがある。この説明書及び特許請求の範囲にある化合物の記載は、別段の記載がない限り
、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物を含むことを意味する。
更に、この明細書及び特許請求の範囲にある任意の化合物の記載は、別段の記載がない限
り、個々のエナンチオマー、並びに前記エナンチオマーの任意の混合物、ラセミ体又は他
のものを含むことを意味する。化合物の構造を特定のエナンチオマーとして描いた場合、
本出願の発明は、その特定のエナンチオマーに限定されないことを理解されたい。従って
、本開示の各々の構造式のエナンチオマー、光学異性体、及びジアステレオマーが、本明
細書中で企図される。本明細書において、前記化合物の構造式は、便宜上、いくつかの場
合において、特定の異性体を表すが、本開示は、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性
体、立体異性体、互変異性体等のような全ての異性体を含み、全ての異性体が同じレベル
の活性を有するわけではないことが理解される。これらの化合物類は、異なる互変異性体
形態で存在し得る。本開示による化合物は、別段の記載がない限り、全ての互変異性体の
形態を含むことを意味する。化合物の構造を特定の互変異性体として描いた場合、本出願
の発明は、その特定の互変異性体に限定されないことが理解されるべきである。
【0090】
本明細書中に記載する任意の式の化合物は、適用可能であれば、化合物自体、並びにそ
れらの塩、及びそれらの溶媒和物を含む。例えば、塩は、アニオンと本開示の化合物上の
正に荷電した基(例えば、アミノ)との間で形成されることがある。好適なアニオンとして
は、塩化物、ブロミド、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、スルファメート、硝酸塩、リン酸
塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロ
ン酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩
、トシル酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩及び酢酸塩(例、トリフ
ルオロ酢酸塩)が挙げられる。用語「薬学的に許容可能なアニオン」は、薬学的に許容可
能な塩を形成するための好適なアニオンをいう。同様に、塩は、カチオンと本開示の化合
物上の負に荷電した基(例えば、カルボキシレート)との間で形成されることがある。好適
なカチオンとしては、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、マグネシウム・イオン、
カルシウム・イオン、及びテトラメチルアンモニウム・イオンなどのアンモニウム・カチ
オンが挙げられる。いくつかの好適な置換アンモニウム・イオンの例としては、以下から
誘導したものが挙げられる:エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、
トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノール
アミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、
及びトロメタミン、リジン及びアルギニンなどのアミノ酸。本開示の化合物はまた、第四
級窒素原子を含有する塩を含む。
【0091】
好適な無機アニオンの例としては、限定されるものではないが、以下の無機酸から誘導
されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝
酸、リン(phosphoric)及びリン(phosphorous)。好適な有機アニオンの例としては、限定
されるものではないが、以下の有機酸から誘導されるものが挙げられる:2-アセトキシ安
息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファルスルホン酸、桂
皮皮、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルケ
プトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキ
シナフタレン・カルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイ
ン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、
パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸
、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルフォン
酸、及び吉草酸。好適なポリマー有機アニオンの例としては、限定されるものではないが
、以下のポリマー酸から誘導されるものが挙げられる:タンニン酸、カルボキシメチル・
セルロース。
【0092】
更に、本開示の化合物(例えば、前記化合物の塩)は、含水若しくは非含水(無水)形態
で、又は他の溶媒分子との溶媒和物として存在することがある。水和物の非限定的な例と
しては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としては、エタ
ノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。「溶媒和物」は、化学量論的な量
又は非化学量論的な量の何れかの溶媒を含有する、溶媒が付加された形態を意味する。い
くつかの化合物は、結晶性の固相中に、固定したモル比率の溶媒分子を補足する傾向を有
し、それによって溶媒和物を形成する。前記溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は
水和物である;及び前記溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラー
トである。水和物とは、1分子の物質と1分子以上の水の組合せによって形成され、その中
では、水がH2Oとしての分子状態を保持する。水和物とは、例えば、一水和物、二水和物
、三水和物などを指す。
【0093】
更に、本明細書中に開示する式が表す化合物又はその塩について、結晶多型が存在する
ことがある。任意の結晶形態、結晶形態の混合物、又はそれらの無水物若しくは水和物が
、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0094】
以下の節では、CAR療法において、CARを発現する免疫細胞の受容を促進するために、ヒ
トに抗-CD5 ADCを投与することに基づく方法に関して記載する。
【0095】
II.抗-CD5抗体及びCARの治療に関する方法
キメラ抗原レセプター(chimeric antigen receptor)(CAR)療法の課題は、遺伝子操作し
たCAR発現細胞(例えば、CAR-T細胞)を、ヒト・レシピエント(recipient)が受容するこ
とができるようになる手段を決定することである。このような操作した免疫細胞の受容は
、治療の有効性に影響を及ぼし、また、患者に有害な副作用をもたらす可能性がある。
【0096】
リンパ球除去化学療法は、レシピエント(recipient)の免疫システムを抑制し、受容を
改善する、従来からある方法であるが、一般的に有害な副作用がある。CAR療法を受けて
いるヒト患者において、(CARを)発現する免疫細胞の受容を促進する方法を本明細書に記
載する。本明細書中に記載する方法は、CAR療法を受けているヒト患者において、CD5+細
胞(例えば、CD5+ T細胞)を特異的にターゲットとする、及びCD5+細胞を除去する。本明細
書中に開示する方法は、リンパ球除去化学療法よりもターゲット化されたものであり、及
び自己又は同種異系細胞の何れかを使用することができる手段を提供する。
【0097】
CAR発現免疫細胞の受容及び有効性を促進するために、CAR療法を受けている患者内のCD
5特異的な免疫細胞の集団を減少させるための抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を投与
する方法を、本明細書に記載する。免疫系のCD5を特異的に発現する細胞を、このように
選択的に減少させることにより、自己免疫疾患又はがんを治療するために、CAR発現免疫
細胞が拒絶されるリスクを減少させながら、全生存期間及び無再発生存期間が改善される
。
【0098】
CARを発現する免疫細胞が拒絶されるリスクは、CAR細胞療法を処方した後も依然として
高くなっている。本明細書中に開示する方法及び組成物は、ヒト患者におけるCAR細胞の
拒絶を阻害又は予防するために使用することがある。抗-CD5 ADCを使用して、CAR細胞療
法を受ける予定がある患者において、活性化したT細胞を選択的にターゲット化すること
がある。本明細書中に記載するように、抗-CD5 ADCを使用して、すでにCAR細胞療法を受
けたことがあるヒト患者において、CD5陽性細胞をターゲット化する、及び減少させるこ
とによって、CAR細胞が拒絶されるリスクを減少させることもある。
【0099】
本明細書中に記載する組成物及び方法を使用して、CAR細胞療法の拒絶に関連するCD5+
細胞(例えば、T細胞)を減少させることがある。本発明の方法は、ヒト対象(例えば、がん
又は自己免疫疾患を有するヒト対象)において、CARを発現する免疫細胞の受容を促進する
。ある実施形態では、前記方法は、CAR療法を受ける予定がある又は受けたことがあるヒ
ト対象に、抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を投与すること、及び前記ヒト対象に、C
ARを発現する免疫細胞の治療有効量を投与すること、を含む。
【0100】
前記抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、1回以上のCAR細胞療法を処方する前
、それと同時に、又はそれの後に、投与することがある。ある実施形態では、抗-CD5 ADC
を、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する前(例えば、約3日前、約2日前
、約12時間前)に、投与する。抗-CD5 ADCの単回用量を、そのような単回用量がCARを発現
する免疫細胞の減少のリスクを予防する又は減少させるのに充分である場合、CAR細胞療
法を処方する前、後、又は同時に、前記ヒト患者に投与することがある。ある実施形態で
は、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する約3日前に、投
与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法
を処方する約2日前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とする
ヒト患者に、CAR細胞療法を処方する約1日前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 A
DCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する約20時間前に、投与する。
ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方す
る約18時間前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患
者に、CAR細胞療法を処方する約15時間前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADC
を、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する約12時間前に、投与する。あ
る実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する
約6時間前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者
に、CAR細胞療法を処方する約4時間前に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、
それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方する約2時間前に、投与する。ある実施
形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方すると同時
に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細
胞療法を処方した約2時間後に、投与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必
要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方した約4時間後に、投与する。ある実施形態では
、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法を処方した約6時間後に、投
与する。ある実施形態では、抗-CD5 ADCを、それを必要とするヒト患者に、CAR細胞療法
を処方した約12時間後に、投与する。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、1つ以上のCAR細胞療法を処方する約21日
前まで(例えば、1つ以上のCAR細胞療法を処方する約21日前、例えば、約21日前、約20日
前、約19日前、約18日前、約17日前、約16日前、約15日前、約14日前、約13日前、約12日
前、約11日前、約10日前、約9日前、約8日前、約7日前、約6日前、約5日前、約4日前、約
3日前、約2日前、約1日前、約24時間前、約12時間前、約6時間前、約3時間前、約2時間前
、又は約1時間前)に投与することがある。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR細胞療法を処方する約12時間後(例
えば、1つ以上のCAR細胞療法を処方する約12時間後、約11時間後、約10時間後、約9時間
後、約8時間後、約7時間後、約6時間後、約5時間後、約4時間後、約3時間後、約2時間後
、約1時間後)に投与することがある。いくつかの実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR
細胞療法を処方する約10日後(例えば、1つ以上のCAR細胞療法を処方する約10日後、約9
日後、約8日後、約7日後、約6日後、約5日後、約4日後、約3日後、約2日後、約1日後)に
投与することがある。
【0103】
ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR発現免疫細胞を、それを必要とするヒト患
者に投与する前に、投与する。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用し
て、前記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-CD5 ADCを、前記CAR発現免疫細胞を投与
する約12時間~約21日前に、前記ヒト対象に投与する。ある実施形態では、前記抗-CD5 A
DCを、CAR療法と併用して前記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-CD5 ADCを、前記CAR
発現免疫細胞を投与する約18時間~約20日前に、前記ヒト対象に投与する。ある実施形態
では、前記抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して前記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-
CD5 ADCを、前記CAR発現免疫細胞を投与する約20時間~約18日前に、前記ヒト対象に投与
する。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して前記ヒト患者に投与す
る、ここで、前記抗-CD5 ADCを、前記CAR発現免疫細胞を投与する約1日前~約15日前に、
前記ヒト対象に投与する。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して前
記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-CD5 ADCを、前記CAR発現免疫細胞を投与する約1
日前~約10日前に、前記ヒト対象に投与する。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CA
R療法と併用して前記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-CD5 ADCを、前記CAR発現免疫
細胞を投与する約2日前~約8日前に、前記ヒト対象に投与する。ある実施形態では、前記
抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して前記ヒト患者に投与する、ここで、前記抗-CD5 ADCを
、前記CAR発現免疫細胞を投与する約3日前~約6日前に、前記ヒト対象に投与する。
【0104】
ヒト患者由来の生物学的サンプル中のT細胞の全体的なレベルを、抗-CD5 ADCを投与し
た後に評価することがある、ここで、抗-CD5 ADCの投与後の、投与前のレベルと比較した
ヒト患者におけるT細胞の全体的な数の低下は、前記CAR細胞療法が拒絶されることを予防
するための、前記抗-CD5 ADCの有効性を示す。ある実施形態では、前記ヒト患者由来の生
物学的サンプル中の、内因性のT細胞のレベルは、前記抗-CD5 ADCを投与する直前の、前
記ヒト患者由来の生物学的サンプル(例えば、同じタイプである、血液)のT細胞のレベル
と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%減
少している。ある実施形態では、前記ヒト患者由来の生物学的サンプル中の、内因性のT
細胞のレベルは、前記抗-CD5 ADCを投与する直前の、前記ヒト患者由来の生物学的サンプ
ル(例えば、同じタイプである、血液)のT細胞のレベルと比較して、約5%~25%、約5%~20
%、約5%~15%、又は約5%~10%減少している。ある実施形態では、内因性のT細胞のレベル
を、抗-CD5 ADCを投与する1日前以下に、測定する。
【0105】
T細胞のレベルを、限定されるものではないが、蛍光活性化細胞選別(FACs)解析又は血
液分析器等を含む、当技術分野で公知の標準的な方法に従って決定することができる。
【0106】
上述したように、本明細書中に記載する方法の利点の1つは、CAR療法を受けている又は
受けることを計画しているヒト患者に処方するコンディショニング・レジメンにおいて、
リンパ球除去化学療法剤を減少させることができる、又は含まないようにすることができ
ることである。リンパ球除去化学療法剤、例えば、限定されるわけではないが、フルダラ
ビン、シクロホスファミド、ベンダムスチン、及び/又はペントスタチンを、CAR療法を
受けているヒトにおいて、CARを発現する細胞の受容を促進するための抗-拒絶剤として、
一般的には使用する。ある特定の実施形態では、ヒト患者に、例えば、CARを発現する免
疫細胞(例えば、T細胞)と併用して、抗-CD5 ADCを投与する。その結果、CARを発現する免
疫細胞を投与する前、それと同時に、又はそれの後に、前記ヒト患者は、リンパ球除去化
学療法剤(例えば、フルダラビン及び/又はシクロホスファミド)を受けない。
【0107】
ヒト対象の内因性の免疫細胞を減少させるための、及びCARを発現する免疫細胞が拒絶
されるリスクを減少させるための剤として、抗-CD5 ADCを使用することにより、他の免疫
減少剤の使用を回避する又は減少させることもある。例えば、アレムツズマブは、CAR療
法を受けているヒトにおいて、CARを発現する細胞の受容を促進するために、CAR療法と併
用する抗-拒絶剤として一般的に使用される。ある特定の実施形態では、ヒト患者に、CAR
を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)を投与する前に、それと併用して、抗-CD5 ADCを投
与する。その結果、前記ヒト患者は、例えば、CARを発現する免疫細胞(例えば、T細胞)を
投与する前、それと同時に、又はそれの後に、アレムツズマブを受けない。
【0108】
ある特定の実施形態では、抗-CD5 ADCを、CARを発現する免疫細胞へのトレランスを促
進するために、別の治療と併用して使用する。例えば、抗-CD2 ADCを、前記ヒト患者がCA
R療法を受ける前に、前記ヒト患者に投与することがある。抗-CD2 ADCを、抗-CD5 ADCの
前、それと同時に、又はそれの後に、投与することがある、ここで、抗-CD2 ADC及び抗-C
D5 ADCの両方を、CAR療法の前に、前記ヒト患者に投与する。
【0109】
本明細書中に開示する方法を、CARを発現する自己及び同種異系細胞の両方に対して使
用することがある。重要なことに、本明細書に記載する抗-CD5 ADCコンディショニング方
法は、同種異系細胞へのトレランスを提供することができる手段を提供することによって
、CAR療法に使用することができる免疫細胞の種類を拡大するのに役立つ。ある実施形態
では、前記CARを発現する免疫細胞は、同種異系細胞又は自己細胞である。CARを発現する
ように操作することがある免疫細胞のタイプの例としては、限定されるものではないが、
同種異系T細胞、自己T細胞、自己NK細胞、又は同種異系NK細胞が挙げられる。
【0110】
ある実施形態では、前記抗-CD5抗体-薬物コンジュゲートを使用して、CAR細胞療法を処
方した後に前記抗-CD5抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって、CD5を発現する
ドナー(donor)細胞(例えば、CD5を発現する活性化したT細胞)を減少させる。ある実施
形態では、前記CAR細胞療法は同種異系細胞を含む。
【0111】
本明細書中に開示する方法は、これらの障害のうちの1種を有するヒト対象におけるが
ん又は自己免疫疾患を治療するのに特に有用である。
【0112】
ある実施形態では、本明細書中に開示する方法を使用してがんを治療する。より具体的
には、抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用してがんを有するヒト対象に投与する。本明細書に
開示する方法を用いて治療することができるがんの種類の例としては、限定されるもので
はないが、成人進行がん、膵臓がん、切除不能な膵臓がん、結腸直腸がん、転移性結腸直
腸がん、卵巣がん、トリプル-ネガティブ乳がん、造血系/リンパ系がん、大腸がん肝臓
転移、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、B細胞リンパ腫、再発性又は難治性B細胞リンパ腫
、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、再発性又は難治性
びまん性大細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、再発性縦
隔、難治性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキン・リンパ腫、
非-ホジキン・リンパ腫、再発又は難治性非-ホジキンリンパ腫、難治性進行性非-ホジキ
ンリンパ腫、B細胞性非-ホジキン・リンパ腫、難治性非-ホジキンリンパ腫、結腸直腸が
ん腫(colorectal carcinoma)、胃がん(gastric carcinoma)、膵がん(pancreatic carcino
ma)、トリプルネガティブ浸潤性乳がん(triple-negative invasive breast carcinoma)、
腎細胞がん(renal cell carcinoma)、肺扁平上皮がん(lung squamous cell carcinoma)、
肝細胞がん(hepatocellularcarcinoma)、尿路上皮がん(urothelial carcinoma)、白血病
、B細胞性白血病、B細胞性急性リンパ球性白血病(B-cell acute lymphocytic leukemia
)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia)、成人急
性リンパ芽球性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病(B-cell prolymphocytic leukemia
)、小児急性リンパ芽球性白血病(childhood acute lymphoblastic leukemia)、難治性小
児急性リンパ芽球性白血病(refractory childhood acute lymphoblastic leukemia)、急
性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病(proly
mphocytic leukemia)、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、再発性プラズマ細胞
性骨髄腫(recurrent plasma cell myeloma)、難治性プラズマ細胞性骨髄腫(refractory p
lasma cell myeloma)、多発性骨髄腫、再発性又は難治性多発性骨髄腫、骨の多発性骨髄
腫、脳の悪性神経膠腫(malignant glioma of brain)、骨髄異形成症候群、EGFR陽性結腸
直腸がん、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、新生物、芽球性形質細胞様樹状細
胞腫瘍(blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)、肝臓転移、固形腫瘍、進行性
固形腫瘍(advanced solid tumor)、メソテリン陽性腫瘍(mesothelin positive tumor)、
血液悪性腫瘍、及びその他の進行した悪性腫瘍、が挙げられる。
【0113】
ある実施形態では、本明細書中に開示する方法を使用して、自己免疫疾患を治療する。
より具体的には、抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して、自己免疫疾患を有するヒト対象に
投与する。本明細書中に開示する併用方法を使用して治療することがある自己免疫疾患の
例としては、限定されるものではないが、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、関
節リウマチ、I型糖尿病、ループス、及び乾癬が挙げられる。
【0114】
ある特定の実施形態では、抗-CD5 ADCを、CAR-T細胞療法と併用してヒト患者に投与す
る。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、CAR-T療法を処方する前に、ヒト患者に投与
する。本明細書中に記載する抗-CD5 ADC療法と併用することがあるCAR-T細胞の例として
は、限定されるものではないが、以下が挙げられる:CD19 CAR-T (e.g., CART-19-01,02,
03 (Fujian Medical University); daopeicart (Hebei Senlang Biotechnology Inc.); I
M19CART/001,YMCART201702 (Beijing Immunochina Medical Science & Technology Co.);
CART-CD19-02,03 (Wuhan Sian Medical Technology Co.); Universal CD19-CART/SHBYCL
001,002 (Shanghai Bioray Laboratory Inc.); UnicarTherapy201701 (Shanghai Unicar-
Therapy Biomedicine Technology Co.); Genechem/NCT02672501 (Shanghai GeneChem Co.
); SenL_19 (Hebei Senlang Biotechnology Inc.); PCAR-019 (PersonGen BioTherapeuti
cs (Suzhou); ICAR19 (Immune Cell, Inc.); WM-CART-02 (Sinobioway Cell Therapy Co.
); HenanCH080,109,152 (Henan Cancer Hospital / The Pregene (ShenZhen) Biotechnol
ogy Co.); IM19-CD28 and IM19-41BB CAR-T cells (Beijing Immunochina Medical Scien
ce & Technology Company); CTL019/IT1601-CART19 (Beijing Sanwater Biological Tech
nology Co.); CTL019/CCTL019C2201 (Novartis Pharmaceuticals); CD19:4-1BB:CD28:CD3
/ FirstShenzhen01 (Shenzhen Second People’s Hospital / The Beijing Pregene Sci
ence and Technology Company); MB-CART19.1 (Shanghai Children’s Medical Center /
Miltenyi Biotec GmbH); PZ01 CAR-T cells (Pinze Lifetechnology Co.); YMCART20170
1 (Beijing Immunochina Medical Science & Technology Co.); 2016YJZ12 (Peking Univ
ersity / Marino Biotechnology Co.); EGFRt/19-28z/4-1BBL CAR T cells (Memorial Sl
oan Kettering Cancer Center / Juno Therapeutics, Inc.); Doing-002 (Beijing Doing
Biomedical Co.); PCAR-019 (PersonGen BioTherapeutics (Suzhou) Co.); C-CAR011 (P
eking Union Medical College Hospital / Cellular Biomedicine Group Ltd.); iPD1 CD
19 eCAR T cells (Peking University / Marino Biotechnology Co.); 2013-1018/NCT025
29813 (M.D. Anderson Cancer Center / Ziopharm / Intrexon Corp.); HenanCH CAR 2-1
(Henan Cancer Hospital / The Pregene (ShenZhen) Biotechnology Co.); JCAR015 (Ju
no Therapeutics, Inc.); JCAR017/017001,004,006 (Juno Therapeutics, Inc.); JCAR01
7 (Celgene); TBI-1501 (Takara Bio Inc.); JMU-CD19CAR (Jichi Medical University);
KTE-C19 (Kite, A Gilead Company); TriCAR-T-CD19 (Timmune Biotech Inc.); PF-0517
5157 (Fred Hutchinson Cancer Research Center)); CD22/CD30/CD7/BCMA/CD123 (e.g.,
2016040/NCT03121625 (Hebei Senlang Biotechnology Inc.)); CD22 (e.g., Ruijin-CAR-
01 (Ruijin Hospital / Shanghai Unicar-Therapy Bio-medicine Technology Co.); AUTO
-PA1,DB1 (Autolus Limited)), CD20 (e.g., Doing-006 (Beijing Doing Biomedical Co.
