IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-樹脂発泡シートの製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025112748
(43)【公開日】2025-08-01
(54)【発明の名称】樹脂発泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/38 20060101AFI20250725BHJP
   B29C 44/60 20060101ALI20250725BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20250725BHJP
【FI】
C08J9/38 CES
B29C44/60
B29C44/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007178
(22)【出願日】2024-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】三輪 孟男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA22
4F074AA24
4F074AD08
4F074BA13
4F074BB02
4F074BB25
4F074CA29
4F074CC03X
4F074CC03Z
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074CC22X
4F074CD01
4F074DA09
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA39
4F074DA57
4F214AA03
4F214AB02
4F214AB03
4F214AG01
4F214AG20
4F214AR08
4F214UA07
4F214UG22
4F214UR02
4F214UW26
(57)【要約】
【課題】樹脂発泡シートの気泡状態を所望の状態に調整する新規な技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面と、を有する樹脂発泡シートの製造方法であって、
樹脂発泡シートの挿入方向上流側から第1ロール対、第2ロール対、及び第3ロール対を有する3組以上のロール対の間を、前記樹脂発泡シートを圧送することで気泡状態を調整する気泡調整工程を含み、所定の条件(1)~(4)を満たす、樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面の反対側の面である第2面と、を有する樹脂発泡シートの製造方法であって、
樹脂発泡シートの挿入方向上流側から第1ロール対、第2ロール対、及び第3ロール対を有する3組以上のロール対の間を、前記樹脂発泡シートを圧送することで気泡状態を調整する気泡調整工程を含み、下記の条件(1)~(4)を満たす、樹脂発泡シートの製造方法。
(1)前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と、前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2とが、V2-1/V2-2=0.9~1.1である。
(2)前記第1ロール対の前記第1面に接するロールの速度V1-1と、前記第1ロール対の前記第2面に接するロールの速度V1-2とが、V1-1>V1-2である。
(3)前記第3ロール対の前記第1面に接するロールの速度V3-1と、前記第3ロール対の前記第2面に接するロールの速度V3-2とが、V3-1<V3-2である。
(4)V1-1/V1-2=1.05~1.43、及び/又は、V3-1/V3-2=0.72~0.95である。
【請求項2】
更に、下記の条件(5)を満たす、請求項1に記載の樹脂発泡シートの製造方法。
(5)前記第1ロール対の前記第1面に接するロールの速度V1-1と、前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2との平均速度V2m、の速度比が、V1-1/V2m=0.90~1.14である。
【請求項3】
更に、下記の条件(6)を満たす、請求項1又は2に記載の樹脂発泡シートの製造方法。
(6)前記第3ロール対の前記第1面に接するロールの速度V3-1と、前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2との平均速度V2m、の速度比が、V3-1/V2m=0.86~1.10である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、樹脂発泡シートの製造方法に関する。より詳しくは、樹脂発泡シートを圧送することで気泡状態を調整する工程を有する樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡シートは、緩衝性、断熱性、撥水性、防湿性、防音性等に優れることから、様々な用途で用いられており、各用途に適するように、様々な技術改良がなされている。