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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011151
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】免疫プロテアソーム阻害剤製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/06 20060101AFI20250116BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250116BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20250116BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250116BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250116BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250116BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61K38/06
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/34
A61P37/00
A61P13/12
A61P37/02
A61P29/00
A61K9/08
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024170374
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021517595の分割
【原出願日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】62/741,221
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518455077
【氏名又は名称】ケザール ライフ サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】KEZAR LIFE SCIENCES
【住所又は居所原語表記】4000 Shoreline Court Ste. 300 South San Francisco, CA 94080 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, エバン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB16
4C076DD30Z
4C076DD38D
4C076DD42Z
4C076DD51D
4C076DD67
4C076DD67D
4C076FF32
4C076FF34
4C076FF61
4C076FF63
4C076GG07
4C076GG43
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA15
4C084BA23
4C084BA32
4C084CA59
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA02
4C084NA03
4C084NA11
4C084ZA811
4C084ZB051
4C084ZB052
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トリペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤KZR-616の可溶性で安定した製剤を提供する。
【解決手段】KZR-616マレイン酸塩及び糖を含む医薬調合物であって、前記調合物が凍結乾燥された調合物であり、そしてKZR-616のマレイン酸塩が凍結乾燥前に測定されたときに100乃至200mg/mLの濃度で存在する、調合物。凍結乾燥前に測定されたときに3.0乃至4.5のpHを有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KZR-616マレイン酸塩及び糖を含む医薬調合物であって、但しKZR-616が構造
を有し、前記調合物が凍結乾燥された調合物であり、そしてKZR-616のマレイン酸塩が凍結乾燥前に測定されたときに100乃至200mg/mLの濃度で存在する、調合物。
【請求項2】
凍結乾燥前に測定されたときに3.0乃至4.5のpHを有する、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
3.8乃至4.3のpHを有する、請求項2に記載の調合物。
【請求項4】
4.2のpHを有する、請求項3に記載の調合物。
【請求項5】
付加的な緩衝剤が存在しない、請求項1乃至4のいずれかに記載の調合物。
【請求項6】
更にコハク酸緩衝剤を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の調合物。
【請求項7】
前記KZR-616又はその塩が、KZR-616遊離塩基の重量に基づいて125mg/mlの量、存在する、請求項1乃至6のいずれかに記載の調合物。
【請求項8】
前記糖が、前記調合物の総重量に基づいて0.1wt%乃至5wt%の量、存在する、請求項1乃至7のいずれかに記載の調合物。
【請求項9】
前記糖が、1.5wt%乃至3wt%の量、存在する、請求項8に記載の調合物。
【請求項10】
前記糖が、2wt%の量、存在する、請求項9に記載の調合物。
【請求項11】
前記糖がマンニトール、トレハロース、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1乃至10のいずれかに記載の調合物。
【請求項12】
前記糖がトレハロースを含む、請求項11に記載の調合物。
【請求項13】
前記凍結乾燥された調合物が1%未満の水分含有量を有する、請求項1乃至12のいずれかに記載の調合物。
【請求項14】
少なくとも6か月間、5℃、25℃、又は40℃で保存された後に(再構築後に測定されたときに)4.1乃至4.3のpHを有する、請求項1乃至13のいずれかに記載の調合物。
【請求項15】
少なくとも6か月間、5℃、25℃、又は40℃で保存された後に(再構築後に測定されたときに)140mg/mL乃至150mg/mLのKZR-616マレイン酸塩の濃度を有する、請求項1乃至14のいずれかに記載の調合物。
【請求項16】
少なくとも6か月間、5℃、25℃、又は40℃で保存された後に4.5分未満の再構築時間を有する、請求項1乃至15のいずれかに記載の調合物。
【請求項17】
少なくとも6か月間、5℃、25℃、又は40℃で保存された後に前記凍結乾燥された調合物が1%未満の水分含有量を有する、請求項1乃至16のいずれかに記載の調合物。
【請求項18】
少なくとも6か月間、5℃、25℃、又は40℃で保存された後に前記KZR-616マレイン酸塩が少なくとも93%の純度である、請求項1乃至17のいずれかに記載の調合物。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載の調合物と、再構築用の溶媒とを含む、再構築された調合物。
【請求項20】
再構築用の前記溶媒が、注射用の水(WFI)又は5%デキストロース水溶液を含む、請求項19に記載の再構築された調合物。
【請求項21】
275乃至325のmOsmの浸透圧を有する、請求項19又は20に記載の再構築された調合物。
【請求項22】
皮下注射用の、請求項19乃至21のいずれかに記載の再構築された調合物。
【請求項23】
T1/2で測定したときに、KZR-616又はその塩とポリソルベート-80とを含む調合物の吸収率よりも少なくとも50%速い吸収率を有する、請求項19乃至22のいずれかに記載の再構築された調合物。
【請求項24】
KZR-616又はその塩とポリソルベート-80とを含む調合物(「PS-80調合物」のCmaxの少なくとも150%のCmaxを有する、請求項19乃至23のいずれかに記載の再構築された調合物。