)); 又はCD20/CD22/CD30 (e.g., SZ5601 (The First Affiliated Hospital of Soochow U
niversity Shanghai / Unicar-Therapy Bio-medicine Technology Co.))。
【0115】
キメラ抗原レセプター(Chimeric Antigen receptor)(CAR)
本発明は、抗-CD5免疫抑制ADCと併用してCAR療法を使用することを含む。本発明は、抗
-CD5 ADCが、内因性CD5+免疫細胞(例えば、内因性のT細胞など)を除去することによるC
AR発現細胞の受容を促進することによって、CAR療法のためのコンディショニング剤とし
て役割を果たすことがある、という知見に少なくとも部分的に基づいているので、本発明
は一般に、特定のCAR構築物(例えば、特定の抗原結合部位又は細胞内シグナリング・ド
メイン)に限定されない。特定のCAR(例えば、CD19特異的なCAR)を本明細書中で想定し
、及び本明細書中に開示する方法に含まれるが、限定することを意味しない。
【0116】
CAR構築物は当該分野で公知である、並びに一般的に、(a)抗原結合ドメインを含む細胞
外領域、(b)膜貫通ドメイン及び(c)細胞内シグナリング・ドメインを含む。例示的なCAR
の構成は、当技術分野で知られている、及び本明細書で説明する方法では、任意の好適な
構成を使用することがある。例えば、前記CARは、例えばGuedan et al. Molecular Ther
apy-Methods & Clinical Development. 12: 145-156 (2019) 又はSadelain et al. Cance
r discovery 3.4: 388-398 (2013)らに記載されているように(その全内容は、本明細書
に参照により取り込まれる)、第1世代の、第2世代の、又は第3世代のCARであることがあ
る。簡単に述べると、「第1世代」のCARは、(a)細胞外抗原結合ドメイン、(b)膜貫通ドメ
イン、(c)1つ以上の細胞内シグナリング・ドメイン、及び任意選択的に(d)抗原結合ドメ
インを膜貫通ドメインに接続するヒンジ領域を含むことがある。「第2世代」のCARは、要
素(a)、(b)、(c)、及び任意選択的に(d)を含むことがある、並びに更に、共刺激ドメイン
(例えば、CD28又は4-1BBの共刺激ドメイン)を含むことがある。「第3世代」のCARは、
要素(a)、(b)、(c)、及び任意選択的に(d)を含むことがある、並びに更に、複数の共刺激
ドメイン(例えば、CD28及び4-1BBの共刺激ドメイン、又はCD28及びOX40の共刺激ドメイ
ン)を含むことがある。上記の各要素について、以下で詳細に説明する。いくつかの実施
形態では、以下の例示的な非限定的な配置によって記載するCAR分子は、左側から右側に
向かって、前記CARのN末端側からC末端側であることを理解されたい。本開示が記載するC
ARは、本明細書に記載する要素の任意の他の組合せを含むことがある、又は更に含むこと
がある。
【0117】
本明細書中に開示する方法において使用するCARは、細胞外抗原結合ドメインを含むこ
とがある。前記細胞外抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意の分子であることがあり
、限定されるものではないが、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその任意の機能的フラグメン
ト等を含む。ある特定の実施形態では、前記抗原結合ドメインはscFvである。他の実施形
態では、前記細胞外抗原結合ドメインは非-免疫グロブリン・スキャフォールド・タンパ
ク質(scaffold protein)である。他の実施形態では、前記CARの細胞外結合ドメインは、
単鎖T細胞レセプター(scTCR)を含む。米国特許第5,359,046, 5,686,281 5,686,281及び6,
103,521に記載されているように、前記細胞外ドメインを、リガンド結合及び/又はシグ
ナル伝達に関連する多種多様な細胞外ドメイン又は分泌タンパク質の何れかから得ること
もある。
【0118】
前記細胞外結合ドメインの分子ターゲット(抗原)を選択することは、ターゲット細胞の
表面を規定するリガンドの種類及び個数に依存する。例えば、前記抗原結合ドメインを選
択して、特定の病態に関連するターゲット細胞に対する細胞表面マーカーとして振る舞う
リガンドを認識するようにすることがある。従って、ある態様において、所望の抗原に特
異的に結合する細胞外抗原結合ドメインを、操作してCARの中に入れることによって、CAR
を介した免疫細胞(例えば、T-細胞)の反応を、目的の抗原に向けさせることがある。例え
ば、前記抗原結合ドメインを選択して、がん又は自己免疫疾患などの特定の疾患の状態に
関連するターゲット細胞上の細胞表面マーカーとして振る舞うリガンドを認識するように
することがある。従って、CARにおける抗原結合ドメインに対するリガンドとして振る舞
うことがある細胞表面マーカーの例としては、がん細胞及び他の形態の疾患細胞(例えば
、自己免疫疾患細胞及び病原体感染細胞)に関連するものが挙げられる。いくつかの実施
形態では、腫瘍細胞上の抗原に特異的に結合する所望の抗原結合ドメインを操作すること
によって、CARを操作して、目的の腫瘍抗原をターゲット化するようにする。本発明の文
脈において、「腫瘍抗原」は、がんなどの特定の過剰増殖性障害に共通する抗原を指す。
ある実施形態では、前記抗原は腫瘍抗原である、これらの例としては、限定されるもので
はないが、CD19, CD22, CD30, CD7, BCMA, CD137, CD22, CD20, AFP, GPC3, MUC1, メソ
テリン(mesothelin), CD38, PD1, EGFR (e.g., EGFRvIII), MG7, BCMA, TACI, CEA, PSC
A, CEA, HER2, MUC1, CD33, ROR2, NKR-2, PSCA, CD28, TAA, NKG2D, 又はCD123、が挙げ
られる。ある実施形態では、CARは、CD19, CD22, CD30, CD7, BCMA, CD137, CD22, CD20,
AFP, GPC3, MUC1, メソテリン(mesothelin), CD38, PD1, EGFR (e.g., EGFRvIII), MG7
, BCMA, TACI, CEA, PSCA, CEA, HER2, MUC1, CD33, ROR2, NKR-2, PSCA, CD28, TAA, NK
G2D, 又はCD123、に結合するscFvを含む。
【0119】
別の態様では、前記CARの細胞外結合領域は、以下である抗原に結合する、AFP (e.g.,
ETCH17AFPCAR01 (Aeon Therapeutics (Shanghai) Co. / Eureka Therapeutics Inc.)), G
PC3 (e.g., GeneChem GPC-3 CART (Shanghai GeneChem Co.); 302 GPC3-CART (Shanghai
GeneChem Co.); 肝臓がんのCAR-T (Shanghai GeneChem Co.); CAR-GPC3 T 細胞 (Carsgen
Therapeutics)), MUC1 (e.g., PG-021-001,002 (PersonGen BioTherapeutics (Suzhou)
Co.)), メソテリン(mesothelin) (e.g., H2017-01-P01 (Ningbo Cancer Hospital); TAI-
meso-CART (Shanghai GeneChem Co.); K16-4/NCT02930993 (China Meitan General Hospi
tal / Marino Biotechnology Co.)), CD38 (e.g., 抗-CD38 A2 CAR-T / SOR-CART-MM-001
(Sorrento Therapeutics, Inc.)), herinCAR-PD1 (e.g., herinCAR-PD1/NBWYKY2016-06-
001,002,003 (Ningbo Cancer Hospital); SIMC-20160101,02,03 (Shanghai Internationa
l Medical Center)), BCMA (e.g., P-BCMA-101 自己T 幹細胞メモリ(Tscm) CAR-T 細胞/
P-BCMA-101-001 (Poseida Therapeutics, Inc.); HenanCH284 (Henan Cancer Hospital /
The Pregene (ShenZhen) Biotechnology Company); LCAR-B38M CAR-T 細胞(Nanjing Leg
end Biotech Co.); 9762/NCT03338972 (Fred Hutchinson Cancer Research Center / Jun
o Therapeutics, Inc.); Descartes-08 (Cartesian Therapeutics); KITE-585 (Kite, A
Gilead Company); bb21217 (bluebird bio); bb21217 (Celgene); JCARH125 (Juno Thera
peutics, Inc.)), CD30 (e.g., ICAR30 T cells (Immune Cell, Inc.)), EGFR (e.g., EG
FR:4-1BB:CD28:CD3改変T細胞/ First Shenzhen02 (Shenzhen Sceond People’s Hospital
/ The Beijing Pregene Science and Technology Company); EGFR-IL12-CART (Shenzhen
Second People’s Hospital / The Pregene (ShenZhen) Biotechnology Co.); SBNK-201
6-015-01 (Beijing Sanbo Brain Hospital / Marino Biotechnology Co.)), MG7 (e.g.,
MG7-CART (Xijing Hospital / Shanghai GeneChem Co.)), BCMA/TACI (e.g., AUTO2-MM1
(Autolus Limited)), CEA (e.g., 383-74/NCT02416466 (Roger Williams Medical Center
/ Sirtex Medical)), メソテリン(mesothelin)/PSCA/CEA/HER2/MUC1/EGFRvIII (e.g., N
CT03267173 (First Affiliated Hospital of Harbin Medical University / Shanghai Un
icar-Therapy Bio-medicine Technology Co.)), CD20 (e.g., EY201605-19 (Beijing Bio
healthcare Biotechnology Co.)), CD33 (e.g., 2016-0341/NCT03126864 (M.D. Anderson
Cancer Center / Intrexon Corp. / Ziopharm)), EGFR/BCMA (e.g., EGFRt/BCMA-41BBz
CAR T細胞 (Memorial Sloan Kettering Cancer Center / Juno Therapeutics, Inc.)), R
OR2 (e.g., 自己CCT301-38 又はCCT301-59 T 細胞(Shanghai Sinobioway Sunterra Biote
ch)), NKR-2 (e.g., CYAD-N2T-002,003,004 (Celyad)), PSCA (e.g., BP-012 (Bellicum
Pharmaceuticals)), CD28 (e.g., 自己CSR T 細胞(Beijing Sanbo Brain Hospital / Mar
ino Biotechnology Co.)), TAA (e.g., AMG 119 (Amgen)), NKG2D (e.g., CM-CS1 (Celya
d)), 又は CD123 (e.g., UCART123 (Cellectis S.A.))。前述の文は、前記抗原(例えば、
AMG 119(Amgen))に結合するCARの例を、更に提供する。これらのCAR構築物を、抗-CD5 AD
Cを用いた、本明細書中に開示するコンディショニング方法において使用することがある
。
【0120】
CAR構築物は、前記細胞外抗原結合ドメインを細胞内シグナリング・ドメインに連結す
る(文字通り、又は、ほぼ近接して、例えば、スペーサーを使って)膜貫通ドメインを更に
含むことがある。いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv
、Fab又は他の抗原結合部分)は、ヒンジ又は他のリンカーを使用して膜貫通ドメインに連
結していることがある。スペーサ、リンカー、又はヒンジを、前記細胞外抗原結合ドメイ
ンと前記膜貫通ドメインとの間に導入して、前記抗原結合ドメインが様々な方向に配向す
ることを可能にする柔軟性を提供し、それによって抗原の認識及び結合を容易にすること
がある。前記膜貫通ドメインの細胞質側を、CD28又はCD3ゼータ(CD3-ζ)の細胞内シグナ
リング・ドメインのような細胞内シグナリング・ドメインに付けることがある、及び、更
に、以下で論じるように1つ以上の共刺激ドメインを含むことがある。
【0121】
従って、ある特定の実施形態では、前記CARは、前記細胞外抗原結合ドメインと前記膜
貫通ドメインとの間に位置するヒンジ領域を更に含むことがある。例えば、前記ヒンジ領
域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM、CD28、又はCD8アルファのヒンジ
領域に由来することがある。ある特定の実施形態では、前記ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ
領域に由来する。別の実施形態では、前記ヒンジ領域は、CD8のヒンジ・ドメインである(
SwissProt/GenBank Acc.NoP01732参照)。
【0122】
ある実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、及びCD8ヒンジを介して連結した
膜貫通ドメインを含む: AKPTTTPAPR PPTPAPTIAS QPLSLRPEAC RPAAGGAVHT RGLDFA (配列
番号(SEQ ID NO): 9)。
【0123】
ある実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、及びハイブリッドCD8-CD28ヒン
ジを介して連結した膜貫通ドメインを含む: AKPTTTPAPR PPTPAPTIAS QPLSLRPEAC RPAAG
GAVHT RGLDFAPRKI EVMYPPPYLD NEKSNGTIIH VKGKHLCPSP LFPGPSKP (配列番号(SEQ ID NO):
10)。
【0124】
前記膜貫通ドメインは、細胞外抗原結合ドメインに寄与するタンパク質、エフェクター
機能シグナリング・ドメインに寄与するタンパク質、増殖シグナリング部分に寄与するタ
ンパク質、又は全く異なったタンパク質、の配列に由来していることがある。いくつかの
実施形態では、前記膜貫通ドメインは、前記CARの他のドメインのうちの1つと自然に関連
している。例えば、前記膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは、同じタンパク質の膜貫通
領域及び細胞質領域に由来することがある。ある実施形態では、前記CARの膜貫通ドメイ
ン及び細胞内ドメインは、CD28配列の連続している部分を含む。任意の膜貫通ドメインを
、そのドメインが抗原結合ドメインを含むCARを細胞膜に固定することができるならば、
本明細書に記載のCAR構築物に使用することができる。
【0125】
前記膜貫通ドメインは、天然の又は合成した供給源の何れかに由来することがある。前
記供給源が天然である場合、前記ドメインは、任意の膜結合又は膜貫通タンパク質に由来
することがある。本明細書中で提供する方法において使用することがある例示的な膜貫通
ドメインは、T-細胞レセプターのアルファ鎖、ベータ鎖、若しくはゼータ鎖、CD28、CD3
イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、
CD134、CD137、CD154、LFA-1 T-細胞共-レセプター、CD2 T-細胞共-レセプター/接着分
子、CD8アルファ、及びそれらのフラグメント、に由来することがある(例えば、少なく
とも上記の膜貫通ドメインを含む)。タンパク質の膜貫通ドメインは、当該分野で公知の
任意の方法(例えば、疎水性解析、構造解析など)を使用して、又は公的なデータベース(
例えば、UniProtデータベース)を使用することによって、同定することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインは合成したものであることがある。例示
的な実施形態では、前記膜貫通ドメインは、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主に
含むことがある。ある実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのト
リプレットを、合成膜貫通ドメインのそれぞれの端部に配置させることがある。任意選択
的に、短いオリゴの又はポリペプチドのリンカー(好ましくは2~10アミノ酸長)によっ
て、前記膜貫通ドメインとCARの細胞内シグナリング・ドメインとの間の連結が形成され
ることがある。グリシン-セリン・ダブレットは、特に好適なリンカーを提供する。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書中で使用するCAR中の膜貫通ドメインは、CD8の膜貫
通ドメイン又はその一部である。この目的のためのCD8の配列は、PCT公開番号WO2014/055
771A1に教示されている。
【0128】
いくつかの実施形態では、前記CAR中の膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメイン又はそ
の機能的部分である。例えば、CARは、LDPKLCYLLD GILFIYGVIL TALFLRVK (配列番号(SEQ
ID NO): 11)のアミノ酸配列を有するCD3の膜貫通ドメイン、又はその機能的部分(例えば
、LCYLLDGILF IYGVILTALF L (配列番号(SEQ ID NO): 12))、を含むことがある。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR中の膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメイン
である。CD28の例示的な配列、並びに例示的な膜貫通ドメイン配列を以下に提供する。い
くつかの実施形態では、前記CD28の膜貫通ドメインは、以下の例示的な膜貫通ドメイン配
列、又はそのフラグメント若しくはそのバリアント(その配列を含むCARを細胞膜に固定
することができるものである)を含む。従って、いくつかの実施形態では、前記CARの膜
貫通ドメインは、以下のアミノ酸配列を含むCD28の膜貫通ドメインである:FWVLVVVGGVLA
CYSLLVTVAFIIFWV(配列番号(SEQ ID NO): 13)。ある実施形態では、前記CARの膜貫通ドメ
インは、以下のアミノ酸配列を含むCD28の膜貫通ドメインである:IEVMYPPPYL DNEKSNGTI
I HVKGKHLCPS PLFPGPSKPF WVLVVVGGVL ACYSLLVTVA FIIFWV (配列番号(SEQ ID NO): 16)、
又はその機能的フラグメント、例えば配列番号(SEQ ID NO): 14。
【0130】
細胞外抗原結合ドメイン及び膜貫通ドメインに加えて、CARは、細胞内(又は細胞質)シ
グナリング・ドメインを更に含む。
【0131】
内因性のTCRを介して生成されるシグナルだけでは、T細胞を完全に活性化するには不十
分であり、二次的又は共-刺激シグナルも必要とされることがある、ということが知られ
ている。このように、T細胞の活性化は二つの異なる種類の細胞内シグナリング配列によ
って媒介されることがある。即ち、前記TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始させ
るもの(一次細胞内シグナリング配列)と、抗原-独立的に作用して二次シグナル又は共-刺
激シグナルを提供するもの(二次細胞内シグナリング配列)である。
【0132】
用語「細胞内シグナリング・ドメイン(intracellular signaling domain)」又は「細胞
内シグナリング・ドメイン(cytoplasmic signaling domain)」は、本明細書中で使用され
る場合、分子の細胞内部位をいう。前記細胞内シグナリング・ドメインは、CARを含む免
疫細胞(例えば、CAR-T細胞又はCAR発現NK細胞)の免疫エフェクタ機能を促進するシグナ
ル、を生成することができる。例えばCART細胞又はCAR発現NK細胞における免疫エフェク
ター機能の例としては、細胞溶解活性及びサイトカインの分泌を含むヘルパー活性が挙げ
られる。実施形態では、前記細胞内シグナル・ドメインがエフェクタ機能シグナルを伝達
し、その細胞に対して、特化した機能を実行するように指示する。細胞内シグナリング・
ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、その鎖全体を使用することは必須
ではない。切断を受けた細胞内シグナリング・ドメインの部分を使用する範囲について、
そのような切断を受けた部分は、それが前記エフェクタ機能シグナルを伝達する限り、イ
ンタクトな鎖の代わりに使用することができる。従って、細胞内シグナリング・ドメイン
という用語は、前記エフェクター機能シグナルを伝達するのに充分な細胞内シグナリング
・ドメインの任意の切断を受けた部分を含むことを意味する。
【0133】
ある実施形態では、前記CARの細胞内シグナリング・ドメインは、配列番号(SEQ ID NO)
: 15に記載するようなCD3ゼータのシグナリング領域、又はそのシグナリング部分を含む
:
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGER
RRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR (配列番号(SEQ ID NO): 15)。
【0134】
細胞内シグナリング・ドメインは、限定されるものではないが、CD3ゼータ、FcRガンマ
、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD278
(「ICOS」)、Fc-イプシロン-RI、CD66d、DAP10、DAP12から誘導されるものを、更に含む
ことがある。
【0135】
CARは、サイトカイン産生を増強する共刺激タンパク質又はタンパク質(例えば、CD28
及び4-1BB等)の細胞内シグナリング・ドメインに由来するポリペプチド鎖である「細胞
内共刺激ドメイン」を、更に含むことがある。例示的な共-刺激シグナリング領域として
は、4-1BB、CD21、CD28、CD27、CD127、ICOS、IL-15Rα、及びOX40、が挙げられる。
【0136】
ある特定の実施形態では、CARの細胞質共刺激ドメインは、4-1BBシグナリング・ドメイ
ンを単独で、又はCARの文脈において有益な任意の他の所望の細胞内ドメインと組み合わ
せて含む。4-1BBは、GenBank Acc 番号AAA62478.2 として提供されるアミノ酸配列、又は
非-ヒト種(例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿など)由来の同等の残基、を有するT
NFRスーパーファミリーのメンバーである;及び「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBank Ac
c 番号AAA62478.2 のアミノ酸残基214~255、又は非-ヒト種(例えば、マウス、げっ歯類
、サル、類人種など)由来の同等の残基、として定義される。
【0137】
ある実施形態では、前記CARの細胞内共刺激シグナリング・ドメインは、4-1BB(CD137)
の共-刺激シグナリング領域、又はそのシグナリング部分である:
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL (配列番号(SEQ ID NO): 60)。
【0138】
ある実施形態では、前記CARの共刺激シグナリング・ドメインは、CD28の共-刺激シグナ
リング領域配列である。例えば、共刺激シグナリング・ドメインは、以下のCD28共-刺激
シグナリング部位、又はそのシグナリング部位を含むことがある:
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS (配列番号(SEQ ID NO): 17)。
【0139】
例示的な実施形態では、前記CARの細胞内ドメインは、CD3-ゼータのシグナリング・ド
メインを、本発明のCARの文脈において有用である任意の他の所望の細胞内ドメインと組
合せて、含有することがある。ある特定の実施形態では、前記CARの細胞内ドメインは、C
