(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112151
(43)【公開日】2025-07-31
(54)【発明の名称】熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 15/00 20230101AFI20250724BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20250724BHJP
【FI】
H10N15/00
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006277
(22)【出願日】2024-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 優花
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 曄
(57)【要約】
【課題】複数の熱発電素子同士の断線や短絡が抑制された熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】熱利用発電モジュール10は、第1絶縁膜22及び第2絶縁膜32と、熱励起電子及び正孔を生成する半導体層Aと、電子輸送材料を含む導電ポリマー層Cと、半導体層A及び導電ポリマー層の間に配され電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層Bとが積層され、1絶縁膜22と第2絶縁膜32との間に平面視で互いに間隔をあけて配された複数の熱利用発電素子と、隣り合う熱利用発電素子の半導体層Aと導電ポリマー層Cとを接続する導電体と、を備え、導電体で接続される熱利用発電素子同士は、一方の熱利用発電素子の半導体層Aが第1絶縁膜22側に配され、他方の熱利用発電素子の半導体層Aが第2絶縁膜32側に配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁膜及び第2絶縁膜と、
熱励起電子及び正孔を生成する半導体層と、電子輸送材料を含む導電ポリマー層と、前記半導体層及び前記導電ポリマー層の間に配され電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層とが積層され、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に平面視で互いに間隔をあけて配された複数の熱利用発電素子と、
隣り合う前記熱利用発電素子の前記半導体層と前記導電ポリマー層とを接続する導電体と、
を備え、
前記導電体で接続される前記熱利用発電素子同士は、一方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第1絶縁膜側に配され、他方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第2絶縁膜側に配されている、
熱利用発電モジュール。
【請求項2】
隣接する前記熱利用発電素子同士は、一方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第1絶縁膜側に配され、他方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第2絶縁膜側に配されている、
請求項1に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項3】
前記導電体は、一端が前記半導体層の一部と重ね合わされ、他端が導電ポリマー層の一部と重ね合わされている、
請求項1に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項4】
前記導電体は、前記導電ポリマー層の一部を延出させて形成されている、
請求項1に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項5】
前記半導体層は、熱溶融するポリマーを含んでいる、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項6】
半導体層と電解質層と導電ポリマー層とが積層された複数の熱利用発電素子と、前記複数の熱利用発電素子を電気的に接続する導電体とを含んだ発電素子パターンを有する熱利用発電モジュール製造方法であって、
第1絶縁膜に前記導電ポリマー層及び前記導電体が前記第1絶縁膜側に配置されるように前記発電素子パターンの一部である第1パターンを形成すると共に、第2絶縁膜に前記導電ポリマー層及び前記導電体が前記第2絶縁膜側に配置されるように前記発電素子パターンの残部である第2パターンを形成し、
前記第1パターンと前記第2パターンとで前記発電素子パターンが形成されるように前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜を接合する、
熱利用発電モジュール製造方法。
【請求項7】
前記半導体層は熱溶融するポリマーを含み、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合時に、前記第1パターンの前記半導体層を前記第2パターンの前記第2絶縁膜へ熱溶融により溶着し、前記第2パターンの前記半導体層を前記第1パターンの前記第1絶縁膜へ熱溶融により溶着する、
