(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112136
(43)【公開日】2025-07-31
(54)【発明の名称】断熱容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20250724BHJP
【FI】
B65D81/38 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006242
(22)【出願日】2024-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】水野 善行
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 拓嗣
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB26
3E067AC03
3E067BA01A
3E067BB11A
3E067BB17A
3E067BB25A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067EA17
3E067EB17
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA11
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】内容物に対する温度保持能を効果的に向上することを可能とする断熱容器を提供すること。
【解決手段】本技術では、底面、周壁及び天面によって内容物を収容可能な内部空間を形成する本体部と、蓄熱材を保持するための蓄熱材保持部と、を有する断熱容器であって、前記蓄熱材保持部は、前記本体部の内面に設置され、前記蓄熱材が前記内容物に追従するように変形可能である、断熱容器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面、周壁及び天面によって内容物を収容可能な内部空間を形成する本体部と、
蓄熱材を保持するための蓄熱材保持部と、
を有する断熱容器であって、
前記蓄熱材保持部は、前記本体部の内面に設置され、前記蓄熱材が前記内容物に追従するように変形可能である、
断熱容器。
【請求項2】
前記周壁は、複数の側壁を含み、
前記底面、一の前記側壁及び前記天面の少なくとも1つに、前記蓄熱材保持部が複数設けられている、請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記蓄熱材保持部には、弾性を有する断熱材が保持されている、請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記天面に設置されている前記蓄熱材保持部の保持容積の合計が、前記内部空間の収納容積の1/3以上である、
請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記底面と前記天面との間の距離を高さHとした場合に、
前記天面に設置されている前記蓄熱材保持部に前記蓄熱材を収容したときの前記蓄熱材保持部の最下点と前記天面との間の距離は、1/3H以上である、
請求項1又は2に記載の断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保冷剤等の蓄熱材と保冷対象である内容物を共に収容することで、内容物の温度上昇を抑制する断熱容器に関する技術が知られている。このような断熱容器については、内容物の種類、大きさ、形状等の態様に合わせて、適切な温度範囲に保持することが求められる。特に、収納される内容物の変化に対応して、蓄熱材の有する熱エネルギーがより効率的に内容物の温度保持に利用される断熱容器が望まれる。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、食品容器と、断熱性を有する収容箱と、食品容器の下面と収容箱の底壁部の上面との間に空間を確保するスペーサ部材と、前記食品容器の上方に配置される保冷剤とを備え、この食品容器の側面と前記収容箱の側壁部の内面との間には、食品容器の上方の第1空間と食品容器の下方の第2空間とを互いに連通させる空気流路が設けられている弁当箱が開示されている。保冷剤によって冷却された第1空間の空気は、空気流路を通して第2空間へ供給されるため、弁当箱を効率よく冷却することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内容物の高さや幅が異なる場合、蓄熱材と内容物との間に隙間が生まれ、蓄熱材の有する熱エネルギーが効果的に内容物に伝わりづらく、温度保持効果を十分に発揮できない場合がある。また、輸送等を想定した断熱容器の場合、断熱容器全体の大きな動きに対して、蓄熱材がずれてしまい、温度保持効果を十分に発揮できない場合がある。
