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特開2025-112169車両の冷媒制御システム及び車両の冷媒制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112169
(43)【公開日】2025-07-31
(54)【発明の名称】車両の冷媒制御システム及び車両の冷媒制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20250724BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250724BHJP
【FI】
B60K11/02
B60L3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006309
(22)【出願日】2024-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 嘉▲樹▼
(72)【発明者】
【氏名】木原 勝也
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D038AC23
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD08
5H125EE41
5H125EE51
5H125FF22
(57)【要約】
【課題】減速機が発生する熱を活用して熱効率を向上できる車両の冷媒制御のための技術を提供する。
【解決手段】
第1冷媒流路20と、第2冷媒流路20と、変速機102をバイパスするバイパス流路11と、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とを接続する接続流路30と、第1切換部と、第2切換部と、第1冷媒流路10の冷媒を第2冷媒流路20に流通させるか否かを切り換える第3切換部と、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を切換制御することで冷媒の流れを制御するコントローラ100と、を備える。コントローラ100は、変速機温度及びユーザからの暖房要求を取得し、取得した変速機温度及び暖房要求に基づいて、変速機102を通過した冷媒を第2冷媒流路20に流通させるか否かを切り換えるように、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の冷媒制御システムであって、
冷媒を流通させる流路であって、ラジエータと、モータを有する駆動ユニットと、前記モータの回転を変速する変速機と、に接続する第1冷媒流路と、
前記第1冷媒流路とは独立した流路であって、前記モータに電力を供給可能なバッテリと、車室内の空気と熱交換を行う熱交換器と、に接続する第2冷媒流路と、
前記変速機をバイパスするように前記第1冷媒流路に設けられるバイパス流路と、
前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とを接続する接続流路と、
前記変速機に冷媒を流通させるか、前記バイパス流路を介して冷媒をバイパスさせるかを切り換える第1切換部と、
前記変速機及び前記駆動ユニットを通過した冷媒を前記ラジエータに流通させるか否かを切り換える第2切換部と、
前記第1冷媒流路の冷媒を、前記接続流路を介して前記第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換える第3切換部と、
前記第1切換部、前記第2切換部及び前記第3切換部を切換制御することで冷媒の流れを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、変速機温度及びユーザからの暖房要求を取得し、取得した前記変速機温度及び前記暖房要求に基づいて、前記変速機を通過した冷媒を前記第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換えるように、前記第1切換部、前記第2切換部及び前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記第1冷媒流路に設けられ、前記変速機を通過した冷媒の温度を検出する温度検出部を備え、
前記コントローラは、前記温度検出部によって検出された冷媒温度に基づいて前記変速機温度を取得する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記コントローラは、
取得した前記変速機温度が第1所定温度より大きく、かつ、前記暖房要求がある場合、
冷媒が前記変速機を通過するように前記第1切換部を制御し、
冷媒が前記ラジエータに流通しないように前記第2切換部を制御し、
前記変速機を通過した冷媒が前記第2冷媒流路に流通するように前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記コントローラは、
取得した前記変速機温度が前記第1所定温度よりも大きく、かつ、前記暖房要求がない場合、
冷媒が前記変速機を通過するように前記第1切換部を制御し、
冷媒が前記ラジエータに流通するように前記第2切換部を制御し、
冷媒が前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とで独立して流通するように前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記コントローラは、