樹脂発泡シートの気泡状態を所望の状態に調整するために、シート状に成形された樹脂発泡シートを、ロール対の間に通して圧縮することで、気泡膜を破裂させて連通化する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、互いに異なる周速度を有し且つ対向面における回転方向が互いに同一方向となるように回転する一対のロール間の隙間に、ポリオレフィン系樹脂からなり且つ独立気泡を有する発泡シートを供給し、上記独立気泡を有する発泡シートに圧縮力と剪断応力を同時に加えて、上記独立気泡を有する発泡シートの独立気泡の一部を破裂させて独立気泡同士を連通させて連続気泡とする工程を行うことで、気泡径が小さく種々の用途に展開することができ且つ真空成形性にも優れたポリオレフィン系樹脂架橋発泡シートを製造する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/043570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、シート状に成形された樹脂発泡シートを、ロール対の間に通すことで、樹脂発泡シートの気泡状態を所望の状態に調整する技術が開発されつつあるが、これまでの技術ではシートが撚れて皺が入ってしまうといった問題があった。また、前記特許文献1の技術では、2組のロール対を用いることが前提であり、更にロール対を増やしたい場合には、偶数セットのロール対が必要となり、設備の大型化の問題もあった。仮に、前記特許文献1の技術を3組のロール対で行った場合、シートの一方の面と他方の面における破泡力に差が生じることが予測される。このため、シート両面の破泡力を均等にするためには、シートを裏返して複数回ロール対を通す必要が生じ、製造時間や製造コストの増大につながるといった問題もあった。
【0006】
そこで、本技術では、樹脂発泡シートの気泡状態を所望の状態に調整する新規な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意研究を行ったところ、3組以上のロール対を用いて、それぞれのロール対の速度を工夫することで、良好な外観を有する樹脂発泡シートを製造することに成功し、本技術を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本技術では、まず、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面と、を有する樹脂発泡シートの製造方法であって、
樹脂発泡シートの挿入方向上流側から第1ロール対、第2ロール対、及び第3ロール対を有する3組以上のロール対の間を、前記樹脂発泡シートを圧送することで気泡状態を調整する気泡調整工程を含み、下記の条件(1)~(4)を満たす、樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
(1)前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と、前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2とが、V2-1/V2-2=0.9~1.1である。
(2)前記第1ロール対の前記第1面に接するロールの速度V1-1と、前記第1ロール対の前記第2面に接するロールの速度V1-2とが、V1-1>V1-2である。
(3)前記第3ロール対の前記第1面に接するロールの速度V3-1と、前記第3ロール対の前記第2面に接するロールの速度V3-2とが、V3-1<V3-2である。
(4)V1-1/V1-2=1.05~1.43、及び/又は、V3-1/V3-2=0.72~0.95である。
本技術に係る樹脂発泡シートの製造方法では、更に、下記の条件(5)を満たしていてもよい。
(5)前記第1ロール対の前記第1面に接するロールの速度V1-1と、前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2との平均速度V2m、の速度比が、V1-1/V2m=0.90~1.14である。
また、本技術に係る樹脂発泡シートの製造方法では、更に、下記の条件(6)を満たしていてもよい。
(6)前記第3ロール対の前記第1面に接するロールの速度V3-1と、前記第2ロール対の前記第1面に接するロールの速度V2-1と前記第2ロール対の前記第2面に接するロールの速度V2-2との平均速度V2m、の速度比が、V3-1/V2m=0.86~1.10である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本技術に係る樹脂発泡シート1の製造方法で用いることができる3組のロール対R1-1,R1-2,R2-1,R2-2,R3-1,R3-2と、各ロール対の間を樹脂発泡シート1が圧送される様子を模式的に示す模式概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
1.樹脂発泡シート1の製造方法
本技術に係る樹脂発泡シート1の製造方法は、気泡調整工程を行う方法である。その他、本技術に係る製造方法では、一般的な樹脂発泡シートの製造工程で行う混練工程、発泡工程、成形工程等を必要に応じて行うことができる。
【0012】
なお、本技術に係る製造方法は、少なくとも気泡調整工程を行う方法であり、気泡調整工程に供する気泡調整前樹脂発泡シートの製造は、別の機関が行うことも可能である。即ち、ある機関が混練工程、発泡工程、必要に応じて成形工程等を行って製造された気泡調整前樹脂発泡シートを用いて、他の機関が本技術の気泡調整工程を行って本技術に係る気泡調整された樹脂発泡シート1を製造することも可能であるし、同一の機関が混練工程、発泡工程、必要に応じて成形工程等を行って気泡調整前樹脂発泡シートの製造を行った後に、気泡調整工程を行って本技術に係る気泡調整された樹脂発泡シート1を製造することも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0013】
