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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011310
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】治療用化合物および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/06 20060101AFI20250116BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20250116BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20250116BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20250116BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20250116BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20250116BHJP
   A61L 33/00 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 31/4427 20060101ALI20250116BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C07D401/06
A61L27/54
A61L29/08
A61L29/16
A61L31/08
A61L31/16
A61L33/00
A61K31/4427
A61P7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024185222
(22)【出願日】2024-10-21
(62)【分割の表示】P 2021523278の分割
【原出願日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】62/752,503
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】516235565
【氏名又は名称】エクセセーラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニール ジェイ. ヘイワード
(72)【発明者】
【氏名】バートランド エル. チェナード
(72)【発明者】
【氏名】ユエリアン シュー
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ エル. ドロウ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー. マティソン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー コルチンスキ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード フォルニコラ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C081AB32
4C081AB34
4C081AC06
4C081AC08
4C081BA05
4C081CE03
4C081EA06
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086MA67
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】治療用化合物および組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、第XIa因子またはカリクレインを阻害する化合物、および薬学的に許容されるその塩およびそれらの組成物を提供する。本発明はまた、これらの化合物または薬学的に許容されるその塩および組成物を作製する方法、ならびにそれらの使用方法を提供する。本発明は、第XIa因子またはカリクレインを阻害する化合物、およびこれらの化合物の1つまたは複数を単独で、または他の分子と組み合わせて、哺乳動物に投与することによる、望ましくない血栓症または血管浮腫(例えば、遺伝性血管浮腫)を予防または処置する方法を特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2018年10月30日に出願のU.S.S.N.62/752,503への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液凝固は、損傷後の血液喪失に対する防御の最前線である。血液凝固「カスケード」はいくつかの循環性セリンプロテアーゼチモーゲン、調節性補因子および阻害剤を必要とする。各酵素は、そのチモーゲンから一旦、産生されると、カスケードにおける次のチモーゲンを特異的に切断して、活性プロテアーゼを産生する。この過程は、最終的にトロンビンがフィブリノゲンからフィブリノペプチドを切断して、フィブリンが産生され、このフィブリンが重合して血塊を形成するまで繰り返される。効率的な血塊形成により外傷の部位における血液の喪失が制限されるが、血塊形成はまた、全身性凝固のリスクをもたらし、大きな血栓を生じさせる。正常な状況下では、止血は、凝塊形成(凝固)と凝塊溶出(線維素溶解作用)との間のバランスを維持する。しかし、急性心筋梗塞および不安定狭心症などのある種の疾患状態では、定着したアテローム動脈硬化性プラークの破裂により、冠動脈血管における異常な血栓形成がもたらされる。
【0003】
心筋梗塞、不安定狭心症、心房細動、脳卒中、肺塞栓症および深部静脈血栓症などの血液凝固から生じる疾患は、先進国における主要な死因である。注射可能な非分画ヘパリンおよび低分子量(LMW)ヘパリン、ならびに経口投与されるワルファリン(コウマジン)などの現在の抗血液凝固剤治療法は、出血エピソードのリスクをもたらし、徹底的なモニタリングおよび治療用量の滴定が必要になる、患者間変動を示す。したがって、現在利用可能な薬物の副作用の一部またはすべてが起こらない新規な抗凝固薬の医療的ニーズが大きい。
【0004】
第XIa因子は、これらの疾患に関連する経路に関与する関心の高い治療標的である。第XIa因子のレベルまたは第XIa因子活性の増大が、静脈血栓症(Meijers et al., N. Engl. J. Med. 342:696, 2000)、急性心筋梗塞(Minnema et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:2489, 2000)、急性冠症候群(Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008)、冠動脈疾患(Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008)、慢性閉塞性肺疾患(Jankowski et al., Thromb Res 127:242, 2011)、大動脈弁狭窄症(Blood Coagul Fibrinolysis, 22:473, 2011)、急性脳血管虚血(Undas et al., Eur J Clin Invest, 42:123, 2012)および虚血性心筋症による収縮期心不全(Zabcyk et al., Pol Arch Med Wewn. 120:334, 2010)を含めた、いくつかの血栓塞栓性障害において観察されている。遺伝性第XI因子欠乏症のために第XI因子を欠く患者は、虚血性脳卒中をあるとしてもほとんど示さない(Salomon et al., Blood, 111:4113, 2008)。同時に、第XIa因子活性の喪失は、凝固を開始する経路の1つを無傷状態のままにし、止血は妨害されない。ヒトでは、第XI因子欠乏症は、とりわけ、尿路、鼻、口腔および扁桃腺などの高レベルの局所フィブリン分解活性を有する組織では、軽度から中度の出血障害をもたらし得る。さらに、第XI因子欠損マウスでは、止血はほとんど正常である(Gailani, Blood Coagul Fibrinolysis, 8:134, 1997)。さらに、第XI因子の阻害は、動脈性高血圧、ならび血管炎症を含めたに他の疾患および機能不全を弱めることも見出された(Kossmann et al. Sci. Transl. Med. 9, eaah4923 (2017))。
したがって、第XIa因子を阻害する化合物は、凝固経路の他の構成成分を阻害する薬物を妨害する副作用および治療的難題を回避すると同時に、幅広い範囲の障害を予防または処置する可能性を有する。さらに、望ましくない血栓症(例えば、深部静脈血栓症、肝静脈血栓症および脳卒中)の阻害のためのいくつかの現在の治療薬の有効性の限界および有害な副作用があるために、望ましくない血栓症を予防または処置するための改善された化合物および方法(例えば、第XIa因子に関連するもの)が必要とされている。
別の治療標的は、酵素カリクレインである。ヒト血漿カリクレインは、凝固、ならびに例えば、血圧、炎症および疼痛の制御にとって重要な、いくつかの下流因子(例えば、ブラジキニンおよびプラスミン)の活性化を担うことができるセリンプロアーゼである。カリクレインは、例えば、前立腺、表皮および中枢神経系(CNS)において発現し、例えば、精液の液化、細胞粘着タンパク質の切断およびCNSにおける神経可塑性の調節に関与し得る。さらに、カリクレインは、腫瘍形成、ならびにがんおよび血管浮腫、例えば遺伝性血管浮腫の発症に関与し得る。カリクレイン-キニン経路の過活性化は、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫を含めた、いくつかの障害をもたらし得る(Schneider et al., J. Allergy Clin. Immunol. 120:2, 416, 2007)。現在まで、HAEに対する
処置選択肢には限りがある(例えば、国際公開第2003/076458号)。したがって、これらの疾患を予防または処置するための治療薬が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/076458号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Meijers et al., N. Engl. J. Med. 342:696, 2000
【非特許文献2】Minnema et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:2489, 2000
【非特許文献3】Butenas et al., Thromb Haemost 99:142, 2008
【非特許文献4】Jankowski et al., Thromb Res 127:242, 2011
【非特許文献5】Blood Coagul Fibrinolysis, 22:473, 2011
【非特許文献6】Undas et al., Eur J Clin Invest, 42:123, 2012
【非特許文献7】Zabcyk et al., Pol Arch Med Wewn. 120:334, 2010
【非特許文献8】Salomon et al., Blood, 111:4113, 2008
【非特許文献9】Gailani, Blood Coagul Fibrinolysis, 8:134, 1997
【非特許文献10】Kossmann et al. Sci. Transl. Med. 9, eaah4923 (2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、第XIa因子またはカリクレインを阻害する化合物、およびこれらの化合物の1つまたは複数を単独で、または他の分子と組み合わせて、哺乳動物に投与することによる、望ましくない血栓症または血管浮腫(例えば、遺伝性血管浮腫)を予防または処置する方法を特徴とする。本発明はまた、これらの構造体を使用する、追加的な第XIa因子またはカリクレイン阻害剤を設計または選択する方法を提供する。望ましくは、これらの化合物は、該化合物が、第XIa因子またはカリクレインの活性部位の特定の残基と相互作用することを可能にする、ある種の構造的、物理的および空間的特徴を有する。
【0008】
一態様では、本発明は、化合物1:
【化1】
または薬学的に許容されるその塩、例えば、化合物1の塩酸塩を対象とする。一部の実施形態では、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、結晶性である。一部の実施形態では、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、実質的に純粋な結晶性固体形態として存在する。
【0009】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される塩:
【化2】
が本明細書において提供される。
【0010】
式(I)の薬学的に許容される塩は、化合物1の塩酸塩であり、本明細書において化合物1・HClとも称される。一部の実施形態では、化合物1・HClは、結晶性である。一部の実施形態では、化合物1・HClは、実質的に純粋な結晶性固体形態として存在する。一部の実施形態では、化合物1・HClは、実質的に図9に図示されている通りのXRPDパターンを有する。
【0011】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される塩:
【化3】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を調製する方法であって、式(II)の塩
【化4】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒に溶解し、これにより、第1の溶液を調製するステップ、および第1の溶液に塩化水素を添加し、これにより、式(I)の薬学的に許容される塩を生成するステップを含む方法が本明細書において提供される。
【0012】
一部の実施形態では、式(II)の塩は、非プロトン性溶媒に溶解される。一部の実施形態では、溶媒は、アセトニトリルを含む(例えば、アセトニトリルからなる、またはアセトニトリルから本質的になる)。一部の実施形態では、塩化水素は、第1の溶液にHClガスを通気することによって、または第1の溶液にHClを含む別の溶液(例えば、塩
酸のエーテル溶液)を添加することによって、第1の溶液に加えられる。
【0013】
一部の実施形態では、式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量は、500グラムを超えるまたは500グラムに等しい。一部の実施形態では、式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量は、1キログラムを超えるまたは1キログラムに等しい。一部の実施形態では、本方法は、300グラムを超える(例えば、約350グラムを超える(例えば、約368グラム))式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、約50%を超える収率で(例えば、約55%の収率で)、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約75%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約90%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約99%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約80%である。一部の実施形態では、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約81%である。
【0015】
一部の実施形態では、本方法は、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)に溶解し、次いでこの溶解している式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を、別の溶媒(例えば、メチルtert-ブチルエーテル)を使用して沈殿させることによって、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む。一部の実施形態では、沈殿後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、98%よりも高い。一部の実施形態では、沈殿後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約98%である。
【0016】
一部の実施形態では、本方法は、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)中でスラリーにし、次に式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)をろ過して、溶媒から式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を分離することによって、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む。一部の実施形態では、スラリーにして分離した後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、98%よりも高い。一部の実施形態では、スラリーにして分離した後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約98%である。
【0017】
一部の実施形態では、本方法は、式(III)の化合物
【化5】
にトリフルオロ酢酸を接触させることにより式(II)の塩を調製するステップを含む。
【0018】
一部の実施形態では、本方法は、式(III)の化合物にシラン(例えば、トリエチルシラン)を接触させるステップをさらに含む。
【0019】
一部の実施形態では、本方法は、500グラムを超える(例えば、1kgを超える)式(III)の化合物を生成する。
【0020】
一部の実施形態では、本方法は、式(IV)の化合物
【化6】
に、式(V)の化合物
【化7】
を接触させることにより式(III)の化合物を調製するステップを含む。
【0021】
一部の実施形態では、本方法は、1キログラムを超える(例えば、約1.3kg)の式(III)の化合物を生成する。一部の実施形態では、本方法は、溶媒の存在下で行われる。一部の実施形態では、本方法は、塩基(例えば、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン)の存在下で行われる。
【0022】
一部の実施形態では、本方法は、式(VI)の化合物
【化8】
に、式(VII)の化合物
【化9】
を接触させることにより式(IV)の化合物を調製するステップを含む。
【0023】
一部の実施形態では、本方法は、500グラムを超える(例えば、900グラムを超える)式(IV)の化合物を生成する。
【0024】
一部の実施形態では、式(III)の化合物は、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される。一部の実施形態では、精製方法は、溶媒(例えば、ヘプタン)中で式(III)の化合物のスラリーにするステップ、次に、式(III)の化合物をろ過して、溶媒から式(III)の化合物を分離するステップを含む。一部の実施形態では、式(III)の化合物の純度は、90%よりも高い。
【0025】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される。
【0026】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される結晶性塩:
【化10】
が本明細書において提供される。
【0027】
一態様では、本発明は、化合物1または薬学的に許容されるその塩および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。一部の実施形態では、本組成物は、液状製剤(例えば、溶液剤)として提供される。一部の実施形態では、本組成物は、固形製剤(例えば、カプセル剤、丸剤、錠剤または散剤)として提供される。
【0028】
一部の実施形態では、各結晶性固体形態は、上述の分析方法の1つまたは複数:HPLC分析により決定される、各試料のAPI(遊離塩基)率および推定純度から得たパラメーターで特徴付けられ、特定される。X線回折パターンは、横座標として2シータ(2θ)度で、ピーク強度は、XRPDによる分析によって決定される縦座標として表される。これらのパターンはまた、本明細書においてXRPDパターンと称される。
【0029】
一部の実施形態では、固体形態は、対応するXRPDパターンに見出される鋭い個別のピークの存在によって結晶性であると判定される。
【0030】
態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を処置する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化11】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0031】
態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化12】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0032】
態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を予防する方法であって、対
象に、有効量の以下によって表される化合物
【化13】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0033】
本明細書において提供される方法の一部の実施形態では、人工表面は、対象の循環系における血液に接触している。一部の実施形態では、人工表面は、埋込式装具、透析カテーテル、心肺バイパス回路、人工心臓弁、補助人工心臓(ventricular assist device)
、小口径グラフト、中心静脈カテーテルまたは体外式膜型人工肺(ECMO)装置である。一部の実施形態では、人工表面は、血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症または肺塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、血塊である。
【0034】
一部の実施形態では、本方法は、人工表面に対象の循環系における血液を接触させる前に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象への本化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前またはその間に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象への本化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前およびその間に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。
【0035】
態様では、それを必要とする対象の血液を処置する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化14】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法が本明細書において提供される。
【0036】
態様では、人工表面に接触している対象の血液において、以下によって表される化合物
【化15】
または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持する方法であって、
(i)人工表面に対象の血液を接触させる前またはその間に、対象に本化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)人工表面に対象の血液を接触させる前またはその間に、人工表面を本化合物ま
たは薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングするステップ
を含み、
これにより、対象の血液において、本化合物または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持する、方法が本明細書において提供される。
【0037】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容されるその塩は、人工表面に接触する前および後に、対象の血液における一定活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を維持する。一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容されるその塩は、人工表面に対象の血液を接触させる前およびその間に、対象に投与される。
【0038】
一部の実施形態では、人工表面は、人工表面に対象の血液を接触させる前およびその間に、本化合物または薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングされる。一部の実施形態では、本方法は、人工表面に接触している対象の血液において、血塊形成をさらに予防する、またはそのリスクを低減する。
【0039】
一部の実施形態では、人工表面は、心肺バイパス回路である。一部の実施形態では、人工表面は、体外式膜型人工肺(ECMO)装置である。一部の実施形態では、ECMO装置は、静脈静脈ECMO装置または静脈動脈ECMO装置である。
【0040】
態様では、医療手順の間またはその後に、対象における血栓塞栓性障害を予防する、またはそのリスクを低減する方法であって、
【0041】
(i)医療手順の前、その間またはその後に、対象に、有効量の以下によって表される化合物:
【化16】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)対象の血液に人工表面を接触させるステップ
を含み、これにより、医療手順の間またはその後の血栓塞栓性障害を予防する、またはそのリスクを低減する、方法が本明細書において提供される。
【0042】
一部の実施形態では、人工表面は、医療手順の前、その間またはその後に対象に本化合物を投与する前に、本化合物または薬学的に許容されるその塩でコンディショニングされる。
【0043】
一部の実施形態では、人工表面は、医療手順の前、その間またはその後に対象に本化合物または薬学的に許容されるその塩を投与する前に、本化合物または薬学的に許容されるその塩を含む溶液でコンディショニングされる。一部の実施形態では、溶液は、生理食塩水溶液、リンゲル液または血液である。一部の実施形態では、溶液は、血液をさらに含む。一部の実施形態では、血液は、対象またはドナーから取得される。
【0044】
一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、血塊である。
【0045】
一部の実施形態では、医療手順は、i)心肺バイパス、ii)体外式膜型人工肺による
血液の酸素化およびポンプ注入、iii)血液の補助ポンプ注入(体内または体外)、iv)血液の透析、v)血液の体外ろ過、vi)動物またはヒト対象における後で使用するための保存容器への対象からの血液の採取、vii)静脈または動脈管腔内カテーテルの使用、viii)診断用またはインターベンション用心臓カテーテル法のためのデバイスの使用、ix)血管内デバイスの使用、x)人工心臓弁の使用、およびxi)人工グラフトの使用のうちの1つまたは複数を含む。
【0046】