請求項6に記載の熱利用発電モジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱又は工場の排熱等を利用した熱利用発電として、ゼーベック効果を利用した方法が挙げられる。また、ゼーベック効果を利用しない熱利用発電として、下記特許文献1に開示される熱利用発電素子が挙げられる。下記特許文献1では、電解質と、熱電変換材料とを組み合わせた熱利用発電素子によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが開示されている。このような熱利用発電素子を電子部品の電源として用いることによって、例えば一般的な電池が劣化しやすい高温環境下(例えば、50℃以上)においても、当該電子部品に対して安定した電力を供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような、技術の実用化として、発電装置のモジュール化が求められており、特に、電解質と熱電変換材料を有する複数の熱発電素子を接続する場合、断線や短絡の防止が求められる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、複数の熱発電素子同士の断線や短絡が抑制された熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の熱利用発電モジュールは、第1絶縁膜及び第2絶縁膜と、熱励起電子及び正孔を生成する半導体層と、電子輸送材料を含む導電ポリマー層と、前記半導体層及び前記導電ポリマー層の間に配され電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層とが積層され、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に平面視で互いに間隔をあけて配された複数の熱利用発電素子と、隣り合う前記熱利用発電素子の前記半導体層と前記導電ポリマー層とを接続する導電体と、を備え、前記導電体で接続される前記熱利用発電素子同士は、一方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第1絶縁膜側に配され、他方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第2絶縁膜側に配されている。
【0007】
第1態様の熱利用発電モジュールでは、導電体で接続される熱利用発電素子同士は、一方の熱利用発電素子の半導体層が第1絶縁膜側に配され、他方の熱利用発電素子の半導体層が第2絶縁膜側に配されている。したがって、一方の熱利用発電素子と他方の熱利用発電素子とを接続する導電体を、積層方向の一方側に形成することができる。すなわち、導電体を、第1絶縁膜側または第2絶縁膜側の一方に寄せて形成することができる。これにより、簡易に断線や短絡が抑制された熱利用発電モジュールを得ることができる。
【0008】
本開示の第2態様の熱利用発電モジュールは、第1態様の熱利用発電モジュールにおいて、隣接する前記熱利用発電素子同士は、一方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第1絶縁膜側に配され、他方の前記熱利用発電素子の前記半導体層が前記第2絶縁膜側に配されている。
【0009】
第2態様の熱利用発電モジュールによれば、隣接する熱利用発電素子同士を接続する導電体を、第1絶縁膜側または第2絶縁膜側の一方に寄せて形成することができる。これにより、隣接する熱利用発電素子同士を同じ絶縁膜上の導電体で接続することができ、簡易な接続パターンとすることができる。
【0010】
本開示の第3態様の熱利用発電モジュールは、第1態様又は第2の態様の熱利用発電モジュールにおいて、前記導電体は、一端が前記半導体層の一部と重ね合わされ、他端が導電ポリマー層の一部と重ね合わされている。
【0011】
第3態様の熱利用発電モジュールによれば、導電体の一部を熱利用発電素子に積層して容易に形成することができる。
【0012】
本開示の第4態様の熱利用発電モジュールは、第1態様又は第2の態様の熱利用発電モジュールにおいて、前記導電体は、前記導電ポリマー層の一部を延出させて形成されている。
【0013】
第4態様の熱利用発電モジュールによれば、導電ポリマー層で導電体を兼ねることができる。
【0014】
本開示の第5態様の熱利用発電モジュールは、前記半導体層は、熱溶融するポリマーを含んでいる。
【0015】
第5態様の熱利用発電モジュールによれば、半導体層に含まれるポリマーを溶融させて第1絶縁膜、第2絶縁膜と熱融着させることにより、導電体と半導体層との接続を適切に行って、断線を抑制することができる。
【0016】
本開示の第6態様の熱利用発電モジュールの製造方法は、半導体層と電解質層と導電ポリマー層とが積層された複数の熱利用発電素子と、前記複数の熱利用発電素子を電気的に接続する導電体とを含んだ発電素子パターンを有する熱利用発電モジュール製造方法であって、第1絶縁膜に前記導電ポリマー層及び前記導電体が前記第1絶縁膜側に配置されるように前記発電素子パターンの一部である第1パターンを形成すると共に、第2絶縁膜に前記導電ポリマー層及び前記導電体が前記第2絶縁膜側に配置されるように前記発電素子パターンの残部である第2パターンを形成し、前記第1パターンと前記第2パターンとで前記発電素子パターンが形成されるように前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜を接合する。
【0017】
第6態様の熱利用発電モジュールの製造方法では、導電ポリマー層及び導電体が第1絶縁膜側に配置されるように発電素子パターンの一部である第1パターンを形成し、導電ポリマー層及び導電体が第1絶縁膜側に配置されるように発電素子パターンの残部である第2パターンを第2絶縁膜に形成し、第1絶縁膜と前記第2絶縁膜を接合する。したがって、導電体を、第1絶縁膜側または第2絶縁膜側の一方に寄せて形成することができるので、簡易に断線や短絡が抑制された熱利用発電モジュールを製造することができる。
【0018】