D3ゼータのドメイン及び共刺激シグナリング領域(例えば、限定されるものではないが、
4-1BB、CD28、及びCD27の共刺激シグナリング領域)を含むことがある。
【0140】
本発明のCARの細胞内シグナリング部分内の細胞内シグナリング配列は、ランダム又は
特定の順序で互いに連結していても良い。任意選択的に、短いオリゴの又はポリペプチド
のリンカー又はスペーサ(好ましくは5~20アミノ酸長)を細胞内ドメインの間に挿入す
ることがある。GGGGS(配列番号(SEQ ID NO): 18)又は(GGGGS)×3(配列番号(SEQ ID NO):
19)は、特に好適なリンカーを提供する。
【0141】
ある実施形態では、本明細書で使用するCARは、抗-CD19モノクローナル抗体の単鎖可変
ドメインを含有する細胞外ドメイン、CD8αのヒンジ及び膜貫通ドメインを含有する膜貫
通ドメイン、並びにCD3ζのシグナリング・ドメイン及び4-1BBのシグナリング・ドメイン
を含有する細胞内ドメイン、を含む。例示的なCARは、Nicholson I C, et al., Mol Immu
nol 34:1157-1165 (1997)に記載されている抗-CD19モノクローナル抗体を含む細胞外ドメ
インに加えて、CD8αの21アミノ酸シグナル・ペプチド(GenBankアクセッション番号.NM_0
01768の26-88位の63ヌクレオチドから翻訳される)、を含む。CD8αヒンジ及び膜貫通ドメ
インは、GenBankアクセッション番号NM_001768の815~1021位の207ヌクレオチドから翻訳
される69アミノ酸からなる。好ましい実施形態のCD3ζシグナリング・ドメインは、GenBa
nkアクセッション番号NM_000734の1022~1360位の339ヌクレオチドから翻訳される112ア
ミノ酸を含む。
【0142】
前記CAR(上記)の細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間、
又は前記CARの細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間に、スペーサ又はヒンジ・ドメイ
ンが組み込まれていることがある。本明細書で使用する場合、「スペーサ・ドメイン」は
一般に、前記膜貫通ドメインをポリペプチド鎖中の細胞外ドメイン及び/又は細胞内ドメ
インに連結するように機能する任意のオリゴ又はポリペプチドを意味する。本明細書中で
使用する場合、ヒンジ・ドメインは一般に、前記CAR、若しくはそのドメインに柔軟性を
提供するように、及び/又はCAR、又はそのドメインの立体障害を防止するように機能す
る任意のオリゴ又はポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、スペーサ又はヒ
ンジ・ドメインは、300個までのアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好まし
くは5~20個のアミノ酸を含むことがある。本開示の態様はこの点に限定されないので、1
つ以上のスペーサ・ドメインがCARの他の領域に含まれてもよいことも理解されるべきで
ある。
【0143】
CARは、本明細書中に提供される配列を有する領域(例えば、抗原結合ドメイン、膜貫通
ドメイン、細胞内ドメイン、シグナリング・ドメイン、安全性ドメイン、及び/若しくは
リンカー、又はそれらの任意の組合せ)を含むことがあること、又はそれらのバリアント
、若しくはそれらの何れかのフラグメント(例えば、CAR活性に必要とされる機能を保持す
るバリアント及び/又はフラグメント)が本明細書中に記載するCARタンパク質に含まれ得
ること、は理解されるべきである。いくつかの実施形態では、バリアントは、示した配列
に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸が変化している。いくつか
の実施形態では、バリアントは、示した配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくと
も90%、90%~95%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一である配列を有する。いくつか
の実施形態では、フラグメントは、本明細書中に提供される配列よりも、1~5、5~10、1
0~20、20~30、30~40、又は40~50アミノ酸分、短い。いくつかの実施形態では、フラ
グメントは、提供する配列のN末端、C-末端、又は両方の末端領域でより短い。いくつか
の実施形態では、フラグメントは、本明細書中で提供する配列中のアミノ酸の数の80%~8
5%、85%~90%、90%~95%、又は95%~99%を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、上記の例示的な非限定的な配置は、前記CARの左側から右側
、N末端側からC末端側である。前記CARは、本明細書中に記載するように、要素の任意の
他の組合せを含んでもよく、又は更に含んでもよい。
【0145】
CAR構築物がその様々な部分で同定されると、CARを発現する免疫細胞が産生され、それ
によって、前記免疫細胞が前記CARを発現する。本方法は、本明細書中に記載する核酸分
子(例えば、RNA分子(例えば、mRNA))、又はCAR(例えば、本明細書中に記載するCAR)をコ
ードする核酸分子を含むベクターを、前記免疫細胞を導入すること(例えば、形質導入す
ること)を包含する。特に、本明細書中に開示するアミノ酸配列をコードする核酸が、本
発明に含まれる。また、本発明は、細胞集団(例えば、外因性RNAを一時的に発現する、RN
Aで操作した細胞)を作製する方法を提供する。本方法は、本明細書中に記載するようなRN
A(例えば、in vitroで転写したRNA又は合成RNA;本明細書中に記載するようなCARポリペ
プチドをコードするmRNA配列)を細胞に導入することを包含する。実施態様では、前記RNA
は、CARポリペプチドを一過性に発現する。ある実施形態では、前記細胞は本明細書に記
載の細胞(例えば、免疫エフェクタ細胞(例えば、T細胞若しくはNK細胞、又は細胞集団)
である。
【0146】
他の例示的なキメラ抗原レセプター構築物は、米国特許第 9,328,156号;米国特許第 9
,783,591号;米国特許第9,714,278号;米国特許第 9,765,156号;米国特許第 10,117,896
号;米国特許第9,573,988号;米国特許第 10,308,717号;米国特許第 10,221,245号;米
国特許第10,040,865号;米国特許公開公報第 2018/0256712A1号;米国特許公開公報第 20
18/0271907A1号;米国特許公開公報第2016/0046724A1号;米国特許公開公報第 2018/0044
424A1号;米国特許公開公報第 2018/0258149A1号;米国特許公開公報第2019/0151363A1号
;及び 米国特許公開公報第2018/0273601A1号、に開示されている;前記の特許及び特許
公開公報のそれぞれの内容は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0147】
III.抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)
本明細書中に記載するように、抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して、ヒト患者における
がん又は自己免疫疾患を治療する。より具体的には、抗-CD5 ADCを使用して、CAR療法も
受けているヒト対象において、CD5+細胞(例えば、CD5+ T細胞)を減少させることができる
。抗-CD5 ADCは、内因性T細胞をターゲットとし、これらの細胞を傷害することにより、
前記患者の免疫系が、前記対象に投与したCARを発現する免疫細胞(自己又は同種異系)を
攻撃しないようにする。このように、抗-CD5 ADCを、CAR療法と併用して、コンディショ
ニング・レジメンとして使用し、レシピエント(recipient)患者において、操作したCARを
発現する免疫細胞の受容を促進させる。コンディショニング・レジメンとして抗-CD5 ADC
を使用することの1つの利点は、一般的な全身リンパ球除去化学療法剤を前記対象に投与
する、CAR療法のコンディショニングの従来の方法よりも、CD5を発現する内因性T細胞を
減少させることが特異的にターゲット化されることである。
【0148】
抗-CD5抗体
CD5と結合することができるADCを治療薬剤として使用し、CARを発現する免疫細胞が拒
絶されるリスクを防止又は減少させることによって、CARを発現する免疫細胞のヒト患者
における受容を促進させることがある。
【0149】
本明細書中に記載する抗-CD5 ADCは、細胞毒素に連結した抗-CD5抗体又はその抗原結合
部分を含む。
【0150】
ヒトCD5は、リンパ球抗原T1、T1、Leu-1、及びLEU1とも呼ばれる。CD5は、ヒトT細胞上
に発現する。ヒトCD5の2つのアイソフォームが同定されてきている。アイソフォーム1は
、495アミノ酸を含み、Gladkikh et al (2017) Cancer Med.6(12):2984 and Jones et al
. (1986) Nature 323 (6086): 346)に記載されている。CD5(アイソフォーム1)のアミノ酸
配列を以下に示す(NCBI参照配列: NP_055022.2):
【化9】
【0151】
ヒトCD5の第2のアイソフォームは438アミノ酸であり、以下、NCBI参照配列: NP_001333
85.1として同定される。アイソフォーム1とは異なり、CD5アイソフォーム2は細胞内タン
パク質である。アイソフォーム2は、アイソフォーム1と比較して、異なる5' UTRを含み、
5'コーディング領域(coding region)のイン-フレーム部分を欠く。得られたアイソフォー
ム2は、アイソフォーム1と比較して、N末端が短い。CD5アイソフォーム2は、アイソフォ
ーム1と比較して、リーダー・ペプチドを欠き、Bリンパ球のサブセットに見られる細胞内
アイソフォームを示す。本明細書に記載のADCは、ヒトCD5の細胞外バージョンを表すヒト
CD5アイソフォーム1に特異的である。
【0152】
ある実施形態では、本明細書中に記載する方法及び組成物において使用することがある
抗-CD5抗体は、抗体5D7v(Ab5D7v)である。Ab5D7vの重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を以下
の配列番号(SEQ ID NO): 1に示す。
【化10】
【0153】
Ab5D7vのVH CDRアミノ酸配列を上記に下線で示し、以下の通りである: FSLSTSGMG(VH C
DR1;配列番号(SEQ ID NO): 3); WWDDD(VH CDR2;配列番号(SEQ ID NO): 4);及びRRATGTG
FDY(VH CDR3;配列番号(SEQ ID NO): 5)。
【0154】
Ab5D7vの軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を、配列番号(SEQ ID NO): 2)として以下に提
供する。
【化11】
【0155】
Ab5D7vのVL CDRアミノ酸配列を上記に下線で示し、以下の通りである: QDVGTA(VL CDR1
;配列番号(SEQ ID NO): 6); WTSTRHT(VL CDR2;配列番号(SEQ ID NO): 7);及びYNSYNT(
VL CDR3;配列番号(SEQ ID NO): 8)。
【0156】
ある実施形態では、抗-CD5 ADCは、配列番号(SEQ ID NO): 3に記載のアミノ酸配列を含
むCDR1ドメイン、配列番号(SEQ ID NO): 4に記載のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及
び配列番号(SEQ ID NO): 5に記載のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖、並びに
配列番号(SEQ ID NO):6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号(SEQ ID NO)
: 7に記載のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号(SEQ ID NO): 8に記載のア
ミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖、を含む抗-CD5抗体を含む、ここで、前記抗体
は、リンカーを介して細胞毒素にコンジュゲートしている。
【0157】
ある実施形態では、抗-CD5 ADCは、配列番号(SEQ ID NO): 1に記載のアミノ酸配列を含
む可変領域を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO): 2に記載のアミノ酸配列を含む可変領
域を含む軽鎖、を含む抗-CD5抗体を含む、ここで、前記抗体は、リンカーを介して細胞毒
素にコンジュゲートしている。
【0158】
別の実施形態では、本明細書中に記載するADCにおいて使用する抗-CD5抗体は、5D7抗体
である(例えば、US 20080254027を参照のこと、その開示は、本明細書に参照により取り
込まれる)。別の実施形態では、本明細書中に記載する方法及び組成物(ADCを含む)におい
て使用することがある抗-CD5抗体は、5D7抗体のバリアントである(例えば、US 200802540
27、その開示は、本明細書に参照により取り込まれる)。
【0159】
更に、ある特定の実施形態では、前記抗-CD5 ADCは、3日以下のヒト対象における血清
半減期を有する。
【0160】
本明細書中に記載するADCにおいて使用することがある更なる抗-CD5抗体を、ハイブリ
ドーマ産生などの当技術分野で公知の技術を使用して同定することがある。ハイブリドー
マを、マウスのシステムを用いて調製することがある。免疫化及びその後に融合するため
に脾細胞を単離するためのプロトコルは、当該分野で公知である。ハイブリドーマを産生
するための融合パートナー及び手順もまた公知である。あるいは、HuMAb-Mouse登録商標
又はXenoMouseTMを使用して、抗-CD5抗体を生成することもある。更なる抗-CD5抗体を作
製する際に、そのCD5抗原を単離及び/又は精製する。CD5抗原は、CD5の細胞外ドメイン
由来のCD5のフラグメントであることがある。動物の免疫化を、当技術分野で公知の任意
の方法によって行うことができる。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laborator
y Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1990、を参照のこと。マウス、ラット
、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ及びウマなどの動物を免疫するための方法は、当技術分野で
周知である。例えば、Harlow and Lane、同上及び、米国特許第5,994,619号、を参照。前
記CD5抗原を、免疫反応を刺激するために、アジュバントと共に投与することがある。当
技術分野で公知のアジュバントとしては、完全又は不完全フロイント・アジュバント、RI
BI(ムラミル・ジペプチド)又はISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。CD5抗原で動物を免
疫した後、免疫した動物から単離した細胞から抗体産生不死化細胞株を調製する。免疫化
後、前記動物を屠殺し、そしてリンパ節及び/又は脾臓B細胞を、当該分野で公知の方法(
例えば、がん遺伝子導入、がん原性ウイルス形質導入、発がん性又は変異原性化合物への
暴露、不死化細胞(例えば、骨髄腫細胞)との融合、及び腫瘍サプレッサー遺伝子の不活性
化)によって不死化する。例えば、Harlow and Lane、同上を参照。ハイブリドーマを、所
望の特性(例えば、強固な増殖、高い抗体産生、及び所望の抗体特性が挙げられる)につ
いて、選択する、クローニングする及び更にスクリーニングすることがある。
【0161】
本明細書中に記載する抗-CD5 ADCにおいて使用するための抗-CD5抗体はまた、CD5に結
合可能な分子についての抗体又は抗体フラグメントのライブラリを、ハイスループット・
スクリーニングすることを使用して、同定することがある。このような方法としては、当
技術分野で公知のin vitroディスプレイ技術、例えば、とりわけ、ファージ・ディスプレ
イ、バクテリア・ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、リボソ
ーム・ディスプレイ、mRNAディスプレイ、及びcDNAディスプレイなど、が挙げられる。生
物学的に関連する分子に結合する抗体、抗原結合フラグメント、又はリガンドを単離する
ためにファージ・ディスプレイを使用することは、例えば、Felici et al., Biotechnol.
Annual Rev. 1:149-183, 1995; Katz, Annual Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:27-4
5, 1997; 及び Hoogenboom et al., Immunotechnology 4:1-20, 1998、でレビューされて
きている、これらの各々の開示は、in vitroディスプレイ技術に関連するものとして、本
明細書に参照により取り込まれる。Kay, Perspect. Drug Discovery Des. 2:251-268, 19
95 及び Kay et al., Mol. Divers. 1:139-140, 1996に記載されるように、ランダム化し
たコンビナトリアル・ペプチド・ライブラリを構築して、細胞表面抗原に結合するポリペ
プチドを選択することも行われてきている、これらの各々の開示は、抗原結合分子の発見
に関連するものとして、本明細書に参照により取り込まれる。タンパク質類(例えば、多
量体タンパク質類)を、機能的分子として、ファージ・ディスプレイすることが、うまく
できてきている(例えば、EP 0349578; EP 4527839;及びEP 0589877、並びにChiswell and
McCafferty, Trends Biotechnol. 10:80-84 1992を参照、これらの各々の開示は、抗原
結合分子の発見のためのin vitroディスプレイ技術の使用に関するものとして、本明細書
に参照により取り込まれる)。更に、機能的抗体フラグメント(例えば、Fab及びscFvフラ
グメント)を、in vitroディスプレイ・フォーマットで、発現させることも行われてきて
いる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552- 554, 1990; Barbas et al., Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982, 1991; 及びClackson et al., Nature 352:624-628
, 1991、これらの各々の開示は、抗原結合分子の発見のためのin vitroディスプレイ・プ
ラットフォームに関連するものとして、本明細書に参照により取り込まれる)。
【0162】
in vitroディスプレイ技術に加えて、US2013/0288373に記載された手順を使用しながら
、計算モデリング技術を使用して、例えば、抗-CD5抗体又は抗体フラグメントをin silic
oで設計する、及び同定することがある(その開示は、抗-CD5抗体を同定するための分子
モデリング方法に関するものとして、本明細書に組み込まれる)。例えば、計算モデリン
グ技術を用いて、当業者のある者は、CD5の細胞外エピトープなどのCD5上の特異的エピト
ープに結合することができる分子を求めて、抗体又は抗体フラグメントのライブラリをin
silicoでスクリーニングすることがある。
【0163】
ある実施形態では、本明細書中に記載するADCにおいて使用する抗-CD5抗体は、細胞の
中に取り込まれることがある。抗-CD5抗体(又はそのフラグメント)を同定する際に、更な
る技術を使用して、細胞(例えば、T細胞)の表面上のCD5に結合し、更に、例えば、レセプ
ター媒介エンドサイトーシスによって、前記細胞が中に取り込むことができる抗体又は抗
原結合フラグメントを同定することがある。例えば、上記のin vitroディスプレイ技術を
、造血幹細胞の表面上のCD5に結合し、続いて中に取り込まれる抗体又はその抗原結合フ
ラグメントを求めてスクリーニングするように、適合させることがある。ファージ・ディ
スプレイは、このスクリーニング・パラダイムと組み合わせて使用することがあるような
技術の1つの代表である。CD5に結合し、続いてCD5+細胞の中に取り込まれる抗-CD5抗体又
はそのフラグメントを同定するために、当業者のある者は、Williams et al., Leukemia
19:1432-1438, 2005に記載されるファージ・ディスプレイ技術を使用することがある(そ
の開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)。
【0164】
抗-CD5抗体又はそのフラグメントを中に取り込む許容量を、例えば、当該分野で公知の
放射性核種内部取込アッセイを使用して、評価することがある。例えば、本明細書中に記
載する、又は当技術分野で公知のin vitroディスプレイ技術を用いて同定した抗-CD5抗体
又はそのフラグメントを、放射性同位元素(例えば、18F, 75Br, 77Br, 122I, 123I, 124
I,125I, 129I, 131I, 211At, 67Ga, 111In, 99Tc, 169Yb, 186Re, 64Cu, 67Cu, 177Lu, 7
7As, 72As, 86Y,90Y, 89Zr, 212Bi, 213Bi, 又は 225Ac)を取り込ませることにより、機
能的にすることがある。例えば、放射性ハロゲン(例えば、18F, 75Br, 77Br, 122I, 123
I, 124I,125I, 129I, 131I, 211At等)を、求電子性ハロゲン試薬(例えば、ヨード化ビー
ズ、Thermo Fisher Scientific, Inc., Cambridge, MA)を含むビーズ(例えば、ポリスチ
レン・ビーズ)を使用して、抗体、そのフラグメント、又はリガンドの中に組み込ませる
ことがある。放射性標識した抗体又はそのフラグメントを、造血幹細胞と共に、中に取り
込まれるのに充分な時間、インキュベートすることがある。中に取り込まれた抗体、又は
そのフラグメントを、得られた造血幹細胞から放出される放射線(例えば、γ線)を検出し
、回収した洗浄バッファーから放出される放射線(例えば、γ線)と比べて、同定すること
がある。前記の内部取込アッセイを使用して、ADCを特徴付けることもある。
【0165】
いくつかの実施形態では、前記抗-CD5抗体(又はそのフラグメント)は、定義された血清
半減期を有する。例えば、抗-CD5抗体(又はそのフラグメント)は、ヒト患者において、約
1~24時間の血清半減期を有することがある。このような抗-CD5抗体を含むADCはまた、例
えば、ヒト患者において約1~24時間の血清半減期を有することがある。血清レベルを計
測することによる薬物動態解析を、当技術分野で公知のアッセイによって行うことがある
。
【0166】
抗-CD5抗体を組換えにより産生するためには、抗体をコードする核酸(例えば、上記の
よう)を、単離し、及び宿主細胞において更にクローニングする及び/又は発現させるた
めに、1種以上のベクターに挿入する。このような核酸分子を、従来の手順を使用して(例
えば、前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオ
チド・プローブを使用することによって)容易に単離することができ、及びシークエンシ
ングをすることができる。
【0167】
抗体をコードするベクターをクローニングする又は発現させるのに好適な宿主細胞とし
ては、本明細書に記載の原核生物の、又は真核生物の細胞が挙げられる。例えば、抗体類
を、特にグリコシル化及びFcエフェクタ機能を必要としない場合に、バクテリアの中で産
生することがある。バクテリアの中で抗体フラグメント及びポリペプチドを発現させるこ
とについては、例えば、米国特許第5,648,237号, 5,789,199号,及び5,840,523を参照のこ
と。(大腸菌の中で抗体フラグメントを発現させることを記載する、Charlton, Methods
in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J., 2003
), pp. 245-254、も参照のこと)。発現させた後、前記抗体をバクテリア細胞のペースト
(paste)から可溶性画分として単離し、更に精製することがある。
【0168】
脊椎動物細胞を宿主としても使用することができる。例えば、懸濁液中で増殖するよう
に適合化した哺乳動物細胞株は有益であることがある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の
例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚腎臓株(293又は293細
胞、例えば、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載されている);乳児ハム
スター腎臓細胞(BHK);マウス・セルトリ細胞(TM4細胞、例えば、Mather, Biol. Reprod.