一部の実施形態では、医療手順は、心肺バイパスを含む。一部の実施形態では、医療手順は、体外式膜型人工肺(ECMO)による、血液の酸素化およびポンプ注入を含む。一部の実施形態では、ECMOは、静脈静脈ECMOまたは静脈動脈ECMOである。
【0047】
一態様では、本発明は、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)に罹患している対象における、脳卒中(例えば、虚血、例えば、一過性虚血事象、大血管急性虚血性脳卒中)のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)のリスクが低減される。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における心房細動のリスクが低減される。
【0048】
一態様では、本発明は、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)に罹患している対象における、非中枢神経系の全身性塞栓症(例えば、虚血、例えば、一過性虚血事象)を低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における非中枢神経系の全身性塞栓症が低減される。
【0049】
一態様では、本発明は、深部静脈血栓症を処置する方法であって、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)に罹患している対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0050】
一態様では、本発明は、深部静脈血栓症を予防する方法であって、深部静脈血栓症に罹患している対象(例えば、深部静脈血栓症の処置を以前に受けた対象)に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一態様では、本発明は、深部静脈血栓症の再発のリスクを低減する方法であって、深部静脈血栓症に罹患している対象(例えば、深部静脈血栓症の処置を以前に受けた対象)に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における深部静脈血栓症の再発のリスクが低減される。
【0051】
一態様では、本発明は、対象における、静脈血栓塞栓症、例えば、深部静脈血栓症または肺塞栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の
実施形態では、対象は、手術中である。一部の実施形態では、対象は、手術前、その間またはその後に、本化合物、薬学的に許容されるその塩またはそれらの組成物を投与される。一部の実施形態では、対象は、膝または股関節置換術中である。一部の実施形態では、対象は、整形外科手術中である。一部の実施形態では、対象は、肺手術中である。一部の実施形態では、対象は、例えば、手術によってがんの処置中である。一部の実施形態では、対象は慢性医療状態に罹患している。一部の実施形態では、静脈血栓塞栓症は、がんに関連する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物は、深部静脈血栓症または静脈血栓塞栓症の予防における一次薬剤である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物は、長期治療として使用される。一態様では、本発明は、対象における、静脈血栓塞栓症、例えば、深部静脈血栓症または肺塞栓症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、対象は、手術中である。一部の実施形態では、対象は、手術後に、本化合物、薬学的に許容されるその塩またはそれらの組成物を投与される。一部の実施形態では、対象は、膝または股関節置換術中である。一部の実施形態では、対象は、整形外科手術中である。一部の実施形態では、対象は、肺手術中である。一部の実施形態では、対象は、例えば、手術によってがんの処置中である。一部の実施形態では、対象は慢性医療状態に罹患している。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、がんに関連する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物は、血栓塞栓性障害のリスクを低減する一次薬剤である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物は、長期治療として使用される。
【0052】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象における、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)または全身性塞栓症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物、例えば化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩または本明細書に記載されている組成物、例えば化合物1を含む組成物を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、対象は、心房細動(例えば、非弁膜症性心房細動)に罹患している。一部の実施形態では、対象は、腎障害(例えば、末期腎疾患)に罹患している。
【0053】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象における、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)または全身性塞栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物、例えば化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩または本明細書に記載されている組成物、例えば化合物1を含む組成物を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、対象は、心房細動(例えば、非弁膜症性心房細動)に罹患している。一部の実施形態では、対象は、腎障害(例えば、末期腎疾患)に罹患している。
【0054】
一態様では、本発明は、肺塞栓症(例えば、症候性肺塞栓症)の再発のリスクを低減する方法であって、肺塞栓症に罹患している対象(例えば、肺塞栓症の処置を以前に受けた対象)に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における肺塞栓症の再発のリスクが低減される。
【0055】
一態様では、本発明は、肺塞栓症に罹患している対象(例えば、肺塞栓症の処置を以前に受けた対象)において、肺塞栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1
もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0056】
一態様では、本発明は、肺塞栓症(例えば、症候性肺塞栓症)の再発のリスクを低減する方法であって、深部静脈血栓症に罹患している対象(例えば、深部静脈血栓症の処置を以前に受けた対象)に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、投与により、化合物を投与されていない対象と比べると、対象における肺塞栓症の再発のリスクが低減される。
【0057】
一態様では、本発明は、深部静脈血栓症に罹患している対象(例えば、深部静脈血栓症の処置を以前に受けた対象)において、肺塞栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0058】
一態様では、本発明は、抗血液凝固剤を以前に投与された対象において、深部静脈血栓症を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、抗血液凝固剤が、5~10日間、非経口投与された。
【0059】
一態様では、本発明は、抗血液凝固剤を以前に投与された対象において、肺塞栓症を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、抗血液凝固剤が、5~10日間、非経口投与された。
【0060】
一態様では、本発明は、虚血事象(例えば、一過性虚血)を有する対象を処置する方法であって、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、本化合物は、対象における虚血事象の開始後、24時間またはそれ未満、例えば、12、10、9、8、7、6時間またはそれ未満以内に対象に投与される。
【0061】
一態様では、本発明は、虚血事象(例えば、一過性虚血)を有する対象を処置する方法であって、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、本化合物は、対象における虚血事象の開始後、2時間を超えて12時間まで、例えば、2時間を超えて10時間またはそれ未満まで、2時間を超えて8時間またはそれ未満まで以内に対象に投与される。
【0062】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧、例えば、動脈性高血圧を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、高血圧、例えば動脈性高血圧は、アテローム性動脈硬化をもたらす。一部の実施形態では、高血圧は
、肺動脈性高血圧である。
【0063】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧、例えば、動脈性高血圧のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、高血圧、例えば動脈性高血圧は、アテローム性動脈硬化をもたらす。一部の実施形態では、高血圧は、肺動脈性高血圧である。
【0064】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧、例えば、動脈性高血圧を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、高血圧、例えば動脈性高血圧は、アテローム性動脈硬化をもたらす。一部の実施形態では、高血圧は、肺動脈性高血圧である。
【0065】
一態様では、本発明は、対象における、炎症を低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、炎症は、血管炎症である。一部の実施形態では、血管炎症には、アテローム性動脈硬化を伴う。一部の実施形態では、血管炎症には、対象における血栓塞栓性疾患を伴う。一部の実施形態では、血管炎症は、アンジオテンシンII誘発性血管炎症である。
【0066】
一態様では、本発明は、対象における、血管の白血球浸潤を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0067】
一態様では、本発明は、対象における、アンジオテンシンII誘発性内皮機能不全を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0068】
一態様では、本発明は、対象における、トロンビン増殖を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、トロンビン増殖は、血小板上に生じる。
【0069】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧関連性腎機能不全を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0070】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧関連性腎機能不全を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0071】
一態様では、本発明は、対象における、高血圧関連性腎機能不全のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0072】
一態様では、本発明は、対象における、腎線維症を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0073】
一態様では、本発明は、対象における、腎線維症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0074】
一態様では、本発明は、対象における、腎線維症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0075】
一態様では、本発明は、対象における、腎臓損傷を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0076】
一態様では、本発明は、対象における、腎臓損傷を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0077】
一態様では、本発明は、対象における、腎臓損傷のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一態様では、本発明は、対象における、第XIa因子を阻害する方法であって、虚血に罹患している対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、虚血は、冠動脈虚血である。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)である。一部の実施形態では、対象は、手術(例えば、膝置換術または股関節置換術)中である。一部の実施形態では、虚血は、冠動脈虚血である。一部の実施形態では、対象は、非弁膜症性心房細動を有する対象である。一部の実施形態では、対象は、脳卒中に関する以下のリスク因子の1つまたは複数:過去の脳卒中(例えば、虚血性、不明、出血性)、一過性虚血性発作または非CNS全身性塞栓症を有する。一部の実施形態では、対象は、脳卒中に関する以下のリスク因子の1つまたは複数:75歳またはそれより高い年齢、高血圧、心不全または左心室駆出率(例えば、35%未満または35%に等しい)または糖尿病を有する。
【0078】
一部の実施形態では、本化合物は、経口または非経口(例えば、静脈内)投与によって投与される。一部の実施形態では、本化合物は、経口投与により投与される。一部の実施形態では、本化合物は、非経口(例えば、静脈内)投与によって投与される。一部の実施
形態では、本化合物は、皮下投与により投与される。
【0079】
一部の実施形態では、本化合物は、虚血事象の前に(例えば、虚血事象のリスクがある対象に)投与される。
【0080】
一部の実施形態では、本化合物は、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)後に投与される。一部の実施形態では、本化合物は、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後もしくはそれより後に投与される。一部の実施形態では、本化合物は、虚血事象(例えば、一過性虚血事象)の約1、2、3、4、5、6、7または8週間後もしくはそれより後に投与される。
【0081】
一部の実施形態では、本化合物は、追加的な治療剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本化合物の投与後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、経口投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本化合物を投与して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、16、18、20または24時間後もしくはそれより後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本化合物を投与して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21または28日後もしくはそれより後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本化合物を投与して約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日後またはそれより後に投与される。
【0082】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本化合物を投与した後、長期間(例えば、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間または約14日間、もしくはそれより長い間)投与される。
【0083】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、副作用(例えば、活発な病理的出血または重症な過敏反応(例えば、アナフィラキシー反応)、脊髄および/または硬膜外血腫、胃腸障害(例えば、上部腹痛、消化不良、歯痛)、一般障害および投与部位状態(例えば、倦怠感)、感染および侵襲(例えば、副鼻腔炎、尿路感染症)、筋骨格および結合組織障害(例えば、背痛、骨関節炎)、呼吸器、胸郭および縦郭障害(例えば、口腔咽頭疼痛)、損傷、中毒および処置合併症(例えば、創傷分泌物)、筋骨格および結合組織障害(例えば、先端部疼痛、筋けいれん)、神経系障害(例えば、気絶)、皮膚および皮下組織障害(例えば、掻痒、水膨れ)、血液およびリンパ系障害(例えば、無果粒球症)、胃腸障害(例えば、後腹膜出血)、肝胆道障害(例えば、黄疸、胆汁鬱滞,細胞溶解性肝炎)、免疫系障害(例えば、過敏症、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、血管浮腫)、神経系障害(例えば、脳内出血、硬膜下血腫、硬膜外血腫、片側不全麻痺)、皮膚および皮下組織障害(例えば、スティーヴンス-ジョンソン症候群)を処置する。
【0084】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、NSAID(例えば、アスピリンまたはナプロキセン)、血小板凝集阻害剤(例えば、クロピドグレル)または抗血液凝固剤(例えば、ワルファリンまたはエノキサパリン)である。
【0085】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、相加的治療効果をもたらす。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、相乗的治療作用をもたらす。
【0086】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を特徴とする。
【0087】
別の態様では、本発明は、患者において、第XIa因子をモジュレート(例えば、阻害
)する方法を特徴とする。本方法は、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を、それを必要とする患者に投与し、これにより、第XIa因子をモジュレート(例えば、阻害)するステップを含む。
【0088】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象の血栓塞栓性障害を処置する方法を特徴とする。本方法は、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む。血栓塞栓性障害は、心室における、動脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈血栓症、静脈性心血管血栓塞栓性障害および血栓塞栓性障害;(不安定狭心症、急性冠症候群、最初の心筋梗塞、再発性心筋梗塞、虚血(例えば、冠動脈虚血、虚血性突然死または一過性虚血性発作)、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、アテローム性動脈硬化、末梢動脈閉塞症、静脈血栓塞栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓、腎臓塞栓症、肺塞栓症、および(a)人工弁または他のインプラント、(b)留置カテーテル、(c)ステント、(d)心肺バイパス、(e)血液透析、または(f)血栓症を促進する人工表面に血液が曝露される他の手順に起因する血栓症を含む)とすることができる。
【0089】
別の態様では、本発明は、対象における血栓塞栓性障害を予防する方法を特徴とする。本方法は、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む。血栓塞栓性障害は、心室における、動脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈血栓症、静脈性心血管血栓塞栓性障害および血栓塞栓性障害;(不安定狭心症、急性冠症候群、最初の心筋梗塞、再発性心筋梗塞、虚血(例えば、冠動脈虚血、虚血性突然死または一過性虚血性発作)、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、アテローム性動脈硬化、末梢動脈閉塞症、静脈血栓塞栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓、腎臓塞栓症、肺塞栓症、および(a)人工弁または他のインプラント、(b)留置カテーテル、(c)ステント、(d)心肺バイパス、(e)血液透析、または(f)血栓症を促進する人工表面に血液が曝露される他の手順に起因する血栓症を含む)とすることができる。
【0090】
別の態様では、本発明は、対象における血栓塞栓性障害のリスクを低減する方法を特徴とする。本方法は、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む。血栓塞栓性障害は、心室における、動脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈血栓症、静脈性心血管血栓塞栓性障害および血栓塞栓性障害;(不安定狭心症、急性冠症候群、最初の心筋梗塞、再発性心筋梗塞、虚血(例えば、冠動脈虚血、虚血性突然死または一過性虚血性発作)、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、アテローム性動脈硬化、末梢動脈閉塞症、静脈血栓塞栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓、腎臓塞栓症、肺塞栓症、および(a)人工弁または他のインプラント、(b)留置カテーテル、(c)ステント、(d)心肺バイパス、(e)血液透析、または(f)血栓症を促進する人工表面に血液が曝露される他の手順に起因する血栓症を含む)とすることができる。
【0091】
一態様では、本発明は、対象における、末期腎疾患を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている
組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0092】
一態様では、本発明は、対象における、末期腎疾患を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0093】
一態様では、本発明は、対象における、末期腎疾患のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を対象とする。
【0094】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を処置する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含み、対象が人工表面に曝露される、方法を特徴とする。一部の実施形態では、人工表面は対象の血液に接触する。一部の実施形態では、人工表面は、体外表面である。一部の実施形態では、人工表面は、埋込式装具、例えば、機械弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、透析カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、心肺バイパス回路の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、人工心臓弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、補助人工心臓の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、小口径グラフトの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、中心静脈カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、体外式膜型人工肺(ECMO)装置の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、深部静脈血栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、肺塞栓症である。
【0095】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含み、対象が人工表面に曝露される、方法を特徴とする。一部の実施形態では、人工表面は対象の血液に接触する。一部の実施形態では、人工表面は、体外表面である。一部の実施形態では、人工表面は、埋込式装具、例えば、機械弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、透析カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、心肺バイパス回路の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、人工心臓弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、補助人工心臓の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、小口径グラフトの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、中心静脈カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、体外式膜型人工肺(ECMO)装置の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、深部静脈血栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、肺塞栓症である。
【0096】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化
合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含み、対象が人工表面に曝露される、方法を特徴とする。一部の実施形態では、人工表面は対象の血液に接触する。一部の実施形態では、人工表面は、体外表面である。一部の実施形態では、人工表面は、埋込式装具、例えば、機械弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、透析カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、心肺バイパス回路の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、人工心臓弁の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、補助人工心臓の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、小口径グラフトの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、中心静脈カテーテルの表面である。一部の実施形態では、人工表面は、体外式膜型人工肺(ECMO)装置の表面である。一部の実施形態では、人工表面は、血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、深部静脈血栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、肺塞栓症である。