(A)気泡調整工程
図1は、本技術に係る樹脂発泡シート1の製造方法で用いることができる3組のロール対R1-1,R1-2,R2-1,R2-2,R3-1,R3-2と、各ロール対の間を樹脂発泡シート1が圧送される様子を模式的に示す模式概念図である。図1中のそれぞれの矢印は、各ロールの回転方向、又は樹脂発泡シート1の挿入方向を示す。本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1は、第1面11と、該第1面11の反対側の面である第2面12と、を有する。樹脂発泡シート1の詳細は、後述する。
【0014】
本技術に係る樹脂発泡シート1の製造方法は、気泡調整工程を含む。気泡調整工程では、樹脂発泡シート1の挿入方向上流側から第1ロール対R1-1,R1-2、第2ロール対R2-1,R2-2、及び第3ロール対R3-1,R3-2を有する3組以上のロール対の間を、前記樹脂発泡シート1を圧送することで気泡状態の調整が行われる。
【0015】
なお、図1では、便宜上、樹脂発泡シート1を水平方向に移送しながら気泡調整工程を行う例を記載しているが、これに限定されず、例えば、図示しないが垂直方向や斜め方向に移送しながら気泡調整工程を行うことも可能である。また、図1では、便宜上、図面向かって樹脂発泡シート1の上面を第1面11、下面を第2面12としているが、これに限定されず、図示しないが、図面向かって樹脂発泡シート1の下面を第1面11とした場合は、上面が第2面12となる。
【0016】
気泡調整工程では、後述する条件(1)~(4)を満たすことを特徴とする。また、後述する条件(5)~(7)を更に満たすことが好ましい。以下、各条件について、詳細に説明する。
【0017】
[条件(1)]
条件(1)は、第2ロール対R2-1,R2-2において、樹脂発泡シート1の第1面11に接するロールR2-1の速度V2-1と、第2面12に接するロールR2-2の速度V2-2とが、V2-1/V2-2=0.9~1.1である。即ち、第2ロール対R2-1,R2-2の速度の差は、±10%以内であり、±5%以内が好ましく、±3%以内がより好ましく、±2%以内が更に好ましく、±1%以内がより更に好ましく、第2ロール対R2-1,R2-2の速度が略同一であることが特に好ましい。
【0018】
従来の技術では、例えば、前記特許文献1に記載の従来技術のように、互いに異なる周速度を有するロール対を用いる方法が技術常識であったが、本技術では、速度差を有する2組のロール対(本技術では第1ロール対R1-1,R1-2、及び第3ロール対R3-1,R3-2)の間に、速度差の小さいロール対(本技術では第2ロール対R2-1,R2-2)を備えることで、良好な外観を有する樹脂発泡シート1を製造することに成功した。
【0019】
[条件(2)~条件(4)]
条件(2)は、第1ロール対R1-1,R1-2において、樹脂発泡シート1の第1面11に接するロールR1-1の速度V1-1と、第2面12に接するロールR1-2の速度V1-2とが、V1-1>V1-2である。
【0020】
条件(3)は、第3ロール対R3-1,R3-2において、樹脂発泡シート1の第1面11に接するロールR3-1の速度V3-1と、第2面12に接するロールR3-2の速度V3-2とが、V3-1<V3-2である。
【0021】
即ち、第1ロール対R1-1,R1-2、及び第3ロール対R3-1,R3-2は、それぞれ対になるロール間で速度差を有し、かつ、第1ロール対R1-1,R1-2において速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)と、第3ロール対R3-1,R3-2において速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-2)とは、それぞれ樹脂発泡シート1の逆側の面に接することを特徴とする。それぞれ対になるロール間で速度差を有する第1ロール対R1-1,R1-2、及び第3ロール対R3-1,R3-2を、このように配置することで、シート両面の破泡力が均等になり、製造される樹脂発泡シート1の外観が向上することに加え、シートを裏返して複数回ロール対を通す必要がないため、製造時間や製造コストの削減にも貢献できる。
【0022】
条件(4)は、第1ロール対R1-1,R1-2における速度比がV1-1/V1-2=1.05~1.43、及び/又は、第3ロール対R3-1,R3-2における速度比がV3-1/V3-2=0.72~0.95である。
【0023】
即ち、第1ロール対R1-1,R1-2において、遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-2)に対して速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)の速度は、1.05倍以上1.43倍以下であり、及び/又は、第3ロール対R3-1,R3-2において、速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-2)に対して遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-1)の速度は、0.72倍以上0.95倍以下である。後述する実施例の例えば比較例1及び2等のように、条件(1)~条件(3)を満たす場合であっても、樹脂発泡シートに皺や撚れが入ってしまうという問題があったが、本技術では、条件(4)を満たすことで、皺や撚れの発生を防止でき、外観の優れた樹脂発泡シート1を製造することに成功した。
