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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112553
(43)【公開日】2025-08-01
(54)【発明の名称】ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20250725BHJP
【FI】
H02K1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006848
(22)【出願日】2024-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大村 祐司
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC12
5H601GC25
5H601KK08
5H601KK12
(57)【要約】
【課題】モータが良好な性能を発揮することを可能にし得るステータ及び良好な性能を発揮し得るモータを提供する。
【解決手段】ステータ30は、内周部91aと、当該内周部91aから内側に延在する複数の突出部96と、を有する複数の磁性体90を備え、複数の磁性体90は、軸方向において、重なり合う第1磁性体94及び第2磁性体97を備え、周方向において、第1磁性体94の複数の突出部96の位置は、第2磁性体97の複数の突出部96の位置と異なる。モータ1は、ステータ30とロータ40とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部と、当該内周部から内側に延在する複数の突出部と、を有する複数の磁性体を備え、
前記複数の磁性体は、軸方向において、重なり合う第1磁性体及び第2磁性体を備え、
周方向において、前記第1磁性体の複数の突出部の位置は、前記第2磁性体の複数の突出部の位置と異なる、ステータ。
【請求項2】
前記複数の磁性体は、前記第1磁性体を含む複数の第1磁性体と、前記第2磁性体を含む複数の第2磁性体と、を備え、
軸方向において、前記第1磁性体を含む複数の第1磁性体と、前記第2磁性体を含む複数の第2磁性体は積み重なっており、
軸方向において、前記複数の第1磁性体の複数の突出部は互いに対向しており、
軸方向において、前記複数の第2磁性体の複数の突出部は互いに対向している、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記突出部の内周面は切断面となっている、請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
軸方向において、互いに対向する前記複数の第1磁性体の複数の突出部の間には隙間があり、
軸方向において、互いに対向する前記複数の第2磁性体の複数の突出部の間には隙間がある、請求項2に記載のステータ。
【請求項5】
前記磁性体は、前記内周部を有するリングと、複数の磁極部と、当該リングと当該複数の磁極部をつなぐ複数の板状部と、を備え、
周方向において、前記突出部の幅は、前記板状部の幅よりも小さい、
請求項1から4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
周方向において、前記板状部に対応する前記リングの内周部の部分は、凹部を有し、
前記凹部の内側に前記突出部がある、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のステータと、
ロータと
を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層された電磁鋼板を加締めて一体化させることが行われている。そして、このような一体化は、概して、例えば特許文献1に記載されるように、積層された複数の電磁鋼板のそれぞれのティースの部分を加締めることによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-019472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ティースはコイルにより生じた磁束が通過する部分であり、このような部分に加締められた部分が存在すると、ティースを通る磁束に影響が及び、その結果、モータの性能に影響が及ぶ場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、モータが良好な性能を発揮することを可能にし得るステータ及びモータを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステータは、内周部と、当該内周部から内側に延在する複数の突出部と、を有する複数の磁性体を備え、前記複数の磁性体は、軸方向において、重なり合う第1磁性体及び第2磁性体を備え、周方向において、前記第1磁性体の複数の突出部の位置は、前記第2磁性体の複数の突出部の位置と異なる。
【0007】
なお、前記複数の磁性体は、前記第1磁性体を含む複数の第1磁性体と、前記第2磁性体を含む複数の第2磁性体と、を備え、軸方向において、前記第1磁性体を含む複数の第1磁性体と、前記第2磁性体を含む複数の第2磁性体は積み重なっており、軸方向において、前記複数の第1磁性体の複数の突出部は互いに対向しており、軸方向において、前記複数の第2磁性体の複数の突出部は互いに対向していてもよい。
【0008】
また、前記突出部の内周面は切断面となっていてもよい。
【0009】
また、軸方向において、互いに対向する前記複数の第1磁性体の複数の突出部の間には隙間があり、軸方向において、互いに対向する前記複数の第2磁性体の複数の突出部の間には隙間があってもよい。
【0010】
また、前記磁性体は、前記内周部を有するリングと、複数の磁極部と、当該リングと当該複数の磁極部をつなぐ複数の板状部と、を備え、周方向において、前記突出部の幅は、前記板状部の幅よりも小さくてもよい。
【0011】
また、周方向において、前記板状部に対応する前記リングの内周部の部分は、凹部を有し、前記凹部の内側に前記突出部があってもよい。
【0012】