【請求項25】
KZR-616マレイン酸塩及び糖を混合して水溶液を形成するステップと、前記水溶液を凍結乾燥させて凍結乾燥された調合物を形成するステップとを含む、請求項1乃至18のいずれかに記載の調合物を調製する方法。
【請求項26】
前記凍結乾燥された調合物を溶媒で再構築して再構築された調合物を形成するステップを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒が注射用の水又は5%デキストロース水溶液である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
免疫関連疾患を処置する際に使用するための、請求項19乃至24のいずれかに記載の再構築された調合物。
【請求項29】
前記免疫関連疾患がループス腎炎又は全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項28に記載の使用のための再構築された調合物。
【請求項30】
炎症を処置する際に使用するための、請求項19乃至24のいずれかに記載の再構築された調合物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化合物、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペンタ-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(「KZR-616」)は、免疫プロテアソーム阻害剤として有用である。
【化1】
【0002】
真核生物において、タンパク質分解は、ユビキチン経路を介して主に媒介され、そこで、破壊の標的となるタンパク質が76アミノ酸のポリペプチドユビキチンに連結される。ひとたび標的化されると、ユビキチン化されたタンパク質は、次いで、多触媒性プロテアーゼである26Sプロテアソームの基質として機能し、その3つの主要なタンパク質分解活性の作用によりタンパク質を短いペプチドに切断する。細胞内タンパク質代謝回転における一般的な機能を有する一方で、プロテアソーム媒介性分解は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI抗原提示、アポトーシス、細胞増殖調節、NF-κB活性化、抗原プロセシング、および炎症促進性シグナルの伝達などの多くのプロセスにおいても重要な役割を果たす。
【0003】
国際公開第2014/152134号は、トリペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤、および異常な免疫プロテアソーム活性に関連する疾患および病態を治療するためにこれらの化合物を使用する方法を記載している。KZR-616などのトリペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤は、患者の疾患および病態の治療に有用であるため、KZR-616の可溶性で安定した製剤が必要である。
【特許文献1】国際公開第2014/152134号公報
【発明の概要】
【0004】
KZR-616またはその塩、および糖を含む医薬製剤が本明細書に提供され、KZR-616は、下記の構造を有し、
【化2】
、製剤は凍結乾燥製剤である。いくつかの実施形態では、KZR-616はマレイン酸塩である。場合によっては、製剤は、凍結乾燥前に測定したとき、3.0~4.5のpHを有する。場合によっては、製剤は、3.8~4.3のpHを有する。場合によっては、製剤は、4.2のpHを有する。実施形態では、製剤は緩衝液を含まない。実施形態では、KZR-616またはその塩は、凍結乾燥の前に測定したとき、50~300mg/mLの量で存在する。実施形態では、KZR-616またはその塩は、100mg/mL~200mg/mLの量で存在する。場合によっては、KZR-616またはその塩は、KZR-616遊離塩基の重量に基づいて、125mg/mLの量で存在する。
【0005】
場合によっては、糖は、製剤の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%の量で存在する。実施形態では、糖は、1.5重量%~3重量%の量で存在する。実施形態では、糖は、2重量%の量で存在する。実施形態では、糖は、マンニトール、トレハロース、またはこれらの組み合わせを含む。場合によっては、糖は、トレハロースを含む。
【0006】
実施形態では、凍結乾燥製剤は、1%未満の含水率を有する。場合によっては、製剤は、5℃、25℃または40℃で少なくとも6ヶ月間保管した後に、4.1~4.3のpHを有する(再構成時に測定)。実施形態では、製剤は、5℃、25℃または40℃で少なくとも6ヶ月間保管した後に、140mg/mL~150mg/mLのKZR-616またはその塩の濃度を有する(再構成時に測定)。場合によっては、製剤は、5℃、25℃または40℃で少なくとも6ヶ月間保管した後に、4.5分未満の再構成時間を有する。実施形態では、凍結乾燥製剤は、5℃、25℃または40℃で少なくとも6ヶ月間保管した後に、1%未満の分未満の再構成時間を有する。場合によっては、KZR-616またはその塩は、5℃、25℃または40℃で少なくとも6ヶ月間保管した後に、少なくとも93%純粋である。
【0007】
本明細書に開示される製剤および再構成用の溶媒を含む再構成製剤も本明細書に提供される。実施形態では、再構成用の溶媒は、注射用水(WFI)または5%含水デキストロースを含む。実施形態では、再構成製剤は、275~325mOsmの浸透圧を有する。実施形態では、再構成製剤は、皮下注射用である。
【0008】
場合によっては、再構成製剤は、T1/2によって測定されるとき、KZR-616またはその塩およびポリソルベート-80を含む製剤(「PS-80製剤」)のものよりも少なくとも50%速い吸収速度を有する。実施形態では、再構成製剤は、KZR-616またはその塩およびポリソルベート-80を含む製剤のものの少なくとも150%のCmaxを有する。
【0009】
KZR-616またはその塩と糖とを混合して水溶液を形成することと、水溶液を凍結乾燥して凍結乾燥製剤を形成することと、を含む、本明細書に記載の製剤を調製するための方法も本明細書に提供される。場合によっては、この方法は、凍結乾燥製剤を溶媒で再構成して、再構成製剤を形成することをさらに含む。実施形態では、溶媒は、注射用水または5%含水デキストロースである。本明細書の再構成製剤を投与することを含む、対象における免疫関連疾患を治療する方法が、本明細書にさらに提供される。場合によっては、対象はループス腎炎または全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患している。本明細書に記載の再構成製剤を投与することにより、対象の炎症を治療する方法も本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】5℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析を示す。
図1B】25℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析を示す。
図1C】40℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析を示す。
図2A】5℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析の傾向を示す。
図2B】25℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析の傾向を示す
図2C】40℃で6ヶ月間保管した後の、様々な製剤についてのRP-HPLC分析の傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
凍結乾燥されて安定であるKZR-616またはその塩の製剤が、本明細書に提供される。凍結乾燥された製剤は、より長い貯蔵寿命、冷蔵温度での容易な保管、および輸送ならびに取り扱いのための製剤の重量および/または体積の減少のうちの1つ以上を含む利点を提供する。凍結乾燥製剤の再構成製剤、製剤を調製する方法、および開示された製剤を使用して免疫関連疾患ならびに/または炎症を治療する方法も開示される。
