(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011141
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/50 20150101AFI20250116BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250116BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20250116BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/127 20250101ALI20250116BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250116BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20250116BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250116BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P27/02
A61P27/04
A61P29/00
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
C12N5/071
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024168381
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2022540959の分割
【原出願日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0056647
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】517354917
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム ホン キュン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018MD79
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD15
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF01
4C076FF11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB57
4C087CA04
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA24
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA52
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた傷の治癒力と抗炎症の効果とを有する眼球疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【解決手段】羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防または治療用薬学組成物及び眼球疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。羊膜上皮細胞由来のエクソソームは、眼球組織の傷の治癒力を有し、眼球疾患によって破壊された涙腺の組織を回復させて涙の分泌を誘導し、多様な炎症性サイトカインの分泌を減少させることにより、眼球疾患をより効果的に予防または治療することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する、眼球疾患の予防または治
療用薬学組成物。
【請求項2】
前記エクソソームは、
角膜または結膜組織の傷の治癒力を有することを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾
患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記エクソソームは、
前記眼球疾患によって破壊された涙腺の組織を回復させ、涙層の安定化に関与する杯細
胞を調節し、涙の分泌を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の予防ま
たは治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記エクソソームは、
IL-1β、IL-8、IL-6、IFNγ、及びTNFαからなる群から選択される
炎症性サイトカインの分泌を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の
予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記眼球疾患は、
眼球乾燥症、角膜上皮損傷、角膜炎、結膜炎、及び角結膜炎からなる群から選択される
眼球表面疾患;または眼球内炎、ブドウ膜炎、及び黄斑変性からなる群から選択される眼
内部疾患;であることを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の予防または治療用薬学
組成物。
【請求項6】
前記組成物は、
点眼剤、注射剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル、シロップ、懸濁剤、乳剤、
点滴剤、及び液剤からなる群から選択された何れか1つの剤型であることを特徴とする、
請求項1に記載の眼球疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する、眼球疾患の予防または改
善用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防
または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
羊膜(amnion)は、胎児を包んでいる薄い生体膜であって、母体からの各種の感