本発明に係るモータは、上述のモータと、ロータとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態におけるモータの一例を示す斜視図である。
図2図1に示すモータの回転軸の方向における断面図である。
図3図1に示すモータのステータコアを示す斜視図である。
図4図3に示すステータコアの平面図である。
図5図4に示されるA-A線における断面の一部を示す図である。
図6図3に示すステータコアを製造する一工程の様子を示す図である。
図7図3に示すステータコアを製造する際に形成された積層体を示す斜視図である。
図8図7に示されるB-B線における断面図である。
図9図7に示す積層体のスポーク部を切断する方法の例を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態におけるステータコアを示す斜視図である。
図11図10に示すステータコアを製造するための積層体を示す斜視図である。
図12図11に示す積層体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るステータ及びモータを実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張又は縮小して示されている場合やハッチングなどが省略されている場合がある。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、実施形態におけるモータ1の一例を示す斜視図であり、モータ1の回転軸の方向における一方側から見た斜視図である。なお、以下、モータ1の回転軸の方向を「軸方向」と呼称し、モータ1の回転軸に交差してかつ軸方向に垂直な方向を「径方向」と呼称する。図2は、モータ1の軸方向における断面図である。本実施形態において、モータ1は、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータとして構成されている。しかし、本発明を適用するモータはアウターロータ型のブラシレスモータに限られるものではない。
【0016】
図1及び図2に示すように、モータ1は、ハウジング10と、シャフト20(回転軸)と、軸受21と、軸受22と、ステータ30と、ロータ40と、を主な構成として備えている。シャフト20は、一方の端部20aと他方の端部20bとを備える。図1はシャフト20の一方の端部20a側から見た図である。
【0017】
ハウジング10は、ハウジング10の底部を形成するベース12と、ハウジング10の側面と天面を形成するフレーム11とを含んでいる。ベース12は、軸方向における他方側(シャフト20の他方の端部20b側)に配置されている。
【0018】
なお、シャフト20の一方の端部20a側(軸方向における一方側)を「上」「上側」「上方」などと記載する場合があり、シャフト20の他方の端部20b側(軸方向における他方側)を「下」「下側」「下方」などと記載する場合がある。
【0019】
ベース12は、円盤状の部材であり、シャフト20の長手方向(軸方向)に対して垂直に配置されている。すなわち、ベース12は、モータ1の径方向に延びている。なお、径方向において、シャフト20に近い側を「内側」とし、シャフト20から遠い側を「外側」とする。ベース12の中央側には、軸方向に沿って延びる筒状の筒部13がベース12と一体に形成されている。すなわち、ハウジング10は、筒部13を含んでいる。また、筒部13には、シャフト20が通過する孔部が筒部13の内周面13aに対してシャフト20の側(内側)に形成されている。ベース12の一方の端部20a側の面(上側の面)には、コンデンサや抵抗素子などの電子部品が実装され、配線や端子を有する基板(以下、回路基板と呼称する)15が載置されている。ベース12の一部には凹部12aが形成されており、この凹部12aによりベース12は開口を有している。この開口には、外部の装置と電気的に接続されるコネクタ16が配置されている。コネクタ16、回路基板15、及びステータ30に設けられた接続端子を介して、ステータ30の後述するコイル33に外部から電流が供給される。
【0020】
フレーム11は、円筒状の第1筒部(以下、大径筒と呼称する。)11Aと、円盤状の天面部(以下、円盤部と呼称する。)11Bと、大径筒11Aよりも小さい外形を有する円筒状の第2筒部(以下、小径筒と呼称する。)11Cと、を有している。大径筒11Aは、ベース12の外周部に固定されており、軸方向において、概ねベース12の位置から上側に延びている。円盤部11Bは、径方向に延びており、大径筒11Aの上端からシャフト20に向かって延びている。小径筒11Cは、円盤部11Bの内周部11B1から上側に延びている。この小径筒11Cの内周面11C1に対して内側には貫通孔11C2が形成されている。なお、本実施形態では、大径筒11A、円盤部11B、及び小径筒11Cは一体に形成されている。
【0021】
このような構成を有するハウジング10の内部に、シャフト20、軸受21、軸受22、ステータ30、及びロータ40などが収容されている。
【0022】
軸受21は、小径筒11Cの内側に配置されており、軸受21の外周面21aが小径筒11Cの内周面11C1に固定されている。軸受22は、筒部13の内周面13aの内側に配置されており、軸受22の外周面が筒部13の内周面13aに固定されている。軸受21、22としては、例えばボールベアリングやスリーブベアリングなどを挙げることができる。なお、筒部13の内周面13aには、段部13bが形成されている。軸方向において、この段部13bに軸受22が支持されている。シャフト20の外周面は、軸受21の内周面及び軸受22の内周面に支持されている。こうして、軸受21,22は、シャフト20を回転可能に支持している。シャフト20の一方の端部20a(上側の端部)は、円盤部11Bを通過して上側に突出しており、シャフト20の他方の端部20b(下側の端部)は、筒部13の内側に位置している。
【0023】