取得した前記変速機温度が前記第1所定温度以下であり、かつ、前記暖房要求がない場合、
冷媒が前記変速機をバイパスするように前記第1切換部を制御し、
冷媒が前記ラジエータに流通しないように前記第2切換部を制御し、
冷媒が前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とで独立して流通するように前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項6】
請求項3に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記コントローラは、
取得した前記変速機温度が前記第1所定温度以下であり、かつ、前記暖房要求がある場合であって、前記変速機温度が下限温度よりも大きい場合は、
冷媒が前記変速機を通過するように前記第1切換部を制御し、
冷媒が前記ラジエータに流通しないように前記第2切換部を制御し、
前記変速機を通過した冷媒が前記第2冷媒流路に流通するように前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項7】
請求項3に記載の車両の冷媒制御システムであって、
前記コントローラは、
取得した前記変速機温度が前記第1所定温度以下であり、かつ、前記暖房要求がある場合であって、当該変速機温度が下限温度以下の場合は、
冷媒が前記変速機をバイパスするように前記第1切換部を制御し、
冷媒が前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とで独立して流通するように前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御システム。
【請求項8】
冷媒を流通させる流路であって、ラジエータと、モータを有する駆動ユニットと、前記モータの回転を変速する変速機と、に接続する第1冷媒流路と、
前記第1冷媒流路とは独立した流路であって、前記モータに電力を供給可能なバッテリと、車室内の空気と熱交換を行う熱交換器と、に接続する第2冷媒流路と、
前記変速機をバイパスするように前記第1冷媒流路に設けられるバイパス流路と、
前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とを接続する接続流路と、
前記変速機に冷媒を流通させるか、前記バイパス流路を介して冷媒をバイパスさせるかを切り換える第1切換部と、
前記変速機及び前記駆動ユニットを通過した冷媒を前記ラジエータに流通させるか否かを切り換える第2切換部と、
前記第1冷媒流路の冷媒を、前記接続流路を介して前記第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換える第3切換部と、を備え、
前記第1切換部、前記第2切換部及び前記第3切換部がコントローラにより切換制御されることで冷媒の流れを制御する車両の冷媒制御方法であって、
変速機温度及びユーザからの暖房要求を取得し、取得した前記変速機温度及び前記暖房要求に基づいて、前記変速機を通過した冷媒を前記第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換えるように、前記第1切換部、前記第2切換部及び前記第3切換部を制御する、
車両の冷媒制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷媒制御システム及び冷媒制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータを冷却する冷却液(冷媒)を、減速機の周囲にも流通させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2021/157236
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、減速機は潤滑油及び冷媒により冷却され、冷媒の熱はラジエータにより大気に排出される。このため、減速機から発生した熱を有効に活用することはできなかった。
【0005】
本発明は、減速機が発生する熱を活用して熱効率を向上できる車両の冷媒制御のための技術を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様は、車両の冷媒制御システムに適用される。この冷媒制御システムは、冷媒を流通させる流路であって、ラジエータと、モータを有する駆動ユニットと、モータの回転を変速する変速機と、に接続する第1冷媒流路と、第1冷媒流路とは独立した流路であって、モータに電力を供給可能なバッテリと、車室内の空気と熱交換を行う熱交換器と、に接続する第2冷媒流路と、を備える。また、変速機をバイパスするように第1冷媒流路に設けられるバイパス流路と、第1冷媒流路と第2冷媒流路とを接続する接続流路と、変速機に冷媒を流通させるか、バイパス流路を介して冷媒をバイパスさせるかを切り換える第1切換部と、を備える。また、変速機及び駆動ユニットを通過した冷媒をラジエータに流通させるか否かを切り換える第2切換部と、第1冷媒流路の冷媒を、接続流路を介して第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換える第3切換部と、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を切換制御することで冷媒の流れを制御するコントローラと、を備える。コントローラは、変速機温度及びユーザからの暖房要求を取得し、取得した変速機温度及び暖房要求に基づいて、変速機を通過した冷媒を第2冷媒流路に流通させるか否かを切り換えるように、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を制御する。