【0024】
第1ロール対R1-1,R1-2において、遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-2)に対して速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)の速度は、1.05倍以上であれば本技術の作用や効果を発揮することができるが、好ましくは1.10倍以上、より好ましくは1.15倍以上、更に好ましくは1.20倍以上、より更に好ましくは1.25倍以上である。
【0025】
第1ロール対R1-1,R1-2において、遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-2)に対して速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)の速度は、1.43倍以下であれば本技術の作用や効果を発揮することができるが、好ましくは1.42倍以下、より好ましくは1.41倍以下、更に好ましくは1.40倍以下、より更に好ましくは1.39倍以下、特に好ましくは1.38倍以下である。
【0026】
第3ロール対R3-1,R3-2において、速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-2)に対して遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-1)の速度は、0.72倍以上であれば本技術の作用や効果を発揮することができるが、好ましくは0.73倍以上、より好ましくは0.74倍以上、更に好ましくは0.75倍以上である。
【0027】
第3ロール対R3-1,R3-2において、速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-2)に対して遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-1)の速度は、0.95倍以下であれば本技術の作用や効果を発揮することができるが、好ましくは0.93倍以下、より好ましくは0.90倍以下、更に好ましくは0.87倍以下、より更に好ましくは0.85倍以下、特に好ましくは0.83倍以下である。
【0028】
[条件(5)]
条件(5)は、第1ロール対における樹脂発泡シート1の第1面11に接するロールR1-1の速度V1-1と、第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2m、の速度比が、V1-1/V2m=0.90~1.14である。即ち、第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2mに対して、第1ロール対R1-1,R1-2における速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)の速度が、0.90倍以上1.14倍以下である。本技術では、前述した条件(1)~条件(4)を満たすことで、本技術の作用や効果を発揮することができるが、条件(5)を満たすことで、更に外観の優れた樹脂発泡シート1を製造することができる。
【0029】
第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2mに対して、第1ロール対R1-1,R1-2における速い速度を有するロール(本実施形態ではロールR1-1)の速度の下限値は、好ましくは0.90倍以上、より好ましくは0.95倍以上、更に好ましくは1.00倍以上である。上限値は、好ましくは1.14倍以下、より好ましくは1.13倍以下、更に好ましくは1.12倍以下、より更に好ましくは1.11倍以下、特に好ましくは1.10倍以下である。
【0030】
[条件(6)]
条件(6)は、第3ロール対における樹脂発泡シート1の第1面11に接するロールR3-1の速度V3-1と、第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2m、の速度比が、V3-1/V2m=0.86~1.10である。即ち、第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2mに対して、第3ロール対R3-1,R3-2における遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-1)の速度が、0.86倍以上1.10倍以下である。本技術では、前述した条件(1)~条件(4)を満たすことで、本技術の作用や効果を発揮することができるが、条件(6)を満たすことで、更に外観の優れた樹脂発泡シート1を製造することができる。
【0031】
第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2mに対して、第3ロール対R3-1,R3-2における遅い速度を有するロール(本実施形態ではロールR3-1)の速度の下限値は、好ましくは0.86倍以上、より好ましくは0.87倍以上、更に好ましくは0.88倍以上、より更に好ましくは0.89倍以上、特に好ましくは0.90倍以上である。上限値は、好ましくは1.10倍以下、より好ましくは1.07倍以下、更に好ましくは1.04倍以下、より更に好ましくは1.02倍以下、特に好ましくは1.00倍以下である。