ロータ40は、ホルダ41とマグネット44とを有している。ホルダ41は、磁性体で形成されており、円筒状の筒部43と、筒部43の上側の端部から内側に向かって延びる環状部42を有している。環状部42は、筒部43と一体に形成されている。環状部42は上側から見る場合に環状であり、内周部42aを備えている。シャフト20は、環状部42の内周部42aを通過するとともに、この内周部42aの内周面に固定されている。したがって、ホルダ41とシャフト20とは一体的に回転する。また径方向において、環状部42の内周部42aとシャフト20との間には、スペーサ71と、リング72と、スペーサ71やリング72よりも小さい外形(又は外径)を有する第2のリング73が配置されている。筒部43は、環状部42の外周部42bから下側に延びている。軸方向において、筒部43の下端部は、ステータ30の後述するステータコア37の下端部よりも下側に位置している。マグネット44は、環状の形状を備え、筒部43の内周面の概ね全面に固定されている。マグネット44の下端部は、筒部43の下端部よりも下側に位置している。また、このマグネット44において、周方向に沿って複数の異なる磁極(N極とS極)が交互に形成されている。径方向において、マグネット44は、エアギャップGを介してステータ30のステータコア37に対向している。
【0024】
なお、上述したハウジング10、シャフト20、軸受21、軸受22、及びロータ40等の構成は例示的なものであり、上述した構成に限定されるものではない。
【0025】
次に、モータ1のステータ30について詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、ステータ30は、ハウジング10に対して固定されている。具体的には、本実施形態において、ステータ30は、ハウジング10の筒部13に固定されている。ステータ30は、ステータコア37と、樹脂等の絶縁部材で形成されるインシュレータ34と、複数のコイル33と、を含んでいる。インシュレータ34は、ステータコア37の大部分を囲んでいる。ステータコア37は、筒部13に固定されている。ステータコア37は、筒部13に対して接着により固定されてもよいし、圧入により固定されてもよいし、その他の方法により固定されてもよい。
【0027】
図3は、ステータ30のステータコア37を示す斜視図であり、複数のコイル33とインシュレータ34とが取り外されたステータコア37を示している。図4は、図3に示すステータコア37の平面図(軸方向における上側から見た図)である。図5は、図4に示されるA-A線(軸方向に沿った断面)における断面の一部を示す図である。なお、上述のように、ステータコア37は、筒部13に固定されている。図4には、ステータコア37が固定される筒部13が破線で示されている。
【0028】
図3から図5に示すように、ステータコア37は、軸方向において積み重なった複数の磁性体90(以下、「磁性体群90G」と呼称する場合がある。)によって形成されている。したがって、ステータ30は、複数の磁性体90を備えている。磁性体群90Gを構成する複数の磁性体90のそれぞれは、同一の材料で形成されてもよく、実質的に同一の形状及び寸法を有する例えば電磁鋼板であってもよい。なお、本明細書において「実質的に同一」及び「実質的に同じ」等には、通常認められる範囲の製造誤差等による相違が含まれてもよい。
【0029】
複数の磁性体90によって形成されるステータコア37(磁性体群90G)は、径方向における内側に位置する環状(本実施形態では円環状)のリング31と、リング31から径方向の外側に放射状に延在する複数の板状部32と、複数の板状部32のそれぞれの外側の端部に接続される磁極部35とを含んでいる。すなわち、磁性体群90Gを構成する複数の磁性体90のそれぞれは、径方向における内側に位置する環状(本実施形態では円環状)のリング91と、リング91から放射状に延在する複数の板状部92と、複数の板状部92のそれぞれの外側の端部に接続される磁極部95とを含んでいる。複数の磁性体90のそれぞれにおいて、板状部92は、リング91と磁極部95とをつないでいる。また、板状部92と磁極部95とで、いわゆるティース(外形)が形成されている。
【0030】
なお、ステータコア37のリング31(すなわち、複数の磁性体90のそれぞれのリング91)、ステータコア37の板状部32(すなわち、複数の磁性体90のそれぞれの板状部92)、及びステータコア37の磁極部35(すなわち、複数の磁性体90のそれぞれの磁極部95)には、平らで連続した面が径方向及び周方向に形成されている。
【0031】
ステータコア37のリング31は、筒状(本実施形態では円筒状)に形成されており、円筒状の内周部31a(内周面)を有している。内周部31aは、軸方向に積み重ねられた複数の磁性体90のそれぞれの内周部91a(内周面)を含んでいる。内周部31aに対して径方向の内側はステータコア37を軸方向に貫通する貫通孔(孔部)31hとなっている。図2及び図4に示すように、この貫通孔31hの概ね下半分に上述の筒部13の上側の部分が配置されており、リング31の内周部31aにおける概ね下半分の部分が、筒部13における上側の部分の外周面13eに固定されている。こうして、ステータコア37がハウジング10の筒部13に固定されて支持されている。また、この貫通孔31hの内側をシャフト20が通過している。
【0032】
図3及び図4に示すように、ステータコア37の複数の板状部32は、リング31の周方向において、所定の間隔(実施形態では等間隔)に配置されている。軸方向から見る場合に、板状部32は実質的に矩形の板状の形状を有している。一方、複数の磁極部35のそれぞれは、周方向において板状部32よりも大きな長さを有しており、偏平な扇型の形状を有している。周方向において複数の磁極部35は離れており、軸方向から見る場合に、複数の磁極部35の外周面35ofによって実質的に円形の軌跡が描かれている。
【0033】
ステータコア37の内周部31aからは、径方向の内側に向かって複数の突出部36が突出している。すなわち、ステータコア37(複数の磁性体90)は、複数の突出部36を有している。本実施形態において、複数の突出部36は、軸方向から見て6つの突出部36を有している。6つ突出部36は、周方向において概ね等間隔に(すなわち、60°の間隔を空けて)並んでおり、周方向における位置を除いて、実質的に同一の形状及び寸法を有している。また、6つの突出部36のそれぞれに着目すると、図4に示すように、軸方向から見て、ステータコア37の中心C(シャフト20の中心C)と突出部36とを通って径方向に延びる直線La上に板状部32と磁極部35とが並んでおり、さらに言えば、突出部36、板状部32、及び磁極部35のそれぞれは、直線Laに対して概ね線対称の形状を有している。