本開示の第7態様の熱利用発電モジュールの製造方法は、第6態様の熱利用発電モジュールの製造方法において、前記半導体層は熱溶融するポリマーを含み、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との接合時に、前記第1パターンの前記半導体層を前記第2パターンの前記第2絶縁膜へ熱溶融により溶着し、前記第2パターンの前記半導体層を前記第1パターンの前記第1絶縁膜へ熱溶融により溶着する。
【0019】
第7態様の熱利用発電モジュールの製造方法によれば、半導体層に含まれるポリマーを溶融させて第1絶縁膜、第2絶縁膜と溶着させることにより、導電体との接続を適切に行って、断線を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本開示によれば、複数の熱発電素子同士の断線や短絡が抑制された熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の熱利用発電モジュールの概略平面図である。
【
図3A】第1実施形態の熱利用発電モジュールの第1パターンの概略平面図である。
【
図3B】第1実施形態の熱利用発電モジュールの第2パターンの概略平面図である。
【
図4】第1実施形態の熱利用発電モジュールの製造工程の説明図である。
【
図5】第2実施形態の熱利用発電モジュールの概略平面図である。
【
図7】第3実施形態の熱利用発電モジュールの概略平面図である。
【
図9】第4実施形態の熱利用発電モジュールの概略平面図である。
【
図10A】第4実施形態の熱利用発電モジュールの製造工程の説明図である。
【
図10B】第4実施形態の熱利用発電モジュールの製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態に係る熱利用発電モジュール、及び、熱利用発電モジュール製造方法について説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1には、第1実施形態(以下、本実施形態)の熱利用発電モジュール10の概略平面図が示されている。
図1では、説明の便宜上、後述する第1絶縁膜22を除いた図としている(第1絶縁膜22は二点鎖線で示される部分)。熱利用発電モジュール10は、全体として、平面視で長方形状とされており、第1絶縁膜22、第2絶縁膜32、複数(本実施形態では総数6)の熱利用発電素子24、26、28、34、36、38、及び、導電体42、43、44を備えている。
【0024】
第1絶縁膜22、第2絶縁膜32は、シート状であり、平面視で熱利用発電モジュール10の外形を構成する。シート状であり、第1絶縁膜22、第2絶縁膜32は、絶縁性を有し、ポリマーをコーティングした金属(アルミニウム、銅など)のシート等を使用することができる。第1絶縁膜22、第2絶縁膜32の厚みは、例えば、0.1μm以上5000μm以下であることが好ましい。
【0025】
熱利用発電素子24、26、28、34、36、38は、熱励起電子及び正孔を生成する半導体層、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層、及び電子輸送材料を含む導電ポリマー層を含む。各々の熱利用発電素子24、26、28、34、36、38について、半導体層は末尾Aの符号で示し、電解質層は末尾Bの符号で示し、導電ポリマー層は末尾Cの符号で示す。例えば、熱利用発電素子24では、半導体層24A、電解質層24B、導電ポリマー層24Cと表す。また、すべての熱利用発電素子24、26、28、34、36、38に共通して各層の説明をする場合には、単に半導体層A、電解質層B、導電ポリマー層Cと表す。電解質層Bは、半導体層Aと導電ポリマー層Cの間に配されている。
なお、熱利用発電素子は、半導体層A、電解質層B、導電ポリマー層Cを積層した一層で形成されていてもよいし、半導体層A、電解質層B、導電ポリマー層Cの組み合わせを複数層(例えば2層、3層)積層したもので形成されていてもよい。
【0026】
熱利用発電素子24、26、28、34、36、38は、
図1に示されるように、2×3列に互いに離間配置されており、
図2に示されるように、第1絶縁膜22と第2絶縁膜32の間に挟持されている。熱利用発電素子24、26、28は、2列×3列の並びにおいて、互いに隣接しない位置に配置され、熱利用発電素子34、36、38が、各熱利用発電素子24、26、28の間隔を埋めるように配置されている。
【0027】
熱利用発電素子24、26、28は、半導体層A側が第2絶縁膜32と接着され、導電ポリマー層C側が第1絶縁膜22と接着されている。熱利用発電素子34、36、38は、導電ポリマー層C側が第2絶縁膜32と接着され、半導体層A側が第1絶縁膜22と接着されている。すなわち、熱利用発電素子24、26、28と、熱利用発電素子34、36、38は、半導体層A、電解質層B、導電ポリマー層Cの積層順が逆になっている。
【0028】
導電体42A、42B、42C、43A、43Bは、隣り合う熱利用発電素子の一方の半導体層Aと他方の導電ポリマー層Cを接続するように、一方の半導体層Aの一部に積層されると共に他方の導電ポリマー層Cの一部に積層されている。導電体42A、42B、42Cは、第1絶縁膜22上に形成されており、導電体43A、43B、44A、44Bは、第2絶縁膜32上に形成されている。
【0029】
導電体42Aは、半導体層34Aと導電ポリマー層26Cを接続し、導電体42Bは、半導体層38Aと導電ポリマー層28Cを接続し、導電体42Cは、半導体層36Aと導電ポリマー層24Cを接続している。導電体43Aは、半導体層26Aと導電ポリマー層38Cを接続し、導電体43Bは、半導体層28Aと導電ポリマー層36Cを接続している。導電体44Aは、一端が導電ポリマー層34Cと接続されている。導電体44Bは、一端が半導体層24Aと接続されている。
【0030】