染及び免疫反応などから胎児を保護する障壁の役割を果たす。羊膜は、皮膚移植及び多様
な疾病に使われている。羊膜は、単純立方上皮と厚い基底膜、無血管性の間葉性癲癇で構
成されて、移植しても拒絶反応を示さない特徴があって、眼科疾患で羊膜移植術を施行し
ている。また、羊膜は、角膜及び結膜細胞の成長と特性とを保持させることができると明
らかになっており、上皮の細胞死を抑制して創傷治癒過程で上皮化を促進させ、炎症を減
少させ、新生血管形成を抑制して、傷の治癒後、瘢痕形成も抑制する。しかし、羊膜移植
術は、必ず手術的方法を通じてなされるので、手術による瘢痕形成、出血、感染などの合
併症が発生し、反復移植にも制限点がある。このような短所を克服するために、羊膜の一
部の構成成分を利用した点眼治療法が提案されている。
【0003】
エクソソーム(exosome)は、あらゆる細胞が外部環境に分泌する脂質二重層で
取り囲まれたナノサイズの小胞体である。エクソソームは、サイズが50~200nmで
あって、多重小胞エンドソームが成熟する過程でエンドソーム膜が内側に入って生成され
た内腔小嚢であるが、多重小胞エンドソームが細胞表面と結合する時に分泌される。エク
ソソームは、タンパク質、脂質、核酸、代謝物質など生物学的活性を示す多様な物質を含
んでおり、由来する細胞の状態を反映している。エクソソームは、細胞が分泌する細胞間
の信号伝達物質として機能するが、受容体及びタンパク質だけではなく、核成分を含有し
ているために、細胞間の疎通の役割が可能であると知られている。生体活性分子を含むた
めに、標的細胞と融合されながら生理活性分子が伝達されて標的細胞の生理学的活性効果
を容易に誘導することができる。また、エクソソームは、細胞から由来したために、免疫
原性が低く、細胞と同じ膜位相を有しており、標的細胞に容易に付着する。ヒト由来細胞
のエクソソームは、血管新生、免疫抑制、癌の病理学的段階で重要な役割を行うと知られ
ており、疾病の初期段階で優れた治療候補物質として注目されている。
【0004】
これにより、このようなヒト由来細胞のエクソソームを用いて眼球疾患の新たな治療剤
を開発しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた傷の治癒力と抗炎症の効果とを有したヒト由来細胞のエクソソ
ームを有効成分として含有する眼球疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することで
ある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記エクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防また
は改善用健康機能食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を果たすために、本発明は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分と
して含有する眼球疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患
の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による羊膜上皮細胞由来のエクソソームは、眼球組織の傷の治癒力を有し、眼球
疾患によって破壊された涙腺の組織を回復させて涙の分泌を誘導し、多様な炎症性サイト
カインの分泌を減少させることにより、眼球疾患の予防または治療のための薬学組成物及
び健康機能食品組成物として活用することができ、それを用いて効果的に眼球疾患を予防
、改善または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例による羊膜上皮細胞から抽出されたエクソソームを透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したイメージである。
【
図2】
図1によるエクソソームのサイズと多分散度とを測定した結果である。
【
図3】ウェスタンブロッティングを用いてエクソソームを確認した図面である。
【
図4】エクソソーム処理によるヒト結膜細胞株の増殖の影響を確認した結果である。
【
図5】エクソソームがヒト結膜上皮内に陥入された状態を確認した図面である。
【
図6】エクソソーム処理によるIL-8の濃度変化を確認した結果である。
【
図7】エクソソーム処理による傷の治癒力を確認した結果である。
【
図8】眼球乾燥症動物モデルでエクソソーム処理による涙の分泌量の変化を確認した結果である。
【
図9】眼球乾燥症動物モデルで角膜リサミングリーン(Lissamine green)染色を行った結果である。
【
図10】眼球乾燥症動物モデルで結膜組織のPAS(periodic acid Schiff)染色を行った結果である。
【
図11】眼球乾燥症動物モデルで涙腺の組織のアルシアンブルー(Alcian Blue)染色を行った結果である。
【
図12】眼球乾燥症動物モデルの角膜組織でサイトカイン分泌の変化を確認した結果グラフである。
【
図13】羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエクソソーム処理によるIL-8の濃度を比較したグラフである。
【
図14】羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエクソソーム処理による傷の治癒力を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明者は、産婦から寄贈された羊膜で羊膜上皮細胞由来のエクソソームを収得し、眼
球乾燥症が誘導されたマウスに処理してエクソソームの眼球疾患に対する治療効果を観察
して、ヒト羊膜上皮細胞由来のエクソソームが眼球疾患に新たな治療戦略になりうるとい
うことを確認することにより、本発明を完成した。
【0013】
本明細書において、「エクソソーム」とは、ほとんどの真核細胞のエンドソーム区画で
生成される膜で取り囲まれて細胞外に生成されるあらゆる種類の細胞外小胞(extra
cullarlar vesicles、EVs)を意味する。
【0014】
本明細書において、「予防」とは、本発明による薬学組成物または健康機能食品組成物
