(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112134
(43)【公開日】2025-07-31
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20250724BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20250724BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20250724BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/076
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006239
(22)【出願日】2024-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 崇仁
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BB00
3D241CC01
3D241CC08
3D241DC33Z
3D241DC41Z
3D241DC45Z
(57)【要約】
【課題】運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両において、運転者が安定して車両を操作できるようにする。
【解決手段】運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両を制御する車両制御方法において、走行抵抗の検出を行い、検出された走行抵抗に基づいて車速が一定となるようにアクセルオフ時の駆動トルクを制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両を制御する車両制御方法であって、
走行抵抗の検出を行い、
検出された前記走行抵抗に基づいて車速が一定となるように前記アクセルオフ時の前記駆動トルクを制御する、
車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記車両の進行方向前方の障害物の検出を行い、
前記障害物が検出された場合は、前記アクセルオフ時の前記駆動トルクを減少させて前記車速を低減する、
車両制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御方法であって、
車輪のスリップの検出を行い、
前記車輪のスリップが検出された場合は、前記アクセルオフ時の前記駆動トルクを減少させる、
車両制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
検出された前記走行抵抗の乗り越え要否を判定し、
前記走行抵抗を乗り越え不要と判定された場合は、前記アクセルオフ時の前記駆動トルクを減少させる、
車両制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
過去の走行軌跡に基づいて走行車線上に位置する段差を特定し、前記段差と車輪との接触点を推定することで前記走行抵抗を検出する、
車両制御方法。
【請求項6】
運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両を制御する車両制御装置であって、
走行抵抗を検出する走行抵抗検出部と、
前記走行抵抗検出部によって検出された前記走行抵抗に基づいて車速が一定となるように前記アクセルオフ時の前記駆動トルクを制御する駆動トルク制御部と、
を備える車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クリープトルクを車両に作用させる制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の制御技術では、クリープトルク(アクセルオフ時の駆動トルク)を出力するにあたり、走行抵抗は考慮されていない。そのため、減速帯や勾配路等では車速が安定せず、状況に応じて、運転者によるアクセル操作・ブレ―キ操作が必要となる。
【0005】
そのため、例えば、路面に段差等がある場合は、運転者がアクセルを踏んで乗り越える必要がある。ここで、アクセル操作の直後に車速を減速する必要がある状況では、微細なアクセル操作や素早いブレーキ操作が求められる。しかしながら、運転スキルが低い運転者や反応速度が遅い運転者は、適切に操作をすることが難しい場合がある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両において、運転者が安定して車両を操作できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、運転者のアクセルオフ時に駆動トルクを出力する車両を制御する車両制御方法が提供される。当該車両制御方法では、走行抵抗の検出を行い、検出された走行抵抗に基づいて車速が一定となるようにアクセルオフ時の駆動トルクを制御する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、段差の乗り越え時等において、運転者はブレーキ操作のみで車両をコントロールできるので、微細なアクセル操作や素早いブレーキ操作が不要となる。よって、運転者は安定して車両を操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御方法を適用する車両の概略構成図の一例である。