【0032】
[条件(7)]
条件(7)は、第1ロール対R1-1,R1-2の平均速度V1m、第2ロール対R2-1,R2-2の平均速度V2m、及び第3ロール対R3-1,R3-2の平均速度V3mが、V1m<V2m<V3mである。前述した条件(1)~条件(4)を満たすことで、本技術の作用や効果を発揮することができるが、条件(7)を満たすことで、更に外観の優れた樹脂発泡シート1を製造することができる。
【0033】
(B)樹脂発泡シート1の材料
[樹脂成分]
本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1の材料として用いることができる樹脂成分としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、一般的な樹脂発泡シートに用いることができる樹脂成分を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0034】
本技術に用いることができる樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴムや天然ゴム等の熱硬化性エラストマー等が挙げられる。
【0035】
この中でも、本技術では、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。本技術に用いることができるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂である。オレフィン成分単位を主成分とする樹脂とは、オレフィン成分単位が50質量%以上含まれる樹脂である。本技術において、樹脂中のオレフィン成分単位の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、樹脂成分がポリオレフィン系樹脂のみから構成されていることが特に好ましい。
【0036】
本技術に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、及びオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0037】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体;プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0039】
この中でも、本技術では、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)やエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いることが好ましい。
【0040】
[発泡剤]
本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1の材料として用いることができる発泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、一般的な樹脂発泡シートに用いることができる発泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0041】
本技術に用いることができる発泡剤としては、例えば、有機系又は無機系の熱分解型化学発泡剤を用いることができる。有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
【0042】
この中でも、本技術では、発泡剤として有機系発泡剤を用いることが好ましく、有機系発泡剤の中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。
【0043】
本技術に用いる発泡剤の量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂成分100質量部に対する発泡剤の含有量としては、例えば、5.0質量部以上、好ましくは10.0質量部以上、より好ましくは15.0質量部以上である。発泡剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡体製造時の発泡性を向上させることができる。
【0044】
本技術では、樹脂成分100質量部に対する発泡剤の含有量としては、例えば、30.0質量部以下、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以下である。発泡剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0045】
[架橋剤]
本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1は、架橋発泡体からなるシートであってもよい。本技術に係る樹脂発泡シート1の製造時に架橋を行うことにより、発泡前の前記組成物(混練物)の粘度を向上させて、発泡性を向上させることができる。
【0046】