の投与によって眼球疾患、または、その少なくとも1つ以上の症状の発生を抑制させるか
、発病を遅延させるあらゆる行為を意味する。また、再発を予防または防止するために、
前記疾病に快方に向かう対象の治療を含む。
【0015】
本明細書において、「治療」とは、本発明による薬学組成物の投与によって眼球疾患、
または、その少なくとも1つ以上の症状を緩和、減少、または消滅させるなど、その症状
を好転させるか、有利に変更するあらゆる行為を意味する。
【0016】
本明細書において、「改善」とは、本発明による健康機能食品組成物の摂取によって眼
球疾患、または、その少なくとも1つ以上の症状を緩和、減少、または消滅させるなど、
その症状を好転させるか、有利に変更するあらゆる行為を意味する。
【0017】
本明細書において、「薬学組成物」とは、特定の目的のために投与される組成物であっ
て、本発明の目的上、眼球疾患、または、その少なくとも1つ以上の症状を予防または治
療するために投与されることを意味する。
【0018】
本明細書において、「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号に
よる人体に有用な機能性を有した原料や成分を使用して製造及び加工した食品を含み、栄
養供給以外にも、本発明の目的上、眼球疾患の予防、生体防御、免疫、回復などの生体調
節機能が効率的に表れるように加工された医学、医療効果が高い食品を意味する。
【0019】
本発明は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防
または治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
前記「羊膜上皮細胞(amnion epithelial cell)」は、胎盤を
構成する羊膜上皮組織から分離されたものであって、多能性幹細胞の特性を有しうる。
【0021】
前記「羊膜上皮細胞由来のエクソソーム」は、羊膜上皮細胞から収得することができる
エクソソームであれば、制限なしに含まれうる。
【0022】
本発明による薬学組成物において、前記エクソソームは、角膜または結膜組織の傷の治
癒力を有しうる。
【0023】
前記エクソソームは、眼球乾燥症のような眼球疾患によって破壊された涙腺の組織を回
復させることができ、涙層の安定化に関与する杯細胞(杯状細胞)を調節し、涙の分泌を
誘導することができる。
【0024】
前記「杯細胞」は、結膜から粘液を分泌して涙層の安定化を保持させる。
【0025】
また、前記エクソソームは、IL-1β(Interleukin 1 beta)、
IL-8(Interleukin 8)、IL-6(Interleukin 6)、
IFNγ(Interferon gamma)、及びTNFα(Tumor necr
osis factor alpha)からなる群から選択される炎症性サイトカインの
分泌を減少させることができる。
【0026】
本発明による薬学組成物において、前記眼球疾患は、眼球表面疾患及び眼内部疾患を含
み、より詳細には、眼球乾燥症、角膜上皮損傷、角膜炎、結膜炎、及び角結膜炎からなる
群から選択される眼球表面疾患または眼球内炎、ブドウ膜炎、及び黄斑変性からなる群か
ら選択される眼内部疾患であるが、これらに制限されるものではない。
【0027】
本発明による薬学組成物は、薬学的分野の通常の方法によって製造可能である。前記薬
学組成物は、剤型によって薬学的に許容可能な適切な担体と配合され、必要に応じて、賦
形剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、溶剤などをさらに含
んで製造可能である。前記適切な担体などは、本発明による羊膜上皮細胞由来のエクソソ
ームの活性及び特性を阻害しないものであって、投与形態及び剤型によって異なるように
選択されうる。
【0028】
本発明による薬学組成物は、如何なる剤型でも適用可能であり、より詳細には、通常の
方法によって経口型剤型、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の非経口型剤型で剤形化して使
われる。
【0029】
望ましくは、前記組成物は、点眼剤、注射剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル
、シロップ、懸濁剤、乳剤、点滴剤、及び液剤からなる群から選択された何れか1つの剤
型である。
【0030】
前記経口型剤型のうち、固型剤型は、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤などの形
態であって、少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース
、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、セルロース、ゼラチンなどを混ぜて調剤す
ることができ、単純な賦形剤の以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑
剤も含まれうる。また、カプセル剤型の場合、前述した物質以外にも、脂肪油のような液
体担体をさらに含みうる。
【0031】
前記経口型剤型のうち、液状剤型は、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当
するが、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィンの以外に、さまざまな賦形剤
、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれうる。
【0032】
前記非経口剤型は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、点
眼剤、点滴剤、注射剤、坐剤が含まれうる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレング
リコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチ
ルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(