【
図2】
図2は、車両を制御する制御システムの概略構成図の一例である。
【
図3】
図3は、駆動トルク制御の停止フェーズを説明するためのフローチャートの一例である。
【
図4】
図4は、駆動トルク制御の走行中フェーズを説明するためのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御方法を適用する車両100を上方から見た概略構成図の一例である。
図1において、車両100の前進時の進行方向(紙面上側)を前、後退時の進行方向(紙面下側)を後ろ、前方を向いた状態における左側を左、同右側を右とする。
図2は車両100を制御する制御システムの概略構成図の一例である。
【0012】
本実施形態では、車両100がいわゆる純電気自動車(Battery Electric Vehicle:BEV)の場合について説明する。しかしながら、車両100は、シリーズ式のハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)であってもよいし、パラレル式のハイブリッド自動車であってもよいし、内燃機関によって駆動される自動車であってもよい。車両100の車輪を駆動する駆動源の種類は問わない。
【0013】
車両100は、制動・駆動ユニット1と、駆動力演算ユニット2と、レーダ3と、前方カメラ4と、サイドカメラ5L、5Rと、ナビゲーションシステム6と、アクセルペダル開度センサ(以下、APOセンサともいう。)7と、ブレーキスイッチ8と、ステアリングセンサ9と、勾配センサ10と、車速検出ユニット11と、セレクトスイッチ12と、を備える。
【0014】
制動・駆動ユニット1は、車両100の駆動源である電動モータと、電動モータを制御するインバータ等を含むユニットである。電動モータはバッテリ(図示せず)からの電力供給によって作動し、車輪(図示せず)を駆動する。また、電動モータは、減速時には車両100の運動エネルギを電力として回生することで制動力を発生する。なお、車両100が内燃機関で駆動される場合は、制動・駆動ユニット1は内燃機関である。
【0015】
車両制御装置としての駆動力演算ユニット2は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。駆動力演算ユニット2を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0016】
レーダ3は、例えば車体前端付近に配置され、電波を用いて車両100の周辺にある物体との距離及びその方向を検出する。
【0017】
前方カメラ4は、例えばルームミラー付近に車両進行方向を向けて配置され、車両100の前方(図中の領域F1)を撮影する。なお、前方カメラ4を、上記の領域F1を撮影するカメラと、車両100の側方(図中の領域F2)を撮影する広角カメラと、からなるカメラユニットとしてもよい。
【0018】
サイドカメラ5L、5Rは、例えばサイドカメラ5Lが左ドアミラーに、サイドカメラ5Rが右ドアミラーに設けられ、車両100の左側方(図中の領域SL)及び右側方(図中の領域SR)を撮影する。なお、サイドカメラ5L、5Rをまとめてサイドカメラ5と称することもある。
【0019】
レーダ3が検出した情報と、前方カメラ4及びサイドカメラ5が撮影した画像情報は、駆動力演算ユニット2に読み込まれる。駆動力演算ユニット2は、これらの情報に基づいて車両100の周辺状況、例えば対象物までの距離、対象物との相対距離、対象物との相対速度、対象物の属性等、を特定する。
【0020】
ナビゲーションシステム6は、例えば車室内に配置され、予め記憶した地図情報と人工衛星から取得した位置情報とに基づいて、運転者が設定した目的地までの走行ルートの設定及びガイド等を行う。
【0021】
また、ナビゲーションシステム6は、予め記憶した地図情報と人工衛星から取得した位置情報とに基づいて、車両100の周辺状況、例えば走行中の道路の属性、曲率、幅員、制限車速、交通標識の位置及び内容、及び信号の位置等、を特定する。ここでいう道路の属性とは、高速道路、渋滞路、ワインディング、人口密集地の道路、狭路、駐車場内等である。なお、走行中の道路の曲率及び幅員については、前方カメラ4及びサイドカメラ5が撮影した画像情報を用いて特定することもできる。
【0022】