本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1が架橋発泡体からなるシートの場合、電離性放射線照射による架橋を行うこともできるが、架橋剤を用いて化学的に架橋することもできる。本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1の材料として用いることができる架橋剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、一般的な樹脂発泡シートに用いることができる架橋剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0047】
本技術に用いることができる架橋剤としては、例えば、例えば、シラン基、過酸化物、水酸基、アミド基、エステル基等の化学構造を有する架橋剤が挙げられる。この中でも、本技術では、架橋剤として、有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0048】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびt-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。この中でも、本技術では、架橋剤として、ジクミルパーオキサイド(DCP)を用いることが好ましい。
【0049】
本技術に用いる架橋剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂成分100質量部に対する架橋剤の含有量としては、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。前記樹脂組成物中の架橋剤の含有量をこの範囲とすることにより、粘度を向上させて発泡性を向上させることができる。
【0050】
本技術では、樹脂成分100質量部に対する架橋剤の含有量としては、例えば、4.0質量部以下、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。前記樹脂組成物中の架橋剤の含有量をこの範囲とすることにより、発泡時に裂け等が生じることを防ぎ、成形性を向上させることができる。
【0051】
[その他の成分]
本技術に係る製造方法で製造される樹脂発泡シート1には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、一般的な樹脂発泡シートの製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0052】
本技術に用いることができるその他の成分としては、例えば、発泡助剤、架橋促進剤、無機充填剤、整泡剤、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、分散剤、紫外線吸収剤、滑剤等を挙げることができる。
【0053】
(C)気泡調整前樹脂発泡シートの製造方法
前述した気泡調整工程に供する気泡調整前樹脂発泡シートの製造方法は、特に限定されず、一般的な樹脂発泡シートの製造方法を、自由に選択して用いることができる。例えば、化学架橋を用いた長尺発泡法、電子線架橋を用いた長尺発泡法、一段ブロック発泡法、二段ブロック発泡法等が挙げられ、本技術では特に、長尺発泡法を選択することが好ましく、長尺発泡法の中でも化学架橋を用いた長尺発泡法を用いることがより好ましい。以下、各方法について説明する。
【0054】
[化学架橋を用いた長尺発泡法]
長尺発泡法は、例えば以下の工程(1)-(3)を行う方法である。
(1)混練工程
前述した、樹脂成分、架橋剤、発泡剤、その他適宜必要とされる任意の成分を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともにシート状に押出してシート等の所定形状の発泡性樹脂組成物(以下、母板という)を押出す。混練及び押出しは押出機により一括して行うことができる。均一な混練を行うためには、予め各成分を混合した後に押出しを行うのが好ましい。
(2)発泡工程
混練工程で得られた母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、発泡剤及び架橋剤の分解温度以上(例えば、120-250℃)にて、所定の時間(例えば、5-20分間)加熱して発泡させることにより樹脂発泡シートを得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
(3)成形工程
発泡工程で得られた樹脂発泡シートは、そのまま前述した気泡調整工程に供することもできるが、必要に応じてスライス等で所望の形態に成形する成形工程を行った後に、前述した気泡調整工程に供することも可能である。
【0055】
[電子線架橋を用いた長尺発泡法]
(1)混練工程
前述した、樹脂成分、架橋剤、発泡剤、その他適宜必要とされる任意の成分を、単軸押出機、二軸押出機などで混練するとともに、シート状等の所定形状の樹脂組成物(母板)を押出す。混練及び押出しは押出機により一括して行うことができる。均一な混練を行うためには、予め各成分を混合した後に押出しを行うのが好ましい。
(2)架橋工程
混練工程で得られた母板を架橋する。架橋方法としては、電子線、γ線等の電離放射線を架橋する方法を用いることができる。架橋方法としては、電子線照射による架橋(電子線架橋)が好ましい。電子線架橋によれば、発泡体に形成されるセルの微細化を実現でき、セル径を所定の範囲に制御できるからである。電子線架橋は、電子線照射機を用いて行うことができる。なお、必要に応じて、前述した有機過酸化物等の架橋剤を配合して化学架橋を併用してもよい。
