(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001126
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】医療用排煙器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20241225BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61B17/00
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100545
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】390032919
【氏名又は名称】九州クリエートメディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】樋口 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晋一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK70
4C160NN12
(57)【要約】
【課題】簡易かつコンパクトな構成でもって、切開デバイスの位置ずれを確実に防止することが可能であり、切開施術を安定して行うことができる医療用排煙器具を提供する。
【解決手段】切開デバイス1のシース4の軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能な医療用排煙器具10において、シース4に装着する長尺な筒状の本体部11と、本体部11の内部でシース4を挿通可能な第1内腔21と、本体部11の内部で煙を吸引可能な第2内腔22とを有し、本体部11の基端側に、シース4に対して固定可能な固定部30を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開施術に用いる切開デバイスのシースの軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能な医療用排煙器具において、
前記シースの外周に装着する長尺な筒状に形成された本体部と、
前記本体部の内部で軸方向に延びて前記シースを挿通可能な第1内腔と、
前記本体部の内部で軸方向に延びて煙を吸引可能な第2内腔と、を有し、
前記本体部の基端側に、前記シースに対して固定可能な固定部を設けたことを特徴とする医療用排煙器具。
【請求項2】
前記固定部は、互いに開閉する一対の挟持片の一方から他方に貫通するネジの締め付けにより、各挟持片の間に挟んだ前記シースと前記本体部の基端を固定可能であることを特徴とする請求項1に記載の医療用排煙器具。
【請求項3】
前記固定部の各挟持片の内側に、前記本体部の基端側に開口した前記第2内腔の基端開口を塞ぐパッキンを設け、
前記本体部の基端側に、前記各挟持片の間を通り前記第2内腔の基端開口の手前に連通して煙を外部へ吸い出す吸引口を設けたことを特徴とする請求項2に記載の医療用排煙器具。
【請求項4】
前記吸引口は、前記第2内腔を通じて煙を外部に吸い出すための吸引用チューブを接続可能な管状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の医療用排煙器具。
【請求項5】
前記本体部の先端側のうち前記第2内腔が開口する部位は、前記本体部の軸心と鋭角に交差する斜め方向にカットされたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の医療用排煙器具10。
【請求項6】
前記本体部の先端側に開口した前記第1内腔の先端開口より、その間近な位置にて前記シースの先にある切開部が突出して配置されたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の医療用排煙器具10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切開施術に用いる切開デバイスのシースの軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能な医療用排煙器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より医療分野における内視鏡下手術にて、電気メス等の切開デバイスを用いて生体組織を切開する際には、生体組織から煙(サージカルスモーク)が発生する。この煙は、内視鏡の視界不良やレンズの汚染の原因となるため、煙を除去するための各種の提案がなされていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、煙の発生を検出する煙発生判定回路が、TVカメラで撮影された内視鏡画像に基づいて腹腔内で発生する煙を検出した場合、制御部が気腹装置を制御して煙の除去を行う煙除去システムが開示されている。ここで気腹装置は、視野および処置領域を確保するために腹腔内を膨らませる送気ガスの供給と、腹腔内に発生する煙の体外への排出を行うものであった。