【0012】
以下でさらに説明するように、本明細書のKZR-616またはその塩の医薬製剤は、いくつかの利点を有することができ、例えば、本明細書に開示される製剤は、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間の保管後などの、様々な温度および/または時間での保管後に、pH、濃度、再構成時間、含水率、および/または純度の変化に耐性があり得る。
【0013】
製剤、投与料表示、および方法は、特に明記しない限り、以下にさらに記載される(表に示されるものを含む)追加の任意の要素、特徴、および工程のいずれかの組み合わせのうちの1つ以上を含む、実施形態を含むことが企図される。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は、患者の状態を改善または安定化する様式で、症状、臨床徴候、および状態の基礎病理を逆転、軽減、または阻止することを含む。
【0015】
本明細書の本開示の文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」との用語、および類似の指示対象の使用は、別段記載のない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、その範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図しており、各個別の値は、あたかも本明細書中で個々に列挙されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に提供される任意およびすべての例、または例証的な言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良好に例解することを意図しており、別途記載のない限り、本発明の範囲の限定ではない。本明細書中の言語は、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を、本開示の実施に必須であることを示すとして解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書で使用する場合、「約」および「およそ」という用語は、一般に、記載された値のプラスマイナス10%を意味する。例えば、約0.5には0.45および0.55が含まれ、約10には9~11が含まれ、約1000には900~1100が含まれる。
【0017】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、それらが反応するか、またはそれらが沈殿または結晶化される溶媒と複合体を形成することができることを理解するであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。本明細書の製剤で使用されるKZR-616の溶媒和物は、本発明の範囲内である。
【0018】
凍結乾燥製剤
KZR-616またはその塩、および糖を含む医薬製剤が本明細書に提供され、KZR-616は、下記の構造を有し、
【化3】
ここで、製剤は凍結乾燥製剤である。
【0019】
本明細書に開示される医薬製剤は、任意の好適な形態のKZR-616を含むことができる。実施形態では、KZR-616は、遊離塩基として存在する。実施形態では、KZR-616は、塩として存在する。場合によっては、KZR-616は、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、酒石酸塩、クエン酸塩、トシル酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、およびこれらの組み合わせから選択される塩形態として存在する。場合によっては、KZR-616は、水和物などの溶媒和物として存在する。実施形態では、KZR-616は、マレイン酸塩、例えば、モノマレイン酸塩として存在する。いくつかの実施形態では、KZR-616は、二量体塩、例えば、ビス(KZR-616)モノマレエートとして存在する。
【0020】
本明細書に記載の製剤は、凍結乾燥の前に測定されるとき、任意の濃度のKZR-616またはその塩を含むことができる。KZR-616またはその塩の具体的に企図される濃度としては、10mg/mL~約500mg/mL、または約25mg/mL~約400mg/mL、または約50mg/mL~約400mg/mL、または約50mg/mL~約300mg/mL、または約60mg/mL~約275mg/mL、または約70mg/mL~約250mg/mL、または約80mg/mL~約225mg/mL、または約90mg/mL~約225mg/mL、または約100mg/mL~約200mg/mL、または約110mg/mL~約200mg/mL、または約120mg/mL~約200mg/mL、または約120mg/mL~約220mg/mL、または約120mg/mL~約190mg/mL、または約120mg/mL~約180mg/mL、または約120mg/mL~約170mg/mL、または約120mg/mL~約160mg/mL、または約120mg/mL~約150mg/mL、または約130mg/mL~約150mg/mL、または約140mg/mL~約150mg/mL、または約100mg/mL~約150mg/mL、または約100mg/mL~約140mg/mL、または約100mg/mL~約130mg/mL、または約100mg/mL~約120mg/mL、または約50mg/mL~約100mg/mL、または約60mg/mL~約90mg/mL、または約90mg/mL~約120mg/mL、例えば、KZR-616マレイン酸塩の重量に基づいて約150mg/mLまたはKZR-616遊離塩基の重量に基づいて約125mg/mLが挙げられる。実施形態では、KZR-616の濃度は、凍結乾燥製剤が、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後、凍結乾燥製剤の再構成時に測定される。
【0021】
本明細書に開示される医薬製剤は、糖、例えば、還元糖もしくは非還元糖、または糖アルコールを含むことができる。糖を有するKZR-616またはその塩の製剤は5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された場合に安定である。実施形態では、糖は、マンニトール、トレハロース、デキストロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、デキストラン、エリスリトール、またはこれらの組み合わせを含み得る。実施形態では、糖は、マンニトールおよび/またはトレハロースを含み得る。実施形態では、糖はトレハロースを含む。
【0022】
実施形態では、製剤は、糖成分を、製剤の総重量に基づいて、例えば、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約9重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約7重量%、または約0.1重量%~約6重量%、または約0.1重量%~約5重量%、または0.1重量%~約4重量%、または約0.5重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約4重量%、または約0.5重量%~約3重量%、または約0.5重量%~約2重量%、または約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%、または約1重量%~約2重量%、または約1.5重量%~約5重量%、または約1.5重量%~約4重量%、または約1.5重量%~約3重量%、または約1.5重量%~約2重量%、または約2重量%~約5重量%、または約3重量%~約5重量%の量で、例えば、製剤の総重量に基づいて約2重量%の量で含む。実施形態では、含水率は、凍結乾燥製剤が、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に測定される。実施形態では、本明細書に記載の製剤は、最大5重量%、例えば最大4%、3%、2%、1.5%、1%、または0.5%の含水率を有することができる。実施形態では、本明細書に記載の製剤は、5℃、25℃、または40℃で、所定の時間、例えば、少なくとも6ヶ月間保管された後に、最大5%、最大4%、3%、2%、1.5%、1%、または0.5%の含水率を有することができ、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、1%未満の含水率を有することができる。