一方の端子の導電体44Aから熱利用発電素子34、26、38、28、36、24を経て他方の導電体44Bまで直列に接続されている。
【0031】
(半導体層)
半導体層Aは、半導体を含む。本開示において 「半導体」は、熱により熱励起電子及び正孔を生成することのできる材料を意味する。具体的には、 金属半導体、テルル化合物半導体、シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体、シリサイド化合物半導体、スクッテルダイト化合物半導体、クラスレート化合物半導体、ホイスラー化合物半導体、ハーフホイスラー化合物半導体、金属酸化物半導体、有機半導体及びその他の半導体を挙げることができる。本開示で用いる半導体は熱電変換材料として機能するものである。 金属半導体としては、Si半導体、Ge半導体を挙げることができる。
【0032】
テルル化合物半導体としては、Bi-Te化合物(例えば、Bi2Te3、Sb2Te3、CsBi4Te6、Bi2Se3、Bi0.4Sb1.6Te3、Bi2(Se,Te)3、(Bi,Sb)2(Te,Se)3、(Bi,Sb)2Te3、又はBi2Te2.95Se0.05)、Pb-Te化合物(例えば、PbTe、又はPb1-xSnxTe)、SnTe、Ge-Te、AgSbTe2、Ag-Sb-Ge-Te化合物(例えば、GeTe-AgSbTe2(TAGS))、Ga2Te3、(Ga1-xInx)2 Te3、Tl2Te-Ag2Te、Tl2Te-Cu2Te、Tl2Te-Sb2Te3、Tl2Te-Bi2Te3、Ti2Te-GeTe、Ag8Tl2Te5、Ag9Tl Te5、Tl9BiTe6、Tl9SbTe6、Tl9CuTe5、Tl4SnTe3、 Tl4PbTe3、又はTl0.02Pb0.98Teを挙げることができる。
【0033】
シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体としては、SixGe1-x、又は SiGe-GaPを挙げることができる。
【0034】
シリサイド化合物半導体としては、β-FeSi2化合物(例えば、β-FeSi2、 Fe1-xMnxSi2、Fe0.95Mn0.05Si(2-y)Aly、FeSi(2-y)Aly、Fe1-yCoySi2)、Mg2Si、MnSi1.75-x、Ba8Si46、Ba8Ga16Si30、又はCrSi2を挙げることができる。
【0035】
スクッテルダイト化合物半導体としては、式TX3(式中、TはCo、Fe、Ru、Os、Rh、及びIrからなる群から選択される遷移金属であり、XはP、As、及びSbからなる群から選択されるプニクトゲンである)で表される化合物、前記化合物の派生物である式RM4X12(式中、RはSC、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、E u、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される希土類であり、MはFe、Ru、Os、及びCoからなる群から選択され、XはP、As、及びSbからなる群から選択される)で表される化合物、YbyFe4-xCoxSb12、(CeFe3CoSb12)1-x(MoO2)x又は(CeFe3CoSb12)1-x(WO2)xを挙げることができる。
【0036】
クラスレート化合物半導体としては、式M8X46(Mは、Ca、Sr、Ba、及びE uからなる群から選択され、XはSi、Ge、及びSnからなる群から選択される)で表される化合物、前記化合物の派生物である式(II)8(III)16(IV)30(式中、IIはII族元素であり、IIIはIII族元素であり、IVはIV属元素である)で表される化合物を挙げることができる。前記式(II)8(III)16(IV)30の化合物としては、例えばBa8GaxGe46-x、Ba8-x(Sr,Eu)xAu6Ge40、又はBa8-xEuxCu6Si40)を挙げることができる。
【0037】
ホイスラー化合物半導体としては、Fe2VAl、(Fe1-xRex)2VAl、又はFe2(V1-x-yTixTay)Alを挙げることができる。
【0038】
ハーフホイスラー化合物半導体としては、式MSiSn(式中、MはTi、Zr、及びHfからなる群から選択される)で表される化合物、式MNiSn(式中、MはTi又は Zrである)で表される化合物、式MCoSb(式中、MはTi、Zr、及びHfからなる群から選択される)で表される化合物、又は式LnPdX(式中、LnはLa、Gd、及びErからなる群から選択され、XはBi又はSbである)で表される化合物を挙げることができる。
【0039】
金属酸化物半導体としては、In2O3-SnO2、(CaBi)MnO3、Ca(M n、In)O3、NaxV2O5、V2O5、ZnMnGaO4およびその派生物、La RhO3、LaNiO3、SrTiO3、SrTiO3:Nb、Bi2Sr2Co2Oy、NaxCoO2、NaCo2O4、CaPd3O4、式CaaM1bCoCM2
dAgeOf(式中、M1はNa、K、Li、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Sr、Ba、Al、Bi、Yおよび希土類から成る群から選択される一種または二種以上の元素であり、M2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Mo、W、 Nb、TaおよびBiから成る群から選択される一種または二種の元素であり、2.2≦a≦3.6、0≦b≦0.8、2≦c≦4.5、0≦d≦2、0≦e≦0.8、8≦f≦10である)で表される化合物、ZnO、Na(Co,Cu)2O4、ZnAlO、Zn1-xAlxO、又はLa1.98Sr0.02CuO4を挙げることができる。
【0040】