【0006】
本技術は、断熱容器に関し、様々な種類、大きさ、形状等の形態を有する内容物に対して、蓄熱材を適切な範囲に配置させ、効率よく内容物の温度を保持することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、蓄熱材が内容物に追従するように変形可能とする蓄熱材保持部を断熱容器の内面に設置することにより、内容物に対する温度保持能を効果的に向上することに成功し、本技術を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本技術では、底面、周壁及び天面によって内容物を収容可能な内部空間を形成する本体部と、蓄熱材を保持するための蓄熱材保持部と、を有する断熱容器であって、前記蓄熱材保持部は、前記本体部の内面に設置され、前記蓄熱材が前記内容物に追従するように変形可能である、断熱容器を提供する。
前記周壁は、複数の側壁を含み、前記底面、一の前記側壁及び前記天面の少なくとも1つに、前記蓄熱材保持部が複数設けられていてもよい。
前記蓄熱材保持部には、弾性を有する断熱材が保持されていてもよい。
前記天面に設置されている前記蓄熱材保持部の保持容積の合計が、前記内部空間の収納容積の1/3以上であってもよい。
前記底面と前記天面との間の距離を高さHとした場合に、前記天面に設置されている前記蓄熱材保持部に前記蓄熱材を収容したときの前記蓄熱材保持部の最下点と前記天面との間の距離は、1/3H以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本技術の第1実施形態に係る断熱容器において、天面が開いた状態を表す斜視図である。
【
図2】本技術の第1実施形態に係る断熱容器において、天面が閉じた状態を表す斜視図である。
【
図3】本技術の第1実施形態に係る断熱容器を表す断面図である。
【
図4】本技術の第2実施形態に係る断熱容器の一例を表す断面図である。
【
図5】本技術の第3実施形態に係る断熱容器において、天面が閉じた状態を表す斜視図である。
【
図6】本技術の第3実施形態に係る断熱容器を表す断面図である。
【
図7】本技術の第4実施形態に係る断熱容器の一例を表す断面図である。
【
図9】本技術の試験例に係る経過時間に対する温度推移のグラフを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.断熱容器の構成
(1)本体部
(2)蓄熱材保持部
(3)蓄熱材
(4)断熱材
(5)その他の構成
2.第1の実施形態に係る断熱容器
3.第2の実施形態に係る断熱容器
4.第3の実施形態に係る断熱容器
5.第4の実施形態に係る断熱容器
6.実施例
【0012】
1.断熱容器の構成
本技術に係る断熱容器は、底面、周壁及び天面によって内容物を収容可能な内部空間を形成する本体部と、蓄熱材を保持するための蓄熱材保持部と、を備え、前記蓄熱材保持部は、前記本体部の内面に設置され、前記蓄熱材が前記内容物に追従するように変形可能であるように構成されている。
【0013】
(1)本体部
本技術に係る本体部は、底面、周壁及び天面によって内容物を収容可能な内部空間を形成する部分である。前記本体部は、内部空間を外界から離隔し、該内部空間の温度範囲を一定に保つことができる。本体部を構成する底面及び天面の形状は、例えば、略矩形、円形、楕円形、多角形又は略多角形等であってよいが、これに限定されず、目的に応じて適宜選択されうる。底面と開口の形状は、同一であっても、異なっていてもよい。また、例えば、周壁は、複数の側壁で構成されていてもよい。
【0014】
前記天面は、例えば、開閉することができるものであり、天面を開いた状態で、前記内容物を収納し、前記蓄熱材保持部に蓄熱材を設置した後、天面を閉じた状態にすることにより、内部空間が形成されてもよい。また、例えば、周壁や底面が開閉できるものであってもよい。
【0015】
本技術に係る本体部は、一般的な断熱容器に用いることができる断熱材料を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。前記断熱材料としては、例えば、発泡樹脂、樹脂、及びこれらを組み合わせた積層体や、これらにアルミニウム等の金属箔が積層された積層体等を挙げることができる。
【0016】
(2)蓄熱材保持部