23:243-251 (1980)に記載されている);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細
胞(VERO-76);ヒト子宮頸部がん(carcinoma)細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファ
ロー・ラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房
腫瘍(MMT 060562);TRI細胞、例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-
68 (1982)に記載されている;MRC 5細胞;及びFS4細胞、である。他の有用な哺乳動物宿
主細胞株としては、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、DHFR-CHO細胞等を
含む(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));及び骨髄腫細胞株
(例えば、Y0、NS0及びSp2/0)、が挙げられる。抗体産生に適した、ある特定の哺乳動物宿
主細胞株のレビューについては、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biolog
y, Vol. 248 (B. K. C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)を
参照のこと。ある実施形態では、前記宿主細胞は真核生物、例えば、チャイニーズ・ハム
スター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載する組成物及び方法と併せて使用すること
がある抗-CD5抗体としては、以下の表1A及び1Bに記載するCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、
CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3領域の組合せを含むものが挙げられる。
【0170】
【0171】
【0172】
細胞毒素
種々の細胞毒素を、本明細書中に記載する併用療法における使用のために、リンカーを
介して抗-CD5抗体にコンジュゲートすることがある。特に、抗-CD5 ADCは、細胞毒性部分
(又は細胞毒素)にコンジュゲートした(即ち、リンカーによって共有結合した)抗体(又は
その抗原結合フラグメント)を含む。本明細書中で使用する場合、用語「細胞毒素」、「
細胞毒性部分」及び「薬剤」を、互換的に使用する。様々な実施形態では、前記細胞毒性
部分は、コンジュゲートとして結合している場合、細胞毒性は減少している、又は細胞毒
性を示さない、しかし、前記リンカーからの切断後、細胞毒性を再び示すようになる。様
々な実施形態では、前記細胞毒性部分は、前記リンカーから切断されること無しに、細胞
毒性を保持する。いくつかの実施形態では、前記細胞毒性分子は、本明細書中に記載する
ような、細胞の中に取り込まれる抗体又はそのフラグメントにコンジュゲートする、その
結果、前記抗体又はそのフラグメントが細胞の中に取り込まれた後に、前記細胞毒素がそ
の細胞内ターゲットにアクセスし、及び、例えば、T細胞死を媒介することがある。
【0173】
従って、本発明のADCは、一般式Iであることがある、ここで、抗体又はその抗原結合フ
ラグメント(Ab)は、リンカー(L)にコンジュゲート(共有結合)し、化学的な部分構造(Z)を
通じて、細胞毒性部分(「薬剤」、D)にコンジュゲートする。
Ab-(Z-L-D)n (I)
【0174】
従って、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、整数nによって示されるような多
数の薬物部分にコンジュゲートすることがある、ここで、整数nは抗体当たりの細胞毒素
の平均個数を表す、ここで、整数nは例えば約1~約20の範囲であることがある。任意の数
(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、又は約8)の細胞毒素が前記抗体にコン
ジュゲートすることがある。いくつかの実施形態では、nは1~4である。いくつかの実施
形態では、nは1~3である。いくつかの実施形態では、nは約2である。いくつかの実施形
態では、nは約1である。コンジュゲーション反応によるADCの調製物中の抗体当たりの薬
物部分の平均個数を、マス・スペクトロスコピー、ELISAアッセイ、及びHPLCのような従
来の手段によって明らかにすることができる。nに関するADCの定量的な分布も決定するこ
とができる。場合によっては、逆相HPLC又は電気泳動のような手段によって、nが特定の
数値である均質なADCを、他の薬物搭載量を有するADCから、分離する、精製する、及び特
性評価することができる。
【0175】
いくつかの抗-CD5 ADCについて、nは、抗体上の結合部位の数によって制限されること
がある。例えば、結合がシステインのチオールである場合、抗体は1個又は数個のシステ
インのチオール基しかもたない、又はリンカーが結合するのに十分な反応性をもつチオー
ル基を1個又は数個しかもたない。一般に、抗体は、薬物部分に結合することができる遊
離及び反応性システイン基を多くは含まない;主に、抗体中のシステインのチオール残基
は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態では、抗体を、ジチオトレイ
トール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元して、部分
的又は全還元条件下で、反応性システインのチオール基を生成させることができる。ある
特定の実施形態では、より高く薬物を搭載させると(例えば、n>5)、ある特定の抗体-薬物
コンジュゲートでは凝集性、不溶性、毒性が引き起こされる、又は細胞透過性が失われる
ことが引き起されることがある。
【0176】
ある特定の実施形態では、コンジュゲーション反応の間に、理論上の最大よりも少ない
薬物部分が、抗体にコンジュゲートする。抗体は、例えば、以下に論じるように、薬剤-
リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含むことがある。最も反応性
の高いリジン基のみがアミン反応性リンカー試薬と反応することができる。ある特定の実
施形態では、抗体を、変性条件下に供し、リジン又はシステインのような反応性求核基を
表に出す。
【0177】
ADCの搭載(薬剤/抗体比)を、種々の方法で(例えば、(i)抗体に対する、薬物-リンカ
ー中間体又はリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応の時
間又は温度を制限すること、(iii)システインのチオール修飾のために、部分的又は制限
的な還元条件下にすること、(iv)リンカー-薬物結合の数及び/又は位置をコントロール
するために、システイン残基の数及び位置を改変するように、抗体のアミノ酸配列を組換
え技術によって操作すること)、コントロールすることがある。
【0178】
本明細書に記載の組成物及び方法と共に使用するのに適した細胞毒素としては、当該技
術分野において公知の、とりわけ、DNA-インターカレーティング剤(例えば、アントラサ
イクリン)、紡錘体装置を破壊することができる薬剤(例えば、ビンカ・アルカロイド、メ
イタンシン、メイタンシノイド、及びその誘導体)、RNAポリメラーゼ阻害剤(例えば、α-
アマニチン等のアマトキシン、及びその誘導体)、並びにタンパク質生合成を破壊するこ
とができる薬剤(例えば、サポリン及びリシンA鎖等のrRNA N-グリコシダーゼ活性を示す
薬剤)が挙げられる。
【0179】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、微小管結合剤(例えば、メイタンシン又は
メイタンシノイド)、アマトキシン、シュードモナス外毒素A、deブーガニン、ジフテリア
毒素、サポリン、アウリスタチン、アントラサイクリン、カリケアマイシン、イリノテカ
ン、SN-38、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二
量体、インドリノベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン二量体、又はそのバリ
アント、又は本明細書に記載する若しくは当該技術分野で公知の他の細胞毒性化合物であ
る。
【0180】
いくつかの実施形態では、前記抗体-薬物コンジュゲートの細胞毒素は、RNAポリメラー
ゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマトキシ
ン又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示する抗体-薬物コ
ンジュゲートの細胞毒素は、アマトキシン又はその誘導体(例えば、α-アマニチン、β-
アマニチン、γ-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、
アマヌリン酸、プロアマヌリン又はその誘導体など)である。
【0181】
本発明の方法において有用な抗-CD5 ADCにおいて使用することがある細胞毒素に関する
更なる詳細を、以下に記載する。
【0182】
アマトキシン
いくつかの実施形態では、前記RNAポリメラーゼ阻害剤は、アマトキシン又はその誘導
体である。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示する抗体-薬物コンジュゲートの
細胞毒素は、アマトキシン又はその誘導体(例えば、α-アマニチン、β-アマニチン、γ
-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、アマヌリン酸、
プロアマヌリン又はその誘導体など)である。種々の天然に存在するアマトキシンの構造
は、式II及び一緒に提示する表2によって表される、及び、例えば、Zanotti et al., In
t. J. Peptide Protein Res. 30, 1987, 450-459に開示される。
【化12】
【0183】
【0184】
ある実施形態では、前記細胞毒素はアマニチン又はその誘導体である。ある実施形態で
は、前記細胞毒素はα-アマニチン又はその誘導体である。
【0185】
アマトキシン又はその誘導体上の多くの位置は、連結部分Lと共有結合する位置として
の役割を果たすことができる、及びそれ故に、前記抗体、又はその抗原結合フラグメント
と共有結合する位置としての役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、式I
のADC中の細胞毒素は、式(II)で表されるアマトキシン又はその誘導体である。
【0186】
ある実施形態では、前記ADCは式Ab-Z-L-Amで表される、ここで、AbはCD5に結合する抗
体又はその抗原結合フラグメントである、Lはリンカーである、Zは化学的な部分構造であ
る、Amはアマトキシンである。この実施形態では、前記リンカー-アマトキシン・コンジ
ュゲートAm-L-Zは、式(III)で表される:
【化13】
ここで:
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、5員ヘ
テロシクロアルキル基を形成する;
R
3はH、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5, R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9はH、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは、-L-Z'又は-L-Z-Abである、ここで、Lはリンカーである、及び任意選択的に置
換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置
換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルケニル、任意選択的
に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルキニル、任意選
択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、任意
選択的に置換されたアリール、である;又はジペプチドを含む;又は-((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-
である(ここで、m及びnは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から
選択される);Z'は反応性部分である、及びZはZ'とAb上の官能基とのカップリング反応
から生じる化学的な部分構造である;並びに、
R
Dは、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケ
ニル、C
2-C
6アルキニル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキ
ル、アリール、ヘテロアリール、又はそれらの組み合わせである、ここで、各C
1-C
6アル
キル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケニル、C
2-C
6アルキニ
ル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又は
ヘテロアリールは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロ
アルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、ア
シルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カル
バメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アル
コキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、
メルカプト、及びニトロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、
任意選択的に置換されている。
【0187】
式(III)は、アマトキシン及びリンカーを含む、並びに、いくつかの実施形態では、リ
ンカー、化学的な部分構造、及び抗体を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシンである、及びリンカー-アマト
キシン・コンジュゲート又は抗体-リンカー-アマトキシン・コンジュゲートは式(IIIA)で
表される:
【化14】
ここで:
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、5員ヘ
テロシクロアルキル基を形成する;
R
3はH、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5, R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9はH、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは、-L-Z'又は-L-Z-Abである、ここで、Lはリンカーである、及び任意選択的に置
換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置
換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルケニル、任意選択的
に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルキニル、任意選
択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、任意
選択的に置換されたアリール、である;又はジペプチドを含む;又は-((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-
である(ここで、m及びnは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から
選択される);Z'は反応性部分である、及びZはZ'とAb上の官能基とのカップリング反応
から生じる化学的な部分構造である;並びに、
R
Dは、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケ
ニル、C
2-C
6アルキニル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキ
ル、アリール、ヘテロアリール、又はそれらの組み合わせである、ここで、各C
1-C
6アル
キル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケニル、C
2-C
6アルキニ
ル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又は
ヘテロアリールは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロ
アルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、ア
シルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カル
バメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アル
コキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、
メルカプト、及びニトロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、
任意選択的に置換されている。
【0189】
いくつかの実施形態では、前記アマトキシンは、1個のRC置換基を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、R
A 及びR
Bは、それらが結合している酸素原子と一緒になっ
て、次式の5員ヘテロシクロアルキル基を形成する:
【化15】
ここで、Yは-(C=O)-、-(C=S)-、-(C=NR
E)-, 又は-(CR
ER
E’)-である;並びに
R
E及びR
E’は、それぞれ独立して、H、C
1-C
6アルキレン-R
C、C
1-C
6ヘテロアルキレン
-R
C、C
2-C
6アルケニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロアルケニレン-R
C、C
2-C
6アルキニレン-R
C、C
2-
C
6ヘテロアルキニレン-R
C、シクロアルキレン-R
C、ヘテロシクロアルキレン-R
C、アリー
レン-R
C、若しくはヘテロアリーレン-R
C、又はそれらの組み合わせである;ここで、各C
1
-C
6アルキレン-R
C、C
1-C
6ヘテロアルキレン-R
C、C
2-C
6アルケニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロア
ルケニレン-R
C、C
2-C
6アルキニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロアルキニレン-R
C、シクロアルキレ
ン-R
C、ヘテロシクロアルキレン-R
C、アリーレン-R
C、又はヘテロアリーレン-R
Cは、アル
キル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル、
アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルアミ
ノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、ヘ
テロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル、
ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニトロ
からなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、任意選択的に置換されて
いる。式(IIIA)は、アマトキシン及びリンカーを含む、並びに、いくつかの実施形態では
、リンカー、化学的な部分構造、及び抗体を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、以下
を形成する:
【化16】
ここで、
R
3はH又はR
Cである。
【0192】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、以下
を形成する:
【化17】
ここで、
R
3はH又はR
Cである;
R
4及びR
5は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、R
C、又はOR
Dである;
R
6及びR
7は、それぞれHである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、又はNHR
Cである;
R
9はH又はOHである;並びに、
ここで、R
C及びR
Dは、上記で定義した通りである。
【0193】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R
1はH、OH、又はOR
Aである;
R
2はH、OH、又はOR
Bである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、以下
を形成する:
【化18】
ここで、
R
3、R
4、R
6、及びR
7はそれぞれHである;
R
5がOR
Cである;
R
8がOH又はNH
2である;
R
9がH又はOHである;
Qは-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;並びに、
ここで、R
C 及びR
Dは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2016/0002298号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0194】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3は、RCである;
R4、R6、及びR7は、それぞれHである;
R5は、H、OH、又はOC1-C6アルキルである;
R8は、OH又はNH2である;
R9は、H又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2014/0294865号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0195】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3、R6、及びR7は、それぞれHである;
R4とR5は、それぞれ独立してH、OH、ORC、又はRCである;
R8は、OH又はNH2である;
R9は、H又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2015/0218220号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0196】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIAで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3、R6、及びR7は、それぞれHである;
R4とR5は、それぞれ独立してH、又はOHである;
R8は、OH、NH2、ORC、又はNHRCである;
R9はH又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許第9,233,173 及び9,399,681号に記載されてお
り、この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0197】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される:
【化19】
ここで:
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、5員ヘ
テロシクロアルキル基を形成する;
R
3はH、R
C、又はR
Dである;
R
4、R
5, R
6、及びR
7は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、OR
D、R
C、又はR
Dである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、OR
D、NHR
C、又はNR
CR
Dである;
R
9はH、OH、OR
C、又はOR
Dである;
Qは-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;
R
Cは、-L-Z'又は-L-Z-Abである、ここで、Lはリンカーである、及び任意選択的に置
換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置
換されたC
2-C
6アルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルケニル、任意選択的
に置換されたC
2-C
6アルキニル、任意選択的に置換されたC
2-C
6ヘテロアルキニル、任意選
択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、任意
選択的に置換されたアリール、である;又はジペプチドを含む;又は-((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-
である(ここで、m及びnは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から
選択される);Z'は反応性部分である、及びZはZ'とAb上の官能基とのカップリング反応
から生じる化学的な部分構造である;並びに、
R
Dは、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケ
ニル、C
2-C
6アルキニル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキ
ル、アリール、ヘテロアリール、又はそれらの組み合わせである、ここで、各C
1-C
6アル
キル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6ヘテロアルケニル、C
2-C
6アルキニ
ル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又は
ヘテロアリールは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロ
アルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、ア
シルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カル
バメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アル
コキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、
メルカプト、及びニトロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、
任意選択的に置換されている。
【0198】
式(IIIA)は、アマトキシン及びリンカーを含む、並びに、いくつかの実施形態では、リ
ンカー、化学的な部分構造、及び抗体を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、R
A 及びR
Bは、それらが結合している酸素原子と一緒になっ
て、次式の5員ヘテロシクロアルキルを形成する:
【化20】
ここで、Yは-(C=O)-、-(C=S)-、-(C=NR
E)-, 又は-(CR
ER
E’)-である;並びに
R
E及びR
E’は、それぞれ独立して、H、C
1-C
6アルキレン-R
C、C
1-C
6ヘテロアルキレン-R
C、C
2-C
6アルケニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロアルケニレン-R
C、C
2-C
6アルキニレン-R
C、C
2-C
6
ヘテロアルキニレン-R
C、シクロアルキレン-R
C、ヘテロシクロアルキレン-R
C、アリーレ
ン-R
C、若しくはヘテロアリーレン-R
C、又はそれらの組み合わせである;ここで、各C
1-C
6アルキレン-R
C、C
1-C
6ヘテロアルキレン-R
C、C
2-C
6アルケニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロアル
ケニレン-R
C、C
2-C
6アルキニレン-R
C、C
2-C
6ヘテロアルキニレン-R
C、シクロアルキレン-
R
C、ヘテロシクロアルキレン-R
C、アリーレン-R
C、若しくはヘテロアリーレン-R
Cは、ア
ルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル
、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルア
ミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、
ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル
、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニト
ロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、任意選択的に置換され
ている。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ア
マトキシン-リンカーコンジュゲート又はその誘導体にコンジュゲートし、式IIIBで表さ
れる、ここで、
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、次式
の5員ヘテロシクロアルキルを形成する:
【化21】
ここで、R
3はH又はR
Cである。
【0201】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される、ここで、
R
1はH、OH、OR
A、又はOR
Cである;
R
2はH、OH、OR
B、又はOR
Cである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、次式
の5員ヘテロシクロアルキル基を形成する:
【化22】
ここで、
R
3はH又はR
Cである;
R
4及びR
5は、それぞれ独立してH、OH、OR
C、R
C、又はOR
Dである;
R
6及びR
7は、それぞれHである;
R
8は、OH、NH
2、OR
C、又はNHR
Cである;
R
9はH又はOHである;並びに、
ここで、R
C及びR
Dは、上記で定義した通りである。
【0202】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される、ここで、
R
1はH、OH、又はOR
Aである;
R
2はH、OH、又はOR
Bである;
R
A 及びR
Bは、存在する場合、それらが結合している酸素原子と一緒になって、次式
の5員ヘテロシクロアルキル基を形成する:
【化23】
ここで、
R
3、R
4、R
6、及びR
7はそれぞれHである;
R
5がOR
Cである;
R
8がOH又はNH
2である;
R
9がH又はOHである;
Qは-S-、-S(O)-、又は-SO
2-である;並びに、
ここで、R
C 及びR
Dは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2016/0002298号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0203】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3は、RCである;
R4、R6、及びR7は、それぞれHである;
R5は、H、OH、又はOC1-C6アルキルである;
R8は、OH又はNH2である;
R9は、H又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2014/0294865号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0204】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3、R6、及びR7は、それぞれHである;
R4とR5は、それぞれ独立してH、OH、ORC、又はRCである;
R8は、OH又はNH2である;
R9は、H又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2015/0218220号に記載されており、
この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0205】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素はアマトキシン又はその誘導体である、及び前
記アマトキシン-リンカー・コンジュゲートは式IIIBで表される、ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立してH又はOHである;
R3、R6、及びR7は、それぞれHである;
R4とR5は、それぞれ独立してH、又はOHである;
R8は、OH、NH2、ORC、又はNHRCである;
R9はH又はOHである;
Qは、-S-、-S(O)-、又は-SO2-である;並びに、
ここで、RC 及びRDは、上記で定義した通りである。このようなアマトキシン-リンカ
ー・コンジュゲートは、例えば、米国特許第9,233,173 及び9,399,681号に記載されてお
り、この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0206】
アウリスタチン
本明細書に記載する抗-CD5抗体及びその抗原結合フラグメントは、アウリスタチンであ
る細胞毒素にコンジュゲートしていることがある(米国特許第5,635,483号;第5,780,588号
)。アウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、核分裂及び細胞分裂を妨げる抗有糸分
裂剤であり(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584
)、並びに抗がん活性(米国特許第5,663,149号)及び抗真菌活性(Pettit et al (1998) Ant
imicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965). (米国特許第5,635,483; 5,780,588号)を有
する。アウリスタチン薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシ
ル)末端を介して、抗体に結合することがある(WO02/088172)。
【0207】
例示的なアウリスタチンの実施形態は、N末端結合モノメチル・アウリスタチン薬物部
分DE及びDFを含み(それぞれ、MMAE及びMMAF)、これらは、Senter et al, Proceedings of
the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623, 2
004年3月28日に開示されている(この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込ま
れる)。
【0208】
例示的なアウリスタチンの実施形態はMMAEである:
【化24】
ここで、その波線は、抗体-薬物又は薬物-リンカー・コンジュゲート(本明細書で記載
するように、-L-Z-Ab又は-L-Z')のリンカーへの共有結合の位置を示す。
【0209】
別の例示的なアウリスタチンの実施形態はMMAFである:
【化25】
ここで、その波線は、US 2005/0238649で開示されているように、抗体-リンカー・コン
ジュゲート(本明細書で記載するように、-L-Z-Ab又は-L-Z')のリンカーへの共有結合の位
置を示す:
【0210】
アウリスタチンは以下の方法に従って調製することができる:米国特許第5,635,483号
;米国特許第5,780,588;Pettit et al (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465; Pett
it et al (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277; Pettit, G. R., et al. Synthe
sis, 1996, 719-725; Pettit et al (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 15:859-863;
及び Doronina (2003) Nat. Biotechnol. 21(7):778-784。
【0211】
メイタンシノイド
本明細書に記載する抗体及びその抗原結合フラグメントは、微小管結合剤である細胞毒
素にコンジュゲートしていることがある。いくつかの実施形態では、前記微小管結合剤は
、メイタンシン、メイタンシノイド又はメイタンシノイド類似体である。メイタンシノイ
ドは微小管と結合し、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤
である。メイタンシンは最初に、東アフリカ低木Maytenus serrataから単離された(米国
特許第3,896,111号)。続いて、特定の微生物もまた、メイタンシノイド(例えば、メイタ
ンシノール及びC-3メイタンシノール・エステル)を産生することが発見された(米国特許
第4,151,042号)。合成メイタンシノール、並びにその誘導体及びその類似体は例えば、米
国特許4,137,230; 4,248,870; 4,256,746; 4,260,608; 4,265,814; 4,294,757; 4,307,01
6; 4,308,268; 4,308,269; 4,309,428; 4,313,946; 4,315,929; 4,317,821; 4,322,348;
4,331,598; 4,361,650; 4,364,866; 4,424,219; 4,450,254; 4,362,663; 及び 4,371,533
号において開示されている。メイタンシノイドの薬物部分は、抗体薬物コンジュゲート
において魅力的な薬物部分である。なぜならば、メイタンシノイドの薬物部分は:(i)発
酵又は、発酵産物の化学修飾、誘導体化によって調製することに、比較的アクセス可能で
ある、(ii)非-ジスルフィド・リンカーを介した抗体へのコンジュゲートに適した官能基
による誘導体化がやり易い、(iii)血漿中で安定である、及び(iv)種々の腫瘍細胞株に対
して効果的である、からである。
【0212】
好適なメイタンシノイドの例としては、メイタンシノール、合成メイタンシノール、並
びにメイタンシノール類似体及び誘導体、のエステルが挙げられる。メイタンシノイド、
メイタンシノール、並びにメイタンシノール類似体、及び誘導体のように、微小管形成を
阻害し、哺乳動物細胞に対して非常に毒性である、任意の細胞毒素が本明細書に含まれる
。
【0213】
好適なメイタンシノール・エステルの例としては、修飾された芳香環を有するもの、及
び他の位置に修飾を有するものが含まれる。そのような好適なメイタンシノイドは、米国
特許第4,137,230; 4,151,042; 4,248,870; 4,256,746; 4,260,608; 4,265,814; 4,294,7
57; 4,307,016; 4,308,268; 4,308,269; 4,309,428; 4,313,946; 4,315,929; 4,317,821;
4,322,348; 4,331,598; 4,361,650; 4,362,663; 4,364,866; 4,424,219 ;4,450,254; 4,
322,348; 4,362,663; 4,371,533; 5,208,020; 5,416,064; 5,475,092; 5,585,499; 5,846
,545; 6,333,410; 7,276,497; 及び7,473,796号に開示されており、これらの各々は、メ
イタンシノイド及びその誘導体に関連するものとして、本明細書に参照により取り込まれ
る。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞毒性薬物と
して、チオール含有メイタンシノイド(DM1)(正式にはN
2'-デアセチル-N
2'-(3-メルカプ
ト-1-オキソプロピル)-メイタンシンと呼ばれる)を利用する。DM1は、以下の構造式IVで
表される:
【化26】
。
【0215】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、チオール含有メイタンシノイドN
2
'-デアセチル-N
2'(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシン(例えば、DM
4)を細胞毒性薬物として利用する。DM4は、以下の構造式Vで表される:
【化27】
。
【0216】
立体障害チオール結合を含む側鎖を含む別のメイタンシノイドは、N
2'-デアセチル-N-
2
'(4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM3と呼ばれる)であり、以下の構造式
VIで表される:
【化28】
。
【0217】
米国特許第5,208,020 及び 7,276,497が教示する各メイタンシノイドを、本発明のコン
ジュゲートにおいて使用することもある。この点に関して、5,208,020及び7,276,697の開
示全体は、本明細書に参照により取り込まれる。
【0218】
メイタンシノイド上の多くの位置は、連結部分と共有結合する位置としての役割を果た
すことができる、及び、それ故に前記抗体又はその抗原結合フラグメントと共有結合する
位置としての役割を果たすことができる(本明細書に記載するように、-L-Z-Ab又は-L-Z'
)。例えば、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒ
ドロキシで修飾されたC-15位、及びヒドロキシ基を有するC-20位は、全て有用であると予
想される。いくつかの実施形態では、前記C-3位は、連結部分と共有結合する位置として
の役割を果たし、いくつかの特定の実施形態では、メイタンシノールのC-3位が、連結部
分と共有結合する位置としての役割を果たす。抗体-メイタンシノイド・コンジュゲート
を作製するために、当該技術分野で知られている多くの連結基が存在し、例えば、それら
は、米国特許第5,208,020、6,441,163、及び欧州特許第0425235 B1; Chari et al., Canc
er Research 52:127-131 (1992); 並びに U.S. 2005/0169933 A1に開示されているもの等
を含む(これらの開示は、本明細書に明確に参照により取り込まれる)。更なる結合基は
、本明細書に記載され、例示される。
【0219】
本発明はまた、メイタンシノイド及びコンジュゲートの種々の異性体及び混合物を含む
。本発明の特定の化合物及びコンジュゲートは、種々の立体異性体、鏡像異性体、及びジ
アステレオマーの形態で存在することがある。このような抗体-メイタンシノイド・コン
ジュゲートを生成することは、米国特許5,208,020、5,416,064、6,333,410、6,441,163、
6,716,821、及び7,368,565に記載されている(これらの各々は、その全体が本明細書に取
り込まれる)。
【0220】
アントラサイクリン
他の実施形態において、本明細書に記載する抗体及びその抗原結合フラグメントは、ア
ントラサイクリン分子である細胞毒素にコンジュゲートしていることがある。アントラサ
イクリンは、細胞傷害活性を示す抗生物質化合物である。研究によれば、アントラサイク
リンは、以下を含む多数の異なるメカニズムによって、細胞を死滅させることがあること
が示されてきている: 1)前記薬物分子が細胞のDNAにインターカレーションすることによ
って、DNA依存性の核酸合成を阻害すること;2) 薬物によるフリーラジカルの産生、フリ
ーラジカルは、次いで細胞性高分子と反応して細胞に損傷を引き起こす、又は3)薬物分子
と細胞膜との相互作用[例えば、C. Peterson et al.," Transport And Storage Of Anthr
acycline In Experimental Systems And Human Leukemia" in Anthracycline Antibiotic
s In Cancer Therapy; N.R. Bachur, "Free Radical Damage" id. at pp.97-102を参照の
こと]。細胞毒性の可能性があるため、白血病、乳がん、肺がん、卵巣腺がん及び肉腫の
ような多数のがんの治療にアントラサイクリンが用いられている[例えば、P.H- Wiernik,
in Anthracycline: Current Status And New Developments p 11を参照]。一般的に使用
されるアントラサイクリンには、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びダウ
ノマイシンが含まれる。
【0221】
アントラサイクリンの代表的な例としては、限定されるものではないが、ダウノルビシ
ン(Cerubidine; Bedford Laboratories)、ドキソルビシン(アドリアマイシン;Bedford L
aboratories;塩酸ドキソルビシン、ヒドロキシ-ダウノルビシン、及びルベックス(Rubex
)とも呼ばれる)、エピルビシン(Ellence;ファイザー)、及びイダルビシン(イダマイシン;
ファイザー社)が挙げられる。アントラサイクリン類似体であるドキソルビシン(ADRIAMYC
INO)は、インターカレーションによってDNAと相互作用し、及び転写のためにDNAをほどく
酵素トポイソメラーゼIIが進むことを阻害する、と考えられている。ドキソルビシンは、
トポイソメラーゼII複合体を、複製のためにDNA鎖を切断した後に安定化させ、DNA二重ら
せんが再び閉じることを防ぎ、それによって複製のプロセスを止める。ドキソルビシン及
びダウノルビシン(DAUNOMYCIN)は、プロトタイプの細胞毒性天然物アントラサイクリン化
学療法剤である(Sessa et al., (2007) Cardiovasc. Toxicol. 7:75-79)。
【0222】
本明細書で使用するのに適したアントラサイクリンの非限定的な一例は、ネモルビシン
の非常に強力な主要代謝産物であるPNU-159682(「PNU」)である。PNUは、親であるネモル
ビシンに対して3000倍を超える細胞毒性を示す(Quintieri et al., Clinical Cancer Res
earch 2005, 11, 1608-1617)。PNUは、以下の構造式によって表される:
【化29】
。
【0223】
PNUのようなアントラサイクリン上の多数の位置は、前記連結部分への共有結合する位
置としての役割を果たす、そして、それ故に、本明細書中に記載するような抗-CD137抗体
又はその抗原結合フラグメントと共有結合する位置としての役割を果たすことができる。
例えば、リンカーを、ヒドロキシメチル・ケトン側鎖への改変を介して導入することがあ
る。
【0224】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、下記構造式で表されるPNU誘導体である:
【化30】
ここで、波線は、本明細書中に記載するようなADCのリンカーに共有結合をする位置を
示す。
【0225】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、下記構造式で表されるPNU誘導体である:
【化31】
ここで、波線は、本明細書中に記載するようなADCのリンカーに共有結合をする位置を
示す。
【0226】
ピロロベンゾジアゼピン(PBDs)
他の実施形態では、本明細書に記載する抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントは、
ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である細胞毒素、又はPBDを含む細胞毒素にコンジュゲート
していることがある。PBDはある特定の放線菌によって産生され、配列選択的なDNAアルキ
ル化化合物であることが示されてきている。PBD細胞毒素としては、限定されるものでは
ないが、アントラマイシン、二量体PBD、及び、例えば、Hartley, J.A. (2011). “The d
evelopment of pyrrolobenzodiazepines as antitumour agents.” Expert Opin. Inv.
Drug, 20(6), 733-744; 及び Antonow, D.; Thurston, D.E. (2011) “Synthesis of DNA
-interactive pyrrolo[2,1-c][1,4]benzodiazepines (PBDs).” Chem. Rev. 111: 2815-2
864の中で開示されているものが挙げられる。
【0227】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、以下の構造式で表されるピロロベンゾジア
ゼピン二量体であることがある:
【化32】
ここで、波線は、本明細書中に記載するようなADCのリンカーに共有結合をする位置を
示す。このPBDに基づくADCは、例えば、Sutherland et al., Blood 2013 122:1455-1463
(これは、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)に開示されている。
【0228】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、以下の構造式で表されるPBD二量体である
ことがある:
【化33】
ここで、nは3又は5である、ここで、波線は、本明細書中に記載するようなADCのリンカ
ーに共有結合をする位置を示す。
【0229】
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、以下の構造式で表されるPBD二量体である
ことがある:
【化34】
ここで、波線は、本明細書中に記載するようなADCのリンカーに共有結合をする位置を
示す。
【0230】
ある特定の実施形態では、前記細胞毒素はPBD二量体であることがある、これは、リン
カー及び反応性部分構造Z'と一緒になった場合、それぞれ本明細書中に記載するように、
以下の構造によって表されることがある:
【化35】
。
【0231】
この特定の細胞毒素-リンカー・コンジュゲートはテシリン(SG3249)として知られてお
り、例えば、Howard et al., ACS Med. Chem. Lett. 2016, 7(11), 983-987、に記載され
ている、この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0232】
ある特定の実施形態では、前記細胞毒素はPBD二量体であることがある、これは、リン
カー及び反応性部分構造Z'と一緒になった場合、それぞれ本明細書中に記載するように、
以下の構造によって表されることがある:
【化36】
。
【0233】
この特定の細胞毒素-リンカー・コンジュゲートはタリリンとして知られており、例え
ば、Mantaj et al., Angewandte Chemie International Edition English 2017,56, 462-
488、に記載されている、この開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0234】
カリケアマイシン
他の実施形態において、本明細書に記載する抗体及びその抗原結合フラグメントは、エ
ネジイン抗腫瘍抗生物質(例えば、カリケアマイシン、オゾガマイシン)である細胞毒素に
コンジュゲートしていることがある。カリケアマイシン・ファミリーの抗生物質は、ピコ
モル未満の濃度で、二本鎖DNAを切断することができる。カリケアマイシン・ファミリー
のコンジュゲートの調製については、米国特許第5,712,374; 5,714,586; 5,739,116; 5,7
67,285; 5,770,701; 5,770,710; 5,773,001; 及び 5,877,296号を参照のこと(全てAmeri
can Cyanamid Companyに関する)。使用され得るカリケアマイシンの構造類似体としては
、限定されるものではないが、例えば、Hinman et al., Cancer Research 53:3336-3342
(1993), Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1998), 及びAmerican Cyanamid
に関する上記の米国特許、に開示されているものが挙げられる。
【0235】
本発明における使用に適したカリケアマイシンの例としては、例えば、米国特許第4,67
1,958号。米国特許第4,970,198号。米国特許第5,053,394号、米国特許第5,037,651号;及
び米国特許第5,079,233号、に開示されている、これらは、その全体が本明細書に組み込
まれる。
【0236】
例示的なカリケアマイシンは、γ
1と命名されている、これらを、本明細書では単にガ
ンマとして呼び、以下の構造式を有する:
【化37】
。
【0237】
いくつかの実施形態では、前記カリケアマイシンは、ガンマ-カリケアマイシン誘導体
又はN-アセチル・ガンマ-カリケアマイシン誘導体である。使用することがあるカリケア
マイシンの構造類似体としては、限定されるものではないが、例えば、Hinman et al., C
ancer Research 53:3336-3342 (1993), Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1
998)、及び上記の米国特許に開示されるものが挙げられる。カリケアマイシンは、適当な
チオールと反応してジスルフィドを形成することができるメチルトリスルフィド部分を含
み、メチルトリスルフィド部分は、同時に、カリケアマイシン誘導体を本明細書に記載の
抗-CD5抗体又はその抗原結合フラグメントに、リンカーを介して結合させるのに有用な官
能基を導入する。
【0238】
ある実施形態では、本明細書中に開示するADCの細胞毒素は、以下の式で表されるカリ
ケアマイシン・ジスルフィド誘導体である:
【化38】
ここで、波線は、前記リンカーの結合の位置を示す。
【0239】
追加の細胞毒素
他の実施形態では、本明細書に記載する抗体及びその抗原結合フラグメントを、本明細
書において上記で開示される細胞毒素以外の、又はそれに加えた細胞毒素に、コンジュゲ
ートすることがある。本明細書に記載する組成物及び方法と共に使用するのに適した追加
の細胞毒素としては、限定されるものではないが、5-エチニルウラシル、アビラテロン(a
biraterone)、アシルフルベン(acylfulvene)、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシ
ン(adozelesin)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アルトレタミン(altretamine)、アン
バムスチン(ambamustine)、アミドックス(amidox)、アミフォスチン(amifostine)、アミ
ノレブリン酸(aminolevulinic acid)、アムルビシン(amrubicin)、アムサクリン(amsacri
ne)、アナグレリド(anagrelide)、アナストロゾール(anastrozole)、アンドログラフォリ
ド(andrographolide)、血管新生阻害剤、アンタレリクス(antarelix)、抗背側形成タンパ
ク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1)、抗アンドロゲン、前立腺がん
、抗エストロゲン、抗新生物薬(antineoplaston)、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、
アフィジコリン・グリシネート(aphidicolin glycinate)、アポトーシス遺伝子モジュレ
ーター、アポトーシス・レギュレーター、アプリン酸(apurinic acid)、アスラクリン(as
ulacrine)、アタメスタン(atamestane)、アトリムスチン(atrimustine)、アキシナスタチ
ン1(axinastatin 1)、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン(azasetron
)、アザトキシン(azatoxin)、アザチロシン(azatyrosine)、バッカチンIII(baccatin
III.)誘導体、バラノール(balanol)、バチマスタット(batimastat)、BCR/ABL拮抗薬、ベ
ンゾクロリン、ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)、βラクタム誘導体
、βアレチン(beta-alethine)、βクラマイシン(betaclamycin)B、ベツリン酸、bFGF阻害
剤、ビカルタミド(bicalutamide)、ビサントレン(bisantrene)、ビスアジリジニルスペル
ミン(bisaziridinylspermine)、ビスナフィド(bisnafide)、ビストラテン(bistratene)A
、ビゼレシン(bizelesin)、ブレフラート(breflate)、ブレオマイシンA2、ブレオマイシ
ンB2、ブロピリミン(bropirimine)、ブドチタン(budotitane)、ブチオニン・スルホキシ
イミン(buthionine sulfoximine)、カルシポトリオール(calcipotriol)、カルホスチン(c
alphostin)C、カンプトテシン(camptothecin)誘導体(例えば、10-ヒドロキシ-カンプト
テシン)、カペシタビン(capecitabine)、カルボキサミド-アミノ-トリアゾール、カルボ
キシアミドトリアゾール、カルゼレシン(carzelesin)、カゼイン・キナーゼ阻害剤、カス
タノスペルミン(castanospermine)、セクロピン(cecropin)B、セトロレリクス(cetroreli
x)、クロリン(chlorins)、クロロキノキサリン・スルホンアミド(chloroquinoxaline sul
fonamide)、シカプロスト(cicaprost)、シス-ポルフィリン、クラドリビン(cladribine)
、クロミフェン(clomifene)及びその類似体、クロトリマゾール(clotrimazole)、コリス