【0004】
この煙除去システムでは、切開デバイスである高周波処置具の先端部に焼灼用電極が突設され、高周波処置具の内部には、煙を吸引する吸引口が形成されると共に、焼灼用電極に繋がる電線等が配置されている。つまり、特許文献1が開示する煙除去システムにおける高周波処置具内には、患部を高周波で切開するための電気コード等を挿通する内腔と、煙を吸引するための吸引口とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来技術では、切開デバイスにより生体組織の切開を行うことで発生する煙を吸引することができるため、施術者は患部を良好に観察可能な状態で切開を行うことができる一方で、切開デバイスが施術中に位置ずれすることにより、切開施術を安定して行うことができない事態が生じ得る問題があった。また、全体的に構成が複雑であり大掛かりなものであった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、簡易かつコンパクトな構成でもって、切開デバイスの位置ずれを確実に防止することが可能であり、切開施術を安定して行うことができる医療用排煙器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、前記した目的を達成するために、
切開施術に用いる切開デバイスのシースの軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能な医療用排煙器具において、
前記シースの外周に装着する長尺な筒状に形成された本体部と、
前記本体部の内部で軸方向に延びて前記シースを挿通可能な第1内腔と、
前記本体部の内部で軸方向に延びて煙を吸引可能な第2内腔と、を有し、
前記本体部の基端側に、前記シースに対して固定可能な固定部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る医療用排煙器具によれば、簡易かつコンパクトな構成でもって、切開デバイスの位置ずれを確実に防止することが可能であり、切開施術を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る医療用排煙器具を電気メスに装着した状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る医療用排煙器具を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る本体部の先端側をカットせず、その先端面が軸心と直交する平面の場合を示す(a)斜視図、(b)正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る本体部の先端側のうち第2内腔が開口する部位を軸心と鋭角に交差する斜め方向にカットした場合を示す(a)斜視図、(b)正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る本体部における第1内腔と第2内腔の断面形状を例示した説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る医療用排煙器具の全体構成を示す(a)正面図、(b)底面図、(c)拡大左側面図、(d)拡大右側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る医療用排煙器具の全体構成を示す(a)平面図、(b)B-B線断面図、(c)固定部の拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る固定部を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る固定部を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る固定部を示す背面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る固定部の各挟持片を開いた状態を示す左側面である。
【
図12】本発明の実施形態に係る固定部の各挟持片を閉じた状態を示す左側面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療用排煙器具10は、切開施術に用いる切開デバイスのシースの軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能なものである。なお、以下に説明する実施形態で示される構成要素、形状、数値等は、何れも本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
【0012】