【0023】
場合によっては、本明細書に記載の製剤は、任意に、緩衝液を含むことができる。場合によっては、製剤は、緩衝液を含まない。本明細書で使用される場合、「緩衝液」という用語は、KZR-616の任意の塩形態に追加される緩衝液を指す。実施形態では、二次緩衝液は、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、またはこれらの組み合わせを含むことができる。実施形態では、緩衝液は、コハク酸緩衝液を含む。実施形態では、コハク酸緩衝液などの緩衝液は、凍結乾燥前に測定されるとき、約1mM~約50mM、または約1mM~約40mM、または約1mM~約30mM、または約1mM~約25mM、または約1mM~約20mM、または約1mM~約15mM、または約1mM~約10mM、または約2mM、または約3mM、または約4mM、または約5mM、または約6mM、または約7mM、または約8mM、または約9mM、または約10mM、または約11mM、または約12mM、または約13mM、または約14mM、または約15mM、例えば、10mMの濃度を有することができる。
【0024】
本明細書に記載の製剤は、任意に、糖に加えて、または糖の代わりに、増量剤をさらに含むことができる。増量剤などの企図される添加剤としては、グリシン、セリン、システイン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
一態様では、本明細書に記載の製剤は、以下の利点を有することができる:(1)凍結乾燥物が、再構成時に、視覚的に透明なおよび/または粒子を含まないケーキを表すこと、(2)凍結乾燥物の含水率が1%(重量%またはモル%)以下であること、(3)凍結乾燥ケーキの凍結乾燥時間および/または再構成時間が、以下の実施例に詳述されるように、他の医薬製剤と比べて速いこと、および/または(4)製剤が、望ましい安定性を有し、例えば、5℃で少なくとも6ヶ月間で測定されるとき、0.5%未満(重量%またはモル%)の分解、25℃で少なくとも6ヶ月間で測定されるとき、7%未満(重量%またはモル%)の分解、40℃で少なくとも6ヶ月間で測定されるとき、20%未満(重量%またはモル%)の分解を有する。
【0026】
本明細書に開示される製剤は、凍結乾燥の前に測定されるとき、3.0~4.5、例えば3.8~4.3のpHを有することができる。場合によっては、凍結乾燥前のpHは、4.2である。実施形態では、本明細書に記載の製剤は、再構成時に測定されるとき、約25℃の温度で約2~約8または約3~約5のpHを有することができる。実施形態では、製剤は、再構成時に測定されるとき、約25℃の温度で、約3.1~約4.9、または約3.2~約4.8、または約3.3~約4.7、または約3.4~約4.6、または約3.5~約4.5、または約3.6~約4.4、または約3.7~約4.3、または約3.7~約4.3、または約3.8~約4.3、または約3.9~約4.2のpHを有することができ、例えば、約25℃の温度で約4.2のpHを有することができる。実施形態では、pHは、凍結乾燥製剤が、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後、凍結乾燥製剤の再構成時に測定される。
【0027】
実施形態では、製剤は、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、70%超のAPI(KZR-616またはその塩)の純度を有することができ、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、75%超、80%超、85%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、または99%超の純度を有することができ、例えば、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、93%超の純度を有することができる。70%超の純度とは、示された保管時間および温度の後の製剤中のAPIの量が、保管前の製剤中のAPIの量の70%(重量%またはモル%)を超えることを意味する。
【0028】
実施形態では、本明細書に開示される製剤は、10分以下、例えば、9分以下、8分以下、7分以下、または6分以下、5分以下、4.5分以下、4分以下、3.5分以下、または3分以下の再構成時間を有することができる。実施形態では、本明細書に開示される製剤は、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、10分以下の再構成時間を有することができ、例えば、9分以下、8分以下、7分以下、または6分以下、5分以下、4.5分以下、4分以下、3.5分以下、または3分以下の再構成時間を有することができ、例えば、本明細書の製剤は、5℃、25℃、または40℃で少なくとも6ヶ月間保管された後に、4.5分以下の再構成時間を有することができる。本明細書で使用される場合、「再構成時間」という用語は、以下に詳述される再構成法に従って凍結乾燥製剤を完全に溶解するのに要する時間を指す。
【0029】
再構成製剤
本明細書に開示される製剤は、凍結乾燥してケーキ形態、粉末形態にすることができ、またはケーキおよび/または粉末は、ゲル、フォーム、エアロゾル、フィルム、または他の製剤にさらに加工することができる。実施形態では、製剤は、それを必要とする対象に投与するための溶媒で再構成することができる。したがって、凍結乾燥組成物などの製剤と、再構成溶液とを含むキットが、本明細書に提供される。
【0030】
本明細書に記載の凍結乾燥医薬製剤および再構成用の溶媒を含むKZR-616またはその塩の再構成製剤が、本明細書に提供される。再構成用の溶媒は、当業者に好適な任意の1つまたは複数の溶媒を含むことができる。実施形態では、再構成用の溶媒は、注射用水(WFI)、生理食塩水、または5%含水デキストロースを含むことができる。いくつかの特定の実施形態では、再構成用の溶媒は、注射用水を含む。実施形態では、再構成用の溶媒は、塩化物イオンを含まない(例えば、生理食塩水ではない)。実施形態では、再構成製剤は、皮下注射に使用することができる。
【0031】
実施形態では、再構成された製剤の浸透圧は、200mOsm~400mOsm、例えば、250mOsm~400mOsm、または275mOsm~350mOsm、または275mOsm~325mOsm、例えば、ほぼ等張の浸透圧である約300mOsmであり得る。
【0032】
実施形態では、本明細書の再構成製剤は、T1/2で測定されるとき、KZR-616またはその塩およびポリソルベート-80(「PS-80」)を含む製剤(「PS-80製剤」)よりも少なくとも10%速い吸収速度を有することができき、例えば、PS-80製剤のものよりも、少なくとも20%速い、少なくとも30%速い、少なくとも40%速い、少なくとも50%速い、または少なくとも60%速い、例えば、少なくとも50%速い吸収速度を有することができる。
【0033】
実施形態では、本明細書に記載の再構成製剤は、PS-80製剤のものの、少なくとも50%のCmaxを有することができ、例えば、PS-80製剤のものの少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、または少なくとも180%、例えば、少なくとも150%のCmaxを有することができる。
【0034】
調製法
本明細書に開示される医薬製剤は、例えば、KZR-616またはその塩と糖とを混合して溶液を形成することによって調製することができる。実施形態では、溶液は、水溶液である。実施形態では、溶液は、凍結乾燥されて、凍結乾燥医薬製剤を形成することができる。医薬製剤を調製する方法は、凍結乾燥製剤を溶媒で再構成して、本明細書に記載の再構成製剤を形成することをさらに含むことができる。再構成製剤を形成するために使用される溶媒は、凍結乾燥製剤を再構成すために当業者に好適な任意の溶媒であり得、例えば、溶媒は、水または5%含水デキストロースを含み得る。