なお、本実施形態の車両100は、周辺状況を特定するための装置としてレーダ3、前方カメラ4、サイドカメラ5、及びナビゲーションシステム6を備えるが、これに限られるわけではない。例えば、レーダ3、前方カメラ4及びサイドカメラ5のいずれかに替えて、又はこれらに加えて、ライダ(Laser Imaging Detection and Ranging:LIDAR)を備えてもよい。また、ナビゲーションシステム6に替えて、又は加えて、車車間通信や路車間通信等が可能な通信装置を備えてもよい。
【0023】
アクセルペダル開度センサ7は、運転者が操作するアクセルペダル(図示せず。以下、単に「アクセル」という場合がある。)の開度を検出する。アクセルペダルの開度がゼロでない状態をアクセルオンといい、アクセルペダルの開度がゼロである状態をアクセルオフという。検出されたアクセルペダル開度は駆動力演算ユニット2に読み込まれる。
【0024】
ブレーキスイッチ8は、運転者が操作するブレーキペダル(図示せず。以下、単に「ブレーキ」という場合がある。)の操作状態を検出する。ブレーキペダルが踏み込まれている状態をブレーキオンといい、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態をブレーキオフという。検出されたブレーキペダルの操作状態(ブレーキオン/ブレーキオフ)は駆動力演算ユニット2に読み込まれる。
【0025】
ステアリングセンサ9は、運転者が操作するステアリング(図示せず)の操作状態(操舵角、操舵力)を検出する。検出されたステアリングの操作状態は駆動力演算ユニット2に読み込まれる。
【0026】
勾配センサ10は、路面勾配を検出する。検出された路面勾配は駆動力演算ユニット2に読み込まれる。
【0027】
車速検出ユニット11は、例えば、車輪の回転速度を検出する回転速度センサを備える。検出された車輪の回転速度は駆動力演算ユニット2に読み込まれる。車速検出ユニット11は、駆動源の出力トルクに基づいて車速を推定する構成であってもよいし、ナビゲーションシステム6から取得した車両100の位置情報に基づいて車速を推定する構成であってもよいし、カメラ4、5やレーダ3から取得した情報に基づいて車速を推定する構成であってもよい。
【0028】
セレクトスイッチ12は、運転者がシフター(図示せず)で選択した車両100の操作モード(前進モード、後進モード、ニュートラルモード、パーキングモード等)を検出する。検出された操作モードは駆動力演算ユニット2に読み込まれる。
【0029】
駆動力演算ユニット2は、上述した車両100の周辺状況に関する情報である周辺状況情報、各種センサで検出した情報、等を読み込み、これらの情報に基づいて制動・駆動ユニット1を制御する。
【0030】
本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、所定条件が成立すると、運転者のアクセルオフ時に駆動源である電動モータに駆動トルク(以下、クリープトルクともいう。)を出力させる駆動トルク制御を実行する。
【0031】
所定条件は、例えば、以下の条件である。
【0032】
(a)車両100の操作モードとして走行モード(前進モード又は後進モード)が選択されていること。
(b)車速が所定車速以下であること。所定車速は、例えば、10[km/h]程度の低車速である。
(c)運転者によって駆動トルク制御の実行が禁止されていないこと。(駆動トルク制御の実行可否を運転者が設定可能な場合)
【0033】
ここで、クリープトルクによる車両100の走行中に運転者がアクセルやブレーキを操作する必要がある場合について検討する。一例として、路面に段差等があって、運転者がアクセルを踏んで乗り越える必要がある場合が考えられる。
【0034】
この場合において、さらに、アクセル操作の直後に車速を減速する必要がある場合は、微細なアクセル操作や素早いブレーキ操作が求められる可能性がある。しかしながら、運転スキルが低い運転者や反応速度が遅い運転者は、適切に操作をすることが難しい場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態の駆動力演算ユニット2は、
図3、
図4に示す手順で駆動トルク制御を実行することで、運転者が安定して車両100を操作できるようにしている。
【0036】
以下、
図3、
図4を参照しながら、駆動力演算ユニット2によって実行される駆動トルク制御について説明する。
【0037】
本実施形態の駆動トルク制御には、車両100が停止している状態の処理である停止フェーズと、車両100が走行している状態の処理である走行中フェーズと、が含まれる。
図3は、駆動トルク制御の停止フェーズを説明するためのフローチャートの一例である。
図4は、駆動トルク制御の走行中フェーズを説明するためのフローチャートの一例である。
【0038】
まず、
図3を参照しながら停止フェーズについて説明する。
【0039】