本技術に係る蓄熱材保持部は、前記蓄熱材を保持し、かつ、該蓄熱材を前記内容物に追従するように変形可能なものである。この構成により、内容物の種類、大きさ、形状等の形態に関わらず、蓄熱材を内容物に追従させることができ、内容物に対する温度保持能を効果的に向上することができる。「蓄熱材を内容物に追従させる」とは、保冷対象となる内容物の大きさ、断熱容器内における位置等に応じて、蓄熱材が内容物の温度保持能を最も発揮できるように、内容物に接触させる、又は、内容物に近い位置に沿わせることである。例えば、前記蓄熱材が前記蓄熱材保持部によって、内容物に接する位置に調整されているような態様が挙げられる。
【0017】
前記蓄熱材保持部は、前記底面、前記複数の側壁及び前記天面の少なくとも1つに、設けられていてもよい。本技術の好ましい形態において、前記蓄熱材保持部は、本体部の複数箇所に複数設けられうる。この場合、内容物の高さや幅が場所によって異なる場合でも、複数の蓄熱材がそれぞれの設置箇所から内容物に追従することによって、内容物に対する温度保持能を効果的に向上することができる。
【0018】
前記蓄熱材保持部が前記天面、底面及び側壁の少なくとも1つに設置されている場合、前記蓄熱材保持部の保持容積の合計は、前記内部空間の収納容積の1/3以上であってよく、好ましくは1/2以上である。この構成によって、内容物の温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材保持部の保持容積の合計は、前記内部空間の収納容積の2/3以下であり、より好ましくは1/2以下である。
【0019】
また、前記蓄熱材保持部において、前記保持容積が、前記蓄熱材の容積の2倍以上であってよく、好ましくは5倍以上である。この構成によって、内容物に対する温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材を保持可能な最大容積を示す保持容積は、前記蓄熱材の容積の50倍以下であってよく、好ましくは20倍以下である。
【0020】
前記蓄熱材保持部が前記天面に設置されている場合、前記底面と前記天面との間の距離を高さHとした場合に、前記蓄熱材を収容した前記蓄熱材保持部の最下点と前記天面との間の距離は、1/3H以上であってよく、好ましくは、1/2H以上である。この構成によって、内容物に対する温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材保持部の最下点と前記天面との間の距離は、2/3H以下であってよく、好ましくは、1/2H以下である。これは、前記蓄熱材保持部が前記底面に設置されている場合の、前記蓄熱材を収容した前記蓄熱材保持部の最上点と前記底面との間の距離についても同様である。
【0021】
また、前記蓄熱材保持部に蓄熱材が保持された場合、該蓄熱材の最上点と前記天面との間の距離は、該蓄熱材の厚み以上であってよく、好ましくは4倍以上である。この構成によって、内容物に対する温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材の最上点と前記天面との間の距離は、前記蓄熱材の厚みの49倍以下であってよく、好ましくは19倍以下である。これは、前記蓄熱材保持部が前記底面に設置されている場合に、前記蓄熱材保持部が鉛直上方向に最も伸びた状態の前記蓄熱材の最下点と、前記底面との間の距離についても同様である。
【0022】
前記蓄熱材保持部が前記側壁に設置されている場合、前記側壁と対向する側壁との間の距離を幅Wとした場合に、前記蓄熱材保持部が最も伸びた状態の位置と対向する側壁との間の距離は、1/3W以上であってよく、好ましくは、1/2W以上である。この構成によって、内容物に対する温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材保持部が最も伸びた状態の位置と対向する側壁との間の距離は、2/3W以下であってよく、好ましくは、1/2W以下である。
【0023】
また、前記蓄熱材保持部に蓄熱材が保持された場合、前記蓄熱材保持部が最も伸びた状態の前記蓄熱材と対向する側壁との間の距離は、該蓄熱材の厚み以上であってよく、好ましくは4倍以上である。この構成によって、内容物に対する温度保持能を十分に発揮することができる位置まで、前記蓄熱材を近づけることができる。また、前記蓄熱材保持部が最も伸びた状態の前記蓄熱材と対向する側壁との間の距離は、前記蓄熱材の厚みの49倍以下であってよく、好ましくは19倍以下である。
【0024】
(3)蓄熱材
本技術に係る蓄熱材は、蓄冷材、蓄温材のいずれも包含する概念である。前記蓄熱材とは、対象の温度を常温より低い温度範囲、又は常温より高い温度範囲に保つために、一定時間、一定の温度を保持することが可能な部材をいう。
前記蓄熱材は、例えば、対象を常温より低い温度範囲に保つための、保冷機能及び蓄冷機能を有するものと、対象を常温より高い温度範囲を保つための保温機能を有するものと、を含めたものを意味する。