有機半導体としては、有機ペロブスカイト、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、又はポリヒロールを挙げることができる。
【0041】
その他の半導体としては、Co及びSbを含む合金(例えば、CoSb3、CeFe3 CoSb12、CeFe4CoSb12、又はYbCo4Sb12)、Zn及びSbを含む合金(例えば、ZnSb、Zn3Sb2、又はZn4Sb3)、Bi及びSbを含む合金(例えば、Bi88Sb12)、CeInCu2、(Cu,Ag)2Se、Gd2Se3、CeRhAs、又はCeFe4Sb12、Li7.9B105、BaB6、SrB6、CaB6、AlPdRe化合物(例えば、Al71Pd20(Re1-xFex)9)、AlCuFe準結晶、Al82.6-xRe17.4Six1/1-立法近似結晶、Y bAl3、YbMnxAl3、β-CuAgSe、B4C/Ba3C、(Ce1-xLax)Ni2、又は(Ce1-xLax)In3を挙げることができる。
【0042】
半導体層は、半導体が適当な温度を付与されることにより発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成できる限りにおいて、半導体以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、熱電変換材料を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、熱電変換材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。また、製造工程で用いる溶媒が残存していてもよい。本発明に用いる第1層は実質的に熱電変換層として機能するものである。
【0043】
本発明の半導体層は樹脂を含む。樹脂としては、限定されるものではないが、前記バインダーが挙げられる。
【0044】
(電解質層)
電解質層は、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む。本明細書において「電荷輸送イオン対」は、価数が異なる安定な2つのイオンであり、一方のイオンが酸化または還元されて他方のイオンとなり、電子および正孔を運ぶことができるイオン対を意味する。価数が異なる同じ元素のイオンであってもよい。
【0045】
本開示の固体電解質に含まれるイオン源は、金属イオンである限りにおいて特に限定されるものではなく、例えば銅イオン、鉄イオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンカルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、パラジウム、チタンイオン、アルカリ金属イオン、レアアース金属イオンが挙げられる。例えば銅イオン又は鉄イオンとしては、一価銅イオン、二価銅イオン、二価鉄イオン、又は三価鉄イオンが挙げられる。しかしながら、銅イオン又は鉄イオンは価数が異なる安定な2種のイオンが好ましい。一方のイオンが酸化または還元されて他方のイオンとなり、電子と正孔を運ぶことができるからである。
【0046】
従って、銅イオンの場合、一価銅イオン及び二価銅イオンが好ましく、鉄イオンの場合、二価鉄イオン及び三価鉄イオンが好ましい。一価銅イオンとして、例えばCuCl、C uBr、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)又は硫酸銅(I)を用いることができる。二価銅イオンとして、CuCl2、CuTSFI2、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)又は銅( II)アセチルアセトナートを用いることができる。二価鉄イオンとして、Fe(C5H5)2(フェロセン)、K4[Fe(CN)6]、鉄(II)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)硫酸鉄(II)又は酢酸鉄(II)を用いることができる。三価鉄イオンとして、FeCl3、K3[Fe(CN)6]、鉄(III)アセチルアセトナート又は硫酸鉄(III)を用いることができる。
【0047】
イオン源の濃度は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば前記ポリマー等に対して、0.01~98モル%となるように添加することが好ましい。前記範囲であることにより、イオン源が効率良く電子と正孔を運ぶことができる。
【0048】
(電解質)
電解質としては、固体電解質又は電解質溶液を含む。電解質は、電荷輸送イオン対の2つのイオンを輸送できる限りにおいて限定されるものではない。
【0049】
すなわち、電解質層に用いる電解質は、熱電発電素子に使用される熱電変換材料の価電子帯電位に対して、酸化還元電位が適当な位置にあり、電荷輸送イオン対が電解質内を行き来できる限りにおいて、特に限定されるものではない。なお、電解質は、熱電変換材料が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、物理的及び化学的に安定であるものが好ましい。
【0050】
電解質としては、その態様の違いにより、固体電解質、又は電解質溶液(液体電解質)であってよい。ここで、電解質は温度の違いにより、電解質溶液(液体電解質)の態様であったり、固体電解質の態様であったりする。すなわち、電解質溶液(液体電解質)に含まれる化合物と固体電解質に含まれる化合物とは、重複するものである。また、電解質は、溶融塩、イオン液体、又は深共晶溶媒などを含む。溶融塩とは、陽イオンと陰イオンからなる塩で、溶融状態にあるものを意味するが、溶融塩の中でも比較的融点の低いもの(例えば、100℃以下のもの、又は150℃以下のもの)をイオン液体と称するが、本明細書では、溶融塩も固体の状態のものは固体電解質とし、溶液状のものは電解質溶液(液体電解質)とする。以下に電解質溶液(液体電解質)、固体電解質、及び溶融塩について、具体的に例示するが、これらは重複することがある。