<切開デバイス(電気メス1)>
一般に切開デバイスは、シースの先端側より切開用の高エネルギーを放出する切開部を突出させたものであり、切開用エネルギーを利用して生体組織の切開を行うと共に、切開された患部の凝固(止血)も行う。切開デバイスとしては、具体的には例えば、電気メス、超音波メス、レーザーメス、高周波焼灼装置等が挙げられる。以下、本実施形態に係る医療用排煙器具10では、切開デバイスの一例として電気メス1に適用した例を説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の電気メス1は、鉗子状に構成されており、操作用のハンドル2の先端側に、ナット3を介して軸方向に延びるシース4が取り付けられている。ハンドル2は、指を入れて開閉操作する一対の丸柄2aと平柄2bからなる。シース4は、ジョーインサート5を挿通する細管状の部材であり、医療用排煙器具10を装着する主要部である。ジョーインサート5の基端側は、ナット3内を通じてハンドル2側に一体に取り付けられている。
【0014】
ジョーインサート5の先端側にある切開部6は、シース4の先端開口より突出している。切開部6は、一対のメス先電極6a、6bからなり、ハンドル2の操作によって、図示省略した開閉機構を介して開閉し、患部を掴んだ状態で切開できるものである。なお、本実施形態では、一対のメス先電極6a、6bを有するバイポーラ型の電気メス1を切開デバイスの一例として採用しているが、メス先電極6a,6bが1個のモノポーラ型の電気メスを採用しても良い。
【0015】
<医療用排煙器具10の概要>
図1、
図2に示すように、医療用排煙器具10は、電気メス1のシース4の外周に装着する長尺な筒状に形成された本体部11と、本体部11の内部で軸方向に延びてシース4を挿通可能な第1内腔21(
図4(a)参照)と、本体部11の内部で軸方向に延びて煙を吸引可能な第2内腔22(
図4(a)参照)と、を有している。そして、医療用排煙器具10は、本体部11の基端側に、シース4に対して固定可能な固定部30を設けたことに特徴がある。医療用排煙器具10は、予め電気メス1と組み合わせておき、一ユニットとして構成することもできる。
【0016】
<本体部11>
図1、
図2に示すように、本体部11は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の比較的硬質な樹脂により細長い円筒形状に一体的に形成されている。本体部11は、電気メス1のシース4の基端側から先端側に亘って外周に装着する長さを備えている。ここで本体部11の先端から、電気メス1のシース4の先端側にあるジョーインサート5の切開部6が突出している。一方、本体部11の基端は、電気メス1のシース4の基端側に固定する固定部30の内側に配置されている。
【0017】
本体部11の内部には内腔として、第1内腔21と第2内腔22とが独立した管路として軸方向に延びるように形成されている。ここで例えば、シース4の外径が5mmの電気メス1に用いる場合は、本体部11の内部に第1内腔21だけでなく第2内腔22も設ける関係上、本体部11の外径は、シース4の外径の2倍の10mmに設定される。本体部11の外径は、遠位の先端から手元の基端まで同一の太さに設定されている。なお、このような本体部11は、例えば3Dプリンターによって形成することが可能である。
【0018】
<<本体部11の先端側のカット>>
図3(a)、
図3(b)は、本体部11の先端側をカットせず、その先端面が軸心と直交する平面の場合(カット無し)における斜視図、正面図である。一方、
図4(a)、
図4(b)は、本体部11の先端側のうち第2内腔22が開口する部位を軸心と鋭角に交差する斜め方向にカットした場合(カット有り)における斜視図、正面図である。
図3、
図4において符号「B」、「T」は、それぞれ本体部11の基端側、先端側を示す。また、
図4において符号「CT」は、本体部11内の第2内腔22の先端開口がカットされていることを示す。
【0019】
本実施形態に係る医療用排煙器具10の本体部11は、
図4(a)、
図4(b)に示した「カット有り」を採用している。
図3と
図4を比較すれば分かるように、第2内腔22の先端側は、本体部11の軸心と鋭角に交差する斜め方向にカット(CT)されているので、第2内腔22の開口面積が大きくなる。このため、生体組織の切開時に発生する煙の吸引効率が向上すると共に、施術者が電気メス1を使用する際、本体部11の先端側の角が患部以外に当たって施術効率が低下することを防止することができる。
【0020】
<第1内腔21>
図5に示すように、第1内腔21は、本体部11の内部で軸方向に延びて、シース4(
図1参照)を挿通可能な管路である。第1内腔21の先端は、本体部11の先端面より外部に開口し、第1内腔21の基端は、本体部11の基端面より外部に開口している。また、第1内腔21の内径は、電気メス1のシース4の径よりも若干大きく設定されており、電気メス1のシース4を、その先端側に突出したジョーインサート5の切開部6から挿通させることができる。