witepsol)、マクロゴール、トウイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロ
ゼラチンなどが使われる。これに制限されず、当該技術分野に知られた適した製剤をいず
れも使用可能である。
【0033】
本発明による薬学組成物において、前記薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与される
。
【0034】
本明細書において、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恵み
/危険の比率で疾患の治療に十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味する。
【0035】
前記薬学組成物の有効容量レベルは、使用目的、患者の年齢、性別、体重及び健康状態
、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経
路及び排出比率、治療期間、配合または同時使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学
分野によく知られた要素によって異なるように決定される。例えば、一定ではないが、一
般的に0.001~100mg/kgであって、望ましくは、0.01~10mg/kg
を一日1回ないし数回投与される。前記投与量は、如何なる面でも本発明の範囲を限定す
るものではない。
【0036】
本発明による薬学組成物は、眼球疾患が発生する任意の動物に投与することができ、前
記動物は、例えば、ヒト及び霊長類だけではなく、牛、豚、馬、犬などの家畜などを含み
うる。
【0037】
本発明による薬学組成物は、製剤形態による適当な投与経路で投与され、目的組織に到
達することができる限り、経口または非経口の多様な経路を通じて投与される。投与方法
は、特に限定する必要なしに、例えば、経口、眼球内、直腸または静脈、筋肉、皮膚塗布
、呼吸器内吸入、子宮内硬膜または脳血管内(intracere-broventri
cular)注射などの通常の方法で投与される。
【0038】
本発明による薬学組成物は、眼球疾患の予防または治療のために、単独で使われ、手術
または他の薬物治療などと併用して使われる。
【0039】
本発明は、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球疾患の予防
または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0040】
前記エクソソームは、角膜または結膜組織の傷の治癒力を有し、破壊された涙腺の組織
を回復させることができ、涙層の安定化に関与する杯細胞を調節し、涙の分泌を誘導する
ことができる。また、前記エクソソームは、IL-1β、IL-8、IL-6、IFNγ
、及びTNFαからなる群から選択される炎症性サイトカインの分泌を減少させて、眼球
疾患の予防または改善のための健康機能食品組成物として使用することができる。
【0041】
これに相応する特徴は、前述した部分で代替可能である。
【0042】
本発明による健康機能食品組成物において、前記健康機能食品は、眼球疾患の予防また
は改善目的であって、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップまたは飲料などで製造可能
である。前記健康機能食品が取ることができる形態には制限がなく、前記薬学組成物と同
じ方式で製剤化されて機能性食品として利用するか、各種の食品に添加される。
【0043】
本発明による健康機能食品組成物において、前記健康機能食品は、通常の意味の食品を
いずれも含みうる。例えば、飲料及び各種のドリンク、果実及びその加工食品(フルーツ
缶詰、ジャムなど)、魚類、肉類及びその加工食品(ハム、ベーコンなど)、パン類及び
麺類、クッキー及びスナック類、乳製品(バター、チーズなど)などが可能であり、通常
の意味での機能性食品をいずれも含みうる。また、動物のための飼料として用いられる食
品も含みうる。
【0044】
本発明による健康機能食品組成物は、当業者に通常使われる食品学的に許容可能な食品
添加剤(食品添加物)及び適切なその他の補助成分をさらに含んで製造可能である。食品
添加物としての適否は、他の規定がない限り、食品医薬品安全庁に承認された食品添加物
公典の総則及び一般試験法などによって当該品目に関する規格及び基準によって判定する
ことができる。前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えば、ケトン類、
グリシン、クエン酸カルシウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成物;紺色素、甘
草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物;L-グルタ
ミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製
剤類などが挙げられる。
【0045】
前記その他の補助成分は、例えば、香味剤、天然炭水化物、甘味剤、ビタミン、電解質
、着色剤、ペクチン酸、アルギン酸、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定
化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸化剤などをさらに含有することができる。
特に、前記天然炭水化物としては、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトー
ス、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのよう
なポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコール
を使用することができ、甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味
剤やサッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用することができる。
【0046】
本発明による健康機能食品に含有された前記羊膜上皮細胞由来のエクソソームの有効容