【0007】
本発明によれば、コントローラが、変速機の熱を回収した冷媒を、暖房に用いられる熱交換器を有する第2冷媒流路に流通させるか否かを制御する。これにより必要に応じて、減速機の熱を暖房で有効に活用することができるので、熱効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の車両の冷媒制御システムの構成ブロック図である。
図2図2は、制御装置が行う制御のフローチャートである。
図3図3は、熱回収制御における構成ブロック図である。
図4図4は、熱排出制御における構成ブロック図である。
図5図5は、保温制御における構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の冷媒制御システム1の説明図である。
【0011】
車両の冷媒制御システム1は、駆動ユニット101、減速機102及びラジエータ103に冷媒を流通させる第1冷媒流路10と、バッテリ111及び熱交換器112に冷媒を流通させる第2冷媒流路20と、第1冷媒流路10及び第2冷媒流路20の冷媒の流れを制御するコントローラ100と、を備えて構成される。
【0012】
駆動ユニット101は、モータ、インバータ装置等を備え、バッテリ111から電力の供給によりモータを回転させて出力する。駆動ユニット101の出力は減速機102により減速されて図示しない駆動輪を駆動し、車両を駆動する。車両の減速時には、駆動ユニット101における回生電力がバッテリ111に充電される。
【0013】
駆動ユニット101及び減速機102には第1冷媒流路10が接続される。第1冷媒流路10を循環する冷媒が駆動ユニット101及び減速機102内に形成された流路に流通することにより、駆動ユニット101及び減速機102と冷媒との間で熱交換が行われ、冷却(又は加熱)されることで、これらが適切な温度に保たれる。第1冷媒流路10にはウォーターポンプ15が接続され、第1冷媒流路10の冷媒が循環させられる。第1冷媒流路10にはラジエータ103が接続され、冷媒と大気との間で熱交換が行われ、第1冷媒流路10の冷媒の温度が低下させられる。なお、冷媒は、例えばLLCが用いられる。
【0014】
第1冷媒流路10は、ウォーターポンプ15とラジエータ103とを接続する第1流路10aと、ラジエータ103と減速機102とを接続する第2流路10bと、減速機102と駆動ユニット101とを接続する第3流路10cと、駆動ユニット101とウォーターポンプ15とを接続する第4流路10dとから構成される。ウォーターポンプ15により吐出された冷媒は、第1流路10a、ラジエータ103、第2流路10b、減速機102、第3流路10c、駆動ユニット101及び第4流路10dを経由して、再びウォーターポンプ15に戻る。冷媒は、図1において、反時計回りにこれらを循環する。
【0015】
第2流路10bと第3流路10cとの間には、冷媒が第2流路10bから第3流路10cへと減速機102をバイパスして流れるように構成されるバイパス流路11が接続される。第3流路10c及びバイパス流路11には、それぞれ、冷媒を減速機102に流通させるか減速機102をバイパスさせるか、を切り換える切換バルブ42及び切換バルブ41が接続される。切換バルブ42が開状態に、切換バルブ41が閉状態にそれぞれ切り換えられた場合には、冷媒は減速機102に流通する。切換バルブ42が閉状態に、切換バルブ41が開状態にそれぞれ切り換えられた場合には、冷媒は減速機102を流通することなく、バイパス流路11を流通する。これにより、冷媒が減速機102を流通するかバイパスするかを切り換える第1切換部が構成される。
【0016】
第2流路10bには、冷媒をラジエータ103に流通させるか否かを切り換える切換バルブ43が備えられる。切換バルブ43が閉状態に切り換えられた場合には、冷媒はラジエータ103に流通しない。これにより、冷媒がラジエータ103を流通するか否かを切り換える第2切換部が構成される。
【0017】
第3流路10cにおいて、減速機102と切換バルブ42との間には、減速機102を流通した冷媒の温度を検出する温度センサ51が備えられる。
【0018】
バッテリ111及び熱交換器112には第2冷媒流路20が接続される。第2冷媒流路20に循環する冷媒がバッテリ111内に形成された流路に流通することにより、バッテリ111と冷媒との間で熱交換が行われ、冷却(又は加熱)されることで、バッテリ111が適切な温度に保たれる。熱交換器112は、第2冷媒流路20の冷媒と客室内の空気との間で熱交換が行われ、ファン等による送風により客室内の空気を暖房する。すなわち、熱交換器112は、車両用暖房システムの一部を構成する。第2冷媒流路20にはウォーターポンプ25が接続され、第2冷媒流路20の冷媒が循環させられる。
【0019】
第2冷媒流路20は、ウォーターポンプ25とバッテリ111とを接続する第5流路20aと、バッテリ111と熱交換器112とを接続する第6流路20bと、熱交換器112とウォーターポンプ25とを接続する第7流路20cとから構成される。ウォーターポンプ25により吐出された冷媒は、第5流路20a、バッテリ111、第6流路20b、熱交換器112及び第7流路20cを経由して再びウォーターポンプ25に戻る。冷媒は、図1において、時計回りにこれらを循環する。
【0020】