【0097】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、心房細動を処置する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析も必要とする。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、対象が透析を受けている間に、対象に投与される。一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容される塩または組成物は、透析を受ける前またはその後に、対象に投与される。一部の実施形態では、患者は、末期腎疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析を必要としない。一部の実施形態では、患者は、出血の高いリスクにある。一部の実施形態では、心房細動は、別の血栓塞栓性障害、例えば、血塊に関連している。
【0098】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、心房細動のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、心房細動を発症する高いリスクにある。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析も必要とする。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、対象が透析を受けている間に、対象に投与される。一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容される塩または組成物は、透析を受ける前またはその後に、対象に投与される。一部の実施形態では、患者は、末期腎疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析を必要としない。一部の実施形態では、患者は、出血の高いリスクにある。一部の実施形態では、心房細動は、別の血栓塞栓性障害、例えば、血塊に関連している。
【0099】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、心房細動を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、心房細動を発症する高いリスクにある。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析も必要とする。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、対象が透析を受けている間に、対象に投与される。一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容される塩または組成物は、透析を受ける前またはその後に、対象に投与される。一部の実施形態では、患者は、末期腎疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、透析、例えば、腎臓透析を必要としない。一部の実施形態では、患者は、出血の高いリスクにある。一部の実施形態では、心房細動は、別の血
栓塞栓性障害、例えば、血塊に関連している。
【0100】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症を処置する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0101】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0102】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0103】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症血栓症(heparin-induced thrombocytopenia thrombosis)を処置する方法であって
、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0104】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症血栓症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0105】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、ヘパリン誘発性血小板減少症血栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0106】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含み、対象ががんを有するかまたは化学療法薬で処置されている最中である、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は化学療法を同時に受けている。一部の実施形態では、対象は、ラクターゼデヒドロゲナーゼレベルが上昇している。一部実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、深部静脈血栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、肺塞栓症である。
【0107】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、血栓性微小血管症を処置す
る方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、溶血性尿毒症症候群(HUS)である。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である。
【0108】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、血栓性微小血管症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、溶血性尿毒症症候群(HUS)である。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である。
【0109】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における、血栓性微小血管症を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、溶血性尿毒症症候群(HUS)である。一部の実施形態では、血栓性微小血管症は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)である。
【0110】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における再発性虚血を予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含み、対象が急性冠症候群を有する、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、心房細動を有する。一部の実施形態では、対象は、心房細動を有していない。別の態様では、本発明は、リスク、例えば、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)または血栓症の高いリスクにあると特定された対象を処置し、これにより、対象における脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)または血栓症の可能性を低減する方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、出血(例えば、出血多量)または敗血症のリスクにあるとさらに特定される。一部の実施形態では、処置は、出血負荷を伴わず有効である。一部の実施形態では、処置は、注入ポートおよびラインの開存性を維持するのに有効である。さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)は、トロンビンの生成が生理的役割を果たすと暗示されている他の疾患の処置および予防に有用である。例えば、トロンビンは、細胞表面トロンビン受容体の特異的切断および活性化、分裂促進作用、細胞増殖、例えば再狭窄または血管新生、PDGFの放出およびDNA合成をもたらす血管細胞の異常な増殖などの多様な細胞機能により、多数の様々な細胞タイプを調節するその能力によって、がん、関節炎、アテローム性動脈硬化、血管性認知症およびアルツハイマー病などの、慢性疾患および変性疾患の罹患率および死亡率への一因に関与している。第XIa因子の阻害により、トロンビン生成が効果的に遮断され、したがって、様々な細胞タイプに及ぼすトロンビンのいずれの生理的作用も中和する。上に議論した代表的な症例は、第XIa因子阻害剤による処置に適した潜在的臨床状況のすべてではないが、一部を含む。
【0111】
別の態様では、本発明は、浮腫(例えば、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫)を有する対象を処置する方法であって、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0112】
別の態様では、本発明は、対象における、浮腫(例えば、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫)を予防する方法であって、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0113】
別の態様では、本発明は、対象における、浮腫(例えば、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫)のリスクを低減する方法であって、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0114】
別の態様では、本発明は、対象における、カリクレインを阻害する方法であって、浮腫(例えば、血管浮腫、例えば、遺伝性血管浮腫)を有する対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を対象に投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0115】
別の態様では、本発明は、対象における、血栓塞栓性の結果または合併症を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、末梢血管インターベンション(例えば、四肢)、血液透析、カテーテルアブレーション、脳血管インターベンション、臓器(例えば、肝臓)の移植、手術(例えば、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術(例えば、心臓切開手術))、経カテーテル的大動脈弁植え込み術、動脈瘤を処置するために使用される大口径インターベンション、経皮冠動脈インターベンションまたは血友病の治療法に伴う。一部の実施形態では、手術は、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術である。一部の実施形態では、心臓手術は、複雑な心臓手術またはより低いリスクの心臓手術である。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、経皮冠動脈インターベンションに伴う。
【0116】
別の態様では、本発明は、対象における、血栓塞栓性の結果または合併症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、末梢血管インターベンション(例えば、四肢)、血液透析、カテーテルアブレーション、例えば、心房細動のためのカテーテルアブレーション、脳血管インターベンション、臓器(例えば、肝臓)の移植、手術(例えば、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術(例えば、心臓切開手術))、経カテーテル的大動脈弁植え込み術、動脈瘤を処置するために使用される大口径インターベンション、経皮冠動脈インターベンションまたは血友病の治療法に伴う。一部の実施形態では、手術は、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術である。一部の実施形態では、心臓手術は、複雑な心臓手術またはより低いリスクの心臓手術である。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、経皮冠動脈インターベンションに伴う。
【0117】
別の態様では、本発明は、対象における、血栓塞栓性の結果または合併症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、末梢血管インターベンション(例えば、四肢)、血液
透析、カテーテルアブレーション、例えば、心房細動のためのカテーテルアブレーション、脳血管インターベンション、臓器(例えば、肝臓)の移植、手術(例えば、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術(例えば、心臓切開手術))、経カテーテル的大動脈弁植え込み術、動脈瘤を処置するために使用される大口径インターベンション、経皮冠動脈インターベンションまたは血友病の治療法に伴う。一部の実施形態では、手術は、整形外科手術、肺手術、腹部手術または心臓手術である。一部の実施形態では、心臓手術は、複雑な心臓手術またはより低いリスクの心臓手術である。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、経皮冠動脈インターベンションに伴う。
【0118】
別の態様では、本発明は、対象における、動脈損傷後の再狭窄を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、動脈損傷が、頭蓋動脈ステント留置後に起こる。
【0119】
別の態様では、本発明は、対象における、動脈損傷後の再狭窄を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、動脈損傷が、頭蓋動脈ステント留置後に起こる。
【0120】
別の態様では、本発明は、対象における、動脈損傷後の再狭窄のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、動脈損傷が、頭蓋動脈ステント留置後に起こる。
【0121】
別の態様では、本発明は、対象における、肝血管血栓症を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0122】
別の態様では、本発明は、対象における、肝血管血栓症を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0123】
別の態様では、本発明は、対象における、肝血管血栓症のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0124】
別の態様では、本発明は、非ST上昇型心筋梗塞またはST上昇型心筋梗塞を処置する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0125】
別の態様では、本発明は、対象における、非ST上昇型心筋梗塞またはST上昇型心筋梗塞を予防する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容さ
れるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0126】
別の態様では、本発明は、対象における、非ST上昇型心筋梗塞またはST上昇型心筋梗塞のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。
【0127】
別の態様では、本発明は、血管開存性を維持する方法であって、対象に、有効量の化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または本明細書に記載されている組成物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩を含む組成物)を投与するステップを含む、方法を特徴とする。一部の実施形態では、対象は、急性腎臓損傷を有する。一部の実施形態では、対象は、持続的腎代替療法をさらに受ける。
【0128】
上述のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物またはその組成物は、経口または非経口投与される。ある特定の実施形態では、本化合物またはその組成物は、経口投与される。ある特定の実施形態では、本化合物またはその組成物は、対象が、直接的な経口抗血液凝固剤の使用を中止した後に投与される。ある特定の実施形態では、対象は、最大で約2.5年間、直接的な経口抗血液凝固剤を使用した。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0129】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。一部の実施形態では、本化合物は、対象に静脈内投与される。一部の実施形態では、本化合物は、対象に皮下投与される。一部の実施形態では、本化合物は、対象に連続静脈内注入として投与される。一部の実施形態では、本化合物は、ボーラスとして、対象に投与される。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、血栓塞栓性障害の高いリスクを有する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、手術における合併症の結果である。
【0130】
一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。
【0131】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも1日間(例えば、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約10日間、約2週間、約3週間、約4週間、約2か月間、約3か月間、約6か月間、約9か月間、約1年間)、人工表面に接触している。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1図1は、実施例1における手順から得られた試料番号4の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0133】
図2図2は、実施例3、ステップ1における手順から得られた試料番号8の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0134】
図3図3は、実施例3、ステップ2における手順から得られた粗生成物の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0135】
図4図4は、実施例3、ステップ2における手順から得られた精製生成物の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0136】
図5図5は、実施例3、ステップ3における手順から得られた生成物の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0137】
図6図6は、実施例3、ステップ4における手順から得られた生成物の例示的な1H NMRスペクトルの図である。
【0138】
図7図7は、実施例3、ステップ4における手順から得られた生成物の例示的な13C NMRスペクトルの図である。
【0139】
図8図8は、図7の105~180ppmの領域における、13CのNMRスペクトルの拡大図である。
【0140】
図9図9は、実施例3、ステップ4における手順から得られた生成物の例示的なXRPDパターンの図である。
【0141】
図10図10は、猟犬モデルにおいて行った、心肺バイパス実験に関する、膜型人工肺にかかる圧力勾配を示す図である。
【0142】
図11図11は、猟犬モデルにおいて測定した、血漿中濃度と活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)との比の比較を示す図である。
【0143】
図12図12は、化合物1の投与後に猟犬モデルにおいて測定した活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
詳細な説明
定義
用語「かき混ぜた」とは、本明細書で使用する場合、反応混合物の別の巨視的構成物質に対する、外部から誘導される、反応混合物の巨視的構成物質のなんらかの動きを指す。用語「撹拌する」とは、本明細書で使用する場合、反応混合物の別の巨視的構成物質に対する、撹拌装置による、外側から誘導される、反応混合物の巨視的構成物質のなんらかの動き、例えば、誘導撹拌を指し、当業者に公知の通常の内部撹拌手順を含むことができる。本明細書で使用する場合、「XRPD」とは、X線粉末回折を指す。
【0145】
本明細書で使用する場合、「スラリーにする」とは、本明細書に記載されている化合物が、溶媒(例えば、極性非プロトン性溶媒または非極性溶媒)中で懸濁され、この懸濁液をかき混ぜた後に、再度、採集(例えば、ろ過による)される方法を指す。
【0146】
本明細書で使用する場合、「結晶性」とは、非常に規則正しい化学構造を有する固体を指す。分子は、格子の3次元空間において、規則正しく、周期的に配列されている。
【0147】
用語「実質的に結晶性」とは、少なくとも特定の重量パーセントの結晶性となり得る形態を指す。特定の重量百分率とは、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または70%と100%との間の任意の百分率である。ある特定の実施形態では、結晶化度の特定の重量パーセントは、少なくとも90%である。ある特定の他の実施形態では、結晶化度の特定の重量パーセントは、少なくとも95%である。一部の実施形態では、化合物1は、本明細書に記載されている結晶性固体形態のいずれかの実質的に結晶性の試料とすることができる。
【0148】
用語「実質的に純粋な」とは、不純物および/または化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩の他の固体形態を含まない、少なくとも特定の重量パーセントであり得る化合物1の具体的な結晶性固体形態の組成を指す。特定の重量百分率とは、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または70%と100%との間の任意の百分率である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物1または薬学的に許容されるその塩の結晶性固体形態は、95%と100%との間の重量パーセント、例えば、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約99.9%で実質的に純粋である。
【0149】
本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、対象が具体的な疾患、障害または状態を罹患している間に行われる動作であって、疾患、障害もしくは状態の重症度を軽減する、または疾患、障害もしくは状態の進行を抑制もしくは鈍化させる動作を企図する(「治療的処置」でもある)。
【0150】
本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、化合物の「治療有効量」とは、疾患、障害もしくは状態の処置において治療的利益を実現するのに、または疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の症状を遅延もしくは最小にするのに十分な量のことである。化合物の治療有効量は、単独のまたは他の治療法と組み合わせた治療剤の量であって、疾患、障害または状態の処置において治療的利益を実現する治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、総合的な治療法を改善する、疾患もしくは状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療剤の治療的有効性を増強する量を包含することができる。
【0151】
本明細書で使用する場合、および別段の指定がない限り、化合物の「予防有効量」は、疾患、障害もしくは状態、または疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の症状を予防する、あるいはその再発を予防するのに十分な量のことである。化合物の予防有効量は、単独のまたは他の薬剤と組み合わせた治療剤の量であって、疾患、障害または状態の予防に予防的利益を実現する治療剤の量を意味する。用語「予防有効量」は、総合的な予防を改善する、または別の予防剤の予防的有効性を増強する量を包含することができる。
【0152】
疾患、障害および状態は、本明細書において互換的に使用される。
【0153】
投与が企図される「対象」には、以下に限定されないが、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、幼児、小児、青年)または成人対象(例えば、若い成人、中年成人または老人成人))、ならびに/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコおよび/もしくはイヌなどの哺乳動物が含まれる。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、非ヒト動物である。一部の実施形態では、小児対象は、0歳から18歳の間の年齢である。一部の実施形態では、成人対象は、18歳を超えている。
【0154】
本明細書で使用する場合、用語「人工表面」とは、例えば医療手順の間に、対象の血液に接触するようになる非ヒトまたは非動物表面のいずれかを指す。人工表面は、対象の身体の外部の対象の血液を採取するまたは循環させるための管とすることができる。人工表面はまた、ステント、弁、管腔内カテーテル、または血液をポンプ注入するためのシステムとすることができる。非限定例として、このような人工表面は、鋼、任意のタイプのプラスチック、ガラス、シリコーン、ゴムなどとすることができる。一部の実施形態では、人工表面は、対象の血液の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または1
00%に曝露される。
【0155】
本明細書で使用する場合、人工表面に関する「コンディショニング」または「コンディショニングした」という用語は、プライミング用溶液もしくはフラッシング用溶液(例えば、血液、生理食塩水溶液、リンゲル液)中に既に存在する、または医療手順の前、その間もしくはその後に、人工表面への個別投与として、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)または薬学的に許容されるその塩で人工表面(例えば、体外表面)をプライミングまたはフラッシングすることを指す。