マイシン(collismycin)A、コリスマイシンB、コンブレタスタチン(combretastatin)A4、
コンブレタスタチン類似体、コナゲニン(conagenin)、クラムベシジン(crambescidin)816
、クリスナトール(crisnatol)、クリプトフィシン(cryptophycin)8、クリプトフィシンA
誘導体、キュラシン(curacin)A、シクロペンタアントラキノン(cyclopentanthraquinones
)、シクロプラタム(cycloplatam)、シペマイシン(cypemycin)、シタラビン・オクホスフ
ァート(cytarabine ocfosfate)、細胞溶解因子、シトスタチン(cytostatin)、ダクリキシ
マブ(dacliximab)、デシタビン(decitabine)、デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B、
2'デオキシコホルマイシン(DCF)、デスロレリン(deslorelin)、デキシホスファミド(dexi
fosfamide)、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、デクスベラパミル(dexverapamil)、ジア
ジクオン(diaziquone)、ジデムニン(didemnin)B、ジドクス(didox)、ジエチルノルスペル
ミン(diethylnorspermine)、ジヒドロ-5-アザシチジン、ジヒドロタキソール、ジオキサ
マイシン(dioxamycin)、ジフェニル・スピロムスチン(diphenyl spiromustine)、ディス
コデルモライド(discodermolide)、ドコサノール(docosanol)、ドラセトロン(dolasetron
)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ドロロキシフェン(droloxifene)、ドロナビノー
ル(dronabinol)、デュオカルマイシン(duocarmycin)SA、エブセレン(ebselen)、エコムス
チン(ecomustine)、エデルフォシン(edelfosine)、エドレコロマブ(edrecolomab)、エフ
ロルニチン(eflornithine)、エレメン(elemene)、エミテフール(emitefur)、エポチロン
(epothilones)、エピチロン(epithilones)、エプリステリド(epristeride)、エスト
ラムスチン(estramustine)及びその類似体、エトポシド(etoposide)、エトポシド4’-
リン酸(etoposide 4’-phosphate)(エトポフォスとも呼ばれる)、エキセメスタン(ex
emestane)、ファドロゾール(fadrozole)、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(f
enretinide)、フィルグラスチム(filgrastim)、フィナステリド(finasteride)、フラボピ
リドール(flavopiridol)、フレゼラスチン(flezelastine)、フルアステロン(fluasterone
)、フルダラビン(fludarabine)、塩酸フルロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydroc
hloride)、フォルフェニメクス(forfenimex)、フォルメスタン(formestane)、フォストリ
エシン(fostriecin)、フォテムスチン(fotemustine)、ガドリニウム・テキサフィリン(ga
dolinium texaphyrin)、硝酸ガリウム、ガロシタビン(galocitabine)、ガニレリクス(gan
irelix)、ゲラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン(gemcitabine)、グルタチオン阻害剤、ヘプ
スルファム(hepsulfam)、ホモハリングトニン(homoharringtonine(HHT))、ハイペリシ
ン(hypericin)、イバンドロン酸(Ibandronic acid)、イドキシフェン(idoxifene)、イ
ドラマントン(idramantone)、イルモフォシン(ilmofosine)、イロマスタット(ilomastat)
、イミダゾアクリドン、イミキモド(imiquimod)、免疫刺激ペプチド、イオベングアン(io
benguane)、ヨードドキソルビシン(iododoxorubicin)、イポメアノール(ipomeanol)、イ
リノテカン、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン(irsogladine)、イソベンガゾー
ル(isobengazole)、ジャスプラキノリド(jasplakinolide)、カハラリド(kahalalide)F、
三酢酸ラメラリン-N(lamellarin-N triacetate)、ランレオチド(lanreotide)、レイナマ
イシン(leinamycin)、レノグラスチム(lenograstim)、硫酸レンチナン(lentinan sulfate
)、レプトルスタチン(leptolstatin)、レトロゾール(letrozole)、親油性白金化合物、リ
ソクリナミド(lissoclinamide)7、ロバプラチン(lobaplatin)、ロメトレキソール(lometr
exol)、ロニダミン(lonidamine)、ロソキサントロン(losoxantrone)、ロキソリビン(loxo
ribine)、ルルトテカン(lurtotecan)、ルテチウム・テキサフィリン(lutetium texaphyri
n)、リソフィリン(lysofylline)、マソプロコール(masoprocol)、マスピン(maspin)、マ
トリックス・メタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル(menogaril)、メルバロン(merbar
one)、メテレリン(meterelin)、メチオニナーゼ、メトクロプラミド(metoclopramide)、M
IF阻害剤、ミフェプリストン(mifepristone)、ミルテホシン(miltefosine)、ミリモスチ
ム(mirimostim)、ミトラシン(mithracin)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトラクトール
(mitolactol)、マイトマイシン及びその類似体、ミトナフィド(mitonafide)、ミトキサン
トロン(mitoxantrone)、モファロテン(mofarotene)、モルグラモスチム(molgramostim)、
マイカペルオキシドB、ミリアポロン(myriaporone)、N-アセチルジナリン(acetyldinalin
e)、N-置換ベンズアミド、ナファレリン(nafarelin)、ナグレスチップ(nagrestip)、ナパ
ビン(napavin)、ナフテルピン(naphterpin)、ナルトグラスチム(nartograstim)、ネダプ
ラチン(nedaplatin)、ネモルビシン(nemorubicin)、ネリドロン酸、ニルタミド(nilutami
de)、ニサマイシン(nisamycin)、ニトルリン(nitrullyn)、オクトレオチド(octreotide)
、オキセノン(okicenone)、オナプリストン(onapristone)、オンダンセトロン(ondansetr
on)、オラシン(oracin)、オルマプラチン(ormaplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)
、オキサウノマイシン(oxaunomycin)、パクリタキセル(paclitaxel)及びその類似体、パ
ラウアミン(palauamine)、パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin)、パミドロン酸
、パナキシトリオール(panaxytriol)、パノミフェン(panomifene)、パラバクチン(paraba
ctin)、パゼリプチン(pazelliptine)、ぺグアスパルガーゼ(pegaspargase)、ペルデシン(
peldesine)、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、ペントスタチン(pentostatin)、ペントロ
ゾール(pentrozole)、パーフルブロン(perflubron)、パーホスファミド(perfosfamide)、
フェナジノマイシン(phenazinomycin)、ピシバニル(picibanil)、ピラルビシン(pirarubi
cin)、ピリトレキシム(piritrexim)、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、ポルフ
ィロマイシン(porfiromycin)、プリン・ヌクレオシド・ホスホリラーゼ阻害剤、ラルチト
レキセド(raltitrexed)、リゾキシン(rhizoxin)、ログレチミド(rogletimide)、ロヒツキ
ン(rohitukine)、ルビギノン(rubiginone)B1、ルボキシル(ruboxyl)、サフィンゴル(safi
ngol)、サイントピン(saintopin)、サルコフィトール(sarcophytol)A、サルグラモスチム
(sargramostim)、ソブゾキサン(sobuzoxane)、ソネルミン(sonermin)、スパルホジン酸(s
parfosic acid)、スピカマイシン(spicamycin)D、スピロムスチン(spiromustine)、スチ
ピアミド(stipiamide)、スルフィノシン(sulfinosine)、タリムスチン(tallimustine)、
テガフール(tegafur)、テモゾロミド(temozolomide)、テニポシド(teniposide)、タリブ
ラスチン(thaliblastine)、チオコラリン(thiocoraline)、チラパザミン(tirapazamine)
、トポテカン、トプセンチン(topsentin)、トリシリビン(triciribine)、トリメトレキサ
ート(trimetrexate)、ベラミン(veramine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンキサルチ
ン(vinxaltine)、ボロゾール(vorozole)、ゼニプラチン(zeniplatin)、並びにジラスコル
ブ(zilascorb)、が挙げられる。
【0240】
リンカー
本明細書で使用する用語「リンカー」は、抗-CD5抗体又はそのフラグメント(Ab)を薬物
部分(D)に共有結合させて式Iの抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する、原子の共有結
合又は鎖を含む、二価の化学的な部分構造を意味する。好適なリンカーは2つの反応性末
端を有し、一方は抗体にコンジュゲートさせるためであり、他方は細胞毒素にコンジュゲ
ートさせるためである。前記リンカーの抗体とコンジュゲートする反応性末端(反応性部
分構造、Z')は、典型的には、前記抗体上のシステイン・チオール又はリジン・アミン基
を介して、前記抗体にコンジュゲートさせることができる部位であり、従って、典型的に
は二重結合のようなチオールとの反応性がある基(例えば、マレイミドなど)、又はクロロ
、ブロモ、ヨード等の脱離基、若しくはR-スルファニル基、又はカルボキシル基のような
アミンとの反応性がある基である;一方、前記リンカーの細胞毒素とコンジュゲートする
反応性末端は、典型的には、細胞毒素にコンジュゲートすることができる部位である。リ
ンカー-細胞毒素コンジュゲーションの非限定的な例としては、例えば、細胞毒素上の塩
基性アミン基又はカルボキシル基とのアミド結合の形成(それぞれ、前記リンカーのカル
ボキシル又は塩基性アミン基を介する)、又はエーテル等の形成(前記細胞毒素のOH基を
アルキル化することを介する、例えば、前記リンカーの脱離基を介する)、が挙げられる
。いくつかの実施形態では、細胞毒素-リンカー・コンジュゲーションは、前記細胞毒素
のアミン又はカルボキシル基とのアミド結合の形成を介する、そして、その場合、前記リ
ンカーの反応性置換基はそれぞれカルボキシル又は塩基性アミン基である。前記用語「リ
ンカー」を、コンジュゲートした形態のリンカーを説明する際に使用する場合、反応性末
端の一方又は両方は、前記リンカー及び/又は前記細胞毒素間の、並びに前記リンカー及
び/又は前記抗体若しくはその抗原結合フラグメント間の、結合が形成されているので、
存在しない(例えば、反応性部分構造Z'、化学的な部分構造Zに変換されている)か、又は
反応途中にある(例えば、カルボン酸のカルボニルだけになっている等)。このようなコン
ジュゲートさせる反応を、本明細書中以下に更に記載する。
【0241】
様々なリンカーを使用して、記載した抗体、抗原結合フラグメント、及びリガンドを細
胞毒性分子にコンジュゲートさせることができる。いくつかの実施形態では、前記リンカ
ーは、細胞内の条件下で切断可能であり、その結果、前記リンカーの切断によって、細胞
内環境において、抗体から薬物ユニットが放出される。更に他の実施形態では、そのリン
カー・ユニットは切断可能ではなく、薬剤は、例えば、抗体の分解によって放出される。
本発明のADCに有用なリンカーは、好ましくは細胞外で安定であり、ADC分子が凝集するこ
とを防止し、ADCが水溶性の媒体中で及び単量体状で溶け易いように維持する。細胞内に
輸送される又は送達される前には、前記ADCは、好ましくは安定であり、及びインタクト
なままであり、即ち、前記抗体は、前記薬物部分に連結したままである。前記リンカーは
ターゲット細胞の外部では安定であり、細胞内部ではある有効な速度で切断されることが
ある。効果的なリンカーは:(i)前記抗体の特異的な結合特性を維持する;(ii)前記コン
ジュゲート又は薬物部分が細胞内に送達されることを可能にする;(iii)前記コンジュゲ
ートがそのターゲット部位に送達又は輸送されるまで、安定かつインタクトなままであり
、即ち切断されない;並びに(iv)前記細胞毒性部分の、細胞毒性、細胞傷害効果又は細胞
増殖抑制効果を維持する。前記ADCの安定性を、質量分析、HPLC、及び分離/解析技術のL
C/MS等の標準的な分析技術によって測定することができる。前記抗体及び前記薬物部分の
共有結合は、前記リンカーが2つの反応性官能基を有することを要求する(即ち反応性の
意味での二価である)。ペプチド、核酸、薬物、毒素、抗体、ハプテン、及びレポーター
基等の2つ以上の機能的又は生物学的に活性な部分を結合させるのに有用な二価のリンカ
ー試薬が知られており、それらのコンジュゲートを得る方法については記載されている(H
ermanson、GT(1996)Bioconjugate Techniques; Academic Press: New York、p.234-242)
。
【0242】
好適な切断可能なリンカーとしては、例えば、酵素的加水分解、光分解、酸性条件下で
の加水分解、塩基性条件下での加水分解、酸化、ジスルフィド還元、求核切断、又は有機
金属切断によって切断され得るものが挙げられる(例えば、Lericheら、Bioorg.Med.Chem
、20:571-582、2012を参照のこと、これらの開示は、共有結合的にコンジュゲートさせる
ことに適したリンカーに関連するものとして、本明細書に参照により取り込まれる)。好
適な切断可能なリンカーとしては、例えば、ヒドラジン、ジスルフィド、チオエーテル又
はジペプチドなどの化学的な部分構造を挙げることができる。
【0243】
酸性条件下で加水分解可能なリンカーとしては、例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン
、チオセミカルバゾン、シス-アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケター
ル等が挙げられる(例えば、米国特許第 5,122,368; 5,824,805; 5,622,929号;Dubowchik
and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123; Neville et al., 1989, Biol. Ch
em. 264:14653-14661、これらの各開示は、共有結合的にコンジュゲートさせることに適
したリンカーに関するものとして、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)。こ
のようなリンカーは、血中の条件のような中性pHの条件下では比較的安定であるが、リソ
ソームのおよそのpHであるpH 5.5又は5.0未満では不安定である。
【0244】
還元条件下で切断可能なリンカーとしては、例えば、ジスルフィドが挙げられる。例え
ば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3
-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)
ブチレート)及びSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル
-ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPT、を使用して形成することができるジスルフィド・リ
ンカーが挙げられる、様々なジスルフィド・リンカーが当該技術分野で知られている(例
えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931; Wawrzynczak et al., In Immu
noconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. V
ogel ed., Oxford U. Press, 1987)を参照のこと)。米国特許第4,880,935も参照のこと。
これらの各開示は、共有結合的にコンジュゲートさせることに適したリンカーに関するも
のとして、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0245】
酵素的な加水分解に感受性があるリンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼ又はプロテ
アーゼ酵素(リソソーム・プロテアーゼ又はエンドソーム・プロテアーゼが挙げられるが
、これらに限定されない)によって切断されるペプチド含有リンカーであることがある。
治療薬剤が細胞内タンパク質分解によって放出されることを利用することの1つの利点は
、前記治療薬剤は、コンジュゲートしている場合、一般に減弱していて、及び前記コンジ
ュゲートの血清安定性は一般的に高い、ということである。いくつかの実施形態では、前
記ペプチジル・リンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3アミノ酸長である。
例示的なアミノ酸リンカーとしては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペ
ンタペプチドが挙げられる。好適なペプチドの例としては、バリン、アラニン、シトルリ
ン(Cit)、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、及びグリシン等のアミノ酸を含有する
ペプチドが挙げられる。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基としては、天然に存在
するもの、並びにマイナーなアミノ酸及び非天然に存在するアミノ酸類似体(例えば、シ
トルリン)が挙げられる。例示的なジペプチドとしては、バリン-シトルリン(vc又はval-c
it)及びアラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)が挙げられる。例示的なトリペプチ
ドとしては、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシ
ン(gly-gly-gly)が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、Val-C
it、Ala-Val、又はPhe-Lys、Val-Lys、Ala-Lys、Phe-Cit、Leu-Cit、Ile-Cit、Phe-Arg、
又はTrp-Citのようなジペプチドが挙げられる。Val-Cit又はPhe-Lys等のジペプチドを含
むリンカーは、例えば、米国特許第6,214,345号に開示されている(この開示は、共有結
合的にコンジュゲートさせることに適したリンカーに関するものとして、その全体が本明
細書に参照により取り込まれる)。いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、Va
l-Ala及びVal-Citから選択されるジペプチドが挙げられる。
【0246】
本明細書に記載する抗体、抗原結合フラグメント、及びリガンドを細胞毒性分子に結合
させるのに適したリンカーとしては、1,6-脱離過程によって、細胞毒素を放出することが
できるリンカーが挙げられる。この脱離過程を可能にする化学的な部分構造としては、p-
アミノベンジル(PAB)基、6-マレイミドヘキサン酸、pH感受性炭酸塩、及びJain et al.,
Pharm. Res. 32:3526-3540, 2015(この開示は、共有結合的なコンジュゲーションに適し
たリンカーに関連するものとして、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)に記
載される他の試薬等が挙げられる。
【0247】
いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、前述のPAB又はPABC(パラ-アミノベ
ンジルオキシカルボニル)等の「自壊」基が挙げられ、これらは、例えば、Carl et al.,
J. Med. Chem. (1981) 24:479-480; Chakravarty et al (1983) J. Med. Chem. 26:638-6
44; US 6214345; US20030130189; US20030096743; US6759509; US20040052793; US621851
9; US6835807; US6268488; US20040018194; WO98/13059; US20040052793; US6677435; US
5621002; US20040121940; WO2004/032828に開示されている。このプロセスが可能な他の
このような化学的な部分構造(「自壊リンカー」)としては、メチレン・カルバメート及び
ヘテロアリール基、例えばアミノチアゾール、アミノイミダゾール、アミノピリミジンな
どが挙げられる。このような複素環の自壊基を含むリンカーは、例えば、米国特許出願公
開20160303254 及び 20150079114、並びに米国特許第7,754,681; Hay et al. (1999) Bio
org. Med. Chem. Lett. 9:2237; US 2005/0256030; de Groot et al (2001) J. Org. Che
m. 66:8815-8830; 及び US 7223837に開示されている。いくつかの実施形態では、ジペプ
チドを、自壊リンカーと組合せて使用する。
【0248】
本明細書での使用に適したリンカーは、C1-C6アルキレン、C1-C6ヘテロアルキレン、C2
-C6アルケニレン、C2-C6ヘテロアルケニレン、C2-C6アルキニレン、C2-C6ヘテロアルキニ
レン、C3-C6シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレ
ン、及びそれらの組合せから選択される1つ以上の基を更に含むことがあり、これらの各
々は任意選択的に置換されていることがある。このような基の非限定的な実施例としては
、(CH2)p、(CH2CH2O)p、及び-(C=O)(CH2)p-ユニットが挙げられ、ここで、pは1~6の整数
であり、各々の場合に対して独立に選択される。
【0249】
いくつかの実施形態では、各C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、C2-C6アルケニル
、C2-C6ヘテロアルケニル、C2-C6アルキニル、C2-C6ヘテロアルキニル、C3-C6シクロアル
キル、ヘテロシクロアルキル、スルホニルシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリー
ル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、
アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ
、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、
アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシル、アルコキシ、ス
ルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト
、及びニトロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置換基で、任意選択的
に置換されている。
【0250】
いくつかの実施形態では、各C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、C2-C6アルケニル
、C2-C6ヘテロアルケニル、C2-C6アルキニル、C2-C6ヘテロアルキニル、C3-C6シクロアル
キル、ヘテロシクロアルキル、スルホニルシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリー
ル基は、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子によって、任意選択的に割り込ま
れていることがある。
【0251】
いくつかの実施形態では、各C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、C
2-C
6アルケニル
、C
2-C
6ヘテロアルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
2-C
6ヘテロアルキニル、C
3-C
6シクロアル
キル、ヘテロシクロアルキル、スルホニルシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリー
ル基は、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子によって、任意選択的に割り込ま
れていることがある、並びにアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテ
ロシクロアルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、ア
シル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイ
ド、カルバメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、ヒドロキシ
ル、アルコキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒド
ロキシ、メルカプト、及びニトロからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~5個の置
換基で、任意選択的に置換されている。好適なリンカーは、溶解性を高める特性を有する
基を含むことがある。例えば、(CH
2CH
2O)
pユニット(ポリエチレングリコール、PEG)を含
むリンカーは、溶解性を高めることができる(例えば、アミノ、スルホン酸、ホスホン酸
又はリン酸残基で置換して、アルキル鎖の溶解性を高めることができる)。このような部
分構造を含むリンカーは、例えば、米国特許番号8,236,319 及び9,504,756に開示されて
いる(これらの各々の開示は、共有結合的なコンジュゲーションに適したリンカーに関連
するものとして、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)。更なる溶解性を高め
る基としては、例えば、以下の構造を有するアシル及びカルバモイル・スルファミド基が
挙げられる:
【化39】
ここで、aは0又は1である;並びに
R
10は、水素、C
1-C
24アルキル基、C
3-C
24シクロアルキル基、C
1-C
24(ヘテロ)アリール
基、C
1-C
24アルキル(ヘテロ)アリール基、及びC
1-C
24(ヘテロ)アリールアルキル基、
C
1-C
24アルキル基、C
3-C
24シクロアルキル基、C
2-C
24(ヘテロ)アリール基、C
3-C
24アル
キル(ヘテロ)アリール基、及びC
3-C
24(ヘテロ)アリールアルキル基、からなる基から
選択され、これらの各々は、O、S、及びNR
11R
12から選択される1種以上のヘテロ原子によ
って、任意選択的に置換している、及び/又は任意選択的に割り込まれていることがある
、ここで、R
11及びR
12は、水素及びC
1-C
4アルキル基からなる群から独立して選択される
;又はR
10は細胞毒素である、ここで、前記細胞毒素は、スペーサー部分を介して、Nに任
意選択的に結合する。そのような基を含むリンカーは、例えば、米国特許9,636,421号及
び米国特許出願公開第2017/0298145号(これら開示は、細胞毒素及び抗体又はそれらの抗
原結合フラグメントへの共有結合的なコンジュゲーションに適したリンカーに関連するも
のとして、その全体が本明細書に参照により取り込まれる)に記載されている。
【0252】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、ヒドラジン、ジスルフィド、チオエーテル