電子線の照射線量は、1.0Mrad-10.0Mrad(10kGy-100kGy)が好ましい。照射線量が1.0Mrad未満であると、後述する発泡工程において良好に発泡しないことがある。照射線量が10.0Mradを超えると、架橋が強く、樹脂が硬くなるため、発泡時に割れが発生する懸念がある。電子線の加速電圧は、当該母板の厚み等に応じて適宜調整すれば良く、特に限定されない。
(3)発泡工程
架橋工程で得られた架橋済みの母板を、オーブン等の加熱装置中に運搬しながら、発泡剤及び架橋剤の分解温度以上(例えば、120-250℃)にて、所定の時間(例えば、5-20分間)加熱して発泡させることにより樹脂発泡シートを得る。なお、オーブン等の加熱装置と運搬装置とが一体となった装置を用いると、当該母板を連続して処理することができるため好ましい。
(4)成形工程
発泡工程で得られた樹脂発泡シートは、そのまま前述した気泡調整工程に供することもできるが、必要に応じてスライス等で所望の形態に成形する成形工程を行った後に、前述した気泡調整工程に供することも可能である。
【0056】
[一段ブロック発泡法]
(1)混練工程
前述した、樹脂成分、架橋剤、発泡剤、その他適宜必要とされる任意の成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(2)発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、金型内に充填して密封し、加圧した状態で所定時間加熱(発泡剤及び架橋剤の分解温度以上の温度で加熱)することにより、架橋剤の架橋及び発泡剤の分解を進行させ、その後、金型を開いて除圧することにより樹脂発泡体を得る。
(3)成形工程
発泡工程で得られた樹脂発泡体を、必要に応じて、耳切り、スライス等を行い所望の形態に成形しての樹脂発泡シートを得る。得られた樹脂発泡シートは、前述した気泡調整工程に供される。
【0057】
[二段ブロック発泡法]
(1)混練工程
前述した、樹脂成分、架橋剤、発泡剤、その他適宜必要とされる任意の成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの混練装置によって発泡剤の分解温度以下の温度で溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(2)一次発泡工程
混練工程で得られた発泡性樹脂組成物を、一次金型の成形空間に充填し、加圧下で加熱する。これにより架橋剤の一部、又は架橋剤及び発泡剤の一部を分解させる。その後除圧し、発泡性樹脂組成物中間体を取り出す。加熱温度は、通常120-160℃、加熱時間は通常10-60分の範囲で決定される。
(3)二次発泡工程
一次発泡工程で得られた発泡性樹脂組成物中間体を、二次金型の成形空間に配置し、常圧下で加熱して二次発泡させた後、二次金型から樹脂発泡体を取り出す。
(4)成形工程
発泡工程で得られた樹脂発泡体を、必要に応じて、耳切り、スライス等を行い所望の形態に成形しての樹脂発泡シートを得る。得られた樹脂発泡シートは、前述した気泡調整工程に供される。
【0058】
2.樹脂発泡シート1の物性
本技術は、前述した製造方法に特徴があり、製造された樹脂発泡シート1の物性は特に限定されず、シートの使用目的等に応じて、物性を自由に調整することが可能である。
【0059】
(1)密度
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1の密度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂発泡シート1の密度の下限値として、例えば10kg/m以上、好ましくは15kg/m以上、より好ましくは20kg/m以上、更に好ましくは25kg/m以上である。樹脂発泡シート1の密度の下限値をこの範囲にすることで、柔らかくなりすぎるのを防止し、適度な弾力性を付与することができる。
【0060】
樹脂発泡シート1の密度の上限値は、例えば50kg/m以下、好ましくは45kg/m以下、より好ましくは40kg/m以下である。樹脂発泡シート1の密度をこの範囲にすることで、樹脂発泡シート1が硬くなりすぎて柔軟性が損なわれることを防止し、適度なクッション性を付与することができる。
【0061】
なお、本技術において、樹脂発泡シート1の密度は、JIS K6767:1999に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0062】
(2)発泡倍率
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1の発泡倍率は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂発泡シート1の発泡倍率の下限値として、例えば10倍以上、好ましくは15倍以上、より好ましくは20倍以上である。樹脂発泡シート1の発泡倍率の下限値をこの範囲にすることで、樹脂発泡シート1が硬くなりすぎて柔軟性が損なわれることを防止し、適度なクッション性を付与することができる。
【0063】
樹脂発泡シート1の発泡倍率の上限値は、例えば50倍以下、好ましくは45倍以下、より好ましくは40倍以下である。樹脂発泡シート1の発泡倍率をこの範囲にすることで、柔らかくなりすぎるのを防止し、適度な弾力性を付与することができる。
【0064】
なお、本技術において、発泡倍率は以下の数式にて算出した値である。 発泡倍率(倍)=1000/密度(kg/m
【0065】
(3)圧縮応力歪み(50%)