【0051】
電解質溶液は、半導体層内の半導体が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、溶液(液体)の状態のものを使用する。具体的には、電解質溶液として、限定されるものではないが、メトキシドイオン、水素イオン、アンモニウムイオン、ヒリジニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、フッ素イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、臭素イオンを挙げることができる。
【0052】
固体電解質は、半導体層内の半導体が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、電荷輸送イオン対が内部を移動できる固体状態のものを使用する。高温固体電解質を用いることにより、高温で熱励起電子及び正孔を生成する熱電発電素子に用いることができる。具体的には、固体電解質としては、限定されるものではないが、ナトリウムイオン伝導体、銅イオン伝導体、リチウムイオン伝導体、銀イオン伝導体、水素イオン伝導体、ストロンチウムイオン伝導体、アルミニウムイオン伝導体、フッ素イオン伝導体、塩素イオン伝導体、又は酸化物イオン伝導体などを挙げることができる。具体的な固体電解質としては、例えばRbAg4I5、Li3N、Na2O・11Al2O3、Sr-βアルミナ、Al(WO4)3、PbF2、PbCl2、(ZrO2)0.9(Y2O3)0.1、(Bi2O3)0.75(Y2O3)0.25、CuZr2(PO4)3、CuTi2(PO4)3、CuxNb1-xTi1+x(PO4)3、H0.5Cu0.5Zr2(PO4)3、Cu1+xCrxTi2-x(PO4)3、Cu0.5TiZr(PO4)3、CuCr2Zr(PO4)3、Cu2SCZr(PO4)3、CuSn2(PO4)3、CuHf2(PO4)3、Li7La3Zr2O12、Li7La3Zr2-xNbxO12、Li7La3Zr2-xTaxO12、Li5La3Ta2O12、Li0.33La0.55TiO3、Li1.5Al0.5G e1.5P3O12、Li1.3Al0.3Ti1.7P3O12、Li3PO4(LiPON)、Li4SiO4-Li3PO4、Li4SiO4、又はLi3BO3などを挙げることができる。
【0053】
また、固体電解質又は電解質溶液として、溶融塩を用いることができる。比較的低温で用いる熱電発電素子の場合、イオン液体を用いることも可能である。イオン液体として、深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvents:DES)を用いることができる。
【0054】
溶融塩としては、イミダゾリウムカチオン、ヒリジニウムカチオン、ヒペリジニウムカチオン、ヒロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオン、及びカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ハロゲンアニオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びビス(フルオロスルホニル)イミドからなる群から選択される少なくとも1つのアニオンを含むものを挙げることができる。本発明における電解質は、正孔伝達性材料として機能するものである。
【0055】
電解質層は、熱電変換材料で生成された正孔を輸送できる限りにおいて、限定されるものではなく、固体電解質または電解質溶液以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、例えば第2層を作製する場合に電解質を溶解又は分散する溶媒(水、メタノール、トルエン、テトラヒドロフランなど)、電解質を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、正孔伝達性材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。本発明に用いる第2層は実質的に正孔輸送層として機能するものである。
【0056】
電解質層は、樹脂を含む。樹脂としては、限定されるものではないが、前記バインダー又は金属塩(イオン源)、セパレーター(樹脂製)または絶縁セラミック等が挙げられる。
【0057】
電解質層は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾルゲル法、又はスヒンコート法によって作製することができる。例えば、後述のCuZr2(PO4)3はゾルゲル法によって作製し、得られたゾルをスキージ法を用いて、層状の電解質層を調製した。
【0058】
また、電解質が電解質溶液(液体電解質)の場合、第2層は液相となる。第2層が液相の場合、熱電発電素子における第2層は、熱電発電装置やサーモ電池、又は熱電発電モジュールの作製時に調製することが好ましい。すなわち、電解質溶液(液体電解質)を保持するための槽を設けることによって、第2層を作製することができる。
【0059】
(導電ポリマー層)
導電ポリマー層は、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、ポリチオフェン系導電ポリマー、ポリアセチレン系導電ポリマー、ポリアニリン系導電ポリマー、ポリヒロール系導電ポリマーが挙げられる。具体的な電子輸送材料としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン等が挙げられる。
【0060】