【0035】
治療法
本開示の別の態様は、本明細書に記載される再構成製剤を投与することによって、対象の免疫関連疾患を治療する方法を提供する。場合によっては、疾患は、乾癬、皮膚炎、全身性強皮症、硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎;呼吸困難症候群、髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹、喘息、慢性炎症;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病;多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、血管炎;悪性貧血(アジソン病);白血球減少症を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血;重症筋無力症;抗原-抗体複合体媒介疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症候群;類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;全身硬直症候群;ベーチェット病;病巨細胞性動脈炎;免疫複合腎炎;IgA腎症;IgMポリニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症である。種々の場合において、障害は、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、糖尿病、強皮症、強直性脊椎炎、乾癬、多発性硬化症、橋本病、髄膜炎、または炎症性腸疾患である。実施形態では、疾患は、ループス腎炎またはSLEである。
【0036】
本開示の別の態様は、本明細書に記載される再構成製剤を投与することによって、対象の炎症を治療する方法を提供する。
【0037】
再構成法
本明細書に記載されるように、凍結乾燥医薬製剤は、バイアルに入れられる。ミリリットルなどの一定量の濾過されたMilli-Q(登録商標)(「MQ」)水を、該バイアルに添加する。MQ水を添加すると、タイマーが開始し、凍結乾燥医薬製剤が再構成および/または完全に溶解するまでの時間を測定する。30秒ごとに、MQ水および凍結乾燥製剤が入ったバイアルを、再構成が完了するまで穏やかに旋回させる。
【実施例0038】
実施例1
様々な製剤条件におけるKZR-616の安定性を、この凍結乾燥製剤開発試験において調査した。この試験で調査した条件には、様々なpH値(3.9~4.2)で、様々な賦形剤(L-グリシン、マンニトール、およびトレハロース)を含む緩衝化製剤(10mMのコハク酸塩)および非緩衝化製剤が含まれていた。様々な製剤中の150mg/mLでのKZR-616の安定性を、冷蔵温度(5℃)、周囲温度(25℃)、および加速温度(40℃)で最大6ヶ月間の静的保管条件下で調べた。この6ヶ月の試験の過程で、逆相HPLC(RP-HPLC)分析は、KZR-616の安定性を監視するために使用された主な分析法であった。
【0039】
凍結乾燥ケーキは、すべての保管温度で6ヶ月間の保管にわたって一貫した外観を示した。凍結乾燥物の黄色の着色のいくらかの増加が、特に25℃および40℃で時間の経過とともに観察された。この黄色の着色は、再構成後により顕著になった。再構成後、すべての製剤には目に見える粒子が含まれていなかった。6ヶ月間にわたる保管期間中に、製剤のpHおよびKZR-616の濃度値は、時間ゼロで観察された値と同等のままであった。再構成時間も、4分30秒未満で、6ヶ月間の保管期間にわたって一貫性を保っていた。
【0040】
KZR-616の安定性は、RP-HPLC分析を使用して評価した。5℃で6ヶ月間保管した後、すべての製剤は、時間ゼロで観察されたものよりもメインピークの比率のわずかな減少を示した。25℃で保管した後、製剤はメインピークの比率の減少を示し、非緩衝化トレハロース含有製剤は、他の製剤よりも高いメインピークの比率を示した。40℃で6ヶ月間保管した後、すべての製剤は、ほとんどは、未知のRRT=0.1、KZR-59587、未知のRRT=0.5、KZR-0214143および未知のRRT=2.2の分解物ピークの増加のために、メインピークの比率の大幅な減少を示した。マンニトールを含むか、または含まない非緩衝化トレハロース含有製剤は、試験された製剤の中で最も高いメインピークの比率を示した。
【0041】
5℃では分解が予想されなかったため、凍結乾燥サイクルの最適化により残留水分含量をさらに減らすことで製剤の安定性を改善することが可能であるかどうかを判断するために、凍結乾燥サイクルの最適化試験を実施した。この水分最適化試験は、主要な製剤を、10℃、25℃、35℃および50℃の様々な二次棚温度で凍結乾燥することによって実施した。しかしながら、40℃で4週間保管した後、二次乾燥棚温度に関係なく、視覚的外観、pH、濃度、再構成時間、およびRP-HPLCによるピークパーセンテージに違いは観察されなかった。
【0042】
この研究の結果に基づいて、凍結乾燥された150mg/mLのKZR-616の主要な製剤は、pH4.2で2%のトレハロースを含有し、追加の緩衝液を含まない製剤として特定された。
【0043】
材料
この試験で調べた医薬品有効成分(API)、はKZR-616であった。この試験に使用された材料は、以下から構成されていた:
(1)原薬(DS):KZR-616マレイン酸塩(ロットA)
(2)原薬(DS):KZR-616マレイン酸塩(ロットB)
(3)参照標準(RS):KZR-616マレイン酸塩材料
【0044】
原薬は、使用前に2~8℃で保管した。製剤パラメーター
【0045】
加速安定性試験では、次のパラメーターが一定に保たれた:
(1)充填量:1.0mL
(2)緩衝液濃度:10mMまたは0mM
以下の製剤(F1~F9)パラメーターを調べた。
(1)API濃度:150mg/mL
(2)緩衝液:コハク酸塩
(3)pH:3.9~4.2
(4)張性調整剤:0.2%グリシン、1%トレハロース、0.4%マンニトール、0.4%グリシン、1%マンニトール、2%トレハロース、0.3%グリシン、0.8%マンニトール
【表1】
【0046】
製剤の調製
凍結乾燥サイクルの開発#1
保存サイクルのパラメーターを決定するために、亜大気圧(Sub-ambient)示差走査熱量測定(DSC)(PerkinElmer Pyris Diamond)を、それぞれグリシン、マンニトール、またはトレハロースを含有する3つの代表的な製剤F3、F4、およびF5で実施した。使用したメソッドプログラムは次のとおりである:-60℃で1分間等温保持し、5℃/分で-60℃から25℃まで加熱する。F3、F4、およびF5は、それぞれ-16℃、-15℃、および-33℃のガラス転移温度(T)を示した(表1)。F4については、-10℃で失透温度(T)で結晶化が発生したため、一次乾燥の前に、より完全な結晶化を得るためにアニーリング工程を追加した。このデータは、最初の凍結乾燥サイクルで実装された(表3)。
【0047】
亜大気圧DSCの結果に基づいて、保存的凍結乾燥サイクルを設計し、<1%の残留水分濃度のサンプルを生成した。表3に、最初の保守的なサイクルのパラメーターを表示する。
【0048】
マレイン酸KZR-616を濾過したMilli-Q(登録商標)(MQ)水に目標濃度170mg/mLで溶解し、MQ中のKZR-616を60℃で約2分間加熱して、原薬を溶液に溶解した。製剤は10倍のストックとして調製し、DS/MQ溶液のアリコートに1:9(緩衝液:DS)の比率で添加した。各製剤のpHは、NaOHで目標pHに滴定された。BSCの無菌条件下で、すべてのサンプルを0.2μmフィルターで滅菌濾過し、1.0mLの充填量で3ccバイアルに充填した。サンプルは滅菌ストッパーで部分的に栓をして、凍結乾燥機に入れて、空のバイアルで囲んだ。表3に詳述されているパラメーターを使用して、サンプルを凍結乾燥した。最初の凍結乾燥サイクルに続いて、サンプルを1mLの濾過したMQ水で再構成して分析した。凍結乾燥サイクル開発製剤を、表2に関して調製した。