化合物
【0156】
第XIa因子またはカリクレインを阻害する化合物が、本明細書に記載されている。
【0157】
一態様では、本発明は、化合物1:
【化17】
または薬学的に許容されるその塩、例えば、化合物1の塩酸塩を対象とする。一部の実施形態では、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、結晶性である。一部の実施形態では、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、実質的に純粋な結晶性固体形態として存在する。
【0158】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される塩:
【化18】
が本明細書において提供される。
【0159】
式(I)の薬学的に許容される塩は、化合物1の塩酸塩であり、本明細書において化合物1・HClとも称される。一部の実施形態では、化合物1・HClは、結晶性である。一部の実施形態では、化合物1・HClは、実質的に純粋な結晶性固体形態として存在する。一部の実施形態では、化合物1・HClは、実質的に図9に図示されている通りのXRPDパターンを有する。
【0160】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される結晶性塩:
【化19】
が本明細書において提供される。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物から塩を形成する。本明細書に記載されている化合物は、遊離酸、双性イオンとして、または塩として投与され得る。塩はまた、陽イオンと、本明細書に記載されている化合物上の負の電荷を有する置換基、例えば、化合物1の脱プロトン化カルボン酸部分との間に形成され得る。好適な陽イオン性対イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよびアンモニウムイオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウム陽イオン)を含む。酸付加塩では、塩は、陰イオンと、本明細書に記載されている化合物上の正の電荷を有する置換基(例えば、アミノ基)または塩基性置換基(例えば、ピリジル)との間に形成され得る。好適な陰イオンには、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンおよび酢酸イオンが含まれる。
【0162】
本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩(例えば、化合物1の薬学的に許容される塩)はまた、薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含むことができる。好適な酸の塩の例には、酢酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、4-アミノサリチル酸塩、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、ケイ皮酸塩、シクラミン酸塩、デカン酸塩、デカン二酸塩、2,2-ジクロロ酢酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、エタン-1,2-二スルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptanoate)、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルク
ロン酸塩(glucoronate)、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコ
ール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-1,5-二スルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、2-オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0163】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよび(アルキル)4N+塩が含まれる。本発明はまた、本明細書において開示されている化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定している。水溶性または油溶性または分散性生成物が、このような四級化によって得ることができる。
【0164】
本明細書で使用する場合、化合物1を含む本発明の化合物は、薬学的に許容される誘導体またはそのプロドラッグを含むよう定義されている。「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントに投与すると、本発明の化合物をもたらす(直接または間接的に)ことが可能な、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味する。特に、好都合な誘導体およびプドラッグは、このような化合物が哺乳動物に投与されると(例えば、経口投与される化合物が、血液により容易に吸収されることを可能にすることによって)、本発明の化合物の生体利用率を向上させるもの、または親化学種と比べて、生物的コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を増強するものである。好ましいプロドラッグは、水溶解度、または腸膜を介する能動輸送を増強する基が、本明細書に記載されている式の構造に結合している誘導体を含む。
【0165】
本明細書に記載されているいずれかの式または化合物は、本化合物の非標識形態および同位体標識形態を表すことも意図されており、同位体標識化合物は、1個または複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子により置き換えられていることを除くと、本明細書において示されている式により図示されている構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18F、51P、32P、35S、36Cl、125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体を含む。本発明は、本明細書において定義されている様々な同位体標識化合物、例えば、その中に3H、13Cおよび14Cなどの放射活性同位体が存在するものを含む。このような同位体標識されている化合物は、代謝検討(14Cを用いる)、反応速度検討(例えば、‘Hまたは3Hを用いる)、ポジトロン断層法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)などの検出またはイメージング技法(薬物または基質組織分布アッセイを含む)、または患者の放射活性処置に有用である。特に、18Fまたは標識化合物は、PETまたはSPECT検討に特に望ましいことがあり、本発明の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識されている試薬に置き換えることによって、以下に記載されている、スキーム中、または実施例および調製中に開示されている手順を実施することによって調製され得る。
【0166】
さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち、2HまたはD)による置換は、より大きな代謝安定性に起因するある種の治療的利点、例えば、in vivo半減期の増大または投与必要量の低下または治療指数の改善をもたらすことがある。本文脈における重水素は、本明細書に記載されている式の化合物の置換基と見なされることが理解される。このようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮係数により定義され得る。用語「同位体濃縮係数」は、本明細書で使用する場合、同位体の存在量と指定した同位体の天然の存在量との間の比を意味する。本発明の化合物中の置換基が、重水素を表す場合、指定される各重水素原子に対して、このような化合物は、少なくとも3500(指定した各重水素原子において、52.5%の重水素取込み)、少なくとも4000(60%の重水素取込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取込み)、少なくとも5000(75%の重水素取込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素取込み)、少なくとも6000(90%の重水素取込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取込み)、少なくとも6600(99%の重水素取込み)または少なくとも8633.3(99.5%の重水素取込み)となる同位体濃縮係数を有する。
【0167】
本明細書に記載されている同位体標識されている化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技法により、または以前に使用された非標識試薬の代わりに、適切な同位体標識試薬を使用して、添付されている実施例および調製に記載されているものと同様の方法によって調製することができる。本発明による薬学的に許容される溶媒和物は、結晶化の溶媒が、同位体として置換され得るもの、例えば、D2O、D6-アセトン、D6-DMSOを含む。
【0168】
本発明の化合物の任意の不斉原子(例えば、炭素など)は、ラセミまたは鏡像異性体に富む、例えば、(R)-(S)-または(RS)-立体配置で存在することができ、ある特定の実施形態では、各不斉原子は、(R)-または(S)-立体配置で、少なくとも50%鏡像異性体過剰率、少なくとも60%鏡像異性体過剰率、少なくとも70%鏡像異性体過剰率、少なくとも80%鏡像異性体過剰率、少なくとも90%鏡像異性体過剰率、少なくとも95%鏡像異性体過剰率または少なくとも99%鏡像異性体過剰率を有する。不飽和結合を有する原子における置換基は、可能な場合、シス-(Z)-またはトランス-(E)-形態で存在することがある。したがって、本明細書で使用する場合、本発明の化
合物は、可能な異性体、回転体、アトロプ異性体、互変異性体またはそれらの混合物の1つの形態で、例えば、実質的に純粋な幾何(シスまたはトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(対掌体)、ラセミ体またはそれらの混合物として存在することができる。異性体の生じた混合物のいずれも、それらの構成成分の物理化学的差異に基づいて、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶化によって、純粋なまたは実質的に純粋な幾何異性体または光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に分離することができる。
【0169】
最終生成物または中間体の生じたラセミ体のいずれも、公知の方法によって、例えば、光学活性な酸または塩基を用いて得られたそのジアステレオマー塩を分離して、光学活性な酸性化合物または塩基性化合物を遊離させることによって、光学対掌体に分割され得る。したがって、酸性部分を使用して、本発明の化合物を、例えば、光学活性な酸、例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸またはカンファー-10-スルホン酸により形成された塩の分別結晶化によって、その光学対掌体に分割することができる。ラセミ生成物はまた、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分割することができる。
【0170】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)はまた、複数の互変異性体で表されることがある。このような例では、本発明は、本明細書に記載されている化合物の互変異性体のすべてを含む。本明細書において記載されている化合物の結晶形態はすべて、本発明に明示的に含まれる。
【0171】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)は、第XIa因子またはカリクレインをモジュレートする(例えば、阻害する)その能力について評価することができる。
医薬品の製造管理および品質管理に関する基準
【0172】
医薬品の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)とは、それが供給材料の製造に適用される場合、医薬品の製造に関連するすべての適用可能な基準を指し、(i)21U.S.C.351,21C.F.R.パート210および211(改正)、ならびにそれらの後継条項およびICH Q7-医薬品有効成分の医薬品の製造管理および品質管理に関する基準に記載されている、FDAによって公布された米国の現在の医薬品の製造管理および品質管理に関する基準の規制を含む、準拠法の形態の供給材料の製造を管轄するいずれかの規制当局によって公布された基準、(ii)供給原料の製造を管轄するいずれかの規制当局によって公布された、ドラフトまたは最終ガイダンス文書(勧告意見書、コンプライアンスポリシーガイドおよびガイドラインを含む)の形式の基準、および(iii)仕様の当事者によって合意される可能性のあるこのような他の業界標準(品質契約で定義および規定されている)を含む。
化合物を合成する方法
【0173】
本明細書に記載されている化合物は、市販の出発原料および試薬を使用する、非限定的な従来の方法によって合成することができる。例えば、化合物は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,501,404号に記載されている方法を利用して、または本明細書の実施例において記載されている方法を使用して合成することができる。
【0174】
本明細書に記載されている化合物は、有機合成化学の当分野における、様々な技法を使用して精製することができる。本明細書に記載されている化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VIまたはVIIのいずれの1つの化合物は、1つまたは複数のクロマトグラフィー法、例えば、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCを使用して精製することができる。本明細書に記載されている化合物、例えば、式I、II、III、IV
、V、VIまたはVIIのいずれの1つの化合物は、クロマトグラフィーではない精製方法、例えば、再結晶またはスラリー形成によって精製することができる。一実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、再結晶を使用して精製することができる。別の実施形態では、本明細書に記載されている化合物はまた、スラリー形成によって精製することができる。
【0175】
一部の実施形態では、クロマトグラフィーによって精製された本明細書に記載されている化合物は、再結晶によって精製することもできる。本明細書に記載されている化合物はまた、1つまたは複数の溶媒を用いて本化合物をスラリーにする(または、再スラリーにする)(例えば、本明細書に記載されているスラリー)ことにより精製することができる。本明細書に記載されている化合物はまた、1つまたは複数の溶媒による粉末化、例えば、本明細書に記載されている粉末化によって精製することもできる。例えば、クロマトグラフィーによって精製された本明細書に記載されている化合物は、粉末化によって精製することもできる。化学反応器では、粉末化過程は、機械的撹拌による、溶媒または溶媒混合物中の固体生成物の懸濁液または再懸濁液によって行われ得る。実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、1つまたは複数の抗溶媒を使用して、溶液からの沈殿によって精製することもできる。例えば、クロマトグラフィーによって精製された本明細書に記載されている化合物は、沈殿によって精製することもできる。一実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーによって精製される。一実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、超臨界流体クロマトグラフィー、例えば、液体二酸化炭素を用いる超臨界流体クロマトグラフィーによって精製される。一実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製される。
【0176】
一態様では、式(I)の薬学的に許容される塩:
【化20】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を調製する方法であって、式(II)の塩
【化21】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒に溶解し、これにより、第1の溶液を調製するステップ、および第1の溶液に塩化水素を添加し、これによって、式(I)の薬学的に許容される塩を生成するステップを含む方法が本明細書において提供される。
【0177】
一部の実施形態では、式(II)の塩は、非プロトン性溶媒に溶解される。一部の実施形態では、溶媒は、アセトニトリルを含む(例えば、アセトニトリルからなる、またはアセトニトリルから本質的になる)。一部の実施形態では、塩化水素は、第1の溶液にHClガスを通気することによって、または第1の溶液にHClを含む別の溶液(例えば、塩酸のエーテル溶液)を添加することによって、第1の溶液に添加される。
【0178】
一部の実施形態では、式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量は、500グラムを超えるまたは500グラムに等しい。一部の実施形態では、式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量は、1キログラムを超えるまたは1キログラムに等しい。一部の実施形態では、本方法は、300グラムを超える(例えば、約350グラムを超える(例えば、約368グラム))式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。
【0179】
一部の実施形態では、本方法は、約50%を超える収率で(例えば、約55%の収率で)、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約75%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約90%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、本方法は、約99%を超える収率で、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する。一部の実施形態では、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約80%である。一部の実施形態では、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約81%である。
【0180】
一部の実施形態では、本方法は、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)に溶解し、次いでこの溶解している式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を、別の溶媒(例えば、メチルtert-ブチルエーテル)を使用して沈殿させることによって、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む。一部の実施形態では、沈殿後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、98%よりも高い。一部の実施形態では、沈殿後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約98%である。
【0181】
一部の実施形態では、本方法は、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)中でスラリーにし、次に式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)をろ過して、溶媒から式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を分離することによって、式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む。一部の実施形態では、スラリーにして分離した後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、98%よりも高い。一部の実施形態では、スラリーにして分離した後の式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度は、約98%である。
【0182】
一部の実施形態では、本方法は、式(III)の化合物
【化22】
にトリフルオロ酢酸を接触させることにより式(II)の塩を調製するステップを含む。
【0183】
一部の実施形態では、本方法は、式(III)の化合物にシラン(例えば、トリエチル
シラン)を接触させるステップをさらに含む。
【0184】
一部の実施形態では、本方法は、500グラムを超える(例えば、1kgを超える)式(III)の化合物を生成する。
【0185】
一部の実施形態では、本方法は、式(IV)の化合物
【化23】
に、式(V)の化合物
【化24】
を接触させることにより式(III)の化合物を調製するステップを含む。
【0186】
一部の実施形態では、本方法は、1キログラムを超える(例えば、約1.3kg)の式(III)の化合物を生成する。一部の実施形態では、本方法は、溶媒の存在下で行われる。一部の実施形態では、本方法は、塩基(例えば、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン)の存在下で行われる。
【0187】
一部の実施形態では、本方法は、式(VI)の化合物
【化25】
に、式(VII)の化合物
【化26】
を接触させることにより式(IV)の化合物を調製するステップを含む。
【0188】
一部の実施形態では、本方法は、500グラムを超える(例えば、900グラムを超える)式(IV)の化合物を生成する。
【0189】
一部の実施形態では、式(III)の化合物は、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される。一部の実施形態では、精製方法は、溶媒(例えば、ヘプタン)中で式(III)の化合物のスラリーにするステップ、次に、式(III)の化合物をろ過して、溶媒から式(III)の化合物を分離するステップを含む。一部の実施形態では、式(III)の化合物の純度は、90%よりも高い。
【0190】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される。
処置、予防またはリスクの低減の方法
【0191】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩)は、第XIa因子またはカリクレインを阻害することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、第XIa因子とカリクレインの両方を阻害することができる。その結果、これらの化合物は、本明細書に記載されている障害の処置、予防、またはそのリスクの低減に有用となり得る。
【0192】
例示的な障害には、冠動脈および脳血管疾患、静脈または動脈血栓症、凝固症候群、虚血(例えば、冠動脈虚血)および狭心症(安定および不安定)、深部静脈血栓症(DVT)、肝静脈血栓症、播種性血管内凝固障害、カサバッハ-メリット症候群、肺塞栓症、心筋梗塞(例えば、ST上昇型心筋梗塞または非ST上昇型心筋梗塞(例えば、カテーテル法前の非ST上昇型心筋梗塞)、脳梗塞、脳血栓症、一過性虚血性発作、心房細動(例えば、非弁膜症性心房細動)、脳塞栓、手術(例えば、股関節または膝置換、整形外科手術、心臓手術、肺手術、腹部手術または動脈内膜切除)の血栓塞栓性合併症および末梢動脈閉塞症に関連する血栓性事象を含み、心筋梗塞、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、狭心症およびアテローム動脈硬化性プラークの破裂の他の結果を処置または予防するのにも有用となり得る。第XIa因子またはカリクレイン阻害活性を有する本発明の化合物はまた、化学療法を受けている患者および/またはラクターゼデヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの上昇した患者を含めたがん患者における、血栓塞栓性障害、例えば静脈血栓塞栓症の予防、および血管開存性の組織プラスミノーゲン活性化因子をベースとする回復時もしくは機構的回復時、またはこれらの後の血栓塞栓性事象の予防に有用となり得る。第XIa因子またはカリクレイン阻害活性を有する本発明の化合物はまた、全血の調製、保管および分画化の間などの、血液凝固の阻害剤として有用となり得る。さらに、本明細書に記載されている化合物は、患者が血栓塞栓性障害または合併症のリスクにある急性病院環境において、または手術中やその前後において、また凝固状態の高まった患者、例えばがん患者において使用されてもよい。
【0193】
第XIa因子阻害は、本発明によれば、トロンビンまたは第Xa因子などの他の凝固セリンプロテアーゼの阻害と比べて、血栓症を阻害するより効果的かつ安全な方法となり得る。低分子第XIa因子阻害剤の投与は、出血回数に全くまたは実質的に全く影響しないで、および止血の障害がほとんどまたは全くなしに、トロンビン生成および血塊形成を阻害する作用を有するべきである。これらの結果は、他の「直接作用性」凝固プロテアーゼ阻害剤(例えば、トロンビンおよび第Xa因子の活性部位阻害剤)の結果とは実質的に異なるものであり、このことは、出血時間が長期化していることおよび抗血栓有効性と出血時間の長期化との間にそれほど区別がないことを実証している。本発明による好ましい方法は、哺乳動物に少なくとも1つの本発明の化合物を含有する医薬組成物を投与するステップを含む。
【0194】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩)は、カリクレインを阻害することができる。その結果、これらの化合物は、浮腫(例えば、脳浮腫、黄斑浮腫および血管浮腫(例えば、遺伝性血管浮腫))などの炎症に関与する疾患の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用となり得る。一部の実施形態では、本発明の化合物は、遺伝性血管浮腫の処置または予防に有用となり得る。本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)、例えば、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、例えば、脳卒中、虚血(例えば、冠動脈虚血)および周術期の血液喪失の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用となり得る。本発明の方法は、第XIa因子またはカリクレインの作用を含む、そのような状態を処置または予防するのに有用である。
したがって、本発明の方法は、血栓状態または血栓形成性状態における凝固カスケードの活性化に関連する心血管疾患を含めたアテローム動脈硬化性プラークの破裂の結果を処置するのに有用である。
【0195】