【0021】
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)に示すように、第1内腔21の断面形状は、例えば、本体部11の軸心から偏心した偏心点を中心とする円形状である。ただし、第1内腔21の断面形状は、必ずしも略円形状には限られない。なお、第1内腔21に対して電気メス1を挿通させて組み付けた後は、電気メス1のシース4が第1内腔21内を占めることになる。
【0022】
<第2内腔22>
図5に示すように、第2内腔22は、本体部11の内部で軸方向に延びて、生体組織の切開、凝固により発生する煙を吸引するための管路である。第2内腔22の先端は、本体部11の先端面より外部に開口し、第2内腔22の基端は、本体部11の基端面より外部に開口している。また、
図5(a)に示すように、第2内腔22の断面形状は、本体部11の軸心から偏心した偏心点を中心とする略楕円形状である。なお、第2内腔22の断面形状は、必ずしも
図5(a)に示した略楕円形状とは限らない。
【0023】
例えば、
図5(b)に示すように、第2内腔22Aの断面形状を、略楕円形状の長軸の両側を第1内腔21に沿うように湾曲させた湾曲楕円形状とすることもできる。要するに、可能な限り第2内腔22Aの断面積を大きく設定し、煙の吸引効率を高めることが好ましい。なお、
図5(c)に示すように、本体部11の内部には、第1内腔21や第2内腔22に加えて、例えば、本体部11の軸心に垂直な鉛直方向に対して左右対称の一対の小円形状の第3内腔23,23等を設けても良い。各第3内腔23は、例えば、それぞれの基端を第2内腔22に連通させて、煙の吸引する用途に用いたり、あるいは別の用途に使用しても良い。
【0024】
このような第2内腔22は、本体部11の内部で主要部を占める第1内腔21の縦断面の領域には重ならないように断面形状が設定されている。また、
図7(c)、
図8に示すように、本体部11の基端側には、吸引用チューブ40を接続するために、第2内腔22と連通する吸引口24を固定して煙を外部へ吸い出すための取付口12が設けられている。なお、吸引用チューブ40について詳しくは後述する。
【0025】
<固定部30>
図6から
図12に示すように、固定部30は、本体部11の基端側で、第1内腔21に挿通された電気メス1のシース4を固定するものである。固定部30は、ヒンジ31により開閉する一対の挟持片32、32を有し、一方の挟持片32から他方の挟持片32に貫通する固定用のネジ33の締め付けにより、電気メス1のシース4の外周に対して固定可能なものである。なお、固定部30は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の硬質の合成樹脂等によって一体的に形成されている。
【0026】
各挟持片32の内側には、互いに合わさることでシース4の外周に合致する貫通孔34となる半円形断面の内部空間が形成されている。各挟持片32の一端側は、薄肉に連なるヒンジ31によって開閉可能に連結され、各挟持片32の他端側には、ネジ33の頭部33aより延出した脚部33b(
図10参照)を通すネジ孔35が設けられている。また、
図8に示すように、ネジ33の頭部33a側に位置する一方の挟持片32には、ネジ孔35のある基端側を開閉時に弾性変形し易くするためのスリット32aが設けられている。
【0027】
図7(c)に示すように、固定部30の貫通孔34には、シース4に外嵌させた本体部11の基端側を所定長さまで挿入可能であり、本体部11の基端面をパッキン36を介して当接させる段部34aが設けられている。段部34aは、貫通孔34の一端よりシース4のみを挿通させ、貫通孔34の他端より本体部11は通さないストッパとなる。この段部34aと本体部11の基端面との間に介在されたパッキン36は、第2内腔22の基端開口を塞ぐように覆う一方、第1内腔21の基端開口に合致する挿通孔37が設けられており、シース4はそのまま貫通させることができる。
【0028】
このような固定部30によれば、ネジ33を締め付けることにより、
図7(c)において、各挟持片32の基端寄りの後半部分では、シース4の基端側を直接固定することができ、各挟持片32の先端寄りの前半部分では、本体部11の基端側を固定することができる。各挟持片32の前半部分で、本体部11の基端側を固定することは、本体部11内の第1内腔21に挿通されたシース4も固定することになる。一方、ネジ33を緩めれば、固定部30による本体部11およびシース4の基端側に対する固定状態を解除することができる。
【0029】
<吸引用チューブ40>
図1に示すように、吸引用チューブ40は、細長く延びた長尺な管状であり、自由に湾曲させることができる可撓性を有しているが、座屈による圧力損失を防ぐために、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の比較的硬質な樹脂により形成すると良い。