【表2】
【表3】
【0049】
凍結乾燥サイクルの開発#2
KZR-616を、濾過したMQ水に170mg/mLの目標濃度で溶解した。次に、MQ中のKZR-616を60℃で約2分間加熱して、原薬を溶液に溶解した。製剤は10倍のストックとして調製し、DS/MQ溶液のアリコートに1:9(緩衝液:DS)の比率で添加した。各製剤のpHを、NaOHで目標pHに滴定した。BSCの無菌条件下で、すべてのサンプルを0.2μmフィルターで滅菌濾過し、1.0mLの充填量で3ccバイアルに充填した。製剤マトリックス(緩衝液、増量剤濃度、pH)の概要を表1に示す。サンプルは滅菌ストッパーで部分的に栓をして、凍結乾燥機に入れて、空のバイアルで囲んだ。表4に詳述されているパラメーターを使用して、サンプルを凍結乾燥した。凍結乾燥後、サンプルを1mLの濾過したMQ水で再構成し、表8に概説されている方法に従って分析した。
【表4】
【0050】
加速安定性試験
IBIが、1%未満の含水率を有するエレガントなケーキを生成する凍結乾燥サイクルを特定したら、この細工エウを繰り返して、サイクルの結果を確認し、加速安定性研究用のサンプルを調製した。
【0051】
KZR-616を、濾過したMQ水に原液として170mg/mLの濃度で溶解した。KZR-616原液を60℃で約2分間加熱し、原薬を完全に溶解させた。製剤緩衝液を、10倍の原液として調製した。各製剤を、10倍の緩衝液原液、DSストック(170mg/mL)、およびMQを使用して調製し、最終濃度150mg/mLを目標とした。各製剤のpHを、NaOHを使用して目標pHに調整した。BSCの無菌条件下で、すべてのサンプルを0.2μmフィルターで滅菌濾過し、1.0mLの充填量で3ccバイアルに充填した。サンプルは滅菌ストッパーで部分的に栓をして、凍結乾燥機に入れて、空のバイアルで囲んだ。表4に詳述されているパラメーターを使用して、サンプルを凍結乾燥した。
【0052】
凍結乾燥後、表9に列記されている分析法を使用して、凍結乾燥前の液体サンプル、凍結乾燥ケーキ、および再構成サンプルを比較することにより、生成物の品質および一体性を評価した。
【0053】
水分最適化
KZR-616の2つの異なる原薬ロット(KZR-0214142およびC15072369-FF1600)を個別にMQに170mg/mLの濃度で溶解し、60℃で約2分間加熱して、原薬を完全に溶解させた。次に、両方の170mg/mL調製物を、10倍の目標の緩衝液(F5、pH4.2の2%トレハロース)で150mg/mLに希釈した。各製剤のpHを、NaOHを使用して目標pHに滴定した。BSCの無菌条件下で、すべてのサンプルを0.2μmフィルターで滅菌濾過し、1.0mLの充填量で3ccバイアルに充填した。サンプルは滅菌ストッパーで部分的に栓をして、凍結乾燥機に入れて、移動を防止するために空のバイアルで囲んだ。表5に詳述されているパラメーターを使用して、サンプルを凍結乾燥した。
【0054】
凍結乾燥サイクルは、最初の二次乾燥温度(10℃)で事前にプログラムされていた。最初の二次乾燥温度に続いて、凍結乾燥機のその後のすべての操作は、すべての棚温度に対応するために手動で実施した。二次乾燥温度のそれぞれは、最低でも少なくとも8時間実行した。各二次乾燥温度の終わりに、その温度のバイアルに栓をし、凍結乾燥機を手動で停止し、真空をパージした。その後、栓をしたトレイを取り外し、凍結乾燥機を手動で再起動させて、次の二次乾燥温度にした。最後の工程を、各二次乾燥温度について繰り返した。凍結乾燥後、サンプルを安定保管条件に置き、T=0サンプルを1mLの濾過したMQ水で再構成して分析した。分析法の概要を表8に示す。
【表5】
【0055】
ストレス条件
加速安定性
凍結乾燥製剤の安定性を、表6に記載されている以下の条件下で試験した。
【表6】
【0056】
水分の最適化
凍結乾燥製剤の安定性を、表7に記載されている以下の条件下で試験した。
【表7】
【0057】
分析法
凍結乾燥サイクルの開発(1&2)
凍結乾燥サイクル1および2に続いて、サンプルに対して様々な分析を実施した。表8は、安定性試験のためのこれらの分析をまとめている。
【表8】
【0058】
安定性試験を加速する
各温度および時点でのインキュベーション後、凍結乾燥サンプルに対して様々な分析を実施した。以下の各時間で、サンプルの外観、pH、濃度、再構成時間、RP-HPLC、および含水率を分析した。表9は、加速安定性試験の様々な分析をまとめている。
【表9】
【表10】
【0059】
前述のすべての試験の分析法を以下に詳説する。
(1)目視検査:目視検査は、白黒の背景に対して白色光源(13Wの蛍光灯)の下で実施した。デジタル写真は、凍結乾燥前、凍結乾燥後、および再構成製剤について撮影した。
(2)浸透圧:浸透圧は、各客観的試験の時間ゼロで測定した。
(3)pH:pH分析は、SympHony(登録商標)pHメーター(VWR Scientific、カタログ番号SB70P)を使用して実施し、95%以上のキャリブレーションスロープを有する3つのpH標準溶液(pH4、7、および10)で較正した。測定前にサンプルを周囲温度に平衡化させた。
(4)吸光度分光光度法:KZR-616の濃度を、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)分光光度計を介して決定した。標準曲線(1mg/mL、0.75mg/mL、0.5mg/mL、および0.25mg/mL、MQで段階希釈)を作成することにより、1.8495(mg/mL)-1cm-1の吸光係数を決定した。KZR-616を、全波長スキャンで分析し、272nmで最大の吸光度を示した。この波長を使用して、濃度を測定した。
(5)FTIR:凍結乾燥前および凍結乾燥後の製剤を分析して、増量剤を含有する製剤のフィンガープリントを決定した。(凍結乾燥後の開発サイクル#1および#2を実施)
(6)再構成時間:凍結乾燥製剤は、1ミリリットルの濾過水で再構成される。水を添加すると、タイマーが開始し、KZR-616薬物製剤が再構成するまでの時間を測定する。30秒ごとに、再構成バイアルを穏やかに旋回させた。再構成が完了するまで、この手順を繰り返した。
(7)カールフィッシャー滴定:凍結乾燥後の製剤を分析して、凍結乾燥生成物の含水率を決定した。
(8)DSC:各製剤について-60℃から25℃で5℃/分で亜大気圧DSC分析を実施し、凍結状態での増量剤の再結晶化、Tg、およびその他の重要な熱遷移データを決定した。
【0060】
(9)RP-HPLC:
この試験に使用されたRP-HPLC法は、Kezarから移管されたものであり、パラメーターは以下のとおりである:
移動相A:75%の5mM酢酸アンモニウム、25%アセトニトリル
移動相B:65%の5mM酢酸アンモニウム、35%アセトニトリル
移動相C:15%の5mM酢酸アンモニウム、85%アセトニトリル
カラム:Agilent Poroshell 120 EC-C18、4.6×75mm、2.7μm
(P/N:697975-902)
機器:Agilent 1100 HPLC
カラム温度:40℃
オートサンプラ温度:5℃
流量:1.5mL/分
時間:38分
検出:210nm
サンプル調製:70%ACNで1.8mg/mLに希釈
充填量:18μg(1.8mg/mLで10μL)
【0061】
水分最適化試験
各温度および時点でのインキュベーション後、凍結乾燥サンプルに対して様々な分析を実施した。以下の各時間で、サンプルの外観、pH、濃度、再構成時間、RP-HPLC、および含水率を分析した。表11は、安定性試験のためのこれらの分析をまとめている。
【表11】
【0062】
結果および考察
凍結乾燥サイクル開発試験
以下の属性を備えたケーキを生成する凍結乾燥サイクルを開発するために、複数の凍結乾燥サイクルを実施した:
・エレガントなケーキ
・仕様範囲内の含水率(<1.0%)
・凍結乾燥ケーキの凍結乾燥時間および再構成時間の短縮
・良好な生成物安定性
【0063】
FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)を、凍結乾燥の開発サイクル#1および#2の前後に実施した。FT-IRは、凍結乾燥前、凍結乾燥時、および再構成時の良好な構造安定性を示した。凍結乾燥に起因するストレス(圧力および温度)は、様々な製剤におけるKZR-616の構造的一体性を破壊しなかった。