量は、眼球疾患の予防または改善など、その使用目的によって適切に調節される。
【0047】
前記健康機能食品組成物は、食品を原料として一般薬品の長期服用時に発生する副作用
などがない長所があり、携帯性に優れて、眼球疾患の予防または改善のための補助剤とし
て摂取される。
【0048】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実
施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定され
るものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供さ
れるものである。
【0049】
<実施例1>ヒト羊水上皮細胞の分離及び培養とエクソソーム抽出
【0050】
合併症のない妊産婦の帝王切開術によって摘出された胎盤を滅菌された容器に入れて生
理食塩水で洗浄して血餠を除去した。臍帯側から医療用はさみを用いて切開を入れ、羊膜
(Amniotic membrane)を絨毛膜からフォーセップを入れて少しずつ剥
離した。分離した羊膜をステンレスプレートに上皮が下に向かうように広げた後、手で擦
って残っている絨毛膜と血餠とを除去し、生理食塩水を用いて5回繰り返して濯いだ。羊
膜をステンレスプレートに上皮が下に向かうように広げた後、NCペーパー(nitro
cellulose paper、0.45μm)を上に覆って羊膜をNCペーパーに付
着させた。付着後、それを5~10cm程度の正方形サイズに切ってHBSS(Hank
’s balanced salt solution)が入れられた容器に入れて実験
室に移動させた。
【0051】
分離された羊膜を滅菌されたビーカーに移してHBSSを用いて数回洗浄して残存血液
と組織滓とを完全に除去した後、羊膜片を0.5mM EDTA(ethylenedi
aminetetraacetic acid)とペニシリン(penicillin)
-ストレプトマイシン(streptomycin)とを含んだPBSで37℃で10分
間インキュベーション(incubation)した。以後、0.05% trypsi
n/EDTA溶液で37℃で5分間置いた後、滓を除去するために、当該溶液は捨て、新
たな0.05% trypsin/EDTA溶液で37℃で10分間間欠的に振りながら
反応させた後、培養液を集めた。4倍ボリュームのDMEM/F12培養液を添加してt
rypsin/EDTAを不活性化させた後、300×gで10分間遠心分離し、懸濁し
た後、ポアサイズ(pore size)100μmのセルストレーナー(cell s
trainer)で濾過して遠心分離後、計数した。
【0052】
分離された細胞は、DMEM/F12(10% FBS、1% P/S)培養液を用い
て1.2×105/cm2の密度でポリ-L-リジン(poly-L-lysine)コ
ーティングされた培養皿にシーディング(seeding)して37℃、5% CO2条
件で培養した。必要に応じて10ng/ml上皮細胞増殖因子(Epidermal G
rowth Factor、EGF)、ROCK(Rho-Associated Co
il Kinase)抑制剤、白血病抑制因子(leukemia inhibitor
y factor、LIF)を添加して培養した。
【0053】
前記エクソソームは、多様な方法で抽出が可能であり、例えば、ホスファチジルセリン
結合を通じた分離法、抗体結合分離法、超高速遠心分離法を用いて抽出することができる
。
【0054】
1)超高速遠心分離法を利用したエクソソーム抽出
【0055】
羊膜上皮細胞をDMEM/F12(10% FBS、10ng/ml EGF、1%
P/S)ポリ-L-リジンコーティングされた培養皿で80% コンフルエンス(con
fluence)に育て、細胞をPBSで3回洗浄して残っている培地をいずれも除去し
た。培地をDMEM/F12(1% Exosome Free FBS、10ng/m
l EGF、1% P/S)培地に取り替え、72時間後、調整培地(conditio
ned medium)を収集した。細胞破壊物(cell debris)の除去のた
めに、300×gで10分間遠心分離し、遠心分離後、得られた上澄み液を集めて30分
間1500×gで遠心分離した。遠心分離後、得られた上澄み液を収集して遠心濃縮機(
centrifugal concentrator、100,000 MWCO me
mebrane;Corning)を用いて調整培地を濃縮させた。濃縮された調整培地
は、100,000×gで2時間超遠心分離(ultracentrifugation
)し、この際、得られたペレットをPBSに再懸濁させた後、100,000×gで2時
間再び超遠心分離した。最終ペレットにエクソソームが含まれており、ペレットをPBS
に再懸濁させて直ちに使用するか、使用前まで4℃で保管した。
【0056】
2)ホスファチジルセリン結合を通じた分離法
【0057】
羊膜上皮細胞をDMEM/F12(10% FBS、10ng/ml EGF、1%
P/S)ポリ-L-リジンコーティングされた培養皿で80% コンフルエンスに育て、
細胞をPBSで3回洗浄して残っている培地をいずれも除去した。培地をDMEM/F1
2(1% Exosome Free FBS、10ng/ml EGF、1% P/S
)培地に取り替え、72時間後、調整培地を収集した。培地内の残っている細胞除去のた
めに、300×gで5分間遠心分離した後、上澄み液を集めて残っている細胞破壊物の除
去のために、1,200×gで20分間遠心分離した。最終的に上澄み液を10,000
×gで30分間遠心分離することにより、大きな細胞外小胞(large extrac
ellular vesicles)とエクソソームとを分離し、最終遠心分離された調
整培地の上澄み液にエクソソームが含まれうる。
【0058】
収集された上澄み液は、遠心濃縮機(100,000 MWCO memebrane
;Corning)を用いて最大50倍濃縮させて準備し、使用前まで4℃で保管した。
濃縮された上澄み液は、ホスファチジル結合分離キット(MagCaptureTM E
xosome Isolation Kit PS、Wako)を用いてエクソソームを
分離した。
【0059】
MagCapture方法は、ホスファチジルセリン(phosphatidylse
rine、PS)結合を通じたエクソソーム分離方法であって、抗体を使用せず、マグネ