ステップS11では、駆動力演算ユニット2は、車両100が走行中(車速>0[km/h])か否かを判定する。
【0040】
駆動力演算ユニット2は、車速が0[km/h]である場合は、車両100が停止していると判定して処理をステップS12に進める。ステップS12では、停止フェーズの処理が開始される。
【0041】
駆動力演算ユニット2は、車速が0[km/h]でない場合は、車両100が走行中であると判定して処理をステップS21に進める。ステップS21では、走行中フェーズの処理が開始される。走行中フェーズについては後述する。
【0042】
ステップS13では、駆動力演算ユニット2は、アクセルペダル又はブレーキペダルが操作中か否かを判定する。
【0043】
駆動力演算ユニット2は、アクセルオンの場合又はブレーキオンの場合は、アクセルペダル又はブレーキペダルが操作中であると判定して処理をステップS20に進める。
【0044】
ステップS20では、駆動力演算ユニット2は、駆動トルク制御を停止する。これにより、駆動トルク制御が運転者の運転操作に干渉してしまうことを防止できる。
【0045】
また、ステップS20では、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0046】
駆動力演算ユニット2は、アクセルオフ及びブレーキオフの場合は、アクセルペダルとブレーキペダルとのいずれも操作中ではないと判定して処理をステップS14に進める。
【0047】
ステップS14では、走行抵抗検出部としての駆動力演算ユニット2は、走行抵抗検出処理を行う。
【0048】
走行抵抗とは、車両100が走行する際に進行方向への移動を妨げる抗力であり、例えば、勾配抵抗、加速抵抗、空気抵抗、転がり抵抗、等が挙げられる。また、路面の段差のように、車両100が走行する際に乗り越えることになる路面の構造も走行抵抗として扱うことができる。
【0049】
走行抵抗は、様々な方法で検出することができる。一例として、本実施形態では、車両100の諸元と実験結果とに基づいて、勾配抵抗、加速抵抗、空気抵抗、転がり抵抗、等をパラメータとして予め設定されたマップを参照して、走行抵抗を求めるものとする。つまり、周辺状況情報や各種センサで検出した情報に対応する走行抵抗値がマップに設定されている場合は、当該走行抵抗値が、走行抵抗検出処理で検出された走行抵抗である。
【0050】
ステップS15では、駆動力演算ユニット2は、走行抵抗が検出されたか否かを判定する。
【0051】
駆動力演算ユニット2は、マップを参照して走行抵抗値を取得できた場合は、走行抵抗が検出されたと判定して処理をステップS16に進める。
【0052】
ステップS16では、駆動トルク制御部としての駆動力演算ユニット2は、検出された走行抵抗を超える駆動トルクを電動モータに出力させて車両100を発進させ、予め設定された設定車速(一定の車速)になるように駆動トルクを制御する。設定車速は、例えば、5~7[km/h]程度の低車速である。設定車速は、運転者が設定できるようにしてもよい。
【0053】
なお、車両100の発進時に路面の段差を乗り越える車両挙動を行う場合は、段差との接触点回りのモーメントが段差を乗り越える大きさになればよい。例えば、レーダ3や前方カメラ4でセンシングした段差の高さから車輪との接触点を推定し、段差との接触点回りの車輪重心の直進力と重力とから段差の乗り越えに必要な駆動トルクを演算で求めることができる。なお、後述する走行フェーズにおいては、並進運動及び回転運動の運動量から段差の乗り越えに必要な駆動トルクを求めることができる。
【0054】
ただし、駆動トルク制御では、出力可能な駆動トルクに上限が設定されている(以下、上限駆動トルクという。)。これは、乗り越えるべきではない段差(走行抵抗)を乗り越えないようにするためである。例えば、駐車場に接地されている車輪止めは、乗り越えるべきではない段差の一例である。
【0055】
上限駆動トルクは、駆動力演算ユニット2に予め設定されている。しかしながら、レーダ3や前方カメラ4でセンシングした段差が、画像処理やAI(Artificial Intelligence)判定等によって乗り越えるべきではない段差であると判定され、且つ、当該段差が予め設定されている上限駆動トルクよりも低い駆動トルクで乗り越え可能であると推定される場合は、当該段差を乗り越えることができないように上限駆動トルクをより低い値に自動的に、或いは運転者が手動で更新してもよい。
【0056】
駆動力演算ユニット2は、マップを参照して走行抵抗値を取得できなかった場合は、走行抵抗が検出されなかったと判定して処理をステップS17に進める。
【0057】
ステップS17では、駆動力演算ユニット2は、電動モータの駆動トルクを増加させる。
【0058】
ステップS18では、駆動力演算ユニット2は、車両100が動きだしたか否かを判定する。
【0059】
駆動力演算ユニット2は、車速検出ユニット11の検出結果に基づいて、車両100が動き出したと判定した場合は、処理をステップS19に進める。