図7(c)に示すように、吸引用チューブ40の一端は、本体部11の基端側に突設された吸引口24に圧入固定される。
【0030】
吸引口24は、本体部11の基端側で第2内腔22の基端開口の手前(取付口12)に連通して煙を外部へ吸い出すものであり、例えば中空の管状に形成されている。ここで吸引口24は、例えば第2内腔22内に若干挿入させた状態で取付口12に接着固定されている。また、固定部30において、各挟持片32の他端間には、各挟持片32を閉じて本体部11の基端側を固定しても、吸引口24との干渉を避けるための隙間38(
図6(b)参照)が生じるように設定されている。
【0031】
<医療用排煙器具10の作用>
以下、本実施の形態に係る医療用排煙器具10の作用について説明する。
先ず、医療用排煙器具10を製造するには、第1内腔21と第2内腔22を内部に備える本体部11を形成する。本体部11は、例えば3Dプリンターによって形成すると良い。また、本体部11は、樹脂製の棒状体に後から2つの内腔21,22を穿設したり、あるいは、成形型を利用して一体成形することもできる。次いで、本体部11の基端側に設けた取付口12(
図7(c)参照)に管状の吸引口24を接着固定する。
【0032】
本体部11の第1内腔21内には、その基端開口より電気メス1のシース4を切開部6のある先端側から挿入する。これにより、医療用排煙器具10は、電気メス1のシース4の軸方向に亘って装着される。続いて、固定部30の各挟持片32を開いた状態にして、その間に
図7(c)に示すように、互いに位置合わせした本体部11の基端とシース4とを挟み込む。
【0033】
固定部30の内側には、段部34aと本体部11の基端面との間にパッキン36を介在させる。これにより、本体部11における第2内腔22の基端開口は、パッキン36によって塞がれるため、第2内腔22から吸引用チューブ40に至る排煙ルートの気密性を高めることができる。なお、パッキン36には、本体部11における第1内腔21の基端開口に合致する挿通孔37が設けられており、シース4は、パッキン36をそのまま貫通している。
【0034】
そして、一対の挟持片32、32を閉じてネジ33を締め付けることにより(
図12参照)、本体部11およびシース4の基端側を確実に固定することができる。これにより、電気メス1のシース4の軸方向における本体部11の相対的な位置ずれを防止することができる。一方、ネジ33を緩めれば(
図11参照)、固定部30を本体部11と共に、シース4の軸方向に移動させることが可能となる。よって、電気メス1のシース4の軸方向における本体部11の相対的な位置を、本体部11の先端より切開部6がちょうど突出するように適宜調整することができる。
【0035】
医療用排煙器具10を使用する時は、本体部11の吸引口24に接続してある吸引用チューブ40の基端を、図示省略した吸引機器に取り付ける。また、図示省略したが電気メス1の電気コードの端子を、電気メス1の制御装置に接続すれば、施術者が本医療用排煙器具10を使用可能な状態となる。そして、施術者の手技により、本体部11の先端側より突出した切開部6は、患者の体腔内にて切開施術する患部の近傍に移動させられ、各メス先電極6a,6bが開閉されたりしながら患部の切開ないし凝固が行われる。
【0036】
電気メス1の手技中に生体組織から発生した煙は、本体部11の先端面に開口した第2内腔22に取り込まれ、吸引口24から吸引用チューブ40を通って外部に排出される。このように、本医療用排煙器具10によれば、煙を吸収しながら電気メス1による切開施術を行うことができ、煙をその発生源(患部)の直ぐ間近から効率良く吸引することができる。また、本医療用排煙器具10によれば、従来技術における排煙機器用のトロッカーを減らすことができる。
【0037】
また、
図4に示すように、本体部11の先端側のうち第2内腔22が開口する部位を、軸心と鋭角に交差する斜め方向にカット(CT)したことにより、第2内腔22の開口面積が大きくなる。このため、生体組織の切開時に発生する煙の吸引効率が向上すると共に、本体部11の先端側の角が患部以外に当たって施術効率が低下することを防止することができる。
【0038】
そして、本医療用排煙器具10による手技中は、特に固定部30によって、前述したように本体部11およびシース4の基端側を確実に固定することができる。このような簡易な構成による容易な操作によって、電気メス1のシース4の軸方向における本体部11の相対的な位置ずれを確実に防止することが可能であり、切開施術を安定して行うことができる。また、固定部30の内側では、
図7(c)に示すように、パッキン36によって第2内腔22の基端開口は塞がれるため、吸引口24以外における第2内腔22の基端側の気密性を確保することができる。
【0039】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0040】