チックビーズ(magnetic beads)が結合されたエクソソームキャプチャー
(exosome capture)に結合するエクソソームを分離する。簡単に、キッ
トに含まれたストレプトアビジン(streptavidin)マグネチックビーズをエ
クソソームキャプチャー固定バッファ(exosome capture immobi
lizing buffer)に希釈してマグネチックスタンド(magnetic s
tand)に1分間反応させてビーズのみ残す。これに、ビオチン(biotin)-標
識されたエクソソームキャプチャーを添加し、4℃でローテータ(rotator)を用
いて10分処理した後、マグネチックスタンドに1分間反応させてエクソソームキャプチ
ャー固定ビーズを準備した。
【0060】
濃縮された調整培地に1:500体積比のエクソソーム結合強化剤(exosome
binding enhancer)(×500)を添加してサンプルを準備し、エクソ
ソームキャプチャー固定ビーズと4℃で3時間以上ローテータを使用して反応させた後、
マグネチックスタンドを使用してEVs-結合ビーズのみ分離した。
【0061】
エクソソーム結合強化剤が含まれた洗浄バッファを用いてEVs-結合ビーズをウォッ
シング(washing)し、マグネチックスタンドを使用してEVs-結合ビーズのみ
残した。EVs-結合ビーズにエクソソーム溶離バッファを添加して、マグネチックビー
ズとエクソソームとを溶離させて最終的にエクソソームを獲得した。獲得されたエクソソ
ームは、PBSに再懸濁させて直ちに使用するか、使用前まで-80℃で保管した。
【0062】
図1は、本発明の一実施例による羊膜上皮細胞から抽出されたエクソソームを透過電子
顕微鏡(TEM)を用いて観察したイメージであり、
図2は、
図1によるエクソソームの
サイズと多分散度とをNanoSight(Malvern zetasizer、Wo
rcestershire、UK)を使用して測定した結果であって、50~200nm
サイズのエクソソームが測定された。
【0063】
図3は、ウェスタンブロッティングを用いてエクソソームを確認したものであって、羊
膜上皮細胞由来のエクソソームペレットを細胞溶解バッファに懸濁し、羊膜上皮細胞溶解
物を対照群として使用した。この溶解物をドデシル硫酸ナトリウム(sodium do
decyl sulfate、SDS)ローディング染料で5分間煮込み、10% SD
S-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel ele
ctrophoresis、PAGE)に電気泳動した後、NC膜(membrane)
にタンパク質を移動させた。5% スキムミルク(skim milk)で1時間反応さ
せた後、CD63抗体処理で羊膜上皮細胞由来のエクソソームを確認した。
【0064】
これを通じて、ヒト羊膜上皮細胞由来のエクソソームの安定した分離を確認することが
できた。
【0065】
<実験例1>細胞増殖の分析
【0066】
ヒト結膜細胞株を96ウェルプレートに分注し、プレート面積の60%に成長させた後
、成長因子とFBS飢餓状態の培養液で16時間培養後、70mM NaClを処理して
眼球乾燥症と類似した環境を誘導した。
【0067】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを細胞当たり、各0、300、600、3000パー
ティクル(particles)を処理し、24時間培養した後、培地を除去し、20μ
Lメチルチアゾールテトラゾリウム(methylthiazol tetrazoli
um、MTT)をそれぞれのウェル(well)に添加し、3時間37℃で培養して細胞
増殖を確認した。
【0068】
その結果、
図4のように、各濃度のエクソソーム処理後にも、ヒト結膜細胞株の安定し
た増殖が観察された。これを通じて、前記エクソソーム処理による細胞増殖の抑制または
細胞毒性は表われないと確認された。
【0069】
<実験例2>エクソソームのヒト結膜上皮細胞への細胞内移動(endocytosi
s)の分析
【0070】
エクソソームの上皮細胞内のエンドサイトーシス(endocytosis)を確認す
るために、赤色蛍光染料(Dil、Thermo Fisher)で染色した。エクソソ
ームと1×10-3mM Dilとを37℃で30分間反応させ、100μL PBSに
希釈して直ちに使用した。ヒト結膜上皮細胞株を使用して細胞が細胞培養プレート上で6
0% コンフルエンスに成長すれば、培地を1%エクソソームフリー培地に取り替えた後
、Dil染色されたエクソソームを処理して、4時間37℃、5% CO2環境で成長さ
せた。
【0071】
その結果、
図5のように、Dilラベルされたエクソソームがヒト結膜上皮細胞内に移
動することを確認することができる。
【0072】
<実験例3>IL-8濃度変化の分析
【0073】
ヒト結膜細胞株を96ウェルプレートに分注し、プレート面積の80%に成長させた後
、70mM NaClを処理して眼球乾燥症と類似した環境を誘導した。
【0074】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを細胞当たり、各60、300、600パーティクル
を処理し、24時間培養した後、細胞外に排出されたIL-8の濃度変化を確認した。対
照群は、前記エクソソームを処理しなかった。細胞培養に使われた培地を回収した後、L
EGEND MAXTM Human IL-8 ELISA kit with Pr
e-coated Plates(Biolegend、San Diego、CA、U
SA)を用いて製造社のプロトコルによってELISAを行った。
【0075】
その結果、
図6のように、眼球乾燥症類似環境を誘導した細胞培養環境でエクソソーム
を処理した場合、エクソソームを処理していない対照群よりもIL-8の濃度が減少する
ことを確認することができた。
【0076】
<実験例4>傷の治癒の分析
【0077】
ヒト結膜細胞株を培養して羊膜上皮細胞由来のエクソソームの試験管内の傷の治癒力に
影響を及ぼすか否かを確認した。
【0078】
具体的に、ヒト結膜細胞株を96ウェル細胞培養プレートに24時間インキュベーター
で培養して細胞密集断層(confluent monolayer)を形成すれば、4