、ジペプチド、p-アミノベンジル(PAB)基、複素環自壊基、任意選択的に置換されたC1-C6
アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたC2-C6
アルケニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルケニル、任意選択的に置換されたC
2-C6アルキニル、任意選択的に置換されたC2-C6ヘテロアルキニル、任意選択的に置換さ
れたC3-C6シクロアルキル、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択的
に置換されたアリール、任意選択的に置換されたヘテロアリール、溶解増強基、アシル、
-(C=O)-、又は-(CH2CH2O)p-基のうちの1つ以上を含むことがある、ここで、pは1~6の整
数である。当業者の中のある者は、列挙された基の1つ以上が、二価(ジラジカル)種(例え
ば、C1-C6アルキレン等)の形態で存在し得ることを認識する。
【0253】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、p-アミノベンジル基(PAB)を含む。ある実
施形態では、前記p-アミノベンジル基は、細胞毒性薬物とリンカー中のプロテアーゼ切断
部位との間に配置される。ある実施形態では、前記p-アミノベンジル基は、p-アミノベン
ジルオキシカルボニル・ユニットの一部である。ある実施形態では、p-アミノベンジル基
は、p-アミノベンジルアミド・ユニットの一部である。
【0254】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、Phe-Lys、Val-Lys、Phe-Ala、Phe-Cit、Va
l-Ala、Val-Cit、及びVal-Argからなる群より選択されるジペプチドを含む。いくつかの
実施形態では、前記リンカーは、PAB、Val-Cit-PAB、Val-Ala-PAB、Val-Lys(Ac)-PAB、Ph
e-Lys-PAB、Phe-Lys(Ac)-PAB、D-Val-Leu-Lys、Gly-Gly-Arg、Ala-Ala-Asn-PAB、又はAla
-PABのうちの1種以上を含む。
【0255】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、PAB, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, Val-Lys
(Ac)-PAB, Phe-Lys-PAB, Phe-Lys(Ac)-PAB, D-Val-Leu-Lys, Gly-Gly-Arg, Ala-Ala-Asn-
PAB, 又はAla-PAB を含む。
【0256】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、ペプチド、オリゴ糖、-(CH2)p-, -(CH2CH2
O)p-, PAB, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, Val-Lys(Ac)-PAB, Phe-Lys-PAB, Phe-Lys(Ac)-P
AB, D-Val-Leu-Lys, Gly-Gly-Arg, Ala-Ala-Asn-PAB, 又はAla-PAB、のうちの1つ以上の
組合せを含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、-(C=O)(CH2)p-ユニットを含み、ここで、p
は1~6の整数である。
【0258】
いくつかの実施形態において、前記リンカーは、-(CH)
2n-ユニットを含む、ここで、n
は2-6からの整数である。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、nが6である-((
CH
2)
nを含む。いくつかの実施形態において、L-Zは、
【化40】
である、ここで、Sは、CD5に結合する、抗体、又はその抗原結合フラグメント内に存在す
る反応性置換基を表す硫黄原子である(例えば、システイン残基の-SH基に由来する)。
【0259】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-基を含み、ここで、n及
びmはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から選択される;並びにヘテロ
アリール基、ここで、前記ヘテロアリール基は、トリアゾールである。いくつかの実施形
態では、((CH
2)
mO)
n(CH
2)
m-基及びトリアゾールは、一緒になって以下を含む
【化41】
ここで、nは1~10であり、及び波線は、追加のリンカー構成成分、化学的な部分構造Z
、又はアマトキシンへの結合の位置を示す。本明細書中に記載する方法及び組成物におい
て使用することがある他のリンカーは、米国特許出願公開第2019/0144504号に記載されて
おり、これは、本明細書に参照により取り込まれる。
【0260】
ある具体的な実施形態では、前記リンカーは、PAB-Ala-Val-プロピオニルを含み、以下
の構造によって表される
【化42】
ここで、波線は、前記細胞毒素及び反応性部分構造Z'への結合の位置を示す。
【0261】
別の具体的な実施形態では、前記リンカーは、PAB-Cit-Val-プロピオニルを含み、以下
の構造によって表される
【化43】
ここで、波線は、前記細胞毒素及び反応性部分構造Z'への結合の位置を示す。このよう
なPAB-ジペプチド-プロピオニル・リンカーとしては、例えば、特許出願公開WO2017/1490
77に開示されている(これは、その全体が、本明細書に参照により取り込まれる)。更に
、WO2017/149077に開示された細胞毒素は、本明細書に参照により取り込まれる。
【0262】
本明細書に開示する化学基、部分及び特徴の何れか1つ以上を、多様な方法で組み合わ
せて、本明細書に開示するような抗体と細胞毒素とをコンジュゲートさせることに対して
有用なリンカーを形成し得ることは、当業者の中のある者によって認識されるだろう。本
明細書中に記載する組成物及び方法と併せることにおいて有用な更なるリンカーは、例え
ば、米国特許出願公開第2015/0218220号に記載されており、その開示内容は、その全体が
本明細書に参照により取り込まれる。
【0263】
ある特定の実施形態では、リンカーの前駆物質である中間体を、好適な条件下で薬物部
分と反応させる。ある特定の実施形態では、反応性基を、前記薬物及び/又は前記中間体
若しくはリンカー上で使用する。前記薬物と前記中間体との間の反応の生成物、又は誘導
体化した薬物を、その後、好適な条件下で、抗体又は抗原結合フラグメントと反応させる
。あるいは、前記リンカー又は中間体を、最初に前記抗体又は誘導体化した抗体と反応さ
せ、次いで前記薬物又は誘導体化した薬物と反応させてもよい。このようなコンジュゲー
ション反応を、ここで、より完全に記載する。
【0264】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントに、前記リンカー又は薬物-リンカー・コンジ
ュゲートを共有結合させるために、多くの様々な反応を利用することができる。抗体分子
上の好適な結合の位置としては、リジンのアミン基、グルタミン酸及びアスパラギン酸の
遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、及び芳香族アミノ酸の種々の部分が
挙げられる。例えば、化合物上のカルボキシ(又はアミノ)基を抗体部分上のアミノ(又は
カルボキシ)基に連結するために、非特異的な共有結合を、カルボジイミド反応を用いて
行うことがある。更に、化合物上のアミノ基を抗体部分上のアミノ基に結合させるために
、ジアルデヒド又はイミドエステルなどの二官能基性の薬剤を使用することもある。薬物
を結合剤に結合させることには、シッフ塩基反応を利用することも可能である。この方法
は、グリコール又は水酸基を含有する薬物を過ヨウ素酸塩酸化させることを含み、このよ
うにしてアルデヒドを形成させ、次いでこれを結合剤と反応させる。結合は、前記結合剤
のアミノ基を有するシッフ塩基の形成を介して起こる。イソチオシアネートを、薬物を結
合剤に共有結合させるためのカップリング剤として使用することもある。他の技術は当業
者に知られており、本発明の範囲内である。
【0265】
本明細書に記載する場合、抗体又は抗原結合フラグメントへのコンジュゲーションに有
用なリンカーとしては、限定されるものではないが、以下の表3に示すような、カップリ
ング反応によって形成される化学的な部分構造Zを含むリンカーが挙げられる。曲線は、
それぞれ、抗体又は抗原結合フラグメント、及び細胞毒性分子に結合する位置を示す。
【0266】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0267】
当業者の中のある者は、前記リンカー及び前記抗体又はその抗原結合フラグメント上の
反応性置換基に結合した反応性置換基Z'が、化学的な部分構造Zを生成する共有結合カッ
プリング反応に関与するものであることを認識し、前記反応性の部分構造Z'を認識する。
従って、本明細書に記載の方法と併せることにおいて有用な抗体-薬物コンジュゲートは
、抗体又はその抗原結合フラグメントが、リンカー又は細胞毒素-リンカー・コンジュゲ
ートと反応することによって形成されることがあり、本明細書に記載するように、前記リ
ンカー又は細胞毒素-リンカー・コンジュゲートは反応性置換基Z'等を含み、抗体又はそ
の抗原結合フラグメント上の反応性置換基との反応に適していて、化学的な部分構造Zを
形成する。
【0268】
表3に示されるように、前記リンカー及び抗体、又はその抗原結合フラグメント上の好
適な反応性置換基の例としては、求核/求電子対(例えば、チオール/ハロアルキル対、
アミン/カルボニル対、又はチオール/α, β-不飽和カルボニル対等)、ジエン/ジエノ
フィル対(例えば、とりわけ、アジド/アルキン対、又はジエン/α,β-不飽和カルボニ
ル対)等が挙げられる。化学的な部分構造Zを形成するための反応性置換基間のカップリン
グ反応としては、限定されるものではないが、チオール・アルキル化、ヒドロキシル・ア
ルキル化、アミン・アルキル化、アミン又はヒドロキシルアミン縮合、ヒドラジン形成、
アミド化、エステル化、ジスルフィド形成、環化付加(例えば、とりわけ、[4+2]Diels-Al
der環化付加、[3+2]Huisgen環化付加)、芳香族求核置換、芳香族求電子置換、及び当該技
術分野で知られているか又は本明細書に記載されている他の反応様式が挙げられる。好ま
しくは、前記リンカーは、前記抗体又はその抗原結合フラグメント上の求核性官能基との
反応のための求電子性官能基を含む。
【0269】
本明細書に開示するように、抗体、又はその抗原結合フラグメント内に存在し得る反応
性置換基としては、限定されるものではないが、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基(
例えば、リジン)、(iii)側鎖チオール基(例えば、システイン)、及び(iv)糖水酸基又はア
ミノ基(ここで、前記抗体はグリコシル化されている)、のような求核基が挙げられる。本
明細書に開示するように、抗体、又はその抗原結合フラグメント内に存在し得る反応性置
換基としては、限定されるものではないが、セリン、スレオニン、及びチロシン残基のヒ
ドロキシル部分;リジン残基のアミノ部分;アスパラギン酸及びグルタミン酸残基のカル
ボキシル部分;並びにシステイン残基のチオール部分、並びに、非天然アミノ酸のプロパ
ルギル、アジド、ハロアリール(例えば、フルオロアリール)、ハロヘテロアリール(例え
ば、フルオロヘテロアリール)、ハロアルキル、及びハロヘテロアルキル部分が挙げられ
る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示するように、抗体、又はその抗原結合フラ
グメント内に存在する反応性置換基としては、アミン又はチオール部分が挙げられる。あ
る特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド(即ち、システイン架橋)を有する。抗体
は、DTT(ジチオトレイトール)等の還元剤で処理することによって、リンカー試薬とコン
ジュゲートさせるために、反応性にすることができる。従って、各システイン架橋は、理
論的には、2つの反応性チオール求核基を形成する。リジンと2-イミノチオラン(トラウト
試薬)との反応によって、更なる求核基を抗体中に導入して、アミンをチオールに転化さ
せることができる。1個、2個、3個、4個、又はそれ以上のシステイン残基を導入すること
によって(例えば、1個以上の元々は無かったシステイン・アミノ酸残基を含む変異抗体を
調製することによって)、反応性チオール基を、抗体(又はそのフラグメント)に導入する
ことがある。米国特許第7,521,541号は、反応性システイン・アミノ酸を導入することに
よる工学的に操作した抗体を教示している。
【0270】
いくつかの実施形態では、前記リンカーに結合した反応性の部分構造Z'は、抗体上に存
在する求電子基と反応性である求核基である。抗体上の有用な求電子基としてはアルデヒ
ド及びケトンのカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されない。求核基のヘテロ原
子は、抗体上の求電子基と反応し、前記抗体と共有結合を形成することがある。有用な求
核基としては、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドロキシル、ヒドラジン、チオセミカ
ルバゾン、ヒドラジン・カルボキシレート、及びアリールヒドラジドが挙げられるが、こ
れらに限定されない。
【0271】
いくつかの実施形態では、Zは、抗体又はその抗原結合フラグメント内に存在する反応
性求核置換基(例えば、アミン及びチオール部分)と反応性求電子置換基Z'との間の反応の
生成物である。例えば、Z'は、特に、マイケル・アクセプター(例えば、マレイミド)、活
性化エステル、電子欠損カルボニル化合物、及びアルデヒドであることがある。反応性置
換基Z'及び得られる化学的な部分構造Zのいくつかの代表的的及び非限定的な例を、表4
に示す。
【0272】
【0273】
例えば、薬物-抗体及び薬物-リガンド・コンジュゲートの合成に好適なリンカーとして
は、限定されるものではないが、マレイミド又はハロアルキル基などの反応性置換基Z'が
挙げられる。これらは、試薬(例えば、特に、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)
-シクロヘキサン-L-カルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル・ヨードアセテート(S
IA)、スルホ-SMCC、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミジル・エステル(
MBS)、スルホ-MBS、及びスクシンイミジル・ヨードアセテート、等であり、例えば、Liu
et al., 18:690-697, 1979に記載されている(この開示は、化学的にコンジュゲートさせ
るためのリンカーに関するものとして、本明細書に参照により取り込まれる))によって
、前記リンカーに結合することがある。
【0274】
いくつかの実施形態では、リンカーLに結合した反応性置換基Z'は、マレイミド、アジ
ド、又はアルキンである。マレイミド含有リンカーの例は、非切断性マレイミドカプロイ
ル-ベースのリンカーであり、これは、アウリスタチンなどの微小管破壊剤をコンジュゲ
ートするのに特に有用である。このようなリンカーはDoronina et al., Bioconjugate Ch
em. 17:14-24, 2006に記載されている(この開示は、化学的にコンジュゲートさせるため
のリンカーに関するものとして、本明細書に参照により取り込まれる)。
【0275】
いくつかの実施形態では、反応性置換基Z'は-(C=O)-又は-NH(C=O)-であり、その結果、
前記リンカーは、それぞれ、-(C=O)-又は-NH(C=O)基と抗体又はその抗原結合フラグメン
トのアミノ基との反応から生じるアミド又は尿素の部分構造によって、前記抗体又はその
抗原結合フラグメントに結合することがある。
【0276】
いくつかの実施形態では、前記反応性置換基は、N-マレイミジル基、ハロゲン化N-アル
キルアミド基、スルホニルオキシN-アルキルアミド基、カーボネート基、ハロゲン化スル
ホニル基、チオール基又はその誘導体、内部に炭素-炭素の三重結合を含むアルキニル基
、(ヘテロ)シクロアルキニル基、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン-9-イル基(bicyclo[6.1
.0]non-4-yn-9-yl group)、内部に炭素-炭素の二重結合を含むアルケニル基、シクロア
ルケニル基、テトラジニル基、アジド基、ホスフィン基、ニトリル・オキシド基、ニトロ
ン基、ニトリル・イミン基、ジアゾ基、ケトン基、(O-アルキル)ヒドロキシルアミノ基、
ヒドラジン基、ハロゲン化N-マレイミジル基、1,1-ビス(スルホニルメチル)メチルカルボ
ニル基又はその脱離誘導体、ハロゲン化カルボニル基、又はアレンアミド基であり、これ
らはそれぞれ任意に置換されていることがある。いくつかの実施形態では、前記反応性置
換基は、シクロアルケン基、シクロアルキン基、又は任意に置換された(ヘテロ)シクロア
ルキニル基を含む。
【0277】
前記抗体又はその抗原結合フラグメント上の反応性残基との反応に適した反応性置換基
Z'を含むアマトキシン-リンカー・コンジュゲートの非限定的な例としては、限定される
ものではないが、以下が挙げられる、7'C-(4-(6-(マレイミド)ヘキサノイル)ピペラジン-
1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ピペリジン-1-イル)-ア
マトキシン;7'C-(4-(6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘキサノイル)ピペラジン-1-イ
ル)-アマトキシン;7'C-(4-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボニル)ピペラ
ジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボ
キサミド)ヘキサノイル)ピペラジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(マレイミド)
ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(6-(マレイミ
ド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-
(2-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)エチル)ピペリジン-1-イル)
-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)
ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(3-カルボキシプ
ロパンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(2-ブロモアセトア
ミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(3-(ピリジン-2-イルジスル
ファニル)プロパンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(4-(マ
レイミド)ブタンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(マレイ
ミド)アセチル)ピペラジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(3-(マレイミド)プロパノイ
ル)ピペラジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(4-(マレイミド)ブタノイル)ピペラジン-
1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキ
サミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(3-((6-(マレイ
ミド)ヘキサンアミド)メチル)ピロリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(3-((6-(6-(マレ
イミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)メチル)ピロリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C
-(3-((4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)メチル)ピロリジン-1-イ
ル)-アマトキシン;7'C-(3-((6-((4-(マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド
)ヘキサンアミド)メチル)ピロリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(2-(アミノ
オキシ)アセトアミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(
4-(2-(4-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)ブタンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)-ア
マトキシン;7'C-(4-(4-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)ブタノイル)ピペラジン-1-イル
)-アマトキシン;7'C-(4-(6-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)ヘキサノイル)ピペラジン-
1-イル)-アマトキシン;7'C-((4-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ピペリジン-1-イル)メ
チル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1
-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(6-(マレイミド)ヘキサノイル)ピペラジン-1-イ
ル)メチル)-アマトキシン;(R)-7'C-((3-((6-(マレイミド)ヘキサンアミド)メチル)ピロ
リジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;(S)-7'C-((3-((6-(マレイミド)ヘキサンアミド)
メチル)ピロリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(6-(6-(マレイミド)ヘキ
サンアミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4
-(2-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)エチル)ピペリジン-1-イル
)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボ
キサミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(
2-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7
'C-((4-(2-(6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペラジン-1-イ
ル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボ
キサミド)エチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(6-(4-((マレ
イミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペラジン-1-イ
ル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミ
ド)-S-メチル)ピロリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((6-(6-(マレイミド)
ヘキサンアミド)ヘキサンアミド)-R-メチル)ピロリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;
7'C-((3-((4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)-S-メチル)ピロリジ
ン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカ
ルボキサミド)-R-メチル)ピロリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((6-(4-((
マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)メチル)ピロリジン-
1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(3-カルボキシプロパンアミド)エチル)ピペ
ラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘ
キサノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(6-(4-((マレイミド)メ
チル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマト
キシン;7'C-((4-(2-(マレイミド)アセチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;
7'C-((4-(3-(マレイミド)プロパノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-
((4-(4-(マレイミド)ブタノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2
-(2-(マレイミド)アセトアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-
((4-(2-(4-(マレイミド)ブタンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン
;7'C-((4-(2-(6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミ
ド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((6-(マレイミド)ヘキサ
ンアミド)メチル)アゼチジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-(2-(6-(マレイミ
ド)ヘキサンアミド)エチル)アゼチジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((4-((
マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)メチル)アゼチジン-1-イル)メチル)-
アマトキシン;7'C-((3-(2-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)エ
チル)アゼチジン-1イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((3-(2-(6-(4-((マレイミド)メチル
)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)エチル)アゼチジン-1-イル)メチル)-ア
マトキシン;7'C-(((2-(6-(マレイミド)-N-メチルヘキサンアミド)エチル)(メチル)アミ
ノ)メチル)-アマトキシン;7'C-(((4-(6-(マレイミド)-N-メチルヘキサンアミド)ブチル(
メチル)アミノ)メチル)-アマトキシン;7'C-((2-(2-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)エ
チル)アジリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((2-(2-(6-(4-((マレイミド)メチ
ル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)エチル)アジリジン-1-イル)メチル)-
アマトキシン;7'C-((4-(6-(6-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)ヘキサンアミド)ヘキサ
ノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(1-(アミノオキシ)-2-オク
ソ-6,9,12,15-テトラオキサ-3-アザヘプタデカン-17-オイル)ピペラジン-1-イル)メチル)
-アマトキシン;7'C-((4-(2-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)アセチル)ピペラジン-1-イ