第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間には、これらの間で冷媒を流通する接続流路30(30a、30b)が備えられる。接続流路30aは、第1冷媒流路10の第4流路10dと第2冷媒流路20の第7流路20cとの間に接続される。接続流路30bは、第1冷媒流路10の第2流路10bと第2冷媒流路20の第6流路20bとの間に接続される。
【0021】
接続流路30a、30bには、それぞれ切換バルブ31、32が備えられる。切換バルブ31及び切換バルブ32の開閉が制御されることで、接続流路30a、30bに冷媒が流通するか否かが切り換えられる。切換バルブ31及び切換バルブ32が共に開状態に切り換えられた場合には、冷媒は第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間を流通する。切換バルブ31及び切換バルブ32が共に閉状態に切り換えられた場合には、冷媒は第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間を流通することなく、これらを独立して流通する。これにより、冷媒が第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間を流通するか、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とで冷媒が独立して流通するか、が切り換えられる第3切換部が構成される。
【0022】
コントローラ100は、プロセッサや記憶装置を有して構成され、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、前述した切換バルブ31、32、41、42、43の開閉を制御して、第1冷媒流路10及び第2冷媒流路20における冷媒の流れを制御する。コントローラ100が実行する制御については後述する。
【0023】
ここで、減速機102が発生する熱について説明する。
【0024】
減速機102は、回転軸や歯車等を有し、その回転により熱を発生する。特に、減速機102を小型化した場合には、減速比が大きくなることで回転軸や歯車の回転が大きくなり、より熱を発することがある。従来、減速機に冷媒を循環させ、その熱をラジエータにより放出することで減速機の温度を低下させることは行われていたが、その場合、減速機から回収した熱が有効に活用されない。また、必要以上に減速機の熱を回収してしまうと減速機温度が低下し、潤滑油の粘度上昇によるフリクションが増加し、効率がかえって悪くなるという問題もあった。
【0025】
そこで本実施形態では、次に説明するような制御を行うことで、車両の熱効率を向上させた。
【0026】
図2は、コントローラ100が実行する制御のフローチャートである。このフローチャートは、コントローラ100において、所定の周期(例えば10ms)で実行される。
【0027】
制御が開始されると、ステップS10において、コントローラ100は、温度センサ51の温度を検出して、検出した冷媒の温度に基づいて、減速機102の温度(以下「減速機温度」ともいう)を取得する。コントローラ100は、取得した減速機温度が、減速機102の冷却が必要な温度である第1所定温度(例えば130℃)以下であるか否かを判断する。減速機温度が第1所定温度よりも大きい場合は減速機102の冷却を行う必要があると判断し、ステップS20に移る。減速機温度が第1所定温度以下である場合は減速機102の冷却が必要ないと判断してステップS30に移る。
【0028】
減速機温度は、検出した冷却水温度に所定の係数を乗じることにより取得することができる。なお、減速機102内に備えたセンサ等から減速機温度を直接取得するようにしてもよいし、減速機102の回転速度や駆動ユニット101の出力トルク等から減速機温度を推定するようにしてもよい。
【0029】
ステップS20では、コントローラ100は、車室内の暖房要求があるか否かを判断する。車室内の暖房要求があるか否かは、ユーザによるインパネ等の操作により暖房要求の操作がなされたか否かにより判断される。暖房要求があると判断した場合はステップS50に移る。暖房要求がないと判断した場合は、ステップS60に移る。
【0030】
ステップS10において減速機102の冷却が必要ないと判断した場合は、ステップS30において、コントローラ100は、ステップS20と同様に、車室内の暖房要求があるか否かを判断する。車室内の暖房要求があると判断した場合は、ステップS40に移り、コントローラ100は、減速機温度が下限温度よりも大きいか否かを判断する。
【0031】
下限温度とは、減速機102の潤滑油の粘度上昇に起因してフリクションが増加し、減速機102の効率が低下する温度よりも高く設定された温度である。下限温度は、第1所定温度よりも小さい温度(例えば80℃)に設定される。減速機温度が下限温度よりも大きい場合はステップS50に移る。減速機温度が下限温度以下である場合はステップS70に移る。
【0032】
ステップS50では、コントローラ100は、減速機102から回収した熱を熱交換器112に伝える熱回収制御を実行する。熱回収制御は図3で詳述する。
【0033】
ステップS60では、コントローラ100は、減速機102から回収した熱をラジエータ103から排出させる熱排出制御を実行する。熱排出制御は図4で詳述する。
【0034】
ステップS70では、コントローラ100は、減速機102の温度が下限温度以下とならないように制御する保温制御を実行する。保温制御は図5で詳述する。
【0035】
図3は、熱回収制御における第1冷媒流路10及び第2冷媒流路20の状態を示す。
【0036】