時間1%エクソソーム無血清培地に取り替えて、飢餓状態を保持した後、傷形成ツール(
WoundMaker;Essen BioScience,Inc.,USA)を用い
て傷を形成した。
【0079】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを細胞当たり、300パーティクルを処理し、Inc
uCyte(Essen BioScience,Inc.,Michigan,USA
)を通じて48時間観察し、細胞の傷の治癒力を測定した。
【0080】
その結果、
図7のように、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを処理した群と対照群との
間で有意差が表われた。羊膜上皮細胞由来のエクソソームを処理した群が、前記エクソソ
ームを処理していない対照群よりも傷の治癒力が増加することを確認することができた。
【0081】
<実験例5>眼球乾燥症動物モデルで涙の分泌測定
【0082】
1.眼球乾燥症動物モデル
【0083】
8~12週齢の雄BABL/cマウスをフィルター上端蓋があり、病原菌がなく、食べ
物を自在に摂取することができる所に飼育した。マウスにスコポラミン(scopola
mine)パッチ(キミテ、ミョンムン製薬株式会社、korea)を9日間付着させて
0.25mg/day濃度のスコポラミンに露出させる間に、マウスを環境制御可能なチ
ャンバ(湿度平均18.5±5%、23℃±2.5℃、風速20L/分)で飼育し、乾燥
ストレス状況を作った。スコプラビン露出が終われば、マウスを正常な飼育環境(湿度平
均60±10%、23℃±2.5℃)で管理した。
【0084】
2.羊膜上皮細胞由来のエクソソーム処理
【0085】
スコポラミンパッチと乾燥ストレスに露出されて角膜の傷が生じたマウスに0.1μg
(Exo.1)、1μg(Exo.2)濃度の羊膜上皮細胞由来のエクソソーム、10μ
Mデキサメタゾン(dexamethasone、Dex)を処理した。1回処理時に、
5μlで一日3回処理し、最大14日まで処理した。対照群には、生理食塩水(norm
al saline、NS)を1回5μlずつ一日3回処理した。
【0086】
3.涙の分泌測定の実験
【0087】
スコポラミンパッチと乾燥ストレスに10日間露出されたマウスにNS、DEX、Ex
o.1、Exo.2を最大14日間処理し、0日、3日、7日、14日目の涙の生成を測
定した。
【0088】
フェノールレッド(phenol red)-含浸された綿糸(cotton thr
ead)をマウス眼球側面cantusに置き、60秒間測定した。涙によって濡れた糸
は赤く変わり、変化した長さを測定して評価した。
【0089】
その結果、
図8のように、眼球乾燥症誘導マウスは、涙の分泌が減る態様を示すと表わ
れ、エクソソーム処理された眼球乾燥症誘導マウスは、涙の分泌が誘導されると表われた
。眼球乾燥症の治療剤として使われているDexと比較した時、14日以上長期投与時に
、エクソソーム処理群の効果が良いと観察された。
【0090】
<実験例6>眼球乾燥症動物モデルで角膜リサミングリーン染色の分析
【0091】
スコポラミンパッチと乾燥ストレスに10日間露出されたマウスにNS、DEX、Ex
o.1、Exo.2を最大14日間処理し、0日、3日、7日、14日目の眼球乾燥症の
診断に使われるリサミングリーンで角膜染色を行った。
【0092】
Lissamine green ophthalmic strips(optit
ech)を使用して染色し、スリットランプ顕微鏡(Model 900 BQ;Swi
tzerland)で確認した。角膜リサミングリーン染色は、Oxford Sche
me等級システム(2003、Grading Of Corneal and Con
junctival Staining in the Context of Oth
er Dry Eye Tests)によって0から5まで採点した。染色がない時、等
級0が与えられ、最大点数は、5である。
【0093】
その結果、
図9のように、正常マウスの場合、リサミングリーンにほとんど染色されな
いが、眼球乾燥症が誘導されたマウスの角膜表面は、高いリサミングリーン染色程度を示
した。眼球乾燥症誘導後、エクソソーム処理したマウスの場合、NSのみ処理した実験群
に比べて低いリサミングリーン染色程度を示した。眼球乾燥症の治療剤として使われてい
るDexと比較した時、7日以上投与時に、エクソソーム処理マウス群で効果が良いと観
察された。
【0094】
<実験例7>眼球乾燥症動物モデルで結膜組織のPAS染色の分析
【0095】
スコポラミンパッチと乾燥ストレスに10日間露出されたマウスにNS、DEX、Ex
o.1、Exo.2を最大14日間処理し、0日、3日、7日、14日目に犠牲させて結
膜組織を回収した。収得された結膜組織を10%ホルマリンに固定させ、パラフィンにエ
ンベッディング(embedding)させた。組織を7μmの厚さに切削して非染色ス
ライドを製造し、過ヨウ素酸シッフ(periodic acid Schiff、PA
S)染色を行った。製造社の指示によって市販キット(Merck、Darmstadt
、Germany)を使用して結膜杯細胞(goblet cell)にPAS染色を行
い、染色された部分を光学顕微鏡を使用して撮影した。杯細胞でムチン合成の主成分であ
る糖タンパク質及びグリコーゲンが、PAS染色によって赤く染色され、この細胞を計数
して100μm当たり杯細胞の数で杯細胞の密度を測定した。
【0096】
その結果、
図10のように、眼球乾燥症誘導マウスは、結膜杯細胞でムチン合成の主成
分である糖タンパク質及びグリコーゲン分布に影響を受けると表われた。眼球乾燥症誘導
マウスでPAS染色によって探索される杯細胞の数は、正常マウスの2倍数以上と観察さ
れた。眼球乾燥症誘導後、エクソソーム処理されたマウスでは、杯細胞の数が減少すると
表われ、眼球乾燥症の治療剤として使われているDexと比較した時、1μg濃度のエク
ソソーム(Exo.2)は、Dexほど効果があると確認された。
【0097】
<実験例8>眼球乾燥症動物モデルで涙腺の組織のアルシアンブルー染色の分析
【0098】
スコポラミンパッチと乾燥ストレスに10日間露出されたマウスにNS、DEX、Ex
o.1、Exo.2を最大14日間処理し、0日、3日、7日、14日目に犠牲させて涙