【0064】
視覚分析
時間ゼロでは、両方の開発サイクルでエレガントなケーキを示した。開発サイクル#1および#2は、視覚的に透明で、粒子を含まず、色がわずかに黄色のサンプルを示した。
【0065】
製剤浸透圧
9つの製剤の浸透圧は、サンプル調製後、いずれかのストレス曝露の前に測定した。凍結乾燥サイクル#1の製剤および特定の試薬の概要を表2に示す。サイクル#1製剤の浸透圧を確認した後(表12)、等張浸透圧(約300Osmo)を目標とするために、サイクル#2の増量剤濃度を低下させた。凍結乾燥サイクル#2は、凍結乾燥前および再構成後に等張浸透圧測定値を示した(表12)。
【表12】
【0066】
pH測定値
凍結乾燥サイクル1および2は、凍結乾燥前および再構成後に同等のpH値を示した(表13)。しかしながら、再構成後、凍結乾燥サイクル#2は目標により近いpH値を示した。
【表13】
【0067】
再構成時間の測定値
凍結乾燥サイクル1および2に続いて、製剤を1ミリリットルの濾過したMQで再構成した。MQを添加すると、タイマーを開始して、各製剤が均質化するのに必要な時間を測定した。凍結乾燥サイクル#1は、4:31分以下の再構成時間を示したが、サイクル#2は、4:12分以下の再構成時間を示した(表14)。
【表14】
【0068】
含水率測定値(カールフィッシャー)
凍結乾燥サイクル1および2に続いて、製剤は互いに同等の含水率の値を示した(表15)。すべての凍結乾燥製剤は、1%未満の含水率の値を示した。凍結乾燥サイクル#1は、0.28%~0.60%の含水率の値を示した。凍結乾燥サイクル#2は、0.21%~0.39%の含水率の値を示した。
【表15】
【0069】
RP-HPLC分析
40℃での4週間のインキュベーション後、すべての再構成製剤は、時間ゼロで観察されたもの(97.7%~98.6%)と比べて、メインピークの比率の減少(90.3%~91.7%)を示した。RP-HPLCは、KZR-616分子の主な分解物種を特定した。ピークRRT=0.1は、KZR-59587、KZR-0214143を表示し、およびRRT=2.2は、ストレスがかかったときのピークパーセンテージの最大の増加を示した。二次乾燥温度の変動は、時間ゼロでのメインピークの安定性にわずかな差異を示した。40℃で4週間後、すべての製剤化サンプルは、同等の安定性を示した(表16~19)。
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【0070】
加速安定性試験
加速安定性試験では、pH3.9およびpH4.2の様々な濃度の増量剤を含有する9つの緩衝化(コハク酸塩)および非緩衝化製剤を150mg/mLで調製した。
【0071】
視覚分析
6ヶ月間の温度関連ストレスに続いて、凍結乾燥製剤の外観はエレガントなケーキを示した。凍結乾燥ケーキは、わずかに黄色がかった色合いを示し、温度が上がると色が増した。再構成後、製剤は透明で、粒子を含まず、黄色がかった色も示した。6ヶ月間のインキュベーション後、製剤は、5℃および25℃において、時間ゼロと同等の着色を示した。40℃では、製剤は、時間ゼロと比べてより暗い黄色がかった色合いを示した。
【0072】
製剤浸透圧
表20に示すように、9つの製剤の浸透圧は、サンプル調製後、いずれかのストレス曝露の前に測定した。増量剤の濃度は、凍結乾燥サイクルの開発#2の結果に基づいており、約300mOsmでの等張製剤を目標にする。6ヶ月後、製剤F5は、時間ゼロで観察されたものと同等の浸透圧値を示した。
【表20】
【0073】
pH測定値
9つの製剤のpHを、温度に関連するストレスに続くすべての時点で測定した。6ヶ月後、製剤は、表21に示すように、時間ゼロと同等のpH値を示した。
【表21】
【0074】
濃度測定値
6ヶ月後、製剤は、時間ゼロで観察されたものと同等の濃度測定値を示した(表22)。
【表22】
【0075】
再構成時間の測定値
凍結乾燥後の各時点において、製剤を1ミリリットルの濾過したMQで再構成した。MQを添加すると、タイマーが、各製剤が均質化するのに必要な時間の測定を開始した。6ヶ月後、製剤は、時間ゼロと同等の再構成時間を示した。6ヶ月後、すべての製剤は3分30秒未満の再構成時間を示した(表23)。
【表23】
【0076】
含水率測定値(カールフィッシャー)
6ヶ月間のインキュベーション後、製剤は、時間ゼロと同等の含水率値を示した(表24)。すべての凍結乾燥製剤は、1%未満の含水率の値を示し続けた。
【表24】
【0077】
RP-HPLC分析
5℃での6ヶ月間のインキュベーション後、すべての再構成製剤は、時間ゼロで観察されたもの(98.2%~98.4%)と比べて、図1Aで見られる、メインピークの比率の減少(97.9%~98.1%)を示した。25℃での6ヶ月間のインキュベーション後、すべての再構成された製剤は、5℃で保管されたものと比べて分解物ピークの増加を示した。製剤F2およびF5は、図1Bに見られるKZR-616の最高のパーセンテージ(それぞれ、93.4%および93.1%)を示した。40℃での6ヶ月間のインキュベーション後、すべての再構成製剤は、5℃で保管したものと比べて、図1Cに見られる、未知のRRT=0.1(≦12.5%)、KZR-59587(≦16.1%)、未知のRRT=0.5(≦1.4%)、KZR-0214143(≦1.9%)、および未知のRRT=2.2(≦2.4%)の増加を示した。25℃および40℃での保管後、製剤F2(pH4.2で0.4%マンニトールおよび1%トレハロースを含有する非緩衝化製剤)およびF5(pH4.2で2%トレハロースを含有する非緩衝化製剤)は、すべての候補製剤の中で最も高いメインピークの比率を呈した。このデータは、KZR-616が糖の存在下でpH4.2の非緩衝化製剤で最も安定していることを示唆した(表27)。これは、最も不良な安定性の結果を示している、糖を含有しないF3、F6、およびF8の製剤の傾向によってさらに裏付けられる。RP-HPLCデータの結果は、製剤F5を、KZR-616のための主要な製剤および最良の候補製剤として裏付けている。
【表25】
【表26】
【表27】
【0078】
5℃での6ヶ月間のインキュベーション後、すべての製剤は、メインピークのパーセンテージにおけるわずかな変化を示した。しかしながら、すべての製剤は依然として、≧97.9%のメインピークの比率を保持した。25℃での6ヶ月間インキュベーション後、すべての製剤は、90.7%以上のメインピークの比率を保持した。製剤F2およびF5は、最も高いメインピークの比率および最も遅い分解速度を示した。40℃での6ヶ月間インキュベーション後、F8を除くすべての製剤は、≧70.0%のメインピークの比率を保持した。製剤F5は、最も高いメインピークの比率および最も遅い分解率(80.3%)を示した。
【0079】
水分最適化
この試験の目的は、変更された凍結乾燥サイクルが冷蔵中のKZR-616の安定性をさらに改善できるかどうかを判定することであった。この凍結乾燥サイクル最適化試験は、前の試験からの主要な製剤(2%トレハロース、pH4.2)に焦点を合わせた。主要製剤F5は、ロットA(C15072369-FF16001)およびロットB(1605R110)の原薬を使用して調製した。最適な含水率を達成するために、様々な原薬ロットを、異なる二次乾燥温度を使用して凍結乾燥した(表5)。
【0080】
視覚分析
時間ゼロでは、すべての凍結乾燥前のサンプルは視覚的に透明で、粒子がなく、黄色がかった色を示した。より新鮮な原薬(ロットB)は、原薬(ロットA)と比べて明るい色を示した。凍結乾燥後、すべてのサンプルがエレガントなケーキを示した。40℃で4週間後、サンプルは時間ゼロと同等の透明度および着色を示しました。
【0081】
pH測定値
T=4週目で再構成されたすべてのサンプルは、同等のpH値を示した(表28)。時間ゼロと比べて、わずかな増加が観察された(≦±0.19)。
【表28】
【0082】
濃度測定値
40℃で4週間のインキュベーション後、すべてのサンプルは時間ゼロと比べて同様な濃度を示した(Ta
【表29】
【0083】
再構成時間の測定値