コントローラ100は、熱回収制御を行う場合は、切換バルブ31及び切換バルブ32を共に開状態に制御して、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間で冷媒が流通可能に制御する。また、コントローラ100は、切換バルブ42を開状態に制御し、切換バルブ41及び切換バルブ43を閉状態に制御する。この状態で、ウォーターポンプ25を動作させる。
【0037】
この制御により、第2冷媒流路20において、ウォーターポンプ25から吐出された冷媒は、その一部が第6流路20bから接続流路30bを経由して、第1冷媒流路10の第2流路10bへと流れる。冷媒は、第2流路10bから減速機102を流通することで減速機102の熱を回収する。減速機102の熱を回収した冷媒は、駆動ユニット101を通過した後、その一部が第4流路10dから接続流路30aを経由して第2冷媒流路20の第7流路20cへと流れる。この結果、減速機102の熱を回収した冷媒が熱交換器112を流通することになり、この冷媒により車室内の空気を暖房することができる。
【0038】
このように、熱回収制御では、減速機102を流通して減速機102の熱を回収した冷媒を、車室内の暖房に用いることができる。
【0039】
図4は、熱排出制御における第1冷媒流路10及び第2冷媒流路20の状態を示す。
【0040】
コントローラ100は、熱排出制御を行う場合は、切換バルブ31及び切換バルブ32を共に閉状態に制御して、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間で冷媒が流通不可能にする。また、コントローラ100は、切換バルブ42を開状態に、切換バルブ41を閉状態に、切換バルブ43を開状態にそれぞれ制御する。この状態で、ウォーターポンプ15及びウォーターポンプ25を共に動作させる。このとき、第2冷媒流路20は第1冷媒流路10とは独立した流路となり、第2冷媒流路20内の冷媒がバッテリ111と熱交換器112とを循環するように制御される。
【0041】
第1冷媒流路10では、ウォーターポンプ15から吐出され冷媒は、ラジエータ103を流通した後、減速機102へと流れる。冷媒は、減速機102を流通することで減速機102の熱を回収する。その後、冷媒は、駆動ユニット101を通過した後、ウォーターポンプ15を経由してラジエータ103を流通する。冷媒がラジエータ103を流通することにより大気との間で熱交換が行われることで、冷媒の熱が排出され、冷媒の温度が低下する。
【0042】
このように、熱排出制御では、減速機102を流通して減速機102の熱を回収した冷媒が、ラジエータ103によって冷却されるので、減速機102の熱が外部に排出される。
【0043】
図5は、保温制御における第1冷媒流路10及び第2冷媒流路20の状態を示す。
【0044】
コントローラ100は、保温制御を行う場合は、切換バルブ31及び切換バルブ32を共に閉状態に制御して、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20との間で冷媒が流通不可能にする。また、コントローラ100は、切換バルブ42を閉状態に、切換バルブ41及び切換バルブ43を開状態に、それぞれ制御する。この状態で、ウォーターポンプ15及びウォーターポンプ25を共に動作させる。このとき、第2冷媒流路20は第1冷媒流路10とは独立した流路となり、第2冷媒流路20内の冷媒がバッテリ111と熱交換器112とを循環するように制御される。
【0045】
第1冷媒流路10では、ウォーターポンプ15から吐出された冷媒は、ラジエータ103を通過した後、減速機102を流れることなくバイパス流路11へと流れる。バイパス流路11の冷媒は、駆動ユニット101を通過した後、ウォーターポンプ15を経由してラジエータ103へと流通する。
【0046】
このように、保温制御では、冷媒を減速機102に流通させることなくバイパスさせるので、減速機102は、その駆動により温度が上昇する。この制御により、減速機102が下限温度以下とならないように制御される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態における車両の冷媒制御システム1は、ラジエータ103と、モータを有する駆動ユニット101と、モータの回転を変速する減速機102と、を接続する第1冷媒流路10と、モータに電力を供給可能なバッテリ111と、車室内の空気と熱交換を行う熱交換器112と、を接続する第2冷媒流路20とを備える。車両の冷媒制御システム1は、減速機102をバイパスするように第1冷媒流路10に設けられるバイパス流路11と、第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とを接続する接続流路30と、を備える。また、車両の冷媒制御システム1は、減速機102に冷媒を流通させるかバイパス流路11を介して冷媒をバイパスさせるかを切り換える第1切換部(切換バルブ41、42)と、減速機102及び駆動ユニット101を通過した冷媒をラジエータ103に流通させるか否かを切り換える第2切換部(切換バルブ43)と、第1冷媒流路10の冷媒を、接続流路30を介して第2冷媒流路20に流通させるか否かを切り換える第3切換部(切換バルブ31、32)と、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を切換制御することで冷媒の流れを制御するコントローラ100と、を備える。コントローラ100は、減速機温度及びユーザからの暖房要求を取得し、取得した変速機温度(減速機温度)及び暖房要求に基づいて、減速機102を通過した冷媒を第2冷媒流路20に流通させるか否かを切り換えるように、第1切換部、第2切換部及び第3切換部を制御する。