【0060】
駆動力演算ユニット2は、車速検出ユニット11の検出結果に基づいて、車両100が動き出していないと判定した場合は、処理をステップS17に進める。
【0061】
ステップS19では、スリップ検出部としての駆動力演算ユニット2は、車輪がスリップしているか否かを判定する。具体的には、駆動力演算ユニット2は、車輪のスリップ率が所定値以上の場合に、車輪がスリップしていると判定する。
【0062】
車輪のスリップ率は、例えば、車輪の回転速度と車両100の推定移動量との差分に基づいて推定することができる。車両100の推定移動量は、周辺状況情報に基づいて推定してもよいし、電動モータの出力トルクに基づいて推定してもよい。
【0063】
駆動力演算ユニット2は、車輪がスリップしていると判定した場合は、駆動トルクを減少させて駆動トルク制御を停止する(ステップS20)。これにより、車速をコントロールすることが難しい状況において、速やかに駆動トルク制御を停止できる。
【0064】
また、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0065】
駆動力演算ユニット2は、車輪がスリップしていないと判定した場合は、処理をステップS21に進めて走行中フェーズの処理を開始する。
【0066】
以下、
図4を参照しながら走行中フェーズについて説明する。
【0067】
ステップS22では、駆動力演算ユニット2は、アクセルペダル又はブレーキペダルが操作中か否かを判定する。
【0068】
駆動力演算ユニット2は、アクセルオンの場合又はブレーキオンの場合は、アクセルペダル又はブレーキペダルが操作中であると判定して処理をステップS29に進める。
【0069】
ステップS29では、駆動力演算ユニット2は、駆動トルク制御を停止する。これにより、駆動トルク制御が運転者の運転操作に干渉してしまうことを防止できる。
【0070】
また、ステップS29では、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0071】
駆動力演算ユニット2は、アクセルオフ及びブレーキオフの場合は、アクセルペダルとブレーキペダルとのいずれも操作中ではないと判定して処理をステップS23に進める。
【0072】
ステップS23では、走行抵抗検出部及び障害物検出部としての駆動力演算ユニット2は、走行抵抗検出処理及び障害物検出処理を行う。
【0073】
走行抵抗検出処理では、ステップS14と同様に、走行抵抗の検出が行われる。また、障害物検出処理では、周辺状況情報に基づいて、壁等の障害物の検出が行われる。
【0074】
ステップS24では、駆動力演算ユニット2は、車両100の進行方向前方にある走行抵抗が、乗り越えるべきではない走行抵抗か否か(走行抵抗乗り越え要否)を判定する。
【0075】
車両100の進行方向前方にある走行抵抗とは、ステップS23で走行抵抗検出処理を実行するまでの車両100の過去の走行軌跡に基づいて、車両100がこれから走行する走行車線上に位置すると推定される走行抵抗(段差等)である。車両100がこれから走行する走行車線上に位置する段差は、当該段差と車輪との接触点を推定することでその走行抵抗を求めることができる。そして、並進運動及び回転運動の運動量から当該走行抵抗の乗り越えに必要な駆動トルクを求めることができる。
【0076】
上述したように、駆動トルク制御では、上限駆動トルクが予め設定されている。駆動力演算ユニット2は、車両100の進行方向前方にある走行抵抗を乗り越えるのに必要な駆動トルクが上限駆動トルクを超える場合は、当該走行抵抗は乗り越えるべきではない走行抵抗であると判定する。
【0077】
また、上述したように、駆動力演算ユニット2は、画像処理やAI判定等によって、周辺状況情報に基づいて検出した走行抵抗が乗り越えるべきではない走行抵抗であるか否かを判定することができる。なお、車両100の進行方向前方にある走行抵抗が、画像処理やAI判定等によって乗り越えるべきではない走行抵抗であると判定され、且つ、当該走行抵抗が予め設定されている上限駆動トルクよりも低い駆動トルクで乗り越え可能であると推定される場合は、当該走行抵抗を乗り越えることができないように上限駆動トルクをより低い値に自動的に、或いは運転者が手動で更新してもよい。
【0078】
駆動力演算ユニット2は、車両100の進行方向前方にある走行抵抗が乗り越えるべきではない走行抵抗である(乗り越え不要)と判定した場合は、駆動トルクを減少させて駆動トルク制御を停止する(ステップS29)。これにより、乗り越えるべきではない走行抵抗(車輪止め等)を車両100が乗り越えてしまうことを防止できる。
【0079】
また、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0080】
ステップS25では、駆動力演算ユニット2は、車両100の進行方向前方に障害物があるか否かを判定する。