より詳細には、本発明の方法は、冠動脈疾患、心筋梗塞、不安定狭心症(漸増性狭心症を含む)、虚血(例えば、血管閉塞に起因する虚血)および脳梗塞などの、急性冠症候群の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができる。本発明の方法はさらに、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)および関連脳血管疾患(脳血管障害、血管性認知症および一過性虚血性発作を含む);静脈血栓症および血栓塞栓症(深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症など);心房細動、心室拡大、拡張型心筋症または心不全に関連する血栓症;末梢動脈疾患および間欠性跛行;アテローム動脈硬化性プラークの形成および移植によるアテローム性動脈硬化;内因的(アテローム動脈硬化性プラークの破裂による)または外因的(血管形成術または頭蓋動脈ステント留置後に起因する血管壁損傷などの侵襲的心臓病理学的手順による)に誘発された動脈損傷後の再狭窄;播種性血管内凝固障害、カサバッハ-メリット症候群、脳血栓症および脳塞栓の処置、予防またはそれらのリスクの低減に有用となり得る。
【0196】
さらに、本発明の方法は、血栓塞栓性結果またはがんに関連する合併症、血栓摘出、手術(例えば、股関節置換、整形外科手術)、動脈内膜切除、人工心臓弁の導入、末梢血管インターベンション(例えば、四肢)、脳血管インターベンション、動脈瘤の処置に使用される大口径インターベンション、脈管グラフト、人工臓器および植え込み術(例えば、経カテーテル的大動脈弁植え込み術)または臓器の移植(例えば、肝臓の移植)、組織または細胞);経皮冠動脈インターベンション;カテーテルアブレーション;血友病治療法;血液透析;心筋梗塞、脳卒中(例えば、大血管急性虚血性脳卒中)、肺塞栓症および同様の状態に罹患している患者における投薬(組織プラスミノーゲン活性化因子または類似の薬剤、および血管開存性の外科的修復など);投薬(経口避妊薬、ホルモン置換、および例えばヘパリン誘発性血小板減少症を処置するためのヘパリンなど);敗血症(播種性血管内凝固に関連する敗血症など);妊娠または出産;ならびに別の慢性医療状態の処置、予防(prophylaxis)(例えば、予防(preventing))またはこれらのリスクの低減に
使用することができる。本発明の方法は、抑留(例えば、固定、入院、床上安静、または例えば、固定用ギブスによる四肢固定など)による血栓症を処置するために使用されてもよい。一部の実施形態では、血栓塞栓性の結果または合併症は、経皮冠動脈インターベンションに伴う。
【0197】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、血栓塞栓性障害、例えば、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症、または関連合併症の処置、予防、およびそれらのリスクの低減に有用となり得、対象は、人工表面に曝露される。人工表面は、例えば、体外表面として、または埋込式装具の表面として対象の血液に接触することができる。このような人工表面には、以下に限定されないが、透析カテーテル、心肺バイパス回路、人工心臓弁、例えば、機械式心臓弁(MHV)、補助人工心臓、小口径グラフト、中心静脈カテーテル、体外式膜型人工肺(ECMO)装置の表面が含まれる。さらに、血栓塞栓性障害または関連合併症は、人工表面によって引き起こされる恐れがあるか、または人工表面に関連する恐れがある。例えば、機械式心臓弁(MHV)の異物表面および様々な構成成分は、血栓形成促進性であり、凝固の内因性経路を介して、トロンビン産生を促進する。さらに、トロンビンおよびFXa阻害剤は、重症な出血を引き起こさない血漿中レベルで内因性経路を遮断することに有効ではないので、これらの阻害剤は、血栓塞栓性障害またはMHVなどの人工表面により引き起こされる関連合併症と禁忌となる。したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる、本発明の化合物は、これらの目的に対する代替的治療薬として企図される。
【0198】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物はまた、それを必要とする対象における、心房細動の処置、予防またはそのリスクの低減に有用となり得る。例えば、対象は、心房細動を発症する高いリスクを有する恐れがある。対象はまた、腎臓透析などの透析を必要とし得る。本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、透析前、その間またはその後に投与され得る。あるFXaまたはトロンビン阻害剤などの、現在、上市されている直接的な経口抗血液凝固剤(DOAC)は、このような状態下では、心房細動に禁忌である。したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる本発明の化合物は、これらの目的に対する代替的治療薬として企図される。さらに、対象は、出血の高いリスクにある恐れがある。一部の実施形態では、対象は、末期腎疾患を有し得る。他の場合では、対象は、腎臓透析などの透析を必要としない。さらに、心房細動は、血塊などの別の血栓塞栓性障害に関連し得る。
【0199】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、高血圧、例えば、動脈性高血圧の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができる。一部の実施形態では、高血圧、例えば動脈性高血圧は、アテローム性動脈硬化をもたらす恐れがある。一部の実施形態では、高血圧は、肺動脈性高血圧であり得る。
【0200】
さらに、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、ヘパリン誘発性血小板減少症、ヘパリン誘発性血小板減少症血栓症または血栓性微小血管症、例えば、溶血性尿毒症症候群(HUS)または血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)などの障害の処置、予防またはそれらのリスクの低減に使用することができる。
【0201】
一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)は、ヘパリンの様々な形態の投与による、血小板数の低下の発症である。HITは、血小板を活性化する、異常な抗体の形成により引き起こされる。HITは、特定の血液検査により確認することができる。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。例えば、活性凝固時間(ACT)検査は、ヘパリンに対する感受性または耐性を検査するために対象に行うことができる。ACT検査は、フィブリン形成の存在を検出する凝固の内因性経路の尺度である。標準用量のヘパリンに感受性がある、および/または耐性がある対象は、目標抗凝固時間に到達しない。ヘパリン耐性の一般的な相関関係には、以下に限定されないが、過去のヘパリンおよび/またはニトログリセリンの点滴と抗トロンビンIIIレベルの低下が含まれる。一部の実施形態では、対象は、以前に、抗血液凝固剤(例えば、ビバリルジン/Angiomax)を投与されている。
【0202】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、炎症の軽減に使用することができる。一部の実施形態では、炎症は、血管炎症であり得る。一部の実施形態では、血管炎症には、アテローム性動脈硬化を伴い得る。一部の実施形態では、血管炎症には、対象における血栓塞栓性疾患を伴い得る。一部の実施形態では、血管炎症は、アンジオテンシンII誘発性血管炎症であり得る。
【0203】
本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれらの組成物は、対象における、末期腎疾患、高血圧関連性腎機能不全、腎線維症および腎臓損傷を含めた、腎障害または機能不全の処置、予防またはそれらのリスクの低減に使用することができる。
【0204】
本発明の方法はまた、例えば、血栓摘出、経管的冠動脈形成術を受けた患者において、またはバイパス移植術、動脈再建、アテレクトミー、脈管グラフト、ステント開存、ならびに臓器、組織または細胞埋め込み、および移植などの血管手術と連携して、血管開存性を維持するために使用することもできる。本発明の方法は、全血の調製、保管、分画または使用に関連する血液凝固を阻害するために使用することができる。例えば、本発明の方法は、分析試験および生物学的試験のため、例えば、ex vivoでの血小板および他の細胞機能の検討、生物学的分析手順、および血液含有構成成分の定量のため、または腎代替法(例えば、血液透析)もしくは手術(例えば、心臓切開手術、例えば、冠動脈バイパス手術)のような体外血液回路を維持するために必要なものなどの、液相での全血または分画化血液の維持に使用することができる。一部の実施形態では、腎代替法は、急性腎臓損傷を有する患者を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、腎代替法は、持続的腎代替療法とすることができる。
【0205】
さらに、本発明の方法は、がんの血栓形成促進性合併症の処置および予防に有用となり得る。本方法は、血管新生を予防するため、およびがん、より詳細には、肺、前立腺、結腸、乳房、卵巣および骨のがんを処置するための化学療法への補助剤として、腫瘍成長の処置に有用となり得る。
体外式膜型人工肺(ECMO)
【0206】
「体外式膜型人工肺」(または「ECMO」)とは、本明細書で使用する場合、循環補助の実現、または血液酸素化および必要に応じて二酸化炭素除去を補助するよう適合された血流速度の発生を可能にする、血液ポンプ、人工肺および血管アクセスカニューレを備えた体外生命維持装置を指す。静脈静脈ECMOでは、静脈系から抜き取られた血液に体外でのガス交換が行われる。次に、この血液は、静脈系に再注入される。静脈動脈ECMOでは、静脈系から抜き取られた血液にガス交換が行われ、次に、動脈系に直接、注入されて、部分的または完全な循環または心臓補助が実現する。静脈動脈ECMOは、様々な程度の呼吸補助を可能にする。
【0207】
本明細書で使用する場合、「体外式膜型人工肺」または「ECMO」とは、循環補助を実現するか、または血液酸素化を補助するのに適切な血流速度を発生させる、体外生命維持装置を指す。一部の実施形態では、ECMOは、対象の血液からの二酸化炭素の除去を含む。一部の実施形態では、ECMOは、血液ポンプ、人工肺および血管アクセスカニューレからなる群から選択される、体外装置を使用して行われる。
【0208】
本明細書で使用する場合、「静脈静脈ECMO(venovenous ECMO)」とは、血液が対象の静脈系から抜き取られてECMO装置に入れられ、ガス交換が施され(血液の酸素化を含む)、次いで、対象の静脈系に抜き取った血液を再注入する、ECMOのタイプを指す。本明細書で使用する場合、「静脈動脈ECMO(venoarterial ECMO)」とは、血液が対象の静脈系から抜き取られてECMO装置に入れられ、ガス交換が施され(血液の酸素化を含む)、次いで、対象の動脈系に抜き取った血液を直接注入する、ECMOのタイプを指す。一部の実施形態では、静脈動脈ECMOは、それを必要とする対象への部分的循環補助または心臓補助を実現するように行われる。一部の実施形態では、静脈動脈ECMOは、それを必要とする対象への完全な循環補助または心臓補助を実現するように行われる。
【0209】
本発明の化合物は、それを必要とする対象における、血栓塞栓性障害の処置、予防またはそのリスクの低減に使用することができ、対象は、心臓または肺の不全に応えるレスキュー治療として使用され得る、体外式膜型人工肺(ECMO)装置(上記を参照)の人工表面などの人工表面に曝露される。対象に直接接触するECMO装置の表面は、静脈血栓
塞栓症、例えば、深部静脈血栓症または肺塞栓症などの血栓塞栓性障害をもたらして、ECMOを必要とする患者の処置を困難にすることがある、血栓形成促進性表面となり得る。循環中の血塊は、最も一般的な機械的合併症(19%)である。主な血塊は、人工肺の不具合、および肺または全身性塞栓を引き起こす恐れがある。
【0210】
ECMOは、血塊形成に対処する抗血液凝固剤としてヘパリンの連続注入で行われることが多い。しかし、カニューレの留置は、多量の内部出血を引き起こす、内部頸静脈への損傷を引き起こす恐れがある。出血は、ECMOを受けている患者の30~40%に起こり、生命を脅かす恐れがある。この重症な出血は、必要な連続ヘパリン注入および血小板の機能不全の両方によるものである。報告されている死亡の約50%は、重症な出血合併症によるものである。Aubron et al. Critical Care, 2013, 17:R73は、ECMO
による転帰に関連する因子に注目した。
【0211】
したがって、例えば、第XIa因子阻害剤として使用することができる本発明の化合物は、ECMO治療において、ヘパリンの代替置換として企図される。本発明の化合物は、顕著な出血負荷なしに、効果的な抗凝固/抗血栓をもたらす血漿中レベルにおいて、内因性経路を遮断する有効な薬剤として企図される。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。
虚血
【0212】
「虚血」または「虚血事象」は、血管閉塞、または組織への血液供給の制限を一般に含む血管疾患である。虚血は、細胞の代謝に必要な、酸素およびグルコースの欠乏を引き起こす恐れがある。虚血は、組織の損傷または機能不全をもたらす、問題のある血管により一般に引き起こされる。虚血はまた、鬱血(例えば、血管収縮、血栓症または塞栓症)に起因する、身体の所与の部分における血液または酸素の局所喪失を指すことができる。原因は、塞栓症、アテローム性動脈硬化動脈の血栓症、外傷、静脈の問題、動脈瘤、心臓状態(例えば、心筋梗塞、僧帽弁疾患、慢性心房細動、心筋症およびプロテーゼ)、外傷または外傷性損傷(例えば、部分的または全体的な血管閉塞を生じる先端に対するもの)、胸郭出口症候群、アテローム性動脈硬化、低血糖、頻脈、低血圧、血管の外側からの圧迫(例えば、腫瘍による)、鎌状赤血球症、局所的な極度の冷え(例えば、凍傷による)、止血帯の施用、グルタミン酸受容体刺激、動静脈奇形、組織または臓器に供給する大きな血管の破裂、および貧血を含む。
【0213】
一過性虚血事象は、急性梗塞(例えば、組織死亡)のない、血液流の喪失(例えば、病巣脳、脊髄または網膜における)により引き起こされる神経学的機能不全の一過性(例えば、長続きしない)エピソードを一般に指す。一部の実施形態では、一過性虚血事象は、72時間、48時間、24時間、12時間、10時間、8時間、4時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、10分間、5分間、4分間、3分間、2分間または1分間未満の間、続く。
血管浮腫
【0214】
血管浮腫は、真皮、皮下組織、粘膜および粘膜下組織の急速な腫れである。血管浮腫は、遺伝性または後天性のどちらか一方として通常、分類される。
【0215】
「後天性血管浮腫」は、免疫学的、非免疫学的または特発性とすることができ、投薬、例えばACE阻害剤の投薬の副作用として、例えば、アレルギーにより引き起こされる。
【0216】
「遺伝性血管浮腫」または「HAE」は、顔面、四肢、頸、咽喉、咽頭、先端、胃腸管および生殖器を含めた、身体のほぼすべての部分に起こり得る、浮腫(例えば、腫れ)の
急性期間をもたらす遺伝性障害を指す。HAEの発作は、生命を脅かす恐れが多く、重症度は、罹患領域に依存し、例えば、腹部の発作は、腸閉塞をもたらす恐れがある一方、咽頭および気道上部の腫れは、仮死に至る恐れがある。遺伝性血管浮腫の病因は、カリクレインまたは凝固因子(例えば、第XII因子)の最初の生成による、接触経路の妨害のない活性化に関連し得る。
【0217】
徴候および症状は、例えば、顔面、口腔または咽喉の粘膜、および舌の技量(skill)
の腫れを含む。罹患領域における、かゆみ、疼痛、感覚の低下、皮膚掻痒(すなわち、じんましん)、または気道の喘鳴もまた、血管浮腫の徴候となり得る。しかし、例えば、遺伝性血管浮腫では、関連する皮癬も皮膚掻痒もないことがある。HAE対象は、腹痛(例えば、1~5日間続く腹痛、対象の白血球数を増加させる腹部の発作)、嘔吐、虚弱、水様下痢または発疹を経験し得る。
【0218】
ブラジキニンは、血管浮腫、特に遺伝性血管浮腫において重要な役割を果たす。ブラジキニンは、多数の異なる刺激に応答する様々な細胞タイプにより放出され、疼痛メディエーターである。ブラジキニン生成または分解を妨害すると、血管浮腫に至り得る。遺伝性血管浮腫では、酵素カリクレインの連続的な産生は、ブラジキニン形成を促進することができる。カリクレインの阻害は、ブラジキニン産生を妨害することができ、血管浮腫を処置または予防することができる。
【0219】
本明細書に記載されている方法は、対象の血液が、人工表面に接触するものを含むことができる。例えば、態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を処置する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化27】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0220】
態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害のリスクを低減する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化28】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0221】
態様では、それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を予防する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化29】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、対象の血液が人工表面に接触される、方法が本明細書において提供される。
【0222】
本明細書において提供される方法の一部の実施形態では、人工表面は、対象の循環系における血液に接触している。一部の実施形態では、人工表面は、埋込式装具、透析カテーテル、心肺バイパス回路、人工心臓弁、補助人工心臓、小口径グラフト、中心静脈カテーテルまたは体外式膜型人工肺(ECMO)装置である。一部の実施形態では、人工表面は、血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症または肺塞栓症である。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、血塊である。
【0223】
一部の実施形態では、本方法は、人工表面に対象の循環系における血液を接触させる前に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象への本化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前またはその間に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象への本化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前およびその間に、個別の用量の本化合物または薬学的に許容されるその塩により人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む。
【0224】
態様では、それを必要とする対象の血液を処置する方法であって、対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化30】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法が本明細書において提供される。
【0225】
態様では、人工表面に接触している対象の血液において、以下によって表される化合物
【化31】
または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持する方法であって、
(i)人工表面に対象の血液を接触させる前またはその間に、対象に本化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)人工表面に対象の血液を接触させる前またはその間に、人工表面を本化合物または薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングするステップ
を含み、
これにより、対象の血液において、本化合物または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持するステップ
を含む方法が本明細書において提供される。
【0226】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容されるその塩は、人工表面に接触する前および後に、対象の血液における一定活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を維持する。一部の実施形態では、本化合物または薬学的に許容されるその塩は、人工表面に対象の血液を接触させる前およびその間に、対象に投与される。
【0227】
一部の実施形態では、人工表面は、人工表面に対象の血液を接触させる前およびその間に、本化合物または薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングされる。一部の実施形態では、本方法は、人工表面に接触している対象の血液において、血塊形成をさらに予防する、またはそのリスクを低減する。
【0228】
一部の実施形態では、人工表面は、心肺バイパス回路である。一部の実施形態では、人工表面は、体外式膜型人工肺(ECMO)装置である。一部の実施形態では、ECMO装置は、静脈静脈ECMO装置または静脈動脈ECMO装置である。
【0229】
態様では、医療手順の間またはその後に、対象における血栓塞栓性障害を予防する、またはそのリスクを低減する方法であって、
(i)医療手順の前、その間またはその後に、対象に、有効量の以下によって表される化合物:
【化32】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)対象の血液に人工表面を接触させるステップ
を含み、これにより、医療手順の間またはその後の血栓塞栓性障害を予防する、またはそのリスクを低減する、方法が本明細書において提供される。
【0230】
一部の実施形態では、人工表面は、医療手順の前、その間またはその後に対象に本化合物を投与する前に、本化合物または薬学的に許容されるその塩でコンディショニングされる。
【0231】
一部の実施形態では、人工表面は、医療手順の前、その間またはその後に対象に本化合物または薬学的に許容されるその塩を投与する前に、本化合物または薬学的に許容されるその塩を含む溶液でコンディショニングされる。一部の実施形態では、溶液は、生理食塩水溶液、リンゲル液または血液である。一部の実施形態では、溶液は、血液をさらに含む。一部の実施形態では、血液は、対象またはドナーから取得される。
【0232】
一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、血塊である。
【0233】
一部の実施形態では、医療手順は、i)心肺バイパス、ii)体外式膜型人工肺による血液の酸素化およびポンプ注入、iii)血液の補助ポンプ注入(体内または体外)、iv)血液の透析、v)血液の体外ろ過、vi)動物またはヒト対象における後で使用するための保存容器への対象からの血液の採取、vii)静脈または動脈管腔内カテーテルの使用、viii)診断用またはインターベンション用心臓カテーテル法のためのデバイスの使用、ix)血管内デバイスの使用、x)人工心臓弁の使用、およびxi)人工グラフトの使用のうちの1つまたは複数を含む。
【0234】
一部の実施形態では、医療手順は、心肺バイパスを含む。一部の実施形態では、医療手順は、体外式膜型人工肺(ECMO)による、血液の酸素化およびポンプ注入を含む。一部の実施形態では、ECMOは、静脈静脈ECMOまたは静脈動脈ECMOである。
【0235】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、血栓塞栓性障害の高いリスクを有する。一部の実施形態では、血栓塞栓性障害は、手術における合併症の結果である。
【0236】
一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している。一部の実施形態では、対象は、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している。
【0237】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも1日間(例えば、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約10日間、約2週間、約3週間、約4週間、約2か月間、約3か月間、約6か月間、約9か月間、約1年間)、人工表面に接触している。
医薬組成物
【0238】
本明細書に記載されている組成物は、本明細書に記載されている化合物(例えば、化合物1)および存在する場合、追加的な治療剤を、疾患または疾患症状(例えば、第XIa因子またはカリクレインに関連する疾患など)の処置を達成するために有効な量で含む。
【0239】
本明細書により提供される医薬組成物に使用することができる、薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、以下に限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)(Tweensまたは他の類似したポリマー送達マトリックスなどの、医薬剤形に使用される、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、界面活性剤など)、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。α-、β-およびγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または2-および3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンもしくは他の可溶化誘導体を含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾されている誘導体も、本明細書に記載されている式の化合物の送達を増強するために有利なことに使用されてもよい。
【0240】
本医薬組成物は、非経口投与前に、適合性の再構成用希釈剤を添加することにより再構
成され得る、固体の凍結乾燥組成物の形態で、または解凍されるように適合されており、所望の場合、非経口投与前に適合性の希釈剤により希釈される凍結組成物の形態であってもよい。一部の実施形態では、本医薬組成物は、対象への静脈内投与に好適な濃度で、単位投与量IVバッグまたはボトルで、水性媒体、例えば生理食塩水溶液に溶解した散剤(例えば、凍結乾燥組成物)を含む。一部の実施形態では、静脈内投与に好適な医薬組成物の成分は、単一容器中で互いに分けられており、例えば、本明細書に記載されている化合物または薬学的に許容されるその塩を含む散剤は、生理食塩水溶液などの水性媒体から分離される。この後の実施例において、様々な構成成分が、成分が互いに接触するよう砕かれて、静脈投与に好適な医薬組成物を形成することができるシールにより分離されている。
投与経路
【0241】