ル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(3-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)プロパノイル)
ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(4-(2-(アミノオキシ)アセトアミド
)ブタノイル)ピペラジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(6-(2-(アミノオキ
シ)アセトアミド)ヘキサンアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'
C-((4-(2-(2-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)アセトアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)
メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(2-(4-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)ブタンアミド)
エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;7'C-((4-(20-(アミノオキシ)-4,19-
ジオクソ-6,9,12,15-テトラオキサ-3,18-ジアザイコシル)ピペリジン-1-イル)メチル)-ア
マトキシン;7'C-(((2-(6-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)-N-メチルヘキサンアミド)エ
チル)(メチル)アミノ)メチル)-アマトキシン;7'C-(((4-(6-(2-(アミノオキシ)アセトア
ミド)-N-メチルヘキサンアミド)ブチル)(メチル)アミノ)メチル)-アマトキシン;7'C-((3
-((6-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)メチル)
ピロリジン-1-イル)-S-メチル)-アマトキシン;7'C-((3-((6-(4-((マレイミド)メチル)シ
クロヘキサンカルボキサミド)ヘキサンアミド)-R-メチル)ピロリジン-1-イル)メチル)-ア
マトキシン;7'C-((4-(2-(2-ブロモアセトアミド)エチル)ピペラジン-1-イル)メチル)-ア
マトキシン;7'C-((4-(2-(2-ブロモアセトアミド)エチル)ピペリジン-1-イル)メチル)-ア
マトキシン;7'C-((4-(2-(3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパンアミド)エチル)
ピペリジン-1-イル)メチル)-アマトキシン;6'O-(6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘ
キシル)-アマトキシン;6'O-(5-(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド
)ペンチル)-アマトキシン;6'O-(2-((6-(マレイミド)ヘキシル)オキシ)-2-オキソエチル)
-アマトキシン;6'O-((6-(マレイミド)ヘキシル)カルバモイル)-アマトキシン;6'O-((6-
(4-((マレイミド)メチル)シクロヘキサンカルボキサミド)ヘキシル)カルバモイル)-アマ
トキシン;6'O-(6-(2-ブロモアセトアミド)ヘキシル)-アマトキシン;7'C-(4-(6-(アジド
)ヘキサンアミド)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(へクス-5-イノイルアミノ
)ピペリジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)エチル
)ピペラジン-1-イル)-アマトキシン;7'C-(4-(2-(6-(6-(マレイミド)ヘキサンアミド)ヘ
キサンアミド)エチル)ピペラジン-1-イル)-アマトキシン;6'O-(6-(6-(11,12-ジデヒドロ
-5,6-ジヒドロ-ジベンズ[b,f]アゾシン-5-イル)-6-オクソヘキサンアミド)ヘキシル)-ア
マトキシン;6'O-(6-(へクス-5-イノイルアミノ)ヘキシル)-アマトキシン;6'O-(6-(2-(
アミノオキシ)アセチルアミド)ヘキシル)-アマトキシン;6'O-((6-アミノオキシ)ヘキシ
ル)-アマトキシン;及び 6'O-(6-(2-イオドアセトアミド)ヘキシル)-アマトキシン。
【0278】
いくつかの実施形態では、前記化学的な部分構造Zを、表3又は表4から選択する。い
くつかの実施形態では、前記化学的な部分構造Zは:
【化44】
ここで、Sは、抗-CD-5抗体のような抗体又はその抗原結合フラグメント内に存在する反
応性置換基を表す硫黄原子である。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示するアマトキシンは、以下の式を有するリ
ンカー-反応性部分構造である-L-Z'にコンジュゲートしている:
【化45】
ここで、波線は、前記細胞毒素(例えば、アマトキシン)上の置換基への結合の位置を示
す。このリンカー-反応性置換基であるL-Z'を、代わりに、N-ベータ-マレイミドプロピオ
ニル-Val-Ala-パラ-アミノベンジル(BMP-Val-Ala-PAB)と呼ぶことがある。
【0280】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示するアマトキシンは、以下の式を有するリ
ンカー-反応性部分である-L-Z'にコンジュゲートしている:
【化46】
ここで、波線は、前記細胞毒素(例えば、アマトキシン)上の置換基への結合の位置を示
す。このリンカー-反応性置換基であるL-Z'を、代わりに、N-ベータ-マレイミドプロピル
-Val-Cit-パラ-アミノベンジル(BMP-Val-Cit-PAB) と呼ぶことがある。
【0281】
いくつかの実施形態では、前記リンカーL及び化学的な部分構造Zは、L-Zとして一緒に
なって、
【化47】
である、ここで、Sは、抗-CD-5抗体のような、抗体又はその抗原結合フラグメント内に存
在する反応性置換基を表す硫黄原子である。前記リンカーの末端にある波線は、前記アマ
トキシンへの結合の位置を示す。
【0282】
いくつかの実施形態では、前記リンカーL及び化学的な部分構造Zは、前記尾抗体にコン
ジュゲートした後、L-Z-Abとして一緒になって、以下の構造を有する:
【化48】
。
【0283】
前記のリンカー部分構造及びアマトキシン-リンカー・コンジュゲートは、とりわけ、
本明細書に記載する組成物及び方法と関連して有益であり、例えば、米国特許出願公開第
2015/0218220号及び特許出願公開第WO2017/149077号に記載されており、これらの各々の
開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0284】
前記のリンカー部分構造及びアマトキシン-リンカー・コンジュゲートは、とりわけ、
本明細書に記載する組成物及び方法と関連して有益であり、例えば、米国特許出願公開第
2015/0218220号及び特許出願公開第WO2017/149077号に記載されており、これらの各々の
開示は、その全体が本明細書に参照により取り込まれる。
【0285】
ある実施形態では、本明細書中に記載するCD5抗体又は抗原結合フラグメントは、それ
ぞれ本明細書中に記載するように、式Ab-Z-L-Am(式中、Abは前記CD5抗体又はその抗原結
合フラグメントである、Lはリンカーである、Zは化学的な部分構造である、及びAmはアマ
トキシンである)によって表されるコンジュゲートを形成するように、アマトキシンに結
合していることがある。
【0286】
いくつかの実施形態では、Am-L-Z-Abは:
【化49】
である。
【0287】
いくつかの実施形態では、Am-L-Z-Abは:
【化50】
である。
【0288】
いくつかの実施形態では、Am-L-Z-Abは:
【化51】
である。
【0289】
いくつかの実施形態では、Am-L-Z-Abは:
【化52】
である。
【0290】
いくつかの実施形態では、Am-L-Z-Abはである:
【化53】
である。
【0291】
抗体-薬物コンジュゲートの調製
本明細書に開示する式IのADCにおいて、抗-CD5抗体、又はその抗原結合フラグメントは
、本明細書に開示するリンカーL及び化学的な部分構造Zを介して、1個以上の細胞毒性薬
物部分(D)(例えば、1抗体あたり約1~約20個の薬物部分)にコンジュゲートしている。本
発明のADCは、以下を含む、当業者に公知の有機化学反応、条件、及び試薬を使用するい
くつかの経路によって調製され得る:(1)抗体、又はその抗原結合フラグメントの反応性
置換基を、2価リンカー試薬と反応させて、本明細書中上記のようなAb-Z-Lを形成させる
、続いて、薬物部分Dと反応させる;又は、(2)薬物部分の反応性置換基を、2価リンカー
試薬と反応させて、D-L-Z'を形成させる、続いて、本明細書中上記のような抗体、又はそ
の抗原結合フラグメントの反応性置換基と反応させる。ADCを調製するための更なる方法
は、本明細書中に記載される。
【0292】
別の態様において、前記抗-CD5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、1つ以上のス
ルフヒドリル基を導入するために化学的に修飾され得る1つ以上のリジン残基を有する。
次いで、前記ADCを、本明細書中上記に記載するように、スルフヒドリル基の硫黄原子を
介してコンジュゲートすることによって形成する。リジンを修飾するために使用すること
ができる試薬としては、限定されるものではないが、N-スクシンイミジルS-アセチルチオ
アセテート(SATA)及び2-イミノチオラン塩酸塩(Traut’s試薬)が挙げられる。
【0293】
別の態様において、前記抗-CD5抗体、又はその抗原結合フラグメントは、1つ以上のス
ルフヒドリル基を有するように化学的に修飾され得る1つ以上の糖鎖部分(carbohydrate g
roups)を有することがある。次いで、前記ADCを、本明細書中上記に記載されるように、
スルフヒドリル基の硫黄原子を介してコンジュゲートすることによって形成する。
【0294】
更に別の態様において、前記抗-CD5抗体は、酸化されてアルデヒド(-CHO)基を提供し得
る1つ以上の糖鎖部分(carbohydrate groups)を有することがある(例えば、Laguzza, et a
l., J. Med. Chem. 1989, 32(3), 548-55を参照のこと)。次いで、前記ADCを、本明細書
中上記に記載されるように、対応するアルデヒドを介してコンジュゲートすることによっ
て形成する。細胞毒素を結合させる又は会合させるためのタンパク質を改変する他のプロ
トコールは、Coligan et al., Current Protocols in Protein Science, vol. 2, John W
iley & Sons (2002)に記載されている(本明細書に参照により取り込まれる)。
【0295】
抗体、免疫グロブリン又はそのフラグメント等の細胞にターゲットするタンパク質に、
リンカー-薬物部分をコンジュゲートさせるための方法は、例えば、米国特許第5,208,020
号; 米国特許第6,441,163号; WO2005037992; WO2005081711; 及びWO2006/034488に記載さ
れている(これらの全ては、その全体が本明細書に明確に参照により取り込まれる)。
【0296】
投与経路及び用量
或いは、前記抗体及び細胞毒性薬物を含む融合タンパク質を、例えば、組換え技術又は
ペプチド合成によって、作製することがある。DNAの長さは、互いに隣接するか、又は前
記コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカー・ペプチドをコードする領域によっ
て分離された、前記コンジュゲートの2つの部分をコードするそれぞれの領域を含むこと
がある。
【0297】
本明細書中に記載するADCを、種々の投薬形態で患者(例えば、自己免疫疾患又はがんに
罹患しているヒト患者)に投与することがある。例えば、本明細書中に記載するADCを、自
己免疫疾患又はがんに罹患している患者に、水溶液(例えば、1種以上の薬学的に許容可
能な賦形剤を含む水溶液等)の形態で投与することがある。本明細書に記載の組成物及び
方法と共に使用するために好適な薬学的に許容される賦形剤には、粘度調整剤が含まれる
。前記水溶液を、当該技術分野で公知の技術を使用して滅菌することがある。
【0298】
本明細書中に記載するような抗-CD5 ADCを含む医薬製剤は、このようなADCを、1種以上
の任意選択的な薬学的に許容可能な担体と混合することによって(Remington's Pharmaceu
tical Sciences 16th edition、Osol、AEd.(1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、
調製される。薬学的に許容可能な担体は、一般に、使用する用量及び濃度で、レシピエン
トに対して無毒性であり、これには、限定されるものではないが、以下が挙げられる:リ
ン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを
含む酸化防止剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジル・アンモニウム;塩化ヘキ
サメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しく
はベンジル・アルコール;メチル若しくはプロピル・パラベン等のアルキル・パラベン;
カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール
等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫
グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グ
ルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単
糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンなどの他の糖類;ED
TAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなど
の糖類;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)
;並びに/又はポリエチレン・グリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0299】
投与するADCの量は、CAR細胞療法を拒絶する細胞(例えば、活性化T細胞)を減少させる
のに充分であるべきである。治療的に有効な用量を決定することは当業者の能力の範囲内
であるが、例えば、免疫疾患又はがんを治療するために、ADCを全身投与するのに利用す
る本明細書に記載の方法の実施形態では、有効なヒト用量は、0.1~150 mg/kgの範囲(例
えば、5 mg/kg、10 mg/kg、25 mg/kg、50 mg/kg、75 mg/kg、100 mg/kg、150 mg/kg等)に
あるであろう。その投与経路は、推奨用量に影響を及ぼす可能性がある。採用する投与様
式に依存しつつ、有効なレベルを維持するために、例えば、CAR-T細胞拒絶のリスクを減
少させるために、全身投与を繰り返すことが意図される。
【0300】
本明細書に記載する抗-CD5 ADCを、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、眼内
、又は非経口などの様々な経路によって投与することがある。任意の所与の症例において
投与するのに最も好適な経路は、具体的なADC、患者、医薬製剤方法、投与方法(例えば、
投与時間及び投与経路)、患者の年齢、身体の重量、性別、治療する疾患の重症度、患者
の食事、及び患者の排泄速度に依存する。
【0301】
本明細書中に記載する抗-CD5 ADCの有効用量は、例えば、単回(例えば、ボーラス)投与
、複数回投与、又は持続投与あたりで、体重に関して約0.001~約100 mg/kgの範囲にする
ことで、前記抗-CD5 ADCは最適な血中濃度(例えば、0.0001~5000 μg/mLの血中濃度)に
なることがある。前記抗-CD5 ADCの1回用量を、前記抗-CD5 ADCを投与した後の時間にCAR
療法を同時に受けている、又は受ける予定のヒト患者に、1日、1週間、又は1ヶ月あたり1
回以上(例えば、2~10回)、投与することがある。抗-CD5 ADCを、ヒト患者に1回又は複数
回用量として投与することがある。ある実施形態では、前記抗-CD5 ADCを、宿主反応性T
細胞の量を減少させる(例えば、CAR療法前の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%
、90%、95%、又はそれ以上)のに充分な量で、投与することがある。
【実施例0302】
本明細書中に記載する組成物及び方法を、どのように使用する、作製する、及び評価す
ることがあるかに関する記載を、当業者に提供するために、以下の実施例を提示する、そ
して、純粋に本発明の例示であることが意図され、そして本発明者らがそれらの発明とみ
なす範囲を限定することを意図していない。
【0303】
実施例1:抗-CD5抗体のin vitro結合解析
抗-CD5抗体 5D7 hIgG1の結合特性を測定するために、抗体結合試験を、25℃セルシウス
で、0.1% w/vのウシ血清アルブミンを添加した1× PBS中、バイオレイヤー干渉法(Bio-La
yer Interferometry (BLI))を用いたPall ForteBio Octet Red96により、行った。精製ヒ
ト抗-CD5抗体(5D7)を、抗-ヒトFcバイオセンサ(AHC; Pall ForteBio 18-5063)上に固定化
し、50nMの精製したヒトCD5エクトドメインと共にインキュベートした。抗-CD5抗体 5D7
の結合特性を表4に示す。実施例1~5で使用する抗-CD5抗体5D7は、マウス抗体5D7のヒ
ト化型である(US 2008/0254027を参照)。本明細書中で使用する抗体5D7の配列を、配列番
号(SEQ ID Nos): 53及び54(重鎖可変領域アミノ酸配列及び軽鎖可変領域アミノ酸配列)並
びに配列番号(SEQ ID Nos):47~52(重鎖CDR及び軽鎖CDR)に記載する。
【0304】
【0305】
実施例2:抗-CD5抗体のin vitro細胞株結合解析
MOLT-4細胞(即ち、不死化ヒトTリンパ芽球細胞株)を20,000細胞/ウェルでプレーティ
ングし、示したマウス抗-CD5抗体(即ち、L17F12、UCHT2、205919、及びCRIS-1)を滴下し
、4℃で2時間染色した。二次抗-マウスAF488染色を、一定量で、4℃で30分間添加した。
洗浄後、プレートをフローサイトメーターで測定し、示した抗体(及びネガティブ・コン
トロール、即ちmIgG1)の結合を、AF488チャンネルにおける蛍光強度の幾何平均値に基づ
いて決定した。これらのアッセイによる結果を
図1に示す。
【0306】
図1に示すように、前記マウス抗-CD5抗体 L17F12(Thermo Fisher)、UCHT2(BioLegend)
、205919(Novus Biologicals)、及びCRIS-1(Novus Biologicals)は、ヒトTリンパ芽球細
胞(即ち、MOLT-4細胞)に結合し、EC
50 = 207 pM(L17)、354 pM(UCH)、1350 pM(205)、及
び43 pM(CRIS)であった。
【0307】
実施例3:抗-CD5抗体のin vitro初代細胞結合解析
初代ヒトT-細胞を8×10
4細胞/ウェルでプレーティングし、ヒト抗-CD5抗体 5D7 を滴
下し、37℃で2時間染色した。二次抗-マウスAF488染色を、一定量で、4℃で30分間添加し
た。洗浄後、プレートをフローサイトメーターで測定し、抗-CD5 5D7抗体(及びネガティ
ブ・コントロール、即ちhIgG1)の結合を、AF488チャンネルにおける蛍光強度の幾何平均
値に基づいて決定した。これらのアッセイによる結果を
図2に示す。
【0308】
図2に示すように、前記抗-CD5抗体5D7は、EC
50 = 3.0 pMで、初代ヒトT-細胞に結合し
た。
【0309】
実施例4:in vitro T-細胞傷害試験を用いた、抗-CD5-アマトキシン抗体薬物コンジュ
ゲート(ADC)の in vitro 解析
抗-CD5抗体 5D7を、切断可能なリンカーを使ってアマトキシン(アマニチン)にコンジュ
ゲートさせて、抗-CD5 5D7ADCを形成させた。約6(鎖間DAR6)の薬剤対抗体比(DAR)を有す
る抗-CD5 5D7-ADC、並びに約2のDARを有する抗-CD5 5D7-ADC(D265C変異を介する部位特異
的なコンジュゲーションを使用して調製)を試験した。更に、抗-CD5 5D7-ADCの速い半減
期のバリアントを、そのFc領域内にH435A変異を導入することによって作製した。
【0310】
各抗-CD5 5D7-ADCを、in vitroヒトT-細胞傷害アッセイを用いて評価した。
【0311】
凍結保存されたネガティブに選択された初代ヒトT細胞を解凍し、抗-CD3抗体及びIL-2
で刺激した。アッセイの最初に、384ウェル・プレートのウェル当たり2×104 個のT細胞
を播種し、示したADC又は非-コンジュゲートの抗-CD5抗体を、0.003nM~30 nMの間の種々
の濃度でウェルに添加した後、37℃及び5% CO2のインキュベーターの中に置いた。5日間
の培養をした後、細胞をフロー・サイトメトリーによって解析した。細胞を生存率マーカ
7-AADで染色し、体積フロー・サイトメーター(volumetric flow cytometer)で測定した
。
【0312】
生存しているT-細胞の数(
図3A及び3B)を、FSC対SSC及び7-AADによって測定した。
非-コンジュゲートの抗-CD5 5D7抗体を、比較対照として使用した(
図3A)。
【0313】
図3Aに示すように、約6のDARを有する抗-CD5 5D7-ADCは、ヒトT細胞を強力かつ特異
的に傷害した(IC50=3.7 pm)。一方、非-コンジュゲート(「そのまま(naked)」)抗-CD5 5D
7抗体の存在下にあるT細胞は、生存可能なままであった。
図3Bに示すように、約2の部
位特異的な(D265C)DARを有するADCは、DAR 6のADCと同様の強力なレベルのT-細胞傷害性(
IC50=5.0 pm)を保持した。抗-CD5 5D7-ADC(H435A)の速い半減期のバリアントは、同様レ
ベルのT-細胞傷害性を示した(IC50=4.9 pm;
図3B)。
【0314】
実施例5:hNSGマウス・モデルを用いたT-細胞減少の解析
in vivo T-細胞減少アッセイを、ヒト化NSGマウス(Jackson Laboratories)を用いて行
った。抗-CD5抗体 5D7を、切断可能なリンカーを使ってアマトキシン(アマニチン)にコン
ジュゲートさせて、抗-CD5 5D7-ADCを形成させた。抗-CD5 5D7-ADCを、上記のように、約
6のDAR又は約2のDARの何れかとして調製した。各抗-CD5 5D7 ADC(DAR6又はDAR2)を、ヒト
化マウスに単回の静脈内注射(DAR6 ADCについては0.3 mg/kg、1 mg/kg、又は3 mg/kg、又
はDAR2 ADCについては1 mg/kg又は3 mg/kg)として投与した。7日目に、末梢血細胞、骨髄
、又は胸腺サンプルを採取し、フロー・サイトメトリーによりCD3+ T-細胞の絶対数を測
定した(DAR2 ADCについては
図4A-4B、DAR6 ADCについては5A-5Cを参照のこと)
。
【0315】
図4A-4Bに示すように、0.3mg/kg、1mg/kg、又は3mg/kgのDAR6の抗-CD5 5D7-ADCで
処理したヒト化NSGマウスでは、末梢血又は骨髄において、T-細胞が強力に減少した、一
方、1mg/kg又は3mg/kgのDAR6の抗-CD5 5D7-ADCで処置した後で、胸腺のT-細胞は減少した
。このin vivo試験で使用したネガティブ・コントロールは、CD5に特異的でないヒトIgG1
(そのままの(naked)抗体(huIgG1)として)を含み、アマトキシン(huIgG1-AM)にコンジュゲ
ートさせた。
図4A~4Bに記載するように、前記huIgG1そのまま(naked)及びコンジュ
ゲートさせたコントロールは、末梢血(
図4A)及び骨髄(
図4B)におけるT細胞の減少に
、影響を与えず、これらのコントロールはPBSコントロールに相当した。抗-CD5抗体(抗体
YTH34.5)をコントロールとして使用しても、25 mg/kgの用量で末梢の及び骨髄のT細胞を
減少させることができた。
【0316】
図5A-5Cに示すように、1 mg/kg又は3 mg/kgで、部位特異的なDAR2の抗-CD5 5D7-A
DCを処置したヒト化NSGマウスは、末梢血、骨髄、及び胸腺T-細胞において、T-細胞が強
力に減少した。
図5A~5Cのそれぞれにおいて、そのままの抗体5D7もコントロールと
して使用した。
図5Aに記載するように、抗体5D7により (非-特異的なヒトIgG1コントロ
ール又はPBSと比較して)末梢T細胞を減少させることができたが、骨髄T細胞又は胸腺T細
胞のいずれも減少させることはできなかった。一方、
図5B及び5Cに記載するように、
5D7-AM ADCは、骨髄及び胸腺のT細胞の両方を減少させるのに有効であった。
【0317】
実施例6:マウス・モデルにおける同種異系CAR-T細胞の投与
以下の研究を行って、様々な条件下で同種異系レシピエント(recipient)中に存在するC
AR-T細胞のレベルを評価する。
【0318】
この研究では、マウスの同種異系CAR-Tモデルを用いる。
【0319】
第1の処置群のマウスを、0日目に1×107~1×109 細胞/kgを静脈内注入することによ
って、同種異系T細胞の初回用量で処置する。3日目に、前記マウスに抗-CD5-α-アマニチ
ンADCを3 mg/kgの用量で投与する。10日目に、前記ADCが前記マウスの血中から実質的に
クリアランスされた後、マウスに同種異系のCAR-T細胞を投与する。前記CAR-T細胞は、0
日目に投与した同種異系T細胞と同じドナー(donor)に由来する。
【0320】
第2の処置群のマウスを、第1の処置群と同じプロトコルを用いて処置する、但し、抗-C
D5 ADCの代わりに、3日目に非コンジュゲートの抗-CD5抗体を投与する。
【0321】
第3の処置群のマウスを、第1の処置群と同じプロトコルを用いて処置する、但し、抗-C
D5 ADCの代わりに、3日目にα-アマニチンにコンジュゲートしたアイソタイプ・コントロ
ールの抗体を投与する。
【0322】
第4の処置群のマウスを、第1の処置群と同じプロトコルを用いて処置する、但し、同種
異系T細胞の代わりに、0日目に初回用量の自己T細胞を投与する。
【0323】
第5の処置群のマウスは、前処置なしに、10日目に同種異系CAR-T細胞を投与する。
【0324】
第6の処置群のマウスは、前処置なしに、10日目に自己CAR-T細胞を投与する。
【0325】
14日目、17日目、及び30日目に、各処置群から得られたマウスの脾及び末梢血中に存在
するCAR-T細胞の個数を測定する。9日目に、各処置群から得られたマウスの脾及び末梢血
中のCD5+活性化T細胞の個数を測定する。本試験期間を通じて、拒絶反応の症状(symptom)
についてマウスをモニターする。
【0326】
実施例7:同種異系細胞療法の拒絶反応を予防するための、抗-CD5抗体薬物コンジュゲ
ートのヒト患者への投与
同種異系CAR細胞療法などの同種異系細胞療法を受けるヒト患者を選択する。同種異系
細胞の拒絶を阻害又は予防するために、抗-CD5抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、本明細
書中に開示する方法に従って投与する。医師は、以下の治療ステップを行う。
【0327】
まず最初に、同種異系細胞に対するプライミング免疫反応を誘発するのに充分な量で、
初回用量の同種異系細胞を、前記患者に静脈内投与する。プライミング段階では、同種異
系細胞を前記患者に投与して、内因性の活性化CD5+ T細胞が生じる免疫反応を誘発させる
。
【0328】
続いて、前記患者に、リンカーを介して細胞毒素にコンジュゲートした抗-CD5抗体を含
む抗-CD5 ADCを投与する。前記抗-CD5 ADCは、内因性のCD5+活性化T細胞を減少させるの
に有効な量で投与する。前記抗-CD5 ADCを投与した後に、CD5+活性化T細胞のレベルを評
価し、減少を確認する。
【0329】
次に、治療有効量のCARを発現する同種異系細胞を投与する。前記同種異系細胞は、プ
ライミング・ステップの間に、前記患者に投与した細胞と同じドナー(donor)に由来する
。プライミング及び抗-CD5 ADCの投与を行わずに同種異系細胞療法を受けている患者と比
較して、レシピエント(recipient)患者における同種異系細胞の受容が促進され、拒絶反
応のリスクが低下する。
【0330】
【0331】
他の実施形態
本明細書において言及する全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各独立した
刊行物又は特許出願を具体的かつ個別に示して参照により組み込まれるように、同じ程度
まで、本明細書に参照により取り込まれる。
【0332】
本発明をその特定の実施形態に関連させて説明してきたが、本発明は更なる改変が可能
であり、本出願は、広く、本発明の原理に従い、本発明が関係する技術内の既知の又は慣
例的な実施の範囲内に入り、本明細書で前述され、特許請求の範囲に従う本質的な特徴に
適用され得るような、本発明からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、又は適応を
包含することが意図されることを理解されたい。