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1の50%圧縮応力歪みは、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂発泡シート1の50%圧縮応力歪みの上限値として、例えば40kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは10kPa以下である。樹脂発泡シート1の50%圧縮応力歪みの下限値は、例えば3kPa以上等に設定することができる。
【0066】
なお、本技術において、樹脂発泡シート1の50%圧縮応力歪みは、JIS K6767:1999に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0067】
(4)アスカーF硬度
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1のアスカーF硬度は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂発泡シート1のアスカーF硬度の上限値として、例えば80以下、好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。樹脂発泡シート1のアスカーF硬度の下限値は、例えば10以上等に設定することができる。
【0068】
なお、本技術において、樹脂発泡シート1のアスカーF硬度は、JIS 6253-3に準拠し、タイプFデュロメータ(高分子計器株式会社)で測定した値である。
【0069】
(5)ゲル分率
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1のゲル分率は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、樹脂発泡シート1のゲル分率の下限値として、例えば30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。樹脂発泡シート1のゲル分率の上限値は、例えば90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0070】
なお、本技術において、樹脂発泡シート1のゲル分率は、JIS K6769に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0071】
4.樹脂発泡シート1の用途
本技術に係る製造方法で製造された樹脂発泡シート1は、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。具体的には、例えば、シール材、衝撃吸収材、緩衝材、吸音材、断熱材、保温材等を挙げることができる。
【実施例0072】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0073】
(1)原料
樹脂1:エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(酢酸ビニル含有量19質量%、密度941kg/m3、MFR2.5g/10分):40.0質量部
樹脂2:低密度ポリエチレン(LDPE)(密度924kg/m3、MFR3.0g/10分):60.0質量部
発泡剤:アゾジカルボンアミド(ADCA):18.0質量部
架橋剤:ジクミルパーオキサイド(DCP):1.1質量部
その他添加剤:7.9質量部
【0074】
(2)樹脂発泡シートの製造
前記原料をニーダーにて溶融混練した後、押出機に導入し、押出機先端に取り付けられたダイより、シート状に押し出した。押し出したシート状の樹脂組成物を加熱して架橋発泡させることにより、気泡調整前樹脂発泡シートを製造した。製造した気泡調整前樹脂発泡シートを、3組のロール対の間を、下記の表1に示す条件にて、気泡調整前樹脂発泡シートを圧送することで気泡状態を調整する気泡調整工程を6回行い、樹脂発泡シートを製造した。
【0075】
(3)評価
製造した樹脂発泡シートの外観について、下記の評価基準に従って評価した。
○:皺や撚れが無く、外観が良好である
×:皺及び/又は撚れがある
【0076】
(4)物性測定
実施例3の樹脂発泡シートについて、気泡調整工程前(0回)、気泡調整工程6回後、及び気泡調整工程10回後に、密度、発泡倍率、50%圧縮応力歪み、アスカーF硬度、及びゲル分率の測定を行った。各物性の測定方法を以下に示す。
【0077】
[密度]
JIS K6767:1999に基づく方法に準拠して測定した。
【0078】
[発泡倍率]
以下の数式にて算出した。
発泡倍率(倍)=1000/密度(kg/m
【0079】
[50%圧縮応力歪み]
JIS K6767:1999に基づく方法に準拠して測定した。
【0080】
[アスカーF硬度]
JIS 6253-3に準拠し、タイプFデュロメータ(高分子計器株式会社)を用いて測定した。
【0081】
[ゲル分率]
JIS K6769に基づく方法に準拠して測定した。
【0082】
(5)結果
評価結果を下記の表1に示す。また、実施例3における気泡調整工程前、6回後、10回後の物性測定結果を表2に示す。
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
(5)考察
表1に示す通り、条件(1)~(4)を満たす気泡調整工程を行って製造された実施例1~3は、製造された樹脂発泡シートに皺や撚れが発生せず、良好な外観を有していた。
図1