本明細書により提供される医薬組成物は、経口的に、直腸内、または非経口的(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射、吸入、埋め込み)に投与されてもよい。非経口という用語は、本明細書で使用する場合、皮下、皮内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、鼻内、吸入、肺、経皮、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射、または他の注入技法を含む。本明細書により提供される医薬組成物は、任意の慣用的な非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含むことができる。一部の場合、製剤のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液を用いて調整されて、製剤化された化合物またはその送達形態の安定性を強化することができる。
【0242】
本医薬組成物は、例えば、滅菌の注射可能な水溶液剤または油性溶液剤または懸濁液剤として、滅菌注射用調製物の形態にあることができる。この懸濁液剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)、および懸濁化剤を使用して、当分野で公知の技法に準拠して製剤化することができる。滅菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液剤として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液剤または懸濁液剤とすることもできる。使用することができる、許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、とりわけそのポリオキシエチレン化型のオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液剤または懸濁液剤はまた、エマルション剤および/または懸濁液剤などの薬学的に許容される剤形の製剤に一般に使用される、長鎖アルコール希釈剤、または分散剤、またはカルボキシメチルセルロース、または類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造において一般に使用される、Tween、またはSpanまたは他の類似の乳化剤、または生体利用率向上剤などの、他の一般に使用される界面活性剤もまた、製剤化の目的に使用されてもよい。一部の実施形態では、静脈内医薬組成物は、5%w/wデキストロース水(「5DW」)および生理食塩水からなる群から選択される担体を含む。
【0243】
本明細書により提供される医薬組成物は、以下に限定されないが、カプセル剤、錠剤、エマルション剤および水性懸濁液剤、分散液剤および溶液剤を含めた、任意の経口により許容される剤形で経口投与され得る。経口使用向けの錠剤の場合、一般に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、通常、添加される。カプセル剤形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁液剤またはエマルション剤が経口投与される場合、活性成分は、懸濁されてもよく、または乳化剤もし
くは懸濁化剤と一緒にした油相に溶解されてもよい。所望の場合、ある種の甘味剤、または着香剤、または着色剤、または味感マスキング剤が添加されてもよい。
【0244】
本明細書に記載されている化合物は、体重あたり約0.5~約100mg/kgの範囲の投与量で、代替として、1mg~1000mg/用量の投与量で、4~120時間毎に、または具体的な薬物の要件に準拠して、例えば、注射により、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、動脈内、真皮下、腹腔内、経筋肉もしくは皮下;または経口的、口内、鼻腔、経粘膜、局所的に投与され得る。本明細書における方法は、所望のまたは明記した効果を実現するために、有効量の化合物または化合物組成物の投与を企図する。通常、本明細書により提供される医薬組成物は、1日あたり約1~約6回(例えば、静脈内ボーラス注射による)、または代替として、連続注入として投与される。このような投与は、長期間または短期間治療として使用され得る。担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、処置される宿主および具体的な投与様式に応じて様々となる。典型的な調製物は、約5%~約95%の活性化合物(w/w)を含む。代替的に、このような調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含む。
【0245】
一部の実施形態では、経口投与、皮下投与または静脈内投与向けに製剤化される医薬組成物は、対象に1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回、または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化された医薬組成物は、対象に約3~9か月間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回、または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化された医薬組成物は、対象に約1年間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回、または1日あたり4回)、投与される。一部の実施形態では、経口投与向けに製剤化された医薬組成物は、対象に、対象の生涯の残りの間、1日あたり1回~1日あたり6回(例えば、1日あたり2回、または1日あたり4回)、投与される。
【0246】
一部の実施形態では、本化合物または医薬組成物は、対象に静脈内投与される。一部の実施形態では、本化合物または医薬組成物は、対象に皮下投与される。一部の実施形態では、本化合物または医薬組成物は、対象に連続静脈内注入として投与される。一部の実施形態では、本化合物または医薬組成物は、対象にボーラスとして投与される。一部の実施形態では、本化合物または医薬組成物は、対象にボーラスとして、次いで連続静脈内注入として投与される。
組合せ物
【0247】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)を互いに組み合わせて、および抗血栓剤または抗血液凝固剤、血圧降下剤、抗虚血剤、抗不整脈剤、血小板機能阻害剤などの、治療的利益を実現するための1種または複数の他の薬剤と組み合わせて投与することが望ましいことがある。例えば、本発明の方法は、低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤を、低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。より詳細には、本発明の方法は、低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤を、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはCS-747、ワルファリン、低分子量ヘパリン(LOVENOXなど)、GPIIb/GPIIIa遮断剤、PAI-1阻害剤(XR-330およびT-686、P2Y1およびP2Y12受容体アンタゴニストなど);トロンボキサン受容体アンタゴニスト(イフェトロバンなど)、プロスタサイクリン模倣薬、トロンボキサンAシンテターゼ阻害剤(ピコタミドなど)、セロトニン-2-受容体アンタゴニスト(ケタンセリンなど);FVII、FVIII、FIX、FX、プロトロンビン、TAFIおよびフィブリノゲン、またはFXIもしくはカリクレインを阻害する他の化合物などの他の凝固因子を阻害する化合物;線維素溶解薬(TPA、ストレプトキナーゼなど)、PAI-1阻害剤、およびα-2-抗プラスミンの阻害剤(抗α-2-抗プラスミン抗体フ
ィブリノゲン受容体アンタゴニストなど)、α-1-抗トリプシンの阻害剤、脂質低下剤(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、AZ4522およびイタバスタチン)など)およびミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害剤(米国特許第5,739,135号、同第5,712,279号および同第5,760,246号に開示されているものなど);血圧降下剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、リシノプリルまたはホシノプリル)など);アンジオテンシン-II受容体アンタゴニスト(例えば、イルベサルタン、ロサルタンまたはバルサルタン);ACE/NEP阻害剤(例えば、オマパトリラトおよびゲモパトリラト);またはβ-遮断薬(プロプラノロール、ナドロールおよびカルベジロールなど)と組み合わせて投与することによって行われ得る。本発明の方法は、低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤を、心房細動の場合、例えば、アミオダロンまたはドフェチリドなどの抗不整脈剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。本発明の方法はまた、例えば、急性腎臓損傷を処置するための持続的腎代替療法と組み合わせて行われ得る。
【0248】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物(第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)を、治療的利益のために、細胞におけるcAMPまたはcGMPのレベルを増大させる薬剤と組み合わせて投与することが望ましいことがある。例えば、本発明の化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害剤(PDE1阻害剤(Journal of Medicinal Chemistry, Vol. 40, pp. 2196-2210 [1997]に記載されているものなど)、PDE2阻害剤、P
DE3阻害剤(レビジノン、ピモベンダンまたはオルプリノンなど)、PDE4阻害剤(ロリプラム、シロミラストまたはピクラミラストなど)、PDE7阻害剤または他のPDE阻害剤(ジピリダモール、シロスタゾール、シルデナフィル、デンブチリン、テオフィリン(1,2-ジメチルキサンチン)、ARIFLOT(商標)(すなわち、cis-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸)、アロフィリン(arofyline)、ロフルミラスト、C-11294
A、CDC-801、BAY-19-8004、シパムフィリン、SCH351591、YM-976、PD-189659、メシオプラム(mesiopram)、プマフェントリン(pumafentrine)、CDC-998、IC-485およびKW-4490を含む)と組み合
わせて使用すると、有利な効果を有することができる。
【0249】
本発明の方法は、本発明の化合物を、組織プラスミノーゲン活性化因子(天然または組換え)、ストレプトキナーゼ、レテプラーゼ、アクチベース、ラノテプラーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アニソール化ストレプトキナーゼプラスミノーゲン活性化因子複合体(ASPAC)、動物の唾液腺プラスミノーゲン活性化因子などの血栓溶解促進剤と組み合わせて投与することによって行われ得る。
【0250】
本発明の方法は、本発明の化合物を、β-アドレナリン作動薬(アルブテロール、テルブタリン、ホルモテロール、サルメテロール、ビトルテロール、ピルブテロールまたはフェノテロールなど);抗コリン作用薬(臭化イプラトロピウムなど);抗炎症コルチコステロイド(cortiocosteroid)(ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フル
チカゾン、フルニゾリドまたはデキサメタゾンなど);および抗炎症剤(クロモリン、ネドクロミル、テオフィリン、ジレウトン、ザフィルルカスト、モンテルカスト(monteleukast)およびプランルカスト(pranleukast)など)と組み合わせて投与することによっ
て行われ得る。
【0251】
低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤は、上記の薬剤の1つまたは複数と相乗的に作用することができる。したがって、用量の少ない血栓溶解剤を使用することができ、したがって、潜在的な出血性副作用および他の副作用を最小化すると同時に、これらの化合物を投与することの利益が得られる。
処置の経過
【0252】
本明細書に記載されている組成物は、組み合わせた有効量の本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)、および治療的利益を達成するための抗血栓剤または抗血液凝固剤、血圧降下剤、抗虚血剤、抗不整脈剤、血小板機能阻害剤などの1種または複数の他の薬剤(例えば、追加的な治療剤)を含む。
【0253】
一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)の投与後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)を投与して、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、18時間、24時間、48時間、72時間後に、またはそれより後に投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、医療施設(例えば、病院)からの退院後に投与(例えば、経口による)される。
【0254】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)、および追加的な治療剤が、単一組成物または投与量に共製剤化される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)、および追加的な治療剤が、個別に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)、および追加的な治療剤が、逐次に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)、および追加的な治療剤が、個別におよび逐次に投与される。一般に、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)の少なくとも1つ、および追加的な治療剤は、非経口(例えば、経鼻、経筋肉、口内、吸入、埋め込み、経皮、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、皮下、皮内、鼻内、肺内、経皮、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射または他の注入技法);経口的に;または直腸内、例えば、筋肉内注射または静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射))に投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物は、非経口(例えば、経鼻、口内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)または経筋肉)投与される。一部の実施形態では、追加的な治療剤は、経口投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、非経口(例えば、経鼻、口内、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)または経筋肉)投与され、追加的な治療剤は経口投与される。
【0255】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、1日あたり1回または複数回、投与されてもよい。処置期間は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7日間またはそれより長い期間、1日1回、続いてもよい。一部の実施形態では、処置は、長期間(例えば、終身)である。一部の実施形態では、個々の投与量単位の形態の単回用量、またはいくつかのより少ない投与量単位、またはある間隔での分割投与量の多回投与によるもののいずれか一方が投与される。例えば、投与量単位は、損傷後、約0時間~約1時間、約1時間~約24時間、約1~約72時間、約1~約120時間または約24時間~少なくとも約120時間、投与され得る。代替的に、投与量単位は、損傷後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、40、48、72、96、120時間またはそれより長い間、投与され得る。後の投与量単位は、治療効果が実現されるよう、初回投与後、任意の時間に投与され得る。一部の実施形態では、最初の用量は経口投与される。一部の実施形態では、最初の用量に続く用量は、非経口(例えば、経鼻、経筋肉、口内、吸入、埋め込み、経皮、静脈内(例えば、静脈内注入、静脈内ボーラス注射)、皮下、皮内、鼻内、肺内、経皮、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内および頭蓋内注射または他の注入技法);経口的;
または直腸内に投与される。
【0256】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、例えば、約5分間~約1週間;約30分間~約24時間、約1時間~約12時間、約2時間~約12時間、約4時間~約12時間、約6時間~約12時間、約6時間~約10時間;約5分間~約1時間、約5分間~約30分間;約12時間~約1週間、約24時間~約1週間、約2日間~約5日間、または約3日間~約5日間、服用のための液体または固形剤形として経口投与される。一実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、液状剤形として経口投与される。別の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、固形剤形として経口投与される。
【0257】
治療を受けている対象が、部分奏功、または治療の最初のサイクルの完了後の再発を示す場合、治療のその後の経過は、部分的または完全な治療的応答(例えば、長期間処置、例えば、終身)を実現するために必要とされ得る。
【0258】
一部の実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、例えば、静脈内注入または静脈内ボーラス注射として、約5分間~約1週間;約30分間~約24時間、約1時間~約12時間、約2時間~約12時間、約4時間~約12時間、約6時間~約12時間、約6時間~約10時間;約5分間~約1時間、約5分間~約30分間;約12時間~約1週間、約24時間~約1週間、約2日間~約5日間または約3日間~約5日間、静脈内投与される。一実施形態では、本発明の化合物(例えば、第XIa因子またはカリクレイン阻害剤)は、静脈内注入として、約5、10、15、30、45もしくは60分間またはそれより長い間;約1、2、4、6、8、10、12、16もしくは24時間またはそれより長い間;約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日間またはそれより長い間、投与される。
投与量および投与レジメン
【0259】
本発明により投与される、有効量の低分子第XIa因子またはカリクレイン阻害剤は、当業者によって決定されてもよい。任意の特定の対象に対して、投与量の指定用量レベルおよび頻度は様々となり得、使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、対象の人種、年齢、体重、一般的な健康、性別および食事、投与様式および時機、排出速度、薬物組合せ物、および具体的な状態の重症度を含めた様々な因子に依存する。
【0260】
患者の状態の改善時に、維持用量の本明細書により提供される化合物、組成物または組合せ物が、必要に応じて投与されてもよい。続いて、症状が所望のレベルまで軽減されると、投与量もしくは投与頻度、またはそれらの両方が、症状に応じて、状態の改善が保持されるレベルまで低減されてもよい。
【0261】
しかし、患者は、疾患症状のなんらかの再発時に、長期的な断続処置を必要とすることがある。
【実施例0262】
以下の実施例に記載されている出発原料および様々な中間体は、市販源から得ることができる、市販の有機化合物から調製することができる、または公知の合成法を使用して調製することができる。以下の説明されている実施例の範囲は非限定的であり、その個々の精製方法を含め、中間体および最終生成物を調製するある種の方法を含む。
一般手順
【0263】
すべての無水反応は、窒素の雰囲気下で行って無水雰囲気を維持し、収率を最大にした。反応はすべて、Teflonコーティングした撹拌子を用いて、オーバーヘッド式撹拌アセンブリを使用して、または磁気的に撹拌した。「脱水する」という記載は、指定した乾燥剤で反応生成物の溶液を乾燥し、次に、好適なろ紙により、または焼成ガラス製漏斗により、この溶液をろ過することを指す。「濃縮した」、「減圧で濃縮した」または「蒸発させた」という記載は、回転式蒸発器を使用して、減圧下で溶媒を除去することを指す。クロマトグラフィーまたはクロマトグラフィーにかけるとは、別段の指定がない限り、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーの使用を指す。フラッシュクロマトグラフィーとは、Biotageまたは他の供給業者により供給される市販のシステムを用いるなどして、ガス圧力(例えば、窒素)または溶媒加圧用機械式ポンプ下でのカラムクロマトグラフィーを指す。別段の指定がない限り、プロトンNMRスペクトル(1H)は、指定した溶媒中、400MHzで測定し、炭素NMRスペクトル(13C)は、100MHzで測定した。
【0264】
実験例に使用した略称は、以下の略称の表に一覧表示されている。
略称の表
【表1A】
【化33】
スキーム1は、化合物1・HClの調製に関する一般的方法を例示する。
(実施例1)
中間体(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサンの調製
【化34】
【0265】
(R)-1-シクロヘキシルエタンアミンをDCMに溶解し、NaHCO3水溶液を加えた。不均質混合物を-2℃に冷却し、反応温度を5℃未満に維持しながら、約6時間かけて、トリホスゲンにより処理した。この混合物に水を加え、これらの相を分離した。水相をDCMにより2回、逆抽出した。一緒にしたDCMの相を濃縮し、残留物を得た。この残留物をヘプタンにより処理し、5~10℃に冷却して、沈殿物を得た。沈殿物を採集して乾燥すると、表題化合物が74%収率で得られた。
【0266】
以下は、実施例1の例示的な手順である。
【0267】
(R)-1-シクロヘキシルエタンアミン(0.50kg、3.93mol)のDCM(10.0L)溶液に、9%NaHCO3水溶液(10.0L)を加え、この混合物を0℃に冷却した。反応温度を維持しながらこの混合物にトリホスゲン(0.38kg、1.30mol)を加え、0℃で1時間、かき混ぜた。この反応をTLC(100%EA溶離液)によりモニタリングした。この混合物に水(10L)を加え、これらの相を分離した。この水層をDCM(2×5.0L)により抽出した。45℃を超えないようにして、有機相を濃縮乾固した。ヘプタン(2×1L)を残留物に加え、この混合物を濃縮して、固体を得た。この固体をヘプタン(6.0L)に溶解し、MgSO4で脱水してヘプタン(0.5L)でリンスし、濃縮すると、(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサンが得られた。例示的な収率が、表1に示されている。CDClに溶解した試料番号4のNMRスペクトルを図1に図示する。
【表1B】
(実施例2)
4-(ブロモメチル)-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミンの調製
【化35】
ステップ1:2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-イソニコチン酸メチルエステルの調製
【化36】
【0268】
33Lのアセトニトリル中の2-アミノピリジン-4-カルボン酸メチルエステル(5.5kg)および塩化4-メトキシベンジル(14.64kg)の混合物を3時間、加熱して還流し、次に、7.3kgのEt3Nをゆっくりと還流混合物に加えた。次に、この反応物を室温まで冷却し、一晩、撹拌を継続した。アセトニトリルおよびEt3Nを除去
した後、大量の水をこの混合物に加え、こうして固体を沈殿させた。この反応により、遠心分離操作および5~10Lのイソプロパノール中の固体の再結晶後、2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-イソニコチン酸メチルエステル(3kg、21%)が白色固体として得られた。
ステップ2:{2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-ピリジン-4-イル}-メタノールの調製
【化37】
【0269】
50Lの反応用ケトル中、16Lの乾燥THF(0℃)に、数回に分けてLiAlH4(388g)を加えた。次に、反応温度を-5℃に維持しながら、この混合物にTHF(16L)中の4kgの2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-イソニコチン酸メチルエステルを滴下して加えた。この反応混合物に、酢酸エチル(900g)、水(388g)および15%NaOH水溶液(388g)を順次ゆっくりと加えた。10分間、撹拌した後、この混合物に無水Na2SO4(1.3kg)を加え、対応する混合物を30分間、撹拌した。この混合物を真空でろ過して、ろ過ケーキをTHF(12L)により洗浄し、次にろ過した。合わせたろ液を濃縮した。{2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-ピリジン-4-イル}-メタノールを含有する得られた溶液を精製することなく、次のステップに直接、使用した。
ステップ3:4-(ブロモメチル)-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミンの調製
【化38】
【0270】
{2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-ピリジン-4-イル}-メタノール(5kg)およびCBr(5kg)を25LのDCMに加え、この反応溶液を0~10℃に維持した。次に、この反応溶液に、10LのDCM中のPPh(4.32kg)の溶液を滴下して加えた。反応をTLCにより追跡し、{2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-ピリジン-4-イル}-メタノールが完全に消費されていない場合、{2-[ビス-(4-メトキシ-ベンジル)-アミノ]-ピリジン-4-イル}-メタノールが完全に消費されるまで、反応混合物にPPhを加えた。DCMの除去後、この反応により、油様生成物が得られた。この油状物を50%EtOH水溶液(16L)中、室温で1時間、撹拌した。次に、この混合物をろ過して、ろ過ケーキを少量の50%EtOH水容液により洗浄した。次に、残留ろ過ケーキを50%EtOH水溶液(8L
)中、室温でさらに1時間、撹拌し、ろ過して乾燥すると、結晶性固体生成物(5.2kg)が得られた。1H NMR (CDCl3) δ 3.78 (s, 6H), 4.22 (s, 2H), 4.69
(s, 4H), 6.45 (s, 1H), 5.58 (s, 1H), 6.82 (d, 4H), 7.13 (d, 4H),
8.15 (d. 1H).