導電ポリマー層は、熱電変換材料で生成された熱励起電子を輸送できる限りにおいて、電子輸送材料以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、電子輸送材料を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、電子輸送材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。また、製造工程で用いる溶媒が残存していてもよい。本発明に用いる第3層は実質的に電子輸送層として機能するものである。
【0061】
本開示の熱電発電素子においては、前記電子輸送材料の電子伝導電位が半導体層内の半導体の伝導帯電位と同じであるか、又は正である。従って、電子輸送材料は熱励起電子を輸送することができる。
【0062】
導電ポリマー層は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、単結晶成長法、又はスヒンコート法によって作製することができる。スヒンコート法を用いる場合、オキサジアゾール誘導体をアセトンなどの極性溶媒に溶解し、その溶液を、基板又は第1層などにスヒンコートすることにより、導電ポリマー層を作製することができる。
【0063】
<製造方法>
図3Aに示されるように、第1絶縁膜22の所定の位置に、導電体42A、42B、42Cを形成し、その上に、熱利用発電素子24、26、28を形成する。このとき、導電ポリマー層24C、26C、28C側を、第1絶縁膜22と接合させると共に、導電体42A、42B、42Cの一端部とオーバーラップさせて接続させる。第1絶縁膜22上に形成されたパターンを第1パターン20と称する。
【0064】
また、
図3Bに示されるように、第2絶縁膜32の所定の位置に、導電体43A、43B、44A、44Bを形成し、その上に、熱利用発電素子34、36、38を形成する。このとき、導電ポリマー層C側を、第2絶縁膜32と接合させると共に、導電体43A、43B、44Aとオーバーラップさせて接続させる。第2絶縁膜32上に形成されたパターンを第2パターン30と称する。
【0065】
そして、第1パターン20と第2パターン30とが鏡合わせになるように(
図4参照)、各々の半導体層Aを、導電体42A、42B、42C、43A、43Bの他端部、及び導電体44Bの一端部とオーバーラップさせて接続すると共に、第1絶縁膜22または第2絶縁膜32と接着させる。このときの接着は、加熱により半導体層Aに含まれるポリマーを溶融させ、第1絶縁膜22または第2絶縁膜32と熱融着させる。
【0066】
<作用効果>
このように、本実施形態の熱利用発電モジュール10では、導電体で互いに接続される熱利用発電素子の一方の半導体層Aと他方の導電ポリマー層Cが、同じ絶縁膜(第1絶縁膜22または第2絶縁膜32)上に配されている。したがって、接続用の導電体を、同一絶縁膜に形成することができ、積層方向を跨いで導電体を京成する場合と比較して、簡易に断線や短絡を抑制することができる。
【0067】
また、隣接する熱利用発電素子同士を同じ絶縁膜上の導電体で接続しているので、簡易な接続パターンとすることができる。
【0068】
また、本実施形態の熱利用発電モジュール10では、半導体層Aに含まれるポリマーを溶融させ、第1絶縁膜22または第2絶縁膜32と熱融着させるので、導電体と半導体層Aとの接続を適切に行って、断線を抑制することができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に本開示の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号を付して図示し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
第2実施形態の熱利用発電モジュール12は、
図5に示されるように、導電体42A、43A、42B、43B、42C、に代えて、導電体26D、38D、28D、36D、24D、を備えている。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0071】
導電体26D、38D、28D、36D、24D、は、導電ポリマー層26C、38C、28C、36C、24C、の一部を延出させて隣接する半導体層Aと接続させる導電体Dを形成する。すなわち、
図6の熱利用発電素子26と38の接続で示されているように、熱利用発電素子38の導電ポリマー層38Cの一部が熱利用発電素子26へ向かって延出形成されており、半導体層26Aが重ねられ積層される。
【0072】
第2実施形態の熱利用発電モジュール12によれば、導電ポリマー層Cで導電体を兼ねることができる。
【0073】
<第3実施形態>
次に本開示の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号を付して図示し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
第3実施形態の熱利用発電モジュール13は、
図7に示されるように、熱利用発電素子24、26、28、34、36、38の各層である半導体層A、電解質層B、導電ポリマー層Cが、ずらして積層されている。具体的には、導電体で接続される導電ポリマー層Cと半導体層Aとが導電体が配置される側で接近し、導電体が配置されない側については離れるようにずらして配置される。
【0075】
図8には、熱利用発電素子26と38の例が示されている。熱利用発電素子26と38では、導電体43Aで接続される導電ポリマー層38Cと半導体層26Aとが接近し、反対側の導電ポリマー層26Cと半導体層38Aが離れるようにずらし配置されている。導電ポリマー層26Cは、熱利用発電素子34側に近くなるように配置され、導電体42Aと接続される。
【0076】