先ず、本発明は、切開施術に用いる切開デバイス1のシース4の軸方向に亘って装着され、切開施術により発生する煙を吸引可能な医療用排煙器具10において、
前記シース4の外周に装着する長尺な筒状に形成された本体部11と、
前記本体部11の内部で軸方向に延びて前記シース4を挿通可能な第1内腔21と、
前記本体部11の内部で軸方向に延びて煙を吸引可能な第2内腔22と、を有し、
前記本体部11の基端側に、前記シース4に対して固定可能な固定部30を設けたことを特徴とする。
【0041】
このような医療用排煙器具10によれば、本体部11の第1内腔21に、切開デバイス1のシース4を挿通すれば、シース4の軸方向に亘って容易に装着することができる。そして、切開デバイス1の手技中に発生した煙は、本体部11の第2内腔22によって吸引可能であり、外部に排出することができるため、煙を原因とする内視鏡の視界不良やレンズの汚染を防止することができる。
【0042】
そして、本医療用排煙器具10によれば、特に、本体部11の基端側に設けた固定部30によって、シース4に対して固定することができる。これにより、切開デバイス1のシース4に対する本体部11の位置ずれを確実に防止することが可能であり、切開施術を安定して行うことができる。なお、ここでの切開デバイス1は、具体的には例えば前述した電気メス1である。
【0043】
また、本発明では 前記固定部30は、互いに開閉する一対の挟持片32の一方から他方に貫通するネジ33の締め付けにより、各挟持片32の間に挟んだ前記シース4と前記本体部11の基端を固定可能であることを特徴とする。
【0044】
このような固定部30によれば、簡易な構成による容易な操作によって、切開デバイス1のシース4の軸方向における本体部11の相対的な位置ずれを確実に防止することが可能となり、コストアップを招く虞もない。
【0045】
また、本発明は 前記固定部30の各挟持片32の内側に、前記本体部11の基端側に開口した前記第2内腔22の基端開口を塞ぐパッキン36を設け、
前記本体部11の基端側に、前記各挟持片32の間を通り前記第2内腔22の基端開口の手前に連通して煙を外部へ吸い出す吸引口24を設けたことを特徴とする。
【0046】
このような構成によれば、本体部11の基端側における吸引口24を、切開デバイス1の本体部分(ナット3やハンドル2)と干渉しない方向に向けて開口させることができる。また、切開デバイス1の本体部分に向かう第2内腔22の基端開口は、パッキン36によって閉じることが可能であるため、当該部位における気密性を高めることができる。
【0047】
また、本発明では 前記吸引口24は、前記第2内腔22を通じて煙を外部に吸い出すための吸引用チューブ40を接続可能な管状に形成されたことを特徴とする。
このような構成によれば、吸引口24に対して吸引用チューブ40を容易に接続することができると共に、吸引用チューブ40を切開デバイス1の本体部分と干渉しない方向へ容易に配索することができる。
【0048】
また、本発明では 前記本体部11の先端側のうち前記第2内腔22が開口する部位は、前記本体部11の軸心と鋭角に交差する斜め方向にカットされたことを特徴とする。
このような構成によれば、本体部11の限られた径の範囲内にて、第2内腔22の開口面積をなるべく大きく確保することができる。そのため、生体組織の切開時に発生する煙の吸引効率が向上すると共に、本体部11の先端側の角が患部以外に当たって施術効率が低下することを防止することができる。
【0049】
さらに、本発明は 前記本体部11の先端側に開口した前記第1内腔21の先端開口より、その間近な位置にて前記シース4の先にある切開部6が突出して配置されたことを特徴とする。
このような構成により、切開部6を第1内腔21の先端開口から離れた位置ではなく、先端開口の間近な位置とすることにより、同様に第2内腔22の先端開口も切開部6の近傍に位置する。そのため、手技中に発生する煙を、その発生源(患部)の直ぐ間近から効率良く吸引することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば本体部11、および固定部30の具体的な形状や相対的な大きさは、図示したものに限定されることはない。
【0051】
また、本実施形態においては、医療用排煙器具10を装着する切開デバイスとして、電気メス1を採用した場合について説明したが、他に例えば、超音波メス、レーザーメス等の切開デバイスに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る医療用排煙器具は、切開デバイスとして電気メスへの装着に限定されるものではなく、他の様々なタイプの切開デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…医療用排煙器具
11…本体部
12…取付口
21…第1内腔
22…第2内腔
23…第3内腔
24…吸引口
30…固定部
31…ヒンジ
32…挟持片
33…ネジ
34…貫通孔
35…ネジ孔
36…パッキン