(実施例3)
(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩(化合物1・HCl)の調製
【化39】
ステップ1:(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸の調製
【化40】
【0271】
(S)-1-(tert-ブチルジメチルシリル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸をTHFに溶解し、-20℃に冷却した。ラクタムを約-10~-20℃において、THF中のLDAにより脱プロトン化し、反応温度を-10℃未満に維持しながら、4-(ブロモメチル)-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミンにより処理した。この反応物を-15℃で数時間、撹拌し、次に、室温まで温めて、数時間長く撹拌した。この混合物を水でクエンチし、次に、3時間、還流した。この反応物を室温まで冷却し、5%リン酸三カリウム水溶液で処理した。相を分離して、水層をEAにより抽出して、不純物を除去した。水相を6N HClによりpH3.1へと酸性にし、EAで抽出した。この有機相を乾燥して濃縮した。残留EAをヘプタンで追い出し、スラリーを生成し、このスラリーを冷却してろ過した。ろ過ケーキを40体積分のIPAに溶解し、約1時間、還流した。この混合物を室温まで冷却し、未溶解固体不純物をろ過により除去した。IPAのろ液をヘプタンと溶媒交換し、生成物を沈殿させた。スラリーを5~10℃に冷却してろ過した。このろ過ケーキを乾燥すると表題化合物が59%収率で得られた。
【0272】
以下は、実施例3、ステップ1の例示的な手順である。
【0273】
(4S)-N-(tert-ブチルジメチルシリル))-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(1.30kg、5.67mol)の無水THF(20.8L)溶液に、-20℃でLDA(THF中の2M、6.06L、12.13mol)、次いで4-(ブロモメチル)-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン(2765.9g、6.47mol)のTHF(10.4L)溶液を加えた。得られた混合物を-20℃で5時間、かき混ぜ、次に、16時間かけて、室温までゆっくりと温めた。この反応をHPLCによってモニタリングした。水(2.6L)を加え、この混合物を60℃まで加熱して、3時間、かき混ぜた。HPLC分析により、出発原料が消費されたことが示された
。この混合物を室温まで冷却し、5%リン酸三カリウム水溶液(38.0L)で処理した。これらの相を分離して、水層をEA(3×19.5L)により抽出した。水層を6N HCl(50mL)によりpH3.1へと酸性にし、EA(2×39.0L)で抽出した。有機相をMgSO4で脱水して濃縮した。残留EAをヘプタン(2×2.6L)で追い出してスラリーを生成し、このスラリーをろ過して、ヘプタン(2.6L)でリンスして濃縮した。この固体にIPA(39.0L)を加え、この混合物を1時間、還流した。この混合物を室温まで冷却してろ過し、IPA(2.6L)でリンスし、ろ液を濃縮した。この濃縮溶液にヘプタン(18.2L)を加え、これにより、生成物が溶液から沈殿した。この固体沈殿物をろ過して、ヘプタン(3.9L)でリンスして乾燥すると、(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸が得られた。例示的な収率および純度が、表2に示されている。CDCl3に溶解した試料番号8のNMRスペクトルを図2に示す。
【表2】
ステップ2:(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸の調製
【化41】
【0274】
(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸をDCMに溶解し、周囲温度で、DBU、次いで(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサン(実施例1で調製)で処理した。数時間、この反応混合物を撹拌した後、さらなる(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサンを加え、数時間長く撹拌した。形成した沈殿物をろ過した。DBUがHPLCによって判定すると、DCM相に検出されなくなるまで、ろ過ケーキをいくつかの分量の10%水性クエン酸でリンスした。DCM相を乾燥して濃縮すると、表題化合物が100%収率で得られた。
【0275】
以下は、実施例3、ステップ2の例示的な手順である。
【0276】
(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(1868.0g、4.55mol)のDCM(9.34L)溶液を10℃に冷却し、反応温度を維持しながら、DBU(2156.7g、15.93mol)、次いで(R)-(1-イソシアナトエチル)
シクロヘキサン(1240.3g、8.09mol)で処理した。この反応混合物を室温まで温めて、22時間、かき混ぜた。この反応をHPLCによってモニタリングした。さらなる(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサン(620.2g、4.04g)を加え、この混合物を室温でかき混ぜた。4時間後、HPLC分析により、出発原料が消費されたことが示された。形成した沈殿物をろ過して、DCM(1.9L)により洗浄した。このろ液を10%水性クエン酸(3×9.34L)により抽出した。有機層をNaSOで脱水し、DCM(0.5L)でリンスして濃縮すると、粗生成物が得られた。粗生成物をクロマトグラフィーにかけると、(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸が得られた。例示的な収率および純度が、表3に示されている。CDClに溶解した粗生成物および精製後の生成物のNMRスペクトルをそれぞれ、図3および図4に示す。
【表3】
ステップ3:(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸トリフルオロ酢酸塩の調製
【化42】
【0277】
(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸をTFAに溶解し、室温でトリエチルシランにより処理した。数時間、撹拌した後、この反応物を濃縮すると、残留物が得られた。この残留物をACNに溶解し、ヘキサンで抽出した。この混合物を再度、濃縮すると、残留物が得られた。この残留物をDCMに溶解し、ブラインで2回、抽出した。有機相を濃縮すると、表題化合物が100%収率で得られた。
【0278】
以下は、実施例3、ステップ3の例示的な手順である。
【0279】
TFA(13.0L)に(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(1.3kg、4.55mol)を0℃で加えた。反応温度を維持しながら、この溶液にトリエチルシラン(0.74kg、6.36mol)を加えた。反応混合物を室温まで温めて、24時間、かき混ぜた。この反応をHPLCによってモニタリングした。追加のトリエチルシラン(0.25kg、2.15mol)を加え、この反応混合物をかき混ぜた。4時間後、HPLC分析に
より、出発原料が消費されたことが示された。この混合物を濃縮すると、残留物が得られた。この残留物をACN(13.0L)に溶解し、ヘキサン(4×13.0L)で抽出した。このACN層を濃縮すると、残留物が得られた。この残留物をDCM(13.0L)に溶解し、13% NaCl溶液(2×13.0L)で抽出した。有機層をNa2SO4で脱水して濃縮すると、(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸トリフルオロ酢酸塩が得られた。例示的な収率および純度が、表4に示されている。CDCl3に溶解した生成物のNMRスペクトルを図5に示す。
【表4】
ステップ4:(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩(化合物1・HCl)の調製
【化43】
【0280】
以下は、実施例3、ステップ4の例示的な手順である。
【0281】
(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸トリフルオロ酢酸塩を室温でACNに溶解し、1Mエーテル性HClで処理した。数時間の撹拌後、生成物の種結晶を加え、この混合物を0℃に冷却した。結晶性生成物をろ過により採集して乾燥すると、表題化合物が白色固体として55%収率で得られた。
【0282】
以下は、実施例3、ステップ4の例示的な手順である。
【0283】
ACN(4.84L)に溶解した(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸トリフルオロ酢酸塩(1.03kg、3.28mol)をCelite(登録商標)パッドに通してろ過し、HCl溶液(ジエチルエーテル中、1M、8.43L、13.10mol)で処理し、室温で42時間、かき混ぜた。形成した沈殿物をろ過して、ジエチルエーテル(3×0.26L)により洗浄した。この固体を採集してオーブン中で乾燥した。例示的な収率および純度が、表5に示されている。
【表5】
ステップ5:(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩(化合物1・HCl)の精製
【0284】
以下は、実施例3、ステップ5の例示的な手順である。
【0285】
IPA(6.3L)中、溶解するまで、室温で粗製化合物1・HClをかき混ぜた。MTBE(6.3L)をこの溶液に加え、この混合物を10時間、かき混ぜた。形成した沈殿物をろ過して、MTBE(2.89L、2×1.26L)によりリンスした。固体をIPA(4.8L)に再溶解し、この溶液にMTBE(2.4L)を滴下して加え、131時間、かき混ぜた。形成した沈殿物をろ過して、MTBE(0.96L、2×0.64L)によりリンスし、重量が一定になるまで乾燥した。例示的な収率および純度が、表6に示されている。この固体をMTBE(1.47L)でさらに粉末にしてろ過し、MTBE(3×0.74Lによりリンスして、オーブン中で一定重量になるまで乾燥すると、化合物1・HClが得られた。例示的な収率および純度が、表7に示されている。CD3ODに溶解した表題化合物の1H NMRスペクトルが、図6に図示されており、CD3ODに溶解した表題化合物の13C NMRスペクトルが、図7(105~180ppmの領域における13C NMRスペクトルの拡大図が、図8に図示されている)に図示されている。
【表6】
【表7A】
【0286】
精製した試料をX線粉末回折(XRPD)によりさらに分析し、そのディフラクトグラムが図9に示されている。XRPDパターンは、Optix long高精度焦点源を使用して発生させたCu照射の入射ビームを使用する、PANalytical X‘Pe
rt PRO MPD回折計を用いて収集した。楕円形の段階的多層ミラーを使用して、試験体に通過させて、検出器上にCu Kα X線を焦点化した。分析前に、ケイ素試験体(NIST SRM 640e)を分析し、Si 111ピークの観察位置が、NISTによる認証位置と一致していることを確認した。試料の試験体を3ランシック(run-thick)フィルムの間に挟んで、透過幾何学で分析した。ビームストップ、短い散乱防止エ
クステンション(antiscatter extension)および散乱防止ナイフエッジを使用して、空気により発生するバックグラウンドを最小限にした。入射ビームおよび回折したビームに対するソラースリットを使用して、軸発散に起因する広がりを最小限にした。回折パターンは、試験体から240mmに位置する走査型位置高感度検出器(X‘Celerator)およびデータ収集ソフトウェアv.2.2bを使用して収集した。パターンのデータアクイジションパラメーターは、鏡の前の発散スリット(DS)を含めた、この報告書のデータ項目における画像の上に表示する。
【化44】
スキーム2は、化合物1・HClの調製に関する代替方法を例示する。
(実施例4)
(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩の合成
【0287】
この実施例は、上記の実施例に加えて、(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩の合成を記載している。
ステップ1 (2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸
【化45】
【0288】
市販の(S)-1-(tert-ブチルジメチルシリル)-4-オキソアゼチジン-2
-カルボン酸(56.5g、0.246mol)をTHF(850mL)に溶解し、-40℃に冷却した。約-40~-20℃で、ラクタムをリチウムジイソプロピルアミド(252.5mL、0.505mol、THF中、2M)により脱プロトン化した。得られた混合物を-40±5℃で1時間、撹拌し、-60±5℃に冷却し、次に、温度を-40℃未満に維持しながら、予め冷却した4-(ブロモメチル)-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン(100g、0.234mol)のTHF(450mL)溶液で処理した。この反応物を数時間、-40±5℃で撹拌し、室温まで温めて、一晩、撹拌した。次に、この混合物を水(565mL)でクエンチし、60±5℃まで1時間、加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、THFを減圧で除去した。水相をEA(565mL×3)により抽出し、不純物を除去した。水相を6N HCl水溶液によりpH3.1~3.3へと酸性にし、EA(850mL、次に565mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥して濃縮すると、95%を超える純度を有する(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(84.1g)が74%収率で得られた(LC方法1)。
ステップ2 (2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸
【化46】
【0289】
(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(84g、0.182mol)をDCM(210mL)に溶解し、室温でDBU(97g、0.637mol)、次いで(R)-(1-イソシアナトエチル)シクロヘキサン(55.8g、0.364mol)で処理した。この反応混合物を室温で一晩、撹拌した。この混合物をヘプタン(2500mL)により希釈し、室温で少なくとも30分間、撹拌し、次に、ろ過して真空下で乾燥した。粗製物質を室温で、少なくとも4時間、ヘプタン(1000mL)中で再度、スラリーにした。固体をろ過して乾燥すると、粗生成物が得られた。粗生成物をDCM(2250mL)に溶解し、10%水性クエン酸(1000mL×3)で洗浄した。DCM相を乾燥して濃縮乾固すると、(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(106g)が、94.7%収率および95%を超える純度で得られた(LC方法1)。
ステップ3 (2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸-トリフルオロ酢酸塩
【化47】
【0290】
(2S,3R)-3-((2-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)ピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸(100g、0.163mol)をトリフルオロ酢酸(500mL)に溶解し、室温でトリエチルシラン(75.7g、0.65mol)により処理した。室温で一晩、撹拌した後、この反応混合物を濃縮すると、残留物が得られた。この残留物をACNに溶解し、ヘキサン(3×500mL)で抽出した。この混合物(ACN層)を再度、濃縮乾固(高真空下、少なくとも4時間、乾燥した)すると、(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸が、そのトリフルオロ酢酸塩として100%収率で得られた。
ステップ4 (2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩
【化48】
【0291】
(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸トリフルオロ酢酸塩を室温でACN(350mL)に溶解した。この濁りのある溶液をろ過し、不溶物をACN(50mL)でリンスした。ろ液を5±5℃まで冷却し、塩酸(488mL、1Nエーテル溶液)で処理した。この混合物を室温で一晩、撹拌した。結晶性生成物をろ過により採集して乾燥した。粗生成物を室温で一晩、イソプロピルアルコール(100mL)中でスラリーにしてろ過し、固体をMTBE(2×50mL)でリンスし、(2S,3R)-3-((2-アミノピリジン-4-イル)メチル)-1-(((R)-1-シクロヘキシルエチル)カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸塩酸塩が白色固体(34.8g)として71%収率および98.1%純度で得られた(LC方法2)。
(実施例5)
純度(面積%)の分析に関するHPLC手順
LC方法1
【0292】
概要:試料を適切な希釈液中に希釈する。得られた溶液を215nmで行うUV検出を備える逆相HPLCを使用して分析する。
【0293】
装置および物質:
Agilent 1100/1200 HPLCシステムまたは等価物
カラム:Agilent Eclipse Plus C18、4.6×100mm、3.5μm
トリフルオロ酢酸(TFA)、EMDまたは等価物
HPLCグレードのアセトニトリル(ACN)、Fisherまたは等価物
HPLCグレードの水(HO)、Fisherまたは等価物
0.45μm PTFEシリンジフィルター
【0294】
溶液調製:
移動相A:HO中の0.1%TFA
O1.0LにTFA1.0mLを加える。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。
移動相B:ACN中の0.1%TFA
ACN1.0LにTFA1.0mLを加える。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。
希釈液A:1:1 ACN/H
等量のCANおよび水を合わせる。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。希釈液B:ACN
【表7B】
【表8】
LC方法2
【0295】
概要:試料を1:1アセトニトリル:水中で希釈する。得られた溶液を215nmで行うUV検出を備える逆相HPLCを使用して分析する。
【0296】
装置および物質:
Agilent 1100/1200 HPLCシステムまたは等価物
カラム:Agilent Eclipse Plus C18、4.6×100mm、3.5μm
リン酸、85%(HPO)、Macronまたは等価物
HPLCグレードのアセトニトリル(CAN)、Fisherまたは等価物
HPLCグレードの水(HO)、Fisherまたは等価物
【0297】
溶液調製:
移動相A:HO中の0.1%HPO
O1.0LにHPO1.0mLを加える。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。
移動相B:ACN中の0.1%HPO
ACN1.0LにHPO1.0mLを加える。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。
希釈液:1:1 ACN/H
等量のACNおよび水を合わせる。十分に混合する。必要に応じてスケールを変更する。
【表9】
【表10】
(実施例6)
猟犬の心肺バイパスモデルにおける、化合物1の有効性検討
【0298】
この検討の目的は、雑種猟犬モデルにおいて、1日目に稼働時間を延長している間の心肺バイパス(CPB)回路の使用中、血液凝固構成成分の活性化を防止するために、標準治療(SOC)であるヘパリンに比べて、化合物1に有効性があることを実証することであった。この検討設計が、表11に示されている。
【表11】
【0299】
以下のパラメーターおよびエンドポイントを本検討で評価した:死亡率、体重、物理的パラメーター、臨床病理パラメーター(血液学および凝固)、1212凝固時間、および生物学的分析パラメーター。
実験設計
投与
【0300】
ビヒクルおよび試験物品を、1日目に135分間、1回、静脈内(IV)注入により投与した(心肺バイパス(CPB)の開始30分前に開始し、CPBの105分間、継続した)。群2の動物は、IV注入を開始する直前に、0.6μg/mLまたは3.0mg/mLのIVボーラス用量を受けた。群3、4および5の動物は、IV注入を開始する前に、10mg/kgのIVボーラス用量を受けた。CPBの機器は、10μg/mLの試験物品でプライミングした。
外科手技
【0301】
群1は、開放システム/レザーバーを備える注入用ポンプ装置を有した。化合物1の注入は、動物をCPBポンプに置く30分前に開始した。CPBポンプを0.9%生理食塩水でプライミングした。
【0302】
群2、3および4は、開放システム/レザーバーを備える注入用ポンプ装置を有した。静脈および動脈のシースに、10μg/mLの濃度の化合物1をフラッシングした。注入を開始する直前に、試験物品のIVボーラス用量を投与した。化合物1の注入は、動物をCPBポンプに置く30分前に開始した。CPBポンプを開始する前に、10μg/mLの化合物1でCPB患者をプライミングした。
【0303】
群5は、閉鎖システム/「バッグ」を備える注入用ポンプ装置を有した。次に、静脈および動脈のシースに、10μg/mLの化合物1をフラッシングした。化合物1のIVボーラス用量を、注入を開始する直前に投与した。化合物1の注入は、動物をCPBポンプに置く30分前に開始した。
結果
【0304】
図10は、膜型人工肺にわたり評価された圧力勾配を示す。抗血液凝固剤を用いずに以前に行った検討により、膜型人工肺にかかる圧力は、ポンプの開始の15分以内に確立し、次の30分間にわたり指数関数的に増加し、こうして、人工肺は閉塞して循環が停止し
た一方、多回用量の化合物1を用いた場合、膜型人工肺にかかる圧力勾配は、稼働全体にわたり、一定に留まり、このことは、試験物品は、抗凝固を首尾よく維持して、プロトコールの全体の間、ポンプの稼働の継続が可能となることを示した。
【0305】