前記対象は、前記内容物のような物体及び前記内部空間のような空間が含まれる。前記対象が物体の場合、前記蓄熱材が対象物に接触することで直接的に温度が保持されてもよく、前記対象の周りの空間の温度が保持された結果、間接的に前記対象物の温度が保持されてもよい。
また、本技術に係る蓄熱材の好ましい形態としては、対象を常温より低い温度範囲に保つための、保冷機能を有する蓄冷材が用いられうる。
【0025】
本技術に係る蓄熱材としては、例えば、物質の相変化、転移に伴う転移熱を利用して、これを熱エネルギーとして蓄えて利用する潜熱蓄熱材を採用し得るが、これに限定されず、蓄熱材として一般的に知られた蓄熱材を適宜選択することができる。例えば、比熱の大きい物質に熱エネルギーを蓄えて利用する顕熱蓄熱材や化学反応時の吸熱及び発熱を利用した化学蓄熱材を採用してもよい。
【0026】
(4)断熱材
前記蓄熱材保持部は、弾性を有する断熱材を保持していてもよい。例えば、蓄熱材保持部が内容物の大きさや位置に対応するように変形するため、蓄熱材保持部の中に隙間が生じる。この際、弾性を有する断熱材によって当該隙間を占めることができ、前記蓄熱材を適度な力で一定の場所に留めておくことができる。したがって、前記断熱材を有することにより、前記蓄熱材を内容物に接触させやすくなり、かつ、断熱容器全体の動きに対して、前記蓄熱材が内容物からずれにくくなるため、内容物に対する温度保持能が効果的に向上する。また、前記内部空間において断熱材が占有する部分に関しては、蓄熱材の有する熱エネルギーが消費されにくいため、より長く内容物の温度を保持することができる。また、内容物の緩衝材としての機能も発揮され、内容物を適切に保護することができる。
【0027】
本技術に係る断熱材としては、例えばスポンジ状材料などの多孔質体を採用し得るが、これに限定されず、断熱材として一般的に知られた断熱材を適宜選択することができる。
【0028】
(5)その他の構成
本技術に係る断熱容器は、所望の機能を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述した構成以外のその他の構成を備えていてもよい。その他の構成としては、例えば、断熱容器を持ちやすくするための持ち手、断熱容器の天面を閉じるための面ファスナー等のファスナー、蓄熱材を蓄熱材保持部に留めておくためのバンドや面ファスナー等が挙げられる。
【0029】
2.第1の実施形態に係る断熱容器
図1~3は、本技術の第1実施形態に係る断熱容器100を説明する図である。
図1は、天面が開いた状態の断熱容器100を表す斜視図であり、
図2は、天面が閉じた状態の断熱容器100を表す斜視図であり、
図3は、断熱容器100の断面図である。
【0030】
図1に示す通り、前記断熱容器100は、底面11、周壁12及び天面13によって内容物T(
図3参照)を収容可能な内部空間Sを形成する本体部10と、蓄熱材21を保持するための蓄熱材保持部20と、を備える。第1実施形態に係る断熱容器100は、例えば箱状である。前記底面11、周壁12及び天面13が略矩形板状であり、前記周壁12は、4つの側壁(第1側壁12a、第2側壁12b、第3側壁12c、第4側壁12d)で構成される。前記蓄熱材保持部20は、例えば、天面13の内面に設置され、前記蓄熱材保持部20に蓄熱材21が設置された場合、蓄熱材21の自重で蓄熱材保持部20が伸長するように変形する。
【0031】
図2及び
図3に示す通り、前記断熱容器100は、前記蓄熱材保持部20に前記蓄熱材21が設置された状態で、前記天面13を閉じると、前記蓄熱材21が前記内容物Tに追従するように前記蓄熱材保持部20が変形する。この構成により、前記蓄熱材21と前記内容物Tの距離が近くなり、前記内容物Tに対する温度保持能が効果的に向上する。
【0032】
3.第2の実施形態に係る断熱容器
図4は、本技術の第2の実施形態に係る断熱容器200の一例を表す断面図である。第2の実施形態に係る断熱容器200は、前記蓄熱材保持部20を4つ備えており、前記蓄熱材保持部20には、弾性を有する断熱材22が保持されている。それ以外は、第1の実施形態に係る断熱容器100と同様の構成を有する。したがって、上記1.断熱容器の構成、2.第1の実施形態に係る断熱容器において述べた説明が、第2実施形態に係る断熱容器200についても当てはまる。したがって、前記断熱容器200のその他の構成についての説明は省略する。
【0033】
前記蓄熱材保持部20が、複数設けられていることにより、内容物の高さが場所によって異なる場合でも、複数の蓄熱材がそれぞれの設置箇所から内容物Tに追従することによって、効率よく内容物Tの温度を保持することができる。
【0034】