【0034】
ステータコア37を形成する複数の磁性体90のそれぞれは、リング31に対応する上述のリング91と、板状部32に対応する上述の板状部92と、磁極部35に対応する上述の磁極部95に加えて、突出部36に対応する突出部96を有している。
【0035】
なお、軸方向から見た場合における磁極部35、板状部32、及び突出部36の数は6つに限定されるものではない。また、軸方向から見た場合における磁極部35及び板状部32の数と、軸方向から見た場合における突出部36の数とが同じでなくても構わない。
【0036】
図3及び図4に示すように、6つの突出部36は、3つの第1突出部38と、3つの第2突出部39とを含んでいる。3つの第1突出部38は、120°の間隔を空けて配置された3つの突出部36である。3つの第2突出部39は、3つの第1突出部38に対して60°回転した位置にある3つの突出部36である。本実施形態では、図5に示すように、軸方向において、第1突出部38を形成する突出部96(以下、「第1突出部98」と呼称する場合がある。)を有する磁性体90(以下、「第1磁性体94」と呼称する場合がある。)と、第2突出部39を形成する突出部96(以下、「第2突出部99」と呼称する場合がある。)を有する磁性体90(以下、「第2磁性体97」と呼称する場合がある。)とが、軸方向において交互に積み重ねられている。軸方向において互いに隣接する第1磁性体94と第2磁性体97とに着目すると、本実施形態では、第1磁性体94が第2磁性体97の上側にある。ただし、第1磁性体94と第2磁性体97との位置関係が逆(第1磁性体94が下、第2磁性体97が上)であってもよい。
【0037】
図3及び図5に示すように、第1磁性体94は、3つの第1突出部98を有している。複数の第1磁性体94のそれぞれの3つの第1突出部98が、軸方向に概ね1枚の磁性体90の厚み分の間隔を空けて積み重なり、3つの第1突出部38が形成されている。したがって、3つの第1突出部38のそれぞれに着目すると、軸方向において、複数の第1突出部38が互いに対向している。また、第2磁性体97は、3つの第2突出部99を有している。複数の第2磁性体97のそれぞれの3つの第2突出部99が、軸方向に概ね1枚の磁性体90の厚み分の間隔を空けて積み重なり、3つの第2突出部39が形成されている。したがって、3つの第2突出部39のそれぞれに着目すると、軸方向において、複数の第2突出部39が互いに対向している。周方向において、第2突出部99の位置は、第1突出部98の位置と異なっており、具体的には、第2突出部99は、第1突出部98に対して60°回転した位置にある。すなわち、周方向において、第1磁性体94の複数の突出部96(複数の第1突出部98)の位置が、第2磁性体97の複数の突出部96(複数の第2突出部99)の位置と異なっている。
【0038】
また、図5に示すように、複数の磁性体90(磁性体群90G)から形成されるステータコア37は、複数の第1磁性体94(第1磁性体群)と、複数の第2磁性体97(第2磁性体群)とを備えており、軸方向において、複数の第1磁性体94(第1磁性体群)と、複数の第2磁性体97(第2磁性体群)とは積み重なっており、軸方向において、複数の第1磁性体94の複数の突出部96(複数の第1突出部98)は互いに対向しており、軸方向において、複数の第2磁性体97の複数の突出部96(複数の第2突出部99)は互いに対向している。具体的には、第1磁性体群のうち軸方向において隣接する1対の第1磁性体94の第1突出部98同士は、上述のように、概ね1枚の磁性体90(1枚の第2磁性体97)の厚み(軸方向の長さ)分の間隔を空けて対向している。また、第2磁性体群のうち軸方向において隣接する1対の第2磁性体97の第2突出部99同士は、上述のように、概ね1枚の磁性体90(1枚の第1磁性体94)の厚み(軸方向の長さ)分の間隔を空けて対向している。すなわち、軸方向において、互いに隣接する第1突出部98,98の間には、1つの磁性体90の軸方向における厚みに実質的に等しい長さの隙間Gp1があり、互いに隣接する第2突出部99,99の間にも1つの磁性体90の厚みに実質的に等しい長さの隙間Gp2がある。
【0039】
図5に示すように、複数の突出部96のそれぞれの内周側の端面96E(内周面)は、後述する理由により切断面になっている。また、端面96E(内周面)を含む突出部の端部は湾曲しており、径方向における内側に行くに従って下降している。
【0040】
本実施形態では、図4に示すように、周方向において、1つの磁性体90の複数の(3つの)突出部96のそれぞれの幅W1は1つの磁性体90の複数の(3つの)板状部92のそれぞれの幅W2よりも小さい。すなわち、周方向において、磁性体群90Gの複数の突出部36のそれぞれの幅W1は、磁性体群90Gの複数の板状部32のそれぞれの幅W2よりも小さい。
【0041】
図2に示すように、インシュレータ34は、上記のようにステータコア37の大部分を囲んでいる。本実施形態では、インシュレータ34は、リング31の外側の部分と、板状部32の全体と、磁極部35のうち磁極部35の外周面35aを除く部分とを覆っている。すなわち、板状部32と磁極部35の大部分とはインシュレータ34に収容されており、磁極部35の外周面35aがインシュレータ34から露出している。インシュレータ34から露出した外周面35aとロータ40のマグネット44とは、モータ1に磁気回路が形成されるようにエアギャップGを介して径方向において対向している。
【0042】
図2に示すように、複数のコイル33は、複数の板状部32のそれぞれにインシュレータ34を介して巻き回されている。こうして、複数のコイル33とステータコア37との間が絶縁されている。コネクタ16及び回路基板15を介して複数のコイル33に外部電源からの電流が流れると、ステータコア37のリング31、板状部32、及び磁極部35に磁力線が通り、モータ1に磁気回路が形成される。その結果、ステータ30よりも外側に位置するロータ40が、シャフト20を中心としてステータ30に対して回転する。