図11は、化合物1の血漿中濃度とaPTTとの間の相関関係を示している。動物は、検討を終了するまですべて生存した。全体として、化合物1は、この検討に使用した用量レベルでは、心肺バイパス/ECMOのプロトコールの間、罹患率または死亡率の増加となんら関係しなかった。
【0306】
化合物1の注入中、およびCPBの前に、aPTTは、すべての動物において、中程度から顕著な程度に延びた(図12)。aPTTの長期化は、化合物1の注入およびCPB全体にわたり持続した。負荷用量の化合物1を受けた群(群2~5)では、aPTTの長期化は、CPBの前(群3~5)、またはその最初の30分間(群2)に最も顕著であったが、次に、定常状態に到達する前にわずかに改善された。群1の動物は、負荷用量の化合物1を受けておらず、aPTTの長期化は、この群では、化合物1の注入中のすべての測定した時点において、比較的一定を維持した。すべての群において、化合物1の注入およびCPBの停止後、aPTTは、ベースライン値に向かう傾向を示したが、本検討の結論付けした時には、中程度に延びた状態を維持した。
結論
【0307】
このモデルへの化合物1の投与により、心肺バイパスの構成成分における血液凝固の活性化を予防することに成功した。化合物1の抗血液凝固剤の効果は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の阻害に選択的であった。さらに、これらのデータは、注入を開始する直前にポーラス用量を添加すると、化合物1の目標血漿中レベルの到達が、所望の定常状態レベルになると同時に、速やかに起こることが可能となり、回路構成成分の大部分において、105分間のCPBの稼働の成功の実現、および凝固の予防に十分であることを実証した。
【0308】
全体として、これらのデータは、化合物1が、心肺バイパスの構成成分において、血液凝固の予防において、ヘパリンの許容可能な代替肢となり得ることを示す。
均等物
【0309】
本開示の特定の実施形態が議論されているが、上記の明細書は例示的なものであり、限定ではない。本開示の多数の変形が、本明細書を鑑みると、当業者に明白となろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲を均等物のその全範囲と共に、および本明細書をこのような変形と共に参照することにより決定されるべきである。
【0310】
特に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用されている、成分の量、反応条件などを表現している数値はすべて、すべての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されたい。したがって、特に反対の記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて様々となり得る概数である。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
式(I)の薬学的に許容される塩:
【化49】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を調製する方法であって、
溶媒に式(II)の塩
【化50】
またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶解し、これにより、第1の溶液を調製するステップ、および前記第1の溶液に塩化水素を添加するステップを含み、
これにより前記式(I)の薬学的に許容される塩を生成する、方法。
(項目2)
前記式(II)の塩が、非プロトン性溶媒に溶解される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記溶媒が、アセトニトリルを含む(例えば、アセトニトリルからなる、またはアセトニトリルから本質的になる)、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記塩化水素が、前記第1の溶液にHClガスを通気することによって、または前記第1の溶液にHClを含む第2の溶液(例えば、塩酸のエーテル溶液)を添加することによって、前記第1の溶液に添加される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量が、500グラムより多いまたは500グラムに等しい、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記式(II)の塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の開始量が、1キログラム
より多いまたは1キログラムに等しい、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記方法が、300グラムを超える(例えば、約350グラムを超える(例えば、約368グラム))式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記方法が、約50%を超える収率で(例えば、約55%収率で)、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記方法が、約75%を超える収率で、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記方法が、約90%を超える収率で、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記方法が、約99%を超える収率で、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を生成する、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度が約80%である、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度が約81%である、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)に溶解し、次いで前記溶解している式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を、別の溶媒(例えば、メチルtert-ブチルエーテル)を使用して沈殿させることによって、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
沈殿後の前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度が98%よりも高い、項目14に記載の方法。
(項目16)
沈殿後の前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度が約98%である、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)中でスラリーにし、次に前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)をろ過して、前記溶媒から前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を分離することによって、前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)を精製するステップをさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
スラリーにして分離した後の前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物(例えば、水和物)の純度が98%よりも高い、項目17に記載の方法。
(項目19)
スラリーにして分離した後の前記式(I)の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物
(例えば、水和物)の純度が約98%である、項目17または18に記載の方法。
(項目20)
式(III)の化合物
【化51】
に、トリフルオロ酢酸を接触させることにより前記式(II)の塩を調製するステップを含む、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記式(III)の化合物にシラン(例えば、トリエチルシラン)を接触させるステップをさらに含む、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記方法が、500グラムを超える(例えば、1kgを超える)前記式(III)の化合物を生成する、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
式(IV)の化合物
【化52】
に、式(V)の化合物
【化53】
を接触させることにより前記式(III)の化合物を調製するステップを含む、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記方法が、1キログラムを超える(例えば、約1.3kg)前記式(III)の化合物を生成する、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記方法が、溶媒の存在下で行われる、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記方法が、塩基(例えば、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン)の存在下で行われる、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
式(VI)の化合物
【化54】
に式(VII)の化合物
【化55】
を接触させることにより前記式(IV)の化合物を調製するステップを含む、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記方法が、500グラムを超える(例えば、900グラムを超える)前記式(IV)の化合物を生成する、項目1から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記式(III)の化合物が、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記精製方法が、溶媒(例えば、ヘプタン)中に前記式(III)の化合物をスラリーにするステップ、次に、前記式(III)の化合物をろ過して、前記溶媒から前記式(III)の化合物を分離するステップを含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記式(III)の化合物の純度が90%を超える、項目1から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記式(I)の化合物が、クロマトグラフィーではない精製方法によって精製される、項目1から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
式(I)の薬学的に許容される結晶性塩:
【化56】

(項目34)
それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を処置する方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化57】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、前記対象の血液が人工表面に接触される、方法。
(項目35)
それを必要とする対象における血栓塞栓性障害のリスクを低減する方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化58】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、前記対象の血液が人工表面に接触される、方法。
(項目36)
それを必要とする対象における血栓塞栓性障害を予防する方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化59】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含み、前記対象の血液が人工表面に接触される、方法。
(項目37)
前記人工表面が、前記対象の循環系における血液に接触している、項目33から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記人工表面が、埋込式装具、透析カテーテル、心肺バイパス回路、人工心臓弁、補助人工心臓、小口径グラフト、中心静脈カテーテルまたは体外式膜型人工肺(ECMO)装置である、項目33から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記人工表面が、前記血栓塞栓性障害を引き起こすか、またはこれに関連する、項目33から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記血栓塞栓性障害が、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症または肺塞栓症である、項目33から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記血栓塞栓性障害が血塊である、項目33から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記人工表面に前記対象の循環系における血液を接触させる前に、個別の用量の前記化合物または薬学的に許容されるその塩により前記人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記対象への前記化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前またはその間に、個別の用量の前記化合物または薬学的に許容されるその塩により前記人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む、項目33から42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記対象への前記化合物または薬学的に許容されるその塩の投与前およびその間に、個別の用量の前記化合物または薬学的に許容されるその塩により前記人工表面をコンディショニングするステップをさらに含む、項目33から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
それを必要とする対象の血液を処置する方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の以下によって表される化合物
【化60】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目46)
人工表面に接触している対象の血液において、以下によって表される化合物
【化61】
または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持する方法であって、前記方法が、
(i)前記人工表面に前記対象の血液を接触させる前またはその間に、前記対象に前記化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)前記人工表面に前記対象の血液を接触させる前またはその間に、人工表面を前記化合物または薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングするステップ
を含み、
これにより、前記対象の血液において、前記化合物または薬学的に許容されるその塩の血漿中レベルを維持する、方法。
(項目47)
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、前記人工表面に接触する前およびその後に、前記対象の血液中の一定活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を維持する、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、前記人工表面に前記対象の血液を接触させる前におよびその間に、前記対象に投与される、項目46または47に記載の方法。
(項目49)
前記人工表面に前記対象の血液を接触させる前およびその間に、前記人工表面が、前記
化合物または薬学的に許容されるその塩によりコンディショニングされる、項目46から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記方法が、前記人工表面に接触している前記対象の血液において、血塊形成をさらに予防する、またはそのリスクを低減する、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記人工表面が心肺バイパス回路である、項目48から50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記人工表面が体外式膜型人工肺(ECMO)装置である、項目48から50のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記ECMO装置が、静脈静脈ECMO装置または静脈動脈ECMO装置である、項目52に記載の方法。
(項目54)
医療手順の間またはその後に、対象における血栓塞栓性障害を予防する、またはそのリスクを低減する方法であって、
(i)前記医療手順の前、その間またはその後に、前記対象に、有効量の以下によって表される化合物:
【化62】
または薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、および
(ii)前記対象の血液に人工表面を接触させるステップを
含み、
これにより、前記医療手順の間またはその後に、前記血栓塞栓性障害を予防する、またはその前記リスクを低減する、方法。
(項目55)
前記医療手順の前、その間またはその後に、前記対象に前記化合物を投与する前に、前記人工表面が、前記化合物または薬学的に許容されるその塩でコンディショニングされる、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記医療手順の前、その間またはその後に、前記対象に前記化合物または薬学的に許容されるその塩を投与する前に、前記人工表面が、前記化合物または薬学的に許容されるその塩を含む溶液でコンディショニングされる、項目54または55に記載の方法。
(項目57)
前記溶液が生理食塩水溶液、リンゲル液または血液である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記血栓塞栓性障害が血塊である、項目54から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記医療手順が、i)心肺バイパス、ii)体外式膜型人工肺による血液の酸素化およびポンプ注入、iii)血液の補助ポンプ注入(体内または体外)、iv)血液の透析、v)血液の体外ろ過、vi)動物またはヒト対象における後で使用するための保存容器への前記対象からの血液の採取、vii)静脈または動脈管腔内カテーテルの使用、vii
i)診断用またはインターベンション用心臓カテーテル法のためのデバイスの使用、ix)血管内デバイスの使用、x)人工心臓弁の使用、およびxi)人工グラフトの使用のうちの1つまたは複数を含む、項目54から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記医療手順が心肺バイパスを含む、項目54から59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記医療手順が、体外式膜型人工肺(ECMO)による、血液の酸素化およびポンプ注入を含む、項目54から59のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記ECMOが、静脈静脈ECMOまたは静脈動脈ECMOである、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記化合物の前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、項目34から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記化合物が前記対象に静脈内投与される、項目34から63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記化合物が前記対象に皮下内投与される、項目34から63のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記化合物が前記対象に連続静脈内注入として投与される、項目34から63のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記化合物が前記対象にボーラス剤として投与される、項目34から63のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記対象がヒトである、項目34から67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記対象が、血栓塞栓性障害の高いリスクを有する、項目34から68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記血栓塞栓性障害が、手術中の合併症の結果である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記対象が、ヘパリンに感受性があるか、またはヘパリンへの感受性が発達している、項目34から70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記対象が、ヘパリンに耐性があるか、またはヘパリンへの耐性が発達している、項目34から71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記対象が、少なくとも1日間(例えば、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約10日間、約2週間、約3週間、約4週間、約2か月間、約3か月間、約6か月間、約9か月間、約1年間)、前記人工表面に接触している、項目34から72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記対象が小児対象である、項目34から72のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記対象が成人である、項目34から72のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】