【0048】
この構成では、コントローラ100が、減速機102の熱を回収した冷媒を、暖房に用いられる熱交換器112を有する第2冷媒流路20に流通させるか否かを制御する。これにより、必要に応じて減速機102の熱を暖房で有効に活用できるので、熱効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、第1冷媒流路10に設けられ、減速機102を通過した冷媒の温度を検出する温度検出部(温度センサ51)を備え、コントローラ100は、温度検出部によって検出された冷媒温度に基づいて減速機温度を取得する。
【0050】
この構成では、冷媒の温度に基づいて減速機温度を取得するので、既存の構成を用いて減速機温度を取得できる。
【0051】
また、本実施形態では、コントローラ100は、取得した減速機温度が第1所定温度より大きく、かつ、暖房要求がある場合、冷媒が減速機102を通過するよう第1切換部を制御し、冷媒がラジエータ103に流通しないように第2切換部を制御し、減速機102を通過した冷媒が第2冷媒流路20に流通するように第3切換部を制御する。
【0052】
この構成では、減速機温度が冷却を行う必要があるほど大きい場合には、減速機102の熱を回収した冷媒を第2冷媒流路20に流通させて暖房に用いることができるので、減速機102の熱を有効に活用できる。
【0053】
また、本実施形態では、コントローラ100は、取得した減速機温度が第1所定温度よりも大きく、かつ、暖房要求がない場合、冷媒が減速機102を通過するように第1切換部を制御し、冷媒がラジエータ103に流通するように第2切換部を制御し、冷媒が第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とで独立して流通するように第3切換部を制御する。
【0054】
この構成では、減速機温度が冷却を行う必要があるほど大きい場合であっても、暖房要求がない場合には、減速機102の熱を回収した冷媒をラジエータ103により冷却することができる。
【0055】
また、本実施形態では、コントローラ100は、取得した減速機温度が第1所定温度以下であり、かつ、暖房要求がない場合、冷媒が減速機102をバイパスするように第1切換部を制御し、冷媒がラジエータ103に流通しないように第2切換部を制御し、冷媒が第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とで独立して流通するように第3切換部を制御する。
【0056】
この構成では、減速機温度が冷却を行う必要がない程度に小さい場合には、減速機102を通過した冷媒を第2冷媒流路20及びラジエータ103に流通させないことで、減速機102の温度が必要以上に低下することがなくなるので、フリクションの増加による影響を抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、コントローラ100は、取得した減速機温度が第1所定温度以下であり、かつ、暖房要求がある場合であって、減速機温度が下限温度よりも大きい場合は、冷媒が減速機102を通過するように第1切換部を制御し、冷媒がラジエータ103に流通しないように第2切換部を制御し、減速機102を通過した冷媒が第2冷媒流路20に流通するように第3切換部を制御する。
【0058】
この構成では、減速機温度が冷却を行う必要がないほど小さい場合であっても、減速機温度が下限温度よりも大きければ、減速機102の熱を回収した冷媒を第2冷媒流路20に流通させて暖房に用いることができるので、減速機102の熱をより有効に活用できる。
【0059】
また、本実施形態では、コントローラ100は、取得した減速機温度が第1所定温度以下であり、かつ、暖房要求がある場合であって、当該減速機温度が下限温度以下の場合は、冷媒が減速機102をバイパスするように第1切換部を制御し、冷媒が第1冷媒流路10と第2冷媒流路20とで独立して流通するように第3切換部を制御する。
【0060】
この構成では、減速機温度が冷却を行う必要がない程度に小さく、さらに下限温度以下となった場合には、減速機102に冷媒を流通させないように制御することで、減速機102の温度を上昇させることができ、フリクションの増加による影響を抑制できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0062】
上述した本実施形態において、切換バルブ31、32、41、42、43は、ソレノイドにより駆動される三方弁により構成されるが、その他の構成であってもよい。例えばスプールをソレノイド又は流体圧により駆動させる構成の切換弁であってもよい。
【0063】
上述した本実施形態では、駆動ユニット101の出力を減速する減速機102を備えるが、これに限られず、減速機102に代えて、減速比を変速可能な変速機を備えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:制御装置、10:第1冷媒流路、11:バイパス流路、12:減速機側冷媒流路、15:ウォーターポンプ、20:第2冷媒流路、25:ウォーターポンプ、30a:接続流路、30b:接続流路、31:切換バルブ、32:切換バルブ、41:切換バルブ、42:切換バルブ、43:切換バルブ、51:温度センサ、100:コントローラ、101:駆動ユニット、102:減速機、103:ラジエータ、111:バッテリ、112:熱交換器

図1
図2
図3
図4
図5