前記蓄熱材保持部20に、弾性を有する断熱材22が保持されていることにより、前記蓄熱材21を内容物に接触させやすくなる。また、前記断熱容器200全体が大きく動いた場合にも、前記蓄熱材21が内容物Tからずれにくくなるため、内容物Tに対する温度保持能を効果的に向上することができる。また、前記内部空間Sにおいて断熱材22が占有する部分に関しては、蓄熱材の有する熱エネルギーが消費されにくいため、より長く内容物Tの温度を保持することができる。
【0035】
4.第3の実施形態に係る断熱容器
図5及び
図6は、本技術の第3実施形態に係る断熱容器300を説明する図である。
図5は、天面13が開いた状態の断熱容器300を表す斜視図であり、
図6は、断熱容器300の断面図である。第3の実施形態に係る断熱容器300は、前記天面13に設けられた前記蓄熱材保持部に断熱材22が保持されており、4つの側壁12a~12dにそれぞれ蓄熱材保持部20と蓄熱材21を備える。それ以外は、第1の実施形態に係る断熱容器100と同様の構成を有する。したがって、上記1.断熱容器の構成、2.第1の実施形態に係る断熱容器において述べた説明が、第3実施形態に係る断熱容器300についても当てはまる。したがって、前記断熱容器300のその他の構成についての説明は省略する。
【0036】
前記蓄熱材保持部20が、4つの側壁にそれぞれ設けられていることにより、内容物Tの幅が断熱容器に対して小さいが場合でも、複数の蓄熱材がそれぞれの設置箇所から内容物Tに追従することによって、効率よく内容物Tの温度を保持することができる。
【0037】
5.第4の実施形態に係る断熱容器
図7は、本技術の第4実施形態に係る断熱容器400を説明する断面図である。断熱容器400は、断熱容器300において、底面11に蓄熱材保持部20、断熱材22及び蓄熱材21を備える。これにより、内容物Tが多面的に蓄熱材21に接触又は接近することになり、更に内容物Tに対する温度保持能を効果的に向上することができる。
【0038】
6.実施例
以下、実施例を用いて本技術を更に具体的に説明する。なお、本技術は、以下に示す実施例の内容に何ら限定されるものではない。
【0039】
(1)断熱容器の作成
【0040】
<試験例1>
下記条件の保冷ボックスにおいて、天面に、
図1に示すような2つの蓄熱材保持部を設け、断熱容器を作成した。
図8は本技術の実施例の概略図であり、(a)は、試験例1の断熱容器(保冷ボックス)の断面図を示す。
図8(a)に示すように、前記蓄熱材保持部は、蓄熱材(保冷材)を保持した際、天面から蓄熱材までの長さが150mmとなるように設けた。試験例1の断熱容器において、天面を閉じた場合、蓄熱材は内容物追従するように接する。さらに、前記断熱容器の底面には、蓄熱材を設けた。
【0041】
[保冷ボックスの仕様]
内寸:高さ235mm、幅355mm、奥行250mm、厚み30mm
内容量:21L
【0042】
[蓄熱材の仕様]
寸法:幅140mm、奥行195mm、厚み25mm
容積:0.6L
【0043】
<試験例2>
蓄熱材保持部について、蓄熱材を保持した際、天面から蓄熱材までの長さが25mmとなるように設けた点以外は、試験例1と同様の方法で、断熱容器(保冷ボックス)を作成した。
図8(b)に、試験例2の断熱容器(保冷ボックス)の断面図を示す。
図8(b)に示すように、試験例2の断熱容器において、天面を閉じた場合、蓄熱材(保冷材)は内容物に届かない天面付近に留まる。
【0044】
(2)物性測定
上記のように作製した断熱容器について、下記の方法を用いて保冷効果の評価を行った。
【0045】
予め予冷した保冷材(CAH-500-25:イノアック社製)、各試験例の断熱容器(保冷ボックス)の底部に2枚、蓄熱材保持部に各1枚、計4枚設置した。そして、底部の保冷材の上に、あらかじめ予冷した水入りペットボトル(内容量:500ml)2本を設置し、測定対象物とした。予冷条件を表1に示す。
【0046】
【0047】
この測定対象物を、外気温35℃雰囲気下において、経過時間に対する温度推移を調べた。温度測定箇所を表2に示す。
【0048】
【0049】
(3)結果及び考察
図9は、本技術の試験例の経過時間に対する温度推移のグラフを表す図である。
図9に示す通り、内容物の水の水温が、-15℃を上回った時間は、試験例2が4.17時間後であるのに対し、試験例1は8.17時間後であった。このことから、本発明に係る断熱容器において、蓄熱材保持部によって蓄熱材を内容物に追従させることができるため、内容物に対する温度保持能が効果的に向上することが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
100 断熱容器
10 本体部
11 底面
12 周壁
13 天面
20 蓄熱材保持部
21 蓄熱材
22 断熱材
S 内部空間
T 内容物