腺の組織を回収した。収得された涙腺の組織を10%ホルマリンに固定させ、パラフィン
にエンベッディングさせた。組織を7μmの厚さに切削して非染色スライドを製造し、ア
ルシアンブルー染色を行った後、染色された部分を光学顕微鏡を使用して撮影した。
【0099】
その結果、
図11のように、眼球乾燥症誘導マウスの涙腺で涙腺の腺房(acinus
)構造が相当部分破壊されることを確認することができ、Dexとエクソソーム処理で回
復されることを確認することができた。エクソソームが、涙腺構造の保持及び分泌腺機能
の保持に影響を与えると考えられる。
【0100】
<実験例9>眼球乾燥症動物モデルの角膜組織でサイトカイン分泌の変化確認
【0101】
ReliaprepTM RNA抽出システム(Promega、Fitchburg
、WI、USA)を使用してマウス角膜組織から総RNAを抽出した。前記組織を冷たい
PBSで洗浄し、製造社の指示によってRNA抽出を行った。cDNAは、cDNA逆転
写キット(Applied Biosystems、Waltham、MA)を使用して
合成された。マウス角膜でのサイトカインの発現を決定するために、Power SYB
R(R) Green PCR Master Mix(Applied Biosyst
ems、CA、USA)及びStepOnePlusTM Real-time PCR
システム(Applied Biosystems、CA、USA)を使用してReal
-time PCRを行った。PCR反応は、製造社のプロトコルによった。
【0102】
その結果、
図12のように、眼球乾燥症誘導マウスで高く表われたサイトカイン(cy
tokine)の濃度が、Dexとエクソソーム処理で減ることを確認することができた
。これを通じて、眼球乾燥症誘導マウスでエクソソーム処理は、サイトカインの分泌減少
に影響を与えると見られる。
【0103】
<比較例1>間葉系幹細胞由来のエクソソーム
【0104】
1.ELISA分析
【0105】
ヒト結膜細胞株を培養して羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエク
ソソーム眼球乾燥症と関連したサイトカインの発現に影響を及ぼすか否かを確認した。
【0106】
具体的に、無血清培地を用いて培養されたヒト結膜細胞株を、12時間飢餓状態に保持
した後、NaCl 70mMを用いて眼球乾燥症と類似した環境を誘導した。NaCl処
理2時間前、羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエクソソームとを処
理し、24時間培養した後、細胞外に排出されたIL-8の濃度変化を確認した。細胞培
養に使われた培地を回収した後、LEGEND MAXTM Human IL-8 E
LISA kit with Pre-coated Plates(Biolegen
d、San Diego、CA、USA)を用いて製造社のプロトコルによってELIS
Aを行った。
【0107】
その結果、
図13のように、羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエ
クソソームとを処理した眼球乾燥症モデルで、炎症性サイトカインであるIL-8の発現
量の間に有意差が表われないということを確認した。
【0108】
2.傷の治癒の分析
【0109】
ヒト結膜細胞株を培養して羊膜上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエク
ソソームとが試験管内の傷の治癒力に影響を及ぼすか否かを確認した。
【0110】
具体的に、ヒト結膜細胞株を96ウェル細胞培養プレートに24時間インキュベーター
で培養して細胞密集断層を形成すれば、4時間1%血清培地に取り替えて、飢餓状態を保
持した後、傷形成ツール(WoundMaker;Essen BioScience,
Inc.,Michigan,USA)を用いて傷を形成した。前記方法で分離した羊膜
上皮細胞由来のエクソソームと間葉系幹細胞由来のエクソソームとを処理し、IncuC
yte(Essen BioScience,Inc.,Michigan,USA)を
通じて48時間観察し、細胞の傷の治癒力を測定した。
【0111】
その結果、
図14のように、羊膜上皮細胞由来のエクソソームを処理した群と間葉幹細
胞由来のエクソソームを処理した群、対照群の間で有意差が表われ、羊膜上皮細胞由来の
エクソソームで傷の治癒力が最も高いと観察された。
【0112】
これを通じて、羊膜上皮細胞由来のエクソソームは、間葉系幹細胞由来のエクソソーム
よりも眼球疾患の治療に効果があると確認することができる。
【0113】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このよう
な具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限さ
れるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求
の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜上皮細胞由来のエクソソームを有効成分として含有する眼球表面疾患予防または治療用薬学組成物で、
上記の眼球表面疾患は 眼球乾燥症、角膜上皮損傷、角膜炎、結膜炎、及び角結膜炎からなる群から選択され、
上記の組成物は点眼剤型であることを特徴とする、眼球表面疾患予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記エクソソームは、
角膜または結膜組織の傷の治癒力を有することを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記エクソソームは、
前記眼球疾患によって破壊された涙腺の組織を回復させ、涙層の安定化に関与する杯細胞を調節し、涙の分泌を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記エクソソームは、
IL-1β、IL-8、IL-6、IFNγ、及びTNFαからなる群から選択される炎症性サイトカインの分泌を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の眼球疾患の予防または治療用薬学組成物。
【外国語明細書】