【0081】
駆動力演算ユニット2は、障害物検出処理によって車両100の進行方向前方に障害物が検出された場合は、駆動トルクを減少させて車速を低減し、駆動トルク制御を停止する(ステップS29)。これにより、運転者に安心感を与えることができる。
【0082】
また、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0083】
駆動力演算ユニット2は、障害物検出処理によって車両100の進行方向前方に障害物が検出された場合は、車両100から障害物までの距離が所定距離以下になると駆動トルクを漸減させるようにしてもよい。
【0084】
駆動力演算ユニット2は、障害物検出処理によって車両100の進行方向前方に障害物が検出されなかった場合は、処理をステップS26に進める。
【0085】
ステップS26では、駆動トルク制御部としての駆動力演算ユニット2は、予め設定された設定車速(一定の車速)になるように駆動トルクを制御する。具体的には、走行抵抗検出処理で検出された走行抵抗と、設定車速と実車速との差分と、に基づいて、不足分・過剰分の駆動トルクを加算・減算することによって、車速を予め設定された設定車速にすることができる。設定車速は、例えば、5~7[km/h]程度の低車速である。設定車速は、運転者が設定できるようにしてもよい。
【0086】
ステップS27では、駆動力演算ユニット2は、車両100が走行中(車速>0[km/h])か否かを判定する。
【0087】
駆動力演算ユニット2は、車速が0[km/h]でない場合は、車両100が走行中であると判定して処理をステップS22に進める。
【0088】
駆動力演算ユニット2は、車速が0[km/h]である場合は、車両100が停止していると判定して処理をステップS28に進める。
【0089】
ステップS28では、スリップ検出部としての駆動力演算ユニット2は、車輪がスリップしているか否かを判定する。具体的には、駆動力演算ユニット2は、車輪のスリップ率が所定値以上の場合に、車輪がスリップしていると判定する。
【0090】
駆動力演算ユニット2は、車輪がスリップしていると判定した場合は、駆動トルクを減少させて駆動トルク制御を停止する(ステップS29)。これにより、車速をコントロールすることが難しい状況において、速やかに駆動トルク制御を停止できる。
【0091】
また、駆動力演算ユニット2は、ナビゲーションシステム6のディスプレイやインストルメントパネルに、駆動トルク制御が停止状態であることを表示させる。これにより、故障により駆動トルク制御が停止しているのではないことを運転者に伝えることができる。
【0092】
以上述べたように、本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、走行抵抗の検出を行い、検出された走行抵抗に基づいて車速が一定となるようにアクセルオフ時の駆動トルクを制御する。
【0093】
これによれば、走行抵抗(段差等)の乗り越え時等において、運転者はブレーキ操作のみで車両100をコントロールできるので、微細なアクセル操作や素早いブレーキ操作が不要となる。よって、運転者は安定して車両100を操作できる。
【0094】
また、本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、車両100の進行方向前方の障害物の検出を行い、障害物が検出された場合は、アクセルオフ時の駆動トルクを減少させて車速を低減する。
【0095】
これによれば、運転者に安心感を与えることができる。
【0096】
また、本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、車輪のスリップの検出を行い、車輪のスリップが検出された場合は、アクセルオフ時の駆動トルクを減少させる。
【0097】
これによれば、車速をコントロールすることが難しい状況において、速やかに駆動トルク制御を停止できる。
【0098】
また、本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、検出された走行抵抗の乗り越え要否を判定し、走行抵抗を乗り越え不要と判定された場合は、アクセルオフ時の駆動トルクを減少させる。
【0099】
これによれば、乗り越えるべきではない走行抵抗(車輪止め等)を車両100が乗り越えてしまうことを防止できる。
【0100】
また、本実施形態では、駆動力演算ユニット2は、過去の走行軌跡に基づいて走行車線上に位置する段差を特定し、段差と車輪との接触点を推定することで走行抵抗を検出する。
【0101】
これによれば、車両100の走行中における走行抵抗の変化を適切に検出できるので、車速を精度よく制御することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0103】
2 駆動力演算ユニット(車両制御装置、走行抵抗検出部、駆動トルク制御部)
100 車両