様々な二次乾燥温度での凍結乾燥に続いて、製剤を1ミリリットルの濾過されたMQで再構成した。MQを添加すると、タイマーを開始して、各製剤が均質化するのに必要な時間を測定した。40℃での4週間のインキュベーション後、すべてのサンプルは、<4分の再構成時間を示し、35Aは、2分15秒という最短の再構成時間を示し、サンプル10Aは、3分35秒という最長の再構成時間を示した(表30)。
【表30】
【0084】
含水率測定値(カールフィッシャー)
6ヶ月間のインキュベーション後、製剤は、時間ゼロと同等の含水率値を示した(表31)。すべての凍結乾燥製剤は、1%未満の含水率の値を示し続けた。二次乾燥温度の差異は、含水率のわずかな差異を示し、温度が高いほど、最も低い含水率を示した。
【表31】
【0085】
RP-HPLC分析
40℃での4週間のインキュベーション後、すべての再構成製剤は、時間ゼロで観察されたもの(97.7%~98.6%)と比べて、メインピークの比率の減少(90.3%~91.7%)を示した。RP-HPLCは、KZR-616分子の主な分解物種を特定した。ピークRRT=0.1は、KZR-59587、KZR-0214143を表示し、およびRRT=2.2は、ストレスがかかったときのピークパーセンテージの最大の増加を示した。二次乾燥温度の差異は、時間ゼロでのメインピークの安定性にわずかな差異を示した。40℃で4週間後、すべてのサンプルが同等の安定性を示した。
【0086】
ロットBのサンプルでは、対応するロットAのサンプルと比べて、メインピークの比率が大幅に減少し、メインピークの比率は90.3%であった。これは、ロットAのサンプルでは観察されなかった分解物ピークに加えて、観察されたKZR-0214142の大幅な増加によるものであった。
【表32】
【表33】
【0087】
RP-HPLCは、40℃で4週間後に分解物種の増加を示した。ロットBは、ロットAのサンプルには存在しなかった追加のピーク(約10分)を示した。
【0088】
様々な製剤条件におけるKZR-616の安定性を、この凍結乾燥製剤開発試験において調査した。この試験で調査した条件には、様々なpH値(3.9~4.2)で、様々な増量剤(L-グリシン、マンニトール、およびトレハロース)を含む緩衝化製剤(10mMのコハク酸塩)および非緩衝化製剤が含まれていた。異なる製剤でのKZR-616の安定性を、冷蔵温度(5℃)、周囲温度(25℃)、および加速温度(40℃)で最大6ヶ月間の保管条件下で調べ、逆相HPLC(RP-HPLC)で分析して、KZR-616の安定性を評価した。
【0089】
加速安定性試験を開始する前に、2ラウンドの凍結乾燥サイクル開発を実施した。両方の開発サイクルとも、視覚的に粒子がなく、色がわずかに黄色であるエレガントなケーキおよび再構成後のサンプルを示した。凍結乾燥サイクル#1は、RP-HPLCによる良好な安定性を示した。しかしながら、pHおよび浸透圧を測定した後、これらの結果は目標を外れるpHおよび浸透圧の値を示した。凍結乾燥サイクル#2を、最適化された増量剤を含む製剤で実施し、目標のpHおよび浸透圧を達成した。さらに、サイクル2は、充填段階を減少させ、一次乾燥棚温度を上昇させ、二次乾燥棚の温度を低下させた。サイクル#2で生成されたサンプルは、RP-HPLCによって、エレガントなケーキおよび良好な安定性を示した。
【0090】
6ヶ月以上保管すると、凍結乾燥製剤はすべての保管温度で一貫してエレガントなケーキを示した。しかしながら、凍結乾燥物は、特に25℃および40℃で保管した場合に黄色の着色の増加を示し、再構成後にさらに明らかになった。再構成後、すべての製剤には粒子が含まれていなかった。pHまたは濃度の有意な変化は、経時的に観察されなかった。再構成時間は、保管温度に関係なく、6ヶ月間の保管に対してすべての製剤で一貫して4分30秒未満であった。
【0091】
すべての保管温度でのすべての製剤の化学的安定性評価は、RP-HPLCを使用して実施した。5℃で6ヶ月間保管した後、製剤は時間ゼロと同等のメインピークの比率(98.2%~98.4%)を示し、≦97.9%のメインピークの比率を維持した。25℃で6ヶ月間保管した後、製剤は時間ゼロと比べて減少したメインピークの比率(98.2%~98.4%)を示し、メインピーク(KZR-616)の比率(90.7%~93.4%)を維持した。トレハロース含有製剤F1、F2、およびF5は、25℃で6ヶ月後に、最も高いメインピークの比率(92.8%、93.4%、および93.1%)を示した。40℃で6ヶ月間保管した後、製剤は時間ゼロと比べて有意に減少したメインピークの比率(98.2%~98.4%)を示し、メインピーク(KZR-616)の比率(63.8%~80.3%)を維持した。
【0092】
凍結乾燥サイクルを最適化し、含水率を減少させ、KZR-616の安定性を大幅に向上させるために、主要な製剤F5で追加の水分最適化試験を実施した。水分最適化試験は、10℃、25℃、35℃および50℃の様々な二次棚温度で凍結乾燥サイクルを実施した。
【0093】
40℃で4週間保管した後、ロットC15072369-FF16001からのすべてのサンプルは、二次乾燥棚温度に関係なく、視覚的外観、pH、濃度、再構成時間、およびRP-HPLCによるピークの比率に差異は観察されなかった。40℃での4週間のインキュベーション後、ロットC15072369-FF16001からのすべての再構成製剤は、時間ゼロで観察されたもの(97.7%~98.6%)と比べて、メインピークの比率の減少(91.5%~91.7%)を示した。RP-HPLCを利用することで、KZR-616分子の主な分解物種を特定した。ピークRRT=0.1は、KZR-59587、KZR-0214143を表示し、およびRRT=2.2は、ストレスがかかったときのピークパーセンテージの最大の増加を示した。ロット1605R110からのサンプルでは、対応するロットC15072369-FF16001のサンプルと比べて、メインピークの比率が大幅に減少し、メインピークの比率は90.3%であった。これは、ロットC15072369-FF16001からのサンプルで観察された分解物ピークに加えて、観察されたKZR-0214142の大幅な増加によるものであった。この試験では、4週間後に同等のKZR-616の安定性が得られ、凍結乾燥サイクル間で有意な水分の差異がなく、低い含水率値を確認した。二次乾燥温度の差異は、時間ゼロでのメインピークの安定性にわずかな差異を示した。40℃で4週間後、すべての製剤化サンプルは、同等の安定性を示し、これは、ケーキをさらに乾燥しても安定性の向上が達成されなかったことを示している。
【0094】
結論として、トレハロース含有製剤、F2、およびF5は、40℃で6ヶ月後に、最も高いメインピークの比率(78.7%、80.3%)を示した。このデータは、KZR-616が糖の存在下でpH4.2の非緩衝化製剤で最も安定していることを示唆している。これは、最も不良な安定性の結果を示している、糖を含有しない製剤F3、F6、およびF8の傾向によってさらに裏付けられる。
【実施例0095】
実施例2
表34~36は、様々な動物において異なるKZR-616製剤で観察された薬物動態(「PK」)およびトキシコキネティクス(「TK」)の比較を示している。試験製剤は、注射用水で溶解すると、pH4.2の2重量%トレハロースに記載されているように、様々な濃度のKZR-616を含む。比較製剤は、10重量%含水ポリソルベート-80(「PS-80」)に記載されているように、様々な濃度のKZR-616を含む。
【0096】
表34は、試験製剤が、比較製剤と比べて、より速い吸収および除去、ならびに2~3倍高いCmaxを呈したことを示している。同様のAUCが、両方の製剤で観察された。
【表34】
【0097】
表35は、より速い吸収および除去、ならびに1.2~3.7倍高いCmaxが試験製剤で観察されたことを示している。2つの製剤で、AUCの0.7~1.7倍の差異が観察された。
【表35】
【0098】
表36の試験製剤は、上記の注射用水(「WFI」)製剤として調製され、比較製剤は、水性10重量%ポリソルベート-80(「PS-80」)製剤として調製された。より速い吸収および除去、ならびに1.1~2.4倍高いCmaxが試験製剤で観察されたことを示している。2つの製剤で、AUCの0.6~1.0倍の差異が観察された。
【表36】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
【外国語明細書】