第3実施形態の熱利用発電モジュール13によれば、導電体の意図せぬ層との接触による短絡を抑制することができる。
【0077】
<第4実施形態>
次に本開示の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号を付して図示し、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図9には、第4実施形態の熱利用発電モジュール14の概略平面図が示されている。第4実施形態では、第1実施形態の熱利用発電素子24、26、28、34、36、38の各々が2分割され、一対の熱利用発電素子が並列接続されている。分割された各々の熱利用発電素子の末尾を-1,-2で区別し、一対の熱利用発電素子として、2つをまとめて熱利用発電素子対と称する。例えば、一対の熱利用発電素子24-1、24-2を熱利用発電素子対24と称する。
【0079】
図9では、説明の便宜上、後述する第1絶縁膜22を除いた図としている(第1絶縁膜22は二点鎖線で示される部分)。熱利用発電モジュール14は、全体として、平面視で長方形状とされており、第1絶縁膜22、第2絶縁膜32、複数(本実施形態では総数12)の熱利用発電素子24-1、24-2、26-1、26-2、28-1、28-2、34-1、34-2、36-1、36-2、38-1、38-2、及び、導電体52A、52B、52C、53A、53B、44A、44B、44Cを備えている。
【0080】
各熱利用発電素子は、
図9に示されるように、2×6列に互いに離間配置されており、第1絶縁膜22と第2絶縁膜32の間に挟持されている。なお、本実施形態では2×6列としたが、必要電圧に応じて任意にn×nやm×n(m≠n)の配列とすることができる。
【0081】
熱利用発電素子24-1、24-2、26-1、26-2、28-1、28-2は、半導体層A側が第2絶縁膜32と接着され、導電ポリマー層C側が第1絶縁膜22と接着されている。熱利用発電素子34-1、34-2、36-1、36-2、38-1、38-2は、導電ポリマー層C側が第2絶縁膜32と接着され、半導体層A側が第1絶縁膜22と接着されている。
【0082】
導電体52A、52B、52C、53A、53Bは、熱利用発電素子対の一方と他方の導電ポリマー層C同士または半導体層A同士を接続すると共に、隣り合う熱利用発電素子対の半導体層Aと導電ポリマー層Cを接続するように、一方の半導体層Aの一部に積層されると共に他方の導電ポリマー層Cの一部に積層されている。導電体52A、52B、52Cは、第1絶縁膜22上に形成されており、導電体53A、53B、44A、44B、44Cは、第2絶縁膜32上に形成されている。
【0083】
導電体52Aは、半導体層34-1A及び半導体層34-2Aと導電ポリマー層26C-1C及び導電ポリマー層26C-2Cとを接続している。導電体52Bは、半導体層38-1A及び半導体層38-2Aと導電ポリマー層28-1C及び導電ポリマー層28-2Cとを接続している。導電体52Cは、半導体層36A-1及び半導体層36A-2と導電ポリマー層24-1C及び導電ポリマー層24-2Cとを接続している。導電体53Aは、半導体層26-1A及び半導体層26-2Aと導電ポリマー層38-1C及び導電ポリマー層38-2Cとを接続している。導電体53Bは、半導体層28-1A及び半導体層28-2Aと導電ポリマー層36-1C及び導電ポリマー層36-2Cとを接続している。導電体44Aは、一端が導電ポリマー層34-1Cと接続されている。導電体44Cは、導電ポリマー層34-1Cと導電ポリマー層34-2Cを接続している。導電体44Aは、一端が導電ポリマー層34-1Cと接続されている。導電体44Bは、一端が半導体層24-1Aと接続されている。
【0084】
一方の端子の導電体44Aから熱利用発電素子対34、26、38、28、36、24を経て他方の導電体44Bまで直列に接続されている。
【0085】
<製造方法>
図10Aに示されるように、第1絶縁膜22の所定の位置に、導電体52A、52B、52Cを形成し、その上に、熱利用発電素子対24、26、28を形成する。このとき、導電ポリマー層C側を、第1絶縁膜22と接合させると共に、導電体52A、52B、52Cの接続端部とオーバーラップさせて接続させる。第1絶縁膜22上に形成されたパターンを第1パターン20-1と称する。
【0086】
また、
図10Bに示されるように、第2絶縁膜32の所定の位置に、導電体53A、53B、44A、44B、44Cを形成し、その上に、熱利用発電素子対34、36、38を形成する。このとき、導電ポリマー層C側を、第2絶縁膜32と接合させると共に、導電体53A、53B、44A、44Cとオーバーラップさせて接続させる。第2絶縁膜32上に形成されたパターンを第2パターン30-1と称する。
【0087】
そして、第1パターン20-1と第2パターン30-1とが鏡合わせになるように、各々の半導体層Aを、導電体52A、52B、52C、53A、53B、44B、44Cの接続端部とオーバーラップさせて接続すると共に、第1絶縁膜22または第2絶縁膜32と接着させる。このときの接着は、加熱により半導体層Aに含まれるポリマーを溶融させ、第1絶縁膜22または第2絶縁膜32と熱融着させる。
【0088】
第4実施形態の熱利用発電モジュール14によれば、導電体のパターンを変更することにより、容易に並列接続の部分を形成し、所望の電圧を得ることができる。
【0089】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
10、12、13、14 熱利用発電モジュール
20 第1パターン
22 第1絶縁膜
30 第2パターン
32 第2絶縁膜
24、26、28、34、36、38 熱利用発電素子
42、43、52、53 導電体
A 半導体層
B 電解質層
C 導電ポリマー層