【0043】
本実施形態におけるステータ30は、上述のようなステータコア37を備えており、このステータコア37は、内周部31aから内側に延在する複数の突出部36を有している。そのため、図4に示すように、複数の突出部36によって、ハウジング10の筒部13とステータコア37の内周部31aとの間に間隙Gsが形成される。そのため、ステータコア37を筒部13に接着する場合には、この間隙Gsに接着剤を設けることが容易であり、また、この間隙Gsに接着剤を充填することによってステータ30と筒部13とを強固に固定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上述のように、周方向において、第1磁性体94の複数の突出部96(複数の第1突出部98)の位置が、第2磁性体97の複数の突出部96(複数の第2突出部99)の位置と異なる。このような構成によれば、後述する理由によって、磁束が通過する部分であるステータコア37のリング31、板状部32、及び磁極部35は平らで連続した面を備えることができる。よって、積み重なった複数の磁性体94の連続した面を比較的広い面積で接触させることができる。したがって、本実施形態におけるステータ30によれば、リング31、板状部32、及び磁極部35を通る磁束が通過する経路を確保することができる。、また、モータ1の性能を向上できる(例えば、モータの出力の向上)。すなわち、本実施形態のステータ30は、モータ1が良好な性能を発揮することを可能にし得、また、このようなステータ30を備えるモータ1は、良好な性能を発揮し得る。
【0045】
次に、ステータ30を製造する方法の一例について説明する。
【0046】
まず、図6に示すように、所定の形状の磁性板500(電磁鋼板)を複数準備する(準備工程)。この磁性板500は、中央部510を有することを除いて上述の磁性体90と同様の構成を有する。したがって、磁性板500は、磁性体90(磁性体群90Gを形成する個々の電磁鋼板)と同様の材料で形成されており、リング91、内周部91a、板状部92、及び磁極部95等を含んでいる。
【0047】
磁性板500の中央部510は、内周部91aに対して径方向における内側にあり、磁性板500の径方向における中央側に設けられている。中央部510は、径方向における内側にある部分(以下、「内側部分」と呼称する。)512と、内側部分512から径方向の外側に放射状に延びる複数のスポーク511とを含んでいる。本実施形態において、内側部分512はリング状であり、円環状であるが、内側部分512の形状はこれに限られるものではない。本実施形態において、複数のスポーク511の数は3つであるが、複数のスポーク511の数は3つ限られるものではない。
【0048】
複数の(3つの)スポーク511のそれぞれは、径方向に延在してリング91に接続している。すなわち、複数のスポーク511は、内側部分512とリング91とをつないでいる。複数の(3つの)スポーク511は、周方向において実質的に等間隔に(すなわち、120°の間隔を空けて)配置されている。1つのスポーク511に着目すると、スポーク511の周方向における中央を径方向に延びる直線La上に、スポーク511、板状部92、及び磁極部95が並んでいる。スポーク511、板状部92、及び磁極部95は、直線Laに対して実質的に線対称に形成されている。本実施形態では、周方向において、スポーク511の幅W1は、板状部92の幅W2よりも小さい。
【0049】
一方、複数の板状部92のそれぞれに着目すると、複数の板状部92は、板状部92を通って径方向に延びる直線La上にあるスポーク511と、スポーク511につながった板状部92(以下、「第1の板状部92A」と呼称する場合がある。)と、板状部92を通って径方向に延びる直線La上にあり、周方向においてスポーク511に対して異なる位置にある板状部92(以下、「第2の板状部92B」と呼称する場合がある。)とを含んでいる。
【0050】
本実施形態では、図6に示すように、所定の磁性板500(以下、「磁性板500A」と呼称する場合がある。)の直上に積み重ねられる磁性板500(以下、「磁性板500B」と呼称する場合がある。)を、磁性板500Aに対して所定の角度回転させた後に積み重ねる(転積する)。軸方向において隣接する1対の磁性板500,500において、下側にある磁性板500が磁性板500Aであり、上側にある磁性板500が500Bである。本実施形態では、磁性板500Aに対して磁性板500Bを60°回転させた後に、磁性板500Bを磁性板500Aの直上に積み重ねる。したがって、磁性板500Bが磁性板500Aに積み重ねられた1対の磁性板500A,500Bにおいて、磁性板500Bのスポーク511(以下、「スポーク511B」と呼称する場合がある。)は磁性板500Aのスポーク511(以下、「スポーク511A」と呼称する場合がある。)に対して60°ずれた位置にあり、磁性板500Bの第1の板状部92Aは、磁性板500Aの第1の板状部92Aに対して60°ずれた位置にあり、磁性板500Bの第2の板状部92Bは磁性板500Aの第2の板状部92Bに対して60°ずれた位置にある。
【0051】
準備した磁性板500がN枚(Nは2以上の自然数)である場合、このような転積を(N-1)回繰り返す(転積工程)。なお、本実施形態では、説明の便宜上、Nは偶数とする。図7は、転積工程により形成された積層体550を示す斜視図である。図8は、図7に示されるB-B線における断面図である。
【0052】
図7及び図8に示すように、積層体550は、上述の転積工程により形成されたため、軸方向において、下側から上側に向かって第1磁性板500A(下側)及び第2磁性板500B(上側)とが交互に積み重なっている。すなわち、図8に示すように、複数の第1磁性板500Aのうち軸方向において隣接する1対の第1磁性板500A,500Aにおいて、それぞれのスポーク511Aの間には、1枚の第2磁性板500Bの厚み分の隙間Gp1が形成されている。同様に、軸方向において隣接する1対の第2磁性板500B,500Bにおいて、それぞれのスポーク511Bの間には、1枚の第1磁性板500Aの厚み分の隙間Gp2が形成されている。一方、軸方向において、複数の磁性板500のそれぞれの内側部分512は、互いに接触(実質的に面接触)して積み重なっている。なお、積層体550において、積み重ねられたスポーク511Aを総称して「スポーク511A群」と呼ぶことがあり、積み重ねられたスポーク511Bを総称して「スポーク511B群」と呼ぶことがある。
【0053】
本実施形態では、積層体550を構成する複数の磁性板500のそれぞれの内側部分512を加締める(加締め工程)。具体的には、積層体550において最も上側にある磁性板500(本実施形態では第2磁性板500B)の内側部分512の周方向において、等間隔に(本実施形態では60°の間隔を空けて)加締め用の治具を当て、加締め用の治具を上側から下側に向かって押圧する。これにより、積層体550を構成する複数の磁性板500が内側部分512の加締め部515を介して一体化する。上述のように、磁性板500は、中央部510を有することを除いて上述の磁性体90と同様の構成を有するため、磁性板500が積み重ねられて構成された積層体550も、リング31と、内周部31aと、複数の板状部32と、複数の磁極部35とを含んでいる。また、積層体550において、第2磁性板500Bが上述の第1磁性体94に対応し、第1磁性板500Aが上述の第2磁性体97に対応する。
【0054】
加締め工程により積層体550の複数の磁性板500を一体化させた後、積層体550の複数の板状部32のそれぞれにインシュレータ34(図2参照)を装着し、さらに、装着された複数のインシュレータ34のそれぞれにコイル33(図2参照)を巻き回す(装着工程)。この装着工程により、巻き回されたコイル33によって複数の磁性板500がさらに一体化する。
【0055】
装着工程の後、積層体550の複数の(本実施形態では3つの)スポーク511A群及び複数の(本実施形態では3つの)スポーク511B群を切断する(切断工程)。スポーク511A群及びスポーク511B群の径方向における切断位置は特に限定されるものではないが、スポーク511A群及びスポーク511B群のそれぞれにおける内周部31a近傍の位置でスポーク511A群及びスポーク511B群を切断することが好ましい。なお、本実施形態では、上述のように、周方向において、スポーク511の幅W1は、板状部92の幅W2よりも小さい。そのため、スポーク511A群及びスポーク511B群を容易に切断することができる。
【0056】
スポーク511A群及びスポーク511B群を切断する方法は特に限定されるものではない。一つの例として、図9の(A)に示されるように、金型Moを用いてスポーク511A群及びスポーク511B群を切断してもよい。金型Moによる切断によれば、スポーク511A群のそれぞれのスポーク511の先端(端部)及びスポーク511B群のそれぞれのスポーク511の先端(端部)に例えば以下のような切断部511E及び切断面511Efが形成される。すなわち、金型Moを例えば鉛直方向上側から下側に動かしてスポーク511A群及びスポーク511B群を切断する場合、切断部511Eは、径方向において外側から内側に行くに従って下側に傾く形状となり、かつ、切断部511Eの先端(切断面511Ef)が金型を動かす方向(鉛直方向)に概ね平行となる。
【0057】
また、他の例として、図9の(B)に示されるように、レーザLrを用いてスポーク511A群及びスポーク511B群を切断してもよい。レーザLrによる切断によれば、スポーク511A群のそれぞれのスポーク511の先端及びスポーク511B群のそれぞれのスポーク511の先端に例えば以下のような切断部511E及び切断面511Efが形成される。すなわち、レーザLrを例えば鉛直方向上側から下側に向かって出射してスポーク511A群及びスポーク511B群を切断する場合、切断部511Eは、径方向において外側から内側に行くに従って下側に傾く形状となり、かつ、切断部511Eの先端(切断面511Ef)が径方向において外側から内側に行くに従って下側に傾く傾斜面となる。
【0058】
ステータコア37を形成する複数の磁性体90のそれぞれの突出部96の端面96Eは、図9の(A)又は(B)に示される切断面511Efのような形状を有してもよく、突出部96における端面96Eを含む端部は、図9の(A)又は(B)に示される切断部511Eのような形状を有してもよい。
【0059】
上述のようにスポーク511A群及びスポーク511B群が切断されることにより、積層体550を構成するそれぞれの磁性板500の中央部510が、内周部31aに接続する側の部分を除いて、除去される。そして、残存した内周部31aに接続する側の部分が、図3に示されるステータコア37の突出部36(積み重ねられた複数の磁性体90のそれぞれの突出部96)となる。さらに言えば、スポーク511A群が切断されたことにより生じた突出部36(積み重ねられた複数の磁性体90のそれぞれの突出部96)が第2突出部39(積み重ねられた複数の第2磁性体97のそれぞれの第2突出部99)となり、スポーク511B群が切断されたことにより生じた突出部36(積み重ねられた複数の磁性体90のそれぞれの突出部96)が第1突出部38(積み重ねられた複数の第1磁性体94のそれぞれの第1突出部98)となる。
【0060】
本実施形態によれば、上述の工程によりステータ30を製造することができる。かかるステータ30の製造方法によれば、磁性板500を転積することにより積層体550が形成されるため、積層体550のスポーク511A群及びスポーク511B群のそれぞれにおいて、互いに隣接する1対のスポーク511,511の間に、1枚の磁性板500の厚み(軸方向における長さ)に概ね等しい間隔(隙間Gp1,Gp2)が形成される。すなわち、上述の工程によれば、スポーク511A群及びスポーク511B群のそれぞれにおいて、複数のスポーク511が軸方向に密集することが防止されている。したがって、スポーク511A群及びスポーク511B群を切断することにより、軸方向において積み重ねられた磁性板500のそれぞれの中央部510を容易に切断して除去することができ、ステータ30を容易に製造することができる。
【0061】
また、この製造方法によれば、加締め部515を形成した中央部510を切断するため、リング、板状部、及び磁極部等、ステータコアにおける磁束が通る部分を磁性体で連続的に形成して、ステータコアを製造することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るステータについて説明する。本実施形態のステータは、ステータコアの一部が第1実施形態に係るステータコア37と異なる点を除いて第1実施形態のステータ30と同様である。したがって、以下、本実施形態については、ステータコアのうち第1実施形態と異なる構成についてのみ説明し、その他の構成については第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図10は、本実施形態に係るステータコア237を示す斜視図である。図10に示すように、ステータコア237は、リング231の構成を除いて第1実施形態に係るステータコア37と同様の構成を有している。
【0064】
図10に示すように、ステータコア237において、リング231の筒状の内周部231aは、径方向外側に凹む複数の凹部231arを有している。複数の(本実施形態では6つの)凹部231arは、周方向において所定の間隔(本実施形態では等間隔)に形成されており、本実施形態では、60°の間隔で形成されている。ステータコア237の6つの凹部231arのそれぞれの内側には突出部236がある。内周部231aに対して内側はステータコア237を軸方向に貫通する貫通孔(孔部)231hとなっている。この貫通孔231hの概ね下半分に上述の筒部13の上側の部分が配置されており、リング231の内周部231aにおける概ね下半分の部分が、筒部13における上側の部分の外周面13eに固定されている。この貫通孔231hの内側をシャフト20が通過している。
【0065】
ステータコア237は、軸方向において積み重なった複数の磁性体290によって形成されている。複数の磁性体290のそれぞれは、リング291と、複数の板状部92と、複数の板状部92のそれぞれの外側の端部に接続される磁極部95とを含んでいる。板状部92と磁極部95とでティースが形成されている。複数の磁性体290のそれぞれは、リング231の内周部231aを構成する内周部291aと、リング231の6つの凹部231arを形成する6つの凹部291arとを含んでいる。軸方向から見て、凹部291arは内周側が開放された矩形状又は正方形状に形成されている。したがって、凹部291arが積み重なって形成されたステータコア37の凹部231arは、軸方向における上側及び下側と、径方向における内側とが開放された直方体状に形成されている。ステータコア237では、これらの凹部231arのそれぞれの内側に突出部236がある。
【0066】
また、6つの突出部236のそれぞれに着目すると、図10に示すように、軸方向から見て、ステータコア237の中心C(シャフト20の中心C)と突出部236とを通って径方向に延びる直線La上に板状部32と磁極部35とが並んでおり、さらに言えば、突出部236、凹部231ar、板状部32、及び磁極部35のそれぞれは、直線Laに対して概ね線対称の形状を有している。すなわち、本実施形態では、周方向において、板状部32に対応するリングの内周部231aの部分(直線La上にある内周部231aの部分)は凹部231arを有しており、この凹部231arの内側に突出部236がある。
【0067】
ステータコア237の6つの突出部236は、3つの第1突出部238と、3つの第2突出部239とを含んでいる。3つの第1突出部238は、120°の間隔を空けて配置された3つの突出部236である。3つの第2突出部239は、3つの第1突出部238に対して60°回転した位置にある3つの突出部236である。軸方向において、第1突出部238を形成する突出部296(以下、「第1突出部298」と呼称する場合がある。)を有する磁性体290(以下、「第1磁性体294」と呼称する場合がある。)と、第2突出部239を形成する突出部296(以下、「第2突出部299」と呼称する場合がある。)を有する磁性体290(以下、「第2磁性体297」と呼称する場合がある。)とが、軸方向において交互に積み重ねられている。
【0068】
第1磁性体294は、3つの第1突出部298を有している。複数の第1磁性体294のそれぞれの3つの第1突出部298が、軸方向に概ね1枚の磁性体290の厚み分の間隔を空けて積み重なることによって、3つの第1突出部238が3つの凹部231arのそれぞれの内側に形成されている。また、第2磁性体297は、3つの第2突出部299を有している。複数の第2磁性体297のそれぞれの3つの第2突出部299が、軸方向に概ね1枚の磁性体290の厚み分の間隔を空けて積み重なることによって、3つの第2突出部239が他の3つの凹部231arのそれぞれの内側に形成されている。周方向において、第2突出部299は、第1突出部298に対して60°回転した位置にある。
【0069】
本実施形態におけるステータコア237によれば、複数の突出部236のそれぞれが凹部231arの内側にあるため、突出部236に干渉されることなく、ステータコア237の内周部231aを筒部13の外周面13eに嵌め入れることができる。したがって、本実施形態のステータコア237によれば、圧入によってステータコア237を筒部13に取り付けることが容易である。
【0070】
本実施形態におけるステータコア237は、複数の突出部236を有するため、リング231、板状部32、及び磁極部35は平らで連続した面を備える。よって、第1実施形態と同様に、リング231、板状部32、及び磁極部35を通る磁束が通過する経路を確保することができる。すなわち、本実施形態によれば、モータが良好な性能を発揮することを可能にし得、また、このようなステータコア237を備えるモータは、良好な性能を発揮し得る。
【0071】
ステータコア237は、図11に示す積層体750を加締めることによって製造することができる。図11は、積層体750を示す斜視図である。
【0072】
図11に示すように、積層体750は、複数の磁性板700を軸方向に積み重ねることによって構成されており、第1実施形態に係る積層体550と概ね同様の構成を有している。すなわち、積層体750を構成する複数の磁性板700のそれぞれは、積層体550を構成する複数の磁性板500のそれぞれと概ね同様の構成を有している。一方、磁性板700は、以下の点で積層体550を構成する磁性板500と異なっている。すなわち、磁性板700のリング291の内周部291aには、複数の(本実施形態では6つの)凹部291arが形成されている。磁性板700において、6つの凹部291arのうち3つの凹部291arからスポーク711が径方向における内側に向かって延びている。磁性板700において、3つのスポーク711は、周方向において等間隔に(すなわち、120°の間隔を空けて)配置されている。磁性板700において、3つのスポーク711は、磁性板500の内側部分512と同様の構成を有する内側部分512に接続している。磁性板700は、内側部分512と3つのスポーク711とを含む中央部710を有している。
【0073】
積層体750は、下側にある磁性板700(第1磁性板700A)に対して上側にある磁性板(第2磁性板700B)を60°回転させて積み重ねることによって構成される。このため、図11に示すように、複数の第1磁性板700Aのうち軸方向において隣接する1対の第1磁性板700A,700Aにおいて、それぞれのスポーク711Aの間には、1枚の磁性板700の厚み分の隙間が形成されている。同様に、軸方向において隣接する1対の第2磁性板700B,700Bにおいて、それぞれのスポーク711Bの間には、1枚の磁性板700の厚み分の隙間が形成されている。一方、軸方向において、複数の磁性板700のそれぞれの内側部分512は互いに接触(実質的に面接触)して積み重なっている。なお、積層体750において、積み重ねられたスポーク711Aを総称して「スポーク711A群」と呼ぶことがあり、積み重ねられたスポーク711Bを総称して「スポーク711B群」と呼ぶことがある。
【0074】
本実施形態では、積層体750を構成する複数の磁性板700のそれぞれの内側部分512を第1実施形態と同様に加締める(加締め工程)。これにより、積層体750を構成する複数の磁性板700が内側部分512の加締め部515を介して一体化する。磁性板700は、中央部710を有することを除いて磁性体290と同様の構成を有する。このため、磁性板700が積み重ねられて構成された積層体750も、リング231と、内周部231aと、複数の板状部32と、複数の磁極部35とを含んでいる。また、積層体750において、第2磁性板700Bが上述の第1磁性体294に対応し、第1磁性板700Aが上述の第2磁性体297に対応する。
【0075】
加締め工程により積層体750の複数の磁性板500を一体化させた後、第1実施形態と同様に、積層体750の複数の板状部32のそれぞれにインシュレータ34(図2参照)を装着し、さらに、装着された複数のインシュレータ34のそれぞれにコイル33(図2参照)を巻き回す(装着工程)。そして、装着工程の後、積層体550の複数の(本実施形態では3つの)スポーク711A群及び複数の(本実施形態では3つの)スポーク711B群を、第1実施形態と同様の方法により切断する(切断工程)。ただし、本実施形態における切断工程では、スポーク711A群及びスポーク711B群のそれぞれにおいて、凹部231arの内側にある箇所でスポーク711A群及びスポーク711B群を切断することに留意する。
【0076】
こうして、本実施形態に係るステータコア237を有するステータが製造される。
【0077】
この製造方法によれば、加締め部515を形成した中央部710を切断するため、リング、板状部、及び磁極部等、ステータコアにおける磁束が通る部分を磁性体で連続的に形成して、ステータコアを製造することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、凹部231ar(凹部291ar)の形状は上述したものに限られない。例えば、図12に示すような凹部231arA(凹部291arA)を有する積層体750Aを構成してもよい。凹部231arA(凹部291arA)は、径方向において内側に行くに従って広がっており、軸方向から見て等脚台形状に形成されている。このような凹部231arA(凹部291arA)では、凹部231arAの内側の空間が末広がりになっているため、スポーク711A群及びスポーク711B群における切断箇所に金型MoやレーザLrをアプローチさせ易い。そのため、スポーク711A群及びスポーク711B群をより容易に切断することができる。そして、このような変形例に係る積層体750Aから製造されたステータコアでは、凹部が径方向における内側に行くにつれて末広がりになっており、この凹部の内側に突出部がある。
【0079】
以上、本発明について上記実施形態及び各変形例を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
上述の実施形態では、軸方向において第1磁性体と第2磁性体とが交互に積み重なっている例を説明した。しかし、軸方向において1層又は数層にわたって第1磁性体を積み重ねた後、数層にわたって第2磁性体を積み重ねるようにしても構わない。あるいは、軸方向において数層にわたって第1磁性体を積み重ねた後、1層又は数層にわたって第2磁性体を積み重ねるようにしても構わない。
【0081】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明を、インナーロータ型のブラシレスモータ、ブラシ付きモータ、及びファンモータなどの他のタイプのモータに適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1…モータ、30…ステータ、40…ロータ、90,290…磁性体、91,291…リング、91a,291a…内周部、92…板状部、94…第1磁性体、95…磁極部、96…突出部、97…第2磁性体、291ar,291arA…凹部、Gp1,Gp2…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12